(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】危険箇所と時刻の算出方法、危険箇所と時刻の算出装置および危険箇所と時刻の算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 3/02 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
G08G3/02 A
(21)【出願番号】P 2020572054
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005680
(87)【国際公開番号】W WO2020166080
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182711(JP,A)
【文献】特開2017-194902(JP,A)
【文献】特開平11-272999(JP,A)
【文献】特開平09-022500(JP,A)
【文献】特開2017-182729(JP,A)
【文献】特開2017-178287(JP,A)
【文献】特開2018-036958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアに属する複数の移動体の軌跡データに基づいて、各移動体が他の移動体との衝突を回避した可能性を示す行動である回避行動を少なくとも2つの移動体で検出し、
前記2つの移動体の一方による回避行動が、他方による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す評価値を算出し、
前記評価値に基づいて、複数の移動体が密集したエリアの衝突リスクを算出する
処理をコンピュータが実行することを特徴とする危険箇所と時刻の算出方法。
【請求項2】
該検出する処理は、第1の移動体と第2の移動体とでそれぞれ前記回避行動を検出し、
前記第2の移動体の前記回避行動が検出された時点で最も近傍にある移動体が、前記回避行動が検出された前記第1の移動体であるか否かを判定し、
前記評価値を算出する処理は、前記第2の移動体の前記時点で最も近傍にある移動体が、前記第1の移動体であると判定した場合には、前記第2の移動体による回避行動が前記第1の移動体による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す前記評価値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の危険箇所と時刻の算出方法。
【請求項3】
前記評価値を算出する処理は、さらに、前記2つの移動体のそれぞれの軌跡が横切る関係であるか否かを示す情報を含む評価値を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の危険箇所と時刻の算出方法。
【請求項4】
所定の手法により前記エリアの衝突リスクを算出し、
前記衝突リスクを算出する処理は、前記評価値に基づいて、前記エリアの衝突リスクを補正する
ことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の危険箇所と時刻の算出方法。
【請求項5】
所定のエリアに属する複数の移動体の軌跡データに基づいて、各移動体が他の移動体との衝突を回避した可能性を示す行動である回避行動を少なくとも2つの移動体で検出し、
前記2つの移動体の一方による回避行動が、他方による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す評価値を算出し、
前記評価値に基づいて、複数の移動体が密集したエリアの衝突リスクを算出する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする危険箇所と時刻の算出プログラム。
【請求項6】
所定のエリアに属する複数の移動体の軌跡データに基づいて、各移動体が他の移動体との衝突を回避した可能性を示す行動である回避行動を少なくとも2つの移動体で検出する検出部と、
前記2つの移動体の一方による回避行動が、他方による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す評価値を算出する第1の算出部と、
前記評価値に基づいて、複数の移動体が密集したエリアの衝突リスクを算出する第2の算出部と、
を有することを特徴とする危険箇所と時刻の算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険箇所と時刻の算出方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶間のニアミスリスクを定量化した指標を計算し、この指標を時空間的に加算することで、ホットスポットインデックス(ホットスポットの危険な度合いの指標)を算出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。なお、ここでいう「ホットスポット」とは、所定期間における、船舶間の衝突あるいはニアミスの可能性を示す指標(リスク値)が高い局地的な海域および時刻あるいは期間のことをいう。
【0003】
かかる技術では、ペアの船舶が最も接近する位置・時刻にリスクが存在するものとみなす。そして、一定の時間幅にわたって、海域ごとにリスク値を累積し、累積した海域ごとの累積リスク値を算出する。この結果、累積リスク値に基づいて危険箇所と時刻を特定する。
図16は、ホットスポットの累積リスク値を算出する方法の参考例を示す図である。
図16に示すように、それぞれ“△”で示される「リスク値の累積開始時刻」から各“+30分”の範囲内に含まれる“〇”で示される「リスク値」を積算して、「□」で示される「リスク値の累積開始時刻」ごとの「ホットスポットインデックス」(以下、ホットスポットインデックス)を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のホットスポットインデックスを算出する技術では、例えば、ペアの船舶が最も接近する位置・時刻にリスクが存在するとみなし、海域ごとにペアの船舶のリスク値を累積してホットスポットインデックスを算出する。この方法により、単に船舶が空間的に密集しているという表層的な状態だけではなく、船舶間の衝突あるいはニアミスのリスクを考慮することが可能となる。また、時間とともに変化する状態を考慮するため、いつもこの場所が危険であるという「静的なホットスポット」ではなく、特定の場所が特定の時刻あるいは特定の期間に危険な状態になるという「動的なホットスポット」を抽出することが可能となる。
【0006】
しかしながら、従来のホットスポットインデックスを算出する技術で特定された危険個所や時刻あるいは期間が、船長や船舶の管制官などの専門家の感覚からは乖離し、必ずしも危険ではない場合がある。これは、ホットスポットインデックスの算出が、船舶間の衝突あるいはニアミスのリスクのみに基づいており、各船舶が取る衝突の回避行動(避航操船)を考慮していないことによる。
【0007】
船舶間の衝突あるいはニアミスのリスクは、船舶間の衝突あるいはニアミスの可能性を定量化したものであり、船長や船舶の管制官などの専門家の感覚が直接的に反映されているわけではない。一方、避航操船は、船長や船舶の管制官が実際に衝突あるいはニアミスの危険性を認識し、それを回避するために実施したものであるため、船長や船舶の管制官の感覚が直接的に反映されている。特に、ホットスポットにおいては、二つの船舶間での避航操船にとどまらず、避航操船が連鎖的あるいは同時多発的に発生する場合がある。このような状況に陥ると、各船舶が自律的な判断により適切な避航操船を行うことが困難になり、また船舶の管制官も関係するすべての船舶に指示を出すことが困難となるため、極めて危険性の高い状態となる。
【0008】
ここで、避航操船が連鎖的あるいは同時多発的に発生することによるホットスポットの事例を、
図17を参照して説明する。
図17は、避航操船が連鎖的あるいは同時多発的に発生することによるホットスポットの事例を示す図である。なお、丸の中の矢印は、船舶を表す。
【0009】
