(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】車両用シート及び車両用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/54 20060101AFI20230124BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20230124BHJP
A47C 7/30 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B60N2/54
A47C7/14 C
A47C7/30 A
(21)【出願番号】P 2019041278
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】北原 健介
(72)【発明者】
【氏名】小堀 雅達
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090010(JP,A)
【文献】実開平04-015453(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/54
A47C 7/14
A47C 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションの骨格を構成し、シート幅方向に間隔をあけて配置された左右一対のサイドフレーム部と、シート前後方向に間隔をあけて配置され前記左右一対のサイドフレーム部をシート幅方向に繋ぐ前フレーム部及び後フレーム部と、を有するシートクッションフレームと、
前記前フレーム部及び前記後フレーム部の一方側に設けられ、シート幅方向から見て環状又は一部が開放された環状に形成された第1被係止部と、
前記前フレーム部及び前記後フレーム部の他方側に設けられ、シート幅方向から見て前記第1被係止部とは反対側が開放された第2被係止部と、
前記第1被係止部及び前記第2被係止部にそれぞれ係止される第1係止部及び第2係止部を備え、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されていない状態では、前記第1係止部を前記第1被係止部にシート幅方向に挿入可能とされ、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されている状態では、前記第1係止部が前記第1被係止部から抜け出し不能とされて、前記前フレーム部と前記後フレーム部との間に掛け渡されるシートスプリングと、
を備え
、
前記第1被係止部は、板状の部材で形成され、前記第1係止部のシート下方側への変位を規制する下壁部と、前記第1係止部のシート前後方側への変位を規制する前後壁部と、前記第1係止部のシート上方側への変位を規制する上壁部と、を含んで構成され、
前記下壁部と前記上壁部とが、シート幅方向にオフセットしており、
前記前後壁部は、前後方向に間隔をあけて配置された後壁部及び前壁部を有し、
前記シートスプリングは、線径がD1とされた丸棒状の部材を用いて形成され、
前記第1係止部は、シート幅方向に延在する中央係止部と、前記中央係止部のシート幅方向一方側の端部から前記第2係止部側へ湾曲する抜止湾曲部と、を備えていると共に、前記中央係止部における前記第1係止部とは反対側の端から前記抜止湾曲部における前記第1係止部側の端までの寸法L1が、前記シートスプリングを形成する丸棒状の部材の線径D1よりも大きくなっており、
前記下壁部から前記上壁部までの寸法L2は、前記中央係止部における前記第1係止部とは反対側の端から前記抜止湾曲部における前記第1係止部側の端までの寸法L1よりも大きな寸法に設定されており、
前記後壁部から前記前壁部までの寸法D2は、前記シートスプリングを形成する丸棒状の部材の線径D1よりも大きくかつ前記中央係止部における前記第1係止部とは反対側の端から前記抜止湾曲部における前記第1係止部側の端までの寸法L1よりも小さな寸法に設定されている車両用シート。
【請求項2】
乗員が着座するシートクッションの骨格を構成し、シート幅方向に間隔をあけて配置された左右一対のサイドフレーム部と、シート前後方向に間隔をあけて配置され前記左右一対のサイドフレーム部をシート幅方向に繋ぐ前フレーム部及び後フレーム部と、を有するシートクッションフレームと、
前記前フレーム部及び前記後フレーム部の一方側に設けられ、シート幅方向から見て環状又は一部が開放された環状に形成された第1被係止部と、
