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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】フォークリフトの移載装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019118450
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021004113
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-09-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三田 達也
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058679(JP,A)
【文献】特開2016-204067(JP,A)
【文献】特開2001-301986(JP,A)
【文献】特開2017-019595(JP,A)
【文献】実開昭60-033600(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0090283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークに載置された荷を荷台の積載面に移載するフォークリフトの移載装置であって、
前記フォークリフトの直進方向にレーザーを照射可能であり、前記レーザーが当たった箇所までの距離を測定するレーザー距離計と、
前記荷台よりも下方の位置から前記荷台よりも上方の位置に亘って前記レーザーを照射させたときの前記レーザー距離計の測定値を取得する取得部と、
前記取得部により取得した前記測定値が、予め定められた第1規定値以上の値、前記第1規定値未満の値、前記第1規定値以上の値である第2規定値以上の値の順に変化している場合、前記第1規定値未満の値から前記第2規定値以上の値に切り替わる高さに前記積載面が存在すると判定する積載面判定部と、
前記フォーク及び前記フォークに載置された前記荷を前記積載面よりも高い位置に上昇させてから停止させる上昇制御部と、を備え
前記レーザー距離計は、一方向にレーザーを照射する一次元のレーザー距離計であり、
前記レーザー距離計は、前記フォークとともに昇降するように前記フォークリフトに取り付けられているフォークリフトの移載装置。
【請求項2】
前記上昇制御部による前記フォーク及び前記荷の上昇が停止された後に、前記フォークを前記積載面に向かい合う位置にまで移動させ、前記フォークを下降させることで前記荷を前記積載面に移載する移載制御部を備える請求項に記載のフォークリフトの移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトの移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷台へ荷の積載を行うフォークリフトは、フォークに載置した荷を荷台まで搬送し、荷台への移載作業を行う。移載作業は、荷台の積載面より高い位置にフォークを上昇させた後に、フォークに載置された荷を積載面に移載する作業である。移載作業を行う際には、積載面よりも高い位置にフォークを上昇させる必要がある。積載面の高さが一定ではない荷台に荷を移載する場合、フォークの上昇量が不足したり、フォークの上昇量が過剰になる場合がある。特許文献1に記載のフォークリフトは、光電センサと、フォークの昇降を制御する制御装置と、を備える。荷台となる棚には予め反射板が配置されている。光電センサにより反射板が検出されると、制御装置は、フォークを規定量上昇させる。これにより、積載面の高さが一定ではない場合であっても、積載面よりも高い位置にフォークを上昇させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-2796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、フォークを荷台の積載面よりも高い位置に上昇させるために、荷台に反射板を設ける必要がある。換言すれば、反射板が設けられていない荷台には、荷を移載することができず、荷を移載できるか否かは荷台の構成に依存しているといえる。
【0005】
