(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
E02F9/20 A
(21)【出願番号】P 2019051127
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【氏名又は名称】立石 博臣
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】横田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 智子
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-057469(JP,A)
【文献】特開2018-150884(JP,A)
【文献】特開2011-241779(JP,A)
【文献】特開2016-113772(JP,A)
【文献】特開2011-256608(JP,A)
【文献】特開2016-069963(JP,A)
【文献】特開2016-196759(JP,A)
【文献】特開2011-051458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械であって、
エンジンと、
前記エンジンを始動させるための始動操作を受け付ける始動操作受付手段と、
電力を供給するためのバッテリと、
制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記エンジンを制御するエンジン制御部と、
前記バッテリの電力供給を制御するバッテリ制御部と、
前記エンジンの始動に先立って動作確認を要する電子機器に前記バッテリの電力を供して通電すべき旨の通電指示を検出する通電指示検出部と、
前記電子機器に通電が開始されてからの経過時間を計時する計時部と、
を備え、
前記バッテリ制御部は、前記通電指示検出部によって前記通電指示が検出されたことに応答して、前記バッテリの電力を前記電子機器に供給させることにより前記電子機器への通電を開始させ、
前記エンジン制御部は、前記経過時間が第1所定時間を超える前に前記始動操作が受け付けられた場合に前記エンジンを始動させることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記バッテリ制御部は、前記電子機器への通電を開始した後、前記始動操作が受け付けられることなく前記経過時間が前記第1所定時間を超えた場合には、前記電子機器への通電を停止させることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記制御手段は、前記始動操作が受け付けられることなく前記経過時間が前記第1所定時間を超えた場合に前記電子機器への通電を停止させる旨を通知する通知制御部をさらに備え、
前記バッテリ制御部は、通電の継続を示す操作が行われることなく前記通知制御部による通知から第2所定時間を経過した場合には、前記電子機器への通電を停止させることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記通知制御部は、前記第2所定時間の経過前に通電の継続を示す操作が行われた場合において、当該操作から第3所定時間が経過するまでに前記始動操作が受け付けられなかったときには、前記電子機器への通電を停止させる旨を再度通知することを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記制御手段は、運転室のドアの開閉操作を検出するドア開閉検出部を更に備え、
前記バッテリ制御部は、前記ドア開閉検出部によって前記ドアの開放操作が検出されることなく前記経過時間が第4所定時間を超えた場合には、前記電子機器への通電を停止させることを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載の建設機械。
【請求項6】
前記通電指示検出部は、運転室のドアロックを開錠する開錠操作、又は前記運転室のドアを開放する開放操作を前記通電指示として検出することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項7】
前記通電指示検出部は、電子キーが所定範囲で検出されたこと、又は前記電子キーが前記所定範囲で操作されたことを前記通電指示として検出することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項8】
前記バッテリ制御部は、前記電子機器への通電を開始した後において、前記電子キーが前記所定範囲で検出されなくなった場合には、前記電子機器への通電を停止させることを特徴とする請求項7に記載の建設機械。
【請求項9】
前記通電指示検出部は
、電子キーが第1所定範囲で検出されてから第5所定時間が経過するまでに、前記電子キーが前記第1所定範囲よりも狭い第2所定範囲で検出されたことを前記通電指示として検出することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項10】
