(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20230124BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20230124BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20230124BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230124BHJP
H01B 17/58 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/40 308
H01B7/18 C
H01B7/40 307
H02G3/04 062
H02G3/04 050
H01B17/58 C
(21)【出願番号】P 2019130922
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】望月 泰志
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-049947(JP,A)
【文献】特開平11-155226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
H01B 7/40
H01B 7/18
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線に巻かれた1種類以上のテープと、
を備え、
前記1種類以上のテープが前記電線の長手方向に沿って複数箇所に巻かれて複数のテープ巻部が設けられており、
前記複数のテープ巻部のうち少なくとも1つのテープ巻部は、結束機能と前記結束機能とは異なる追加機能とを果たして
おり、
前記複数のテープ巻部は、同じ種類のテープが相互に異なる巻方で巻かれている第1巻方部及び第2巻方部を含み、
前記第1巻方部と前記第2巻方部とは、共にテープが螺旋巻きされており、かつ、テープの螺旋巻きの巻方が異なっている、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーハーネスであって、
前記追加機能は、周辺金属部材からの保護機能、防音機能、経路規制機能より選ばれる少なくとも1つである、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネスであって、
前記複数のテープ巻部は、前記追加機能として第1追加機能を果たす第1機能テープ巻部と、前記追加機能として前記第1追加機能とは異なる第2追加機能を果たす第2機能テープ巻部とを含む、ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項3に記載のワイヤーハーネスであって、
前記第1機能テープ巻部のテープと前記第2機能テープ巻部のテープとは異なる種類のテープであり、
前記第1機能テープ巻部のテープの巻方と前記第2機能テープ巻部のテープの巻方は共に横巻きである、ワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記第1巻方部と前記第2巻方部とは、共に直線部に巻かれており、かつ前記第1巻方部と前記第2巻方部とが前記電線の長手方向に沿って別の箇所に設けられる、ワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記電線に取付けられた外装部材をさらに備え、
前記外装部材は前記1種類以上のテープとは異なる部材であり、
前記外装部材として、車両固定部材及びグロメットのみ、又は前記車両固定部材と前記グロメットとのうちいずれか一方のみが設けられている、ワイヤーハーネス。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記第1巻方部及び前記第2巻方部の少なくとも一方は、前記電線の周りに隙間ができるようにテープが巻かれている、ワイヤーハーネス。
【請求項8】
電線と、
前記電線に巻かれた1種類以上のテープと、
を備え、
前記1種類以上のテープが前記電線の長手方向に沿って複数箇所に巻かれて複数のテープ巻部が設けられており、
前記複数のテープ巻部のうち少なくとも1つのテープ巻部は、結束機能と前記結束機能とは異なる追加機能とを果たしており、
前記複数のテープ巻部は、互いに異なる種類のテープが巻かれている第1のテープ巻部と第2のテープ巻部とを有し、
前記第1のテープ巻部の追加機能と前記第2のテープ巻部の追加機能とは、共に防音機能であり、前記第1のテープ巻部のテープが発泡樹脂テープであり、前記第2のテープ巻部のテープが布テープである、ワイヤーハーネス。
【請求項9】
電線と、
前記電線に巻かれた1種類以上のテープと、
を備え、
前記1種類以上のテープが前記電線の長手方向に沿って複数箇所に巻かれて複数のテープ巻部が設けられており、
前記複数のテープ巻部のうち少なくとも1つのテープ巻部は、結束機能と前記結束機能とは異なる追加機能とを果たしており、
前記複数のテープ巻部は、互いに異なる種類のテープが巻かれている第1のテープ巻部と第2のテープ巻部とを有し、
前記第1のテープ巻部の追加機能と前記第2のテープ巻部の追加機能とは、共に周辺金属部材からの保護機能であり、前記第2のテープ巻部のテープが前記第1のテープ巻部のテープよりも厚肉のテープであるか、又は、前記第1のテープ巻部のテープが硬化しないテープかつ前記第2のテープ巻部のテープが硬化テープである、ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスにおいて、高い保護性能が必要な部分には、粘着テープとは異なる保護部材が設けられる。このような保護部材として、例えば、特許文献1に記載のシート、特許文献2に記載のコルゲートチューブなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-128797号公報
【文献】特開2000-261932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤーハーネスに外装部が簡易に設けられることが望まれている。
【0005】