図17では、符号a1,a2で表わす各船舶が避航操船すると、符号a3で表わす船舶が連鎖的に避航操船する。船舶a3が避航操船すると、符号a4で表わす船舶が連鎖的に避航操船する。さらに、船舶a4が避航操船すると、連鎖的に符号a5で表わす船舶が避航操船する。このように、避航操船が連鎖的あるいは同時多発的に発生するので、この海域はホットスポットであると管制官が判定する。つまり、ホットスポットにおいては、避航操船が連鎖的あるいは同時多発的に発生する場合が多い。
【0010】
したがって、船舶間のリスク値のみからホットスポットインデックスを算出する手法では、危険箇所と時刻を適切に認識するのが難しい。
【0011】
本発明は、1つの側面では、危険箇所と時刻をより適切に認識することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様では、危険箇所と時刻の算出方法では、コンピュータが、複数の移動体の軌跡データに基づいて、各移動体が他の移動体との衝突を回避した可能性を示す行動である回避行動を検出し、2つの移動体の一方による回避行動が、他方による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す評価値を算出し、前記評価値に基づいて、複数の移動体が密集したエリアの衝突リスクを算出する、処理を実行する。
【発明の効果】
【0013】
1実施態様によれば、危険箇所と時刻をより適切に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例に係るホットスポット算出装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例に係るAIS蓄積データのデータ構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例に係る補充済みAISデータのデータ構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例に係るベースリスク情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例に係るベースホットスポットインデックス情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例に係るエリア情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例に係るデータ補完処理の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例に係るホットスポットインデックス情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例に係る指標算出処理を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施例に係る出力処理による表示の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例に係るベースホットスポット算出処理のフローチャートの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例に係る指標情報算出処理のフローチャートの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例に係る統合ホットスポット算出処理のフローチャートの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施例に係る統合ホットスポットインデックスによってホットスポットがより適切に抽出可能となる一例を示す図である。
【
図15】
図15は、ホットスポット算出プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、ホットスポットの累積リスク値を算出する方法の参考例を示す図である。
【
図17】
図17は、避航操船が連鎖的あるいは同時多発的に発生することによるホットスポットの事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願の開示する危険箇所と時刻の算出方法、危険箇所と時刻の算出装置および危険箇所と時刻の算出プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。また、以下の実施例において、「ホットスポット」は、2船舶より多い複数の船舶によって構成される衝突リスクの高い局地的な海域(例えば、後述のエリア)および時刻あるいは期間を指し示す。
【実施例】
【0016】
[ホットスポット算出装置の構成]
図1は、実施例に係るホットスポット算出装置の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、ホットスポット算出装置10は、ホットスポットにおける船舶の航行を支援する装置である。かかるホットスポットでは、多数の船舶が相互に影響を与えるため、一旦ホットスポットが形成されてしまうと、個々の船長の判断あるいは管制官の指示で危険状態を解消することが困難になる。そこで、ホットスポットの形成を事前に予測したり、ホットスポットの形成を未然に防止したりすることが重要になる。ホットスポット算出装置10は、船舶の航行の支援の中でも、ホットスポット形成の事前予測や未然防止に支援可能な装置である。なお、ホットスポット算出装置10は、危険箇所と時刻の算出装置の一例である。
【0017】
ホットスポット算出装置10は、既存手法のホットスポットの衝突に関するリスク値に、避航操船が他の船舶の避航操船を引き起こすという波及効果などの相互作用的な情報を組み合わせて、現場が感じる危険レベルを反映したリスク値を算出する。ここでいう「避航操船」とは、船舶の衝突を避ける操船のことをいう。また、ここでいう現場が感じる危険レベルを反映したリスク値は、後述する「統合ホットスポットインデックス」という。なお、また、ここでいう現場とは、例えば、操船側の船長や航行管制側の管制官のことをいう。
【0018】
ホットスポット算出装置10は、例えば、陸上施設に配置されたサーバなどのコンピュータや船舶上に配置されたコンピュータに実装される。ここでいう陸上施設とは、海上の船舶について監視および情報提供する役割を担う海上交通センタや港内交通管制室のことをいう。ホットスポット算出装置10は、外部I/F(インタフェース)部11、入力部12、表示部13、記憶部14および制御部15を有する。
【0019】
外部I/F部11は、例えば、他の装置と各種の情報を送受信するインタフェースである。外部I/F部11は、陸上施設に設けられたアンテナなどの無線通信装置20を介して、各船舶と無線通信し、各船舶と各種の情報を送受信する。例えば、外部I/F部11は、無線通信装置20を介して、各船舶からAIS情報を受信する。
【0020】
入力部12は、各種の情報を入力する。入力部12には、一例として、マウスやキーボードなどの操作の入力を受け付けるデバイスが挙げられる。例えば、入力部12は、各種の処理の開始を指示する操作を受け付け、受け付けた操作内容を示す操作情報を制御部15に入力する。
【0021】
表示部13は、各種情報を表示する。表示部13には、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などのデバイスが挙げられる。例えば、表示部13は、各種情報を表示する。
【0022】
記憶部14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光もしくは光磁気ディスクなどの外部記憶装置である。なお、記憶部14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)などの半導体メモリ素子であっても良い。
【0023】
記憶部14は、AIS蓄積データ141、補完済みAISデータ142、ベースリスク情報143、ベースホットスポットインデックス情報144、エリア情報145、指標情報146およびホットスポットインデックス情報147を有する。AIS蓄積データ141、補完済みAISデータ142、ベースリスク情報143、ベースホットスポットインデックス情報144、エリア情報145およびホットスポットインデックス情報147のそれぞれは、一例としてテーブルのデータ形式である。しかし、これに限定されず、AIS蓄積データ141、補完済みAISデータ142、ベースリスク情報143、ベースホットスポットインデックス情報144、エリア情報145およびホットスポットインデックス情報147のそれぞれは、CSV(Comma Separated Values)形式など、その他のデータ形式であっても良い。