前記エンジン制御部は、油圧ロックレバーがロック状態であることを条件として、前記エンジンを始動させることを特徴とする請求項1から9のうち何れかに記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、より詳細には、エンジンの始動が可能になるまでの待機時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の中には、エンジンの始動に関してプッシュスタートタイプのスイッチを採用しているものが存在する。プッシュスタートタイプの建設機械では、オペレータが運転席に乗り込んだ後、キーオン操作(プッシュスタートボタン周辺の回動レバー操作や機器類への通電開始操作)を行った上でプッシュスタートボタンを押下すると、エンジンが始動する。
【0003】
また、建設機械の分野において、エンジンの始動を簡素化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、特許文献1では、ロックレバー(13)がロック位置であり、かつ、携帯鍵(41)の認証可能範囲内にあれば、オペレータがパワースイッチ(12)を操作するだけでエンジン(15)を始動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したプッシュスタートタイプの建設機械では、電子制御のためのソフトウェアや電子機器が正常に動作するか否かをチェックするのに相応の時間を要するため、キーオン操作からエンジンの始動が可能になるまでの待機時間が長いという問題がある。近年、電子制御対象機器の増加に伴ってチェック時間も増加傾向にあり、オペレータにとって上述した待機時間は大きなストレスになっている。
【0006】
また、特許文献1によれば、鍵の差し込みや回転操作は不要になるものの、上述したソフトウェアや電子機器のチェックについては何ら言及されておらず、上述した待機時間の問題は依然として残っている。
【0007】
そこで、本発明は、オペレータが運転席に着座してからエンジンの始動が可能になるまでの待機時間を短縮することが可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、建設機械であって、エンジンと、前記エンジンを始動させるための始動操作を受け付ける始動操作受付手段と、電力を供給するためのバッテリと、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記エンジンを制御するエンジン制御部と、前記バッテリの電力供給を制御するバッテリ制御部と、前記エンジンの始動に先立って動作確認を要する電子機器に前記バッテリの電力を供して通電すべき旨の通電指示を検出する通電指示検出部と、前記電子機器に通電が開始されてからの経過時間を計時する計時部と、を備え、前記バッテリ制御部は、前記通電指示検出部によって前記通電指示が検出されたことに応答して、前記バッテリの電力を前記電子機器に供給させることにより前記電子機器への通電を開始させ、前記エンジン制御部は、前記経過時間が第1所定時間を超える前に前記始動操作が受け付けられた場合に前記エンジンを始動させることを特徴とする建設機械を提供している。
【0009】
ここで、前記バッテリ制御部は、前記電子機器への通電を開始した後、前記始動操作が受け付けられることなく前記経過時間が前記第1所定時間を超えた場合には、前記電子機器への通電を停止させるのが好ましい。
【0010】
また、前記制御手段は、前記始動操作が受け付けられることなく前記経過時間が前記第1所定時間を超えた場合に前記電子機器への通電を停止させる旨を通知する通知制御部をさらに備え、前記バッテリ制御部は、通電の継続を示す操作が行われることなく前記通知制御部による通知から第2所定時間を経過した場合には、前記電子機器への通電を停止させるのが好ましい。
【0011】
また、前記通知制御部は、前記第2所定時間の経過前に通電の継続を示す操作が行われた場合において、当該操作から第3所定時間が経過するまでに前記始動操作が受け付けられなかったときには、前記電子機器への通電を停止させる旨を再度通知するのが好ましい。
【0012】
また、前記制御手段は、運転室のドアの開閉操作を検出するドア開閉検出部を更に備え、前記バッテリ制御部は、前記ドア開閉検出部によって前記ドアの開放操作が検出されることなく前記経過時間が第4所定時間を超えた場合には、前記電子機器への通電を停止させるのが好ましい。
【0013】
また、前記通電指示検出部は、運転室のドアロックを開錠する開錠操作、又は前記運転室のドアを開放する開放操作を前記通電指示として検出するのが好ましい。
【0014】
また、前記通電指示検出部は、電子キーが所定範囲で検出されたこと、又は前記電子キーが前記所定範囲で操作されたことを前記通電指示として検出するのが好ましい。
【0015】
また、前記バッテリ制御部は、前記電子機器への通電を開始した後において、前記電子キーが前記所定範囲で検出されなくなった場合には、前記電子機器への通電を停止させるのが好ましい。