そこで、ワイヤーハーネスに外装部が簡易に設けられる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤーハーネスは、電線と、前記電線に巻かれた1種類以上のテープと、を備え、前記1種類以上のテープが前記電線の長手方向に沿って複数箇所に巻かれて複数のテープ巻部が設けられており、前記複数のテープ巻部のうち少なくとも1つのテープ巻部は、結束機能と前記結束機能とは異なる追加機能とを果たしている、ワイヤーハーネスである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ワイヤーハーネスに外装部が簡易に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態にかかるワイヤーハーネスを示す平面図である。
【
図2】
図2はテープ巻部の第1の例を示す縦断面図である。
【
図3】
図3はテープ巻部の第2の例を示す縦断面図である。
【
図4】
図4はテープ巻部の第3の例を示す縦断面図である。
【
図5】
図5はテープ巻部の第4の例を示す縦断面図である。
【
図6】
図6はテープ巻部の第5の例を示す縦断面図である。
【
図7】
図7はテープ巻部の第5の例を示す背面図である。
【
図8】
図8はテープ巻部の第6の例を示す正面図である。
【
図9】
図9はテープ巻部の第6の例を製造する様子を示す説明図である。
【
図10】
図10はテープ巻部の第6の例を製造する様子を示す説明図である。
【
図11】
図11はテープ巻部の第6の例を製造する様子を示す説明図である。
【
図12】
図12はテープ巻部の第6の例を製造する様子を示す説明図である。
【
図13】
図13は第1変形例にかかるワイヤーハーネスを示す平面図である。
【
図14】
図14は第2変形例にかかるワイヤーハーネスを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のワイヤーハーネスは、次の通りである。
【0011】
(1)電線と、前記電線に巻かれた1種類以上のテープと、を備え、前記1種類以上のテープが前記電線の長手方向に沿って複数箇所に巻かれて複数のテープ巻部が設けられており、前記複数のテープ巻部のうち少なくとも1つのテープ巻部は、結束機能と前記結束機能とは異なる追加機能とを果たしている、ワイヤーハーネスである。シート、チューブなどの役割を、結束機能と追加機能とを果たしているテープ巻部が担うことができることによって、シート、チューブなどが省略可能となる。また、テープ巻部はテープ巻きによって設けられる。これらより、ワイヤーハーネスに外装部が簡易に設けられる。
【0012】
(2)前記追加機能は、周辺金属部材からの保護機能、防音機能、経路規制機能より選ばれる少なくとも1つであってもよい。これにより、周辺金属部材からの保護機能、防音機能、経路規制機能を果たす外装部についても、簡易にワイヤーハーネスに設けられる。
【0013】
(3)前記複数のテープ巻部は、前記追加機能として第1追加機能を果たす第1機能テープ巻部と、前記追加機能として前記第1追加機能とは異なる第2追加機能を果たす第2機能テープ巻部とを含んでもよい。これにより、複数の追加機能を果たす外装部についても、簡易にワイヤーハーネスに設けられる。
【0014】
(4)前記第1機能テープ巻部のテープと前記第2機能テープ巻部のテープとは異なる種類のテープであり、前記第1機能テープ巻部のテープの巻方と前記第2機能テープ巻部のテープの巻方は共に横巻きであってもよい。これにより、第1機能テープ巻部と第2機能テープ巻部との形成が容易となる。
【0015】
(5)前記複数のテープ巻部は、同じ種類のテープが相互に異なる巻方で巻かれている第1巻方部及び第2巻方部を含んでもよい。これにより、1種類のテープによって機能の異なるテープ巻部が設けられる。
【0016】
(6)前記電線に取付けられた外装部材をさらに備え、前記外装部材は前記1種類以上のテープとは異なる部材であり、前記外装部材として、車両固定部材及びグロメットのみ、又は前記車両固定部材と前記グロメットとのうちいずれか一方のみが設けられていてもよい。これにより、テープ、車両固定部材、グロメット以外の外装品が省略可能となる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤーハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
[実施形態]
以下、実施形態に係るワイヤーハーネスについて説明する。
図1は実施形態にかかるワイヤーハーネス10を示す平面図である。なお
図1では紙面の都合上、ワイヤーハーネス10が曲げられた状態が示されている。
【0019】
ワイヤーハーネス10は、車両に搭載されて電気部品同士を電気的に接続するための配線部材である。ワイヤーハーネス10は、電線12と、電線12に巻かれた1種類以上のテープTと、を備える。
【0020】
電線12は、芯線の周囲に絶縁被覆が形成された被覆電線である。芯線は、銅、アルミニウム、銅合金、アルミニウム合金により形成されている。芯線は、単一の線材によって形成されていてもよいし、複数の素線が撚り合わされた集合線であってもよい。絶縁被覆は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フッ素樹脂等の樹脂によって形成されている。この電線12は、電気信号或は電力等を伝送する役割を有している。
【0021】
ワイヤーハーネス10は少なくとも1本の電線12を備えていればよい。ここではワイヤーハーネス10は複数の電線12を備える。複数の電線12は、全て同じ外径であってもよいし、異なる外径のものを含んでいてもよい。電線12の端部には、コネクタCが設けられていてもよい。
【0022】
コネクタCは樹脂製のハウジングに電線12の端部が収容されたものである。例えば、電線12の端部には端子が接続される。当該端子がハウジングに形成されたキャビティに収容保持される。コネクタCが相手側コネクタと接続される際、コネクタCにおける端子が相手側コネクタにおける端子と接続される。
【0023】
複数の電線12は途中で分岐したりしつつ、各端部がそれぞれ所定のハウジングに収められる。これにより、ワイヤーハーネス10は車両における電線12の配線形態に応じた形状に形成される。
【0024】
1種類以上のテープTが電線12の長手方向に沿って複数箇所に巻かれている。テープTが巻かれた部分がテープ巻部20をなしている。従って、ワイヤーハーネス10は、複数(
