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  • 特許-切削加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】切削加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23C 1/12 20060101AFI20230124BHJP
   B23C 3/12 20060101ALI20230124BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B23C1/12
B23C3/12 Z
G02B5/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020561249
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046501
(87)【国際公開番号】W WO2020129565
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2018239898
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594002288
【氏名又は名称】株式会社BBS金明
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中市 誠
(72)【発明者】
【氏名】仲井 宏太
(72)【発明者】
【氏名】坂口 重雄
(72)【発明者】
【氏名】淺川 岳
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260164(JP,A)
【文献】特開2012-203209(JP,A)
【文献】実開昭60-036115(JP,U)
【文献】特開2014-161941(JP,A)
【文献】特開2018-171674(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107443454(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/12
B23C 3/12
B23C 5/26
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを複数枚重ねたワークの外周面を切削加工する切削加工装置であって、
装置本体と;
エンドミル刃と、該エンドミル刃を回転自在に両端部で保持するホルダーと、該ホルダーが取り付けられたユニット本体と、を有する切削ユニットと;
該切削ユニットの傾斜を調整するよう構成された傾斜調整機構と;
を備え
前記傾斜調整機構が、前記装置本体に回動可能に取り付けられた機構本体と;該機構本体に軸支され、かつ、前記切削ユニットのユニット本体に連結されたコネクティングロッドと;該機構本体の傾斜量を調整する傾斜量調整マイクロメーターと;該傾斜量調整マイクロメーターで調整した傾斜量まで該機構本体を傾斜させる第1の調整ナットと;該機構本体を該調整された傾斜量で傾斜した状態で固定する第2の調整ナットと;を有する、切削加工装置。
【請求項2】
前記傾斜調整機構が、前記エンドミル刃の上部が前記ワークに近づき下部が該ワークから遠ざかる第1の方向、および、該エンドミル刃の上部が該ワークから遠ざかり下部が該ワークに近づく第2の方向からなる群から選択される1つの方向に、前記切削ユニットを傾斜させるよう構成されている、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項3】
前記傾斜調整機構が、前記切削ユニットの傾斜量を-1°~+1°の範囲内で調整可能に構成されている、請求項1または2に記載の切削加工装置。
【請求項4】
前記切削ユニットのユニット本体が、前記装置本体に回動可能に取り付けられている、請求項1からのいずれかに記載の切削加工装置。
【請求項5】
前記フィルムが粘着剤層を含む光学積層体であり、
前記ワークは、前記光学積層体を複数枚重ねたものである、請求項1からのいずれかに記載の切削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムを複数枚重ねたワークの端面を切削加工する装置が知られている。例えば、特許文献1によれば、本体に片持ち状態で保持された(すなわち、一方の端部のみが保持された)エンドミル刃でワークの端面を切削加工する装置が提案されている。近年、ワークの端面の加工には、高い精度が求められるようになってきている。特許文献1に記載のような片持ちのエンドミル刃を含む切削加工装置ではエンドミル刃が撓み所望の加工精度が得られない場合が多いので、両持ちの(すなわち、両端部が保持された)エンドミル刃を含む切削加工装置が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6277150号
