(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、加工システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20230124BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B23Q17/09 A
B23Q17/00 D
(21)【出願番号】P 2022529103
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038357
【審査請求日】2022-05-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 章宏
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235170(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/029404(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/146736(WO,A1)
【文献】特開2017-132000(JP,A)
【文献】特開2012-093983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0117725(US,A1)
【文献】特開2020-166543(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078129(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/09
B23Q 17/00
G05B 19/18 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工工具の状態を解析する解析装置であって、
前記加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得する取得部と、
前記取得部で取得した測定結果に対してデータ加工を行う演算部と、
前記取得部で取得した測定結果を時系列に表示する第1の画像と、前記演算部でデータ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを、表示画面に表示させる画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果
から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として前記演算部で
前記第1の測定結果と前記第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を前記第2の画像として表示する、解析装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記第1の画像と、前記第2の画像とを同一の表示画面に表示する、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
ユーザの操作を受け付ける入力部をさらに備え、
前記画像処理部は、前記入力部がユーザの操作により変更された前記特定期間を受け付けた場合、変更された前記特定期間の測定結果に対応する演算結果を前記第2の画像として表示する、請求項1または請求項2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記入力部は、ユーザの操作により前記第1の画像上で特定した時点、および期間を前記特定期間として受け付ける、請求項3に記載の解析装置。
【請求項5】
前記取得部で取得した測定結果には、前記加工工具の工具情報が含まれており、
前記画像処理部は、前記取得部で取得した前記工具情報に基づいて、表示画面に表示させる測定結果および演算結果の種類を変更する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記演算部によって複数の測定結果が関連付けられた演算結果を空間座標系に表して前記第2の画像に表示する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項7】
測定結果を記憶する記憶部を、さらに備え、
前記記憶部に測定結果を記憶する場合に、加工条件の情報を追加して1つのファイルとして記憶し、
前記取得部が、前記加工条件を選択して、前記記憶部から複数のファイルを取得する場合に、
前記画像処理部は、前記加工条件ごとに、前記第1の画像および前記第2の画像を並べて表示画面に表示する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項8】
少なくとも1つのセンサを有する加工工具を用いて加工する工作機械と、前記工作機械に用いる前記加工工具の状態を解析する解析装置とを備える、加工システムであって、
前記解析装置は、
前記センサから測定結果を取得する取得部と、
前記取得部で取得した測定結果に対してデータ加工を行う演算部と、
前記取得部で取得した測定結果を時系列に表示する第1の画像と、前記演算部でデータ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを、表示画面に表示させる画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果
から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として前記演算部で
前記第1の測定結果と前記第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を前記第2の画像として表示する、加工システム。
【請求項9】
加工工具の状態を解析する解析方法であって、
前記加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得するステップと、
取得した測定結果に対してデータ加工を行うステップと、
取得した測定結果を時系列に第1の画像として表示するステップと、
前記第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果
から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として前記第1の測定結果と前記第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示するステップとを、含む、解析方法。
【請求項10】
加工工具の状態を解析する解析装置で実行されるプログラムであって、
前記加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得するステップと、
取得した測定結果に対してデータ加工を行うステップと、
取得した測定結果を時系列に第1の画像として表示するステップと、
前記第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果