図1に示す例では、4つ)のテープ巻部20を含む。以下、
図1に示す4つのテープ巻部20について区別が必要な場合、テープ巻部20A、テープ巻部20B、テープ巻部20C、テープ巻部20Dと称することがある。
【0025】
複数のテープ巻部20のうち少なくとも1つのテープ巻部20は、結束機能と、結束機能とは異なる追加機能とを果たしている。複数のテープ巻部20には、追加機能が相互に異なるテープ巻部20が含まれていてもよい。つまり複数のテープ巻部20は、第1機能テープ巻部と第2機能テープ巻部とを含んでいてもよい。第1機能テープ巻部は追加機能として第1追加機能を果たす。第2機能テープ巻部は、追加機能として第1追加機能とは異なる第2追加機能を果たす。
【0026】
<テープ巻部の追加機能>
追加機能としては、例えば周辺金属部材からの保護機能、防音機能、経路規制機能などが考えられる。一つのテープ巻部20が一つの追加機能を果たしていてもよいし、複数の追加機能を果たしていてもよい。追加機能は、周辺金属部材からの保護機能、防音機能、経路規制機能より選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0027】
周辺金属部材からの保護機能は、ワイヤーハーネス10が車両に組付けられるとき、又はワイヤーハーネス10が車両に組付けられた状態で、ワイヤーハーネス10の周辺に位置する金属部材からワイヤーハーネス10を保護するための機能である。周辺金属部材からの保護機能では、通常、結束用のテープTがハーフラップ巻きされた場合よりも高い保護性能が要請される。従来のワイヤーハーネスでは、シート、チューブ、プロテクタなどの外装部材によって、周辺金属部材からの保護機能が果たされることが多い。本開示のワイヤーハーネス10では、シート、チューブなどの外装部材に替えて、テープ巻部20によって、周辺金属部材からの保護機能が果たされている。
【0028】
周辺金属部材からの保護機能としては、例えば金属面からの保護機能と、金属エッジからの保護機能とが考えられる。金属面からの保護機能は、ワイヤーハーネス10が金属面と干渉したときに電線12の外傷を抑制する機能である。金属エッジからの保護機能は、ワイヤーハーネス10が金属エッジと干渉したときに電線12の外傷を抑制する機能である。通常、金属面からの保護機能よりも金属エッジからの保護機能の方が高い保護性能が要請される。
【0029】
防音機能は、ワイヤーハーネス10が車両に組付けられた状態で、周辺に位置する部材と接触した際、異音が生じないようにするための機能である。従来のワイヤーハーネスでは、不織布シートなどの外装部材によって防音機能が果たされることが多い。本開示のワイヤーハーネス10では、不織布シートなどの外装部材に替えて、テープ巻部20によって防音機能が果たされる。
【0030】
防音機能としては、例えば打音抑制機能、擦れ音抑制機能などが考えられる。打音抑制機能は、周辺部材と離間した状態にあるワイヤーハーネス10が周辺部材に向けて移動し、周辺部材と接触するときの音を抑制する機能である。擦れ音抑制機能は、ワイヤーハーネス10が周辺部材と接触した状態で、摺動するときの音を抑制する機能である。
【0031】
経路規制機能は、ワイヤーハーネス10の形状を一定に保つための機能である。ワイヤーハーネス10を構成する電線12は通常、柔軟性を有する。このため、ワイヤーハーネス10は、一定形状を保ちにくい。従来のワイヤーハーネスでは、プロテクタ、パイプなどの硬質な成形品が電線12に外装されることによって経路規制されることが多い。本開示のワイヤーハーネス10は、テープ巻部20によって経路規制機能が果たされる。これにより、ワイヤーハーネス10は、一定形状に保たれる。
【0032】
複数のテープ巻部20に追加される機能は、適宜設定可能であるが、例えば以下のように設定されてもよい。コネクタC近くに設けられるテープ巻部20A、20Dが周辺金属部材からの保護機能を果たしていてもよい。またワイヤーハーネス10において車体への固定が甘い部分、車体に対して浮いた状態で配置される部分、又は車体に対して移動可能に配置される部分などに設けられるテープ巻部20Bが防音機能を果たしていてもよい。また例えば、ワイヤーハーネス10において車両に対して曲がって配置される部分に設けられるテープ巻部20Cが経路規制機能を果たしていてもよい。
【0033】
<テープTの巻方>
複数のテープ巻部20は、相互に巻方の異なるテープ巻部20を含んでいてもよい。つまり、複数のテープ巻部20は、第1巻方部及び第2巻方部を含んでいてもよい。第1巻方部及び第2巻方部において、同じ種類のテープTが相互に異なる巻方で巻かれている。
【0034】
ここで一続きにつながったテープTが電線12へ巻かれる巻き方について説明する。
【0035】
一続きにつながったテープTの電線12への巻き方は、横巻きと、縦巻きとに大別される。横巻きは、テープTの長尺方向が電線12の周方向に沿う巻き方である。縦巻きは、テープTの長尺方向が電線12の長手方向に沿う巻き方である。
【0036】
さらに横巻きは、電線12の長手方向に沿って固着領域がずれながらテープTが巻かれる巻き方と、電線12の長手方向に沿って固着領域がずれずにテープが巻かれる巻き方とに大別される。前者の場合、電線12に巻かれたテープTは電線12の長手方向に沿って位置をずらしながら電線12の周囲を周回し、螺旋状を呈する。後者の場合、電線12に巻かれたテープTは電線12の長手方向に沿った一定位置で電線12の周囲を周回し、渦巻状を呈する。以下、本明細書では、前者の巻き方は螺旋巻きと称され、後者の巻き方は一定位置巻きと称される。
【0037】
さらに螺旋巻きは、テープTが電線12の周りを一周より多く周回したときに幅方向の一部が重なる巻き方と、テープTが電線12の周りを一周より多く周回したときに幅方向に重ならない巻き方とに大別される。前者の場合、電線12の長手方向に沿ってテープT間の隙間が生じなくなることによって、保護性、止水性などに優れる。またテープT同士が重なる分、テープTが巻かれた部分の太さが太くなる。後者の場合、テープTの使用量を押さえつつ、広範に巻かれることができる。またテープT同士が重ならない分、テープTが巻かれた部分の太さが細くなる。以下、本明細書では、前者の巻き方はオーバーラップ巻きと称され、後者の巻き方はノンラップ(non-lap)巻きと称される。またオーバーラップ巻きにおいて、先に巻かれた部分の全幅に対して、後に巻かれた部分が重なる幅の割合は、ラップ代と称される。