前記前フレーム部及び前記後フレーム部の他方側に設けられ、シート幅方向から見て前記第1被係止部とは反対側が開放された第2被係止部と、
前記第1被係止部及び前記第2被係止部にそれぞれ係止される第1係止部及び第2係止部を備え、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されていない状態では、前記第1係止部を前記第1被係止部にシート幅方向に挿入可能とされ、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されている状態では、前記第1係止部が前記第1被係止部から抜け出し不能とされて、前記前フレーム部と前記後フレーム部との間に掛け渡されるシートスプリングと、
を備え、
前記第1被係止部は、板状の部材で形成され、前記第1係止部のシート下方側への変位を規制する下壁部と、前記第1係止部のシート前後方側への変位を規制する前後壁部と、前記第1係止部のシート上方側への変位を規制する上壁部と、を含んで構成され、
前記下壁部と前記上壁部とが、シート上下方向に対向しない状態でシート幅方向にオフセットしている車両用シート。
【請求項3】
前記第1被係止部は、前記前フレーム部及び前記後フレーム部の一方のシート上方側の部分に溶接で接合される溶接接合部と一体に形成されている請求項1又は請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シートの製造方法に適用され、
前記第1係止部を前記第1被係止部にシート幅方向に挿入する第1係止部挿入工程と、
前記第1係止部を前記第1被係止部に挿入した状態で前記シートスプリングを変位させて、前記第2係止部を前記第2被係止部に係止する第2係止部係止工程と、
を有する車両用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及び車両用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の乗員が着座する車両用シートが開示されている。この車両用シートのシートクッションは、前後方向に間隔をあけて配置されたアッパフレーム及びクランク部と、アッパフレームとクランク部との間に掛け渡されたシートスプリング(バネ部材)と、を備えている。そして、シートスプリングの後端部は、クランク部に接合された後側バネ取付部がカシメられることで、当該後側バネ取付部を介してクランク部に取付けられている。また、シートスプリングの前端部は、アッパフレームに形成された前側バネ取付部に係止されることで、アッパフレームに取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートスプリングを取付けるための部材のカシメを行うには、専用の設備や治具が必要であることに加えて、カシメを行うための加工費が必要となり、車両用シートの製造コストの増加を招く。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、カシメ加工を行わずにシートスプリングを取付けることができる車両用シート及び車両用シートの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、乗員が着座するシートクッションの骨格を構成し、シート幅方向に間隔をあけて配置された左右一対のサイドフレーム部と、シート前後方向に間隔をあけて配置され前記左右一対のサイドフレーム部をシート幅方向に繋ぐ前フレーム部及び後フレーム部と、を有するシートクッションフレームと、前記前フレーム部及び前記後フレーム部の一方側に設けられ、シート幅方向から見て環状又は一部が開放された環状に形成された第1被係止部と、前記前フレーム部及び前記後フレーム部の他方側に設けられ、シート幅方向から見て前記第1被係止部とは反対側が開放された第2被係止部と、前記第1被係止部及び前記第2被係止部にそれぞれ係止される第1係止部及び第2係止部を備え、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されていない状態では、前記第1係止部を前記第1被係止部にシート幅方向に挿入可能とされ、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されている状態では、前記第1係止部が前記第1被係止部から抜け出し不能とされて、前記前フレーム部と前記後フレーム部との間に掛け渡されるシートスプリングと、を備え、前記第1被係止部は、板状の部材で形成され、前記第1係止部のシート