から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として前記第1の測定結果と前記第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示するステップとを、含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、解析方法、加工システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特表2018-534680号公報)には、制御システムおよびモニタリングシステムを備える、組み合わせシステムが開示されている。当該モニタリングシステムの処理部は、入力部が受信したデータを解析して、工具の状態または工具とワークピースとの相互作用により実行される減算処理の状態を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る解析装置は、加工工具の状態を解析する。解析装置は、加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得する取得部と、取得部で取得した測定結果に対してデータ加工を行う演算部と、取得部で取得した測定結果を時系列に表示する第1の画像と、演算部でデータ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを、表示画面に表示させる画像処理部と、を備える。画像処理部は、第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として演算部で第1の測定結果と第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示する。
【0005】
本開示に係る加工システムは、少なくとも1つのセンサを有する加工工具を用いて加工する工作機械と、工作機械に用いる加工工具の状態を解析する解析装置とを備える。解析装置は、センサから測定結果を取得する取得部と、取得部で取得した測定結果に対してデータ加工を行う演算部と、取得部で取得した測定結果を時系列に表示する第1の画像と、演算部でデータ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを、表示画面に表示させる画像処理部と、を備える。画像処理部は、第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として演算部で第1の測定結果と第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示する。
【0006】
本開示に係る解析方法は、加工工具の状態を解析する方法である。解析方法は、加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得するステップと、取得した測定結果に対してデータ加工を行うステップと、取得した測定結果を時系列に第1の画像として表示するステップと、第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として第1の測定結果と第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示するステップとを、含む。
【0007】
本開示に係るプログラムは、加工工具の状態を分析する解析装置で実行される。プログラムは、加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得するステップと、取得した測定結果に対してデータ加工を行うステップと、取得した測定結果を時系列に第1の画像として表示するステップと、第1の画像に表示されている期間のうちの特定期間における複数の測定結果から第1の測定結果を第1軸、第2の測定結果を第2軸として第1の測定結果と第2の測定結果とを2次元の空間座標系に関連付けるデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示するステップとを、含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る加工システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るセンサモジュールの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る解析装置の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る解析装置のプロセッサにおいて実行される処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る記憶装置において記憶される測定結果の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る解析装置で表示される画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る解析装置において測定結果に書き込む加工条件の情報を設定する画像の一例を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、本実施形態に係る解析装置において測定結果に書き込む加工条件の情報を追加する画像の一例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、本実施形態に係る解析装置において測定結果に書き込む加工条件の情報を削除する画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に加工工具の状態を解析する技術が記載されているが、当該技術を超えて、ユーザに対して加工工具の状態をより正確に判断することが可能となるように、当該判断に必要な情報をユーザに提供することができる技術が望まれる。
【0010】
本開示の目的は、加工工具の状態を解析することが可能な解析装置、解析方法、加工システム、およびプログラムを提供することである。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる解析装置、解析方法、加工システム、およびプログラムを提供することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示に係る解析装置は、加工工具の状態を解析する。解析装置は、加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得する取得部と、取得部で取得した測定結果に対してデータ加工を行う演算部と、取得部で取得した測定結果を時系列に表示する第1の画像と、演算部でデータ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを、表示画面に表示させる画像処理部と、を備える。画像処理部は、第1の画像における特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示する。
【0014】
このように、画像処理部において、特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示するので、ユーザが注目する特定期間においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて表示することができ、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0015】
