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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】インバータ制御装置及び車載用流体機械
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230124BHJP
   H02P 23/20 20160101ALI20230124BHJP
   H02P 23/04 20060101ALI20230124BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P23/20
H02P23/04
H02P27/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019216744
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021087334
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆
(72)【発明者】
【氏名】名嶋 一記
(72)【発明者】
【氏名】高見 知寛
(72)【発明者】
【氏名】永田 芳樹
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-144361(JP,A)
【文献】特開2017-180211(JP,A)
【文献】特開2000-083392(JP,A)
【文献】国際公開第2008/142756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 23/20
H02P 23/04
H02P 27/08
H02P 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用流体機械に設けられた電動モータを駆動させるインバータ回路の制御に用いられるインバータ制御装置であって、
外部から繰り返し送信される指令回転速度を取得する取得部と、
前回取得された前記指令回転速度である旧指令回転速度が取得されたタイミングから今回取得された前記指令回転速度である新指令回転速度が取得されたタイミングまでの期間である指令取得間隔をカウントするカウント部と、
前記取得部によって前記指令回転速度が取得されたことに基づいて、前記電動モータの目標加速度を設定する加速度設定部と、
前記加速度設定部によって設定された前記目標加速度で前記電動モータが回転するように前記インバータ回路を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記加速度設定部は、前記カウント部によってカウントされた前記指令取得間隔と前記新指令回転速度とに基づいて、前記目標加速度としての指令加速度を算出する算出部を備えていることを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
前記電動モータの回転速度である実回転速度を把握する把握部を備え、
前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と前記把握部によって把握される前記実回転速度との差を前記指令取得間隔で割った値を算出する請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と前記旧指令回転速度との差を前記指令取得間隔で割った値を算出する請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記加速度設定部は、前記指令加速度が0である場合には、前記目標加速度として、現在設定されている値を維持する請求項3に記載のインバータ制御装置。
【請求項5】
車載用流体機械に設けられた電動モータを駆動させるインバータ回路の制御に用いられるインバータ制御装置であって、
外部から繰り返し送信される指令回転速度を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される前記指令回転速度が変更されたことに基づいて、前記電動モータの目標加速度を設定する加速度設定部と、
前記加速度設定部によって設定された前記目標加速度で前記電動モータが回転するように前記インバータ回路を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記加速度設定部は、
前回前記指令回転速度が変更されたタイミングから今回前記指令回転速度が変更されたタイミングまでの期間である指令変更間隔をカウントするカウント部と、
前記カウント部によってカウントされた前記指令変更間隔と、今回変更された前記指令回転速度である新指令回転速度とに基づいて、前記目標加速度としての指令加速度を算出する算出部と、
を備えていることを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項6】
前記電動モータの回転速度である実回転速度を把握する把握部を備え、
前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と前記把握部によって把握される前記実回転速度との差を前記指令変更間隔で割った値を算出する請求項5に記載のインバータ制御装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と変更前の前記指令回転速度である変更前指令回転速度との差を、前記指令変更間隔で割った値を算出する請求項5に記載のインバータ制御装置。
【請求項8】
前記加速度設定部は、前記指令加速度が予め定められた上限加速度以上である場合には、前記目標加速度として前記上限加速度を設定する請求項1~7のうちいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【請求項9】
前記加速度設定部は、前記指令加速度が予め定められた下限加速度以下である場合には、前記目標加速度として前記下限加速度を設定する請求項1~8のうちいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【請求項10】
前記電動モータが起動してから予め定められた起動期間が経過するまでは、前記取得部による前記指令回転速度の取得の有無に関わらず、予め定められた起動加速度で前記電動モータを加速させる起動制御部を備えている請求項1~9のうちいずれか一項に記載のインバータ制御装置。
【請求項11】
電動モータと、
前記電動モータを駆動させるインバータ回路と、
請求項1~10のうちいずれか一項に記載のインバータ制御装置と、
を備えていることを特徴とする車載用流体機械。
【請求項12】
前記車載用流体機械は、前記電動モータによって駆動する圧縮部を備えた車載用電動圧縮機である請求項11に記載の車載用流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御装置及び車載用流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用流体機械に設けられた電動モータを駆動させるインバータの制御に用いられるインバータ制御装置として、例えば特許文献1に示すものがある。特許文献1には、外部から定期的に送信される指令回転速度としての指令回転数を取得し、実回転速度としての実回転数と指令回転数との差及び予め定められた一定の更新間隔とに基づいて、加速度としての回転数の変化率を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-144361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車載用流体機械が搭載される車両の仕様などによっては、外部から送信される指令回転速度が定期的に送信されない場合がある。この場合、予め定められた更新間隔で指令回転速度が取得されないため、上記のように予め定められた更新間隔に基づいて加速度を算出する構成では、実回転速度と指令回転速度との間にずれが生じ易くなり、指令回転速度の変化に対する実回転速度の追従性が低下し得る。指令回転速度の変化に対する実回転速度の追従性が低下すると、車載用流体機械のNV(振動・騒音)特性が低下し得る。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は外部から指令回転速度が不定期で送信される場合であっても、実回転速度の追従性の向上を図り、NV特性の向上を図ることができるインバータ制御装置及び当該インバータ制御装置が搭載された車載用流体機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するインバータ制御装置は、車載用流体機械に設けられた電動モータを駆動させるインバータ回路の制御に用いられるものであって、外部から繰り返し送信される指令回転速度を取得する取得部と、前回取得された前記指令回転速度である旧指令回転速度が取得されたタイミングから今回取得された前記指令回転速度である新指令回転速度が取得されたタイミングまでの期間である指令取得間隔をカウントするカウント部と、前記取得部によって前記指令回転速度が取得されたことに基づいて、前記電動モータの目標加速度を設定する加速度設定部と、前記加速度設定部によって設定された前記目標加速度で前記電動モータが回転するように前記インバータ回路を制御する駆動制御部と、を備え、前記加速度設定部は、前記カウント部によってカウントされた前記指令取得間隔と前記新指令回転速度とに基づいて、前記目標加速度としての指令加速度を算出する算出部を備えていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、指令取得間隔をカウントすることにより、外部から送信される指令回転速度の送信周期が不定期であっても指令取得間隔を把握することができる。そして、カウントされた指令取得間隔と新指令回転速度とに基づいて指令加速度を算出することにより、指令取得間隔が変動する場合であっても、実回転速度の変化率を指令回転速度の変化率に近づけることができ、指令回転速度の変化に対する電動モータの実回転速度の変化の追従性を向上させ、NV特性を向上させることができる。
【0008】
上記インバータ制御装置について、前記電動モータの回転速度である実回転速度を把握する把握部を備え、前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と前記把握部によって把握される前記実回転速度との差を前記指令取得間隔で割った値を算出するとよい。
【0009】
