(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】サンプリング方法及びサンプリング装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/08 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
G01N1/08 L
(21)【出願番号】P 2019062692
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】522221046
【氏名又は名称】日比製煉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市本 正志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恵
(72)【発明者】
【氏名】高平 雅之
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-118968(JP,A)
【文献】特開2002-214087(JP,A)
【文献】特表2018-500578(JP,A)
【文献】特許第6133590(JP,B2)
【文献】特開2017-146310(JP,A)
【文献】特表2003-517600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に開口部を有する中空状の空間部が形成されたパイプを備え、前記空間部に所定量の粉状又は粒状のサンプルを収容可能なパイプ式試料採取器を利用したサンプリング方法において、
前記パイプの先端側を挿入する挿入部を有し、該挿入部にカッタ刃が固定されたガイドに、前記パイプの先端から、前記カッタ刃の上端までの間隙が1mm以内となる位置まで、前記空間部に前記サンプルを収容した状態の前記パイプを挿入した状態で、前記パイプに挿入されたプッシャによって前記空間部に収容された前記サンプルを押し出す際に
、当該サンプルを
前記カッタ刃に押し当ててカット
し、前記サンプルの秤量が可能な秤量器のトレイ上に前記サンプルを排出することを特徴とするサンプリング方法。
【請求項2】
前記サンプルは、
前記プッシャによって押し出された際に、
前記ガイドに設けられた1又は複数のカッタ刃によってカット
し、前記サンプルのカットの際は、前記パイプ及び前記ガイドは静止していることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング方法。
【請求項3】
先端に開口部を有する中空状の空間部が形成されたパイプを備え、前記空間部に所定量の粉状又は粒状のサンプルを収容可能なパイプ式試料採取器を備えたサンプリング装置において、
前記パイプの先端側
を挿入する挿入部を有し、該挿入部に1又は複数のカッタ刃が
固定されたガイド
と、
前記ガイドの挿入部に、前記空間部に前記サンプルを収容した状態の前記パイプを挿入した状態で、前記空間部に収容された前記サンプルを押し出すプッシャと、
前記パイプから押し出された前記サンプルの秤量が可能な秤量器と、を備え、
前記空間部に収容された前記サンプルを押し出す際に
、当該サンプルを前記カッタ刃に
押し当ててカット
し、前記秤量器のトレイ上に前記サンプルを排出するように構成することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項4】
前記カッタ刃は、押し出し方向と直交する方向の厚さが1.0~2.0mmであることを特徴とする請求項
3に記載のサンプリング装置。
【請求項5】
前記カッタ刃は、
該カッタ刃上への前記サンプルの堆積を防止するために上端部が鋭角状とされていることを特徴とする請求項
3又は
4に記載のサンプリング装置。
【請求項6】
前記カッタ刃は、前記開口部を横断するように
、前記ガイドの挿入部に配置され、複数枚を配置する場合には互いに交差しないようにして配置されていることを特徴とする請求項
3~