(2)好ましくは、画像処理部は、第1の画像と、第2の画像とを同一の表示画面に表示する。
【0016】
このような構成により、たとえば、特定期間においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて、ユーザが情報を俯瞰しやすい表示にできる。
【0017】
(3)好ましくは、ユーザの操作を受け付ける入力部をさらに備え、画像処理部は、入力部がユーザの操作により変更された前記特定期間を受け付けた場合、変更された特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示する。
【0018】
このような構成により、たとえば、ユーザが注目したい特定期間をユーザ自身が変更し、変更した特定期間の測定結果に対応する演算結果を、時系列に表示する測定結果から選択して表示画面に表示することができる。
【0019】
(4)好ましくは、入力部は、ユーザの操作により第1の画像上で特定した時点、および期間を特定期間として受け付ける。
【0020】
このような構成により、たとえば、ユーザが注目したい特定期間を時系列に表示する測定結果から自由に選択することができる。
【0021】
(5)好ましくは、取得部で取得した測定結果には、加工工具の工具情報が含まれており、画像処理部は、取得部で取得した工具情報に基づいて、表示画面に表示させる測定結果および演算結果の種類を変更する。
【0022】
このような構成により、たとえば、加工工具の種類に応じて表示画面に表示する情報を適切に変更することができる。
【0023】
(6)好ましくは、取得部が、複数のセンサから測定結果を取得する場合に、演算部は、取得部で取得した複数の測定結果を関連付けるデータ加工を行い、画像処理部は、演算部によって複数の測定結果が関連付けられた演算結果を第2の画像に表示する。
【0024】
このような構成により、たとえば、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0025】
(7)好ましくは、画像処理部は、演算部によって複数の測定結果が関連付けられた演算結果を空間座標系に表して第2の画像に表示する。
【0026】
このような構成により、たとえば、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0027】
(8)好ましくは、測定結果を記憶する記憶部を、さらに備え、記憶部に測定結果を記憶する場合に、加工条件の情報を追加して1つのファイルとして記憶し、取得部が、加工条件を選択して、記憶部から複数のファイルを取得する場合に、画像処理部は、加工条件ごとに、第1の画像および第2の画像を並べて表示画面に表示する。
【0028】
このような構成により、たとえば、ユーザが比較しやすいように、同じ加工条件の測定結果および演算結果を並べて表示することができ、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0029】
(9)本開示に係る加工システムは、少なくとも1つのセンサを有する加工工具を用いて加工する工作機械と、工作機械に用いる加工工具の状態を解析する解析装置とを備える。解析装置は、センサから測定結果を取得する取得部と、取得部で取得した測定結果に対してデータ加工を行う演算部と、取得部で取得した測定結果を時系列に表示する第1の画像と、演算部でデータ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを、表示画面に表示させる画像処理部と、を備える。画像処理部は、第1の画像における特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示する。
【0030】
このように、画像処理部において、特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示するので、ユーザが注目する特定期間においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて表示することができ、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0031】
(10)本開示に係る解析方法は、加工工具の状態を解析する方法である。解析方法は、加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得するステップと、取得した測定結果に対してデータ加工を行うステップと、取得した測定結果を時系列に第1の画像として表示するステップと、第1の画像において特定した特定期間の測定結果に対してデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示するステップとを、含む。
【0032】
このように、解析方法において、特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示するので、ユーザが注目する特定期間においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて表示することができ、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0033】
(11)本開示に係るプログラムは、加工工具の状態を解析する解析装置で実行される。プログラムは、加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得するステップと、取得した測定結果に対してデータ加工を行うステップと、取得した測定結果を時系列に第1の画像として表示するステップと、第1の画像において特定した特定期間の測定結果に対してデータ加工を行った演算結果を第2の画像として表示するステップとを、含む。
【0034】
このように、プログラムにおいて、特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示するので、ユーザが注目する特定期間においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて表示することができ、加工工具の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0035】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付して、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0036】
<加工システムの構成>
図1から
図3を参照しながら、本実施形態に係る加工システム1の構成について説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る加工システムの構成を示す図である。
図1に示されるように、加工システム1は、切削工具100、解析装置200、無線装置201、工作機械300、加工制御装置301を含む。
【0038】
切削工具100は、工作機械300に取り付けられる。切削工具100は、加工工具の一例であり、工作機械300に取り付けられる加工工具であれば切削加工に用いられる加工工具に限定されず、広く加工に用いられる加工工具であればよい。
【0039】