かかる構成によれば、指令加速度を算出するのに用いるパラメータとして実回転速度と新指令回転速度との差が採用されているため、実回転速度の変化率を指令回転速度の変化率に近づけつつ、比較的早期に実回転速度を指令回転速度に近づけることができる。
【0010】
詳述すると、例えば旧指令回転速度が実回転速度よりも小さい状況下で旧指令回転速度よりも大きい新指令回転速度が取得された場合、実回転速度と新指令回転速度との差に基づいて算出する場合の方が、旧指令回転速度と新指令回転速度との差に基づいて算出する場合よりも、指令加速度が大きくなる。これにより、早期に実回転速度を新指令回転速度に近づけることができる。
【0011】
上記インバータ制御装置について、前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と前記旧指令回転速度との差を前記指令取得間隔で割った値を算出するとよい。
かかる構成によれば、指令取得間隔ごとにおける単位時間当たりの指令回転速度の変化率と実回転速度の変化率とを同一に近づけることができる。また、実回転速度と旧指令回転速度とが一致していない場合に生じ得る意図しない急加速または急減速を抑制できる。
【0012】
上記インバータ制御装置について、前記加速度設定部は、前記指令加速度が0である場合には、前記目標加速度として、現在設定されている値を維持するとよい。
かかる構成によれば、今回取得された新指令回転速度が前回取得された旧指令回転速度と同一である場合には、現在設定されている目標加速度が維持される。これにより、旧指令回転速度と同一の新指令回転速度が取得されることに起因して、実回転速度が指令回転速度に到達していないにも関わらず定速回転が行われるという不都合を抑制できる。
【0013】
上記目的を達成するインバータ制御装置は、車載用流体機械に設けられた電動モータを駆動させるインバータ回路の制御に用いられるものであって、外部から繰り返し送信される指令回転速度を取得する取得部と、前記取得部によって取得される前記指令回転速度が変更されたことに基づいて、前記電動モータの目標加速度を設定する加速度設定部と、前記加速度設定部によって設定された前記目標加速度で前記電動モータが回転するように前記インバータ回路を制御する駆動制御部と、を備え、前記加速度設定部は、前回前記指令回転速度が変更されたタイミングから今回前記指令回転速度が変更されたタイミングまでの期間である指令変更間隔をカウントするカウント部と、前記カウント部によってカウントされた前記指令変更間隔と、今回変更された前記指令回転速度である新指令回転速度とに基づいて、前記目標加速度としての指令加速度を算出する算出部と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、指令変更間隔をカウントすることにより、外部から送信される指令回転速度の送信周期が不定期であっても指令変更間隔を把握することができる。そして、カウントされた指令変更間隔と新指令回転速度とに基づいて指令加速度が算出されるため、指令回転速度が不定期に取得されることに起因して指令変更間隔が変動する場合であっても、実回転速度の変化率を指令回転速度の変化率に近づけることができ、指令回転速度の変化に対する電動モータの実回転速度の変化の追従性を向上させ、NV特性を向上させることができる。
【0015】
特に、本構成では、指令回転速度が変更されたことに基づいて目標加速度が設定されるため、同一の指令回転速度が取得された場合であっても目標加速度が変更されない。これにより、指令回転速度の変更がないにも関わらず電動モータの加速度が変更されることを抑制できる。したがって、加速度が変化することに起因するNV特性の悪化抑制と、指令回転速度の変化と電動モータの加速度の変化との連動性の向上とを図ることができる。
【0016】
上記インバータ制御装置について、前記電動モータの回転速度である実回転速度を把握する把握部を備え、前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と前記把握部によって把握される前記実回転速度との差を前記指令変更間隔で割った値を算出するとよい。
【0017】
かかる構成によれば、指令加速度を算出するのに用いるパラメータとして新指令回転速度と実回転速度との差が採用されているため、実回転速度の変化率を指令回転速度の変化率に近づけつつ、比較的早期に実回転速度を指令回転速度に近づけることができる。
【0018】
詳述すると、例えば変更前指令回転速度が実回転速度よりも小さい状況下で変更前指令回転速度よりも大きい新指令回転速度が取得された場合、実回転速度と新指令回転速度との差に基づいて算出する場合の方が、変更前指令回転速度と新指令回転速度との差に基づいて算出する場合よりも、指令加速度が大きくなる。これにより、早期に実回転速度を新指令回転速度に近づけることができる。
【0019】
上記インバータ制御装置について、前記算出部は、前記指令加速度として、前記新指令回転速度と変更前の前記指令回転速度である変更前指令回転速度との差を、前記指令変更間隔で割った値を算出するとよい。
【0020】
かかる構成によれば、指令変更間隔ごとにおける単位時間当たりの指令回転速度の変化率と実回転速度の変化率とを同一に近づけることができる。また、実回転速度と変更前指令回転速度とが一致していない場合に生じ得る意図しない急加速または急減速を抑制できる。
【0021】
特に、本構成によれば、指令回転速度が変更された場合にのみ指令加速度が算出されるため、指令加速度が「0」となることがない。これにより、指令加速度が「0」となる場合を考慮する必要がないため、構成の簡素化を図ることができる。
【0022】
上記インバータ制御装置について、前記加速度設定部は、前記指令加速度が予め定められた上限加速度以上である場合には、前記目標加速度として前記上限加速度を設定するとよい。
【0023】
かかる構成によれば、指令加速度が過度に高くなる場合には、電動モータは上限加速度にて加速する。これにより、電動モータに過度な負担が付与されることを抑制できる。
上記インバータ制御装置について、前記加速度設定部は、前記指令加速度が予め定められた下限加速度以下である場合には、前記目標加速度として前記下限加速度を設定するとよい。
【0024】
かかる構成によれば、指令加速度が過度に小さくなる場合には、電動モータは下限加速度にて減速する。これにより、電動モータに過度な負担が付与されることを抑制できる。
上記インバータ制御装置について、前記電動モータが起動してから予め定められた起動期間が経過するまでは、前記取得部による前記指令回転速度の取得の有無に関わらず、予め定められた起動加速度で前記電動モータを加速させる起動制御部を備えているとよい。
【0025】
かかる構成によれば、起動期間中に指令回転速度が取得された場合であっても、指令加速度による加速は行われず、起動加速度による加速が行われる。これにより、電動モータの立ち上がりが不安定となって起動が失敗する不都合を抑制でき、電動モータを安定して起動させることができる。
【0026】
上記目的を達成する車載用流体機械は、電動モータと、前記電動モータを駆動させるインバータ回路と、上述したインバータ制御装置と、を備えていることを特徴とする。
上記車載用流体機械は、前記電動モータによって駆動する圧縮部を備えた車載用電動圧縮機であるとよい。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、外部から指令回転速度が不定期で送信される場合であっても、実回転速度の追従性の向上を図り、NV特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】車載用電動圧縮機の概要を示すブロック図。
図2】インバータ回路及びインバータ制御装置の電気的構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態の回転制御処理を示すフローチャート。
図4】第1実施形態の目標加速度設定処理を示すフローチャート。
図5】第1実施形態における指令回転速度の時間変化と実回転速度の時間変化とを示すグラフ。
図6】第2実施形態におけるインバータ制御装置の電気的構成を示すブロック図。
図7】第2実施形態の目標加速度設定処理を示すフローチャート。
図8】第2実施形態における指令回転速度の時間変化と実回転速度の時間変化とを示すグラフ。
図9】第3実施形態の回転制御処理を示すフローチャート。
図10】第3実施形態の目標加速度設定処理を示すフローチャート。
図11】第3実施形態における指令回転速度の時間変化と実回転速度の時間変化とを示すグラフ。
図12】第4実施形態におけるインバータ制御装置の電気的構成を示すブロック図。
図13】第4実施形態の目標加速度設定処理を示すフローチャート。
図14】第4実施形態における指令回転速度の時間変化と実回転速度の時間変化とを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、インバータ制御装置、当該インバータ制御装置が搭載された車載用流体機械の一実施形態について説明する。本実施形態では、車載用流体機械は車載用電動圧縮機であり、当該車載用電動圧縮機は車載用空調装置に用いられる。
【0030】
車載用空調装置及び車載用電動圧縮機の概要について説明する。
図1に示すように、車両100に搭載されている車載用空調装置101は、車載用電動圧縮機10と、車載用電動圧縮機10に対して流体としての冷媒を供給する外部冷媒回路102とを備えている。
【0031】
外部冷媒回路102は、例えば熱交換器及び膨張弁等を有している。車載用空調装置101は、車載用電動圧縮機10によって冷媒が圧縮され、且つ、外部冷媒回路102によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0032】
車載用空調装置101は、当該車載用空調装置101の全体を制御する空調ECU103を備えている。空調ECU103は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、車載用電動圧縮機10に対して指令回転速度Ncなどの各種指令を送信する。
【0033】
車両100は、車載用蓄電装置104を備えている。車載用蓄電装置104は、直流電力の充放電が可能なものであれば任意であり、例えば二次電池や電気二重層キャパシタ等である。車載用蓄電装置104は、車載用電動圧縮機10の直流電源として用いられる。
【0034】
車載用電動圧縮機10は、電動モータ11と、電動モータ11によって駆動する圧縮部12と、電動モータ11を駆動させるインバータ回路13と、インバータ回路13の制御に用いられるインバータ制御装置14とを備えている。
【0035】