5のいずれか1項に記載のサンプリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ式試料採取器を利用したサンプリング方法及びサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬自熔炉に装入する銅精鉱は、受け入れ段階では一般的に水分を約10%程度含有している。そのため、銅精鉱の取引においては銅精鉱の受入後、湿量と乾量からその水分率を算出し、受け入れた重量に対する銅分に基づいてその費用を支払っている。また、受け入れ段階の重量はホッパに受けて秤量する方法や、ベルトコンベア下に秤量機を設置して秤量する方法が用いられている。
【0003】
受け入れ後の銅精鉱は、搬送途中でサンプリングされて重量(湿量)測定が行われ、さらに乾燥を行ってその水分率が測定されるが、サンプリングから湿量測定までの時間が長いと、精鉱中の水分が自然蒸発し、実際に受け入れたときよりも水分が低下してしまう。そのため、自然蒸発した水分が鉱石分としてカウントされてしまうことになるので取引上の損失につながる。そのため、本願出願人は銅精鉱の搬送作業を妨げることなく重量(湿量)計測を行うことが可能であり、偏りなくサンプリングすることができ、しかもサンプル重量の計量までの時間を短縮することが可能なサンプリング方法及びサンプリング装置を開発し、特許を取得した(特許文献1)。
【0004】
この特許文献1において、一実施例として開示されたパイプ式試料採取器は、仮受けホッパへ移載された銅精鉱からさらに2次サンプルをサンプリングするために一対の円筒状のパイプを備えており、一対のパイプは上下移動及び水平移動可能とされている。
【0005】
仮受けホッパから一対のパイプによって2次サンプリングされた所定量のサンプルは秤量器によって秤量される。この秤量器は、一対のパイプによってサンプリングされた2次サンプルをそれぞれ個別のトレイ上に載せた状態で秤量を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パイプ式試料採取器によるサンプリングの場合、例えば
図9に示すように、一対のパイプ内に収容されたサンプルはその性状によってはトレイに排出される際に円柱状の形状を保持した状態で排出される。そのため、排出された際の勢いによって円柱状の2次サンプルS2がトレイ61aの上で跳ね上がった場合にはトレイ61aが安定して2次サンプルの秤量が可能となるまでに要する時間が長くなったり、秤量の精度が悪化したりするおそれがあった。また、一対のパイプから排出された円柱状の2次サンプルS2がトレイ61aの上で積み重なった状態となった場合には、高く積み重なった2次サンプルS2が崩れ落ちてその一部がトレイ61aの外へ落鉱するおそれもあった。さらに、一対のパイプから排出された円柱状のサンプルS2がトレイ61aの上で転がると、トレイ61aの姿勢が不安定になるばかりか、トレイ61aのエッジを乗り越えてサンプルS2がトレイ61aの外へ落鉱するおそれもあった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、パイプ式試料採取器で採取したサンプルがトレイから落鉱することなく、秤量を安定的かつ正確に行うことのできるサンプリング方法及びサンプリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、先端に開口部を有する中空状の空間部が形成されたパイプを備え、前記空間部に所定量の粉状又は粒状のサンプルを収容可能なパイプ式試料採取器を利用したサンプリング方法において、前記パイプの先端側を挿入する挿入部を有し、該挿入部にカッタ刃が固定されたガイドに、前記パイプの先端から、前記カッタ刃の上端までの間隙が1mm以内となる位置まで、前記空間部に前記サンプルを収容した状態の前記パイプを挿入した状態で、前記パイプに挿入されたプッシャによって前記空間部に収容された前記サンプルを押し出す際に、当該サンプルを前記カッタ刃に押し当ててカットし、前記サンプルの秤量が可能な秤量器のトレイ上に前記サンプルを排出することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサンプリング方法において、前記サンプルは、前記プッシャによって押し出された際に、前記ガイドに設けられた1又は複数のカッタ刃によってカットし、前記サンプルのカットの際は、前記パイプ及び前記ガイドは静止していることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、先端に開口部を有する中空状の空間部が形成されたパイプを備え、前記空間部に所定量の粉状又は粒状のサンプルを収容可能なパイプ式試料採取器を備えたサンプリング装置において、前記パイプの先端側を挿入する挿入部を有し、該挿入部に1又は複数のカッタ刃が固定されたガイドと、前記ガイドの挿入部に、前記空間部に前記サンプルを収容した状態の前記パイプを挿入した状態で、前記空間部に収容された前記サンプルを押し出すプッシャと、前記パイプから押し出された前記サンプルの秤量が可能な秤量器と、を備え、前記空間部に収容された前記サンプルを押し出す際に、当該サンプルを前記カッタ刃に押し当ててカットし、前記秤量器のトレイ上に前記サンプルを排出するように構成することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のサンプリング装置において、前記カッタ刃は、押し出し方向と直交する方向の厚さが1.0~2.0mmであることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載のサンプリング装置において、前記カッタ刃は、該カッタ刃上への前記サンプルの堆積を防止するために上端部が鋭角状とされていることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため請求項6に記載の発明は、請求項3~5のいずれか1項に記載のサンプリング装置において、前記カッタ刃は、前記開口部を横断するように、前記ガイドの挿入部に配置され、複数枚を配置する場合には互いに交差しないようにして配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るサンプリング方法又はサンプリング装置によれば、パイプの空間部に収容されたサンプルを押し出す際に当該サンプルがカットされるので、カットされたサンプルをトレイで受ける際に、個々のサンプルが崩れやすくなる。また、サンプルの性状によっては、カットした際にサンプルが解砕される。このため、サンプルがトレイの上で跳ね上がったり、積み重なったり、転がったりするという状況が生じ難くなり、パイプ式試料採取器で採取したサンプルの秤量を安定的かつ正確に行うことができるという効果がある。
【0017】
また、本発明に係るサンプリング方法又はサンプリング装置によれば、サンプルをカットする処理は、サンプルをパイプから押し出す処理と並行して実行されるので、サンプル採取から秤量までに要する時間の増加を伴わず効率的という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るサンプリング方法及びサンプリング装置を実施するための装入設備の一実施形態を示す説明図である。
【
図2】(A)は本発明に係るサンプリング装置を示す平面図、(B)はその側面図である。
【
図4】カッタ刃の先端形状の例を説明する図である。
【
図5】(A)はガイドへ挿入される途中におけるパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図、(B)はカッタ刃を横切るようにして切断した断面図である。
【
図6】(A)はガイドへ挿入されたパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図、(B)はカッタ刃を横切るようにして切断した断面図である。
【
図7】(A)はプッシャが挿入されたパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図、(B)はカッタ刃を横切るようにして切断した断面図である。
【
図8】(A)は2次サンプルを排出したパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図、(B)はカッタ刃を横切るようにして切断した断面図である。
【
図9】従来のパイプ式試料採取器でトレイに排出された2次サンプルの模式図である。
【
図10】本発明に係るパイプ式試料採取器でトレイに排出された2次サンプルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るサンプリング方法及びサンプリング装置の好ましい一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明に係るサンプリング方法及びサンプリング装置を実施するための装入設備を示す説明図である。