【文献】特開2007-044855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンドミル刃を用いたワーク端面の切削加工においては、エンドミル刃がワーク端面に対してわずかでも傾くと、所望の精度での加工が困難となる場合が多い。例えば、ワークの長辺を直線状に加工することが所望される場合に、当該長辺方向の中央部が膨らむように加工されてしまう;および、ワーク上部のフィルムとワーク下部のフィルムの加工後の寸法が異なる;といった問題がある。このような問題は、特に、粘着剤層を含むフィルム(例えば、光学フィルム)の切削加工において顕著である。このような問題を解決するためには、エンドミル刃の傾斜を調整する必要がある。片持ちの切削刃を含む切削加工装置においては、切削刃の傾斜の調整は比較的容易である(特許文献2)。一方、両持ちのエンドミル刃を含む切削加工装置においては、エンドミル刃の傾斜の調整は、シム等を用いて熟練者の勘やコツに頼る作業により行われており、きわめて煩雑で長時間を要する。さらに、このようなシムを用いる作業は、エンドミル刃に過大な負荷がかかるおそれがあり、エンドミル刃が折れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、両持ちで保持されたエンドミル刃を含む切削加工装置であって、当該エンドミル刃の傾斜を容易に調整することができる切削加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の切削加工装置は、フィルムを複数枚重ねたワークの外周面を切削加工する切削加工装置である。切削加工装置は、装置本体と;エンドミル刃と、該エンドミル刃を回転自在に両端部で保持するホルダーと、該ホルダーが取り付けられたユニット本体と、を有する切削ユニットと;該切削ユニットの傾斜を調整するよう構成された傾斜調整機構と;を備える。
1つの実施形態においては、上記傾斜調整機構は、上記エンドミル刃の上部が上記ワークに近づき下部が該ワークから遠ざかる第1の方向、および、該エンドミル刃の上部が該ワークから遠ざかり下部が該ワークに近づく第2の方向からなる群から選択される1つの方向に、上記切削ユニットを傾斜させるよう構成されている。
1つの実施形態においては、上記傾斜調整機構は、上記装置本体に回動可能に取り付けられた機構本体と;該機構本体に軸支され、かつ、上記切削ユニットのユニット本体に連結されたコネクティングロッドと;該機構本体の傾斜量を調整する傾斜量調整マイクロメーターと;該傾斜量調整マイクロメーターで調整した傾斜量まで該機構本体を傾斜させる第1の調整ナットと;該機構本体を該調整された傾斜量で傾斜した状態で固定する第2の調整ナットと;を有する。
1つの実施形態においては、上記傾斜調整機構は、上記切削ユニットの傾斜量を-1°~+1°の範囲内で調整可能に構成されている。
1つの実施形態においては、上記切削ユニットのユニット本体は、上記装置本体に回動可能に取り付けられている。
1つの実施形態においては、上記フィルムは粘着剤層を含む光学積層体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、両持ちで保持されたエンドミル刃を含む切削加工装置において特定の傾斜調整機構を設けることにより、当該エンドミル刃の傾斜を容易に調整することができる切削加工装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による切削加工装置の概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態による切削加工装置に用いられるエンドミル刃の一例を示す概略斜視図である。
図3図1の切削加工装置の切削ユニットを第1の方向に傾斜させた状態を示す概略側面図である。
図4図1の切削加工装置の切削ユニットを第2の方向に傾斜させた状態を示す概略側面図である。
図5】実施例1および比較例1で用いたワークの加工形状を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、見やすくするために図面は模式的に表されており、さらに、図面における長さ、幅、厚み等の比率、ならびに角度等は、実際とは異なっている。
【0010】