電動モータ11は、回転軸21と、回転軸21に固定されたロータ22と、ロータ22に対して対向配置されているステータ23と、ステータ23に捲回された3相コイル24u,24v,24wとを有している。ロータ22は永久磁石22aを含んでいる。詳細には、永久磁石22aはロータ22内に埋め込まれている。図2に示すように、3相コイル24u,24v,24wは例えばY結線されている。ロータ22及び回転軸21は、3相コイル24u,24v,24wが所定のパターンで通電されることにより回転する。すなわち、本実施形態の電動モータ11は、3相モータである。
【0036】
なお、3相コイル24u,24v,24wの結線態様は、Y結線に限られず任意であり、例えばデルタ結線でもよい。また、電動モータ11の回転速度及び加速度とは、ロータ22の回転速度及び加速度を意味する。
【0037】
圧縮部12は、電動モータ11が駆動することによって流体(本実施形態では冷媒)を圧縮するものである。詳細には、圧縮部12は、回転軸21が回転することによって、外部冷媒回路102から供給された吸入冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を吐出する。圧縮部12の具体的な構成は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等任意である。
【0038】
インバータ回路13は、車載用蓄電装置104から入力される直流電力を交流電力に変換するものである。図2に示すように、インバータ回路13は、u相コイル24uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2と、v相コイル24vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2と、w相コイル24wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2と、を備えている。
【0039】
各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2(以下、「各スイッチング素子Qu1~Qw2」という。)は、例えばIGBT等のパワースイッチング素子である。但し、各スイッチング素子Qu1~Qw2は、IGBTに限られず、任意である。なお、スイッチング素子Qu1~Qw2は、還流ダイオード(ボディダイオード)Du1~Dw2を有している。
【0040】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は接続線を介して互いに直列に接続されており、その接続線はu相コイル24uに接続されている。u相スイッチング素子Qu1のコレクタは、車載用蓄電装置104の高圧側である正極端子(+端子)に接続されている。u相スイッチング素子Qu2のエミッタは、車載用蓄電装置104の低圧側である負極端子(-端子)に接続されている。
【0041】
なお、他のスイッチング素子Qv1,Qv2,Qw1,Qw2の接続態様は、対応するコイルが異なる点を除いて、u相スイッチング素子Qu1,Qu2と同様である。
インバータ制御装置14は、CPU及びメモリ等といった電子部品を有するコントローラである。インバータ制御装置14は、インバータ回路13、詳細には各スイッチング素子Qu1~Qw2を制御することにより、電動モータ11を駆動させる。
【0042】
インバータ制御装置14は、インバータ回路13の入力電圧Vinを検出する電圧センサ31と、電動モータ11に流れるモータ電流を検出する電流センサ32とを備えている。入力電圧Vinは、車載用蓄電装置104の電圧とも言えるし、電源電圧とも言える。また、本実施形態におけるモータ電流とは、3相コイル24u,24v,24wに流れる3相電流である。
【0043】
図2に示すように、インバータ制御装置14は、ロータ22の回転位置及び回転速度を推定する位置/速度推定部(位置推定部)33を備えている。位置/速度推定部33は、モータ電流と指令回転速度Ncとに基づいて、ロータ22の回転位置及び実際の回転速度である実回転速度Nrとを推定する。指令回転速度Nc及び実回転速度Nrの単位は任意であるが、例えばrpmが考えられる。
【0044】
位置/速度推定部33の具体的な構成は任意である。例えば位置/速度推定部33は、3相電流を3相/2相変換する変換部と、変換部によって変換された2相電流とモータ定数等とに基づいて3相コイル24u,24v,24wにて誘起される誘起電圧を算出する誘起電圧算出部と、を有してもよい。この場合、位置/速度推定部33は、誘起電圧と、2相電流のうちのd軸電流等とに基づいて、ロータ22の回転位置及び実回転速度Nrを推定する。
【0045】
位置/速度推定部33は、電流センサ32の検出結果を定期的に把握しており、定期的にロータ22の回転位置及び実回転速度Nrを推定している。これにより、位置/速度推定部33は、ロータ22の回転位置及び実回転速度Nrの変化に追従している。
【0046】
インバータ制御装置14は、外部としての空調ECU103から繰り返し送信される指令回転速度Ncを取得する取得部34と、取得部34によって取得される指令回転速度Ncに基づいて電動モータ11の回転制御を行う回転制御部35と、を備えている。
【0047】
取得部34は、例えば空調ECU103とインバータ制御装置14とを電気的に接続するためのコネクタなどである。取得部34によって空調ECU103とインバータ制御装置14とが電気的に接続され、情報のやり取りが可能となる。なお、取得部34は、指令回転速度Ncなどの各種指令が入力される入力部ともいえる。
【0048】
ここで、空調ECU103は、車載用電動圧縮機10の運転中、指令回転速度Ncを繰り返し送信するように構成されている。本実施形態では、空調ECU103は、指令回転速度Ncを定期的又は不定期的に送信する。すなわち、空調ECU103は、車内温度やカーエアコンの設定温度等の状況に応じて、定期的に指令回転速度Ncを送信する場合もあるし、不定期的に指令回転速度Ncを送信する場合もある。このため、取得部34は、指令回転速度Ncを定期的又は不定期的に取得する。すなわち、本実施形態では、指令回転速度Ncが取得される間隔である指令取得間隔Txは、一定ではなく変動し得る。
【0049】
回転制御部35は、取得部34と電気的に接続されている。回転制御部35は、取得部34を介して空調ECU103と電気的に接続されており、取得部34によって取得された指令回転速度Ncは回転制御部35に入力される。つまり、回転制御部35は、取得部34を介して空調ECU103からの各種指令を受信する。
【0050】
ちなみに、本実施形態の回転制御部35は、予め定められた異常判定期間に亘って指令を受信しない場合、すなわち取得部34によって指令が取得されない場合には、空調ECU103との通信に異常があると判定する通信異常機能(換言すれば通信異常部)を備えている。
【0051】
かかる構成において、本実施形態の空調ECU103は、指令回転速度Ncを変更しない場合であっても指令回転速度Ncを送信してもよい。例えば、空調ECU103は、前回指令回転速度Ncを送信してから予め定められた期間(好ましくは異常判定期間よりも短い期間)が経過した場合には、前回の指令回転速度Ncと同一値の指令回転速度Ncを送信する構成でもよい。これにより、回転制御部35にて通信異常と誤って判定されることを抑制できる。
【0052】
本実施形態では、空調ECU103は、車載用電動圧縮機10を停止させる場合には停止指令をインバータ制御装置14に向けて送信する。この場合、停止指令は、取得部34によって取得され、回転制御部35に向けて送信される。
【0053】
回転制御部35は、電圧センサ31と電気的に接続されており、入力電圧Vinを把握可能となっている。
また、回転制御部35は、位置/速度推定部33と電気的に接続されている。これにより、回転制御部35は、位置/速度推定部33によって推定されたロータ22の回転位置及び実回転速度Nrを把握可能となっているとともに、位置/速度推定部33に対して推定に必要なパラメータを送信可能となっている。
【0054】
回転制御部35は、インバータ回路13を制御することにより電動モータ11を制御する。詳細には、回転制御部35は、インバータ回路13の各スイッチング素子Qu1~Qw2をPWM制御することにより、モータ電流を制御して、電動モータ11(詳細にはロータ22)の回転制御を行う。
【0055】
本実施形態では、回転制御部35は、予め定められた起動条件が成立したことに基づいて、回転制御処理を実行する。回転制御処理は、電動モータ11を起動させる処理と、取得部34によって取得される指令回転速度Nc等に基づいて目標加速度αtを設定する処理と、設定された目標加速度αtによる加減速が行われるようにインバータ回路13を制御する処理と、を含む。
【0056】
なお、回転制御処理の開始契機となる起動条件は、例えば電動モータ11が停止していることと、指令回転速度Ncが取得されたこととを含むものであれば任意である。例えば、起動条件は、電動モータ11が停止中に指令回転速度Ncが取得されたことでもよいし、空調ECU103が指令回転速度Ncに関する情報を含む起動指令を送信する構成においては、取得部34によって起動指令が取得されることでもよい。
【0057】
回転制御処理を実行する回転制御部35の具体的なハード構成は任意である。例えば、回転制御部35は、回転制御処理のプログラムや必要な情報が記憶されたメモリと、上記プログラムに基づいて回転制御処理を実行するCPUとを有する構成でもよい。この場合、回転制御部35は、例えば目標加速度αtを設定する処理を実行するCPUと、目標加速度αtに基づいて各スイッチング素子Qu1~Qw2をPWM制御するPWM用CPUと、を含む構成でもよい。
【0058】
また、回転制御部35は、回転制御処理の各処理を実行する1又は複数のハードウェア回路を有する構成でもよいし、1又は複数のハードウェア回路とソフトウェア処理を実行するCPUとの組み合わせでもよい。換言すれば、回転制御部35は、例えば1つ以上の専用のハードウェア回路、及び、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)の少なくとも一方によって実現されていればよい。
【0059】
図3を用いて回転制御処理について説明する。
図3に示すように、回転制御部35は、ステップS101にて、電動モータ11が起動加速度α0で加速するようにインバータ回路13を制御する。起動加速度α0は、回転制御処理の開始契機となった指令回転速度Ncの値に応じて変動しない固定値である。
【0060】
ステップS101の処理を実行するための具体的な構成は任意であるが、例えば図2に示すように、回転制御部35には、加速度が記憶される加速度記憶領域35aが設けられており、回転制御部35は、加速度記憶領域35aに記憶されている加速度にて電動モータ11を加減速するように構成されている。すなわち、加速度記憶領域35aに記憶されている加速度は、インバータ制御装置14が電動モータ11を加減速させる際の目標加速度αtであり、加速度記憶領域35aは目標加速度αtが記憶される領域である。