本発明の目的は、積載面の高さが不定である荷台への荷の移載を行うことができるフォークリフトの移載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するフォークリフトの移載装置は、フォークに載置された荷を荷台の積載面に移載するフォークリフトの移載装置であって、前記フォークリフトの直進方向にレーザーを照射可能であり、前記レーザーが当たった箇所までの距離を測定するレーザー距離計と、前記荷台よりも下方の位置から前記荷台よりも上方の位置に亘って前記レーザーを照射させたときの前記レーザー距離計の測定値を取得する取得部と、前記取得部により取得した前記測定値が、予め定められた第1規定値以上の値、前記第1規定値未満の値、前記第1規定値以上の値である第2規定値以上の値の順に変化している場合、前記第1規定値未満の値から前記第2規定値以上の値に切り替わる高さに前記積載面が存在すると判定する積載面判定部と、前記フォーク及び前記フォークに載置された前記荷を前記積載面よりも高い位置に上昇させてから停止させる上昇制御部と、を備える。
【0007】
荷台よりも下方の位置にレーザーを照射した場合のレーザー距離計の測定値は、荷台にレーザーを照射した場合のレーザー距離計の測定値よりも大きい。荷台よりも上方の位置にレーザーを照射した場合のレーザー距離計の測定値は、荷台にレーザーを照射した場合のレーザー距離計の測定値よりも大きい。従って、荷台よりも下方の位置から荷台よりも上方の位置に亘ってレーザー距離計にレーザーを照射させると、レーザー距離計の測定値は、レーザーが荷台に照射されるようになると小さくなり、レーザーが荷台よりも上方に照射されるようになると大きくなる。レーザーが荷台よりも上方に照射されるようになる高さは、荷台の積載面の高さとみなすことができる。従って、第1規定値及び第2規定値を設定することで、積載面判定部はレーザー距離計の測定値の変化から積載面の高さを把握することができる。レーザー距離計の測定値から積載面の高さを検出できるため、積載面の高さが不定である荷台への荷の移載を行うことができる。
【0008】
上記フォークリフトの移載装置について、前記レーザー距離計は、一方向にレーザーを照射するものであり、前記レーザー距離計は、前記フォークとともに昇降するように前記フォークリフトに取り付けられていてもよい。
【0009】
フォークとともに昇降するようにレーザー距離計をフォークリフトに取り付けることで、フォークを上昇させる過程で、荷台に向けて荷台よりも下方の位置から荷台よりも上方の位置に亘ってレーザーを照射させることができる。このため、レーザー距離計として、一方向にレーザーを照射するものを用いて積載面の高さを検出することができる。
【0010】
上記フォークリフトの移載装置について、前記上昇制御部による前記フォーク及び前記荷の上昇が停止された後に、前記フォークを前記積載面に向かい合う位置にまで移動させ、前記フォークを下降させることで前記荷を前記積載面に移載する移載制御部を備えていてもよい。
【0011】
移載制御部により積載面に荷を移載することで、円滑に荷の移載を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、積載面の高さが不定である荷台への荷の移載を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】フォークリフトを示す概略側面図。
図2】バックレストに取り付けられた距離計の斜視図。
図3】フォークリフトの概略構成図。
図4】フォークリフトが用いられる作業場の模式図。
図5】コンテナの断面図。
図6】コンテナの正面図。
図7】移載作業を行う際に制御装置が行う処理を示すフローチャート。
図8】距離計の高さと、距離計の測定値との関係を説明するための図。
図9】距離計の高さと、距離計の測定値との関係を説明するための図。
図10】距離計から照射されたレーザーの照射角度と、距離計の測定値との関係を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、フォークリフトの移載装置の一実施形態について説明する。以下の説明において、上下とは鉛直方向での上下を示す。
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11と、車体11の前下部に配置された駆動輪12と、車体11の後下部に配置された操舵輪13と、を備える。フォークリフト10は、車体11の前方に荷役装置14を備える。荷役装置14は、車体11の前部に立設されたマスト15と、バックレスト18と、バックレスト18に固定された一対のフォーク19と、リフトシリンダ20と、ティルトシリンダ21と、を備える。