図1は、本発明の1つの実施形態による切削加工装置の概略斜視図である。図示例の切削加工装置100は、装置本体10とエンドミル刃31を含む切削ユニット30と傾斜調整機構50とを備える。図示例においては、切削加工装置100の右側にワークWが示されている。ワークWは、フィルムが複数枚重ねられて形成され、図示例においてはクランプ手段により押圧されている。このような構成において本発明の効果が顕著となり得る。すなわち、ワークをクランプ手段により押圧する構成においては、ワークの端面とエンドミル刃が平行になりにくいので、切削開始前にワークの端面に対するエンドミル刃の傾斜を確認して、エンドミル刃の傾斜調整が必要となる。本発明の実施形態によれば、このような場合におけるエンドミル刃の傾斜調整が従来に比べて格段に容易となる。
【0011】
切削ユニット30は、エンドミル刃31と、エンドミル刃31を回転自在に両端部で保持するホルダー32aおよび32bと、ホルダー32aおよび32bが取り付けられたユニット本体33と、を有する。このように、本発明の切削加工装置は、ユニット本体33に両持ち状態で保持されたエンドミル刃を含む。このような構成であれば、エンドミル刃の撓みを抑制することができ、高精度の切削加工が可能となる。さらに、このような構成であれば、切削時にエンドミル刃にかかる応力を低減することができる。その結果、エンドミル刃の耐久性を向上させることができ、したがって、エンドミル加工の安定性および信頼性を向上させることができる。
【0012】
ユニット本体33は、代表的には、鉛直方向に延びる基体33aと、基体の上部に取り付けられて水平方向に延びる上板33bと、基体の下部に取り付けられて水平方向に延びる下板33cと、を有する。上板33bおよび下板33cに、ホルダー32aおよび32bがそれぞれ取り付けられている。基体33aは、代表的には、装置本体10方向に突出部を有する天地逆転した逆L字状の形状を有し、突出部において装置本体10に回動可能に枢支されている。このような構成であれば、後述する傾斜調整機構50の作用によって、枢支部分34を支点(軸)として時計回りまたは反時計回りに基体33aを回動させ、結果として、切削ユニット33(実質的には、エンドミル刃31)を傾斜させることができる。より具体的には、枢支部分34を支点(軸)として基体33aを時計回りに回動させることにより、エンドミル刃31の上部がワークに近づき下部がワークから遠ざかる方向(以下、第1の方向と称する場合がある)に切削ユニットを傾斜させることができ;枢支部分34を支点(軸)として基体33aを反時計回りに回動させることにより、エンドミル刃31の下部がワークに近づき上部がワークから遠ざかる方向(以下、第2の方向と称する場合がある)に切削ユニットを傾斜させることができる。
【0013】
エンドミル刃31としては、任意の適切な構成が採用され得る。エンドミル刃31は、例えば図2に示すように、鉛直方向に延びる回転軸31aを中心として回転する本体31bと、本体31bから突出し最外径として構成される切削刃31cと、を有する。切削刃31cは、代表的には、刃先31dとすくい面31eと逃がし面31fとを含む。エンドミル刃の刃角度は目的に応じて適切に設定され得る。エンドミル刃の刃角度は0°であってもよく(刃先が回転軸と実質的に平行な方向に延びていてもよく)、図示例のように刃先が回転軸に対して所定の角度θねじれていてもよい。エンドミル刃の刃数も目的に応じて適切に設定され得る。刃数は、1枚であってもよく、2枚であってもよく、図示例のように3枚であってもよく、4枚であってもよく、5枚以上であってもよい。エンドミル刃の外径も目的に応じて適切に設定され得る。1つの実施形態においては、エンドミルの外径は、好ましくは3mm~30mmであり、より好ましくは4mm~10mmである。なお、本明細書において「エンドミルの外径」とは、回転軸から1つの刃先までの距離を2倍したものをいう。
【0014】
傾斜調整機構50は、代表的には、装置本体10の切削ユニット30と反対側に設けられる。傾斜調整機構50は、代表的には、機構本体51と、コネクティングロッド52と、第1の調整ナット53と、第2の調整ナット54と、傾斜量調整マイクロメーター55と、を有する。機構本体51は、垂直方向に延びる板状部材であり、装置本体10の突出部において装置本体10に回動可能に枢支されている。コネクティングロッド52の一端は、機構本体51の下端部近傍において機構本体51に軸支されている。コネクティングロッド52の他端は、切削ユニット33のユニット本体33(実質的には、下板33cの装置本体側)に連結されている。コネクティングロッド52は、装置本体10の外側に設けられてもよく、装置本体10を摺動自在に貫通していてもよい。