下方側への変位を規制する下壁部と、前記第1係止部のシート前後方側への変位を規制する前後壁部と、前記第1係止部のシート上方側への変位を規制する上壁部と、を含んで構成され、前記下壁部と前記上壁部とが、シート幅方向にオフセットしており、前記前後壁部は、前後方向に間隔をあけて配置された後壁部及び前壁部を有し、前記シートスプリングは、線径がD1とされた丸棒状の部材を用いて形成され、前記第1係止部は、シート幅方向に延在する中央係止部と、前記中央係止部のシート幅方向一方側の端部から前記第2係止部側へ湾曲する抜止湾曲部と、を備えていると共に、前記中央係止部における前記第1係止部とは反対側の端から前記抜止湾曲部における前記第1係止部側の端までの寸法L1が、前記シートスプリングを形成する丸棒状の部材の線径D1よりも大きくなっており、前記下壁部から前記上壁部までの寸法L2は、前記中央係止部における前記第1係止部とは反対側の端から前記抜止湾曲部における前記第1係止部側の端までの寸法L1よりも大きな寸法に設定されており、前記後壁部から前記前壁部までの寸法D2は、前記シートスプリングを形成する丸棒状の部材の線径D1よりも大きくかつ前記中央係止部における前記第1係止部とは反対側の端から前記抜止湾曲部における前記第1係止部側の端までの寸法L1よりも小さな寸法に設定されている。
請求項2記載の車両用シートは、乗員が着座するシートクッションの骨格を構成し、シート幅方向に間隔をあけて配置された左右一対のサイドフレーム部と、シート前後方向に間隔をあけて配置され前記左右一対のサイドフレーム部をシート幅方向に繋ぐ前フレーム部及び後フレーム部と、を有するシートクッションフレームと、前記前フレーム部及び前記後フレーム部の一方側に設けられ、シート幅方向から見て環状又は一部が開放された環状に形成された第1被係止部と、前記前フレーム部及び前記後フレーム部の他方側に設けられ、シート幅方向から見て前記第1被係止部とは反対側が開放された第2被係止部と、前記第1被係止部及び前記第2被係止部にそれぞれ係止される第1係止部及び第2係止部を備え、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されていない状態では、前記第1係止部を前記第1被係止部にシート幅方向に挿入可能とされ、前記第2係止部が前記第2被係止部に係止されている状態では、前記第1係止部が前記第1被係止部から抜け出し不能とされて、前記前フレーム部と前記後フレーム部との間に掛け渡されるシートスプリングと、を備え、前記第1被係止部は、板状の部材で形成され、前記第1係止部のシート下方側への変位を規制する下壁部と、前記第1係止部のシート前後方側への変位を規制する前後壁部と、前記第1係止部のシート上方側への変位を規制する上壁部と、を含んで構成され、前記下壁部と前記上壁部とが、シート上下方向に対向しない状態でシート幅方向にオフセットしている。
【0007】
請求項1及び請求項2記載の車両用シートによれば、シートスプリングの第1係止部を前フレーム部及び後フレーム部の一方側に設けられた第1被係止部にシート幅方向に挿入する。次に、シートスプリングの第1係止部を前フレーム部及び後フレーム部の一方側に設けられた第1被係止部に挿入した状態でシートスプリングを変位させて、シートスプリングの第2係止部を前フレーム部及び後フレーム部の他方側に設けられた第2被係止部に係止する。これにより、シートスプリングが前フレーム部と後フレーム部との間に掛け渡される。すなわち、請求項1記載の車両用シートによれば、カシメ加工を行わずにシートスプリングを取付けることができる。
【0009】
請求項1及び請求項2記載の車両用シートによれば、第1被係止部は板状の部材で形成されている。そして、この第1被係止部は、シートスプリングの第1係止部のシート下方側への変位を規制する下壁部と、第1係止部のシート前後方側への変位を規制する前後壁部と、前記第1係止部のシート上方側への変位を規制する上壁部と、を含んで構成されている。そして、第1被係止部の下壁部と上壁部とが、シート幅方向にオフセットしている。このように、第1被係止部の下壁部と上壁部とが、シート幅方向にオフセットしている構成とすることで、下壁部を形成するための治具が上壁部に干渉すること又は上壁部を形成するための治具が下壁部に干渉することを抑制することができる。
【0010】
請求項3記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2記載の車両用シートにおいて、前記第1被係止部は、前記前フレーム部及び前記後フレーム部の一方のシート上方側の部分に溶接で接合される溶接接合部と一体に形成されている。