加工制御装置301は、設定された加工パス情報および切削条件に従い工作機械300を制御し、取り付けられた切削工具100で被削物を切削加工する。ここで、加工パス情報は、切削工具100の座標位置、切削工具100の軌跡、パス数などの情報を含む。切削条件は、切削工具100の切込み、切削工具100の送り(送り速度)、切削工具100の切削速度などの情報を含む。なお、本実施形態では、加工パス情報および切削条件を総称して機械加工条件といい、以下、機械加工条件には加工パス情報および切削条件のうち少なくとも1つの情報を含む。
【0040】
本実施形態に係る加工システム1では、切削工具100にセンサモジュール120を設け、切削工具100の負荷をセンサで測定することができる。そのため、解析装置200は、センサモジュール120から受信した情報に基づいて、切削工具100の負荷を解析することができる。加工システム1では、解析装置200で切削工具100の負荷を解析することで、加工精度が低下したり切削工具100が破損したりするような過大な負荷が切削工具100に生じていないかを解析することができる。後述するように、解析装置200では、過去の同じ機械加工条件で行った加工の測定結果および演算結果と比較して切削工具100の負荷を解析することができる。
【0041】
具体的に、加工システム1は、センサモジュール120で測定した切削工具100の負荷の情報(測定結果)を無線信号で無線装置201へ送信し、無線装置201で受信した切削工具100の負荷の情報を解析装置200の記憶装置213に記憶する。一般的な解析装置では、受信した切削工具の負荷の情報、または記憶装置213に記憶した切削工具の負荷の情報を単純に時系列に表示するだけである。そのため、ユーザは、時系列で表示される切削工具の負荷が大きく変化した場合には、加工精度が低下したまたは切削工具100が破損したと判断できるが、切削工具の負荷の変化が小さい場合、切削工具の負荷の情報を単純に時系列に表示するだけでは、加工工具の状態をより正確に判断することができない。ここで、測定結果は、ひずみセンサなどのセンサからの出力値だけでなく、当該出力値を所定の変換式で変換した値も含む。
【0042】
そこで、解析装置200は、切削工具100の負荷の情報を時系列に表示する画像(第1の画像)を表示するだけでなく、特定期間の切削工具100の負荷の情報に対してデータ加工を行った演算結果を画像(第2の画像)として、ディスプレイ214の表示画面に表示させる。そのため、解析装置200は、切削工具の負荷の情報を単純に時系列に表示するだけでは見落とされるような小さな変化が生じている期間を特定期間として、当該特定期間の測定結果をデータ加工することによりユーザが認識できる情報に処理して表示できるので、ユーザが加工工具の状態をより正確に判断することができる。
【0043】
なお、加工システム1は、既存の工作機械300に、センサモジュール120を内蔵した切削工具100と、解析装置200と、無線装置201とを組み合わせることで実現することができる。つまり、切削工具100と、解析装置200と、無線装置201とを含む構成の加工工具解析システム2を用意し、当該加工工具解析システム2を既存の工作機械300に対して後から組み込むことで加工システム1を実現できる。ただし、
図1に示す加工システム1および加工工具解析システム2は一例であり、他の構成であってもよい。また、加工システム1は、1つの切削工具100を含む構成に限らず、複数の切削工具100を含む構成であってもよい。さらに、加工システム1は、1つの解析装置200を含む構成に限らず、複数の解析装置200を含む構成であってもよい。
【0044】
以下、個々の構成についてさらに詳しく説明する。
<切削工具>
切削工具100は、
図1に示すように、工作機械300における刃物台50により上下から挟まれて固定される。切削工具100は、たとえば、回転する被削物の加工に用いられる旋削加工用の工具であり、旋盤等の工作機械300に取り付けられる。
【0045】
切削工具100のうち被削物を切削加工する部分は、切れ刃を有する切削インサート110であり、当該切削インサート110は摩耗や破損した場合に交換可能である。具体的に、切削工具100は、切削インサート110と切削インサート110を保持するシャンク111を含む。すなわち、切削工具100は、いわゆるスローアウェイバイトである。切削インサート110は、固定用部材113A,113Bでシャンク111に保持されている。
【0046】
なお、切削工具100は、固定用部材113A,113Bを含まない代わりに、それ自体が切れ刃を有する構成であってもよい。すなわち、切削工具100は、むくバイトまたはろう付けバイトであってもよい。
【0047】
また、切削工具100は、旋削用工具ではなく、たとえば、固定された被削物において、工具が回転する加工方式を対象として、フライス盤等の工作機械に取り付けられ転削用工具でもよい。より詳細には、切削工具100は、切削インサート110を取り付け可能なフライスカッタやドリルであってもよいし、切削インサートを用いないエンドミルやドリルであってもよい。
【0048】
<センサモジュール>
図2は、本実施形態に係るセンサモジュールの構成を示す図である。センサモジュール120は、加速度センサ121と、ひずみセンサ122と、処理部123と、通信部124と、記憶部125と、電池129とを含む。センサモジュール120は、たとえばユーザの操作により起動される。
【0049】
処理部123は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって実現される。なお、プロセッサはASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるハードウェア回路でもよい。通信部124は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路により実現される。記憶部125は、たとえば不揮発性メモリである。
【0050】
電池129は、たとえば、1次電池、2次電池、太陽電池、またはキャパシタ等を含む蓄電装置であり、非接触式給電機能を有していてもよい。電池129は、加速度センサ121、ひずみセンサ122、ならびに処理部123および通信部124の各回路に電力を供給する。
【0051】
加速度センサ121およびひずみセンサ122は、たとえば、切削工具100における切れ刃の近傍に設けられる。なお、センサモジュール120は、1つの加速度センサ121を備える構成に限らず、複数の加速度センサ121を備える構成であってもよい。また、センサモジュール120は、1つのひずみセンサ122を備える構成に限らず、複数のひずみセンサ122を備える構成であってもよい。また、センサモジュール120は、加速度センサ121およびひずみセンサ122の少なくともいずれか一方の代わりに、または加速度センサ121およびひずみセンサ122に加えて、圧力センサ、変位センサ等の他のセンサを含む構成であってもよい。
【0052】
処理部123は、加速度センサ121の測定値およびひずみセンサ122の測定値を示す測定情報を生成する。具体的に、処理部123は、所定周期に従うサンプリングタイミングにおいて、加速度センサ121およびひずみセンサ122から受けるアナログ信号をAD(Analog Digital)変換し、変換後のデジタル値であるセンサの測定値を生成する。
【0053】
