(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/46 20060101AFI20230124BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230124BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230124BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230124BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20230124BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B01J23/46 311A
B01J35/04 301L
F01N3/10 A ZAB
F01N3/28 301P
F01N3/035 A
B01D53/94 222
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
(21)【出願番号】P 2020550238
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035553
(87)【国際公開番号】W WO2020071065
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2018188912
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩知道 均一
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-082915(JP,A)
【文献】特開平08-332350(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125797(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
3/94
53/96
B01J 21/00-38/74
F01N 3/00
3/02
3/04-3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともロジウム及びパラジウムを含む触媒層を有する排ガス浄化触媒において、
前記ロジウムが少なくとも担体の隔壁表面に担持され、
前記パラジウムが少なくとも前記担体の隔壁内部に担持され、
前記隔壁内部における前記パラジウムの担持密度は下流側よりも上流側が高密度とされ
、
前記パラジウムを含む上流部と前記パラジウムを含まない下流部とを備え、
前記上流部のうち前記隔壁表面に設けられ前記ロジウムを含む表層部を備え、
前記下流部が前記隔壁内部に前記ロジウムを含む
ことを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記隔壁表面の第一細孔径が、前記隔壁内部の第二細孔径よりも大径である
ことを特徴とする、請求項
1記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記隔壁表面に触媒を固定する母材の第一粒径が、前記隔壁内部に触媒を固定する母材の第二粒径よりも大径である
ことを特徴とする、請求項
1または2記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
少なくともロジウム及びパラジウムを含む触媒層を有する排ガス浄化触媒において、
前記ロジウムが少なくとも担体の隔壁表面に担持され、
前記パラジウムが少なくとも前記担体の隔壁内部に担持され、
前記パラジウムの担持密度は下流側よりも上流側が高密度とされ、
前記パラジウムを含む上流部と前記パラジウムを含まない下流部とを備え、
前記上流部のうち前記隔壁表面に設けられ前記ロジウムを含む表層部を備え、
前記下流部が前記隔壁内部に前記ロジウムを含む
ことを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記隔壁表面の第一細孔径が、前記隔壁内部の第二細孔径よりも大径である
ことを特徴とする、請求項
4記載の排ガス浄化触媒。
【請求項6】
前記隔壁表面に触媒を固定する母材の第一粒径が、前記隔壁内部に触媒を固定する母材の第二粒径よりも大径である
ことを特徴とする、請求項
4または5記載の排ガス浄化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともロジウム及びパラジウムを含む触媒層を有する排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排ガス(排気ガス)を浄化するための排ガス浄化触媒として、ウォールフロータイプの担体に触媒を担持させたものが知られている。すなわち、多数の微細孔が貫通形成された担体(キャリア)の内部に触媒成分を固定して排ガスを流通させ、排ガス中に含まれる一酸化炭素,未燃燃焼成分,窒素酸化物,粒子状物質(Particulate Matter;以下PM)などを浄化するものである。担体の種類としては、セラミックス成形品や金属製品(メタル担体)などが存在する。また、担体に担持される触媒の種類は、浄化の対象となる物質に応じて多様に選択される(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/133086号
