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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20230124BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20230124BHJP
   H01B 7/40 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/18 C
H01B7/40 308
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019130969
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015755
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】望月 泰志
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163455(JP,A)
【文献】特開2015-005352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H01B 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の長手方向に沿った少なくとも一部の領域に設けられたテープ巻保護部と、
を備え、
前記テープ巻保護部は、前記電線の周囲に隙間が形成されるように粘着テープが巻かれた部分を有しており、
前記テープ巻保護部は第1テープ巻保護部を含み、
前記第1テープ巻保護部は、端部巻部とオーバーラップ巻部とを有し、
前記端部巻部において、粘着テープが同じ位置に複数層巻かれており、
前記オーバーラップ巻部において、粘着テープの幅方向に沿った一部の領域が順次重なるように粘着テープが螺旋状に巻かれており、
前記オーバーラップ巻部における巻始め部分が前記端部巻部の外周側に重なっており、
前記オーバーラップ巻部における中間部分に前記隙間が形成されている、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項に記載のワイヤーハーネスであって、
前記オーバーラップ巻部における巻終わり部分側において、前記電線の周方向に沿って間隔をあけた複数箇所が前記電線に固着している、ワイヤーハーネス。
【請求項3】
電線と、
前記電線の長手方向に沿った少なくとも一部の領域に設けられたテープ巻保護部と、
を備え、
前記テープ巻保護部は、前記電線の周囲に隙間が形成されるように粘着テープが巻かれた部分を有しており、
前記テープ巻保護部は、粘着テープが複数層巻かれた第2テープ巻保護部を含み、
前記第2テープ巻保護部における各層は周方向に沿って相互に異なる領域に隙間を形成するように巻かれている、ワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスにおいて、高い保護性能が必要な部分には、粘着テープとは異なる保護部材が設けられる。このような保護部材として、例えば、特許文献1に記載のシート、特許文献2に記載のコルゲートチューブなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-128797号公報
【文献】特開2000-261932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤーハーネスに粘着テープとは異なる保護部材が取付けられる際、結束用の粘着テープと保護部材との持ち替え作業が発生する。
【0005】
そこで、保護性能の高い保護部が設けられつつ、結束用の粘着テープとの持ち替え作業がなるべく生じない技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤーハーネスは、電線と、前記電線の長手方向に沿った少なくとも一部の領域に設けられたテープ巻保護部と、を備え、前記テープ巻保護部は、前記電線の周囲に隙間が形成されるように粘着テープが巻かれた部分を有しているワイヤーハーネスである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、保護性能の高い保護部が設けられつつ、結束用の粘着テープとの持ち替え作業が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかるワイヤーハーネスを示す斜視図である。