【0024】
AIS蓄積データ141は、各船舶から受信されたAIS情報を蓄積したデータである。補完済みAISデータ142は、AIS蓄積データ141内のAIS情報を所定期間間隔で補完したデータである。所定期間間隔は、一例として1秒間隔であるが、データ量を抑制するために1秒より大きい秒間隔としても良い。実施例では、所定期間間隔は、10秒間隔であるとして説明する。補完済みAISデータ142は、後述するデータ補完部152によって生成される。
【0025】
ここで、AIS蓄積データ141および補完済みAISデータ142のデータ構成の一例を、
図2および
図3を参照して説明する。
【0026】
図2は、実施例に係るAIS蓄積データのデータ構成の一例を示す図である。
図2に示すように、AIS蓄積データ141は、経度、緯度、速度および針路を日時および船舶ID(IDentifier)に対応付けた情報である。なお、
図2に示したAIS蓄積データ141の各項目は、一例であり、その他の項目を有しても良い。
【0027】
船舶IDは、船舶を一意に識別する識別情報である。また、針路は、所定の方向を基準(0度)とした角度とする。例えば、針路は、北の方向を基準として右回りの角度とする。
【0028】
一例として、日時が「2015/7/9 14:00:09」および船舶IDが「A」である場合に、経度として「139.7303」、緯度として「35.3023」、速度として「10.2」、針路として「144.7」を記憶している。
【0029】
図3は、実施例に係る補充済みAISデータのデータ構成の一例を示す図である。
図3に示すように、補完済みAISデータ142は、AIS蓄積データ141と同様のデータ構成である。ここでは、補完済みAISデータ142は、10秒間隔で補完されている。
【0030】
一例として、日時が「2015/7/9 14:00:09」および船舶IDが「A」である場合に、経度として「139.7300」、緯度として「35.3026」、速度として「10.2」、針路として「144.9」を記憶している。また、日時が「2015/7/9 14:00:10」および船舶IDが「A」である場合に、経度として「139.7303」、緯度として「35.3022」、速度として「10.2」、針路として「144.7」を記憶している。
【0031】
図1に戻って、ベースリスク情報143は、所定の手法により算出された、2個の船舶を組とした各時点の船舶の衝突リスクを数値形式で表わしたリスク値の情報である。所定の手法により算出されたリスク値は、以降、「ベースリスク値」というものとする。なお、所定の手法は、例えば、2個の船舶が最も接近する位置および時刻において衝突リスクが存在するものとみなす場合の衝突リスクの可能性を示すリスク値を算出する国際公開第2018/193591号によって開示された手法である。また、所定の手法は、これに限定されず、船舶の衝突リスクを算出する既存の手法であれば、いかなる手法であっても良い。なお、ベースリスク情報143は、後述するベースホットスポット算出部153によって生成される。
【0032】
ここで、ベースリスク情報143のデータ構成の一例を、
図4を参照して説明する。
図4は、実施例に係るベースリスク情報のデータ構成の一例を示す図である。
図4に示すように、ベースリスク情報143は、日時、船舶ID#1、船舶ID#2およびベースリスク値を対応付けた情報である。なお、
図4に示したベースリスク情報143の各項目は、一例であり、その他の項目を有しても良い。
【0033】
船舶ID#1は、組となる一方の船舶を一意に識別する識別情報である。船舶ID#2は、組となる他方の船舶を一意に識別する識別情報である。日時は、船舶の操船日時である。ベースリスク値は、船舶ID#1と船舶ID#2とが最接近した時点の船舶のリスク値であり、前述した所定の手法により算出されたリスク値である。
【0034】
一例として、日時が「2015/7/9 14:00:00」である場合に、船舶ID#1として「A」、船舶ID#2として「B」およびベースリスク値として「0.1」を記憶している。また、日時が「2015/7/9 14:00:00」である場合に、船舶ID#1として「A」、船舶ID#2として「C」およびベースリスク値として「0.0」を記憶している。
【0035】
図1に戻って、ベースホットスポットインデックス情報144は、ベースとなるホットスポットインデックスの情報である。ベースとなるホットスポットインデックスは、以降、「ベースホットスポットインデックス」というものとする。ベースホットスポットインデックス情報144は、例えば、前述した国際公開第2018/193591号によって開示された手法により、所定の最適時間幅にわたってエリア(海域)ごとにベースリスク値を累積して得られた、エリア(海域)ごとのベースホットスポットインデックスを含む情報である。また、ベースホットスポットインデックスを算出する手法は、これに限定されず、ホットスポットインデックスを算出する既存の手法であれば、いかなる手法であっても良い。なお、ベースホットスポットインデックス情報144は、後述するベースホットスポット算出部153によって生成される。
【0036】
ここで、ベースホットスポットインデックス情報144のデータ構成の一例を、
図5を参照して説明する。
図5は、実施例に係るベースホットスポットインデックス情報のデータ構成の一例を示す図である。
図5に示すように、ベースホットスポットインデックス情報144は、日時、エリアID(IDentifier)およびベースホットスポットインデックスを対応付けた情報である。なお、
図5に示したベースホットスポットインデックス情報144の各項目は、一例であり、その他の項目を有しても良い。
【0037】
日時は、ベースホットスポットインデックスに対応する時刻を示す。日時は、例えば、前述した国際公開第2018/193591号によってベースホットスポットインデックスが算出される場合には、累積開始時刻を示す。エリアIDは、海域に対応する識別情報である。なお、エリアIDについては、後述する。ベースホットスポットインデックスは、エリアIDが示す海域および日時のベースホットスポットインデックスである。
【0038】
一例として、日時が「2015/7/9 14:00:00」である場合に、エリアIDとして「1」、ベースホットスポットインデックスとして「0.1」を記憶している。日時が「2015/7/9 14:00:10」である場合に、エリアIDとして「1」、ベースホットスポットインデックスとして「0.3」を記憶している。
【0039】
図1に戻って、エリア情報145は、対象海域を所定サイズごとのエリア(海域)に分割したエリアに関する各種の情報である。対象海域は、陸上施設の管制官や船舶上の船長によって選択される海域を示す。
【0040】
ここで、エリア情報145のデータ構成の一例を、
図6を参照して説明する。
図6は、実施例に係るエリア情報のデータ構成の一例を示す図である。
図6上図に示すように、エリア情報145は、エリアID、左上経度および左上緯度を対応付けた情報である。なお、
図6上図に示したエリア情報145の各項目は、一例であり、その他の項目を有しても良い。
【0041】
エリアIDは、対象海域のエリアを識別する識別情報である。エリアIDは、ベースホットスポットインデックス情報144のエリアIDに対応する。エリアには、それぞれを識別する識別情報としてエリアIDが付与される。左上経度は、エリアの各頂点のうち左上の頂点の位置の経度を示す。左緯度は、エリアの各頂点のうち左上の頂点の位置の緯度を示す。左上とは、例えば、エリアの中で最も北西の地点を示す。
【0042】
図6下図に示すように、エリアの形状が矩形である場合に、対象海域を所定サイズごとのエリアに分割したエリアのエリアIDが「1」~「9」に対応付けられている。エリアIDが「1」の左上経度および左上緯度がP1に対応する。一例として、エリアIDが「1」である場合に、左上経度として「139.004」、左上緯度として「35.304」を記憶している。エリアIDが「2」の左上経度および左上緯度がP2に対応する。一例として、エリアIDが「2」である場合に、左上経度として「139.008」、左上緯度として「35.304」を記憶している。なお、