【文献】国際公開第2017/119101号
【文献】特開2010-269205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関の冷態始動時における排ガス浄化触媒での排ガス浄化性能を高めるには、内燃機関から排ガス浄化触媒までの距離を短くし、触媒の昇温性を高めることが有効である。しかし、排ガス浄化触媒を内燃機関に近づけるほどエキゾーストマニホールド近傍における排ガス圧力が上昇し、内燃機関の性能が低下しうる。そのため近年では、空孔率の高い担体を使用して圧力損失を減少させた排ガス浄化触媒が開発されている。
【0005】
一方、空孔率の高い担体においては、セルの空洞部分に接するリブ表面(隔壁表面)だけでなく、リブ内部(隔壁内部)にも触媒を担持させることが可能である。また、リブ表面とリブ内部では、排ガスとの接触面積や接触確率が相違する。したがって、それぞれの位置に適した種類の触媒を担持させることが好ましい。従来の排ガス浄化触媒ではこのような点が十分に考慮されておらず、排ガス浄化性能を効率的に高める上で改善の余地がある。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、排ガス浄化性能を効率的に高めることができるようにした排ガス浄化触媒を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)開示の排ガス浄化触媒は、少なくともロジウム及びパラジウムを含む触媒層を有する。また、前記ロジウムが少なくとも担体の隔壁表面に担持され、前記パラジウムが少なくとも前記担体の隔壁内部に担持される。さらに、前記隔壁内部における前記パラジウムの担持密度は下流側よりも上流側が高密度とされる。また、前記パラジウムを含む上流部と前記パラジウムを含まない下流部とを備え、前記上流部のうち前記隔壁表面に設けられ前記ロジウムを含む表層部を備え、前記下流部が前記隔壁内部に前記ロジウムを含む。
【0008】
(2)前記隔壁表面の第一細孔径が、前記隔壁内部の第二細孔径よりも大径であることが好ましい。
(3)前記隔壁表面に触媒を固定する母材の第一粒径が、前記隔壁内部に触媒を固定する母材の第二粒径よりも大径であることが好ましい。
(4)本件で開示される第二の排ガス浄化触媒は、少なくともロジウム及びパラジウムを含む触媒層を有する排ガス浄化触媒において、前記ロジウムが少なくとも担体の隔壁表面に担持され、前記パラジウムが少なくとも前記担体の隔壁内部に担持され、前記パラジウムの担持密度は下流側よりも上流側が高密度とされ、前記パラジウムを含む上流部と前記パラジウムを含まない下流部とを備え、前記上流部のうち前記隔壁表面に設けられ前記ロジウムを含む表層部を備え、前記下流部が前記隔壁内部に前記ロジウムを含む。
(5)また、上記(4)において、前記隔壁表面の第一細孔径が、前記隔壁内部の第二細孔径よりも大径であることが好ましい。
(6)また、上記(4),(5)において、前記隔壁表面に触媒を固定する母材の第一粒径が、前記隔壁内部に触媒を固定する母材の第二粒径よりも大径であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
隔壁表面にロジウムを含ませることで、窒素酸化物(NOx)を効率的に浄化することができる。また、隔壁内部にパラジウムを含ませることで、一酸化炭素や炭化水素を効率的に浄化することができる。さらに、排ガスと接触しやすい上流側のパラジウム担持密度を高くすることで、効率的に排ガス浄化性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】排ガス浄化触媒が適用された車両の内部を示す図である。
【
図3】排ガス浄化触媒の内部構造を拡大して示す断面図である。
【
図4】触媒の担持密度と浄化効率との関係を示すグラフである。
【
図5】細孔径と細孔量との関係を示すグラフである。
【
図6】(A)~(C)は浄化効率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.装置構成]
以下、図面を参照して、実施形態としての排ガス浄化触媒について説明する。
図1に示すように、本件の排ガス浄化触媒3は、エンジン1(内燃機関)を搭載した車両10に適用される。エンジン1の種類はディーゼルエンジンであってもよいし、ガソリンエンジンであってもよい。排ガス浄化触媒3は、エンジン1の排気通路2に介装される。排ガス浄化触媒3は、排ガスに含まれる各種有害成分を効率よく浄化するための触媒装置であり、三元触媒としての機能と、PM除去フィルターとしての機能とを併せ持つ。排ガス浄化触媒3の配設位置は、触媒反応性を確保すべく、高温な排ガスが通過する位置に設定することが好ましい。例えば
図1中に示すように、エンジン1に近接した位置(エキゾーストマニホールドの直下流側や過給機の直下流側など)に配置するとよい。
【0012】
排ガス浄化触媒3の内部には、排ガスが通過しうる多数の流路が形成された多孔質体が設けられる。多孔質体とは、多孔質の担体7に母材8を介して触媒9を担持させたものであり、円筒状や楕円筒状,直方体状に形成される。担体7の材料は、炭化ケイ素やコーディエライト(コージライト)などのセラミックスであってもよいし金属箔であってもよい。担体7の空孔率は高いほど好ましい。本実施形態の担体7は空孔率が50[%]を超え、かつ直径が1[μm]以上の細孔についての細孔容積が0.2[mL/g]を超えるものとする。