【0016】
また、前記通電指示検出部は、前記電子キーが第1所定範囲で検出されてから第5所定時間が経過するまでに、前記電子キーが前記第1所定範囲よりも狭い第2所定範囲で検出されたことを前記通電指示として検出するのが好ましい。
【0017】
また、前記エンジン制御部は、油圧ロックレバーがロック状態であることを条件として、前記エンジンを始動させるのが好ましい。
【0018】
また、本発明は、建設機械であって、エンジンと、電力を供給するためのバッテリと、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記エンジンを制御するエンジン制御部と、前記バッテリの電力供給を制御するバッテリ制御部と、前記エンジンの始動に先立って動作確認を要する電子機器に前記バッテリの電力を供して通電すべき旨の通電指示を検出する通電指示検出部と、前記電子機器に通電が開始されてからの経過時間を計時する計時部と、
を備え、前記バッテリ制御部は、前記通電指示検出部によって前記通電指示が検出されたことに応答して、前記バッテリの電力を前記電子機器に供給させることにより前記電子機器への通電を開始させ、前記エンジン制御部は、前記電子機器が通電され前記動作確認が完了した後に前記エンジンを始動させることを特徴とする建設機械を更に提供している。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バッテリ制御部は、通電指示が検出されたことに応答して、バッテリの電力を電子機器に供給させることにより当該電子機器への通電を開始させる。また、エンジン制御部は、経過時間が第1所定時間を超える前に始動操作が受け付けられた場合にエンジンを始動させる。そのため、エンジンの始動操作が受け付けられる前であっても通電指示が検出されれば、電子機器への通電が開始される。従って、建設機械において、オペレータが運転席に着座してからエンジンの始動が可能になるまでの待機時間を短縮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】油圧ショベルのコントローラのブロック構成図。
【
図2】第1実施形態に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【
図3】第2実施形態に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【
図4】第3実施形態に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【
図5】第4実施形態に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【
図6】第5実施形態に係るコントローラのブロック構成図。
【
図7】第5実施形態に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【
図8】第6実施形態に係る第1所定範囲及び第2所定範囲を示す概念図。
【
図9】第6実施形態に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【
図10】第7実施形態に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【
図11】変形例に係る処理内容(プロセス)を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<1.第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る建設機械について
図1及び
図2を参照しながら説明する。以下、本発明に係る建設機械の一例として、
図1のブロック構成図で示される油圧ショベル1を例示する。
【0022】
油圧ショベル1は、エンジン2と、プッシュスタートキー3と、バッテリ4と、操作パネル5と、コントローラ6とを備えて構成される。
【0023】
プッシュスタートキー3は、エンジン2を始動させるための操作者による始動操作を受け付ける操作キーであり、本発明に係る始動操作受付手段の一例である。プッシュスタートキー3は、操作者による始動操作が受け付けられると、始動操作が受け付けられたことを示す信号をコントローラ6に出力する。
【0024】
バッテリ4は、図示しない電子機器群に電源を供給し、当該電子機器群を通電させるための電源である。ここで、電子機器群とは、エンジン2の始動に先立って動作確認を要する機器(例えば、メカトロコントローラ、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)及びモニタ)である。
【0025】
操作パネル5は、各種情報を表示したり、オペレータによる操作(タッチ操作)を受け付けたりすることが可能なタッチパネルであり、運転室内に設置される。
【0026】
コントローラ6は、油圧ショベル1の各種動作を制御する制御装置であり、本発明に係る制御手段の一例である。
【0027】