【0061】
かかる構成において、回転制御部35は、ステップS101では、加速度記憶領域35aに起動加速度α0を設定し、電動モータ11が起動加速度α0にて加速するようにインバータ回路13を制御する。
【0062】
図3に示すように、回転制御部35は、ステップS101の実行後、ステップS102にて、指令回転速度Ncの更新処理を実行する。詳細には、図2に示すように、回転制御部35には、今回取得された指令回転速度Ncである新指令回転速度Ncaが記憶される新指令記憶領域35bが設けられている。回転制御部35は、回転制御処理の開始契機となった指令回転速度Ncを新指令記憶領域35bに記憶させる。
【0063】
図3に示すように、回転制御部35は、続くステップS103にて、指令回転速度Ncが取得される間隔である指令取得間隔Txのカウントをスタートする。
詳細には、既に説明したとおり、指令回転速度Ncが取得されるタイミングが不定期となる場合がある。このため、回転制御部35は、今回の指令回転速度Ncが取得されたタイミングから次の指令回転速度Ncが取得されたタイミングまでの間隔である指令取得間隔Txの計測を開始する。指令取得間隔Txを計測するための具体的な構成は任意であるが、例えば回転制御部35は、予め定められた周期でタイマカウンタを更新する構成などが考えられる。
【0064】
その後、回転制御部35は、ステップS104にて、起動加速度α0による加速が開始されてから予め定められた起動期間T0が経過するまで待機する。起動期間T0は、回転制御処理の開始契機となった指令回転速度Ncの値に応じて変動しない固定値である。
【0065】
ここで、回転制御部35は、起動期間T0の経過中に指令回転速度Ncが取得されたとしても、指令回転速度Ncに対応する処理を実行しない。つまり、回転制御部35は、電動モータ11が起動してから起動期間T0が経過するまでは、取得部34による指令回転速度Ncの取得の有無に関わらず、起動加速度α0による加速を維持する。
【0066】
本実施形態では、指令回転速度Ncの下限値は予め定められている。この場合、起動加速度α0及び起動期間T0は、起動期間T0経過後の実回転速度Nrが指令回転速度Ncの下限値よりも高くならないように設定されているとよい。
【0067】
回転制御部35は、起動期間T0に亘って起動加速度α0による加速が行われた後は、ステップS105に進み、予め定められた初期加速度α1により電動モータ11を加速させる。
【0068】
初期加速度α1は、例えば起動加速度α0よりも小さい。これにより、初期加速度α1による加速中におけるNV特性は、起動加速度α0による加速中よりも向上する。ただし、初期加速度α1の具体的な値は任意であり、起動加速度α0と同一でもよいし、起動加速度α0よりも大きくてもよい。
【0069】
すなわち、回転制御部35は、電動モータ11を起動させる場合には、指令回転速度Ncに関わらず予め定められた起動加速度α0で起動期間T0に亘って電動モータ11を起動させ、その後は初期加速度α1にて電動モータ11を加速させる。
【0070】
その後、回転制御部35は、ステップS106~S108にて、実回転速度Nrが現在設定されている新指令回転速度Ncaとなるようにするための処理を実行する。詳細には、回転制御部35は、ステップS106にて、位置/速度推定部33によって推定された実回転速度Nrを把握し、実回転速度Nrが目標値である新指令回転速度Ncaと一致しているか否かを判定する。
【0071】
実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaと一致していない場合には、回転制御部35は、ステップS107にて、実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaに近づくように目標加速度αtで加減速を行う加減速制御処理を実行する。目標加速度αtとは、加速度記憶領域35aに記憶されている加速度であり、現在設定されている加速度ともいえる。
【0072】
回転制御部35は、目標加速度αtが正である場合には電動モータ11を加速させる一方、目標加速度αtが負である場合には電動モータ11を減速させる。つまり、本実施形態の目標加速度αtは正又は負の値をとり得るパラメータである。回転制御部35は、ステップS107の処理を実行した後はステップS109に進む。
【0073】
一方、実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaと一致している場合には、回転制御部35は、ステップS106を肯定判定して、ステップS108に進む。回転制御部35は、ステップS108にて、電動モータ11が現状の回転速度(すなわち新指令回転速度Nca)を維持するようにインバータ回路13を制御する定速制御処理を実行して、ステップS109に進む。詳細には、回転制御部35は、加速度記憶領域35aに「0」を設定し、加速度記憶領域35aに「0」が記憶されていることに基づいて、電動モータ11の定速回転を行う。
【0074】
回転制御部35は、ステップS109では、停止指令を受信したか否かを判定する。すなわち、回転制御部35は、取得部34によって停止指令が取得されたか否かを判定する。回転制御部35は、停止指令を受信している場合には、ステップS110に進み、電動モータ11を停止させる停止処理を実行して、本回転制御処理を終了する。停止処理の一例としては、回転制御部35は、電動モータ11(各相コイル24u~24w)への通電が停止するようにインバータ回路13を制御することが考えられる。
【0075】
回転制御部35は、停止指令を受信していない場合、すなわち取得部34によって停止指令が取得されていない場合には、ステップS111に進む。ステップS111では、回転制御部35は、新たな指令回転速度Ncを受信したか否か、すなわち取得部34によって指令回転速度Ncが取得されたか否かを判定する。
【0076】
回転制御部35は、新たな指令回転速度Ncを受信していない場合には、そのままステップS106に戻る一方、新たな指令回転速度Ncを受信している場合には、ステップS112にて目標加速度設定処理を実行する。
【0077】
図4を用いて目標加速度設定処理について説明する。
図4に示すように、回転制御部35は、まずステップS201にて、指令回転速度Ncの更新処理を実行する。詳細には、回転制御部35は、今回取得した指令回転速度Ncを新指令回転速度Ncaとして新指令記憶領域35bに記憶させる。すなわち、今回の目標加速度設定処理の実行契機となった指令回転速度Ncが新指令回転速度Ncaとして設定される。
【0078】
続くステップS202では、回転制御部35は、位置/速度推定部33の推定結果に基づいて実回転速度Nrを把握する。
その後、回転制御部35は、ステップS203にて、指令取得間隔Txを把握する。詳細には、回転制御部35は、ステップS103又はステップS211の処理によってカウントをスタートしたタイマカウンタのカウント値に基づいて、ステップS103又はステップS211の処理が行われてから現在までの期間をカウントする。すなわち、指令取得間隔Txとは、前回の指令回転速度Ncが取得されたタイミングから今回の指令回転速度Ncが取得されたタイミングまでの期間ともいえる。
【0079】
例えば、回転制御処理が開始されてから最初に指令回転速度Ncが取得された場合、換言すれば最初に目標加速度設定処理が行われた場合、指令取得間隔Txは、ステップS103の処理からの経過期間である。
【0080】
一方、回転制御処理が開始されてから2回目以降に指令回転速度Ncが取得された場合、換言すれば2回目以降の目標加速度設定処理が行われた場合、指令取得間隔Txは、前回の目標加速度設定処理(詳細にはステップS211の処理)が行われてから、今回の目標加速度設定処理(詳細にはステップS203の処理)が行われるまでの期間である。
【0081】
そして、回転制御部35は、ステップS204では、ステップS202及びステップS203の把握結果に基づいて、目標加速度αtとしての指令加速度αcを算出する算出処理を実行する。指令加速度αcは、目標加速度αtとして設定され得る加速度であり、今回取得された指令回転速度Ncに応じて変動する。
【0082】
本実施形態では、回転制御部35は、指令加速度αcとして、新指令回転速度Ncaから実回転速度Nrを差し引いた差を指令取得間隔Txで割った値を算出する(αc=(Nca-Nr)/Tx)。
【0083】
ここで、既に説明したとおり、本実施形態の空調ECU103は、前回の指令回転速度Ncと同一値の指令回転速度Ncを新たに送信する場合がある。このため、前回取得された指令回転速度Ncである旧指令回転速度Ncbと、今回取得された指令回転速度Ncである新指令回転速度Ncaとが同一となる場合がある。仮に実回転速度Nrが旧指令回転速度Ncbと一致しており、且つ、新指令回転速度Ncaと旧指令回転速度Ncbとが同一である場合には、指令加速度αcは「0」となる。
【0084】
また、実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaよりも小さい場合には、指令加速度αcは正の値となる一方、実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaよりも大きい場合には、指令加速度αcは負の値となる。
【0085】
新指令回転速度Ncaと旧指令回転速度Ncbとの関係に着目すれば、指令取得間隔Txは、旧指令回転速度Ncbが取得されたタイミングから新指令回転速度Ncaが取得されたタイミングまでの期間といえる。
【0086】
続くステップS205では、回転制御部35は、指令加速度αcが予め定められた上限加速度αmax以上であるか否かを判定する。上限加速度αmaxは、例えば支障が生じない範囲内で電動モータ11を加速させることができる加速度の上限値であり、電動モータ11の規格やインバータ回路13の仕様等によって定められる。
【0087】
回転制御部35は、指令加速度αcが上限加速度αmax以上である場合には、ステップS206にて、目標加速度αtとして上限加速度αmaxを設定する。詳細には、回転制御部35は、加速度記憶領域35aに上限加速度αmaxを設定して、ステップS210に進む。
【0088】
一方、回転制御部35は、指令加速度αcが上限加速度αmax未満である場合には、ステップS207に進み、指令加速度αcが予め定められた下限加速度αmin以下であるか否かを判定する。
【0089】
