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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】燃料電池の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20230124BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20230124BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230124BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M4/88 K
H01M8/10 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021212007
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2021018877の分割
【原出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2022031474
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】510009832
【氏名又は名称】エムテックスマート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142897(JP,A)
【文献】特開2018-022663(JP,A)
【文献】特開2013-161557(JP,A)
【文献】特開2006-116816(JP,A)
【文献】特開2019-149256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10
H01M 4/86
H01M 4/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の製造装置であって、燃料電池用の長尺の電解質膜を連続的または間欠的に移動して電解質膜の少なくとも片側に電極インクをスロットノズルで塗布し電極を形成する製造装置であって、電極インクを塗布した電解質膜を加熱し吸着する加熱吸着ロール、前記加熱吸着ロールの上流に設けられる小径ロールであって、前記加熱吸着ロールに近接して配置され、前記加熱吸着ロールより小径の少なくとも一つの小径ロールと、を備える燃料電池の製造装置において、前記スロットノズルは、前記小径ロール上と加熱吸着ロールに前記電解質膜が接するまでとの間で前記電解質膜に電極インクを塗布する燃料電池の製造装置
【請求項2】
前記加熱吸着ロールが加熱ロールであって、前記電解質膜に20乃至80ニュートンの張力をかけながら移動することを特徴とする請求項1の燃料電池の製造装置
【請求項3】
前記加熱吸着ロールが加熱吸着ベルトであることを特徴とする請求項1の燃料電池の製造装置
【請求項4】
前記小径ロールの前後の電解質膜に20乃至80ニュートンの張力をかけ、前記小径ロールの前後のオフロール上で電極インクを塗布することを特徴とする請求項1乃至3の燃料電池の製造装置
【請求項5】
前記スロットノズルがエアアシストスロットノズルまたはミスト噴出スリットノズルであって電解質膜とノズルヘッドの距離を0乃至10ミリメートルに設定することを特徴とする請求項1の燃料電池の製造装置
【請求項6】
前記加熱吸着ロールまたは加熱ロールの真円度が±50マイクロメートル以下であって、前記加熱吸着ロールまたは加熱ロールに電解質膜が接触する直前のオフロール上で電極インクを塗布することを特徴とする請求項1または2の燃料電池の製造装置
【請求項7】
前記電解質膜の両面に所望するパターンの電極が形成され、前記電極が加熱吸着ロール上で吸引されないように、巻き取りの際、電極どうしが接触することがないように少なくとも一つの保護基材を介在させ、該保護基材は通気性を持つことを特徴とする請求項1または5の燃料電池の製造装置
【請求項8】
張力をかけたバックシート付電解質膜が加熱吸着ロールに接するまでの間にアノード極インクをスロットノズルで塗布し乾燥し、次いでカソード極インクを粒子または繊維状にして塗布する燃料電池の製造装置であって、反転した電極面を通気性基材と接触させ、前記通気性基材を介して電解質膜を吸引する加熱吸着ロールと、前記電解質膜に積層されているバックシートを剥離する手段と、アノード極の反対側にカソード極の触媒を含む電極を形成する手段と、を備えることを特徴とする燃料電池の製造装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に液体の液膜で長尺の被塗物に塗布する業界でスロットダイ、スリットダイ、スロットノズル等呼ばれるヘッドによる塗布方法に係る。例えば燃料電池、特にPEFC(Polymer Electrolyte membrane Fuel Cell)型燃料電池の電極形成方法、及びその方法により製造されたMEA(膜電極アッセンブリー)及び燃料電池を含む。
被塗物の材質、形状や塗布する材料等は特に限定するものではないが、MEAのCCM( Catalyst coated membrane)式電解質膜・電極形成方法等に応用するために電解質膜に電極インクを直接スロットノズルにより塗布し電極を形成すると生産性の面で特に効果的である。
【背景技術】
【0002】
