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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20230124BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20230124BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230124BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20230124BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230124BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L101/02
C08K3/36
C08K5/548
C08K3/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019071293
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020169264
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼村 健二
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/158237(WO,A1)
【文献】特開2016-003254(JP,A)
【文献】特開2016-003318(JP,A)
【文献】特開2019-034992(JP,A)
【文献】特表2013-544935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムを60質量%以上含むゴム成分、又は、ゴム成分中の総スチレン量が20質量%以上のゴム成分と、
シリカをゴム成分100質量部に対して100質量部以上と、
メルカプトシランと、
軟化点が30℃以上のレジンをゴム成分100質量部に対して5~60質量部と、
液体可塑剤をゴム成分100質量部に対して10~55質量部とを含み、
可塑剤の合計含有量がゴム成分100質量部に対して30~100質量部であるタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
平均粒子径が20nm以下及び/又は窒素吸着比表面積が125m/g以上のカーボンブラックを含む請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
シリカの窒素吸着比表面積が200m/g以上である請求項1又は2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
スチレン量が10質量%以下のスチレンブタジエンゴムを含む請求項1~3のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
ブタジエンゴム及びイソプレン系ゴムを含む請求項1~4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
メルカプトシランが、下記式(I)で表される化合物である請求項1~5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【化1】
(式中、R101~R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルコキシ基、又は-O-(R111-O)-R112(b個のR111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。b個のR111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、又は炭素数7~30のアラルキル基を表す。bは1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R101~R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタイヤには、種々の性能が求められているが、安全性の観点から、グリップ性能が重要視されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能を改善するという点では改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-214377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能が改善されたゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スチレンブタジエンゴムを60質量%以上含むゴム成分、又は、ゴム成分中の総スチレン量が20質量%以上のゴム成分と、
シリカをゴム成分100質量部に対して100質量部以上と、
メルカプトシランと、
軟化点が30℃以上のレジンをゴム成分100質量部に対して5~60質量部と、
液体可塑剤をゴム成分100質量部に対して10~55質量部とを含み、
可塑剤の合計含有量がゴム成分100質量部に対して30~100質量部であるタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0006】
上記ゴム組成物は、平均粒子径が20nm以下及び/又は窒素吸着比表面積が125m/g以上のカーボンブラックを含むことが好ましい。
【0007】
上記ゴム組成物は、シリカの窒素吸着比表面積が200m/g以上であることが好ましい。
【0008】
上記ゴム組成物は、スチレン量が10質量%以下のスチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0009】
上記ゴム組成物は、ブタジエンゴム及びイソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
【0010】
上記ゴム組成物は、メルカプトシランが、下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
(式中、R101~R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルコキシ基、又は-O-(R111-O)-R112(b個のR111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。b個のR111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、又は炭素数7~30のアラルキル基を表す。bは1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R101~R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【0011】
本発明はまた、ゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スチレンブタジエンゴムを60質量%以上含むゴム成分、又は、ゴム成分中の総スチレン量が20質量%以上のゴム成分と、シリカをゴム成分100質量部に対して100質量部以上と、メルカプトシランと、軟化点が30℃以上のレジンをゴム成分100質量部に対して5~60質量部と、液体可塑剤をゴム成分100質量部に対して10~55質量部とを含み、可塑剤の合計含有量がゴム成分100質量部に対して30~100質量部であるタイヤトレッド用ゴム組成物であるので、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、
スチレンブタジエンゴムを60質量%以上含むゴム成分、又は、ゴム成分中の総スチレン量が20質量%以上のゴム成分と、
シリカをゴム成分100質量部に対して100質量部以上と、
メルカプトシランと、
軟化点が30℃以上のレジンをゴム成分100質量部に対して5~60質量部と、
液体可塑剤をゴム成分100質量部に対して10~55質量部とを含み、
可塑剤の合計含有量がゴム成分100質量部に対して30~100質量部である。これにより、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能が改善される。
【0014】