下限加速度αminは、例えば支障が生じない範囲内で電動モータ11を減速させることができる加速度の下限値であり、電動モータ11の規格やインバータ回路13の仕様等によって定められる。本実施形態の下限加速度αminは負の値である。
【0090】
また、指令加速度αcが下限加速度αmin以下である場合とは、指令加速度αcが負の値であって、指令加速度αcの絶対値が下限加速度αminの絶対値よりも大きい場合である。
【0091】
回転制御部35は、指令加速度αcが下限加速度αmin以下である場合には、ステップS208にて、目標加速度αtとして下限加速度αminを設定する。詳細には、回転制御部35は、加速度記憶領域35aに下限加速度αminを設定してステップS210に進む。
【0092】
一方、回転制御部35は、指令加速度αcが下限加速度αminよりも大きい場合には、ステップS209にて、目標加速度αtとして指令加速度αcを設定する。詳細には、回転制御部35は、加速度記憶領域35aに指令加速度αcを設定して、ステップS210に進む。
【0093】
ステップS210では、回転制御部35は、指令取得間隔Txのカウントをリセットする。そして、回転制御部35は、ステップS211にて、指令取得間隔Txのカウントをスタートさせて、本目標加速度設定処理を終了する。これにより、今回取得した指令回転速度Ncの取得タイミングから次に取得される指令回転速度Ncの取得タイミングまでの期間がカウントされる。
【0094】
図2に示すように、回転制御部35は、ステップS112の目標加速度設定処理を実行後はステップS106に戻る。これにより、回転制御部35は、実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaと異なる場合には、実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaとなるように加速度記憶領域35aに記憶されている目標加速度αtで電動モータ11を加減速させる。
【0095】
かかる構成によれば、回転制御部35は、指令加速度αcが上限加速度αmax以上である場合には上限加速度αmaxで電動モータ11を加速させ、指令加速度αcが下限加速度αmin以下である場合には下限加速度αminで電動モータ11を減速させる。そして、回転制御部35は、指令加速度αcが下限加速度αminよりも大きく且つ上限加速度αmaxよりも小さい場合には、指令加速度αcで電動モータ11を回転させる。
【0096】
本実施形態では、ステップS103,S203,S211の処理を実行する回転制御部35が「カウント部」に対応し、ステップS106~S108の処理を実行する回転制御部35が「駆動制御部」に対応する。また、目標加速度設定処理を実行する回転制御部35が「加速度設定部」に対応し、ステップS204の処理を実行する回転制御部35が「算出部」に対応する。ステップS101,S104の処理を実行する回転制御部35が「起動制御部」に対応する。
【0097】
次に図5を用いて本実施形態の作用について説明する。図5は、取得される指令回転速度Ncの時間変化と、実回転速度Nrの時間変化とを示すグラフである。図5では、指令回転速度Ncの時間変化を一点鎖線で示し、実回転速度Nrの時間変化を実線で示す。なお、図5では起動からの加速の時間変化を示すが、減速についても同様である。
【0098】
図5に示すように、まずt0のタイミングで最初の指令回転速度Ncが取得されたとする。これにより、回転制御処理が開始され、車載用電動圧縮機10が起動する。詳細には、まず起動加速度α0にて電動モータ11が加速する。なお、t0のタイミングで取得した指令回転速度Ncを第1指令回転速度Nc1とする。
【0099】
t0のタイミングから起動期間T0が経過したt1のタイミングにて、加速度が起動加速度α0から初期加速度α1に変更される。これにより、電動モータ11は初期加速度α1で加速する。なお、t1のタイミングにおける実回転速度Nrを第1実回転速度Nr1とすると、第1実回転速度Nr1は第1指令回転速度Nc1よりも小さくなっている。
【0100】
その後、t2のタイミングにて第2指令回転速度Nc2が取得された場合、第1指令加速度αc1が算出され、第1指令加速度αc1にて電動モータ11が加速する。t0のタイミングからt2のタイミングまでを第1指令取得間隔Tx1とし、t2のタイミングにおける実回転速度Nrを第2実回転速度Nr2とすると、第1指令加速度αc1は、第2指令回転速度Nc2から第2実回転速度Nr2を差し引いた差を第1指令取得間隔Tx1で割った値である。
【0101】
続くt3のタイミングにて、第2指令回転速度Nc2と同一の第3指令回転速度Nc3が取得された場合、第2指令加速度αc2が算出され、当該第2指令加速度αc2にて電動モータ11が加速する。
【0102】
この場合、t2のタイミングからt3のタイミングまでを第2指令取得間隔Tx2とし、t3のタイミングにおける実回転速度Nrを第3実回転速度Nr3とすると、第2指令加速度αc2は、第3指令回転速度Nc3から第3実回転速度Nr3を差し引いた差を第2指令取得間隔Tx2で割った値である。
【0103】
ここで、本実施形態では、指令回転速度Ncを取得した時点における実回転速度Nrと指令取得間隔Txとに基づいて指令加速度αcを算出するため、第2指令回転速度Nc2と第3指令回転速度Nc3とが同一であっても、第1指令加速度αc1と第2指令加速度αc2とは異なる値となり得る。具体的には、第3実回転速度Nr3が第2実回転速度Nr2よりも指令回転速度Ncに近づいているため、第2指令加速度αc2は第1指令加速度αc1よりも小さくなる。これにより、実回転速度Nrは緩やかに指令回転速度Ncに近づくこととなる。
【0104】
t4のタイミングにて、第3指令回転速度Nc3よりも大きい第4指令回転速度Nc4が取得された場合、第3指令加速度αc3が算出され、当該第3指令加速度αc3にて電動モータ11が加速する。
【0105】
この場合、t3のタイミングからt4のタイミングまでを第3指令取得間隔Tx3とし、t4のタイミングにおける実回転速度Nrを第4実回転速度Nr4とすると、第3指令加速度αc3は、第4指令回転速度Nc4から第4実回転速度Nr4を差し引いた差を第3指令取得間隔Tx3で割った値である。
【0106】
続いてt5のタイミングにて、第4指令回転速度Nc4よりも大きい第5指令回転速度Nc5が取得された場合、第4指令加速度αc4が算出され、当該第4指令加速度αc4にて電動モータ11が加速する。
【0107】
この場合、t4のタイミングからt5のタイミングまでを第4指令取得間隔Tx4とし、t5のタイミングにおける実回転速度Nrを第5実回転速度Nr5とすると、第4指令加速度αc4は、第5指令回転速度Nc5から第5実回転速度Nr5を差し引いた差を第4指令取得間隔Tx4で割った値である。
【0108】
その後、t5のタイミングから第1加速期間T1が経過したt6のタイミングにて、実回転速度Nrが第5指令回転速度Nc5と一致し、その後定速回転が行われる。
上記のように、指令取得間隔Txと指令回転速度Ncとに基づいて算出された指令加速度αcにて電動モータ11の加速が行われることにより、指令取得間隔Txごとにおいて、単位時間当たりの指令回転速度Ncの変化率と実回転速度Nrの変化率とが近づいている。
【0109】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1-1)インバータ制御装置14は、車載用流体機械としての車載用電動圧縮機10に設けられた電動モータ11を駆動させるインバータ回路13の制御に用いられるものである。インバータ制御装置14は、外部(本実施形態では空調ECU103)から繰り返し送信される指令回転速度Ncを取得する取得部34と、電動モータ11の回転制御を行う回転制御部35と、を備えている。回転制御部35は、指令取得間隔Txをカウントする処理と、取得部34によって指令回転速度Ncが取得されたことに基づいて、電動モータ11の目標加速度αtを設定する目標加速度設定処理と、目標加速度αtで電動モータ11が回転するようにインバータ回路13を制御する処理と、を行うように構成されている。ここで、回転制御部35は、目標加速度設定処理において、指令取得間隔Txと新指令回転速度Ncaとに基づいて指令加速度αcを算出する算出処理を行うように構成されている。
【0110】
かかる構成によれば、指令取得間隔Txをカウントすることにより、外部から送信される指令回転速度Ncの送信周期が不定期であっても指令取得間隔Txを把握することができる。そして、カウントされた指令取得間隔Txと新指令回転速度Ncaとに基づいて指令加速度αcを算出することにより、指令取得間隔Txが変動する場合であっても、実回転速度Nrの変化率を指令回転速度Ncの変化率に近づけることができる。これにより、指令回転速度Ncの変化に対する電動モータ11の実回転速度Nrの変化の追従性を向上させ、NV特性の向上を図ることができる。
【0111】
(1-2)インバータ制御装置14は、電動モータ11の実際の回転速度である実回転速度Nrを把握する位置/速度推定部33を備えている。回転制御部35は、指令加速度αcとして、新指令回転速度Ncaと実回転速度Nrとの差を指令取得間隔Txで割った値を算出する。
【0112】
かかる構成によれば、指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして実回転速度Nrと新指令回転速度Ncaとの差が採用されているため、実回転速度Nrの変化率を指令回転速度Ncの変化率に近づけつつ、比較的早期に実回転速度Nrを指令回転速度Ncに近づけることができる。
【0113】
詳述すると、例えば旧指令回転速度Ncbが実回転速度Nrよりも小さい状況下で旧指令回転速度Ncbよりも大きい新指令回転速度Ncaが取得された場合、実回転速度Nrと新指令回転速度Ncaとの差に基づいて算出する方が、旧指令回転速度Ncbと新指令回転速度Ncaとの差に基づいて算出する場合よりも、指令加速度αcが大きくなる。これにより、早期に実回転速度Nrを新指令回転速度Ncaに近づけることができる。
【0114】
(1-3)また、指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして新指令回転速度Ncaと実回転速度Nrとの差を採用することにより、旧指令回転速度Ncbと同一値の新指令回転速度Ncaが取得される場合にも好適に対応できる。
【0115】
詳述すると、仮に指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして新指令回転速度Ncaと旧指令回転速度Ncbとの差が採用される場合、新指令回転速度Ncaと旧指令回転速度Ncbとが同一であると、指令加速度αcが「0」となる。このため、電動モータ11は定速回転を行うこととなる。したがって、仮に新指令回転速度Ncaが取得されたタイミングにおいて新指令回転速度Ncaと実回転速度Nrとが異なっている場合、実回転速度Nrが新指令回転速度Ncaに近づかないという不都合が生じ得る。