【0011】
請求項3記載の車両用シートによれば、シートクッションフレームの組立時に、前フレーム部及び後フレーム部の一方のシート上方側の部分に溶接接合部を溶接で接合することにより、シートスプリングの第1係止部が係止される第1被係止部を前フレーム部及び後フレーム部の一方側に容易に固定することができる。
【0012】
請求項4記載の車両用シートの製造方法は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シートの製造方法に適用され、前記第1係止部を前記第1被係止部にシート幅方向に挿入する第1係止部挿入工程と、前記第1係止部を前記第1被係止部に挿入した状態で前記シートスプリングを変位させて、前記第2係止部を前記第2被係止部に係止する第2係止部係止工程と、を有する。
【0013】
請求項4記載の車両用シートの製造方法によれば、シートスプリングの第1係止部を前フレーム部及び後フレーム部の一方側に設けられた第1被係止部にシート幅方向に挿入する(第1係止部挿入工程)。次に、シートスプリングの第1係止部を前フレーム部及び後フレーム部の一方側に設けられた第1被係止部に挿入した状態でシートスプリングを変位させて、シートスプリングの第2係止部を前フレーム部及び後フレーム部の他方側に設けられた第2被係止部に係止する(第2係止部係止工程)。これにより、シートスプリングが前フレーム部と後フレーム部との間に掛け渡される。すなわち、請求項4記載の車両用シートの製造方法によれば、カシメ加工を行わずにシートスプリングを取付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用シート及び車両用シートの製造方法は、カシメ加工を行わずにシートスプリングを取付けることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の車両用シートのシートフレームを示す斜視図である。
【
図2】シートクッションフレームにおいてシートクッションスプリングの後端部が取り付けられた部分を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図3】シートクッションフレームにおいてシートクッションスプリングの前端部が取り付けられた部分を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図4】シートクッションスプリングの一方側の端部を示す平面図である。
【
図8】後ブラケット等を示す側面図であり、シートクッションスプリングの後端部が係止された状態を模式的に示している。
【
図9】後ブラケット等を示す側面図であり、シートクッションスプリングの後端部が後側係止部に挿入された状態を示している。
【
図10】後ブラケット等を示す側面図であり、シートクッションスプリングの後端部が後側係止部に挿入された後に、図示しないシートクッションスプリングの前端部が前側係止部に係止された状態を示している。
【
図11】第1係止部挿入工程を模式的に示す斜視図である。
【
図12】第2係止部係止工程の前半を模式的に示す斜視図である。
【
図13】第2係止部係止工程の完了状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図13を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、車両用シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとし、また各図に適宜示す矢印FRは前方向、矢印UPは上方向、矢印RHは右方向、矢印LHは左方向をそれぞれ示すものとする。また、左右の方向は、シート幅方向と一致している。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、運転席や助手席の後方側に配置される後席として用いられる。なお、
図1においては、左右方向に隣り合って配置された2つの車両用シート10を図示している。また、2つの車両用シート10は、左右方向に対称に構成されているため、以下の説明においては左右の一方側の車両用シート10について説明する。
【0018】
車両用シート10は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、を備えている。
【0019】