【0020】
はじめに、
図1に示す装入設備1は、銅製錬自熔炉に挿入するための銅精鉱を受け入れて図示しない貯鉱舎へ移送するための設備である。装入設備1は、図示しない受入ピットにおいて受け入れた銅精鉱を搬送する搬送装置であるベルトコンベア5と、ベルトコンベア5の落ち口(搬送方向端)側であってベルトコンベア5の搬送方向に対して直角方向に配置されたベルトコンベア6と、ベルトコンベア6の両端側にそれぞれ配置されベルトコンベア6の搬送方向と直角方向に配置されたベルトコンベア7a,7bと、ベルトコンベア7a,7bのそれぞれの落ち口(搬送方向端)側であってベルトコンベア7a,7bの搬送方向と直角に配置されたベルトコンベア8と、ベルトコンベア8の落ち口(搬送方向端)側であってベルトコンベア8の搬送方向に対して直角に配置されたベルトコンベア9を備えて構成されている。ベルトコンベア5の落ち口はベルトコンベア6のほぼ中央部に位置するようにして配置されており、ベルトコンベア5によって搬送されてくる銅精鉱をベルトコンベア6によってベルトコンベア7a又はベルトコンベア7bのいずれかへ移送することができるように配置されている。尚、いうまでもないがベルトコンベア6は図示しない切替機構により左右のいずれの方向(ベルトコンベア7a,7bの方向)へも搬送可能に構成されている。
【0021】
また、ベルトコンベア7a,7bのそれぞれの落ち口側に配置されたベルトコンベア8は、ベルトコンベア7a,7bによって搬送されてきた銅精鉱をベルトコンベア9へ移載する。そして、ベルトコンベア9によって移送される銅精鉱はその先にある図示しない貯鉱舎へ運ばれて貯留されるようになっている。そして、ベルトコンベア7a,7bの落ち口にはベルトコンベア7a,7bによって搬送されてくる銅精鉱からベルトコンベア7a,7bの全幅方向に移動させながらから所定量の1次サンプルのサンプリングを行う第一の縮分機であるカッタサンプラ20a,20bがそれぞれ配置されている。また、ベルトコンベア8の近傍には1次サンプルからさらに2次サンプルのサンプリングを行う第二の縮分機である2台のパイプ式試料採取器40a,40bが配置されている。また、ベルトコンベア7a,7bのそれぞれはロードセルを利用した図示しない計量装置を備えており、ベルトコンベア7a,7b上に載っている銅精鉱の重量を計測することができるようになっている。尚、搬送装置はベルトコンベアに限るものではない。
【0022】
また、ベルトコンベア8の上部にはカッタサンプラ20a,20bによってそれぞれサンプリングされた1次サンプルを仮置きするための仮受けホッパ30a,30bが設けられており、仮受けホッパ30a,30bに移載された1次サンプルからさらにパイプ式試料採取器40a,40bによって2次サンプルのサンプリングが行われるようになっている。そして、パイプ式試料採取器40a,40bによってサンプリングされた2次サンプルの重量(湿量)を測定する秤量器50a,50bと、を備えている。
【0023】
カッタサンプラ20a,20b、パイプ式試料採取器40a,40b及び仮受けホッパ30a,30bは、いずれもほぼ同様の構成を備えているので以下ではカッタサンプラ20a、パイプ式試料採取器40a及び仮受けホッパ30aについて説明を行うこととし、カッタサンプラ20b、パイプ式試料採取器40b及び仮受けホッパ30bについては符号「a」を符号「b」と読み替えることでその説明に代える。
【0024】
まず、第一のサンプリング装置であるカッタサンプラ20aは、
図3に示すように、ベルトコンベア7aの全幅方向(
図3における左右方向)に移動可能なカッタバケット21aを備えており、ベルトコンベア7aの落ち口においてベルトコンベア7aによって搬送されてくる銅精鉱5をベルトコンベア7aの全幅方向に移動しながら所定量の銅精鉱5をサンプリングする。カッタバケット21aはベルトコンベア7aの落ち口側に向けて図示しないスリット状の開口部を備えており、エアシリンダ22aによって所定の速度でベルトコンベア7aの全幅方向移動しながらこの開口部から所定量の銅精鉱5のサンプリングを行う。尚、サンプリングはベルトコンベア7a及びベルトコンベア8が稼働している状態で行われるのでカッタサンプラ20aによってサンプリングされなかった銅精鉱5はベルトコンベア8上に落下して随時移送される。尚、