【0116】
この点、本実施形態では、指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして新指令回転速度Ncaと実回転速度Nrとの差が採用されているため、新指令回転速度Ncaと旧指令回転速度Ncbとが同一である場合であっても上記不都合が生じない。
【0117】
むしろ、上述した図5のt2,t3のタイミングに示すように、t3のタイミングの方がt2のタイミングよりも、実回転速度Nrが指令回転速度Ncに近づいているため、第3指令加速度αc3が第2指令加速度αc2よりも小さくなり、実回転速度Nrが緩やかに指令回転速度Ncに近づく。これにより、NV特性の向上を図ることができる。
【0118】
(1-4)回転制御部35は、算出された指令回転速度Ncが予め定められた上限加速度αmax以上である場合には、目標加速度αtとして上限加速度αmaxを設定する。
かかる構成によれば、実回転速度Nrと新指令回転速度Ncaとの差が大きかったり、指令取得間隔Txが小さかったりすることに起因して、指令加速度αcが過度に大きくなる場合には、電動モータ11は上限加速度αmaxにて加速する。これにより、電動モータ11に過度な負担が付与されることを抑制できる。
【0119】
(1-5)回転制御部35は、算出された指令回転速度Ncが予め定められた下限加速度αmin以下である場合には、目標加速度αtとして下限加速度αminを設定する。
かかる構成によれば、実回転速度Nrと新指令回転速度Ncaとの差が大きかったり、指令取得間隔Txが小さかったりすることに起因して、指令加速度αcが過度に小さくなる場合には、電動モータ11は下限加速度αminにて減速する。これにより、電動モータ11に過度な負担が付与されることを抑制できる。
【0120】
なお、指令加速度αcが過度に小さくなる場合とは、例えば指令取得間隔Txが過度に短い状況下において実回転速度Nrに対して新指令回転速度Ncaが過度に小さい場合が考えられる。
【0121】
(1-6)回転制御部35は、電動モータ11が起動してから予め定められた起動期間T0が経過するまでは、取得部34による指令回転速度Ncの取得の有無に関わらず、予め定められた起動加速度α0で電動モータ11を加速させる。
【0122】
電動モータ11の起動時は動作が不安定になりやすい。このため、起動期間T0中に指令加速度αcによる電動モータ11の加速が行われると、電動モータ11の立ち上がりが不安定となって起動が失敗する不都合が懸念される。
【0123】
この点、本実施形態では、起動期間T0中に指令回転速度Ncが取得された場合であっても、指令加速度αcによる加速は行われず、起動加速度α0による加速が行われる。これにより、上記不都合を抑制でき、電動モータ11を安定して起動させることができる。
【0124】
(第2実施形態)
本実施形態では、指令加速度αcの算出態様等が第1実施形態と異なっている。その異なる点について以下に説明する。
【0125】
図6に示すように、本実施形態の回転制御部35には、新指令記憶領域35bと、前回取得された指令回転速度Ncである旧指令回転速度Ncbが記憶される旧指令記憶領域35cとが設けられている。これにより、回転制御部35は、指令加速度αcの算出に際して、旧指令回転速度Ncbと新指令回転速度Ncaとの双方を参照することができる。
【0126】
次に図7を用いて本実施形態の目標加速度設定処理について説明する。
図7に示すように、回転制御部35は、ステップS301にて、指令回転速度Ncの更新処理を実行する。
【0127】
ここで、本実施形態では、回転制御部35は、現在新指令記憶領域35bに記憶されている指令回転速度Ncを旧指令回転速度Ncbとして旧指令記憶領域35cに記憶させる。そして、回転制御部35は、今回取得した新たな指令回転速度Ncを新指令回転速度Ncaとして新指令記憶領域35bに記憶させる。すなわち、今回の目標加速度設定処理の実行契機となった指令回転速度Ncが新指令回転速度Ncaとして設定され、それまで設定されていた指令回転速度Ncが旧指令回転速度Ncbとして設定される。
【0128】
そして、回転制御部35は、ステップS203の処理の実行後、ステップS302にて、両指令記憶領域35b,35cに記憶されている情報とステップS203の把握結果とに基づいて目標加速度αtとしての指令加速度αcを算出する。詳細には、回転制御部35は、指令加速度αcとして、新指令回転速度Ncaから旧指令回転速度Ncbを差し引いた差を指令取得間隔Txで割った値を算出する(αc=(Nca-Ncb)/Tx)。
【0129】
その後、回転制御部35は、ステップS303にて、指令加速度αcが「0」であるか否かを判定する。指令加速度αcが「0」となる場合とは、新指令回転速度Ncaと旧指令回転速度Ncbとが同一である場合である。
【0130】
回転制御部35は、指令加速度αcが「0」でない場合には、ステップS205に進む一方、指令加速度αcが「0」である場合には、ステップS304に進み、現在設定されている目標加速度αtを維持する加速度継続処理を実行して、ステップS210に進む。
【0131】
すなわち、仮に指令加速度αcとして「0」が算出された場合、回転制御部35は、目標加速度αtとして、指令加速度αcの「0」を設定するのではなく、現在設定されている値を維持する。
【0132】
なお、ステップS205~S211の処理は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
次に図8を用いて本実施形態の作用について説明する。
【0133】
図8に示すように、t0のタイミングからt2のタイミングまでの実回転速度Nrの変化は第1実施形態と同様である。
t2のタイミングにて第2指令回転速度Nc2が取得されると、第1指令加速度αc1が算出され、当該第1指令加速度αc1にて電動モータ11が加速する。第1指令加速度αc1は、第2指令回転速度Nc2から第1指令回転速度Nc1を差し引いた差を第1指令取得間隔Tx1で割った値である。これにより、第1指令取得間隔Tx1における単位時間当たりの指令回転速度Ncの変化率と、実回転速度Nrの変化率とが一致する。
【0134】
その後、t3のタイミングにて、第2指令回転速度Nc2と同一の第3指令回転速度Nc3が取得されたとする。この場合、旧指令回転速度Ncbとしての第2指令回転速度Nc2と、新指令回転速度Ncaとしての第3指令回転速度Nc3とに基づいて算出される第2指令加速度αc2は「0」となるため、現在設定されている第1指令加速度αc1による加速が継続される。これにより、第3実回転速度Nr3と第3指令回転速度Nc3とが異なっているにも関わらず定速回転が行われる事態が回避される。
【0135】
続くt31のタイミングにて、実回転速度Nrが第3指令回転速度Nc3に到達して、定速回転が行われる。
その後、t4のタイミングにて第4指令回転速度Nc4が取得されると、第3指令加速度αc3が算出され、当該第3指令加速度αc3にて電動モータ11が加速する。第3指令加速度αc3は、第4指令回転速度Nc4から第3指令回転速度Nc3を差し引いた差を第3指令取得間隔Tx3で割った値である。
【0136】
続くt5のタイミングにて第5指令回転速度Nc5が取得されると、第4指令加速度αc4が算出され、当該第4指令加速度αc4にて電動モータ11が加速する。第4指令加速度αc4は、第5指令回転速度Nc5から第4指令回転速度Nc4を差し引いた差を第4指令取得間隔Tx4で割った値である。
【0137】
そして、t5のタイミングから第2加速期間T2が経過したt7のタイミングにて、実回転速度Nrが第5指令回転速度Nc5に到達して、電動モータ11の定速回転が行われる。
【0138】
ここで、第5指令回転速度Nc5と第4指令回転速度Nc4との差は、第5指令回転速度Nc5と第5実回転速度Nr5との差よりも小さいため、第2実施形態の第4指令加速度αc4は、第1実施形態の第4指令加速度αc4よりも小さくなる。このため、第2加速期間T2は、第1加速期間T1よりも長くなり易い。換言すれば、第2実施形態よりも第1実施形態の方が、早期に実回転速度Nrが第5指令回転速度Nc5に到達する。
【0139】
以上詳述した本実施形態によれば、(1-2),(1-3)の効果に代えて、以下の効果を奏する。
(2-1)回転制御部35は、指令加速度αcとして、新指令回転速度Ncaと旧指令回転速度Ncbとの差を指令取得間隔Txで割った値を算出する。
【0140】
かかる構成によれば、指令取得間隔Txごとにおける単位時間当たりの指令回転速度Ncの変化率と実回転速度Nrの変化率とを同一に近づけることができる。
(2-2)ここで、仮に指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして新指令回転速度Ncaと実回転速度Nrとの差が採用されている構成においては、実回転速度Nrと旧指令回転速度Ncbとが異なる場合、空調ECU103が意図しない急加速又は急減速が行われ、NV特性が悪化する不都合が懸念される。
【0141】
この点、本実施形態では、指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして、実回転速度Nrではなく旧指令回転速度Ncbが採用されているため、上記不都合が生じにくい。これにより、実回転速度Nrと指令回転速度Ncとが一致していないことに起因する上記不都合を抑制できる。
【0142】
(2-3)また、本実施形態によれば、実回転速度Nrを用いて指令加速度αcを算出する場合よりも指令加速度αcは緩やかな値になり易いため、加減速期間が長くなりやすい。このため、順次指令回転速度Ncが変更される加速または減速段階において定速となりにくいため、NV特性の悪化を抑制することができる。
【0143】
詳述すると、電動モータ11の音色は、定速状態と加減速状態とで異なっている。このため、定速状態と加減速状態とが交互に切り替わると、電動モータ11の音色が交互に切り替わり、騒音と認識され易い。
【0144】
この点、本実施形態では、第1実施形態と比較して加減速期間が長くなりやすいため、加減速中に新たな指令回転速度Ncが取得され易い。これにより、順次指令回転速度Ncが変更される加速または減速段階において定速状態と加減速状態とが交互に切り替わる事態を抑制でき、定速状態と加減速状態とに交互に切り替わることに起因するNV特性の悪化を抑制できる。
【0145】
(2-4)回転制御部35は、指令加速度αcが「0」である場合には、目標加速度αtとして、現在設定されている値を維持する。