図2図2は実施形態1にかかるワイヤーハーネスを示す縦断面図である。
図3図3は巻き終わり部分側から観察された第1テープ巻保護部を示す説明図である。
図4図4は実施形態2にかかるワイヤーハーネスを示す正面図である。
図5図5は第2テープ巻保護部における第1層目が巻かれる様子を示す説明図である。
図6図6は第2テープ巻保護部における第2層目が巻かれる様子を示す説明図である。
図7図7は第2テープ巻保護部における第3層目が巻かれる様子を示す説明図である。
図8図8は第2テープ巻保護部における第4層目が巻かれる様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のワイヤーハーネスは、次の通りである。
【0011】
(1)電線と、前記電線の長手方向に沿った少なくとも一部の領域に設けられたテープ巻保護部と、を備え、前記テープ巻保護部は、前記電線の周囲に隙間が形成されるように粘着テープが巻かれた部分を有している、ワイヤーハーネスである。テープと電線との間に隙間がある分、テープ巻保護部の外径が増し、エッジが電線に達し難い。テープ巻保護部は、粘着テープによって形成可能である。これらより、保護性能の高い保護部が設けられつつ、結束用の粘着テープとの持ち替え作業が生じない。
【0012】
(2)前記テープ巻保護部は第1テープ巻保護部を含み、前記第1テープ巻保護部は、端部巻部とオーバーラップ巻部とを有し、前記端部巻部において、粘着テープが同じ位置に複数層巻かれており、前記オーバーラップ巻部において、粘着テープの幅方向に沿った一部の領域が順次重なるように粘着テープが螺旋状に巻かれており、前記オーバーラップ巻部における巻始め部分が前記端部巻部の外周側に重なっており、前記オーバーラップ巻部における中間部分に前記隙間が形成されていてもよい。これにより、簡易に隙間が形成される。
【0013】
(3)前記オーバーラップ巻部における巻終わり部分側において、前記電線の周方向に沿って間隔をあけた複数箇所が前記電線に固着していてもよい。これにより、電線の周方向に沿ってなるべく広い領域に隙間がつくられる。またオーバーラップ巻部における外面が内面側に押圧されても凹んだりしにくい。
【0014】
(4)前記テープ巻保護部は、粘着テープが複数層巻かれた第2テープ巻保護部を含み、前記第2テープ巻保護部における各層は周方向に沿って相互に異なる領域に隙間を形成するように巻かれていてもよい。これにより、電線の周方向に沿ってなるべく広い領域に隙間がつくられる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤーハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係るワイヤーハーネスについて説明する。図1は実施形態1にかかるワイヤーハーネス10を示す斜視図である。図2は実施形態1にかかるワイヤーハーネス10を示す縦断面図である。図3は巻き終わり部分側から観察された第1テープ巻保護部20を示す説明図である。
【0017】
ワイヤーハーネス10は、車両に搭載されて電気部品同士を電気的に接続するための配線部材である。ワイヤーハーネス10は、電線12とテープ巻保護部20とを備える。
【0018】
電線12は、芯線の周囲に絶縁被覆が形成された被覆電線である。芯線は、銅、アルミニウム、銅合金、アルミニウム合金により形成されている。芯線は、単一の線材によって形成されていてもよいし、複数の素線が撚り合わされた集合線であってもよい。絶縁被覆は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フッ素樹脂等の樹脂によって形成されている。この電線12は、電気信号或は電力等を伝送する役割を有している。
【0019】
ワイヤーハーネス10は少なくとも1本の電線12を備えていればよい。ここではワイヤーハーネス10は複数の電線12を備える。複数の電線12は、全て同じ外径であってもよいし、異なる外径のものを含んでいてもよい。電線12の端部には、コネクタが設けられていてもよい。
【0020】
コネクタは樹脂製のハウジングに電線12の端部が収容されたものである。例えば、電線12の端部には端子が接続される。当該端子がハウジングに形成されたキャビティに収容保持される。コネクタが相手側コネクタと接続される際、コネクタにおける端子が相手側コネクタにおける端子と接続される。
【0021】
複数の電線12は途中で分岐したりしつつ、各端部がそれぞれ所定のコネクタハウジングに収められる。これにより、ワイヤーハーネス10は車両における電線12の配線形態に応じた形状に形成される。