【0013】
触媒9を担持させるための母材8としては、酸化アルミニウム(アルミナ,Al2O3)や酸化セリウム(セリア,CeO2)や酸化ジルコニウム(ジルコニア,ZrO2)などが挙げられる。なお、酸化雰囲気下で酸素を吸蔵する酸素吸蔵材料を母材8に含ませてもよい。酸素吸蔵材料の例としては、セリア・ジルコニア複合酸化物(CeO2-ZrO2系物質)や希土類オキシ硫酸塩(Ln2O2SO4)などが挙げられる。
【0014】
図2に示す多孔質体は、ハニカム構造の担体7に母材8及び触媒9を固定したものである。担体7の内部は、排ガスの流通方向に沿って複数のセル(小部屋状の通路)に分割される。各セルは多孔質の隔壁6(リブ)によって区画され、入口側か出口側の端部が閉塞される。ここで、出口側の端部が閉塞されたセルを入口セル4と呼ぶ。同様に、入口側の端部が閉塞されたセルを出口セル5と呼ぶ。また、排ガスの流通方向を基準として、担体7における上流側(入口側)の部位を上流部11と呼び、担体7における下流側(出口側)の部位を下流部12と呼ぶ。
【0015】
それぞれの入口セル4は、少なくとも一つ以上の出口セル5に隣接するように配置され、好ましくは多数の出口セル5に隣接するように配置される。これにより、排ガス浄化触媒3の入口から流入した排ガスは、まず入口セル4へと進入し、隔壁6の中を通過したのちに出口セル5へと進入して、排ガス浄化触媒3の出口から流出する。本実施形態の多孔質体では、入口セル4と出口セル5とを区画する隔壁6の内部と、隔壁6の表面のうち入口セル4に面した側とに触媒9が担持される。以下、隔壁6の内部のことを「隔壁内部」と呼び、入口セル4に面した隔壁6の表面のことを単に「隔壁表面」と呼ぶ。
【0016】
触媒9には少なくともロジウム(Rh)及びパラジウム(Pd)が含まれる。ロジウムは、少なくとも担体7の隔壁表面に担持される。一方、パラジウムは少なくとも担体7の隔壁内部に担持される。また、パラジウムの担持密度は、下流部12よりも上流部11が高密度とされる。例えば、隔壁表面にパラジウムが含まれない場合には、下流部12の隔壁内部よりも上流部11の隔壁内部におけるパラジウムの担持密度が高密度とされる。また、隔壁表面にパラジウムが含まれる場合には、その隔壁表面のパラジウムを含む担持密度が、下流側よりも上流側において高密度とされる。
【0017】
図3は、
図2中のA部を拡大して示す断面図である。担体7に母材8及び触媒9が固定される位置は、上流部11と下流部12とに分類することができ、かつ、隔壁内部と隔壁表面とに分類することができる。ここで、上流部11かつ隔壁内部のことを「上流内部13」と呼び、上流部11かつ隔壁表面のことを「上流表層14(表層部)」と呼ぶ。同様に、下流部12かつ隔壁内部のことを「下流内部15」と呼び、下流部12かつ隔壁表面のことを「下流表層16」と呼ぶ。
【0018】
上流内部13にはパラジウムが高濃度に担持され、下流内部15にはパラジウムが非担持とされる。本実施形態の上流内部13におけるパラジウムの担持密度は8.0[g/L]である。なお、下流内部15にパラジウムを担持させる場合には、その担持密度を8.0[g/L]未満とすることが好ましい。また、上流表層14と下流内部15にはロジウムが担持される。上流表層14におけるロジウムの担持密度は1.0[g/L]であり、下流内部15におけるロジウムの担持密度は0.4[g/L]である。
【0019】
本実施形態では
図3中に破線で示す下流表層16が未形成とされる。一方、下流表層16を形成する場合には、上流表層14と同様にロジウムを担持させることが好ましい。この場合、下流表層16におけるロジウムの担持密度は1.0[g/L]程度とする。
図4に示すように、熱耐久後において、ロジウムやパラジウムは白金よりも担持量あたりの触媒活性(全炭化水素に対する変換効率)が高い。したがって、ロジウム及びパラジウムを用いることで、効率的に排ガス浄化性能を高めることができる。
【0020】
担体7及び母材8の細孔径に関して、隔壁表面の細孔径(第一細孔径)は、隔壁内部の細孔径(第二細孔径)よりも大径とすることが好ましい。また、細孔径を隔壁表面と隔壁内部とで相違させるための手法としては、母材8の粒径を相違させることが考えられる。すなわち、触媒9を隔壁表面に担持させる母材の粒径(第一粒径)は、触媒9を隔壁内部に担持させる母材の粒径(第二粒径)よりも大径とすることが好ましい。
【0021】
例えば、上流表層14の母材の粒径を上流内部13の母材の粒径よりも大きくする。また、下流表層16にも触媒9を担持させる場合には、下流表層16の母材の粒径を下流内部15の母材の粒径よりも大きくする。本実施形態の細孔分布を
図5に例示する。
図5中の実線は隔壁表面の細孔分布を示し、破線は隔壁内部の細孔分布を示す。このように、隔壁表面の細孔径を隔壁内部よりも大きめにすることで排ガスの流通性が向上し、排気通路2の圧力損失が減少しうる。また、隔壁表面近傍での排ガスの滞在時間が延長され、上流表層での排ガス浄化性能が向上する。
【0022】
担体7及び母材8の骨格内に存在するメソ孔(2~50[nm]の細孔)は、触媒反応や対象物質の吸着の場として作用する。また、マクロ孔(50[nm]以上の細孔)は、対象物質の拡散律速を解消するように作用する。したがって、