処理部123は、当該センサの測定値を含む測定情報を通信部124へ出力する。通信部124は、処理部123から受けた、測定情報が格納されたパケットを無線装置201経由で解析装置200へ送信する。
【0054】
<解析装置>
図3は、本実施形態に係る解析装置の構成を示す図である。
図3に示されるように、解析装置200は、プロセッサ211(演算部)、通信装置212、記憶装置213、ディスプレイ214、入力インターフェース215、メディア読込装置216を含む。
【0055】
プロセッサ211は、各種のプログラム(たとえば、後述する解析プログラム231)を実行することで、解析装置200に関する各種の処理を実行する演算主体である。プロセッサ211は、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサで構成されている。プロセッサ211は、演算回路(Processing Circuitry)で構成されてもよい。図示していないが、プロセッサ211は、実行する各種のプログラムを一時的に保持するためのメモリ、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリを有している。
【0056】
通信装置212は、ネットワーク等の通信手段を介して加工制御装置301およびセンサモジュール120の各々との間で通信を確立し、加工制御装置301およびセンサモジュール120の各々との間でデータ(情報)の送受信を行う。そのため、通信装置212は、センサモジュール120から切削工具100の負荷の情報を取得する取得部としての機能を有している。
【0057】
記憶装置213は、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、およびHDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性メモリで構成される。記憶装置213は、解析プログラム231、加工制御装置301から取得した工作機械の機械加工条件232、センサによって測定した測定結果233を記憶する。記憶装置213に記憶される測定結果233は、加工開始から加工終了までのすべての測定結果であり、加工毎にデータファイルとして記憶されている。記憶装置213に記憶される測定結果233には、後述するように加工条件の情報がデータのヘッダ部分に記憶されている。なお、工作機械の機械加工条件232、センサによって測定した測定結果233を、記憶装置213ではなく、解析装置200と直接またはネットワークを介して接続された記憶装置(たとえば、サーバなど)に記憶させてもよい。また、解析装置200が、加工制御装置301から工作機械の機械加工条件232を取得しない構成であれば、記憶装置213には機械加工条件232が記憶されない。
【0058】
解析プログラム231は、プロセッサ211(演算部)で実行され、センサによって測定した測定結果に対してデータ加工を行い、測定結果およびデータ加工を行った演算結果をディスプレイ214に表示させるプログラムである。プロセッサ211は、解析プログラム231を実行することで、後述する
図4のフローチャートの処理を実行する。
【0059】
メディア読込装置216は、各種のプログラムおよびデータを記録する記録媒体220を受け付け、記録媒体220からプログラムおよびデータを読み込む。記録媒体220としては、CD(Compact Disk)、SDカード(Secure Digital card)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory)などが挙げられる。本実施形態において、メディア読込装置216は、記録媒体220に格納された解析プログラム231を読み込んで、記憶装置213に解析プログラム231を記憶させる。
【0060】
ディスプレイ214は、プロセッサ211で処理された画像を表示画面に表示する装置である。ディスプレイ214は、たとえば、測定結果を時系列に表示する第1の画像と、データ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを表示する。ディスプレイ214は、測定結果を時系列に表示する画像以外に、各種の情報の画面をユーザに表示する。ディスプレイ214に表示される画面は、プロセッサ211で処理されると説明したが、プロセッサ211とは別に画像処理プロセッサ(GPU:Graphics Processing Unit)を設けて、当該画像処理プロセッサで処理してもよい。なお、プロセッサ211または画像処理プロセッサが、画像をディスプレイ214の表示画面に表示させる画像処理部としての機能を有している。
【0061】
入力インターフェース215は、解析装置200に対するデータの入力を受け付けるインターフェースであり、ユーザが操作可能なキーボード、マウスなどの入力機器が接続される。たとえば、ユーザは、入力機器を用いて、表示切替の操作、画像のレイアウトを変更する操作などのユーザの操作を入力インターフェース215に受け付けさせることができる。つまり、入力インターフェース215は、ユーザの操作を受け付ける入力部としての機能を有している。
【0062】
<無線装置>
無線装置201は、解析装置200にたとえば有線で接続されている。無線装置201は、たとえばアクセスポイントである。無線装置201は、切削工具100から受信した無線信号を取得して解析装置200へ中継する。無線装置201は、たとえば、IEEE 802.15.4に準拠したZigBee(登録商標)、IEEE 802.15.1に準拠したBluetooth(登録商標)およびIEEE802.15.3aに準拠したUWB(Ultra-Wide Band)等の通信プロトコルを用いた無線による通信を切削工具100と行う。なお、切削工具100および無線装置201間において、上述以外の通信プロトコルが用いられてもよい。
【0063】
<解析処理>
次に、加工システム1において、切削工具100の負荷の情報を解析する処理について説明する。
図4は、本実施形態に係る解析装置のプロセッサにおいて実行される処理を示すフローチャートである。
図4に示される処理ステップ(以下、これを「S」と略す。)は、解析装置200のプロセッサ211による解析プログラム231の実行によって実現される。
【0064】
解析装置200は、まず解析対象の測定結果を記憶装置213から取得する。その際、解析装置200は、記憶装置213から取得する測定結果を、加工条件に基づいて選択することができる。具体的に、記憶装置213には、様々な加工条件で加工した過去の測定結果が記憶されており、解析装置200は、記憶装置213から同じ加工条件で加工した過去の測定結果を取得して、それらの測定結果を比較して解析することができる。
【0065】
そのためには、記憶装置213に記憶される測定結果233には、あらかじめ加工条件の情報が追加されている必要がある。なお、追加する加工条件の情報には、加工工具が切削工具100の場合、たとえば、被削材、工具材種、切削工具100の切込み、切削工具100の送り(送り速度)、切削工具100の切削速度などの情報、さらに加工パスの情報を含む。ここで、加工パスとは、被加工材(被削材)を加工する際の、工作機械内での工具の経路情報である。一の加工パスと、他の加工パスとを区別する条件として、例えば、被加工材の加工時に、a)端面や座繰りといった被加工材の加工箇所が変化する場合、b)同一の被加工材を加工時に、一定の非加工時間(被削材を加工していない時間)が存在する場合などがある。また、加工パスは、切削工具100の座標位置、切削工具100の軌跡、繰り返し数などのパラメータのうち少なくとも1つが異なる加工単位であるとも定義することもできる。
