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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ドローン用保護装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 17/62 20060101AFI20230124BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20230124BHJP
   B64D 17/02 20060101ALI20230124BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20230124BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B64D17/62
B64C27/08
B64D17/02
B64D45/00 Z
B64C39/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020034165
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133910
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0083847(US,A1)
【文献】特公昭48-030320(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0244394(US,A1)
【文献】国際公開第2018/190319(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/109903(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332739(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/62
B64C 27/08
B64D 17/02
B64D 45/00
B64C 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローン本体の周囲を囲むように配設される複数のプロペラを回転させて飛行するドローンに搭載され、前記ドローンの落下時に作動されて、前記ドローンの落下速度を低減させて、前記ドローンの落下先の保護対象を保護するドローン用保護装置であって、
展開時に、前記ドローン本体の上方から前記各プロペラの側方まで覆う傘体と、該傘体の外周縁側と前記ドローン本体側とを連結する複数の連結紐と、を有して構成される落下傘と、
前記ドローンの落下時に、前記ドローン本体の上部側に配設された前記傘体の収納部位から、空気抵抗を受け可能に前記傘体を押し出す押し出し手段と、
を備えて構成されていることを特徴とするドローン用保護装置。
【請求項2】
前記傘体が、
展開時の外周側に配置される外側シートと、
該外側シートの内周側に、空気を貯留可能なスペースを設けて配設される内側シートと、
を備えて構成されるとともに、
前記内側シートの中央部位に、ドローンの落下時に、前記外側シートと前記内側シートとの間に、空気を流入させる流入口を配設させて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドローン用保護装置。
【請求項3】
前記流入口が、空気の流入を許容し、かつ、空気の流出を規制する逆止弁を配設させて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のドローン用保護装置。
【請求項4】
前記落下傘が、
前記傘体と、
前記ドローン本体における前記プロペラの下方位置に配置された下側部位から延びて、前記内側シートの外周縁側に連結される複数の前記連結紐としての外側紐と、
前記ドローン本体における上部側から延びて、前記内側シートにおける前記流入口の周縁に連結される複数の内側紐と、
を備えて構成されていることを特徴とする請求項3に記載のドローン用保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンに搭載され、ドローンの落下時に作動され、ドローンの落下速度を低減させて、ドローンの落下先の保護対象を保護するドローン用保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドローン用保護装置としては、作動時、ドローンの上方を覆うように展開する落下傘を備えて構成されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。この落下傘は、傘状に展開する傘体と、傘体の外周縁側とドローンの中央側のドローン本体とを連結する複数の連結紐と、を備えて構成されていた。