コントローラ6は、エンジン制御部61と、バッテリ制御部62と、開錠検出部63と、ドア開閉検出部64と、計時部65と、施錠制御部66と、通知制御部67とを備えて構成される。
【0028】
エンジン制御部61は、エンジン2の駆動状態を制御する処理部である。エンジン制御部61は、停止状態にあるエンジン2を始動させたり、駆動状態にあるエンジン2を停止させたりすることが可能である。
【0029】
バッテリ制御部62は、バッテリ4の電力供給を制御する処理部である。バッテリ制御部62は、バッテリ4の電力を上述した電子機器群に供給させることにより当該電子機器群を通電させることが可能である。
【0030】
開錠検出部63は、図示しない運転室のドアロックに対する開錠操作を検出するための処理部である。第1実施形態において、開錠検出部63は、本発明に係る通電指示検出部の一例であり、上述した開錠操作を通電指示として検出する。ここで、通電指示とは、バッテリ4からの電源を上述した電子機器群に電源供給すべき旨の指示をいう。
【0031】
ドア開閉検出部64は、図示しない運転室のドアに対する開閉操作を検出するための処理部である。ドア開閉検出部64は、オペレータによりドアが開かれたことを開放操作として検出し、オペレータによりドアが閉められたことを閉鎖操作として検出する。
【0032】
計時部65は、バッテリ制御部62による電子機器群への通電が開始されてからの時間を経過時間として計時する処理である。
【0033】
施錠制御部66は、図示しない運転室のドアロックを制御する処理部である。施錠制御部66は、運転室のドアロックを自動で施錠又は開錠させることが可能である。
【0034】
通知制御部67は、バッテリ4による電子機器群への通電が停止される旨を通知する処理部である。ここでは、通知制御部67は、バッテリ4による電子機器群への通電が停止される旨のメッセージを操作パネル5に表示させる。
【0035】
続いて、
図2のフローチャートを参照しながら、第1実施形態に係る通電制御処理について説明する。
【0036】
ステップS11において、コントローラ6は、開錠検出部63によりドアロックの開錠操作が検出されたか否かを判定する。なお、ここでは、開錠検出部63は、キーを所持する作業者がドアに設けられた接触センサに接触したことを開錠操作として検出するものとする。
【0037】
開錠操作(上述した通電指示)が検出されると(S11:YES)、処理はステップS12に進む。ステップS12において、コントローラ6は、バッテリ制御部62を介してバッテリ4の電力を上述した電子機器群に供給させることにより当該電子機器群への通電を開始する。
【0038】
ステップS13では、コントローラ6は、計時部65で計時された経過時間(通電が開始されてからの時間)が所定時間T1を経過したか否かを判定する。ここで、所定時間T1は、本発明に係る第1所定時間の一例であり、任意の値が設定されているものとする。
【0039】
通電が開始されてからの経過時間が所定時間T1を経過していないと判定されると(S13:NO)、処理はステップS14に進む。一方、当該経過時間が所定時間T1を経過したと判定されると(S13:YES)、処理はステップS16に進む。
【0040】
ステップS14において、コントローラ6は、プッシュスタートキー3を介してエンジン2を始動させるための始動操作が受け付けられたか否かを判定する。
【0041】
エンジン2の始動操作が受け付けられたと判定されると(S14:YES)、処理はステップS15に進む。一方、エンジン2の始動操作が受け付けられていないと判定されると(S14:NO)、処理はステップS13に戻る。
【0042】
ステップS15において、コントローラ6は、エンジン制御部61を介してエンジン2を始動させる。
【0043】
他方、ステップS16において、コントローラ6は、バッテリ制御部62を介してバッテリ4による電子機器群への通電を停止させる。
【0044】
電子機器群への通電が停止されると、ステップS17において、コントローラ6は、施錠制御部66を介してドアロックを自動で施錠させる。
【0045】
上述した第1実施形態によれば、開錠操作(通電指示)が検出されると(
図2のS11:YES)、バッテリ4の電力が電子機器群に供給され、当該電子機器群への通電が開始する(S12)。また、通電が開始されてからの経過時間が所定時間T1を超える前に(S13:NO)始動操作が受け付けられた場合に(S14:YES)エンジン2が始動する(S15)。そのため、プッシュスタートキー3を介してエンジン2の始動操作が受け付けられる前に通電が開始し(キーオン状態になり)、オペレータが運転席に着座するまでの時間を電子機器群への通電時間として利用することが可能である。従って、油圧ショベル1において、オペレータが運転席に着座してからエンジン2の始動が可能になるまでの待機時間を短縮することができ、結果として、オペレータのストレスを軽減できる。
【0046】