【0066】
具体的に、記憶装置213に記憶される測定結果233は、データのヘッダ部分に加工条件の情報が記憶されている。
図5は、本実施形態に係る記憶装置において記憶される測定結果の一例を示す図である。
図5には、データのヘッダ部分に「基本情報」および「切削加工情報」が含まれており、データの本体部分に「センサデータ」が含まれている。「基本情報」には、測定した日時(”DateTime”)、切削工具100の識別情報(”ToolId”)、測定頻度(”SamplingFreq”)が記憶されている。「切削加工情報」には、加工パス毎に被削材、切削速度、工具材種の情報が記憶されている。なお、「基本情報」および「切削加工情報」を含めて加工条件の情報としても、「切削加工情報」のみを加工条件の情報としてもよい。
【0067】
このように、測定結果233に加工条件の情報が記憶されていることで、解析装置200は、記憶装置213から同じ加工パスの測定結果233のみを選択して取得することができる。まず、解析装置200は、ユーザが選択した加工条件を受け付ける(S101)。解析装置200は、記憶装置213に記憶されている測定結果233の中から、S101で受け付けた加工条件に合う測定結果233をディスプレイ214に表示する(S102)。たとえば、解析装置200は、受け付けた加工条件に合う測定結果233のファイル名の一覧をディスプレイ214に表示する。なお、ヘッダ部分に記憶されている加工条件の情報には、切削工具100の識別情報や工具材種などの工具情報が含まれているので、解析装置200は、工具情報に基づいて、表示画面に表示させる測定結果および演算結果の種類(たとえば、表示するチャンネル(CH)数など)を設定してもよい。
【0068】
そのため、ユーザは、ディスプレイ214に表示された測定結果233のファイル名の一覧から取得したい測定結果233を選択することができる。ユーザが取得したい測定結果233を選択した場合、解析装置200は、ユーザが選択した測定結果233を記憶装置213から取得できたか否かを判断する(S103)。測定結果を取得できていないと判断した場合(S103でNO)、解析装置200は、処理をS103に戻し、測定結果の取得状態を維持する。
【0069】
一方、測定結果を取得できたと判断した場合(S103でYES)、解析装置200は、測定結果を時系列に表示する第1の画像を生成する(S104)。
【0070】
解析装置200は、取得した測定結果233に対してデータ加工を行う(S105)。具体的に、解析装置200では、取得した測定結果233に含まれる加速度センサ121およびひずみセンサ122の測定結果に対してデータ加工(たとえば前処理、特徴量の計算、基本統計量の計算、および相関の計算)を行う。前処理として、たとえば、欠損値の除去や補完、ノイズ処理、FFT(Fast Fourier Transform)処理、ベクトル変換[大きさ、方向]、次元圧縮などの処理を行う。特徴量の計算は、切削工具の切削抵抗、切削工具のトルクなどの計算を行う。また、基本統計量の計算として、たとえば、相加平均、相乗平均、刈込平均、分散、標準偏差、歪度、尖度、中央値、最大値、最小値などの計算を行う。相関の計算として、たとえば、複数のセンサからの測定結果を関連づけ、共分散、相関係数、偏相関係数、因子負荷量、主成分得点などの計算を行う。なお、測定結果233に対するデータ加工は、特徴量の計算、基本統計量の計算および相関の計算のいずれかの計算が含まれていればよい。
【0071】
解析装置200は、時系列に表示する測定結果のうち特定期間の測定結果に対する演算結果を表示する第2の画像を生成する(S106)。なお、解析装置200は、S105において、特定期間の測定結果だけに対してデータ加工を行い、その演算結果により第2の画像を生成する。もちろん、解析装置200は、S105において、時系列に表示する測定結果のすべての測定期間についてあらかじめデータ加工を行っておき、特定期間の測定結果に対する演算結果を取り出して第2の画像を生成してもよい。
【0072】
解析装置200は、ディスプレイ214の表示画面に第1の画像および第2の画像を表示する(S107)。
図6は、本実施形態に係る解析装置で表示される画像の一例を示す図である。
図6では、記憶装置213のCドライブのUsersフォルダに記憶されている測定結果233に対して、加工条件が「パス1」の測定結果233が3つ表示されている。また、
図6では、同じ「パス1」の加工条件のうち、切削速度が遅い順(昇順)に3つの測定結果233が図中左側から順に表示されている。まず、図中左側に「20210406_114448.csv」の測定結果233(以下、「48」の測定結果233ともいう)が表示され、図中中央に「20210406_114721.csv」の測定結果233(以下、「21」の測定結果233ともいう)が表示され、図中右側に「20210406_115034.csv」の測定結果233(以下、「34」の測定結果233ともいう)が表示されている。
【0073】
「48」の測定結果233は、切削速度が10.0mm/secである。切削工具100に設けた複数のひずみセンサ122の測定値から所定のひずみ変換式を用いて変換した切削工具100の負荷が時系列に表示されている。具体的に、切削工具100のXおよびY方向の負荷(Fx,Fy)が時系列に表示されているグラフ、切削工具100のZ方向の負荷(Fz)が時系列に表示されているグラフ、切削工具100のモーメント方向の負荷(Mz)が時系列に表示されているグラフが図中上下方向に並んでいる。これら3つのグラフが、「48」の測定結果233を時系列に表示する第1の画像G1である。3つのグラフは、横軸が時間[秒]であり、縦軸が負荷[N]である。
【0074】
この第1の画像G1における特定期間P1が、測定時刻11.50秒から1秒間設定されている。なお、
図6に示す例では、特定期間P1のWindow幅は1秒に設定されている。また、特定期間PのStep幅が1秒に設定されているので、Window幅を1秒単位で変更できる。
【0075】
図6では、測定結果を時系列に表示する第1の画像G1の下に、第2の画像G2を表示している。第2の画像G2は、切削工具100のX方向の負荷(Fx)とY方向の負荷(Fy)成分とを関連付けて2次元の空間座標系(XYプロット)に表した、「48」の演算結果である。そのため、解析装置200は、ユーザに対して、特定期間P1における切削工具100のXY方向の負荷を平面的に把握させることができ、切削工具100の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。なお、第2の画像G2のXYプロットは、横軸がX軸方向の負荷[N]であり、縦軸がY軸方向の負荷[N]である。また、第2の画像G2の上側には、測定期間における特定期間P1の位置を把握しやすいように、タイムバーが表示されている。
【0076】
同様に、「21」の測定結果233は、切削速度が20.0mm/secである。切削工具100のXおよびY方向の負荷(Fx,Fy)が時系列に表示されているグラフ、切削工具100のZ方向の負荷(Fz)が時系列に表示されているグラフ、切削工具100のモーメント方向の負荷(Mz)が時系列に表示されているグラフが図中上下方向に並んでいる。これら3つのグラフが、「21」の測定結果233を時系列に表示する第1の画像G1である。