【0038】
例えば、オーバーラップ巻きには、テープTの幅の半分が重ねられるハーフラップ巻き等が含まれる。ハーフラップ巻きにおけるラップ代は2分の1である。ノンラップ巻きには、テープTが電線12の長手方向に隙間をあけた荒巻きなどが含まれる。なお、テープTの重なりの観点で見ると、ノンラップ巻きは、ラップ代が0である巻き方である。また上記一定位置巻きは、テープTの幅の全部が重ねられる巻き方であり、ラップ代が1である巻き方である。このため、一定位置巻きは、オールラップ(all-lap)巻きと称されてもよい。
【0039】
ラップ代と、オーバーラップ巻部の中間領域におけるテープTの層との関係は次のように一般化される。すなわち、nを2以上の整数とする。ラップ代がn分の(n-1)であると、中間領域におけるすべての部分で、テープTがn層となる。ラップ代がn分の(n-1)よりも大きく、(n+1)分のnよりも小さいと、中間領域においてテープTがn層の部分と(n+1)層の部分とが相互に隣り合って螺旋状に延びる。従って、ラップ代がn分の(n-1)より大きいと、中間領域における少なくとも一部で、テープTがn層よりも多層となる。
【0040】
テープTがここで説明される巻き方で巻かれた部分は、その巻き方によって巻かれた巻部ととらえることができる。例えば、螺旋巻部はテープTが螺旋巻きで巻かれた部分である。また例えば、一定位置巻部はテープTが一定位置巻きで巻かれた部分である。
【0041】
なお、一続きにつながったテープTが電線12へ巻かれる際、上記巻き方が適宜組み合わされてもよいことは言うまでもない。
【0042】
以下、図面を参照しつつ、テープ巻部20の具体例について説明する。
【0043】
<テープ巻部20の第1の例>
図2はテープ巻部20の第1の例を示す縦断面図である。
図2に示すテープ巻部120では、テープTがノンラップ巻きされたノンラップ巻部である。テープ巻部120は、1層のノンラップ巻部である。テープ巻部120は、テープT同士の間に隙間のないノンラップ巻部である。テープ巻部は、テープT同士の間に隙間のあるノンラップ巻部(荒巻部)であってもよい。
【0044】
<テープ巻部20の第2の例>
図3はテープ巻部20の第2の例を示す縦断面図である。
図3に示すテープ巻部220は、テープTがオーバーラップ巻きされたオーバーラップ巻部である。テープ巻部220はラップ代が5分の4のオーバーラップ巻部である。このようにテープ巻部220はラップ代が2分の1よりも大きく、1よりも小さいオーバーラップ巻部であってもよい。これによりテープ巻部220において、テープTが2層よりも多層となる部分が生じる。さらにテープ巻部220はラップ代が3分の2よりも大きく、1よりも小さいオーバーラップ巻部であってもよい。これにより、テープ巻部220において、巻き始め部分と巻き終わり部分とを除く中間部分における全領域において、テープTが3層以上となる。もちろんテープ巻部はラップ代が0よりも大きく、2分の1以下のオーバーラップ巻部であってもよい。
【0045】
オーバーラップ巻部におけるラップ代は、例えばテープTの厚みとテープ巻部220における仕上がり厚み(電線12側の内面から外面までの厚み)とに鑑みて設定されてもよい。具体的には、テープTの厚みが0.1ミリメートルであり、テープ巻部220における仕上がり厚みが0.5ミリメートルである場合に、ラップ代を
図2に示す5分の4とすることによって、テープ巻部220の必要な仕上がり厚みが得られる。
【0046】
テープ巻部220における仕上がり厚みは特に限定されるものではないが、例えば0.5ミリメートル以上であってもよい。また例えば1.0ミリメートル以上であってもよい。
【0047】
<テープ巻部20の第3の例>
図4はテープ巻部20の第3の例を示す縦断面図である。
図4に示すテープ巻部320は、一定位置巻部22とオーバーラップ巻部24とが組合わされたものである。
【0048】
一定位置巻部22は、電線12の長手方向に沿ってテープ巻部320における一方端部に設けられている。一定位置巻部22は、テープTが同じ位置に複数層巻かれている。
【0049】
オーバーラップ巻部24における巻始め部分は、一定位置巻部22の外周側に重なっている。オーバーラップ巻部24における巻始め部分は一定位置巻部22の幅方向中央よりもテープ巻部320における他方端部側から始まっている。
【0050】
一定位置巻部22におけるテープTと、オーバーラップ巻部24におけるテープTとは、分離していてもよい。つまり、一定位置巻部22が巻き終わった時点でテープTが一端切断されたのち、改めてオーバーラップ巻部24が巻き始められてもよい。この場合、一定位置巻部22からオーバーラップ巻部24に移る部分を設けずに済む。
【0051】
一定位置巻部22におけるテープTと、オーバーラップ巻部24におけるテープTとは、一続きであってもよい。この場合、一定位置巻部22が巻き終わった時点で、テープTを切断せずに済む。一定位置巻部22におけるテープTと、オーバーラップ巻部24におけるテープTとが一続きである場合、一定位置巻部22における巻き終わり部分からオーバーラップ巻部24における巻き始め部分に移る部分の周回数は、なるべく短い周回数であることが好ましい。例えば一定位置巻部22における巻き終わり部分からオーバーラップ巻部24における巻き始め部分に移る部分の周回数は、1周よりも短い周回数であってもよいし、半周よりも短い周回数であってもよい。
【0052】
当該テープ巻部320はコネクタC近くのテープ巻部20A、20Dに採用されてもよい。この場合、一定位置巻部22は、テープ巻部20のうち電線12の長手方向に沿ってコネクタCに最も近い位置に設けられているとよい。この際、一定位置巻部22のうちコネクタC側の縁部とコネクタCとの電線12の長手方向に沿った間隔は、特に限定されるものではなく適宜設定可能である。例えば、一定位置巻部22のうちコネクタC側の縁部とコネクタCとの間隔は0ミリメートル以上、10ミリメートル以下であってもよい。ここでコネクタC側の縁部とコネクタCとの間隔が0ミリメートルである場合は、一定位置巻部22とコネクタCとが接触している場合である。
【0053】