第1の調整ナット53は、代表的には、コネクティングロッド52に対して機構本体の枢支部分58の反対側に設けられ、機構本体51を所望の位置(距離)まで傾斜させる機能を有する。第2の調整ナット54は、代表的には、機構本体の第1の調整ナット53と反対側に設けられ、所望の位置まで傾斜した機構本体51を当該位置で固定する機能を有する。傾斜量の調整は以下のようにして行われる。最初に第1の調整ナット53および第2の調整ナット54の両方を緩めて、機構本体51の上部(傾斜量調整マイクロメーター55側)を装置本体から離す。次に、傾斜量調整マイクロメーター55の目盛を回して、基準(ゼロ点)から所望の距離(機構本体の傾斜量または傾斜角度に対応する)に目盛を設定する。これにより、傾斜量調整マイクロメーター55の先端部分(当接部56側)の突出量が変化する。目盛の調整に応じて、当該先端部分の突出量は、当接部側に大きくまたは小さくなる。目盛の設定後、第1の調整ナット53を締めて、傾斜量調整マイクロメーター55の先端部分と当接部56とを当接させる。その結果、機構本体が所望の傾斜量(傾斜角度)で傾斜する。この状態で第2の調整ナット54を締めることにより、機構本体51を固定することができ、切削加工時の負荷や振動によっても傾斜量が変化しないようにすることができる。
【0015】
次に、切削ユニット33の傾斜について具体的に説明する。図3は、図1の切削加工装置の切削ユニットを第1の方向に傾斜させた状態を示す概略側面図である。図3に示すように、マイクロメーター55の目盛を所定値に設定し、マイクロメーター55の先端部分の突出量を小さくして当接部56に当接させることにより、機構本体51が枢支部分58を支点(軸)として時計回りに回動し、機構本体の上部が本体側に傾斜する。ここで、枢支部分(機構本体の回動軸)58とコネクティングロッド52とその軸受け部分57とがいわゆるクランク機構を構成し、機構本体51の回動により、機構本体の下端部近傍に軸支されたコネクティングロッド52が装置本体10の傾斜機構側に移動する。コネクティングロッド52の移動により、コネクティングロッド52が連結した切削ユニット33の下板33cを介して基体33aが枢支部分34を支点(軸)として時計回りに回動し、切削ユニット33が上記第1の方向(エンドミル刃31の上部がワークに近づき下部がワークから遠ざかる方向)に傾斜する。
【0016】
図4は、図1の切削加工装置の切削ユニットを第2の方向に傾斜させた状態を示す概略側面図である。図4の実施形態は、図3の実施形態とは逆方向に切削ユニット33を傾斜させる。そのメカニズムは、方向が逆であることを除けば図3の場合と同様である。すなわち、マイクロメーター55の目盛を所定値に設定し、マイクロメーター55の先端部分の突出量を大きくして当接部56に当接させることにより、機構本体51が枢支部分58を支点(軸)として反時計回りに回動し、機構本体の上部が本体と反対側に傾斜する。その結果、コネクティングロッド52が装置本体10の切削ユニット側に移動する。コネクティングロッド52の移動により、コネクティングロッド52が連結した切削ユニット33の下板33cを介して基体33aが枢支部分34を支点(軸)として反時計回りに回動し、切削ユニット33が上記第2の方向(エンドミル刃31の下部がワークに近づき上部がワークから遠ざかる方向)に傾斜する。
【0017】
上記のとおり、傾斜量調整マイクロメーター55を用いて機構本体51の傾斜量を調整することができ、機構本体51の傾斜量に対応して切削ユニット33の傾斜量を調整することができる。すなわち、傾斜調整機構50(実質的には、機構本体51)の傾斜量を調整することにより、切削ユニット33の傾斜量を調整することができる。切削ユニット33の傾斜量は、鉛直方向に対して、1つの実施形態においては-1°~+1°の範囲内で調整可能であり、別の実施形態においては-0.5°~+0.5°の範囲内で調整可能であり、さらに別の実施形態においては-0.3°~+0.3°の範囲内で調整可能である。本発明の実施形態によれば、上記のような構成においてマイクロメーターを用いることにより、このような微細な傾斜量の調整を勘やコツに頼ることなく、かつ、短時間で行うことができる。さらに、このような微細な調整により、切削加工の精度を格段に向上させることができる。例えば、ワークの長辺を直線状に加工することが所望される場合に、当該長辺方向の中央部が膨らむように加工されてしまう;および、ワーク上部のフィルムとワーク下部のフィルムの加工後の寸法が異なる;といった問題を防止することができる。加えて、切削加工時にエンドミル刃に過大な負荷がかかることを抑制することができ、結果として、切削加工の安定性およびエンドミル刃の耐久性を向上させることができる。
【0018】