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
ゴムにフィラーを多量に(望ましくは100質量部以上)配合することにより、ゴムのtanδを上昇させることが可能となり、かつそのフィラーがシリカであるとより一層の低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、操縦安定性の改善が期待される。ここで、シリカは単独で配合するだけでは凝集してしまい、ゴム組成物中で分散しない。そのため、シリカと共にシランカップリング剤も添加する必要がある。
そして、シリカを多量に(100質量部以上)配合する際、タイヤ用ゴム組成物において汎用されているスルフィド系シランカップリング剤を使用すると、その反応性の低さから十分なシリカの分散を確保できない。しかし、反応性の高いメルカプトシランと組み合わせることで十分なシリカの分散を確保でき、結果として高い補強性を確保することができ、良好な操縦安定性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られる。この配合系はフィラーを多く含み、温度依存性の低い配合となるため、特に高速走行時にも十分な操縦安定性が確保できる。
更に、多量のシリカ、メルカプトシランと共に、特定量の特定軟化点のレジン及び特定量の液体可塑剤が共存することにより、混練り時に一部溶けたレジン及び液体可塑剤が潤滑油の役割を果たし、シリカの分散性が更に良化すると共に、エネルギーロスも得られ、上記効果がより好適に得られる。更に、可塑剤の合計含有量を特定量とすることにより、上記効果が更に好適に得られる。
また、スチレン量が多いゴム成分を使用することにより、スチレンの立体障害によるエネルギーロス効果が得られ、より一層のドライグリップ性能、ウェットグリップ性能の改善が期待される。
本発明では、スチレン量が多いゴム成分と共に、多量のシリカ、メルカプトシランを併用し、特定量の特定軟化点のレジン及び特定量の液体可塑剤を共存させ、可塑剤の合計含有量を特定量とすることにより、これらの成分が相乗的に作用し、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能が改善される。
特に、スチレン量が多いゴム成分と共に、特定量の特定軟化点のレジン及び特定量の液体可塑剤を共存させ、可塑剤の合計含有量が特定量であるゴム組成物において、多量のシリカと、メルカプトシランとを併用することにより、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能を相乗的に改善でき、良好な操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能が得られる。
なお、本明細書では、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能をまとめてグリップ性能とも記載する。
【0015】
上記ゴム組成物において、使用できるゴム成分として、例えば、ジエン系ゴムが挙げられる。
ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、上記以外のゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、SBRが好ましい。
また、SBRと共に、BRを併用することが好ましい。これにより、グリップ性能と耐摩耗性をより好適に両立することができる。
更に、SBRと共に、BR、イソプレン系ゴムを併用することが好ましい。これにより、グリップ性能(特に、ウェットグリップ性能)と耐摩耗性を(更には操縦安定性も)更に好適に両立することができる。これは、イソプレン系ゴムはシリカを取り込まないため、粘弾性特性(tanδ等)に支配的なSBR/BR相のシリカ濃度が向上し、局所的により高発熱/高強度なSBR相を形成するためと推測される。
【0016】
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が20万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
なお、本明細書において、Mw、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0017】
ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0018】
ゴム成分は、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0019】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0020】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは25質量%以上、より最も好ましくは30質量%以上、更に最も好ましくは35質量%以上である。また、該スチレン量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン量は、H-NMR測定により算出される。
【0022】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0023】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。なかでも、変性SBRが好ましい。
【0024】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定できる。
【0025】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0026】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0027】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0028】
上記ゴム組成物は、SBRを60質量%以上含むゴム成分、又は、ゴム成分中の総スチレン量が20質量%以上のゴム成分を含有する。すなわち、上記ゴム組成物は、スチレンが比較的多量に存在するゴム成分を含有すればよい。例えば、SBRを60質量%以上含有することとしてもよく、ゴム成分中の総スチレン量を20質量%以上としてもよい。これにより、上記効果(特に、操縦安定性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能の改善効果)が得られる。
【0029】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよいが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0030】
SBRの一部又は全部として(好ましくは一部として)、スチレン量が10質量%以下のSBRを含むことも好ましい。これにより、操縦安定性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性をより好適に改善できる。該SBRのスチレン量の下限はとくに限定されないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。
ゴム成分100質量%中の「スチレン量が10質量%以下のSBR」の含有量は、好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0031】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0032】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0033】
ゴム成分中の総スチレン量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0034】
上記ゴム組成物は、充填剤(補強性充填剤)として、シリカを含有する。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0035】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0036】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは150m/g以上、更に好ましくは200m/g以上である。また、該NSAは好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