シートクッション12は、表皮材に覆われた図示しないシートクッションパッドがシートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム16に取付けられること等によって構成されている。
【0020】
シートクッションフレーム16は、シート幅方向に間隔をあけて配置された左右一対のサイドフレーム部18と、左右一対のサイドフレーム部18の前方側の端部18Aをシート幅方向に繋ぐ前フレーム部20と、左右一対のサイドフレーム部18の前後方向の中間部18Bをシート幅方向に繋ぐ後フレーム部22と、を備えている。
【0021】
詳述すると、左右一対のサイドフレーム部18の前方側の端部18Aには、丸パイプ状の前フレーム部20が溶接で接合されている。なお、前フレーム部20等には、シートクッションパッドの一部や表皮材の一部が係止される係止ワイヤ24が接合されている。
【0022】
また、左右一対のサイドフレーム部18の前後方向の中間部18Bには、丸パイプ状の部材に曲げ加工等が施されることによって形成された後フレーム部22が溶接で接合されている。この後フレーム部22は、左右一対のサイドフレーム部18に接合された部分からシート幅方向内側(シートの左右方向の中央側)に向けてそれぞれ延びる左右一対の第1延在部22Aと、左右一対の第1延在部22Aのシート幅方向内側の端部から後方側へ向けて延びる左右一対の第2延在部22Bと、左右一対の第2延在部22Bの後端部をシート幅方向に繋ぐ第3延在部22Cと、を備えている。ここで、本実施形態では、車両の中心(車幅方向の中心)側に配置された第1延在部22Aにおけるサイドフレーム部18への接合位置が、車幅方向の外側に配置された第1延在部22Aのサイドフレーム部18への接合位置よりも前方側に位置している。また、車両の中心(車幅方向の中心)側に配置された第2延在部22Bの長さが、車幅方向の外側に配置された第2延在部22Bの長さよりも長く設定されている。これにより、第3延在部22Cが、左右一対のサイドフレーム部18の後方側の端部18Cと対応する位置においてシート幅方向に平行に延在するようになっている。
【0023】
また、左右一対のサイドフレーム部18の後方側の端部18Cには、シートバック14の骨格を構成するシートバックフレーム26が前後方向に傾動可能に取付けられている。
【0024】
図1、
図2及び
図3に示されるように、前フレーム部20と後フレーム部22の第3延在部22Cとの間には、シートスプリングとしての2つのシートクッションスプリング28が掛け渡されている。なお、以下の説明においては「シートクッションスプリング28」を単に「スプリング28」と呼ぶ。
【0025】
スプリング28は、線径がD1とされた丸棒状の部材がシート幅方向に蛇行するように繰り返し湾曲されること等により形成されている。
図4に示されるように、このスプリング28の後端部28A(第1係止部)は、シート幅方向の中央部分において左右方向に略平行に延在する中央係止部28Cと、中央係止部28Cのシート幅方向一方側の端部から前方側へ緩やかに湾曲する抜止湾曲部28Dと、を備えている。これにより、中央係止部28Cの後端から抜止湾曲部28Dの前端までの寸法L1が、スプリング28を形成する丸棒状の部材の線径D1よりも大きくなっている。なお、中央係止部28Cの「後端」及び抜止湾曲部28Dの「前端」とは、スプリング28がシートクッションフレーム16に取り付けられた状態での「後端」及び「前端」のことである。また、
図3に示されるように、スプリング28の前端部28B(第2係止部)もスプリング28の後端部28A(
図4参照)と同じ形状に形成されている。また、スプリング28の前端部28Bにおいて後端部28Aと対応する部分には、当該後端部28Aと同じ符号を付している。
【0026】
図3に示されるように、スプリング28の前端部28Bは、前ブラケット30を介して前フレーム部20に係止されている。前ブラケット30は、鋼板材にプレス加工や曲げ加工等が施されることによって形成されている。この前ブラケット30は、シート幅方向を厚み方向として前後方向に延在する左右一対の支持板部30Aと、左右一対の支持板部30Aの下端部をシート幅方向に繋ぐ底板部30Bと、を備えている。左右一対の支持板部30Aは、前フレーム部20の下方側に溶接で接合されている。これにより、前ブラケット30が前フレーム部20に固定されている。なお、本実施形態では、シート幅方向に間隔をあけて配置された2つの前ブラケット30が前フレーム部20に固定されている。また、前ブラケット30は、底板部30Bの後端から後方側へ向けて延出すると共に後端側が前方側へ向けて折り曲げられることによって形成された第2被係止部としての前側被係止部30Cを備えている。この前側被係止部30Cは、シート幅方向から見て前方側が開放されたU字状になっている。