かかる構成によれば、今回取得された新指令回転速度Ncaが前回取得した旧指令回転速度Ncbと同一である場合には、現在設定されている目標加速度αtが維持される。これにより、旧指令回転速度Ncbと同一の新指令回転速度Ncaが取得されることに起因して、実回転速度Nrが指令回転速度Ncに到達していないにも関わらず定速回転が行われるという不都合を抑制できる。
【0146】
なお、回転制御部35は、実回転速度Nrが指令回転速度Ncと一致している場合には、加速度記憶領域35aに「0」を設定し、定速回転を行うように構成されている。このため、仮に既に定速回転中である場合に旧指令回転速度Ncbと同一の新指令回転速度Ncaが取得された場合には、定速回転を維持することとなる。
【0147】
(第3実施形態)
本実施形態では、指令加速度αcの算出態様が第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。その異なる点について以下に説明する。
【0148】
図9に示すように、本実施形態の回転制御部35は、ステップS102の実行後はステップS401にて指令変更間隔Tyをカウントして、ステップS104に進む。
指令変更間隔Tyとは、前回指令回転速度Ncが変更されたタイミングから今回指令回転速度Ncが変更されたタイミングまでの期間である。ステップS401では、回転制御部35は、指令変更間隔Tyをカウントするタイマカウンタのカウントをスタートさせて、次に指令回転速度Ncの変更が行われるまでの期間を計測する。なお、指令変更間隔Tyをカウントするための具体的な構成は任意である。
【0149】
図9に示すように、回転制御部35は、ステップS111を肯定判定した場合には、ステップS402に進み、指令回転速度Ncが変更されたか否かを判定する。詳細には、回転制御部35は、現在設定されている指令回転速度Ncと、今回取得された指令回転速度Ncとが一致しているか否かを判定する。
【0150】
回転制御部35は、指令回転速度Ncの変更がない場合、すなわち現在設定されている指令回転速度Ncと今回取得された指令回転速度Ncとが同一である場合には、目標加速度設定処理を実行することなく、ステップS106に戻る。これにより、現在設定されている目標加速度αtによる加減速回転または定速回転が継続される。
【0151】
一方、回転制御部35は、指令回転速度Ncが変更された場合、すなわち現在設定されている指令回転速度Ncと今回取得された指令回転速度Ncとが異なる場合には、ステップS403にて目標加速度設定処理を実行してステップS106に戻る。
【0152】
すなわち、本実施形態の回転制御部35は、指令回転速度Ncが取得されたことではなく、指令回転速度Ncの変更が行われたことに基づいて、目標加速度αtの設定を行うように構成されている。
【0153】
図10を用いて本実施形態の目標加速度設定処理について説明する。
図10に示すように、本実施形態の目標加速度設定処理では、回転制御部35は、まずステップS201にて、指令回転速度Ncの更新を行う。詳細には、回転制御部35は、今回取得した指令回転速度Ncを新指令回転速度Ncaとして新指令記憶領域35bに記憶させる。
【0154】
ここで、既に説明したとおり、本実施形態の目標加速度設定処理は、指令回転速度Ncが変更されたことに基づいて実行される。このため、上記指令回転速度Ncの更新は、指令回転速度Ncが変更された場合に実行されることとなる。したがって、本実施形態において、新指令記憶領域35bに記憶される新指令回転速度Ncaは、変更された指令回転速度Ncに対応する。換言すれば、本実施形態の新指令記憶領域35bは、変更された指令回転速度Ncが記憶される領域である。
【0155】
回転制御部35は、ステップS202の実行後、ステップS501にて、指令変更間隔Tyを把握する。詳細には、回転制御部35は、ステップS401又はステップS504の処理によってカウントをスタートしたタイマカウンタのカウント値に基づいて、ステップS401又はステップS504の処理が行われてから現在までの期間をカウントする。
【0156】
例えば、回転制御処理が開始されてから、当該回転制御処理の実行契機となった指令回転速度Ncとは異なる指令回転速度Ncが取得された場合、換言すれば最初に目標加速度設定処理が行われた場合、指令変更間隔Tyは、ステップS401の処理からの経過期間である。
【0157】
一方、回転制御処理が開始されてから2回目以降の目標加速度設定処理が行われた場合、指令変更間隔Tyは、前回の目標加速度設定処理(詳細にはステップS504の処理)が行われてから、今回の目標加速度設定処理(詳細にはステップS501の処理)が行われるまでの期間である。
【0158】
その後、回転制御部35は、ステップS502にて、目標加速度αtとしての指令加速度αcを算出する。本実施形態の回転制御部35は、指令変更間隔Tyと、今回変更された指令回転速度Ncである新指令回転速度Ncaとに基づいて指令加速度αcを算出する。詳細には、指令加速度αcは、新指令回転速度Ncaから実回転速度Nrを差し引いた差を指令変更間隔Tyで割った値である(αc=(Nca-Nr)/Ty)。
【0159】
回転制御部35は、ステップS206,S208,またはS209の処理を実行後、ステップS503にて、指令変更間隔Tyのカウントをリセットし、ステップS504に進む。ステップS504では、回転制御部35は、指令変更間隔Tyのカウントをスタートする。これにより、今回指令回転速度Ncが変更されてから次に指令回転速度Ncが変更されるまでの期間がカウントされる。
【0160】
次に図11を用いて本実施形態の作用について説明する。図11は、取得される指令回転速度Ncの時間変化と、実回転速度Nrの時間変化とを示すグラフである。図11では、指令回転速度Ncの時間変化を一点鎖線で示し、実回転速度Nrの時間変化を実線で示す。なお、図11では起動からの加速の時間変化を示すが、減速についても同様である。
【0161】
図11に示すように、t0のタイミングからt2のタイミングまでの実回転速度Nrの変化は第1実施形態と同様である。
t2のタイミングにて、第1指令回転速度Nc1とは異なる第2指令回転速度Nc2が取得されると、第1指令加速度αc1が算出され、当該第1指令加速度αc1にて電動モータ11が加速する。第1指令加速度αc1は、第2指令回転速度Nc2から第1実回転速度Nr1を差し引いた差を第1指令変更間隔Ty1で割った値である。第1指令変更間隔Ty1は、t0のタイミングからt1のタイミングまでの期間である。
【0162】
その後、t3のタイミングにて、第2指令回転速度Nc2と同一の第3指令回転速度Nc3が取得されたとする。この場合、指令回転速度Ncの変更が行われていないため、新たな目標加速度αtの設定は行われない。このため、現在設定されている指令加速度αcである第1指令加速度αc1による加速が継続される。
【0163】
続くt32のタイミングにて、実回転速度Nrが第2指令回転速度Nc2(第3指令回転速度Nc3)に到達して、定速回転が行われる。
その後、t4のタイミングにて第2指令回転速度Nc2とは異なる第4指令回転速度Nc4が取得されると、第3指令加速度αc3が算出され、当該第3指令加速度αc3にて電動モータ11が加速する。
【0164】
ここで、t2のタイミングからt4のタイミングまでの期間を第2指令変更間隔Ty2とすると、第3指令回転速度Nc3は、第4指令回転速度Nc4から第4実回転速度Nr4を差し引いた差を第2指令変更間隔Ty2で割った値である。
【0165】
続くt5のタイミングにて、第4指令回転速度Nc4とは異なる第5指令回転速度Nc5が取得されると、第4指令加速度αc4が算出され、当該第4指令加速度αc4にて電動モータ11が加速する。
【0166】
ここで、t4のタイミングからt5のタイミングまでの期間を第3指令変更間隔Ty3とすると、第4指令加速度αc4は、第5指令回転速度Nc5から第5実回転速度Nr5を差し引いた差を第3指令変更間隔Ty3で割った値である。
【0167】
その後、t5のタイミングから第3加速期間T3が経過したt8のタイミングにて、実回転速度Nrが第5指令回転速度Nc5に到達して、電動モータ11の定速回転が行われる。
【0168】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(3-1)インバータ制御装置14は、車載用流体機械としての車載用電動圧縮機10に設けられた電動モータ11を駆動させるインバータ回路13の制御に用いられるものである。インバータ制御装置14は、外部(本実施形態では空調ECU103)から繰り返し送信される指令回転速度Ncを取得する取得部34と、電動モータ11の回転制御を行う回転制御部35と、を備えている。
【0169】
回転制御部35は、前回指令回転速度Ncが変更されたタイミングから今回指令回転速度Ncが変更されたタイミングまでの期間である指令変更間隔Tyをカウントする処理を実行するように構成されている。回転制御部35は、指令回転速度Ncが変更されたことに基づいて、電動モータ11の目標加速度αtを設定する目標加速度設定処理と、目標加速度αtで電動モータ11が回転するようにインバータ回路13を制御する処理と、を行うように構成されている。ここで、回転制御部35は、目標加速度設定処理において、指令変更間隔Tyと今回変更された新指令回転速度Ncaとに基づいて、目標加速度αtとしての指令加速度αcを算出する算出処理を行うように構成されている。
【0170】
かかる構成によれば、指令変更間隔Tyをカウントすることにより、外部から送信される指令回転速度Ncの送信周期が不定期であっても指令変更間隔Tyを把握することができる。そして、カウントされた指令変更間隔Tyと新指令回転速度Ncaとに基づいて指令加速度αcが算出されるため、指令変更間隔Tyが変動する場合であっても、実回転速度Nrの変化率を指令回転速度Ncの変化率に近づけることができる。これにより、指令回転速度Ncの変化に対する電動モータ11の実回転速度Nrの変化の追従性を向上させ、NV特性の向上を図ることができる。
【0171】
(3-2)特に、本実施形態では、指令回転速度Ncを取得することではなく、指令回転速度Ncが変更されたことに基づいて目標加速度αtが設定されるため、同一の指令回転速度Ncが取得された場合であっても目標加速度αtが変更されない。これにより、指令回転速度Ncの変更がないにも関わらず電動モータ11の加速度が変更されることを抑制できる。したがって、加速度が変化することに起因するNV特性の悪化の抑制と、指令回転速度Ncの変化と電動モータ11の加速度の変化との連動性の向上とを図ることができる。
【0172】
(3-3)回転制御部35は、指令加速度αcとして、新指令回転速度Ncaと実回転速度Nrとの差を指令変更間隔Tyで割った値を算出する。