一定位置巻部22の周回数は、2周以上であれば特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば一定位置巻部22の周回数は、3周以上であってもよいし、5周以上であってもよいし、10周以上であってもよい。一定位置巻部22の周回数は例えばテープTの厚みとテープ巻部320の仕上がり厚みとに鑑みて設定されてもよい。具体的には、テープTの厚みが0.1ミリメートルであり、テープ巻部320の仕上がり厚みが1.0ミリメートルである場合に、一定位置巻部22の周回数を
図4に示す例のように10周とすることができる。この場合、オーバーラップ巻部24のラップ代が10分の9とされることによって、一定位置巻部22の仕上がり厚みと、オーバーラップ巻部24の仕上がり厚みとが同じ程度となる。
【0054】
コネクタCにおいて電線12が延出する面を電線延出面とする。通常、電線延出面はキャビティの開口がある面である。電線延出面は方形又は方形に近い形状に形成される。一定位置巻部22の仕上がり厚みは、電線延出面のうち短辺方向に沿った寸法と同じであってもよいし、それよりも大寸であってもよいし、小寸であってもよい。また一定位置巻部の仕上がり厚みは、電線延出面のうち長辺方向に沿った寸法と同じであってもよいし、それよりも大寸であってもよいし、小寸であってもよい。
【0055】
<テープ巻部20の第4の例>
図5はテープ巻部20の第4の例を示す縦断面図である。
図5に示すテープ巻部420は、螺旋巻部26が複数層重なって設けられている。
【0056】
テープ巻部420における各層の螺旋巻部26は、ノンラップ巻部である。テープ巻部420における各層の螺旋巻部26はオーバーラップ巻部であってもよい。以下では、厚み方向に沿って接触しつつ重なり合う2つの螺旋巻部26の層のうち内側の螺旋巻部26の層を内側層とし、外側の螺旋巻部26の層を外側層とする。
【0057】
内側層におけるテープTと、外側層におけるテープTとは、分離していてもよい。つまり、内側層が巻き終わった時点でテープTが一端切断されたのち、改めて外側層が巻き始められてもよい。この場合、内側層と外側層とを同じ巻き方で巻くことができる。これにより、内側層と外側層とにおいて螺旋の向きをそろえることができる。
【0058】
内側層におけるテープTと、外側層におけるテープTとは、一続きであってもよい。この場合、内側層が巻き終わった時点でテープTを切断せずに済む。内側層におけるテープTと、外側層におけるテープTとが一続きである場合、内側層と外側層とにおいて螺旋の向きが逆となる。また外側層における巻き始め部分は内側層における巻き終わり部分に重なる。
【0059】
図5に示す例では、各層の螺旋巻部26はテープT同士の間に隙間が生じないようにノンラップ巻きされている。各層の螺旋巻部26はテープT同士の間に隙間が生じるようにノンラップ巻きされていてもよい。この場合、内側層の隙間と、外側層の隙間とが重ならないことが好ましい。つまり内側層の隙間の外側に外側層のテープTが位置し、内側層の隙間を外側層のテープTが覆うことが好ましい。
【0060】
テープ巻部420における螺旋巻部26の層数は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば螺旋巻部26の層数は、3層以上であってもよいし、5層以上であってもよいし、10層以上であってもよい。螺旋巻部26の層数は例えばテープTの厚みとテープ巻部420の仕上がり厚みとに鑑みて設定されてもよい。具体的には、テープTの厚みが0.1ミリメートルであり、テープ巻部420の仕上がり厚みが0.5ミリメートルである場合に、螺旋巻部26の層数を
図3に示す例のように5層とすることができる。
【0061】
<テープ巻部20の第5の例>
図6はテープ巻部20の第5の例を示す縦断面図である。
図7はテープ巻部20の第5の例を示す背面図である。第5の例にかかるテープ巻部520は、電線12の周囲に隙間(スペース)Sが形成されるようにテープTが巻かれた部分を有している。隙間Sは、電線12の外面とテープ巻部520の
内面との間に生じる。
【0062】
ここで複数の電線12が束ねられた電線束の外面には径方向に沿った凹凸が周方向に沿って並びうる。そして電線束にテープTが巻き付けられた場合に、この凹凸に起因して隙間ができうる。しかしながら、本明細書において、テープ巻部520にできる隙間Sは、上記電線束の凹凸によって生じる隙間とは異なるものである。テープ巻部520にできる隙間SはテープTが巻かれる被着体の外形に生じる凹凸に応じてできる隙間ではない。例えば、テープ巻部20にできる隙間Sは、少なくとも一部の周において、テープTがそれより内側部分の周長よりも長い周長を有するように巻かれることによって形成されるものである。ここで内側部分に凹凸がある場合は、内側部分の周長とはテープTに張力がかけられて凸に応じた形状に巻き付けられたときの周長を言う。
【0063】
テープ巻部520は、一定位置巻部522とオーバーラップ巻部524とを有している。オーバーラップ巻部524における中間領域に隙間Sが形成されている。
【0064】
一定位置巻部522は、電線12の長手方向に沿ってテープ巻部20における一方端部に設けられている。一定位置巻部522において、テープTが同じ位置に複数層巻かれている。
【0065】
オーバーラップ巻部524における巻始め部分は、一定位置巻部522の外周側に重なっている。オーバーラップ巻部524における巻始め部分は一定位置巻部522のテープTにおける幅方向中央よりもテープ巻部520における一方端部側から始まっている。ここでは一定位置巻部522における巻き終わり部分からオーバーラップ巻部524における巻き始め部分が始まっている。つまり、オーバーラップ巻部524のうち一定位置巻部522に重なる部分においても、オーバーラップ巻部524のうち一定位置巻部522に重ならない部分と同様のラップ代でテープTが巻かれている。
【0066】
オーバーラップ巻部524は、一定位置巻部522に重なる部分から徐々に一定位置巻部522に重ならない部分へと巻かれていく。この際、オーバーラップ巻部524において、テープTは一定位置巻部522に重なる寸法を徐々に小さくしながら巻かれていき、やがて完全に一定位置巻部522に重ならなくなる。以下では、オーバーラップ巻部524において、巻き始め部分から、テープTの少なくとも一部が一定位置巻部522に重なっている部分までを第1部分と称する。従って、第1部分には一定位置巻部522からはみ出す部分が存在する。第1部分のうち一定位置巻部522からはみ出す部分をはみ出し部と称する。オーバーラップ巻部524において、テープTの全体が一定位置巻部522に重ならなくなって以降の部分、つまり第1部分の終わりから他端側に向けて巻かれている部分を第2部分と称する。またオーバーラップ巻部524において一定位置巻部522に重ならない部分を浮部と称する。浮部は、第1部分のはみ出し部と、第2部分とで構成される。