図5に示すようにメソ孔とマクロ孔との双方を形成することで、排ガスが素早く拡散されるとともに対象物質が活性サイトに位置しやすくなり、排ガス浄化性能が向上する。
【0023】
[2.作用・効果]
(1)隔壁表面にロジウムを含ませることで、窒素酸化物(NOx)を効率的に浄化することができる。また、隔壁内部にパラジウムを含ませることで、一酸化炭素や炭化水素を効率的に浄化することができる。特に、排ガスと接触しやすい上流側のパラジウム担持密度を高くすることで、効率的に排ガス浄化性能を高めることができる。また、下流側のパラジウム担持密度を低くすることができるため、製造コストの上昇を抑えることができる。また、
図4に示すように、ロジウムはパラジウムや白金と比較して、担持量あたりの触媒活性が高い。したがって、最も排ガスに接触しやすい上流表層14にロジウムを担持することで、効率的に排ガス浄化性能を高めることができる。
【0024】
図6(A)~(C)に示す実線グラフは、エンジン1の始動直後におけるロジウムの浄化効率を示し、破線グラフはパラジウムの浄化効率を示す。パラジウムは、エンジン1の始動直後の排ガス浄化性能が高いことがわかる。したがって、ロジウムとパラジウムとを併用することで、エンジン1の始動直後であっても、あるいはエンジン1の通常作動時であっても、排ガス浄化性能を高めることができる。また、高価なロジウムのみを使用した場合と比較すると、安価なパラジウムを併用した方がトータルの製造コストを抑えることができる。
【0025】
(2)
図3に示すように、パラジウムを含む上流部11とパラジウムを含まない下流部12とを設けることで、簡素な構造で排ガス浄化触媒を形成することができる。例えば、ウォッシュコート法で上流内部13や下流内部15に触媒9を担持させることが容易となる。また、下流部12にはパラジウムが担持されないため、パラジウムの担持量を大幅に削減することができ、製造コストを削減することができる。
【0026】
(3)
図3に示すように、ロジウムを含む上流表層14は、上流部11のうち担体7の隔壁表面に設けられる。このような簡素な構造にすることで、ウォッシュコート法で上流表層14に触媒9を担持させることが容易となる。なお、下流表層16を形成しない場合(すなわち、下流表層16にロジウムを担持させない場合)には、ロジウムの担持量を大幅に削減することができ、製造コストを削減することができる。
【0027】
(4)隔壁表面の細孔径(第一細孔径)を隔壁内部の細孔径(第二細孔径)よりも大径にすることで、排ガスの流通性を向上させることができ、排気通路2の圧力損失を減少させることができる。これにより、圧力損失によるエンジン1の出力低下が生じにくくなり、燃費を改善することができる。また、上流表層14よりも上流内部13での細孔径が小さいことから、上流表層14の近傍での排ガスの滞在時間を延長することができる。これにより、上流表層14での排ガス浄化性能を向上させることができる。
【0028】
(5)また、隔壁表面に触媒を固定する母材の粒径(第一粒径)を、隔壁内部に触媒を固定する母材の第二粒径よりも大径にすることで、担体7の部位ごとに細孔径が異なる構造を容易に形成することができる。例えば、ウォッシュコート法で触媒9を担持させる際に、母材8として添加されるアルミナやセリアの粒径を相違させることで、細孔径を制御することができる。すなわち、上流内部13の形成時には粒径の大きな母材8を用いればよいし、上流表層14の形成時には粒径の小さな母材8を用いればよい。
【0029】
[3.変形例]
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0030】
上述の実施形態では、担体7における上流側(入口側)の部位を上流部11とし、下流側(出口側)の部位を下流部12としているが、上流部11と下流部12との区分手法はこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、入口セル4と出口セル5とを区画する隔壁6を通過する排ガスの流通方向を基準として、隔壁6の厚み方向に領域を分割することによって上流部11と下流部12とを定義することも可能である。このような構造の排ガス浄化触媒3においても、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0031】
上述の実施形態では、隔壁表面のうち上流部11に含まれる部位が上流表層14(表層部)として定義され、この上流表層14にロジウムが担持されているが、上流表層14の位置は変更可能である。例えば、
図3中に破線で示すような下流表層16を形成し、上流表層14と同様にロジウムを担持させてもよい。あるいは、下流表層16のみを形成してロジウムを担持させてもよいし、隔壁表面の任意位置に任意個数のロジウム含有層を形成してもよい。少なくともロジウムを担体の隔壁表面に担持させることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0032】
1 エンジン(内燃機関)
2 排気通路
3 排ガス浄化触媒
4 入口セル
5 出口セル
6 隔壁
7 担体
8 母材
9 触媒
10 車両
11 上流部
12 下流部
13 上流内部
14 上流表層(表層部)
15 下流内部
16 下流表層