かかる構成によれば、指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして新指令回転速度Ncaと実回転速度Nrとの差が採用されているため、(1-2)と同様に、実回転速度Nrの変化率を指令回転速度Ncの変化率に近づけつつ、比較的早期に実回転速度Nrを指令回転速度Ncに近づけることができる。
【0173】
(第4実施形態)
本実施形態では、指令加速度αcの算出態様等が第3実施形態と異なっている。その異なる点について以下に説明する。
【0174】
図12に示すように、本実施形態の回転制御部35には、今回変更された指令回転速度Ncが記憶される新指令記憶領域35bと、変更前の指令回転速度Ncである変更前指令回転速度Nccが記憶される変更前指令記憶領域35dとが設けられている。これにより、回転制御部35は、指令加速度αcを算出する際に変更前指令回転速度Nccと新指令回転速度Ncaとの双方を参照することができる。
【0175】
次に図13を用いて本実施形態の目標加速度設定処理について説明する。
図13に示すように、回転制御部35は、ステップS601にて、指令回転速度Ncの更新処理を実行して、ステップS501に進む。
【0176】
ここで、本実施形態では、回転制御部35は、現在新指令記憶領域35bに記憶されている指令回転速度Ncを変更前指令回転速度Nccとして変更前指令記憶領域35dに記憶させる。そして、回転制御部35は、今回取得した新たな指令回転速度Ncを新指令回転速度Ncaとして新指令記憶領域35bに記憶させる。
【0177】
なお、念の為に説明すると、本実施形態の目標加速度設定処理は、第3実施形態と同様に、指令回転速度Ncが変更された場合に実行される。このため、ステップS601の処理によって変更前指令記憶領域35dに記憶される指令回転速度Ncは、前回取得した指令回転速度Ncではなく、変更前の指令回転速度Ncとなる。すなわち、今回の目標加速度設定処理の実行契機となった指令回転速度Ncが新指令回転速度Ncaとして設定され、それまで設定されていた指令回転速度Ncが変更前指令回転速度Nccとして設定される。
【0178】
そして、回転制御部35は、ステップS501の処理を実行した後は、ステップS602にて、両指令記憶領域35b,35dに記憶されている情報とステップS501の把握結果とに基づいて指令加速度αcを算出する。本実施形態では、回転制御部35は、指令加速度αcとして、新指令回転速度Ncaから変更前指令回転速度Nccを差し引いた差を指令変更間隔Tyで割った値を算出する(αc=(Nca-Ncc)/Ty)。
【0179】
なお、ステップS602よりも後の処理は、第3実施形態と同様であるため、説明を省略する。
次に図14を用いて本実施形態の作用について説明する。
【0180】
図14に示すように、t0のタイミングからt2のタイミングまでの実回転速度Nrの変化は第1実施形態と同様である。
t2のタイミングにて、第1指令回転速度Nc1とは異なる第2指令回転速度Nc2が取得されると、第1指令加速度αc1が算出され、当該第1指令加速度αc1にて電動モータ11が加速する。第1指令加速度αc1は、第2指令回転速度Nc2から第1指令回転速度Nc1を差し引いた差を第1指令変更間隔Ty1で割った値である。第1指令変更間隔Ty1は、t0のタイミングからt1のタイミングまでの期間である。
【0181】
その後、t3のタイミングにて、第2指令回転速度Nc2と同一の第3指令回転速度Nc3が取得されたとする。この場合、指令回転速度Ncの変更が行われていないため、新たな目標加速度αtの設定は行われない。このため、現在設定されている指令加速度αcである第1指令加速度αc1による加速が継続される。
【0182】
続くt31のタイミングにて、実回転速度Nrが第2指令回転速度Nc2(第3指令回転速度Nc3)に到達して、定速回転が行われる。
その後、t4のタイミングにて第2指令回転速度Nc2とは異なる第4指令回転速度Nc4が取得されると、第3指令加速度αc3が算出され、当該第3指令加速度αc3にて電動モータ11が加速する。
【0183】
ここで、t2のタイミングからt4のタイミングまでの期間を第2指令変更間隔Ty2とすると、第3指令回転速度Nc3は、第4指令回転速度Nc4から第2指令回転速度Nc2を差し引いた差を第2指令変更間隔Ty2で割った値である。第2指令変更間隔Ty2は、t2のタイミングからt4のタイミングまでの期間である。
【0184】
続くt5のタイミングにて、第4指令回転速度Nc4とは異なる第5指令回転速度Nc5が取得されると、第4指令加速度αc4が算出され、当該第4指令加速度αc4にて電動モータ11が加速する。
【0185】
ここで、t4のタイミングからt5のタイミングまでの期間を第3指令変更間隔Ty3とすると、第4指令加速度αc4は、第5指令回転速度Nc5から第4指令回転速度Nc4を差し引いた差を第3指令変更間隔Ty3で割った値である。
【0186】
その後、t5のタイミングから第4加速期間T4が経過したt9のタイミングにて、実回転速度Nrが第5指令回転速度Nc5に到達して、電動モータ11の定速回転が行われる。
【0187】
以上詳述した本実施形態によれば、(3-3)の効果に代えて、以下の効果を奏する。
(4-1)回転制御部35は、指令加速度αcとして、新指令回転速度Ncaと変更前指令回転速度Nccとの差を指令変更間隔Tyで割った値を算出する。
【0188】
かかる構成によれば、(2-1)と同様に、指令変更間隔Tyごとにおける単位時間当たりの指令回転速度Ncの変化率と実回転速度Nrの変化率とを同一に近づけることができる。
【0189】
(4-2)また、本実施形態の回転制御部35は、指令回転速度Ncが変更されたことに基づいて目標加速度αtを設定する構成である。つまり、目標加速度αtの設定は、新指令回転速度Ncaと変更前指令回転速度Nccとが異なる場合にのみ行われる。このため、新指令回転速度Ncaと変更前指令回転速度Nccとの差が「0」となることはない。したがって、第2実施形態のように指令回転速度Ncが「0」である場合を考慮する必要がない。よって、処理(構成)の簡素化を図ることができる。
【0190】
(4-3)指令加速度αcを算出するのに用いるパラメータとして、実回転速度Nrではなく変更前指令回転速度Nccが採用されている。これにより、実回転速度Nrと指令回転速度Ncとが一致していないことに起因する不都合、例えば空調ECU103の意図しない急加速又は急減速が行われることを抑制できる。
【0191】
(4-4)また、本実施形態によれば、実回転速度Nrを用いて指令加速度αcを算出する場合よりも指令加速度αcは緩やかな値になり易いため、加減速期間が長くなりやすい。このため、順次指令回転速度Ncが変更される加速または減速段階において定速となりにくいため、定速状態と加減速状態とが交互に切り替わることに起因するNV特性の悪化の抑制を図ることができる。
【0192】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。また、技術的に矛盾が生じない範囲内で、上記各実施形態と下記別例とを適宜組み合わせてもよい。
○ 取得部34は、空調ECU103から送信される指令回転速度Ncを受け取ることができればその具体的な構成は任意である。例えば空調ECU103が無線信号にて指令を送信する構成においては、取得部34は、その無線信号を受信するモジュールでもよい。
【0193】
○ 指令加速度αcの具体的な算出態様については任意である。例えば、第1実施形態において、回転制御部35は、新指令回転速度Ncaから実回転速度Nrを差し引いた差を指令取得間隔Txで割った算出値が第1範囲内であれば第1特定加速度を目標加速度αtとして算出し、上記算出値が第2範囲内であれば第2特定加速度を目標加速度αtとして算出するという構成でもよい。他の実施形態についても同様である。
【0194】
○ 実回転速度Nrを把握するための構成は、位置/速度推定部33に限られず任意であり、専用のセンサ(レゾルバ)を採用してもよい。
○ 第2実施形態において、回転制御部35は、ステップS304の加速度継続処理に代えて、予め定められた規定加速度を目標加速度αtとして設定する処理を実行してもよい。すなわち、指令加速度αcが「0」である場合に設定される目標加速度αtは、現在設定されている値に限られず任意である。
【0195】
○ 各実施形態において、ステップS205,S206の処理、及び、ステップS207,S208の処理の少なくとも一方を省略してもよい。
○ 各実施形態において、回転制御処理の各処理の順序は適宜変更してもよい。
【0196】
○ 回転制御部35は、起動期間T0中に指令回転速度Ncが取得された場合には、取得された指令回転速度Ncに基づいて目標加速度αtを設定し、設定された目標加速度αtにて加速させる構成でもよい。
【0197】
○ 回転制御部35は、次の指令回転速度Ncが取得される又は実回転速度Nrが指令回転速度Ncとなる、のいずれか一方の条件が成立するまで起動加速度α0で加速を継続する構成でもよい。つまり、初期加速度α1による加速は必須ではない。
【0198】
○ 空調ECU103は、前回と同一の指令回転速度Ncをインバータ制御装置14に対して送信しない構成でもよい。
○ 車載用電動圧縮機10は、車載用空調装置101に用いられる構成に限られず、他の装置に用いられるものであってもよい。例えば、車両100が燃料電池車両である場合には、車載用電動圧縮機10は燃料電池に空気を供給する空気供給装置に用いられてもよい。すなわち、圧縮対象の流体は、冷媒に限られず、空気など任意である。
【0199】
○ 車載用流体機械は、流体を圧縮する圧縮部12を備えた車載用電動圧縮機10に限られない。例えば、車両100が燃料電池車両である場合には、車載用流体機械は、燃料電池に水素を供給するポンプと当該ポンプを駆動する電動モータとを有する電動ポンプ装置であってもよい。この場合、インバータ制御装置14は、ポンプを駆動する電動モータを制御するのに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0200】
10…車載用電動圧縮機(車載用流体機械)、11…電動モータ、12…圧縮部、13…インバータ回路、14…インバータ制御装置、22…ロータ、33…位置/速度推定部(把握部)、34…取得部、35…回転制御部、α0…起動加速度、α1…初期加速度、αt…目標加速度、αc…指令加速度、αmax…上限加速度、αmin…下限加速度、Nc…指令回転速度、Nca…新指令回転速度、Ncb…旧指令回転速度、Ncc…変更前指令回転速度、Nr…実回転速度、T0…起動期間、Tx…指令取得間隔、Ty…指令変更間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14