図3ではカッタサンプラ20aを説明するためにパイプ式試料採取器40aは示していない。ベルトコンベア7aの落ち口にカッタバケット21aを配置したので重量の計測後、直ちに1次サンプリングを行うことができるので吸湿等によるサンプルの変質を防止することができる。
【0025】
また、ベルトコンベア8の上部側には仮受けホッパ30aが配置されており、カッタサンプラ20aによって1次サンプリングされた銅精鉱5は仮受けホッパ30aへ一旦移載される。1次サンプルを一旦仮受けホッパ30a,30bに移載することによりサンプルが押し固められ、それによってパイプ式試料採取器40a,40bによる2次サンプリングが行い易くなる。カッタバケット21aが空になったカッタサンプラ20aはエアシリンダ22aによって再び元の位置に戻り、次のサンプリングに備える。
【0026】
パイプ式試料採取器40aは、仮受けホッパ30aへ移載された銅精鉱5からさらに2次サンプルをサンプリングする装置であり、
図2に示すように、少なくとも先端側が中空状でその内部に所定量の銅精鉱5を収容可能な空間部を備えた2本で一対の円筒状のパイプ41a,42aを備えており、一対の円筒状のパイプ41a,42aは図示しない駆動機構により上下移動及びベルトコンベア8上の仮受けホッパ30a側へ向かって水平移動が可能に形成されている。上下移動の駆動機構としては、例えば、円筒状のパイプ41a,42aを上下方向に架け渡されたチェーンベルトに支持させることよって、また水平方向の移動機構としては、例えば、円筒状のパイプ41a,42aをベルトコンベア8側に横設されたフレーム45aに沿って移動可能に形成することができる。尚、円筒状のパイプ41a,42aの駆動機構はこれに限定されるものではなく適宜の機構を採用することができる。尚、2次サンプルの量は1次サンプルの容量に対して1/100~1/300であることが好ましい。2次サンプル量が多いと2次サンプリングの意味がなく、少なすぎると局所的に性状の異なる部分を採取するおそれがあるからである。本実施形態では1次サンプル約10リットルに対し2次サンプル一本のパイプ41aについて約0.04リットルを採取している。
【0027】
仮受けホッパ30aに移載された銅精鉱5からパイプ式試料採取器40aの一対の円筒状のパイプ41a,42aによって2次サンプリングされた所定量の銅精鉱5はベルトコンベア8の近傍に配置された秤量器50aによってその湿量が計測される。秤量器50aはいわゆる電子式秤量器であり、円筒状のパイプ41a,42aによってサンプリングされた銅精鉱5をそれぞれ個別のトレイ61a,61a上に載せた状態でその重量の計測が行われるようになっている。尚、秤量器50aは振動を軽減するための除振台を設けて配置することが好ましい。トレイ61a,61aはトレイ供給装置60aによって2列に順番に秤量器50aに向かって送り出される。尚、秤量器50aでの重量の計測は、初めにトレイ61a,61aを載せた状態でゼロ合わせをした後でパイプ式試料採取器40aによってサンプリングされた銅精鉱5をトレイ61a,61aに載せてその湿量の計測が行われる。また、次のサンプルも同じトレイ61a,61a上にそれぞれ載せられてその湿量の計測が行われる。秤量器50aにおける計測値(重量)は次々に積算されていくことになるが、計測された重量から当該サンプルを載せる前の重量を差し引くことで当該サンプルの重量を知ることができる。そして、湿量の計測が行われた銅精鉱5はトレイ61a,61a上にそれぞれ載せられて図示しない乾燥機によって乾燥されて乾量の計測が行われる。尚、重量の計測が終了したトレイ61a,61aは作業者によって集められて清掃された後次の計量に備えてトレイ供給装置60aに戻される。
【0028】
上述した装入設備は、2列に配置されたベルトコンベア7a,7bによって移送される銅精鉱5についてサンプリングを実施する。ベルトコンベア7aの全長に亘って銅精鉱5が載せられた状態で停止してこれをベルトコンベア7aに設けられた図示しない計量装置によって重量を計測しつつ、他方側のベルトコンベア7bでは銅精鉱5を移送しつつサンプリング装置10bによるサンプリングを行うように、銅精鉱5の搬送を停止することなく継続して行うことにより短時間でサンプリングを行う。なお、上述した装入設備ではベルトコンベア7a,7bは2列としたがこれに限らずそれ以上を並列して配置すると共にその数に合わせた数のカッタサンプラ20a,20b、パイプ式試料採取器40a,40b及び仮受けホッパ30a,30bを配置することはもちろん可能である。また、上述したように、秤量器50aによって重量(湿量)の計量が行われた2次サンプルは図示しない乾燥機に送られて乾燥され、水分が除去された後の重量が計測される。そして、乾燥前の重量と乾燥後の重量との差が乾燥減量として水分量が算出される。