【0067】
第1部分では、テープTの一部が一定位置巻部522に重なっている。はみ出し部は、一定位置巻部522によって支持される。一定位置巻部522は、はみ出し部を支持する支持部材として機能する。これにより、第1部分において、はみ出し部は電線12から浮いた状態に維持されやすい。同様に、第2部分では、はみ出し部が支持部材として機能することによって、電線12から浮いた状態とされる。これにより、浮部は電線12と隙間Sをあけて巻かれており、浮部において、テープ巻部520における隙間Sが生じている。
【0068】
オーバーラップ巻部524における巻終わり部分側において、
図7に示すように電線12の周方向に沿って間隔をあけた複数箇所が電線12に固着している。テープ巻部520ではオーバーラップ巻部524がそのまま巻き終わり部分まで続いている。ここで、浮部が長くなると、それまで巻かれていた部分が浮部を支持しきれなくなり、浮部の一部が内側に凹み、電線12に固着する。例えば、浮部を形成するためにテープTが巻かれていくと、やがて、テープTの巻圧が浮部を支持する力を越える。この場合、浮部の一部が電線12に固着する。浮部の一部が電線12に固着すると、浮部を支持する力が一時的に大きくなり、浮部が再び電線12から浮いた状態に支持されながらテープTが巻かれる。これを繰り返すことによって、オーバーラップ巻部524における巻終わり部分側において、電線12の周方向に沿って間隔をあけた複数箇所が電線12に固着する。
【0069】
一定位置巻部522におけるテープTと、オーバーラップ巻部524におけるテープTとは、分離していてもよい。つまり、一定位置巻部522が巻き終わった時点でテープTが一端切断されたのち、改めてオーバーラップ巻部524が巻き始められてもよい。この場合、一定位置巻部522からオーバーラップ巻部524に移る部分を設けずに済む。
【0070】
一定位置巻部522におけるテープTと、オーバーラップ巻部524におけるテープTとは、一続きであってもよい。この場合、一定位置巻部522が巻き終わった時点で、テープTを切断せずに済む。一定位置巻部522におけるテープTと、オーバーラップ巻部524におけるテープTとが一続きである場合、一定位置巻部522における巻き終わり部分からオーバーラップ巻部524における巻き始め部分に移る部分の周回数は、なるべく短い周回数であることが好ましい。例えば、一定位置巻部522における巻き終わり部分からオーバーラップ巻部524における巻き始め部分に移る部分の周回数は、1周よりも短い周回数であってもよいし、半周よりも短い周回数であってもよい。
【0071】
一定位置巻部522の周回数は、2周以上であれば特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば一定位置巻部522の周回数は、3周以上であってもよいし、5周以上であってもよいし、10周以上であってもよい。一定位置巻部522の周回数は例えばテープTの厚みと一定位置巻部の仕上がり厚みとに鑑みて設定されてもよい。具体的には、テープTの厚みが0.1ミリメートルであり、一定位置巻部522の仕上がり厚みが2.0ミリメートルである場合に、一定位置巻部522の周回数を20周とすることができる。
【0072】
オーバーラップ巻部524のラップ代は、例えばテープTの厚みとオーバーラップ巻部524における仕上がり厚み(電線12側の内面から外面までの厚み)とに鑑みて設定されてもよい。具体的には、テープTの厚みが0.1ミリメートルであり、オーバーラップ巻部524における仕上がり厚みが1.0ミリメートルである場合に、ラップ代を10分の9とすることによって、オーバーラップ巻部524の必要な仕上がり厚みが得られる。
【0073】
またオーバーラップ巻部524のラップ代は、テープTの剛性に鑑みて設定されていてもよい。すなわち、テープTの剛性が高い場合と低い場合とにおいて、ラップ代が同じ場合、テープTの剛性が高いと、浮部において第2部分の支持力が大きくなり、浮部が浮いた状態に維持されやすい。一方、テープTの剛性が低いと、浮部において第2部分の支持力が小さくなり、浮部が浮いた状態に維持されにくい。ラップ代が大きくなると、その分、浮部において第2部分の支持力が大きくなり、浮部が浮いた状態に維持されやすい。
【0074】
オーバーラップ巻部524がちょうど1周したところのはみ出し部分の幅寸法は、一定位置巻部の仕上がり厚みよりも小さい。このため、オーバーラップ巻部524における最初の1周のはみ出し部分は、電線12に固着されない。このため、オーバーラップ巻部524における2周目以降にかかる浮部が電線12から浮いた状態となりやすい。例えば、厚み寸法が0.1ミリメートル、幅寸法が19ミリメートルのテープTを用いて、上述のように一定位置巻部522の周回数を20周、オーバーラップ巻部524のラップ代を10分の9に設定する。オーバーラップ巻部524がちょうど1周したところのはみ出し部分の幅寸法は、テープTの幅寸法の10分の1である1.9ミリメートルとなる。これは、一定位置巻部522の仕上がり厚みである2.0ミリメートルよりも小さい。
【0075】
<テープ巻部20の第6の例>
図8はテープ巻部20の第6の例を示す正面図である。
図8に示すテープ巻部620では、テープTが複数層巻かれている。テープ巻部620における各層は周方向に沿って相互に異なる領域に隙間Sを形成するように巻かれている。以下、
図9から
図12に示すテープ巻部620の製造方法を参照しつつ、テープ巻部620について詳述する。
【0076】
図9はテープ巻部620における第1層が巻かれる様子を示す説明図である。第1層のテープTは、内側の被着体(電線12)に対して、紙面右方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(電線12)と固着する。
【0077】