【0015】
マスト15は、車体11に対して前後に傾動可能に支持されたアウタマスト16と、アウタマスト16に対して昇降可能なインナマスト17と、を備える。バックレスト18は、インナマスト17に固定されている。バックレスト18及びフォーク19は、インナマスト17とともに昇降する。リフトシリンダ20は、インナマスト17を昇降動作させる。ティルトシリンダ21は、マスト15を傾動動作させる。リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21は、油圧シリンダである。
【0016】
フォーク19には、荷が載置される。本実施形態では、荷としてパレットPがフォーク19に載置される。パレットPは、搬送物を収容する四角箱状の収容部Sと、収容部Sの四隅に設けられた脚部Lと、を備える。本実施形態のパレットPは、メッシュパレットである。フォーク19は、脚部L同士の間に差し込まれ、収容部Sの底を支持する。
【0017】
図1及び図2に示すように、フォークリフト10は、距離計30と、取付部材31と、を備える。距離計30は、レーザーを照射可能であり、レーザーが当たった箇所からの反射光を受光することでレーザーが当たった箇所までの距離を測定するレーザー距離計である。距離計30は、レーザーを照射したにも関わらず、反射光を受光できない場合、無限遠点を測定値とする。無限遠点とは、距離計30の測定可能距離内にはレーザーが当たる箇所がないことを意味する。本実施形態の距離計30は、一方向への距離を測定する一次元のレーザー距離計である。
【0018】
取付部材31は、距離計30をフォークリフト10に取り付けるための部材である。取付部材31は、バックレスト18に取り付けられている。取付部材31は、バックレスト18よりも下方に延びている。距離計30は、水平方向のうちフォークリフト10の直進方向にレーザーが照射されるように取付部材31に取り付けられている。距離計30は、レーザーの照射方向が鉛直方向に傾かないように配置されているといえる。なお、上記した水平方向とは、距離計30の取付精度や、取付部材31の公差を原因とする若干の誤差を許容するものである。即ち、距離計30は、鉛直方向に対して若干傾いた方向にレーザーを照射するように取り付けられていてもよい。
【0019】
距離計30は、照射されたレーザーがフォーク19に載置されたパレットPの下方を通過し、かつ、フォーク19を最下位置に降下させた場合に距離計30の最下部が路面に接触しないように設けられている。具体的にいえば、距離計30においてレーザーを照射する位置がフォーク19の上面と下面との間に位置し、距離計30の最下部がフォーク19の下面よりも上方に位置するように距離計30は設けられている。距離計30の高さと、フォーク19の高さは、同一とみなすことができる。距離計30は、フォーク19とともに昇降する。
【0020】
図3に示すように、フォークリフト10は、駆動機構41と、油圧機構42と、制御装置43と、揚高センサ46と、環境センサ47と、を備える。駆動機構41は、フォークリフト10を走行動作させるための部材であり、駆動輪12を駆動させるための走行用モータや、操舵輪13を操舵させるための操舵機構を含む。油圧機構42は、リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21への作動油の給排を制御するための部材であり、ポンプを駆動させるための荷役モータや、コントロールバルブを含む。揚高センサ46は、フォーク19の高さを検出する。揚高センサ46は、例えば、リールセンサである。
【0021】
制御装置43は、処理部44及び記憶部45を備える。記憶部45には、フォークリフト10を制御するための種々のプログラムが記憶されている。制御装置43は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路:ASICを備えていてもよい。制御装置43は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0022】
制御装置43は、記憶部45に記憶されたプログラムに従い、駆動機構41及び油圧機構42を制御することで、フォークリフト10を動作させる。本実施形態のフォークリフト10は、搭乗者による操作が行われることなく、制御装置43による制御によって自動で動作するフォークリフトである。