【0029】
次に、一方のパイプ式試料採取器40aによる2次サンプリングを詳しく説明する。他方のパイプ式試料採取器40bによる2次サンプリングについては符号「a」を符号「b」と読み替えることでその説明に代える。
【0030】
上述した
図2(B)に示されるとおり、パイプ式試料採取器40aは、先端に開口部を有する中空状の空間部が形成された一対のパイプ41a,42aを備える。これら一対のパイプ41a,42aの各々は、その空間部に所定量の粉状又は粒状の銅精鉱5(本実施形態では「2次サンプル」と称している。)を収容可能である。このようなパイプ式試料採取器40aは、一対のパイプ41a,42aを上下方向及び水平方向へ移動する不図示の駆動機構と、秤量器50aのトレイ61a,62aの上方に配置される一対の円筒状のガイド73a,74aと、一対のガイド73a,74aを支持する支持台72aと、一対のパイプ41a,42aの基端側から先端側へと2次サンプルを押し出込むプッシャ(
図2(B)では不図示)などを備える。
【0031】
そして2次サンプリングでは、不図示の駆動機構が仮受けホッパ30a内の銅精鉱5へ一対のパイプ41a,42aの先端を差し込むことで2次サンプルを採取し、その後、一対のパイプ41a,42aを上方へ移動させ、さらに水平方向に移動させることにより、一対のパイプ41a,42aを秤量器50aの上方へ配置する。そして、不図示の駆動機構が一対のガイド73a,74aへ一対のパイプ41a,42aをそれぞれ挿入し、プッシャ(
図2(B)では不図示)でパイプ41a,42a内の2次サンプルを下方へ押し込むと、それら2次サンプルが一対のガイド73a,74aを介して秤量器50aのトレイ61a,62aへ向かけて排出される。なお、ガイド73a,74aの各々の内部には、例えば、ステンレス製のカッタ刃71a(
図4参照)が設けられている。カッタ刃71aの詳細については後述する。
【0032】
次に、一方のガイド73aの構成について説明する。他方のガイド74aの構成も同様であるのでその説明を省略する。
【0033】
図5(A),(B)はガイドへ挿入される途中におけるパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図及びカッタ刃を横切るようにして切断した断面図、
図6(A),(B)はガイドへ挿入されたパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図及びカッタ刃を横切るようにして切断した断面図、
図7(A),(B)はプッシャが挿入されたパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図及びカッタ刃を横切るようにして切断した断面図、
図8(A),(B)は2次サンプルを排出したパイプをカッタ刃に沿って切断した断面図及びカッタ刃を横切るようにして切断した断面図である。
【0034】
これら
図5~
図8に示されるとおり、ガイド73aは、パイプ41aの先端側が挿入される挿入部73bを備えており、挿入部73bのほぼ中央にはパイプ41aの先端側の開口面を横断するようにしてカッタ刃71aが配置されている。そして、パイプ41aの空間部に収容された2次サンプルS2をプッシャ75aで押し出す際(
図7~
図8)に、カッタ刃71aによって当該2次サンプルS2を半切り状にカットすることができるようになっている。また、カッタ刃71aの先端が水平にカットされたような状態である場合にはカッタ刃71aの厚みによって形成される上端部に2次サンプルS2が堆積してサンプリングの精度が損なわれるおそれがある。そのため、カッタ刃71aの頂部は2次サンプルS2が堆積しないように、例えば、鋭角状とされている(
図4(A),(B))。このように、カッタ刃71aの上端部を鋭角状とすることにより、当該上端部における2次サンプルS2の堆積を防止できるほか、2次サンプルS2の半切りをスムーズに行えるという効果もある。