【0022】
テープ巻保護部20は、電線12の長手方向に沿った少なくとも一部の領域に設けられている。テープ巻保護部20は、粘着テープTが電線12の周囲に巻かれて形成されている。
【0023】
ここで一続きにつながった粘着テープTが電線12へ巻かれる巻き方について説明する。
【0024】
電線12への一続きにつながった粘着テープTの巻き方は、電線12の長手方向に沿って固着領域がずれながら粘着テープTが巻かれる巻き方と、電線12の長手方向に沿って固着領域がずれずに粘着テープTが巻かれる巻き方とに大別される。前者の場合、電線12に巻かれた粘着テープTは電線12の長手方向に沿って位置をずらしながら電線12の周囲を周回し、螺旋状を呈する。後者の場合、電線12に巻かれた粘着テープTは電線12の長手方向に沿った一定位置で電線12の周囲を周回し、渦巻状を呈する。以下、本明細書では、前者の巻き方は螺旋巻きと称され、後者の巻き方は一定位置巻きと称される。
【0025】
さらに螺旋巻きは、粘着テープTが電線12の周りを一周より多く周回したときに幅方向の一部が重なる巻き方と、粘着テープTが電線12の周りを一周より多く周回したときに幅方向に重ならない巻き方とに大別される。前者の場合、電線12の長手方向に沿って粘着テープT間の隙間が生じなくなることによって、保護性、止水性などに優れる。また粘着テープT同士が重なる分、粘着テープTが巻かれた部分の太さが太くなる。後者の場合、粘着テープTの使用量を押さえつつ、広範に巻かれることができる。また粘着テープT同士が重ならない分、粘着テープTが巻かれた部分の太さが細くなる。以下、本明細書では、前者の巻き方はオーバーラップ巻きと称され、後者の巻き方はノンラップ(non-lap)巻きと称される。
【0026】
オーバーラップ巻きにおいて、先に巻かれた部分の全幅に対して、後に巻かれた部分が重なる幅の割合は、ラップ代と称される。例えば、オーバーラップ巻きには、粘着テープTの幅の半分が重ねられるハーフラップ巻き等が含まれる。ハーフラップ巻きにおけるラップ代は2分の1である。
【0027】
オーバーラップ巻部24におけるラップ代と、中間領域における粘着テープTの層との関係は次のように一般化される。すなわち、nを2以上の整数とする。ラップ代がn分の(n-1)であると、中間領域におけるすべての部分で、粘着テープTがn層となる。ラップ代がn分の(n-1)よりも大きく、(n+1)分のnよりも小さいと、中間領域において粘着テープTがn層の部分と(n+1)層の部分とが相互に隣り合って螺旋状に延びる。従って、ラップ代がn分の(n-1)より大きいと、中間領域における少なくとも一部で、粘着テープTがn層よりも多層となる。
【0028】
ノンラップ巻きには、粘着テープT間が電線12の長手方向に隙間をあけた荒巻きなどが含まれる。なお、粘着テープTの重なりの観点で見ると、ノンラップ巻きは、ラップ代が0である巻き方である。また上記一定位置巻きは、粘着テープTの幅の全部が重ねられる巻き方であり、ラップ代が1である巻き方である。このため、一定位置巻きは、オールラップ(all-lap)巻きと称されてもよい。
【0029】
上記巻き方で巻かれた部分は、その巻き方によって巻かれた巻部ととらえることができる。例えば、螺旋巻きで巻かれた部分は螺旋巻部ととらえることができる。また例えば、一定位置巻きで巻かれた部分は一定位置巻部ととらえることができる。
【0030】
なお、一続きにつながった粘着テープTが電線12へ巻かれる際、上記巻き方が適宜組み合わされてもよいことは言うまでもない。
【0031】
テープ巻保護部20は、電線12の周囲に隙間S(スペース)が形成されるように粘着テープTが巻かれた部分を有している。隙間Sは、電線12の外面とテープ巻保護部20の面との間に生じる。
【0032】
ここで複数の電線12が束ねられた電線束の外面には径方向に沿った凹凸が周方向に沿って並びうる。そして複数の電線束に粘着テープTが巻き付けられた場合に、この凹凸に起因して隙間ができうる。しかしながら、本明細書において、テープ巻保護部20にできる隙間Sは、上記電線束の凹凸によって生じる隙間とは異なるものである。テープ巻保護部20にできる隙間Sは粘着テープTが巻かれる被着体の外形に生じる凹凸に応じてできる隙間ではない。例えば、テープ巻保護部20にできる隙間Sは、少なくとも一部の周において、粘着テープTがそれより内側部分の周長よりも長い周長を有するように巻かれることによって形成されるものである。ここで内側部分に凹凸がある場合は、内側部分の周長とは粘着テープTに張力がかけられて凸に応じた形状に巻き付けられたときの周長を言う。