【0023】
環境センサ47は、フォークリフト10の後方に位置する物体と、フォークリフト10との相対位置を制御装置43に認識させることができるセンサである。環境センサ47としては、例えば、3次元の測域センサや、ステレオカメラを用いることができる。
【0024】
図4に示すように、フォークリフト10は、工場、港湾などのパレットPを搬送する必要のある作業場で使用される。作業場には、パレットPが置かれる第1位置A1と、トラックTの停車位置である第2位置A2と、移載作業が開始される第3位置A3と、が設定されている。
【0025】
フォークリフト10は、第1位置A1に置かれたパレットPをトラックTまで搬送し、トラックTのコンテナCにパレットPを移載する。コンテナCにパレットPを移載する場合、フォークリフト10は、第1位置A1でフォーク19にパレットPを載置した後に、第3位置A3に移動する。第3位置A3に移動した後に、フォークリフト10は移載作業を開始する。
【0026】
制御装置43の記憶部45には、地図情報が記憶されている。地図情報とは、環境地図と、第1位置A1の座標と、第2位置A2の座標と、第3位置A3の座標と、を示す情報である。環境地図は、フォークリフト10の用いられる環境の形状、広さなど、フォークリフト10の周辺環境の物理的構造に関する情報である。第1位置A1の座標、第2位置A2の座標及び第3位置A3の座標は、環境地図内に設定されている。
【0027】
環境地図は、フォークリフト10が用いられる周辺環境を予め把握できていれば、予め記憶部45に記憶されていてもよい。環境地図を予め記憶部45に記憶する場合、建築物の壁、柱など位置の変化しにくい物の座標を環境地図として記憶する。環境地図は、SLAM:Simultaneous Localization and Mappingによるマッピングにより作成されてもよい。マッピングは、例えば、環境センサ47によって得られた座標から局所地図を作成し、この局所地図を自己位置に応じて組み合わせることによって行われる。
【0028】
制御装置43は、環境地図上でのフォークリフト10の位置を推定する自己位置推定を行いながら駆動機構41を制御することで、第3位置A3にフォークリフト10を移動させることが可能である。自己位置推定は、例えば、走行用モータの回転数を用いてフォークリフト10の自己移動量を推定するオドメトリと、環境センサ47によって検出されたランドマークと環境地図とのマッチング結果と、を統合することで行われる。即ち、制御装置43は、オドメトリにより得られた自己位置をランドマークとの相対位置で補正することで自己位置を推定する確率的自己位置推定を行う。
【0029】
図5及び図6に示すように、コンテナCは、中空状であり、内部がパレットPを収容する収容空間SAになっている。コンテナCは、底部BWと、天部CWと、側壁SWと、を備える。コンテナCは、側方に開口する開口部Oを備える。この開口部Oは、コンテナCにパレットPを積む際の積込口となる。開口部Oは、図示しない扉によって開口状態と閉塞状態が切り替えられる。フォークリフト10によってパレットPを移載する際には、開口部Oは開口状態とされる。トラックTは、開口部Oが第3位置A3を向く状態で、第2位置A2に停車される。コンテナCにパレットPを移載する際には、パレットPの搬送を繰り返し行い、収容空間SAの空き領域に、順次、パレットPを移載していく。例えば、図6に仮想線で示すように、フォークリフト10は、積載済みのパレットPに並んで、更にパレットPを移載する。パレットPは、底部BWの上面である積載面Mに置かれる。本実施形態の荷台は、コンテナCの底部BWである。
【0030】
以下、フォークリフト10が移載作業を行う際に制御装置43によって行われる処理を説明する。制御装置43は、移載作業が行われる間、距離計30の測定値を取得する。これにより、制御装置43は、取得部として機能する。
【0031】