【0035】
カッタ刃71aの上端部の断面形状は、
図4(A)に示すようなセンター刃状であってもよいし、
図4(B)に示すような片切刃状であってもよい。また、カッタ刃71aの上端部の形状は、鋭角状以外の形状、例えば
図4(C)に示すような滑らかな曲面形状とすることもできる。いずれの場合においてもカッタ刃71aの上端部の形状は、2次サンプルが堆積しにくいように先細りになっていることが望ましい。
【0036】
ここで、各部のサイズは、一例として以下のように設定することができる。
パイプ41aの内径φ1:35mm
ガイド73aの内径φ2:80mm
ガイド73の上端からカッタ刃71aの上端までの距離L1:135mm
カッタ刃71aの押し出し方向と直交する方向の厚さt:1~2mm
カッタ刃71aの長さL2:95mm
カッタ刃71aの幅W:15mm
ガイド73aへ挿入された状態でのパイプ41aの先端からカッタ刃71aの上端までの間隙d:1mm
パイプ41aによる2次サンプリングの繰り返し回数:25
【0037】
因みに、カッタ刃71aの厚さt(
図5(B))が3mm以上になると2次サンプルS2のカットに失敗する可能性があることが実験により判明している。また、カッタ刃71aの代わりにワイヤー(ピアノ線)を用いた場合には、耐久性の面でカッタ刃71aよりも劣ることが実験により判明している。また、パイプ41aの先端からカッタ刃71aの上端までの間隙d(
図6(A))が狭いほどカットがうまくいくことが実験により判明しているので上記の例では間隙dは1mmにまで狭めている。
【0038】
以上の本実施形態に係る2次サンプリングでは、パイプ41aの空間部に収容された2次サンプルS2をプッシャ75aで押し出す際に、当該2次サンプルS2が自動的に半切り状にカットされる(
図7,
図8)。そして、パイプ41aによる2次サンプリングは所定の原料(ここでは銅精鉱5)に対して複数回繰り返し行われるので、トレイ61aは繰り返し回数分だけ2次サンプルS2を収容する必要がある。
【0039】
従来は、2次サンプリングの回数が高まるにつれて2次サンプルS2がトレイの上で積み重なるなどしてトレイ61aから2次サンプルS2が外へ落鉱する可能性が高かった(
図9)。しかしながら、本実施形態では、2次サンプルS2が
図8(B)に示すとおり半切り状にカットされ、カットされた半切り状のサンプルS2’,S2’はトレイ61aへ落下した際の衝撃で崩れやすくなっているので、サンプルS2’,S2’の全体はトレイ61a内で容易に解砕されて平坦化されることとなる(
図10)。よって、本実施形態の2次サンプリングによれば、パイプ式試料採取器40aで採取したサンプルS2の秤量を秤量器50aで安定的かつ正確に行うことができる。
【0040】
しかも、本実施形態の2次サンプリングによれば、2次サンプルS2をカットする処理は、2次サンプルS2をパイプ41aから押し出す処理と並行して実行されるので、2次サンプルS2の採取から秤量までに要する時間の増加を伴わず、効率的である。
【0041】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。例えば、上述した実施形態では、ガイド73aに設置されるカッタ刃71aの枚数を1としたが、複数とすることもできる。但し、複数枚のカッタ刃71aを1つのガイド73aに配置する場合には、複数枚のカッタ刃71aが互いに交差しないようにする(例えば複数のカッタ刃71aを平行に設置する)ことが好ましい。なぜなら、交差部が存在するとその交差部の上端に2次サンプルが堆積し易いからである。一のガイド73a内のカッタ刃71aの数を複数にすれば、サンプルS2が3つ以上にカットされるので、サンプルS2をさらに解砕させ易くなるという効果がある。
【符号の説明】
【0042】
1 装入設備
5 銅精鉱
6 ベルトコンベア
7a,7b ベルトコンベア
8 ベルトコンベア
9 ベルトコンベア
20a,20b カッタサンプラ
30a,30b 仮受けホッパ
40a,40b パイプ式試料採取器
50a,50b 秤量器
41a,42a パイプ
61a,62a トレイ
71a カッタ刃
72a 支持台
73a ガイド
73b 挿入部
74a ガイド
75a プッシャ
S2 2次サンプル
S2’ 半切り状にカットされた2次サンプル