【0027】
図2に示されるように、スプリング28の後端部28Aは、後ブラケット32を介して後フレーム部22の第3延在部22Cに係止されている。
【0028】
図5、
図6及び
図7に示されるように、後ブラケット32は、鋼板材にプレス加工や曲げ加工等が施されることによって形成されている。この後ブラケット32は、
図5、
図6及び
図8に示されるように、後フレーム部22の第3延在部22Cの上面に沿う曲率半径で湾曲された溶接接合部32Aを備えている。
図6及び
図7に示されるように、溶接接合部32Aの左右及び前後の中央部分には、後フレーム部22の第3延在部22C側へ向けて突出する突出部32Bが形成されている。この突出部32Bが形成されていることにより、溶接接合部32Aを後フレーム部22の第3延在部22Cの上面にプロジェクション溶接で容易に接合することが可能となっている。なお、溶接接合部32Aの左右の端部を後フレーム部22の第3延在部22Cの上面にアーク溶接で接合してもよい。
【0029】
図5、
図6及び
図8に示されるように、後ブラケット32は、溶接接合部32Aの前端のシート幅方向の中央部分から下方側へ向けて延びる後壁部32Cと、後壁部32Cの下端から前方側へ向けてU字状に湾曲された下壁部32Dと、下壁部32Dの前端から上方側へ向けてかつ後壁部32Cと略平行に延在する前壁部32Eと、を備えている。本実施形態では、後壁部32C、下壁部32D及び前壁部32Eのシート幅方向への寸法W1が、溶接接合部32Aのシート幅方向への寸法W2よりも小さな寸法に設定されている。また、後ブラケット32は、前壁部32Eの上端部におけるシート幅方向の端から右側及び左側へ向けて突出する左右一対の接続部32Fと、左右一対の接続部32Fから上方側へ向けてそれぞれ延びる前壁部としての左右一対の第2前壁部32Gと、左右一対の第2前壁部32Gの上端から溶接接合部32A側(後方側)へ向けて屈曲して延びる左右一対の上壁部32Hと、を備えている。左右一対の上壁部32Hにおける第2前壁部32Gとは反対側の端部32Iは、溶接接合部32Aと近接して配置されている。ここで、本実施形態では、左右一対の上壁部32Hにおける第2前壁部32Gとは反対側の端部32Iと溶接接合部32Aとの間の隙間の寸法Sが、スプリング28を形成する丸棒状の部材の線径D1よりも小さく設定されている。なお、
図8、
図9及び
図10においては、接続部32Fの図示を省略している。
【0030】
また、後ブラケット32をシート幅方向から見て、後壁部32C、下壁部32D、前壁部32E、接続部32F、第2前壁部32G、及び上壁部32Hは、第1係止部としての一部が開放された環状の後側被係止部32Jを構成している。なお、左右一対の上壁部32Hにおける第2前壁部32Gとは反対側の端部32Iと溶接接合部32Aとの間の隙間をなくすことにより、後側被係止部32Jを全周が閉止された環状に構成してもよい。
【0031】
図9に示されるように、シート幅方向から見て、後側被係止部32Jの内部における下壁部32Dから上壁部32Hまでの寸法L2は、スプリング28の中央係止部28Cの後端から抜止湾曲部28Dの前端までの寸法L1よりも大きな寸法に設定されている。また、シート幅方向から見て、後側被係止部32Jの内部における後壁部32Cから前壁部32Eまでの寸法D2は、スプリング28の外径D1(スプリング28を形成する部材の線径D1)と対応する寸法(スプリング28の外径D1よりも若干大きな寸法)に設定されている。これにより、スプリング28を上方側へ立てるような姿勢(
図9に示された姿勢)では、当該スプリング28をシート幅方向に移動させることにより、スプリング28の後端部28Aを後側被係止部32Jに挿入すること(スプリング28の後端部28Aを後側被係止部32Jに係止させること)が可能となっている。また、
図10に示されるように、スプリング28の後端部28Aを後側被係止部32Jに挿入した状態で、スプリング28の前端部28Bが下方側へ移動する方向へ当該スプリング28を傾動させて、スプリング28の前端部28Bを前側被係止部30Cに係止した状態(
図3参照)では、スプリング28の抜止湾曲部28Dと後側被係止部32Jの前壁部32Eとがシート幅方向にオーバーラップした状態となり、スプリング28の後端部28Aが後側被係止部32Jから抜出すことが不能となる。また、スプリング28の前端部28Bを前側被係止部30Cに係止した状態(