図7に示すように、制御装置43は、ステップS1において、油圧機構42を制御することでフォーク19の上昇を開始させる。フォーク19の上昇を開始させる初期位置は、底部BWの下面よりも低い位置である。本実施形態のように、トラックTのコンテナCがパレットPを移載する対象である場合、トラックTの種類、タイヤの空気圧等によって積載面Mの高さは異なる。これらを加味した上で、積載面Mが最も低くなる状態を予測し、積載面Mが最も低くなると推定された状態での積載面Mの高さから、所定値を減算した値を初期位置とすることができる。所定値としては、例えば、底部BWの厚みに補正値を加えた値である。補正値は、コンテナCの種類による底部BWの厚みの差、トラックTの種類やタイヤの空気圧等による底部BWの高さの差等を加味して設定される。即ち、所定値は、種々の条件を加味した上で、フォーク19の上昇を開始させる初期位置が底部BWの下面よりも低い位置になるように設定される。制御装置43は、第1位置A1でパレットPをフォーク19に載置してから移載作業を開始するまでの間に、初期位置までフォーク19を上昇させる。これにより、移載作業を開始する際には、初期位置からフォーク19を上昇させることが可能になる。
【0032】
ステップS2において、制御装置43は、距離計30による測定値が第1規定値以上の値から第1規定値未満の値になるか否かを判定する。制御装置43は、ステップS2の判定結果が肯定になるまでステップS2の処理を繰り返し行う。ステップS2の判定結果が肯定になると、制御装置43は、ステップS3の処理を行う。
【0033】
図8及び図9に示すように、コンテナCに向けてレーザーを照射した状態でフォーク19を上昇させていき、底部BWより下方にレーザーが照射される高さH1から、底部BWにレーザーが照射される高さH2にフォーク19の高さが切り替わると、距離計30によって測定される距離が短くなる。これは、トラックTにおいては、コンテナCの下方に空間SSが存在し、この空間SSにレーザーが照射されるためである。空間SSにレーザーが照射されることで、距離計30により測定される距離は、例えば、無限遠点になる。フォーク19の上昇により底部BWにレーザーが照射されるようになると、底部BWの開口部O側の縁Eにレーザーが照射されることで、コンテナCの下方の空間SSにレーザーが照射されているよりも距離計30により測定される距離が短くなる。第1規定値としては、コンテナCよりも下方にレーザーが照射されている場合の測定値と、底部BWの縁Eにレーザーが照射されている場合の測定値とを判別できる値に設定される。例えば、第1規定値は、第3位置A3にフォークリフト10が位置し、第2位置A2にトラックTが位置している状態での距離計30から底部BWの縁Eまでの距離を予測し、予測される距離よりもマージン分だけ長い値に設定される。なお、コンテナCの下方に、トラックTの一部が存在している場合もあるが、この場合であっても、底部BWの縁Eにレーザーが照射されている場合に比べて底部BWよりも下方にレーザーが照射されている場合のほうが測定値は小さくなる。なお、距離計30の測定値が無限遠点の場合、距離計30の測定可能距離内にレーザーを反射する物体が存在しないことを意味する。従って、距離計30の測定値が無限遠点の状態から無限遠点ではない状態=距離が測定される状態になると、測定値が小さくなったと扱うことができる。
【0034】
図7に示すように、ステップS3において、制御装置43は、距離計30による測定値が第1規定値未満の値から第2規定値以上の値になるか否かを判定する。制御装置43は、ステップS3の判定結果が肯定になるまでステップS3の処理を繰り返し行う。ステップS3の判定結果が肯定になると、制御装置43は、ステップS4の処理を行う。
【0035】
図8及び図9に示すように、コンテナCの開口部Oに向けてレーザーを照射した状態でフォーク19を上昇させていき、底部BWにレーザーが照射される高さH2から、底部BWよりも上方にレーザーが照射される高さH3にフォーク19の高さが切り替わると、距離計30によって測定される距離が長くなる。これは、コンテナCの収容空間SAにレーザーが照射されるためである。底部BWの縁Eに照射されていたレーザーが収容空間SAに照射されるようになる高さは、積載面Mの高さとみなすことができる。従って、距離計30によって測定される測定値が、第1規定値未満の値から、第2規定値以上の値に変化することを検出することで、積載面Mを検出することができる。ここで、積載面MにパレットPを移載するためには、レーザーの照射方向への収容空間SAの空き領域が、レーザーの照射方向へのパレットPの寸法よりも長い必要がある。このため、第2規定値としては、搬送対象となり得るパレットPの寸法を考慮した上で、パレットPを移載するだけの空き領域が存在していると判定できるような値に設定される。第2規定値としては、第1規定値以上の値に設定される。本実施形態のように、コンテナCの下方に空間SSが存在しているトラックTにパレットPを移載する場合、第1規定値と第2規定値を同一の値とすればよい。