【0033】
本例は、テープ巻保護部20が第1テープ巻保護部20である事例である。第1テープ巻保護部20は、端部巻部22とオーバーラップ巻部24とを有している。オーバーラップ巻部24における中間部分に隙間Sが形成されている。
【0034】
端部巻部22は、電線12の長手方向に沿って第1テープ巻保護部20における一方端部に設けられている。端部巻部22において、粘着テープTが同じ位置に複数層巻かれている。従って端部巻部22は、一定位置巻部である。
【0035】
オーバーラップ巻部24における巻始め部分は、端部巻部22の外周側に重なっている。オーバーラップ巻部24における巻始め部分は端部巻部22の幅方向中央よりも第1テープ巻保護部20における一方端部側から始まっている。ここでは端部巻部22における巻き終わり部分からオーバーラップ巻部24における巻き始め部分が始まっている。つまり、オーバーラップ巻部24のうち端部巻部22に重なる部分においても、オーバーラップ巻部24のうち端部巻部22に重ならない部分と同様のラップ代で粘着テープTが巻かれている。
【0036】
オーバーラップ巻部24は、端部巻部22に重なる部分から徐々に端部巻部22に重ならない部分へと巻かれていく。この際、オーバーラップ巻部24において、粘着テープTは端部巻部22に重なる寸法を徐々に小さくしながら巻かれていき、やがて完全に端部巻部22に重ならなくなる。以下では、オーバーラップ巻部24において、巻き始め部分から、粘着テープTの少なくとも一部が端部巻部22に重なっている部分までを第1部分と称する。従って、第1部分には端部巻部22からはみ出す部分が存在する。第1部分のうち端部巻部22からはみ出す部分をはみ出し部と称する。オーバーラップ巻部24において、粘着テープTの全体が端部巻部22に重ならなくなって以降の部分、つまり第1部分の終わりから他端側に向けて巻かれている部分を第2部分と称する。またオーバーラップ巻部24において端部巻部22に重ならない部分を浮部と称する。浮部は、第1部分のはみ出し部と、第2部分とで構成される。
【0037】
第1部分では、粘着テープTの一部が端部巻部22に重なっている。はみ出し部は、端部巻部22によって支持される。端部巻部22は、はみ出し部を支持する支持部材として機能する。これにより、第1部分において、はみ出し部は電線12から浮いた状態に維持されやすい。同様に、第2部分では、はみ出し部が支持部材として機能することによって、電線12から浮いた状態とされる。これにより、浮部は電線12と隙間Sを空けて巻かれており、浮部において、テープ巻保護部20における隙間Sが生じている。
【0038】
オーバーラップ巻部24における巻終わり部分側において、図3に示すように電線12の周方向に沿って間隔をあけた複数箇所が電線12に固着している。第1テープ巻保護部20ではオーバーラップ巻部24がそのまま巻き終わり部分まで続いている。ここで、浮部が長くなると、それまで巻かれていた部分が浮部を支持しきれなくなり、浮部の一部が内側に凹み、電線12に固着する。例えば、浮部を形成するために粘着テープTが巻かれていくと、やがて、粘着テープTの巻圧が浮部を支持する力を越える。この場合、浮部の一部が電線12に固着する。浮部の一部が電線12に固着すると、浮部を支持する力が一時的に大きくなり、浮部が再び電線12から浮いた状態に支持されながら粘着テープTが巻かれる。これを繰り返すことによって、オーバーラップ巻部24における巻終わり部分側において、電線12の周方向に沿って間隔をあけた複数箇所が電線12に固着する。
【0039】
端部巻部22における粘着テープTと、オーバーラップ巻部24における粘着テープTとは、分離していてもよい。つまり、端部巻部22が巻き終わった時点で一端粘着テープTが切断されたのち、改めてオーバーラップ巻部24が巻き始められてもよい。この場合、端部巻部22からオーバーラップ巻部24に移る部分を設けずに済む。
【0040】
端部巻部22における粘着テープTと、オーバーラップ巻部24における粘着テープTとは、一続きであってもよい。この場合、端部巻部22が巻き終わった時点で、粘着テープTを切断せずに済む。端部巻部22における粘着テープTと、オーバーラップ巻部24における粘着テープTとが一続きである場合、端部巻部22における巻き終わり部分からオーバーラップ巻部24における巻き始め部分に移る部分は、なるべく短い周回数であることが好ましく、例えば、1周よりも短い周回数であってもよいし、半周よりも短い周回数であってもよい。