図6では、エリアの形状は、矩形であるが、矩形に限られない。例えば、エリアの形状は、3角形や6角形などの多角形であっても良い。エリアの識別は、左上の経度および緯度に限られない。例えば、エリアの各頂点の位置の緯度および経度であっても良い。また、エリアは、一辺の幅を、緯度が示す0.04度および経度が示す0.04度としているが、これに限られるものではない。
【0043】
図1に戻って、指標情報146は、複数の船舶の相互作用的な情報を示す各種指標の情報である。指標情報146は、エリア(海域)ごとに示される。複数の船舶の相互作用的な情報には、例えば、一方の避航操船が他方の避航操船を引き起こすという避航操船の波及を示す情報、避航操船の同時多発を示す情報が挙げられる。また、避航操船を引き起こす航跡の横切り関係の船舶ペアの数、航跡の交差関係の船舶ペアの数が挙げられる。また、船舶の向きの変更による避航操船の程度、急減速による避航操船の程度などが挙げられる。なお、上述した複数の船舶の相互作用的な情報は、一例であって、これに限定されるものではない。また、指標情報146は、後述する指標情報算出部154によって算出される。
【0044】
ここで、指標情報について説明する。
【0045】
1つの指標情報として避航操船の波及を示す情報(指標情報A)が挙げられる。ホットスポットとして抽出されるエリアでは、船舶の衝突を避ける避航操船が時間遅れで引き起こされることがある。そこで、かかる避航操船の波及効果を示す相互作用的な情報が指標情報として算出される。
【0046】
1つの指標情報として避航操船の同時多発を示す情報(指標情報B)が挙げられる。ホットスポットとして抽出されるエリアでは、船舶の衝突を避ける避航操船が同時に引き起こされることがある。そこで、かかる避航操船の波及効果を示す相互作用的な情報が指標情報として算出される。
【0047】
1つの指標情報として、航跡の横切り関係の船舶ペアの数(指標情報C)が挙げられる。ホットスポットとして抽出されるエリアでは、2つの船舶のそれぞれの航跡が直角に近い角度で交わる(横切る)ことがある。そこで、かかる航跡の横切り関係の船舶ペアの数が指標情報として算出される。
【0048】
1つの指標情報として、船舶の交差関係の船舶ペアの数(指標情報D)が挙げられる。ホットスポットとして抽出されるエリアでは、2つの船舶のそれぞれの航跡が交差の角度に制限はないが交わることがある。そこで、かかる船舶の交差関係の船舶ペアの数が指標情報として算出される。
【0049】
1つの指標情報として、船舶の向き(対地針路)の変化による避航操船の程度(指標情報E)が挙げられる。余裕がある避航操船の場合には、船舶の向きの変化は、最小限に抑えられる。一方、船舶の向きが1回転したり、180度向きを変えたりといった極端な針路の変化は、現場でも、避航操船に余裕がない状態、危険レベルが高い状態であると推定される。そこで、複数の船舶それぞれの、船舶の向き(対地針路)の変化の度合いの累積が指標情報として算出される。
【0050】
1つの指標情報として、急減速による避航操船の程度(指標情報F)が挙げられる。避航操船の際には、速度は極力変更せずに、コースを変更することが一般的である。一方、プロペラスクリューが逆転することなどによる急減速は、現場でも、避航操船に余裕が無い状態、危険レベルが高い状態であると推定される。そこで、複数の船舶それぞれの、避航操船の際の減速度の累積が指標情報として算出される。
【0051】
ホットスポットインデックス情報147は、ベースホットスポットインデックスと各種指標情報とを組み合わせて統合的なホットスポットインデックスを算出した結果を示す情報である。統合的なホットスポットインデックスは、前述した「統合ホットスポットインデックス」のことをいう。ホットスポットインデックス情報147は、エリアごとに示される。なお、ホットスポットインデックス情報147は、統合ホットスポット算出部155によって算出される。
【0052】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)などの電子回路に対応する。そして、制御部15は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部15は、データ取得部151、データ補完部152、ベースホットスポット算出部153、指標情報算出部154、統合ホットスポット算出部155および出力部156を有する。なお、指標情報算出部154は、検出部および第1の算出部の一例である。統合ホットスポット算出部155は、第2の算出部の一例である。
【0053】
データ取得部151は、各種のデータを取得する。例えば、データ取得部151は、無線通信装置20を介して各船舶からAIS情報を取得する。データ取得部151は、取得したAIS情報をAIS蓄積データ141に格納する。なお、データ取得部151は、各船舶からAIS情報を取得すると説明したが、これに限定されない。AIS情報は、ストレージ装置やクラウドなど外部の記憶装置に記憶されていても良い。かかる場合には、データ取得部151は、外部の記憶装置から、各船舶のAIS情報を取得すれば良い。
【0054】
データ補完部152は、AIS蓄積データ141内のAIS情報を所定期間間隔に補完する。例えば、データ補完部152は、AIS蓄積データ141内のAIS情報を、船舶ごとに、一例として1秒間隔で補完する。AIS蓄積データ141内のAIS情報を所定期間間隔で補完するのは、以下の理由による。各船舶からAIS情報が送信されるが、各船舶でAIS情報が送信される周期が異なったり、同一船舶であってもAIS情報が非同期で送信されたりするので、各船舶でAIS情報の日時を合わせるためである。1秒間隔の補完は、AIS蓄積データ141に既に存在するAIS情報とAIS情報との間を線形となるように内挿補完すれば良い。そして、データ補完部152は、補完後のAIS蓄積データ141´を、船舶ごとに、一例として10秒ごととなるようにAIS情報を間引き、間引いた残りのAIS情報を補完済みAISデータ142に格納する。AIS情報を間引くのは、データ量が多くなるのを抑制するためである。
【0055】
ここで、データ補完部152が行うデータ補完処理の一例を、
図7を参照して説明する。
図7は、実施例に係るデータ補完処理の一例を示す図である。なお、
図7では、
図2で示すAIS蓄積データ141内のAIS情報を10秒間隔で補完する場合について説明する。
図7上図に示すテーブルの強調した情報は、AIS蓄積データ141に既に存在するAIS情報である。
【0056】
このような状況の下で、データ補完部152は、AIS蓄積データ141内のAIS情報を1秒間隔で補完する。補完後のAIS蓄積データ141´が生成される。ここでは、データ補完部152は、「2015/7/9 14:00:00」のAIS情報と「2015/7/9 14:00:18」のAIS情報との間を内挿補完する。また、データ補完部152は、「2015/7/9 14:00:19」のAIS情報と「2015/7/9 14:00:27」のAIS情報との間を内挿補完する。
【0057】
そして、データ補完部152は、補完後のAIS蓄積データ141´を、船舶ごとに、10秒ごととなるようにAIS情報を間引く。間引いた残りのAIS情報が、補完済みAISデータ142に格納される。ここでは、データ補完部152は、「2015/7/9 14:00:00」から10秒ごととなるようにAIS情報を間引き、
図7下図に示す補完済みAISデータ142を生成する。
【0058】
図1に戻って、ベースホットスポット算出部153は、対象海域上の各エリアおよび各時点でのベースとなるホットスポットインデックスを算出する。
【0059】
例えば、ベースホットスポット算出部153は、ユーザからベースホットスポットインデックスを算出すべき期間および対象海域の指示を受け取る。すると、ベースホットスポット算出部153は、補完済みAISデータ142を参照し、指示された期間に、指示された対象海域で航行していた全ての船舶の組を抽出する。ベースホットスポット算出部153は、抽出した全ての船舶の組について、指示された期間の全ての時点でのベースリスク値を算出する。それぞれのベースリスク値は、前述した船舶の衝突リスクを算出する所定の手法で算出されれば良い。そして、ベースホットスポット算出部153は、算出したそれぞれのベースリスク値をベースリスク情報143に格納する。
【0060】