また、上述した第1実施形態によれば、通電が開始されてからの経過時間が所定時間T1を超えると(S13:YES)、バッテリ4による電子機器群への通電が停止される(S16)。そのため、オペレータにエンジン2を始動する意思がない場合には、速やかに電子機器群への通電を停止させ、バッテリ4の電力消費を抑制することが可能である。
【0047】
また、上述した第1実施形態によれば、ドアロックの開錠操作といった作業者による具体的な操作が通電指示として検出されるため、エンジン2を始動させる可能性がより高い場合に電子機器群への通電を開始させることが可能である。
【0048】
更に、上述した第1実施形態によれば、通電が開始されてからの経過時間が所定時間T1を超え(S13:YES)、バッテリ4による電子機器群への通電が停止した後(S16)、運転室のドアロックが自動で施錠される(S17)。そのため、盗難を防止することが可能である。
【0049】
<2.第2実施形態>
続いて、
図3のフローチャートを参照しながら第2実施形態について説明する。第2実施形態は、上述した第1実施形態の変形例である。以下では、上述した第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
図3に示されるように、第2実施形態では、通電開始からの経過時間が所定時間T1を経過した場合に(S13:YES)、第1実施形態のように直ぐに電子機器群への通電を停止させるのではなく、通電を停止する旨を事前に通知する通知処理(ステップS21~S24)を実行する。
【0051】
具体的には、ステップS21において、コントローラ6は、通知制御部67を介してバッテリ4による電子機器群への通電が停止される旨のメッセージ(例えば「通電を停止します。」)を操作パネル5に表示する。
【0052】
なお、第2実施形態では、操作パネル5に表示されるメッセージによって通電停止が通知される場合を例示しているが、これに限定されない。例えば、警報音や事前に記録した音声データによって通電停止が通知されるようにしてもよい。あるいは、ライト等の照明機器の点灯(点滅)によって通電停止が通知されるようにしてもよい。また、通電開始と共に運転室の照明が点灯する機種においては、照明の明るさ(例えば「暗くなる」)によって通電停止が通知されるようにしてもよい。これらの通知方法を採用することにより、オペレータが操作パネル5から目を離していたしても通電の停止をオペレータに報知することが可能である。
【0053】
ステップS22において、コントローラ6は、通知制御部67による通知を行ってから所定時間T2が経過する前に通電の継続を示す所定操作が受け付けられたか否かを判定する。ここで、通電の継続を示す所定操作とは、通電状態を維持したい旨の意思を示す操作をいう。具体的には、上述のメッセージと共に表示される問い合わせのメッセージ(「通電状態を維持しますか?」、「はい」/「いいえ」)に対する回答操作や、操作レバー又はスイッチに対する操作等が挙げられる。また、所定時間T2は、本発明に係る第2所定時間の一例であり、任意の値が設定されているものとする。
【0054】
ステップS22において、所定時間T2が経過する前に通電の継続を示す所定操作が受け付けられたと判定されると(S22:YES)、処理はステップS23に進む。一方、通電の継続を示す所定操作が受け付けられることなく所定時間T2が経過すると(S22:NO)、処理はステップS16に進む。
【0055】
ステップS23において、コントローラ6は、上述した通電の継続を示す所定操作が行われてから所定時間T3が経過する前にプッシュスタートキー3を介してエンジン2の始動操作が受け付けられたか否かを判定する。ここで、所定時間T3は、本発明に係る第3所定時間の一例であり、任意の値が設定されているものとする。
【0056】
ここで、所定時間T3が経過する前に始動操作が受け付けられたと判定されると(S23:YES)、処理はステップS15に進む。一方、始動操作が受け付けられることなく所定時間T3が経過すると(S24:YES)、処理はステップS21に戻り、再度通電を停止する旨を通知する。
【0057】
その他の処理については、上述した第1実施形態と同じであるから、ここでは説明を省略する。
【0058】
上述した第2実施形態によれば、通電開始からの経過時間が所定時間T1を経過したとしても(S13:YES)、直ぐに電子機器群への通電が停止されず、通電を停止する旨が事前に通知される(ステップS21~S24)。そして、所定時間T2が経過する前に通電の継続を示す操作を行えば、エンジン2に対する始動操作を行うことなく通電を維持することが可能になる。そのため、作業者(サービスマン等)が機械の稼働状況を示すログデータを抽出したり、メンテナンスを行ったりする場合(すなわち、エンジン2を始動させないが、電子機器群への通電を維持したい場合)に、電子機器群への通電を維持することでき、各種作業が中断されずに済む。
【0059】
また、通電開始からの経過時間が所定時間T1を経過したとしても(S13:YES)、所定時間T2が経過する前に通電の継続を示す操作を行った後、当該操作から所定時間T3が経過する前にプッシュスタートキー3を押下することで、エンジン2を始動させることが可能である。