【0041】
端部巻部22の周回数は、2周以上であれば特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば端部巻部22の周回数は、3周以上であってもよいし、5周以上であってもよいし、10周以上であってもよい。端部巻部22の周回数は例えば粘着テープTの厚みと端部巻部22の仕上がり厚みとに鑑みて設定されてもよい。具体的には、粘着テープTの厚みが0.1ミリメートルであり、端部巻部22の仕上がり厚みが2.0ミリメートルである場合に、端部巻部22の周回数を20周とすることができる。
【0042】
オーバーラップ巻部24のラップ代は、例えば粘着テープTの厚みとオーバーラップ巻部24における仕上がり厚み(電線12側の内面から外面までの厚み)とに鑑みて設定されてもよい。具体的には、粘着テープTの厚みが0.1ミリメートルであり、オーバーラップ巻部24における仕上がり厚みが1.0ミリメートルである場合に、ラップ代を10分の9とすることによって、オーバーラップ巻部24の必要な仕上がり厚みが得られる。
【0043】
またオーバーラップ巻部24のラップ代は、粘着テープTの剛性に鑑みて設定されていてもよい。すなわち、粘着テープTの剛性が高い場合と低い場合とにおいて、ラップ代が同じ場合、粘着テープTの剛性が高いと、浮部において第2部分の支持力が大きくなり、浮部が浮いた状態に維持されやすい。一方、粘着テープTの剛性が低いと、浮部において第2部分の支持力が小さくなり、浮部が浮いた状態に維持されにくい。ラップ代が大きくなると、その分、浮部において第2部分の支持力が大きくなり、浮部が浮いた状態に維持されやすい。
【0044】
オーバーラップ巻部24がちょうど1周したところのはみ出し部分の幅寸法は、端部巻部22の仕上がり厚みよりも小さい。このため、オーバーラップ巻部24における最初の1周のはみ出し部分は、電線12に固着されない。このため、オーバーラップ巻部24における2周目以降にかかる浮部が電線12から浮いた状態となりやすい。例えば、厚み寸法が0.1ミリメートル、幅寸法が19ミリメートルの粘着テープTを用いて、上述のように端部巻部22の周回数を20周、オーバーラップ巻部24のラップ代を10分の9に設定する。オーバーラップ巻部24がちょうど1周したところのはみ出し部分の幅寸法は、粘着テープTの幅寸法の10分の1である1.9ミリメートルとなる。これは、端部巻部22の仕上がり厚みである2.0ミリメートルよりも小さくなる。
【0045】
<実施形態1の効果等>
以上のように構成されたワイヤーハーネス10によると、電線12の周囲に隙間Sがある分、テープ巻保護部20の外径が増し、エッジが電線12に達し難い。テープ巻保護部20は、粘着テープTによって形成可能である。これらより、保護性能の高い保護部が設けられつつ、結束用の粘着テープTとの持ち替え作業が生じない。テープ巻保護部20として第1テープ巻保護部20が設けられている。これにより、簡易に隙間Sを形成することができる。
【0046】
オーバーラップ巻部24における巻終わり部分側において、電線12の周方向に沿って間隔をあけた複数箇所が電線12に固着しているため、電線12の周方向に沿ってなるべく広い領域に隙間Sがつくられる。つまり隙間Sが電線12の周方向に沿って分散した状態となる。またオーバーラップ巻部24における外面が内面側に押圧されても凹んだりしにくい。
【0047】
[実施形態2]
実施形態2に係るワイヤーハーネスについて説明する。図4は実施形態2にかかるワイヤーハーネス110を示す正面図である。なお、本実施の形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
本例は、テープ巻保護部が第2テープ巻保護部30である事例である。第2テープ巻保護部30では、粘着テープTが複数層巻かれている。第2テープ巻保護部30における各層は周方向に沿って相互に異なる領域に隙間Sを形成するように巻かれている。
【0049】
以下、図5から図8にしめす第2テープ巻保護部30の製造方法を参照しつつ、第2テープ巻保護部30について詳述する。
【0050】
図5は第2テープ巻保護部30における第1層31が巻かれる様子を示す説明図である。第1層31の粘着テープTは、内側の被着体(電線12)に対して、紙面右方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(電線12)と固着する。
【0051】