そして、落下傘は、ドローン本体の上部の収納部位から、パイロアクチュエータを内蔵したシリンダ部の作動によって、発射され、落下時の空気を受けて、展開する構成としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2018/190319A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の保護装置では、落下傘の傘体が、ドローン本体の上方側で展開して、落下速度を低減させるものの、ドローン本体を囲むように配置されて飛行時に回転する複数のプロペラ、は露出されたままであり、落下先の保護対象とのプロペラの接触を防止し難く、プロペラによる加害性の低減に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、落下時におけるドローンのプロペラによる加害性を低減できるドローン用保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るドローン用保護装置は、ドローン本体の周囲を囲むように配設される複数のプロペラを回転させて飛行するドローンに搭載され、前記ドローンの落下時に作動されて、前記ドローンの落下速度を低減させて、前記ドローンの落下先の保護対象を保護するドローン用保護装置であって、
展開時に、前記ドローン本体の上方から前記各プロペラの側方まで覆う傘体と、該傘体の外周縁側と前記ドローン本体側とを連結する複数の連結紐と、を有して構成される落下傘と、
前記ドローンの落下時に、前記ドローン本体の上部側に配設された前記傘体の収納部位から、空気抵抗を受け可能に前記傘体を押し出す押し出し手段と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るドローン用保護装置は、作動時、押し出し手段が作動されて、ドローン本体の上部側に収納されていた傘体が、押し出され、落下時の空気を受けて、展開する。そして、傘体を展開させた落下傘により、ドローンは落下速度が低減され、さらに、ドローン本体側から延びる連結紐の連結された傘体の外周縁側は、ドローン本体の周囲を囲むように配置された各プロペラの側方まで、換言すれば、各プロペラを結ぶ円周方向の全周、を覆う。そのため、落下先の保護対象が、プロペラに干渉しようとしても、傘体が、その干渉を抑制できて、保護対象へのプロペラの加害性を低減できる。
【0008】
したがって、本発明に係るドローン用保護装置では、落下時におけるドローンのプロペラによる加害性を低減することができる。
【0009】
そして、本発明に係るドローン用保護装置では、前記傘体が、
展開時の外周側に配置される外側シートと、
該外側シートの内周側に、空気を貯留可能なスペースを設けて配設される内側シートと、
を備えて構成されるとともに、
前記内側シートの中央部位に、ドローンの落下時に、前記外側シートと前記内側シートとの間に、空気を流入させる流入口を配設させて構成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、ドローンが落下して、落下傘の傘体が展開する際、内側シートが展開すれば、落下時に受ける空気は、中央の流入口側に集まり、流入口から外側シートと内側シートとの貯留スペースに、空気が溜まり、内側シートと外側シートの間に空気室を設けた状態の落下傘を形成でき、その状態で、落下することとなる。そのため、プロペラに対して保護対象が干渉しようとしても、空気室を介在させて、干渉する状態となり、空気室がクッションのような作用を奏して、保護対象へのプロペラの加害性を、一層、低減することができる。
【0011】
この場合、前記流入口が、空気の流入を許容し、かつ、空気の流出を規制する逆止弁を配設させて構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、逆止弁を配設させた流入口から、外側シートと内側シートとの間の空気室に空気が流入すれば、流入した空気の空気室からの流出が抑制されることから、空気室の圧力を高く維持できることができて、空気室のクッション作用をより高めることができ、保護対象へのプロペラの加害性を、一層、低減することができる。
【0013】
さらにこの場合、前記落下傘が、
前記傘体と、
前記ドローン本体における前記プロペラの下方位置に配置された下側部位から延びて、前記内側シートの外周縁側に連結される複数の前記連結紐としての外側紐と、
前記ドローン本体における上部側から延びて、前記内側シートにおける前記流入口の周縁に連結される複数の内側紐と、
を備えて構成されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、内側シートが、流入口の周縁を、ドローン本体の上部側から延びる複数の内側紐に保持されることから、流入口の開口形状が安定し、迅速に、内側シートと外側シートとの間の空気室に、空気を充填させることができる。そしてまた、内側シートの外周縁側は、ドローン本体におけるプロペラより下方の下側部位から延びる複数の連結紐としての外側紐により、プロペラより下方側へ引っ張られて保持されることから、傘体の外周縁における空気室の部位が、安定して、各プロペラの側方を覆うことができて、クッション作用を奏して、保護対象をプロペラから保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る一実施形態のドローン用保護装置を搭載するドローンを示す概略平面図である。