【0060】
<3.第3実施形態>
続いて、
図4のフローチャートを参照しながら第3実施形態について説明する。第3実施形態は、上述した第2実施形態の変形例である。以下では、上述した第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0061】
図4に示されるように、第3実施形態では、通電開始後(S12)、運転室のドアが開放されたか否かに応じて通電を継続するか否かを決定する決定処理(S31,S32)を実行する。また、第3実施形態では、電子機器群への通電が停止された後、直ぐにドアロックを施錠せず、施錠前の確認処理(S33,S34)を実行する。
【0062】
具体的には、ステップS31において、コントローラ6は、ドア開閉検出部64によって図示しない運転室のドアが開かれたか否かを判定する。ここで、ドアが開かれたと判定されると(S31:YES)、処理はステップS13に進む。一方、ドアが開かれていない(閉じたままの状態であると)と判定されると(S31:NO)、処理はステップS32に進む。
【0063】
ステップS32において、コントローラ6は、電子機器群への通電が開始されてからの経過時間が所定時間T4を超えたか否かを判定する。ここで、所定時間T4は、本発明に係る第4所定時間の一例であり、任意の値が設定されているものとする。
【0064】
通電が開始されてからの経過時間が所定時間T4を超えていないと判定されると(S32:NO)、処理はステップS31に戻る。一方、通電が開始されてからの経過時間が所定時間T4を超えたと判定されると(S32:YES)、処理はステップS16に進み、電子機器群への通電が停止される。
【0065】
ステップS33においては、コントローラ6は、ドア開閉検出部64によって図示しない運転室のドアが閉じられたか否かを判定する。ここで、ドアが閉じられた判定されると(S33:YES)、処理はステップS34に進む。一方、ドアが閉じられていないと判定されると(S33:NO)、電子機器群への通電が停止され、かつ、ドアが開放された状態で処理が終了する。
【0066】
ステップS34においては、コントローラ6は、運転室内に鍵が残っているか否かを判定する。ここで、鍵が残っていない判定されると(S34:NO)、処理はステップS17に進み、ドアロックを施錠する。一方、鍵が残っていると判定されると(S34:YES)、ドアを開錠した状態のまま処理が終了する。
【0067】
その他の処理については、上述した第2実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
上述した第3実施形態によれば、通電が開始されてから所定時間T4が経過するまでの期間にドアが開かれなければ(S32:YES)、電子機器群への通電が停止される(S16)。すなわち、通電開始後、ドアが一向に開放されない場合には、エンジン2を始動する意思がないと見做し、強制的に電子機器群への通電が停止され、バッテリ4の電力消費を速やかに低減することが可能である。
【0069】
また、上述した第3実施形態によれば、図示しない運転室に鍵が残っていないことを条件として(S34:NO)、ドアロックが自動で施錠される(S17)。よって、運転室内における鍵の閉じ込め(インロック)を防止することが可能である。
【0070】
<4.第4実施形態>
続いて、
図5のフローチャートを参照しながら第4実施形態について説明する。第4実施形態は、上述した第2実施形態の変形例である。以下では、上述した第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0071】
第4実施形態では、ドアロックの開錠操作ではなく、ドアの開放操作を上述した通電指示として検出する。
【0072】
具体的には、
図5のステップS41において、コントローラ6は、ドア開閉検出部64によってドアの開放操作が検出されたか否かを判定する。ここで、開放操作(通電指示)が検出されると(S41:YES)、処理はステップS12に進み、電子機器群への通電が開始される。
【0073】
また、第4実施形態では、通電が停止した後(S16)、コントローラ6は、ドア開閉検出部64によって運転室のドアが閉じられたか否かを判定する(S42)。ドアが閉じられていない(開いたままである)と判定されると(S42:NO)、ドアロックを施錠することなく、処理が終了する。一方、ドアが閉じられた判定されると(S42:YES)、処理はステップS17に進み、ドアロックが自動的に施錠される。なお、ドアロックは直ぐに施錠されてもよく、一定期間経過後に施錠されてもよい。
【0074】
上述した第4実施形態によれば、ドアの開放操作といった作業者の具体的操作が通電指示として検出されるため、エンジン2を始動させる可能性がより高い場合に通電を開始することが可能である。
【0075】
その他の処理については、上述した第2実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。なお、第4実施形態において、ドア開閉検出部64は、本発明に係る通電指示検出部の一例である。