図10はテープ巻部620における第2層が巻かれる様子を示す説明図である。第2層のテープTは、内側の被着体(第1層のテープT)に対して、紙面上方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(第1層のテープT)と固着する。
【0078】
図11はテープ巻部620における第3層が巻かれる様子を示す説明図である。第3層のテープTは、内側の被着体(第2層のテープT)に対して、紙面左方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(第2層のテープT)と固着する。
【0079】
図12はテープ巻部620における第4層が巻かれる様子を示す説明図である。第4層のテープTは、内側の被着体(第3層のテープT)に対して、紙面下方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(第3層のテープT)と固着する。
【0080】
以上より、各層のテープTと内側の被着体との間に隙間Sが生じる。そして、この隙間Sの位置が各層で異なっている。これにより、複数の隙間Sが電線12の周方向に沿って分散する。なお各層における隙間Sの大きさは特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば各層における隙間Sは、テープ巻部620が円形状に近くなるように設定されていてもよい。
【0081】
なおここでは電線12の周方向に沿って4つの隙間Sが形成される例が示されたが、このことは必須の構成ではない。電線12の周方向に沿って2つの隙間が形成されてもよいし、3つの隙間が形成されてもよいし、5つ以上の隙間が形成されてもよい。
【0082】
また本例では、複数の隙間Sが電線12の周方向に沿った順番で形成される例が示されたが、このことは必須の構成ではない。4つ以上の隙間Sについて、複数の隙間Sが電線12の周方向に沿った順番とは異なる順番で形成されてもよい。例えば、
図8に示す例と同様に、電線12の周方向に沿って4つの隙間Sが形成される場合、紙面左右方向の2つの隙間Sが先に形成された後に、紙面上下方向の2つの隙間Sが形成されてもよい。
【0083】
なおテープTは
図8に示す状態を維持できる剛性を有していてもよいし、有していなくてもよい。テープTは
図8に示す状態を維持できる剛性を有していない場合、本例における隙間Sもつぶれていることも考えられる。つまり、
図8に示す例において、各隙間SをかたどるテープTの一部が内側の被着体に固着した状態となり、隙間Sがつぶれ、より小さい隙間Sに分けられることも考えられる。
【0084】
上記したテープ巻部20の例は、すべて横巻きで巻かれている。このため、縦巻き用の設備が不要とされる。また上記したテープ巻部20の第1から第6の例はすべて螺旋巻きを含む。このため、一のテープ巻部20が、テープTの幅寸法よりも長い領域に設けられている。
【0085】
<テープの種類>
一つのワイヤーハーネス10に複数種類のテープTが巻かれていてもよい。第1機能テープ巻部のテープTと第2機能テープ巻部のテープTとは異なる種類のテープTであってもよい。テープTの種類としては、結束用のテープのほか、厚肉テープ、硬化テープ、発泡樹脂テープ、布テープなどであってもよい。これらの各種テープTは、粘着層を有しているとよい。当該粘着層によってテープTは電線12に固定される。
【0086】
ここで結束用のテープとしては、ワイヤーハーネス10の結束に通常用いられるテープであってもよい。結束用のテープは、例えば厚みが0.1ミリメートルのテープであってもよい。結束用のテープは、周辺金属部材からの保護機能を果たすために用いられてもよい。この場合、結束用のテープは、上記第2の例から第6の例のように2層よりも多層とされたり、隙間が形成されたりするように巻かれているとよい。
【0087】
厚肉テープとしては、結束用のテープよりも厚いテープを採用することができる。厚肉テープとしては、結束用のテープよりも厚ければ、厚みの上限は特に限定されない。例えば、厚肉テープとしては、0.5ミリメートル未満の厚みであってもよく、0.3ミリメートルの厚みのテープであってもよい。厚肉テープは、例えば、周辺金属部材からの保護機能を果たすために用いられてもよい。この場合、厚肉テープは、テープ巻部20の上記第1の例のほか、第2の例から第6の例のように巻かれていてもよい。厚肉テープが金属エッジからの保護機能を果たすために用いられる場合、厚肉テープは多層に巻かれていると良い。
【0088】
硬化テープは、基材が紫外線、熱、水等によって硬化するテープである。ワイヤーハーネス10が車両に組付けられた状態において、硬化テープは、硬化した状態とされる。硬化テープは、硬化される前の状態で電線12に巻かれた後に硬化されるとよい。硬化テープは、例えば、周辺金属部材からの保護機能、特に金属エッジからの保護機能を果たすために用いられてもよい。硬化テープは、例えば、経路規制機能を果たすために用いられてもよい。この場合、硬化テープは、テープ巻部20の上記第1の例のほか、第2の例から第6の例のように巻かれていてもよい。
【0089】
発泡樹脂テープは、基材が軟質ポリウレタンフォームのように圧縮容易かつ復元可能な発泡樹脂製のテープである。発泡樹脂テープは、例えば打音抑制機能を果たすために用いられてもよい。この場合、発泡樹脂テープは、テープ巻部20の上記第1の例のほか、第2の例から第6の例のように巻かれていてもよい。
【0090】
布テープは、基材が布地のテープである。布地を構成する繊維は、特に限定されず、例えば合成繊維であってもよい。布テープは、例えば擦れ音抑制機能を果たすために用いられてもよい。この場合、布テープは、上記第1の例のほか、第2の例から第6の例のように巻かれていてもよい。
【0091】
第1機能テープ巻部のテープTと第2機能テープ巻部のテープTとが異なる種類のテープTである場合、これらは同じ巻方で巻かれていてもよいし、異なる巻方で巻かれていてもよい。
【0092】
ワイヤーハーネス10は、外装部材をさらに備える。外装部材は、電線12に取付けられている。外装部材は1種類以上のテープTとは異なる部材である。ワイヤーハーネス10では、外装部材として、車両固定部材50及びグロメット60のみが設けられている。
【0093】
車両固定部材50は、ワイヤーハーネス10を車両に固定するための部材である。図