SAが200m/g以上のシリカを配合することにより、上記効果(特に、操縦安定性、ドライグリップ性能、耐摩耗性の改善効果)がより好適に得られる。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
【0037】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、100質量部以上、好ましくは105質量部以上である。これにより、上記効果(特に、操縦安定性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能の改善効果)が得られる。該含有量は、好ましくは135質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは125質量部以下、特に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0038】
上記ゴム組成物は、メルカプトシランを含有する。これにより、上記効果(特に、低燃費性、耐摩耗性の改善効果)が得られる。
本明細書において、メルカプトシランとは、メルカプト基を有するケイ素化合物を意味する。
メルカプトシランとしては、特に限定されず、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、
2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルジメチルメトキシシラン、2-メルカプトエチルジメチルエトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤等があげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
メルカプトシランとしては、下記式(I)で表される化合物を用いることが好ましい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
【化2】
(式中、R101~R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルコキシ基、又は-O-(R111-O)-R112(b個のR111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30の2価の炭化水素基を表す。b個のR111はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、又は炭素数7~30のアラルキル基を表す。bは1~30の整数を表す。)で表される基を表す。R101~R103はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R104は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~6のアルキレン基を表す。)
【0040】
101~R103は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12(好ましくは炭素数1~5)のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数1~12(好ましくは炭素数1~5)のアルコキシ基、又は-O-(R111-O)-R112で表される基を表す。効果が良好に得られるという点から、R101~R103は、少なくとも1つが-O-(R111-O)-R112で表される基であることが好ましく、2つが-O-(R111-O)-R112で表される基であり、かつ、1つが分岐若しくは非分岐の炭素数1~12のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0041】
101~R103の-O-(R111-O)-R112において、R111は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~3)の2価の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等が挙げられる。なかでも、アルキレン基が好ましい。
bは1~30(好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは6以下)の整数を表す。
112は、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30(好ましくは炭素数1~15、より好ましくは炭素数1~3)の1価の炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニレン基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。なかでも、アルキル基が好ましい。
【0042】
-O-(R111-O)-R112で表される基の具体例としては、例えば、-O-(C-O)-C1123、-O-(C-O)-C1225、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1429、-O-(C-O)-C1531、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1327等が挙げられる。なかでも、-O-(C-O)-C1123、-O-(C-O)-C1327、-O-(C-O)-C1531、-O-(C-O)-C1327が好ましい。
【0043】
104の分岐若しくは非分岐の炭素数1~6(好ましくは炭素数1~5)のアルキレン基については、R111と同様である。
【0044】
式(I)で表されるメルカプトシラン(メルカプト系シランカップリング剤)としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式で表される化合物(エボニック社製のSi363)等が挙げられ、下記式で表される化合物を好適に使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化3】
【0045】
メルカプトシランの含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
上記ゴム組成物は、メルカプトシランと共に、更にメルカプトシラン以外のシランカップリング剤を含有してもよい。
メルカプトシラン以外のシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系等があげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
メルカプトシラン、メルカプトシラン以外のシランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0048】
上記ゴム組成物は、充填剤(補強性充填剤)として、カーボンブラックを含有することが好ましい。これにより、効果がより好適に得られる。
【0049】
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは110m/g以上、更に好ましくは125m/g以上、特に好ましくは135m/g以上である。また、上記NSAは、好ましくは200m/g以下、より好ましくは170m/g以下、更に好ましくは155m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0051】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは100ml/100g以上である。また、該DBPは、好ましくは200ml/100g以下、より好ましくは135ml/100g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS-K6217-4:2001に準拠して測定できる。
【0052】
カーボンブラックの平均粒子径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは23nm以下、更に好ましくは20nm以下であり、下限は特に限定されないが、好ましくは8nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは12nm以上、特に好ましくは14nm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの平均粒子径は、数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0053】