【0077】
この第1の画像G1における特定期間P2が、測定時刻8.50秒から1秒間設定されている。
図6では、測定結果を時系列に表示する第1の画像G1の下に、第2の画像G2を表示している。第2の画像G2は、切削工具100のX方向の負荷(Fx)とY方向の負荷(Fy)成分とを関連付けて2次元の空間座標系(XYプロット)に表した、「21」の演算結果である。
【0078】
同様に、「34」の測定結果233は、切削速度が30.0mm/secである。切削工具100のXおよびY方向の負荷(Fx,Fy)が時系列に表示されているグラフ、切削工具100のZ方向の負荷(Fz)が時系列に表示されているグラフ、切削工具100のモーメント方向の負荷(Mz)が時系列に表示されているグラフが図中上下方向に並んでいる。これら3つのグラフが、「34」の測定結果233を時系列に表示する第1の画像G1である。
【0079】
この第1の画像G1における特定期間P3が、測定時刻6.50秒から1秒間設定されている。
図6では、測定結果を時系列に表示する第1の画像G1の下に、第2の画像G2を表示している。第2の画像G2は、切削工具100のX方向の負荷(Fx)とY方向の負荷(Fy)成分とを関連付けて2次元の空間座標系(XYプロット)に表した、「34」の演算結果である。
【0080】
解析装置200は、
図6のように、同じ「パス1」の加工条件で切削速度が異なる測定結果233およびその演算結果を並べて表示することで、切削速度が変化した場合に、切削工具100の負荷がどのようなに変化するのかを容易に把握することができる。さらに、解析装置200は、ユーザが注目する特定期間P1~P3においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて表示するので、切削工具100の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0081】
ユーザが注目する特定期間P1~P3は、ユーザ自身が任意に変更することができる。
図4に戻って、解析装置200は、ユーザの操作により第1の画像上で特定した時点、および期間を変更する特定期間の操作を受け付けたか否かを判断する(S108)。特定期間を変更する操作を受け付けた場合(S108でYES)、解析装置200は、変更した特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示を更新する(S109)。たとえば、
図6に示す特定期間P1の特定した時点を測定時刻11.50秒から15.00秒に、および期間(Window幅)を1秒から2秒に変更する。解析装置200は、すべての測定期間についてあらかじめデータ加工を行っている場合、変更した特定期間P1の演算結果に第2の画像の表示を更新するだけであるが、あらかじめデータ加工を行っていない場合、変更した特定期間P1の測定結果に対してデータ加工を行う必要がある。
【0082】
解析装置200は、第2の画像の表示を更新した場合、処理をS107に戻し、ディスプレイ214の表示画面に第1の画像および更新した第2の画像を表示する。
【0083】
一方、特定期間を変更する操作を受け付けていない場合(S108でNO)、解析装置200は、測定結果の解析を終了する操作を受け付けたか否かを判断する(S110)。測定結果の解析を終了する操作を受け付けたと判断した場合(S110でYES)、解析装置200は、処理を終了する。測定結果の解析を終了する操作を受け付けていないと判断した場合(S110でNO)、解析装置200は、処理をS107に戻し、ディスプレイ214の表示画面に第1の画像および第2の画像の表示を維持する。
【0084】
図6に示す第2の画像G2では、切削工具100の負荷のXYプロットを表示すると説明したが、これに限られず、データ加工での演算結果である平均、分散、標準偏差などの統計量や切削工具100の相関係数などを表示してもよい。
【0085】
<加工条件の情報の編集>
次に、測定結果233のヘッダ部分に記憶する加工条件の情報の編集について説明する。測定結果233のヘッダ部分に記憶する加工条件の情報は、加工制御装置301から取得した工作機械の機械加工条件232から、解析装置200が自動的に抽出してもよい。しかし、工作機械の種類により機械加工条件232のデータ形式が異なるため、ユーザが必要とする加工条件の情報を得られない場合がある。そこで、解析装置200は、記憶装置213に記憶させる測定結果233のヘッダ部分をユーザが編集できるようにして、ユーザが必要とする加工条件の情報を測定結果233と一緒に記憶装置213に記憶させる。
【0086】
図7は、本実施形態に係る解析装置において測定結果に書き込む加工条件の情報を設定する画像の一例を示す図である。
図7に示す画面には、解析装置200のメイン画面である。当該メイン画面には、センサモジュール120との通信状態を示す「ステータス」、測定結果233の保存場所を設定する欄、接続ボタン、測定開始ボタンなどが表示されている。さらに、メイン画面には、ユーザが加工条件の情報を設定するために、「加工条件入力」の欄が「ステータス」、および測定開始ボタンの下側に表示されている。
【0087】
「加工条件入力」の欄では、切削加工で使用する加工条件の情報として保存する際、加工条件の項目を単純に入力するのではなく、加工パス単位に加工条件の項目を入力することができる。
図7に示す入力欄Rでは、各行に加工条件の項目が設定され、各列に加工パスが設定されている。具体的に、1行目に加工条件の項目には、被削材、2行目に加工条件の項目には、工具型番、3行目に加工条件の項目には、切削速度がそれぞれ設定してある。列方向には、加工パス1、加工パス2、加工パス3の3つの加工パスが設定してある。
【0088】
なお、「加工条件入力」の欄では、左側の列に「削除」の欄が設けてあり、ユーザが当該欄のボタンを押下すると、押下した行の情報が削除される。また、左側から2列目に「パス共通」の欄が設けてあり、ユーザが当該欄のチェックボックスにチェックを入れると、当該チェックを入れた行の情報はすべての加工パスにおいて同じ情報が入力される。
図7に示す例では、被削材の加工条件の項目の行にチェックが入っているので、加工パス1、加工パス2、加工パス3の何れも被削材Aの情報が入力されている。
【0089】
次に、「加工条件入力」の欄の編集について説明する。
図8Aは、本実施形態に係る解析装置において測定結果に書き込む加工条件の情報を追加する画像の一例を示す図である。
図8Bは、本実施形態に係る解析装置において測定結果に書き込む加工条件の情報を削除する画像の一例を示す図である。まず、「加工条件入力」の欄において加工条件の項目を追加する場合を説明する。解析装置200は、ユーザが「条件追加」のボタンを押下すると、
図8Aに示す加工条件追加のポップアップ画面を表示する。当該ポップアップ画面の「加工条件項目名」にユーザが必要とする加工条件の項目を書き込み、「追加」ボタンを押下することで、解析装置200は、「加工条件入力」の欄に入力された加工条件の項目の行を追加する。なお、
図8Aに示す加工条件追加のポップアップ画面には、全パス共通加工条件のチェックボックスが設けてある。当該ボックスをチェックすることで、新たに追加された加工条件の項目の行のパス共通」の欄にチェックが入ることになる。