そして、ベースホットスポット算出部153は、ベースリスク情報143を参照して、対象海域の中のエリア(海域)ごとに、指示された期間について、所定の時間範囲の中のベースリスク値を累積し、累積して得られた値をベースホットスポットインデックスとする。所定の時間範囲とは、1つのベースホットスポットインデックスを算出する際の時間範囲のことをいう。所定の時間範囲の一例として、10秒、30秒、1分や30分が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、実施例では、所定の時間範囲を10秒として説明する。ベースホットスポットインデックスは、前述したホットスポットインデックスを算出する手法で算出されれば良い。そして、ベースホットスポット算出部153は、算出したそれぞれのベースホットスポットインデックスをベースホットスポットインデックス情報144に格納する。
【0061】
指標情報算出部154は、対象海域上の各エリアおよび各時間範囲での各種指標情報を算出する。ここでいう「時間範囲」は、ベースホットスポットインデックスを算出する際の時間範囲のことをいう。以下のそれぞれの例では、指標情報算出部154が、1つのエリア(A0)および1つの日時からの時間範囲(T0)に対する各種指標情報を算出する場合を説明する。
【0062】
1つの例として、指標情報算出部154は、避航操船の波及を示す情報を指標情報(A)として算出する。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142およびベースリスク情報143を参照して、船舶の急激な向きの変化による避航操船を検出し、検出した避航操船の船舶の最も近傍にある船舶の時間遅れの避航操船を検出する。そして、指標情報算出部154は、検出したそれぞれの避航操船の船舶の向きの変化の度合いに基づいて、避航操船の波及の度合いを指標情報(A)として算出する。指標情報算出部154は、船舶の向きの変化による避航操船を検出するようにしたが、船舶の減速度による避航操船を検出する場合であっても良い。なお、船舶の向きの変化による避航操船を検出する場合の指標情報(A)の算出方法を、後述する。
【0063】
別の例として、指標情報算出部154は、避航操船の同時多発を示す情報を指標情報(B)として算出する。つまり、指標情報(A)が避航操船の波及効果のうち時間遅れがある場合であり、指標情報(B)が避航操船の波及効果のうちほぼ同時の場合である。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142およびベースリスク情報143を参照して、一定の距離範囲および時間範囲の中で、急激な向きの変化による複数の船舶の避航操船を検出する。そして、指標情報算出部154は、検出したそれぞれの避航操船の船舶の向きの変化の度合いに基づいて、避航操船の波及の度合いを指標情報(B)として算出する。指標情報算出部154は、船舶の向きの変化による避航操船の場合に限定されず、船舶の減速度による避航操船の場合であっても良い。
【0064】
別の例として、指標情報算出部154は、航跡の横切り関係の船舶ペアの数を指標情報(C)として算出する。例えば、指標情報算出部154は、ベースリスク情報143を参照して、閾値を超えるベースリスク値を持つ船舶のペアを特定する。ここでいう閾値は、避航操船を開始したと推測される閾値を示す。指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、特定した船舶のペアについて、それぞれの航跡が所定の角度の範囲内の角度で交わるか否かを判定する。指標情報算出部154は、時間範囲T0で、それぞれの航跡が所定の角度の範囲内の角度で交わると判定された船舶のペアの数をカウントする。なお、所定の角度の範囲とは、90度に近い角度の範囲であれば良い。
【0065】
別の例として、指標情報算出部154は、航跡の交差関係の船舶ペアの数を指標情報(D)として算出する。例えば、指標情報算出部154は、ベースリスク情報143を参照して、閾値を超えるベースリスク値を持つ船舶のペアを特定する。ここでいう閾値は、避航操船を開始したと推測される閾値を示す。指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、特定した船舶のペアについて、それぞれの航跡が交わるか否かを判定する。つまり、指標情報(D)は、指標情報(C)の航跡の横切り関係の場合と異なり、交差の角度に制限がない場合である。指標情報算出部154は、時間範囲T0で、それぞれの航跡が交わると判定された船舶のペアの数をカウントする。
【0066】
別の例として、指標情報算出部154は、船舶の向き(対地針路)の変化による避航操船の程度を指標情報(E)として算出する。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、船舶ごとに、船舶の向き(対地針路)の変化を抽出する。指標情報算出部154は、閾値を超える、船舶ごとの船舶の向き(対地針路)の変化の度合いを算出し、時間範囲T0の中で加算する。ここでいう閾値は、船舶の向きが大きく変化したと推測される閾値を示す。例えば、エリアA0について、同じ時間範囲T0の中で、船舶A,B,Cの向きの変化の度合いが閾値を超えている場合とする。かかる場合には、指標情報算出部154は、それぞれの船舶A,B,Cの向きの変化の度合いを加算し、加算して得られた値をエリアA0および時間範囲T0の指標情報(E)とする。
【0067】
別の例として、指標情報算出部154は、急減速による避航操船の程度を指標情報(F)として算出する。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、船舶ごとに、船舶の速度の変化を抽出する。指標情報算出部154は、閾値を超える、船舶ごとの船舶の減速度の度合いを算出し、時間範囲T0の中で加算する。ここでいう閾値は、船舶の速度が減速したと推測される閾値を示す。例えば、エリアA0について、同じ時間範囲T0の中で、船舶A,B,Cの減速度の度合いが閾値を超えている場合とする。かかる場合には、指標情報算出部154は、それぞれの船舶A,B,Cの減速度の度合いを加算し、加算して得られた値をエリアA0および時間範囲T0の指標情報(F)とする。
【0068】
統合ホットスポット算出部155は、指標情報算出部154によって算出された各種指標情報と、指標情報ごとに設定される重みとに基づいて、対象海域上の各エリアおよび各時間範囲での統合ホットスポットインデックスを算出する。すなわち、統合ホットスポット算出部155は、避航操船の相互作用的な情報などに基づいて、ベースホットスポットインデックスを補正する。
【0069】
例えば、統合ホットスポット算出部155は、ベースホットスポットインデックスに対応するエリアおよび時間範囲について、各種の指標情報A~Fを重み付けすることにより、統合ホットスポットインデックスを算出する。一例として、統合ホットスポット算出部155は、ベースホットスポットインデックスに対応するエリアおよび時間範囲について、以下の式(1)により、統合ホットスポットインデックスRを算出する。
統合ホットスポットインデックスR=ベースホットスポットインデックス+指標情報A×重みWA+指標情報B×重みWB+指標情報C×重みWC+指標情報D×重みWD+指標情報E×重みWE+指標情報F×重みWF・・式(1)
【0070】
なお、各重みは、予めユーザによって定められるが、適宜修正可能である。
【0071】
これにより、統合ホットスポット算出部155は、ホットスポットインデックスの算出に、避航操船の相互作用的な情報を組み込むことで、現場感覚と合致する衝突リスクを算出することができる。この結果、統合ホットスポット算出部155は、危険箇所であるホットスポットをより適切に認識させることが可能となる。また、統合ホットスポット算出部155は、ベースホットスポットインデックスを、2個の船舶の衝突リスクを用いて算出した所定の手法の場合と比べて、避航操船の相互作用的な情報を組み込むことで、現場感覚と合致する衝突リスクを算出することができる。
【0072】
出力部156は、統合ホットスポットインデックスを出力する。
【0073】
例えば、出力部156は、日時およびエリアごとに、日時と、エリアIDと、ベースホットスポットインデックスと、統合ホットスポットインデックスとを対応付けてホットスポットインデックス情報147に格納する。なお、統合ホットスポットインデックスを算出する際に用いられる各種指標情報が、当該統合ホットスポットインデックスに対応付けて付加されても良い。