平均粒子径が20nm以下及び/又は窒素吸着比表面積が125m/g以上のカーボンブラックを含有することが好ましく、平均粒子径が20nm以下及び窒素吸着比表面積が125m/g以上のカーボンブラックを含有することがより好ましい。これにより、上記効果(特に、操縦安定性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の改善効果)がより好適に得られる。
【0054】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0055】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0056】
上記ゴム組成物は、可塑剤を含有する。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、液体可塑剤(25℃で液体(液状)の可塑剤)及び固体可塑剤(25℃で固体の可塑剤)を含む概念である。具体的には、ゴム組成物からアセトンを用いて抽出されるような成分である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
可塑剤(液体可塑剤及び固体可塑剤の合計含有量)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上、好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上、更に好ましくは55質量部以上であり、100質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは75質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0058】
液体可塑剤としては、オイル、液状ポリマー(ジエン系、オレフィン系、エステル系等)、液状樹脂、テレビン油等の天然物由来の精油、エステル系可塑剤、等が挙げられる。固形可塑剤としては、25℃で固形(固体)のタイヤ業界で通常用いられるような固体樹脂類、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、液体可塑剤としては、オイル、液状ポリマー、及び液状樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、オイルがより好ましく、プロセスオイルが更に好ましい。
【0059】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
【0060】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0061】
液状樹脂としては、例えば、25℃で液状のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C5C9系樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0062】
上記液状樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0063】
液状ジエン系ポリマーとしては、例えば、25℃で液状の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
【0064】
液状ジエン系ポリマーとしては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0065】
液体可塑剤(好ましくはオイル)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、55質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0066】
固体可塑剤としては、タイヤ配合物として、通常用いられる固体樹脂類(レジン)を使用できる。具体的には、テルペン系樹脂、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のレジンが挙げられる。これらは、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。なかでも、スチレン系樹脂が好ましい。
【0067】
レジンとしては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0068】
レジンの軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下、特に好ましくは120℃以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、レジン(樹脂)の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0069】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
【0070】
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
【0071】
なかでも、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
【0072】
固体可塑剤(好ましくはレジン)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、60質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果(特に、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能の改善効果)がより好適に得られる傾向がある。
【0073】
上記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0075】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0076】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤及びチウラム系加硫促進剤の併用がより好ましい。
【0077】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
【0078】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0079】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0080】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0081】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0082】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0083】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、p-フェニレンジアミン系老化防止剤がより好ましい。
【0084】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0085】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0086】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0088】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0089】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物)、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタン等を例示できる。これら各成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは200質量部以下である。
【0090】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0091】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0092】