一方で、コンテナCの下方にトラックTの一部等、照射されたレーザーが当たる箇所が存在するトラックTにパレットPを移載することを想定する場合、第1規定値を第2規定値よりも小さくしてもよい。即ち、第1規定値と第2規定値との関係は、パレットPを移載する対象となる荷台の構造を想定した上で、荷台の構造に合わせて設定を行えばよい。なお、高さH1,H2,H3は、フォーク19の高さを示すが、距離計30の高さはフォーク19の高さと同一とみなすことができるため、高さH1,H2,H3は距離計30の高さともいえる。なお、距離計30の測定値が無限遠点ではない状態から無限遠点の状態になると、測定値が大きくなったと扱うことができる。
【0036】
ステップS3の判定結果が肯定になると、距離計30の測定値は、下方から上方に向けて、第1規定値以上の値、第1規定値未満の値、第2規定値以上の値の順に変化しているといえる。距離計30の測定値が第1規定値未満の値から第2規定値以上の値に切り替わるのは、底部BWよりも上方にレーザーが照射されるようになる高さであり、積載面Mの高さといえる。制御装置43は、距離計30の測定値が第1規定値未満の値から第2規定値以上の値に切り替わる高さに、積載面Mが存在していると判定する。ステップS2及びステップS3の処理を実行することで、制御装置43は積載面判定部として機能する。
【0037】
ステップS4において、制御装置43は、油圧機構42を制御することで、フォーク19を規定量上昇させてからフォーク19を停止させる。フォーク19は、積載面Mが存在する高さよりも規定量高い位置で停止することになる。規定量としては、フォーク19及びフォーク19に載置されたパレットPの両方が積載面Mよりも高い位置になるように設定されている。規定量は、フォーク19の設置位置と、距離計30が設置位置との高さの差が大きいほど多くなる。ステップS4の処理を行うことで、制御装置43は、上昇制御部として機能する。
【0038】
次に、ステップS5において、制御装置43は、駆動機構41及び油圧機構42を制御することで、フォーク19に載置されたパレットPを積載面Mに移載する。制御装置43は、駆動機構41を制御することで、フォーク19と積載面Mが向かい合う位置までフォークリフト10を前進させる。制御装置43は、油圧機構42を制御することで、フォーク19を下降させて、パレットPを積載面Mに移載する。これにより、フォークリフト10の移載作業は終了となる。ステップS5の処理を実行することで、制御装置43は移載制御部として機能する。なお、積載作業を開始してから、フォーク19の上昇量が予め定められた上限に達するまでにステップS2及びステップS3の判定結果が肯定にならない場合には、移載作業を中断してもよい。
【0039】
上記したように、制御装置43の処理部44が、記憶部45に記憶されたプログラムに従い所定の処理を実行することで、制御装置43は積載面判定部、上昇制御部及び移載制御部として機能する。従って、距離計30及び制御装置43によって、フォークリフトの移載装置60が構成されている。
【0040】
本実施形態の作用について説明する。
底部BWよりも下方の位置から底部BWよりも上方の位置に亘って距離計30にレーザーを照射させると、距離計30の測定値は、レーザーが底部BWに照射されるようになると小さくなり、レーザーが底部BWよりも上方に照射されるようになると大きくなる。第1規定値及び第2規定値を設定することで、距離計30の測定値が上記のように変化したことを制御装置43が検出できるようにしている。これにより、制御装置43は距離計30の測定値の変化から積載面Mの高さを把握することができる。
【0041】
積載面Mの高さは不定の場合がある。本実施形態のように、パレットPの移載を行う移載対象がトラックTの底部BWであれば、トラックTの種類、タイヤの空気圧等で積載面Mの高さには差異が生じ得る。距離計30の測定値の変化から積載面Mの高さを把握することで、積載面Mの高さが不定であったとしても、積載面Mの高さを検出することができる。
【0042】