【0074】
また、出力部156は、ホットスポットインデックス情報147を参照して、指定される海域、指定される時刻の統合ホットスポットインデックスをヒートマップとして表示部13に表示しても良い。ヒートマップは、例えば、統合ホットスポットインデックスが高い程、強調して表示されるようにすれば良い。なお、指定される時刻は、現在の時刻であっても良い。
【0075】
[ホットスポットインデックス情報のデータ構成の一例]
ここで、ホットスポットインデックス情報147のデータ構成の一例を、
図8を参照して説明する。
図8は、実施例に係るホットスポットインデックス情報のデータ構成の一例を示す図である。
図8に示すように、ホットスポットインデックス情報147は、日時、エリアID、ベースホットスポットインデックスおよび統合ホットスポットインデックスを対応付けた情報である。ベースホットスポットインデックスは、ベースホットスポットインデックス情報144(
図5参照)の、日時、エリアIDに対応するベースホットスポットインデックスと一致する。統合ホットスポットインデックスは、ある日時のあるエリアに対応するベースホットスポットインデックスを補正したホットスポットインデックスともいえる。
【0076】
一例として、日時が「2015/7/9 14:00:00」である場合に、エリアIDとして「1」、ベースホットスポットインデックスとして「0.1」、統合ホットスポットインデックスとして「R1」を記憶している。日時が「2015/7/9 14:00:10」である場合に、エリアIDとして「1」、ベースホットスポットインデックスとして「0.3」、統合ホットスポットインデックスとして「R10」を記憶している。
【0077】
[指標算出処理の一例]
ここで、実施例に係る指標算出処理の一例を、
図9を参照して説明する。
図9は、実施例に係る指標算出処理の一例を説明する図である。
【0078】
[指標情報(A)の場合]
図9では、指標情報算出部154が、あるエリアおよびある時間範囲で、避航操船の波及を示す情報を指標情報(A)として算出する場合を説明する。
図9左図には、船舶X、船舶Yおよび船舶Zのそれぞれの移動軌跡が表わされている。ここでは、3種類の船舶によって避航操船が波及している場合である。具体的には、船舶Xが船舶Yおよび船舶Zの航路を横切って航行している。すると、船舶Yが船舶Xを避けるための避航を開始する。その後、船舶Zが船舶Yを避けるための避航を開始する。船舶Yの避航開始、船舶Zの避航開始は、それぞれ丸で表わされている。船舶Zが避航を開始した時点での最も近傍にある船舶が船舶Yであるとする。
【0079】
図9右図に示すように、このような状況の下、船舶Yの向きの変化の度合いがグラフに表わされている。船舶Zの船舶の向きの変化の度合いがグラフに表わされている。ここでは、対地針路の変化の絶対値の移動平均で表わす。
【0080】
なお、対地針路の変化の絶対値の移動平均は、以下のように求めれば良い。点線で示される時点t0が、船舶Xと船舶Yとの間のベースリスク値が極大となる時点である。指標情報算出部154は、ベースリスク情報143を参照して、船舶Xと船舶Yとの間のベースリスク値が極大となる時点t0を抽出し、時点t0の前後の一定期間を特定する。指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、船舶Yについて、特定した一定期間の中で船舶の向き(対地針路)の変化量を抽出する。すなわち、指標情報算出部154は、対地針路の時間階差を計算する。そして、指標情報算出部154は、船舶の向き(対地針路)の変化量の絶対値を算出し、一定期間の幅(一定のウィンドウ幅)で対地針路の変化の絶対値の移動平均を算出する。
【0081】
図9右上図に示すように、指標情報算出部154は、船舶Xと船舶Yとの間のベースリスク値が極大となる時点t0の直前一定期間で、船舶Yの向きが最も大きく変化した時点を抽出する。ここでは、符号A0で表わす時点が船舶Yの向きが最も大きく変化した時点である。指標情報算出部154は、抽出した時点の変化の度合いが閾値(図示せず)を超えている場合に、この時点が避航操船の開始タイミングと推定する。つまり、符号A0で表わす時点は、船舶Yが船舶Xを避けるための避航を開始した時点である。
【0082】
図9右下図に示すように、指標情報算出部154は、船舶Yと船舶Zとの間のベースリスク値が極大となる時点t1の直前一定期間で、船舶Zの向きが最も大きく変化した時点を抽出する。ここでは、符号A1で表わす時点が船舶Zの向きが最も大きく変化した時点である。指標情報算出部154は、抽出した時点の変化の度合いが閾値(図示せず)を超えている場合に、この時点が避航操船の開始タイミングと推定する。つまり、符号A1で表わす時点は、船舶Zが船舶Yを避けるための避航を開始した時点である。
【0083】
そして、指標情報算出部154は、船舶Zが避航を開始した時点での最も近傍にある船舶が避航操船を行った船舶Yであるので、船舶Zの時間遅れの避航操船を検出する。そして、指標情報算出部154は、船舶Yの避航操船の開始タイミングにおける船舶の向き(対地針路)の変化の度合いと、船舶Zの避航操船の開始タイミングにおける船舶の向き(対地針路)の変化の度合いとを加算する。すなわち、指標情報算出部154は、加算して得られた値を、あるエリアおよびある時間範囲の、避航操船の波及を示す指標情報(A)とする。
【0084】
[出力処理による表示の一例]
図10は、実施例に係る出力処理による表示の一例を示す図である。なお、
図10上図には、特定の領域(海域)且つ特定の時刻の統合ホットスポットインデックスをヒートマップとして表わしている。すなわち、出力部156は、ホットスポットインデックス情報147を参照して、特定の時刻に対応する特定の領域の統合ホットスポットインデックスを抽出し、統合ホットスポットインデックスをヒートマップとして表示部13に表示する。ここでは、ヒートマップは、統合ホットスポットインデックスが高いエリア程ドットの密度が高いパターンで表わしている。なお、矢印が船舶である。
【0085】
ここで、ユーザが領域を指定するとする。すると、出力部156は、指定された領域のヒートマップを拡大して表示部13に表示する。ここでは、符号h0で示されるエリア群が最も高い統合ホットスポットインデックスであることがわかる。
【0086】
[ベースホットスポット算出処理のフローチャート]
図11は、実施例に係るベースホットスポット算出処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、AIS蓄積データ141が記憶部14に記憶されているとする。
【0087】
データ補完部152は、AIS蓄積データ141の位置(経度、緯度)、速度、向き(針路)の情報を補完する(ステップS11)。例えば、データ補完部152は、AIS蓄積データ141は、一例として、AIS蓄積データ141内のAIS情報を、船舶ごとに、一例として1秒間隔で補完する。そして、データ補完部152は、補完後のAIS蓄積データ141´を、船舶ごとに、一例として10秒ごととなるようにAIS情報を間引き、間引いた残りのAIS情報を補完済みAISデータ142に格納する。
【0088】
そして、ベースホットスポット算出部153は、全ての船舶のペアの全ての時点でのベースリスク値を算出する(ステップS12)。例えば、ベースホットスポット算出部153は、補完済みAISデータ142を参照し、全ての船舶のペアを抽出する。ベースホットスポット算出部153は、抽出した全ての船舶のペアについて、全ての時点でのベースリスク値を算出する。そして、ベースホットスポット算出部153は、算出したそれぞれのベースリスク値をベースリスク情報143に格納する。なお、ベースホットスポット算出部153は、ベースリスク値を算出する期間および対象海域の全ての船舶のペアの全ての時点でのベースリスク値を算出しても良い。
【0089】