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適に用いられる。
【0093】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド))の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0094】
上記タイヤとしては、特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤ、エアレスタイヤ等が挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。
【0095】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例
【0096】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0097】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:TRINSEO社製のSPRINTAN SLR6430(油展品〔ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有〕、スチレン量:40質量%、ビニル量:18モル%、Mw:146万)
SBR2:下記製造例1で得られたSBR2(非油展品、スチレン量:28質量%、ビニル量:49モル%、Mw:60万)
SBR3:下記製造例2で得られたSBR3(非油展品、スチレン量:10質量%、ビニル量:48モル%、Mw:30万)
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含量:98質量%)
NR:TSR20
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のN134(NSA:148m/g、DBP:123ml/100g、平均粒子径:18nm)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のN220(NSA:111m/g、DBP:115ml/100g、平均粒子径:22nm)
シリカ1:エボニック社製のVN3(NSA:175m/g)
シリカ2:SOLVAY POLAND社製のZEOSIL PREMIUM 200MP(NSA:213m/g)
シランカップリング剤1:エボニック社製のSi363
シランカップリング剤2:エボニック社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:H&R社製のvivatec 500(アロマ系プロセスオイル(TDAEオイル))
レジン:アリゾナケミカル社製Sylvatraxx4401(スチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点:85℃)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属工業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤TBzTD:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
【0098】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性スチレンブタジエンゴム(SBR2)を得た。
【0099】
(製造例2)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシランを変性剤として加えて15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性スチレンブタジエンゴム(SBR3)を得た。
【0100】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で10分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:215/55R16、乗用車用タイヤ)を得た。
【0101】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
<硬度>
得られた加硫ゴム組成物を用いてゴムの硬度(Hs)をJIS K6253に準拠し、25℃の温度で硬度計を用いて測定した(ショア-A測定)。数値が大きいほど硬く、トレッド剛性が高いことを示す。
【0103】
<粘弾性試験>
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、周波数10Hz、初期歪10%および動歪2%の条件下で、上記加硫ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定した。測定温度は0℃、30℃、又は50℃とした。
【0104】
<操縦安定性>
路面温度が40℃のドライアスファルト路面のテストコースにて、試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着して時速200km/hで実車走行した。その際、テストドライバーが実施例1の結果を100として、微小操舵角変更時のハンドル応答性、急なレーンチェンジの応答性を総合的に評価した。なお、数値が大きいほど操縦安定性(特に、高速走行時の操縦安定性)に優れていることを示す。また、指数が85以上であれば良好であると判断した。
【0105】
<低燃費性>
23℃の条件下で、試験用タイヤをドラム上、荷重4.9N、タイヤの内圧2.00kPa、速度80km/hの条件で走行させて転がり抵抗を測定した。実施例1の転がり抵抗を100とし、各配合について指数化した。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性が良好である事を示す。なお、指数が60以上であれば良好であると判断した。
【0106】
<ドライグリップ性能>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、下記式にて求めた指数によって評価した。指数値が大きいほどドライグリップ性能が良好である事を示す。なお、指数が98以上であれば良好であると判断した。
(ドライグリップ性能指数)=(実施例1の停止距離)/(各配合の停止距離)×100
【0107】
<ウェットグリップ性能>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、下記式にて求めた指数によって評価した。指数値が大きいほどウェットグリップ性能が良好である事を示す。なお、指数が98以上であれば良好であると判断した。
(ウェットグリップ性能指数)=(実施例1の停止距離)/(各配合の停止距離)×100
【0108】
<耐摩耗性>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、走行距離8000km後のトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、実施例1を100として指数表示した(耐摩耗性指数)。指数が大きいほど、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離が長く、耐摩耗性に優れることを示す。なお、指数が55以上であれば良好であると判断した。
【0109】
【表1】
【0110】
表1より、スチレンブタジエンゴムを60質量%以上含むゴム成分、又は、ゴム成分中の総スチレン量が20質量%以上のゴム成分と、シリカをゴム成分100質量部に対して100質量部以上と、メルカプトシランと、軟化点が30℃以上のレジンをゴム成分100質量部に対して5~60質量部と、液体可塑剤をゴム成分100質量部に対して10~55質量部とを含み、可塑剤の合計含有量がゴム成分100質量部に対して30~100質量部である実施例は、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能が改善された。
【0111】
比較例2、3、8、実施例1の対比により、多量のシリカと、メルカプトシランとを併用することにより、操縦安定性、低燃費性、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の総合性能を相乗的に改善できることが分かった。