図2】実施形態のドローン用保護装置を搭載するドローンを示す概略正面図である。
図3】実施形態のドローン用保護装置における落下傘の収納部位を説明する図である。
図4】実施形態のドローン用保護装置の作動当初の状態を説明する図である。
図5】実施形態のドローン用保護装置における作動途中の状態を説明する図である。
図6】実施形態の傘体における逆止弁を説明する概略平面図である。
図7】実施形態の傘体における逆止弁の作動状態を説明する図であり、図6のVII-VII部位の概略断面図である。
図8】実施形態のドローン用保護装置の作動完了時の状態を示す概略正面図である。
図9】実施形態の変形例のドローン用保護装置を搭載したドローンを示す概略正面図である。
図10図9に示すドローン用保護装置の作動完了時の状態を示すドローンの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のドローン用保護装置20は、図1,2,8に示すドローン(マルチコプター)1に搭載される。
【0017】
ドローン1は、飛行時に回転する複数(実施形態では6個)のプロペラ6と、ドローン本体2と、を備えて構成されている。ドローン本体2は、ドローン1の中央部に配置される本体部3と、本体部3から放射状に突出する複数(実施形態ではプロペラ6に対応して6本)のアーム4と、本体部3の下面から下方へ突出する脚部10と、を備えて構成されている。
【0018】
各アーム4の先端の上面側には、プロペラ6が、配設されている。各プロペラ6は、モータからなる駆動装置7により、回転駆動される。駆動装置7は、本体部3内の図示しないバッテリーから電源を供給されて、駆動される。
【0019】
脚部10は、本体部3の下面の中央付近から下方へ向かって相互に拡開するように配設される6本の支持脚11から構成されている。各支持脚11は、各アーム4の直下にそれぞれ配設されるとともに、後述する外側紐46の繰り出し時に、外側紐46がプロペラ6と干渉せずにアーム4間の略中央に繰り出すように、略半円柱状のガイド12を、それぞれ、支持杆部23側に向けて配設させている。
【0020】
本体部3内には、図示しない公知の受信装置、送信装置、飛行制御装置、地図記憶装置、カメラ、バッテリー等が配設されている。ドローン1は、地上側のオペレータの遠隔操作による無線信号を受信装置が受信して飛行制御装置に入力させ、飛行制御装置が、その信号に基づき、駆動装置7の駆動を制御して、所定の飛行を実行することとなる。また、飛行制御装置は、高度を含めた所定の飛行ルートで飛行できるように、プログラム可能であり、さらに、所定地点でカメラの撮影を開始して終了するように、プログラムすることも可能であり、そして、撮影したデータは、直ちに、送信装置により、地上側の所定の受信装置に送信したり、あるいは、内蔵する記録媒体に記録できるように、構成されている。
【0021】
保護装置20は、落下傘30と、押し出し装置25と、を備えて構成されている。落下傘30は、作動時に、ドローン本体2の上方から各プロペラ6の側方、詳しくは、プロペラ6下方におけるプロペラ6を回転駆動させる駆動装置7やアーム4の下方付近まで、を覆う傘体31と、傘体31の外周縁33a側とドローン本体2側とを連結する複数の連結紐45と、を有して構成される。
【0022】
押し出し装置25は、図2~5,8に示すように、ドローン1の落下時、ドローン本体2における本体部3の上部側に配設されたケース21から、空気抵抗を受け可能に、折り畳まれた傘体31を押し出す押し出し手段を構成するもので、実施形態の場合、プランジャ27を押し上げるソレノイドアクチュエータ26としている。ソレノイドアクチュエータ26は、作動時、プランジャ27を押し上げて、プランジャ27の上端に結合させた略円板状のプッシャ28により、ケース21内に折り畳まれて収納された傘体31を、収納部位としてのケース21から押し出し、そして、押し出された傘体31は、ドローン1の落下時の空気ATを受けて展開することとなる(図5参照)。なお、ケース21には、プッシャ28に押し上げられた傘体31に押し開かれる観音扉タイプのドア22,22が、配設されている。
【0023】
押し出し装置25のソレノイドアクチュエータ26は、ドローン1の落下時に作動されるものであり、地上側のオペレータの操作によりなされる場合と、図示しない飛行制御装置が、駆動装置7等を制御不能となった際であって、地上から所定高さ以上(落下傘30が展開できる高さ以上)の場合に、作動される場合がある。
【0024】
そして、実施形態の場合、傘体31は、図4,5,8に示すように、展開時の外周側に配置される外側シート32と、外側シート32の内周側に、空気ATを貯留可能なスペースSPを設けて配設される内側シート33と、を備えて構成されている。さらに、内側シート33の中央部位には、ドローン1の落下時に、外側シート32と内側シート33との間に、空気ATを流入させる流入口35を配設させている。外側シート32と内側シート33とは、可撓性を有して空気透過性の低い布等のシート材から形成され、外周縁32a,33a相互を縫合等により結合させて形成されている。なお、傘体31の展開時、流入口35は、ケース21の上方に配置され、外側シート32と内側シート33との外周縁32a,33aより高い位置に配置されることとなる。