図3参照)では、スプリング28の後端部28A(中央係止部28C)が後側被係止部32Jの下壁部32Dに当接している。
【0032】
(スプリング28を取付ける工程について)
次に、本実施形態の車両用シート10の製造工程のうちスプリング28をシートクッションフレーム16に取付ける工程について説明する。
【0033】
先ず、
図11において実線で示されるように、スプリング28を上方側へ立てるような姿勢で、当該スプリング28を二点鎖線で示される位置までシート幅方向に移動させることにより、スプリング28の後端部28Aを後側被係止部32Jに挿入する(第1係止部挿入工程)。
【0034】
次に、
図12に示されるように、スプリング28の後端部28Aを後側被係止部32Jに挿入した状態で、スプリング28の前端部28Bが下方側へ移動する方向へ当該スプリング28を傾動させる(矢印A方向へ傾動させる)。そして、
図13に示されるように、スプリング28の前端部28Bを前方側へ引っ張ることで、スプリング28の前端部28Bを前側被係止部30Cへ前方側から係止させる(前側被係止部30Cの開放端側から当該前側被係止部30Cの閉止端へ係止させる)。以上の工程を経て、スプリング28がシートクッションフレーム16に取付けられる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の車両用シート10では、カシメ加工を行わずにスプリング28をシートクッションフレーム16に取付けることができる。
【0036】
また、本実施形態では、シートクッションフレーム16の組立時に、後フレーム部22の第3延在部22Cの上面に溶接接合部32Aを溶接で接合することにより、スプリング28の後端部28Aが係止される後側被係止部32Jを後フレーム部22の第3延在部22Cに容易に固定することができる。特に、本実施形態では、この溶接作業をシート上方側から行える構成となっているため、当該溶接時の作業性が良好となっている。
【0037】
さらに、本実施形態では、
図5、
図6、
図7及び
図8に示されるように、後ブラケット32が板状の部材で形成されている。そして、この後ブラケット32の後側被係止部32Jは、スプリング28の後端部28A(中央係止部28C)のシート下方側への変位を規制する下壁部32Dと、中央係止部28Cのシート前後方側への変位を規制する前後壁部(前壁部32E、第2前壁部32G及び後壁部32C)と、中央係止部28Cのシート上方側への変位を規制する上壁部32Hと、を含んで構成されている。そして、後側被係止部32Jの下壁部32Dと上壁部32Hとが、シート幅方向にオフセットしている。このように、後側被係止部32Jの下壁部32Dと上壁部32Hとが、シート幅方向にオフセットしている構成とすることで、下壁部32Dを形成するための治具が上壁部32Hに干渉すること又は上壁部32Hを形成するための治具が下壁部32Dに干渉することを抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、スプリング28がシートクッションフレーム16に取付けられた状態では、スプリング28の後端部28A(中央係止部28C)が後側被係止部32Jの下壁部32Dに当接している。この状態では、スプリング28の後端部28A(中央係止部28C)と後フレーム部22の第3延在部22Cとが最も近接して配置された状態となる。これにより、乗員がシートクッション12に着座することに伴う外力がスプリング28に入力された際に、後ブラケット32が変形することを抑制することができる。
【0039】
なお、後ブラケット32と前ブラケット30とをシート前後方向に入れ替えた構成、すなわち、後ブラケット32の構成を前ブラケット30に適用し、前ブラケット30の構成を後ブラケット32に適用した構成としてもよい。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
10 車両用シート
12 シートクッション
16 シートクッションフレーム
18 サイドフレーム部
20 前フレーム部
22 後フレーム部
28 シートクッションスプリング
28A 後端部(第1係止部)
28B 前端部(第2係止部)
30C 前側被係止部(第2被係止部)
32A 溶接接合部
32C 後壁部(前後壁部)
32D 下壁部
32E 前壁部(前後壁部)
32G 第2前壁部(前後壁部)
32H 上壁部
32J 後側被係止部(第1被係止部)