1に示す例では、車両固定部材50としてテープクリップ50が採用されている。テープクリップ50は、係止部52と、板状部54とを有する。テープクリップ50は、例えば樹脂成形品である。係止部52はパネルなどに形成された貫通孔に挿入係止可能に形成されている。板状部54は、一方に長い平板状に形成されている。板状部54における長尺方向が電線12の長手方向に沿った状態で、板状部54と電線12との周囲に粘着テープ、結束バンドなどの結束部材56が巻かれることによって、板状部54が電線12に固定される。なお
図1に示す例では、板状部54における中央付近に係止部52が設けられ、係止部52に対して両側に結束部材56が巻かれている。もっとも板状部54における一端部付近に係止部52が設けられ、係止部52の一方側のみに結束部材56が巻かれていてもよい。
【0094】
もちろん車両固定部材50としてテープクリップ50が採用される必要はない。車両固定部材50としては、上記係止部52が結束バンドと一体化されたバンドクリップなどであってもよい。また車両固定部材50としては、車両側に設けられたスタッドボルトなどが挿通される挿通部を有するブラケットなどであってもよい。
【0095】
グロメット60は、例えばパネルに形成された貫通孔に嵌め込まれる部材である。ワイヤーハーネス10における電線12は貫通孔に通され、パネルによって仕切られた第1の空間と第2の空間とをまたぐように配線される。グロメット60は、第1の空間と第2の空間との間で、水等が浸入することを抑制したり、貫通孔の周縁部から電線12を保護したりするための部材である。例えば、第1の空間は車室内空間であり、第2の空間は車室外空間である。グロメット60は、大径筒部62と小径筒部64とを有する。グロメット60は、ゴム又はエラストマーなどの弾性材料によって形成される。
【0096】
大径筒部62はパネルの貫通孔よりも大径に形成される。大径筒部62の外周面には溝63が形成される。溝63にパネルにおける貫通孔の周縁部が収容される。これにより、大径筒部62が貫通孔に嵌った状態となる。
【0097】
小径筒部64は大径筒部62に連なる。小径筒部64は電線12に固定される。小径筒部64の端部と、小径筒部64の端部から延出する電線12との周囲に粘着テープが巻かれていてもよい。小径筒部64の内面は電線12を押圧していてもよい。小径筒部64の内部に止水材が設けられていてもよい。止水材は小径筒部64の内面と電線12との隙間を埋める。止水材は小径筒部64の内面と電線12に接着して両者を固定する接着剤であってもよい。
【0098】
グロメット60は、弾性材料によって形成された部品のほかに、硬質樹脂製の部品を有していてもよい。この場合、例えば硬質樹脂製の部品は弾性材料によって形成された部品に組み込まれる。弾性材料によって形成された部品に設けられた大径筒部62の端面が貫通孔の周縁部における一方主面に接するリップ部となる。そして硬質樹脂製の部品に形成された係止突起が、貫通孔の周縁部における他方主面に係止する。これにより、グロメット60が貫通孔に取付けられる。
【0099】
<効果等>
以上のように構成されたワイヤーハーネス10によると、シート、チューブなどの役割を、結束機能と追加機能とを果たしているテープ巻部20が担うことができることによって、シート、チューブなどが省略可能となる。また、テープ巻部20はテープ巻きによって設けられる。これらより、ワイヤーハーネス10に外装部が簡易に設けられる。なおテープ巻部20をなすテープは人手で巻かれてもよいし、テープ巻機などによって自動で巻かれてもよい。テープ巻部20をなすテープが人手で巻かれる場合及び自動で巻かれる場合のいずれであっても、シート、チューブなどが省略できることによって、ワイヤーハーネス10に外装部が簡易に設けられる。
【0100】
追加機能として周辺金属部材からの保護機能、防音機能、経路規制機能が含まれる。これにより、周辺金属部材からの保護機能、防音機能、経路規制機能を果たす外装部についても、簡易にワイヤーハーネス10に設けられる。
【0101】
複数のテープ巻部20は、第1機能テープ巻部と第2機能テープ巻部とを含むため、複数の追加機能を果たす外装部についても、簡易にワイヤーハーネス10に設けられる。第1機能テープ巻部のテープTと第2機能テープ巻部のテープTとは異なる種類のテープTであるものの、巻方は共に横巻きであるため、第1機能テープ巻部と第2機能テープ巻部との形成が容易となる。この場合、第1機能テープ巻部のテープTと第2機能テープ巻部のテープTとは全く同じ巻方で巻かれていてもよい。これにより、巻方を変えずに済み、外装部の形成が容易となる。
【0102】
複数のテープ巻部20は、第1巻方部及び第2巻方部を含むため、1種類のテープTによって機能の異なるテープ巻部20が設けられる。
【0103】
外装部材として、車両固定部材50及びグロメット60のみが設けられているため、テープT、車両固定部材50、グロメット60以外の外装品が省略可能となる。
【0104】
[変形例]
図13は第1変形例にかかるワイヤーハーネス110を示す平面図である。ワイヤーハーネス110では、外装部材として、グロメット60のみが設けられている。このため、ワイヤーハーネス110が製造されるにあたって、テープT、グロメット60以外の外装品が省略可能となる。
【0105】
図14は第2変形例にかかるワイヤーハーネス210を示す平面図である。ワイヤーハーネス210では、外装部材として、車両固定部材50のみが設けられている。このため、ワイヤーハーネス210が製造されるにあたって、テープT、車両固定部材50以外の外装品が省略可能となる。
【0106】
図15はテープ巻部20の変形例を示す説明図である。テープ巻部720は、テープTが縦巻きされた縦巻部である。この場合、ワイヤーハーネス10における複数のテープ巻部20は、すべて縦巻部であってもよい。またワイヤーハーネス10における複数のテープ巻部20は、縦巻部と横巻部とを含んでいてもよい。
【0107】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
10 ワイヤーハーネス
12 電線
20、20A、20B、20C、20D、120、220、320、420、520、620、720 テープ巻部
22、522 一定位置巻部
24、524 オーバーラップ巻部
26 螺旋巻部
50 テープクリップ(車両固定部材)
52 係止部
54 板状部
56 結束部材
60 グロメット
62 大径筒部
63 溝
64 小径筒部
C コネクタ
S スペース
T テープ