なお、自己位置推定に用いている環境センサ47をフォークリフト10の前方に向けて、積載面Mの高さの検出に併用することも考えられる。しかしながら、フォークリフト10では、車体11の前方に配置された荷役装置14に荷が載置されるため、環境センサ47をフォークリフト10の前方に向けると、荷の積載状況によっては環境センサ47の検出範囲に荷が入り込む。結果として、フォークリフト10の前方の物体を環境センサ47で検出できなくなるおそれがあり、自己位置推定の精度が低下する。このため、フォークリフト10では、後方の物体を検出するように環境センサ47を取り付けることが好ましく、フォークリフト10の前方に位置する積載面Mの高さを環境センサ47により検出することは困難である。このため、フォークリフト10では、荷の積載面Mを検出するために専用の距離計30を設ける必要がある。
【0043】
本実施形態の効果について説明する。
(1)距離計30の測定値から積載面Mの高さを検出できるため、積載面Mの高さが不定である底部BWへのパレットPの移載を行うことができる。距離計30を用いることで、コンテナCの構成に依存することなく、高さが不定の底部BWにパレットPの移載を行うことができる。
【0044】
(2)フォーク19とともに昇降するように距離計30をフォークリフト10に取り付けている。フォーク19を上昇させる過程で、底部BWに向けて底部BWよりも下方の位置から底部BWよりも上方の位置に亘ってレーザーを照射させることができる。このため、距離計30として、一方向にレーザーを照射するものを用いて積載面Mの高さを検出することができる。上記したように、フォークリフト10では、荷の積載面Mを検出するために専用の距離計30を設ける必要がある。距離計30として、照射角度を変更しながら複数方向にレーザーを照射するものを採用することもできるが、この場合にはフォークリフトの移載装置60、ひいては、フォークリフト10の製造コストが高くなる。一方向にレーザーを照射する距離計30を用いることができるため、フォークリフト10の製造コストの増加を抑制できる。
【0045】
(3)制御装置43は、フォーク19及びパレットPを積載面Mよりも高い位置に上昇させた後に、積載面MにパレットPを移載している。制御装置43によってフォーク19及びパレットPの上昇から、積載面MへのパレットPの移載までを一貫して行うことができ、円滑にパレットPの移載を行うことができる。
【0046】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○制御装置43は、距離計30の測定値から、積載面MのうちパレットPを移載する予定の位置に既にパレットPが積載されているか否かを判定してもよい。パレットPを移載する予定の位置に既にパレットPが積載されている場合、底部BWの縁Eに照射されていたレーザーが底部BWよりも上方の位置に照射されると、レーザーは積載されているパレットPに照射されることになる。すると、底部BWの縁Eに照射されていたレーザーが底部BWよりも上方に照射されても、距離計30の測定値が第2規定値以上にならない。また、パレットPは、底部BWの縁Eよりも奥に配置されるため、底部BWの縁Eに照射されていたレーザーが底部BWよりも上方に照射されると、底部BWの縁Eにレーザーが照射されている場合に比べて、測定値は小さくなる。従って、制御装置43は、距離計30の測定値が第1規定値未満の値から、閾値以上大きくなり、かつ、第2規定値未満の値になった場合に、パレットPを移載する予定の位置に既にパレットPが積載されていると判定してもよい。閾値としては、レーザーが底部BWの縁Eよりも上方に照射されるようになったと判定できる値に設定される。パレットPを移載する予定の位置に、既にパレットPが積載されている場合、制御装置43は移載作業を中断する。この場合、別の位置にパレットPを移載する処理や、管理者や上位制御装置からの指令を受けるまで待機する処理など、種々の制御を行うことができる。
【0047】
なお、制御装置43はパレットPを積載した位置を記憶している。従って、パレットPを移載する予定の位置に既にパレットPが積載されていることは生じないとも考えられる。しかしながら、1つのコンテナCに対して、複数のフォークリフトでパレットPを移載する場合等、フォークリフト10以外にもパレットPを移載する装置が存在する場合、パレットPを積載する予定の位置に既にパレットPが積載されていることは生じ得る。
【0048】
○距離計30は、フォーク19とともに昇降する部材であれば、どのような部材に取り付けられていてもよい。例えば、距離計30は、インナマスト17やフォーク19に取り付けられていてもよい。
【0049】