そして、ベースホットスポット算出部153は、ベースホットスポットインデックスとして、予め定められたエリア・時間範囲の中のベースリスク値の総和を算出する(ステップS13)。例えば、ベースホットスポット算出部153は、ベースリスク情報143、補完済みAISデータ142およびエリア情報145を参照して、以下のように、日時および対象海域のエリアごとのベースホットスポットインデックスを算出する。すなわち、ベースホットスポット算出部153は、ベースリスク値を算出する期間について、当該期間内日時からの時間範囲(例えば、10秒)の中のベースリスク値を累積し、累積して得られた値をベースホットスポットインデックスとする。そして、ベースホットスポット算出部153は、ベースホットスポット算出処理を終了する。
【0090】
[指標情報算出処理のフローチャート]
図12は、実施例に係る指標情報算出処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、
図12のフローチャートでは、1つのエリアおよび1つの日時からの時間範囲に対する指標情報算出処理について説明する。
【0091】
図12に示すように、指標情報算出部154は、避航操船の波及の度合い(A)を算出する(ステップS21)。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142およびベースリスク情報143を参照して、船舶の急激な向きの変化による避航操船を検出し、検出した避航操船の船舶の最も近傍にある船舶の時間遅れの避航操船を検出する。そして、指標情報算出部154は、検出したそれぞれの避航操船の急激な向きの変化の度合いを加算する。そして、指標情報算出部154は、加算して得られた波及の度合いを指標情報(A)とする。
【0092】
そして、指標情報算出部154は、避航操船の同時多発の度合い(B)を算出する(ステップS22)。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142およびベースリスク情報143を参照して、一定の距離範囲および日時からの時間範囲の中で、急激な向きの変化による複数の船舶の避航操船を検出する。そして、指標情報算出部154は、検出したそれぞれの避航操船の急激な向きの変化の度合いを加算する。そして、指標情報算出部154は、加算して得られた波及の度合いを指標情報(B)とする。
【0093】
そして、指標情報算出部154は、航跡の横切り関係の船舶ペアの数(C)をカウントする(ステップS23)。例えば、指標情報算出部154は、ベースリスク情報143を参照して、閾値を超えるベースリスク値を持つ船舶のペアを特定する。ここでいう閾値は、避航操船を開始したと推測される閾値を示す。指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、特定した船舶のペアについて、それぞれの航跡が所定の角度の範囲内の角度で交わるか否かを判定する。指標情報算出部154は、日時からの時間範囲で、それぞれの航跡が所定の角度の範囲内の角度で交わると判定された船舶のペアの数をカウントする。
【0094】
そして、指標情報算出部154は、航跡の交差の数(D)をカウントする(ステップS24)。例えば、指標情報算出部154は、ベースリスク情報143を参照して、閾値を超えるベースリスク値を持つ船舶のペアを特定する。ここでいう閾値は、避航操船を開始したと推測される閾値を示す。指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、特定した船舶のペアについて、それぞれの航跡が交わるか否かを判定する。指標情報算出部154は、日時からの時間範囲で、それぞれの航跡が交わると判定された船舶のペアの数をカウントする。
【0095】
そして、指標情報算出部154は、コース変更(船舶の向きの変更)による避航操船の程度(E)を算出する(ステップS25)。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、船舶ごとに、船舶の向き(対地針路)の変化を抽出する。指標情報算出部154は、閾値を超える、船舶ごとの船舶の向き(対地針路)の変化の度合いを算出し、日時からの時間範囲の中で加算する。ここでいう閾値は、船舶の向きが大きく変化したと推測される閾値を示す。指標情報算出部154は、加算して得られた値をコース変更(船舶の向きの変更)による避航操船の程度とする。
【0096】
そして、指標情報算出部154は、急減速による避航操船の程度(F)を算出する(ステップS26)。例えば、指標情報算出部154は、補完済みAISデータ142を参照して、船舶ごとに、船舶の速度の変化を抽出する。指標情報算出部154は、閾値を超える、船舶ごとの船舶の減速度の度合いを算出し、日時からの時間範囲の中で加算する。ここでいう閾値は、船舶の速度が減速したと推測される閾値を示す。指標情報算出部154は、加算して得られた値を急減速による避航操船の程度とする。
【0097】
そして、指標情報算出部154は、指標情報算出処理を終了する。
【0098】
[統合ホットスポット算出処理のフローチャート]
図13は、実施例に係る統合ホットスポット算出処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、
図13のフローチャートでは、1つのエリアおよび1つの日時からの時間範囲に対する統合ホットスポットインデックスを算出する統合ホットスポット算出処理について説明する。
【0099】
図13に示すように、統合ホットスポット算出部155は、ベースホットスポットインデックスに、相互作用に関わる指標(A~F)を重み付け加算した統合ホットスポットインデックスを算出する(ステップS31)。例えば、統合ホットスポット算出部155は、式(1)を用いて、ベースホットスポットインデックスを補正した統合ホットスポットインデックスを算出する。そして、出力部156は、日時と、エリアIDと、ベースホットスポットインデックスと、統合ホットスポットインデックスとを対応付けてホットスポットインデックス情報147に格納する。
【0100】
そして、統合ホットスポット算出部155は、統合ホットスポット算出処理を終了する。
【0101】
これにより、統合ホットスポット算出部155は、避航操船の相互作用的な情報を組み込むことで、現場感覚と合致する衝突リスクを算出することとなり、危険箇所であるホットスポットをより適切に抽出することが可能となる。
【0102】
ここで、実施例に係る統合ホットスポットインデックスによってホットスポットがより適切に抽出可能となる一例を、
図14を参照して説明する。
図14は、実施例に係る統合ホットスポットインデックスによってホットスポットがより適切に抽出可能となる一例を示す図である。
図14には、あるエリアにおいて、時々刻々と変化する4つのグラフが表わされている。最上段には、単位面積当たりの船の密度を示すグラフg3が表わされている。第2段には、ベースホットスポットインデックスを示すグラフg2が表わされている。第3段には、実施例に係る相互作用による指標情報のグラフg1が表わされている。第4段には、実施例に係る統合ホットスポットインデックスのグラフg0が表わされている。
【0103】
タイミングt10が、実際にホットスポット状態になったタイミングである。ところが、グラフg2に示すように、ベースホットスポットインデックスは、実際にホットスポット状態になったタイミングt10で高いが、その他のタイミングでも高くなっている(丸の破線参照)。また、グラフg3に示すように、船の密度は、ホットスポット状態になったタイミングt10で高くなっているが、船の密度が高いタイミングで必ずしもホットスポット状態になるとは限らない。
【0104】
これに対して、グラフg1に示すように、実際にホットスポット状態になったタイミングt10で、相互作用による指標情報が最も高くなっている。加えて、グラフg0に示すように、実際にホットスポット状態になったタイミングt10で、統合ホットスポットインデックスが最も高くなり、それ以外のタイミングで、統合ホットスポットインデックスが低くなっている。つまり、統合ホットスポット算出部155は、相互作用による指標情報を重み付け加算した統合ホットスポットインデックスを計算することにより、ホットスポットのタイミング以外でのピークを抑えることができる。
【0105】
なお、統合ホットスポットインデックスを利用して各種処理が行われても良い。例えば、1つの処理として、統合ホットスポットインデックスを、未来のホットスポット状態の予測モデルを構築するための正解データに用いる場合が挙げられる。この処理により、ホットスポット算出装置10は、船舶の航行の支援の中でも、ホットスポット形成の事前予測や未然防止を支援することが可能となる。また、別の処理として、統合ホットスポットインデックスを利用して過去のホットスポット状態の要因分析を行う場合が挙げられる。また、別の処理として、統合ホットスポットインデックスが高いエリアの航路を再現して船長や管制官の訓練に用いる場合が挙げられる。