【0090】
次に、「加工条件入力」の欄において加工パスを削除する場合を説明する。解析装置200は、ユーザが「パス削除」のボタンを押下すると、
図8Bに示す加工パス削除のポップアップ画面を表示する。当該ポップアップ画面の「加工パス」にユーザが削除したい加工パスの番号をプルダウンメニュから選択し、「削除」ボタンを押下することで、解析装置200は、「加工条件入力」の欄から選択された加工パスの列を削除する。なお、加工パスを追加する場合は、ユーザが「パス追加」のボタンを押下すると、図示していないが加工パス追加のポップアップ画面が表示される。当該ポップアップ画面の「加工パス」にユーザが追加したい加工パスの番号をプルダウンメニュから選択し、「追加」ボタンを押下することで、解析装置200は、「加工条件入力」の欄から選択された加工パスの列を追加する。
【0091】
「加工条件入力」の欄には、「読込」のボタン、「保存」のボタンが設けられている。これにより、ユーザは、「保存」のボタンを押下することで、入力した加工条件の情報を記憶装置213に記憶することができる。たとえば、ユーザは、条件セット名を「条件A」として、入力した加工条件の情報を記憶装置213に記憶する。また、記憶した加工条件の情報を読み込む場合、ユーザは、「読込」のボタンを押下することで、記憶装置213に記憶した加工条件の情報を「加工条件入力」の欄に読み込むことができる。
【0092】
[作用効果]
解析装置200によれば、プロセッサ211が、測定結果に対してデータ加工を行い、測定結果を時系列に表示する第1の画像と、第1の画像における特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像とを、ディスプレイ214の表示画面に表示させる。これにより、プロセッサ211で、ユーザが注目する特定期間においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて表示することができるので、切削工具100の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0093】
解析装置200によれば、プロセッサ211が、測定結果を時系列に表示する第1の画像と、データ加工の演算結果を表示する第2の画像とが、同一の表示画面としてディスプレイ214に表示させる。これにより、表示する画像を切り替えることなく、特定期間においてデータ加工を行った演算結果を直接測定結果に対応付けて、ユーザが情報を俯瞰しやすい表示にできる。
【0094】
解析装置200によれば、ユーザの操作を受け付ける入力インターフェース215をさらに備え、プロセッサ211が、入力インターフェース215がユーザの操作により変更された特定期間を受け付けた場合、変更された特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像としてディスプレイ214に表示する。これにより、ユーザが注目したい特定期間をユーザ自身が変更し、変更した特定期間の測定結果に対応する演算結果を、時系列に表示する測定結果から選択してディスプレイ214の表示画面に表示することができる。
【0095】
解析装置200によれば、入力インターフェース215が、ユーザの操作により第1の画像上で特定した時点、および期間を特定期間として受け付ける。これにより、ユーザが注目したい特定期間を時系列に表示する測定結果から自由に選択することができる。
【0096】
解析装置200によれば、取得した測定結果には、加工工具の工具情報が含まれており、プロセッサ211が、取得した工具情報に基づいて、表示画面に表示させる測定結果および演算結果の種類を変更する。これにより、切削工具100の種類に応じて表示画面に表示する情報を適切に変更することができる。
【0097】
解析装置200によれば、プロセッサ211が、取得した複数の測定結果を関連付けるデータ加工を行い、複数の測定結果が関連付けられた演算結果を第2の画像に表示する。これにより、切削工具100の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0098】
解析装置200によれば、プロセッサ211が、複数の測定結果が関連付けられた演算結果を空間座標系に表して第2の画像に表示す。これにより、切削工具100の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0099】
解析装置200によれば、記憶装置213に測定結果233を記憶する場合に、加工条件の情報を追加して1つのファイルとして記憶し、加工条件を選択して、記憶装置213から複数のファイルを取得する場合に、プロセッサ211が、加工条件ごとに、第1の画像および第2の画像を並べて表示画面に表示する。これにより、ユーザが比較しやすいように、同じ加工条件の測定結果および演算結果を並べて表示することができ、切削工具100の状態をより正確に判断することが可能となる情報をユーザに提供することができる。
【0100】
[変形例]
本実施の形態において、
図6に示す測定結果を時系列に表示する第1の画像と、データ加工の演算結果を表示する第2の画像とを、同じ表示画面に表示すると説明したが、第1の画像と第2の画像とを別々の表示画面に表示し、たとえばユーザの操作、または一定期間ごとに表示画面を切り替えてもよい。
【0101】
図5に示す測定結果233では、センサの測定値に加工条件の情報を追加して1つのファイルとして記憶装置213に記憶すると説明した。しかし、これに限られず、測定結果には、センサの測定値のみを記憶し、別のファイルに加工条件の情報を記憶してもよい。ただし、別のファイルに記憶した加工条件の情報と、センサの測定値のみを記憶した測定結果とはリンク情報などで関連付けられているものとする。
【0102】
本実施の形態において、解析装置200は、記憶装置213に記憶された測定結果を対してデータ加工を行うと説明したが、加工中の測定結果を対してデータ加工を行ってもよい。
【0103】
今回開示された実施形態および実施例は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1 加工システム、2 加工工具解析システム、50 刃物台、100 切削工具、110 切削インサート、111 シャンク、113A,113B 固定用部材、120 センサモジュール、121 加速度センサ、122 ひずみセンサ、123 処理部、124 通信部、125 記憶部、129 電池、200 解析装置、201 無線装置、211 プロセッサ、212 通信装置、213 記憶装置、214 ディスプレイ、215 入力インターフェース、216 メディア読込装置、220 記録媒体、231 解析プログラム、232 機械加工条件、233 測定結果、300 工作機械、301 加工制御装置。
【要約】
本開示に係る解析装置は、加工工具の状態を解析する。解析装置は、加工工具に装着された少なくとも1つのセンサから測定結果を取得する取得部と、取得部で取得した測定結果に対してデータ加工を行う演算部と、取得部で取得した測定結果を時系列に表示する第1の画像と、演算部でデータ加工を行った演算結果を表示する第2の画像とを、表示画面に表示させる画像処理部と、を備える。画像処理部は、第1の画像における特定期間の測定結果に対応する演算結果を第2の画像として表示する。