本発明の切削加工装置は、代表的には、フィルムを複数枚重ねたワークの外周面の切削加工に用いられる。切削加工は、1つの実施形態においては非直線加工(異形加工)を含む。切削加工されるフィルムとしては、任意の適切なフィルムが挙げられる。切削加工されるフィルムの代表例としては、粘着剤層を含む光学積層体(すなわち、粘着剤層と光学フィルムとの積層体)が挙げられる。本発明の切削加工装置は、粘着剤層を含む光学積層体であっても、糊欠けおよび/またはブロッキングを良好に抑制し、かつ、光学積層体の光学特性に悪影響を与えることなく、切削加工を行うことができる。光学フィルムは、単一のフィルムであってもよく積層体であってもよい。光学フィルムの具体例としては、偏光子、位相差フィルム、偏光板(代表的には、偏光子と保護フィルムとの積層体)、タッチパネル用導電性フィルム、表面処理フィルム、ならびに、これらを目的に応じて適切に積層した積層体(例えば、反射防止用円偏光板、タッチパネル用導電層付偏光板)が挙げられる。したがって、本発明の切削加工装置は、最終的には、光学フィルムの製造方法に好適に用いられ得る。
【実施例
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【0020】
<実施例1>
図1のような傾斜調整機構を有する切削加工装置を用いて、図5に示すような形状となるようワークを切削加工した。なお、ワークにおける番号1~5は、ワークを厚み方向に5等分した5つの部分について上から順に番号付けしたものである。切削加工装置のセッティングを行わずに切削加工したところ、加工後の部分1~5の寸法の差が管理値を満たしていなかった(部分1~5の寸法の差の最大値が所定の設定値を超えていた)ので、傾斜調整機構のマイクロメーターを用いて部分1~5の寸法の差が小さくなる方向に切削ユニット(実質的には、エンドミル刃)の傾斜を調整した。エンドミル刃の傾斜の調整後に切削加工したところ、加工後の部分1~5の寸法の差は管理値を満たした(部分1~5の寸法の差の最大値が所定の設定値の範囲内であった)。このように、エンドミル刃の傾斜の調整を1回行っただけで、切削加工装置のセッティングが完了した。傾斜調整に要した時間は約40分であった。すなわち、切削加工装置のセッティングに要した時間は約40分であった。
【0021】
<比較例1>
傾斜調整機構を有さないこと以外は図1と同様の切削加工装置を用いて、図5に示すような形状となるようワークを切削加工した。切削加工装置のセッティングを行わずに切削加工したところ、加工後の部分1~5の寸法の差が管理値を満たしていなかった(部分1~5の寸法の差の最大値が所定の設定値を超えていた)ので、シムを用いて熟練者の勘やコツに頼る作業により切削ユニット(実質的には、エンドミル刃)の傾斜を調整した。この傾斜調整後に切削加工したところ、加工後の部分1~5の寸法の差がいまだ管理値を満たしていなかったので、ワークとエンドミル刃との距離の調整を行った。距離の調整後に切削加工したところ、加工後の部分1~5の寸法の差がいまだ管理値を満たしていなかったので、シムを用いた熟練者の勘やコツに頼る作業により2回目の傾斜調整を行った。2回目の傾斜調整後に切削加工したところ、加工後の部分1~5の寸法の差がそれでも管理値を満たしていなかったので、上記と同様にして3回目の傾斜調整を行った。3回目の傾斜調整後にようやく管理値を満たすことができた。このように、切削加工装置のセッティングに、傾斜調整3回および距離調整1回を要した。1回の傾斜調整に要した時間は約70分であり、距離調整に要した時間は約30分であった。すなわち、切削加工装置のセッティングに要した時間は約240分であった。
【0022】
実施例1と比較例1との比較から明らかなように、両持ちで保持されたエンドミル刃を含む切削加工装置において特定の傾斜調整機構を設けることにより、当該エンドミル刃の傾斜を容易に調整することができる。結果として、切削加工を所定の精度で行うための切削加工装置のセッティングに要する時間を大幅に短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の切削加工装置は、フィルムを複数枚重ねたワークの外周面の切削加工に用いられ得、粘着剤層を含む光学積層体の切削加工に特に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0024】
10 装置本体
30 切削ユニット
31 エンドミル刃
32a ホルダー
32b ホルダー
33 ユニット本体
50 傾斜調整機構
51 機構本体
52 コネクティングロッド
53 第1の調整ナット
54 第2の調整ナット
55 傾斜量調整マイクロメーター
100 切削加工装置
図1
図2
図3
図4
図5