図10に示すように、距離計70として、照射角度を変更しながらレーザーを照射する二次元のレーザー距離計を用いてもよい。距離計70は、鉛直方向への照射角度を変更しながらレーザーを照射するように配置される。距離計70は、照射角度と測定値とを対応付けて制御装置43に出力する。レーザーを照射可能な照射可能角度の全体に亘ってレーザーを照射することで、制御装置43は、角度分解能に応じた照射角度毎に測定値を取得することができる。距離計70として二次元のレーザー距離計を用いる場合、距離計70は、フォーク19とともに昇降しないようにフォークリフト10に取り付けられる。例えば、距離計70は、アウタマスト16や、車体11に取り付けられる。
【0050】
制御装置43は、レーザーの照射角度と測定値を用いることで、距離計70の高さと積載面Mの高さとの差分を算出することができる。距離計70が照射可能角度の全体に亘ってレーザーを照射すると、制御装置43は、底部BWに向けて底部BWよりも下方の位置から底部BWよりも上方の位置に亘ってレーザーを照射させたときの測定値を取得することができる。二次元のレーザー距離計を用いると、照射角度の変更によって底部BWよりも下方の位置から底部BWよりも上方の位置に亘ってレーザーを照射することができる。制御装置43は、距離計70から取得した測定値のうち第1規定値未満の値から、第2規定値以上の値に切り替わる測定値を抽出する。そして、制御装置43は、抽出した測定値と、当該測定値に対応付けられた照射角度から距離計70から積載面Mまでの鉛直方向への寸法、即ち、距離計70の高さと積載面Mの高さとの差分を算出する。詳細にいえば、測定値には、照射角度に応じた鉛直方向成分と垂直方向成分とが含まれるため、照射角度を用いて測定値の鉛直方向成分を算出することで、距離計70の高さと積載面Mの高さとの差分を算出することができる。距離計70の高さを予め記憶部45に記憶しておき、記憶部45に記憶された距離計70の高さに、距離計70の高さと積載面Mの高さとの差分を加算することで、積載面Mの高さを算出することができる。制御装置43は、フォーク19及びフォーク19に載置されたパレットPが積載面Mよりも高くなるように油圧機構42を制御する。
【0051】
なお、距離計70として二次元のレーザー距離計を用いる場合、測定値は照射角度に応じた鉛直方向成分を含むユークリッド距離となる。このため、測定値及び測定値に対応付けられた照射角度から、水平方向成分のみの距離を算出し、この距離を用いて制御を行ってもよい。
【0052】
○フォーク19の上昇を開始する初期位置としては、フォーク19の最下位置としてもよい。
○フォークリフト10は、搭乗者による操作によって手動で動作するフォークリフトであってもよいし、自動での動作と手動での動作を切り替え可能なフォークリフトであってもよい。
【0053】
○制御装置43は、ステップS5の処理を行わなくてもよい。例えば、ステップS1~ステップS4までの処理を制御装置43で行い、その後は操作者による操作によりパレットPの積載面Mへの移載が行われてもよい。フォークリフト10では、操作者の前方にパレットPが位置する関係上、操作者がフォークリフト10の前方を視認しにくく、積載面Mとフォーク19の高さとの関係を把握しにくい場合がある。このため、フォーク19の上昇については制御装置43に行わせることで、フォーク19の上昇量が不足したり、フォーク19の上昇量が過剰になることを抑制できる。
【0054】
○フォークリフト10は、路面に配置されたマークを読み取ることで、所定の走行経路を走行するものでもよい。
○フォークリフト10が、荷役装置14を前進及び後進させることができるリーチシリンダを備えるフォークリフトであれば、ステップS5の処理を行う際に、荷役装置14のみを前進させてパレットPの移載を行ってもよい。
【0055】
○積載面判定部、上昇制御部及び移載制御部は、それぞれ別々の制御装置としてもよい。
○荷としては、メッシュパレット以外のパレットや、パレットP以外の搬送物であってもよい。
【0056】
○荷台としては、コンテナCの底部BW以外であってもよい。例えば、荷台は棚の棚板であってもよい。棚は、支柱と、支柱に支持された複数の棚板と、を備える。この場合、棚板の上面が積載面となる。
【符号の説明】
【0057】
BW…荷台としての底部、M…積載面、P…荷としてのパレット、10…フォークリフト、19…フォーク、30…レーザー距離計としての距離計、43…取得部、積載面判定部、上昇制御部及び移載制御部として機能する制御装置、60…フォークリフトの移載装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10