【0076】
<5.第5実施形態>
続いて、
図6(ブロック構成図)及び
図7(フローチャート)を参照しながら第5実施形態について説明する。第5実施形態は、上述した第1実施形態の変形例である。以下では、上述した第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0077】
図6に示されるように、第5実施形態では、コントローラ6は、上述した各処理部61~67に加え、電子キー検出部68を更に備えている。
【0078】
電子キー検出部68は、所定範囲に存在する電子キーを検出するための処理部である。ここで、所定範囲とは、電子キーを検出可能な範囲をいい、基点から等間隔の範囲が設定されてもよく、任意の区画が設定されてもよい。
【0079】
第5実施形態では、ドアロックの開錠操作ではなく、電子キー検出部68によって電子キーが所定範囲で検出されたことを上述した通電指示として検出する。
【0080】
具体的には、
図7に示されるように、ステップS51において、コントローラ6は、電子キー検出部68によって電子キーが所定範囲で検出されたか否かを判定する。電子キーが所定範囲で検出されると(S51:YES)、上述した通電指示が受け付けられたと判定し、処理はステップS12に進み、通電が開始される。
【0081】
その他の処理については、上記第1実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。なお、第5実施形態において、電子キー検出部68は、本発明に係る通電指示検出部の一例である。
【0082】
<6.第6実施形態>
次に、
図8及び
図9のフローチャートを参照しながら第6実施形態について説明する。第6実施形態は、上述した第5実施形態の変形例である。以下では、上述した第5実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0083】
第6実施形態では、
図8に示されるように、所定範囲AR1と、所定範囲AR1よりも狭い所定範囲AR2との2つの範囲が予め設定されているものとする。そして、所定範囲AR1で電子キーが検出され、その後、より狭い所定範囲AR2で電子キーが検出されたことを上述した通電指示として検出する。
【0084】
具体的には、
図9に示されるように、ステップS61において、コントローラ6は、電子キー検出部68によって電子キーが所定範囲AR1で検出されたか否かを判定する。ここで、電子キーが所定範囲AR1で検出されると(S61:YES)、処理はステップS62に進む。
【0085】
ステップS62において、コントローラ6は、電子キーが所定範囲AR1で検出されてから所定時間T5が経過する前に、電子キーがより狭い所定範囲AR2で検出されたか否かを判定する。所定時間T5は、本発明に係る第5所定時間の一例であり、任意の値が設定されているものとする。
【0086】
所定時間T5が経過する前に電子キーが所定範囲AR2で検出されると(S62:YES)、上述した通電指示が受け付けられたと判定し、処理はステップS12に進み、通電が開始される。
【0087】
上述した第6実施形態によれば、電子キーが所定範囲AR1で検出された後、所定時間T5が経過する前により狭い第2所定範囲AR2で電子キーが検出された場合に、通電が開始される。そのため、電子キーを所持する作業者が油圧ショベル1に徐々に接近し、エンジン2を始動する可能性がより高い場合に通電を開始することが可能になる。従って、所定範囲で電子キーが検出されると直ぐに通電を開始するものに比べて、無駄な電子機器群への通電が抑制され、結果としてバッテリ4の電力消費も抑制される。
【0088】
<7.第7実施形態>
次に、
図10のフローチャートを参照しながら第7実施形態について説明する。第7実施形態は、上述した第6実施形態の変形例である。以下では、上述した第6実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0089】
第7実施形態では、
図10に示されるように、
図9の処理に加え、ステップS71が追加されている。
【0090】
ステップS71において、コントローラ6は、電子キーが第2所定範囲AR2で検出されてから所定時間T6が経過する前に、電子キー検出部68によって電子キーが第2所定範囲AR2で再度検出されたか否かを判定する。
【0091】
所定時間T4が経過する前に電子キーが第2所定範囲AR2で再度検出されると(S71:YES)、上述した通電指示が受け付けられたと判定し、処理はステップS12に進み、通電が開始される。
【0092】
一方、所定時間T4が経過する前に電子キーが第2所定範囲AR2で再度検出されない場合には(S71:NO)、電子キーを所持する作業者が油圧ショベル1から離れた(すなわち、エンジン2を始動する可能性が低い)として、処理はステップS61に戻る。
【0093】