図6は第2テープ巻保護部30における第2層32が巻かれる様子を示す説明図である。第2層32の粘着テープTは、内側の被着体(第1層31の粘着テープT)に対して、紙面上方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(第1層31の粘着テープT)と固着する。
【0052】
図7は第2テープ巻保護部30における第3層33が巻かれる様子を示す説明図である。第3層33の粘着テープTは、内側の被着体(第2層32目の粘着テープT)に対して、紙面左方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(第2層32の粘着テープT)と固着する。
【0053】
図8は第2テープ巻保護部30における第4層34が巻かれる様子を示す説明図である。第4層34目の粘着テープTは、内側の被着体(第3層33の粘着テープT)に対して、紙面下方向の領域に隙間Sをあけつつ、他の領域で内側の被着体(第3層33の粘着テープT)と固着する。
【0054】
以上より、各層の粘着テープTと内側の被着体との間に隙間Sが生じる。そして、この隙間Sの位置が各層で異なっている。これにより、複数の隙間Sが電線12の周方向に沿って分散する。なお各層における隙間Sの大きさは特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば各層における隙間Sは、第2テープ巻保護部30が円形状に近くなるように設定されていてもよい。
【0055】
なおここでは電線12の周方向に沿って4つの隙間Sが形成される例が示されたが、このことは必須の構成ではない。電線12の周方向に沿って2つの隙間が形成されてもよいし、3つの隙間が形成されてもよいし、5つ以上の隙間が形成されてもよい。
【0056】
また本例では、複数の隙間Sが電線12の周方向に沿った順番で形成される例が示されたが、このことは必須の構成ではない。4つ以上の隙間Sについて、複数の隙間Sが電線12の周方向に沿った順番とは異なる順番で形成されてもよい。例えば、図4に示す例と同様に、電線12の周方向に沿って4つの隙間Sが形成される場合、紙面左右方向の2つの隙間Sが先に形成された後に、紙面上下方向の2つの隙間Sが形成されてもよい。
【0057】
なお粘着テープTは図4に示す状態を維持できる剛性を有していてもよいし、有していなくてもよい。粘着テープTは図4に示す状態を維持できる剛性を有していない場合、図3に示す例のように、本例における隙間Sもつぶれていることも考えられる。つまり、図4に示す例において、各隙間Sをかたどる粘着テープTの一部が内側の被着体に固着した状態となり、隙間Sがつぶれ、より小さい隙間Sに分けられることも考えられる。
【0058】
<実施形態2の効果等>
本例によっても、実施形態1と同様に、粘着テープTと電線12との間に隙間Sがある分、第2テープ巻保護部30の外径が増し、エッジが電線12に達し難い。第2テープ巻保護部30は、粘着テープTによって形成可能である。これらより、保護性能の高い保護部が設けられつつ、結束用の粘着テープTとの持ち替え作業が生じにくい。
【0059】
本例によると、第2テープ巻保護部30において各層に隙間Sが形成されているため、電線12の周方向に沿ってなるべく広い領域に隙間Sをつくることができる。
【0060】
第2テープ巻保護部30は、定位置巻きによって形成されてもよい。この場合、所定の位置に簡易に複数の隙間Sが形成される。また第2テープ巻保護部30は、オーバーラップ巻きによって形成されてもよい。この場合、隙間Sの数とオーバーラップ巻部における層の数とが一致することが好ましい。具体的には、図4に示すように、電線12の周方向に沿って隙間Sが4か所に設けられる場合、オーバーラップ巻部24はラップ代が4分の3であるの4層とされることが好ましい。これにより、電線12の長手方向に沿った一つの位置に4つの隙間Sを形成することができる。
【0061】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。例えば一のワイヤーハーネスに第1テープ巻保護部20及び第2テープ巻保護部30が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10、110 ワイヤーハーネス
12 電線
20 第1テープ巻保護部(テープ巻保護部)
22 端部巻部
24 オーバーラップ巻部
30 第2テープ巻保護部(テープ巻保護部)
31 第1層
32 第2層
33 第3層
34 第4層
S 隙間
T 粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8