【0025】
さらに、実施形態の場合、流入口35には、図5,8に示すように、スペースSP(空気室43)側への空気ATの流入を許容し、かつ、空気ATの流出を規制する逆止弁37を配設させている。この逆止弁37は、下縁38bを内側シート33の流入口35の周縁33cに結合させ、上縁38aを外側シート32の中央付近32bに結合させたテーパ筒状の隔壁38と、隔壁38に設けられた複数(8個)の連通口39と、隔壁38の外周面38d側に結合される可撓性を有した弁シート41と、を備えて構成されている(図6,7参照)。弁シート41は、連通口39間で、幅方向に沿った結合部41bにより、隔壁38に結合されている。この逆止弁37では、展開した傘体31の落下時、内側シート33の下面33d側において、外周縁33aから中央33b側に空気ATが流れ、隔壁38の内周面38c側に到達すれば、隔壁38の連通口39を経て、空気ATが、内側シート33の流入口35付近から外周縁33aまでの外側シート32との間のスペースSPに、貯留されて、空気室43を形成する。そして、連通口39から空気室43外へ空気ATが流出しようとすると、弁シート41における連通口39を覆っていた閉塞部41aを、隔壁38の外周面38d側の連通口周縁38eに圧接させることとなって、連通口39が閉塞されて、空気室43の内圧低下が抑制されることとなる。
【0026】
また、傘体31とドローン本体2とを連結する紐材としては、ドローン本体2におけるプロペラ6の下方位置に配置された下側部位、すなわち、支持杆部23の下端23b、から延びて、内側シート33の外周縁33a側に連結される複数(6本)の連結紐45としての外側紐46と、ドローン本体2における本体部3の上部側から延びて、内側シート33における流入口35の周縁33cに連結される複数(6本)の内側紐47と、を備えて構成されている。外側紐46と内側紐47とは、可撓性を有した布等の紐材から形成されている。
【0027】
連結紐45としての各外側紐46は、上端46aを、傘状に展開した内側シート33の外周縁33aに結合させ、下端46bを、支持杆部23の下端23bに結合させて配設されるとともに、内側シート33の展開状態では、下端46bから上端46aまでの配置方向を、各々、隣接するアーム4,4間の中央に配置されるように、設定されている。
【0028】
各内側紐47は、上端47aを、傘状に展開した内側シート33における流入口35の内周縁33cに結合させ、下端47bを、ケース21内に結合させて配設されるとともに、内側シート33の展開状態では、下端47bから上端47aまでの配置方向を、外側紐46と同様に、各々、隣接するアーム4,4間の中央に配置されるように、設定されている。
【0029】
なお、支持杆部23は、本体部3の下面から下方に突出して、下端23bに、各外側紐46の下端46bを結合させている。そして、各外側紐46は、傘体31が折り畳まれたケース21に収納された状態では、内側シート33の外周縁33aに結合された上端46aから下端46b側に延びる中間部46cの部位は、ドア22の間からケース21の外側に出て、本体部3の側面に沿い、支持杆部23の上端23aから下端23bまで、支持杆部23の周囲に配置されている。支持杆部23の外周側には、外側紐46の繰り出し時に破断可能なカバー24が配設されており、支持杆部23の上端23aから下端23bまで配設される外側紐46の部位は、カバー24に覆われて配設されている。
【0030】
実施形態の保護装置20を搭載したドローン1が飛行中において、地上側のオペレータの指示、あるいは、飛行制御装置の独自の判断により、押し出し装置25のソレノイドアクチュエータ26が作動すれば、プランジャ27の先端のプッシャ28が押し上げられて、ケース21内に収納されていた傘体31が、ドア22を押し開きつつ、ケース21外に押し出され、落下時の空気ATを受け、かつ、連結紐45の外側紐46と内側紐47とに、内側シート33の外周縁33aや内周縁33cを牽引されて、展開する。そして、傘体31を展開させた落下傘30により、ドローン1は落下速度が低減され、さらに、ドローン本体2側から延びる連結紐45の連結された傘体31の外周縁33a側は、ドローン本体2の周囲を囲むように配置された各プロペラ6の側方まで、換言すれば、各プロペラ6を結ぶ円周方向の全周、を覆う(図8参照)。そのため、落下先の保護対象としての人50が、プロペラ6に干渉しようとしても、傘体31が、その干渉を抑制できて、保護対象50へのプロペラ6の加害性を低減できる。
【0031】
したがって、実施形態のドローン用保護装置20では、落下時におけるドローン1のプロペラ6による加害性を低減することができる。
【0032】
そして、実施形態のドローン用保護装置20では、傘体31が、展開時の外周側に配置される外側シート32と、外側シート32の内周側に、空気ATを貯留可能なスペースSPを設けて配設される内側シート33と、を備えて構成されている。また、内側シート33の中央部位33bに、ドローン1の落下時に、外側シート32と内側シート33との間に、空気ATを流入させる流入口35を配設させて構成されている。