上述した第7実施形態によれば、電子キーを所持する作業者が油圧ショベル1に接近したものの、その後、油圧ショベル1から離れたような状況(単に油圧ショベル1の近くを通過しただけの状況)においては電子機器群への通電が開始されないため、バッテリ4の電力消費が抑制される。
【0094】
<8.変形例>
本発明による建設機械は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0095】
例えば、上記各実施形態では、プッシュスタートキー3を介してエンジン2の始動操作が受け付けられると、直ぐにエンジン2が始動する場合を例示したが、これに限定されない。アタッチメント等の誤作動を防止するため、エンジン2の始動操作が受け付けられると、油圧ロックレバー(乗降遮断レバー)がロック状態であるか否かを判定し、ロック状態であると判定されたことを条件としてエンジン2が始動するようにしてもよい。
【0096】
なお、上記変形例において、油圧ロックレバーがロック状態にないと判定された場合には、エンジン2を始動できない旨の警告を行うようにしてもよい。なお、警告の具体的な方法としては、操作パネル5にメッセージを表示する、アラームランプを点灯する、及び音声通知を行う等が想定される。
【0097】
また、上記各実施形態では、電子機器群への通電は通電指示に応答して自動で開始する一方、エンジン2はプッシュスタートキー3を介して手動で始動する場合を例示したが、これに限定されず、電子機器群への通電からエンジン2の始動までを自動で行うようにしてもよい。
【0098】
具体的には、電子機器群への通電が開始し、当該電子機器群の動作確認が完了したことを条件として、エンジン2が自動で始動するようにすればよい。その場合、安全面に配慮し、油圧ロックレバーがロック状態であることをエンジン2が自動で始動するための条件に加えるのが好ましい。
【0099】
かかる変形例によれば、電子機器群の動作確認に伴う待機時間のみならず、エンジン2始動後の暖気運転に伴う待機時間も短縮することが可能である。
【0100】
また、上記各実施形態では、エンジン2の始動に先立って通電が開始される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、運転席の乗降時の安全性を確保すべく、通電を開始すると共に運転室に設置された照明を点灯させるようにしてもよい。なお、照明を点灯するタイミングは、通電開始と同時でもよく、通電開始から一定時間経過後でもよい。
【0101】
また、上記第4実施形態では、開放操作が検出されると(S41:YES)、上述した通電指示が受け付けられたと判定し、通電を開始する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、運転室のドアが開いた状態の場合はドア開放を通電指示として検出できないため、ドアが開いている場合に限り、所定範囲で電子キーが検出されたことを通電指示として検出するようにしてもよい。
【0102】
また、上記第5実施形態では、ステップS12において通電開始後、直ぐにステップS13の判定処理に進む場合を例示したが、これに限定されない。例えば、
図11に示されるように、ステップS52に進み、再度、電子キーが所定範囲で検出されたか否かを判定し、電子キーが検出された場合に(S52:YES)、ステップS13に進むようにしてもよい。また、ステップS52において電子キーが所定範囲で検出されない場合は(S52:NO)、電子キーを所持する作業者が油圧ショベル1から離れたと判断し、ステップS16に進み、電子機器群への通電が停止されるようにしてもよい。
【0103】
かかる変形例によれば、電子キーを所持する作業者が油圧ショベル1から離れ、エンジン2を始動する意思が無い場合には、電子機器群への通電を速やかに停止し、バッテリ4の電力消費を抑制することが可能である。
【0104】
また、上記第5実施形態では、所定範囲で電子キーが検出された場合に上述した通電指示が受け付けられたと判定される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、所定範囲で電子キーに対して特定の操作(ドアの開錠指示操作等)が行われた場合に上述した通電指示が受け付けられたと判定されるようにしてもよい。
【0105】
かかる変形例によれば、電子キーに対する特定の操作という作業者の具体的操作が通電指示として検出されるため、エンジン2を始動させる可能性がより高い場合に通電を開始することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように本発明にかかる建設機械は、エンジンの始動が可能になるまでの待機時間が長い油圧ショベル等に適している。
【符号の説明】
【0107】
1 油圧ショベル、2 エンジン、3 プッシュスタートキー、4 バッテリ、
5 操作パネル、6 コントローラ、61 エンジン制御部、62 バッテリ制御部、
63 開錠検出部、64 ドア開閉検出部、65 計時部、66 施錠制御部、
67 通知制御部、68 電子キー検出部、AR1 所定範囲、AR2 所定範囲、
T1 所定時間、T2 所定時間、T3 所定時間、T4 所定時間