【0106】
[実施例の効果]
上記実施例によれば、ホットスポット算出装置10は、所定のエリアに属する複数の移動体の軌跡データに基づいて、各移動体が他の移動体との衝突を回避した可能性を示す行動である回避行動を少なくとも2つの移動体で検出する。ホットスポット算出装置10は、2つの移動体の一方による回避行動が、他方による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す評価値を算出する。ホットスポット算出装置10は、評価値に基づいて、複数の移動体が密集したエリアの衝突リスクを算出する。かかる構成によれば、ホットスポット算出装置10は、複数の移動体の相互作用的な情報を用いることで、現場感覚と合致する、ホットスポットの衝突リスクを算出することが可能になる。すなわち、ホットスポット算出装置10は、単に移動体が密集しているだけでなく、複数の移動体が相互に影響を及ぼし合うような危険度の高いホットスポットを抽出することが可能になる。
【0107】
また、上記実施例によれば、ホットスポット算出装置10は、第1の移動体と第2の移動体とでそれぞれ前記回避行動を検出する。ホットスポット算出装置10は、第2の移動体の回避行動が検出された時点で最も近傍にある移動体が、回避行動が検出された第1の移動体であるか否かを判定する。ホットスポット算出装置10は、第2の移動体の該当時点で最も近傍にある移動体が、第1の移動体であると判定した場合には、第2の移動体による回避行動が第1の移動体による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す評価値を算出する。かかる構成によれば、ホットスポット算出装置10は、一方の移動体による回避行動が他方の移動体による回避行動の影響を受けて発生した可能性を示す評価値を算出することで、複数の移動体の相互作用的な情報を算出できる。この結果、ホットスポット算出装置10は、相互に影響を及ぼし合うような危険度の高いホットスポットを抽出することが可能になる。
【0108】
また、上記実施例によれば、ホットスポット算出装置10は、さらに、2つの移動体のそれぞれの軌跡が横切る関係であるか否かを示す情報を含む評価値を算出する。かかる構成によれば、ホットスポット算出装置10は、さらに、2つの移動体のそれぞれの軌跡が横切る関係であるか否かを示す情報を含む評価値を算出することで、複数の移動体の相互作用的な情報を算出できる。この結果、ホットスポット算出装置10は、相互に影響を及ぼし合うような危険度の高いホットスポットを抽出することが可能になる。
【0109】
また、上記実施例によれば、ホットスポット算出装置10は、既存の所定の手法によりエリアの衝突リスクを算出する。ホットスポット算出装置10は、評価値に基づいて、エリアの衝突リスクを補正する。かかる構成によれば、ホットスポット算出装置10は、ホットスポットの衝突リスクの算出に、複数の移動体の相互作用的な情報を組み込むことで、現場感覚と合致する、ホットスポットの衝突リスクを算出することが可能になる。
【0110】
[その他]
なお、実施例では、統合ホットスポット算出部155は、ベースホットスポットインデックスに対応するエリアおよび時間範囲について、各種の指標情報A~Fを重み付けすることにより、統合ホットスポットインデックスを算出すると説明した。しかしながら、統合ホットスポット算出部155は、これに限定されることはなく、ベースホットスポットインデックスに対応するエリアおよび時間範囲について、避航操船の波及効果を示す相互作用的な情報自体を用いて、統合ホットスポットインデックスを算出しても良い。すなわち、統合ホットスポット算出部155は、指標情報A,Bを重み付けすることにより、統合ホットスポットインデックスを算出しても良い。
【0111】
また、図示したホットスポット算出装置10の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、ホットスポット算出装置10の分散・統合の具体的態様は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、データ取得部151と、データ補完部152とを1つの部として統合しても良い。また、指標情報算出部154を、各種指標情報をそれぞれ算出する算出部に分離しても良い。また、記憶部14をホットスポット算出装置10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。
【0112】
また、上記実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、
図1に示したホットスポット算出装置10と同様の機能を実現するホットスポット算出プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。
図15は、ホットスポット算出プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。
【0113】
図15に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU203と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置215と、表示装置209を制御する表示制御部207とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラムなどを読取るドライブ装置213と、ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータの授受を行う通信制御部217とを有する。また、コンピュータ200は、各種情報を一時記憶するメモリ201と、HDD(Hard Disk Drive)205を有する。そして、メモリ201、CPU203、HDD205、表示制御部207、ドライブ装置213、入力装置215、通信制御部217は、バス219で接続されている。
【0114】
ドライブ装置213は、例えばリムーバブルディスク210用の装置である。HDD205は、ホットスポット算出プログラム205aおよびホットスポット算出関連情報205bを記憶する。
【0115】
CPU203は、ホットスポット算出プログラム205aを読み出して、メモリ201に展開し、プロセスとして実行する。かかるプロセスは、ホットスポット算出装置10の各機能部に対応する。ホットスポット算出関連情報205bは、AIS蓄積データ141、補完済みAISデータ142、ベースリスク情報143、ベースホットスポットインデックス情報144、エリア情報145、指標情報146およびホットスポットインデックス情報147に対応する。そして、例えばリムーバブルディスク210が、ホットスポット算出プログラム205aなどの各情報を記憶する。
【0116】
なお、ホットスポット算出プログラム205aについては、必ずしも最初からHDD205に記憶させておかなくても良い。例えば、コンピュータ200に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、光磁気ディスク、IC(Integrated Circuit)カードなどの「可搬用の物理媒体」に当該プログラムを記憶させておく。そして、コンピュータ200がこれらからホットスポット算出プログラム205aを読み出して実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0117】
10 ホットスポット算出装置
11 外部I/F部
12 入力部
13 表示部
14 記憶部
141 AIS蓄積データ
142 補完済みAISデータ
143 ベースリスク情報
144 ベースホットスポットインデックス情報
145 エリア情報
146 指標情報
147 ホットスポットインデックス情報
15 制御部
151 データ取得部
152 データ補完部
153 ベースホットスポット算出部
154 指標情報算出部
155 統合ホットスポット算出部
156 出力部
20 無線通信装置