【0033】
そのため、実施形態では、ドローン1が落下して、落下傘30の傘体31が展開する際、内側シート33が展開すれば、落下時に受ける空気ATは、中央33bの流入口35側に集まり、流入口35から外側シート32と内側シート33との貯留スペースSPに、空気ATが溜まり、内側シート33と外側シート32の間に空気室43を設けた状態の落下傘30を形成でき、その状態で、落下することとなる。そのため、プロペラ6に対して保護対象50が干渉しようとしても、空気室43を介在させて、干渉する状態となり、空気室43がクッションのような作用を奏して、保護対象50へのプロペラ6の加害性を、一層、低減することができる。
【0034】
さらに、実施形態では、流入口35が、空気ATの流入を許容し、かつ、空気ATの流出を規制する逆止弁37を配設させて構成されている。
【0035】
そのため、実施形態では、逆止弁37を配設させた流入口35から、外側シート32と内側シート33との間の空気室43に空気ATが流入すれば、流入した空気ATの空気室43からの流出が抑制されることから、空気室43の圧力を高く維持できて、空気室43のクッション作用をより高めることができ、保護対象50へのプロペラ6の加害性を、一層、低減することができる。
【0036】
さらにこの場合、実施形態では、落下傘30が、傘体31と、ドローン本体2におけるプロペラ6の下方位置に配置された下側部位の支持杆部23の下端23bから延びて、内側シート33の外周縁33a側に連結される複数の連結紐45としての外側紐46と、ドローン本体2における上部側から延びて、内側シート33における流入口35の周縁33cに連結される複数の内側紐47と、を備えて構成されている。
【0037】
そのため、実施形態では、内側シート33が、流入口35の周縁を、ドローン本体2の上部側から延びる複数の内側紐47に保持されることから、流入口35の開口形状が安定し、迅速に、内側シート33と外側シート32との間の空気室43に、空気ATを充填させることができる。そしてまた、内側シート33の外周縁33a側は、ドローン本体2におけるプロペラ6より下方の支持杆部23の下端23bから延びる複数の外側紐46により、プロペラ6より下方側へ引っ張られて保持されることから、傘体31の外周縁33aにおける空気室43の部位(外周縁部)43aが、安定して、各プロペラ6の側方を覆うことができて、クッション作用を奏して、保護対象50をプロペラから保護できる。
【0038】
なお、実施形態では、空気室43を形成可能な傘体31と連結紐45とを備えた落下傘30を例示したが、図9,10に示すドローン用保護装置20Aのように、空気室43を備えていない1枚のシート状の傘体31Aと、傘体31Aの外周縁32aと支持杆部23の下端23bとを連結する複数の連結紐45Aと、を備えてなる落下傘30A、を使用してもよい。
【0039】
この傘体31Aは、実施形態の傘体31の外側シート32と同様な構成であり、また、連結紐45Aは、実施形態の内側シート33に連結させた6本の外側紐46と同様の構成としている。
【0040】
このようなドローン用保護装置20Aでも、押し出し装置25のソレノイドアクチュエータ26が作動して、プッシャ28を押し上げて、ケース21内に収納されていた傘体31Aが、ドア22を押し開きつつ、ケース21外に押し出され、落下時の空気ATを受け、かつ、連結紐45Aに外周縁32aを牽引されて、展開する。そして、傘体31Aを展開させた落下傘30Aにより、ドローン1は落下速度が低減され、さらに、ドローン本体2側から延びる連結紐45Aの連結された傘体31Aの外周縁32a側は、ドローン本体2の周囲を囲むように配置された各プロペラ6の側方まで、換言すれば、各プロペラ6を結ぶ円周方向の全周、を覆うこととなる。そのため、落下先の保護対象としての人50が、プロペラ6に干渉しようとしても、傘体31Aが、その干渉を抑制できて、保護対象50へのプロペラ6の加害性を低減できる。
【0041】
なお、実施形態では、収納部位としてのケース21から傘体31,31Aを押し出す押し出し手段としての押し出し装置25として、ソレノイドアクチュエータ26を例示したが、収納した傘体31,31Aを、空気抵抗を受け可能に収納部位としてのケース21から押し出すことができれば、押し出し手段としては、ソレノイドアクチュエータ26の他に、簡便な構成のモータやばね機構等を利用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…ドローン、2…ドローン本体、6…プロペラ、20,20A…保護装置、25…(押し出し手段)押し出し装置、30,30A…落下傘、31,31A…傘体、32…外側シート、32a…外周縁、32b…中央、33…内側シート、33a…外周縁、33b…中央、33b…内周縁、35…流入口、37…逆止弁、38…隔壁、39…連通口、41…弁シート、43…空気室、45,45A…連結紐、46…外側紐、47…内側紐、50…(保護対象)人、AT…空気、SP…スペース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10