従来、電解質膜にアイオノマーの一種である電解質溶液と、カーボン粒子やカーボン繊維に担持した白金等とからなる微粉を混合し電極触媒インクとしてGDL(Gas diffusion layer)に塗布して電解質膜に圧着したり、PTFEなどの離形フィルムに塗布して電解質膜に転写したりしていた。前記圧着方法や転写方式は液体が介在しないため電解質膜と電極に間抵抗が生じ燃料電池の性能を落としていた。それを解決する為CCM方式の電極触媒インクを電解質膜に直接塗布する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1は本発明者により発明された方法であって、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)用の電解質膜を巻き出して加熱した吸着ドラムや吸着ベルトに吸着した状態で電極インクをスプレイ等により積層塗布し乾燥させる方法が提案されている。吸着ドラムなどの加熱により電解質膜が吸着加熱された状態でスプレイ等により薄膜で積層されるのでスプレイ粒子は電解質膜に塗着しレベリングした瞬間に溶媒が瞬時に揮発する。そのため電解質にダメージを与えずまた密着性がたかまるので電極と電解質膜の界面抵抗が極限まで低くできるので理想的なCCMが形成できる。また吸着ドラムと電解質の間に電解質膜より幅の広い通気性の紙を介在させて電解質膜を吸引するので吸着ドラムなどの多孔体の吸着痕を残さないようにして電解質膜面全体を均一に吸引する提案もなされている。
【0004】
特許文献2も本発明者により発明された方法であってロール・ツー・ロール(Roll to Roll)用の電解質膜の両面に電極形状のマスクとしてのフィルムを貼り合わせたて電極形状の凹部を形成し、それを巻き出して加熱した吸着ロールや吸着ベルトで吸着しながら電極インクを積層塗布して巻き取る方法が提案されている。この方法においても電極インクを塗布する際は通気性基材を介して電解質膜を加熱した吸着ドラムなどで吸引しながら電極インクを塗布することを推奨している。
【0005】
CCM方式は理想的であるが、電解質膜は湿気などに敏感であり電極触媒インクを塗布すると一瞬にして変形するナフィオン膜などもある為、前述のように加熱吸着ベルトや加熱吸着ロールなどに電解質膜を吸着させて変形しないようにして移動しながらスプレイノズルやスロットノズルなどで塗布する試みがなされている。スプレイは所望する電極パターンを得るためにはマスクが必須であったし、生産スピードを上げる点で難があった。
スロットノズルは生産スピードを上げるために効果的であるが加熱吸着ロール上に配置する「ONロール」では以下の問題があった。電極インクはカーボンに担持された白金と、アイオノマーと、水とアルコール系の溶媒等で構成されるため、加熱ロールを100℃程度以上にすると対面に電解質膜を介してある加熱していないスロットノズル先端は温度差で塗布された電極インクの水や溶媒蒸気等で結露が発生し塗布面に悪影響を与えていた。
それを防ぐためノズルを含めた装置を加熱する方法があるがスロットノズルの温度が高いとノズル先端が乾燥しやすく、ノズル開口部に皮張りが発生し電極インクの吐出が不安定になる傾向にあった。
また室温で真円度を数ミクロン以下に研磨装置で研磨した吸着ロールであっても加熱すると複雑な構造故ロールは大きくたわみ変形して真円度が極めて悪かった。
昨今の求められる電極触媒量はアノード極で平方センチメートル当たり0.15mg以下、カソード極で0.3mg以下と極めて少なく、白金触媒の比重は20以上あるため膜厚的には薄くなる。
また白金を担持するカーボンとの比率も白金:カーボンが5:5更には7:3となってきているのでアイオノマーを含めたドライ膜厚は実質1マイクロメートル以下と極めて薄く、固形分が10パーセントの場合ウエット膜厚でも10マイクロメートル以下と極めて薄い膜厚になる。
加熱吸着ロールが変形すると、液膜を介して接触するスリットノズルやスロットノズルあるいはスロットダイと呼ばれる方法で行うとノズル先端と電解質膜との距離が変化し距離が離れ過ぎる箇所が発生する課題があった。そのような現象が起きると電極インクの塗布量は極めて少ないため、電極インクを薄膜で塗布する関係からノズル先端と電解質膜の距離が離れた個所ではうろこ状のポーラスの塗布面になり均一な塗布を得ることは極めて困難であった。
その課題を解決するために本発明者等により発明された特開2010-149257ではアプリケーション温度に加熱した状態で吸着ロール表面を研磨し真円度を5ミクロン以下にできる方法として提案されている。しかしこの方法ではロール温度を変更するたびに研磨が必要とされ作業性が極めて悪かった。
また常温や冷却して吸着ロールを研磨したと推定さる特開2015-15258では電解質膜を吸着するロールを冷却して電極インクを電解質膜にスリットノズルで塗布し、ロールを回転移動して冷却ロールに吸着された電解質膜上の電極インクを後工程で熱風や赤外線で加熱する方法が提案されている。
しかしこの方法では塗布後、冷却から加熱乾燥までの時間、例えばナフィオン膜などは電解質膜の界面ではソルベントショック溶媒によるダメージがあることが予想できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-351413
【文献】特開2005-63780
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、加熱吸着ロールは真円度を追求せず、電解質膜に塗布された電極インクを急速に変形なく乾燥させる手段とする。そのため真円度に重点を置かないため、製造コストを極限までさげることができる。一方スロットノズル先端の真直度は研磨装置で研磨することにより室温で5ミクロン以下更には2ミクロン以内にすることは業界の常識であるのでスロットノズルを室温で使用し加熱吸着ロールまたは加熱ロールの熱の影響が少ないようにすることが肝要である。
また小径ロール例えば直径200ミリメートル以下の室温での真円度も研磨装置で研磨することにより数ミクロン以下に抑えることができる。一方内部構造がシンプルな小径ロールは加熱しても真円度を数ミクロン以下にできるので2次電池の電極の圧着ロールとして使用されている。
そのためこれらの小径ロールを活用して直径が200ミリメートル以上の大径加熱吸着ロールまたは250ミリメートル以上の加熱ロールと組み合わせ、ONロールまたはOFFロール上にスロットノズルを設置して電解質膜とスロットノズル先端の距離を高精度に保持しながら電極インクをパターンコーティングできるようにする。
電解質膜は通常キャスティング工法で製造されるため支持基材のバックシートがあるため片方の電極形成のための塗布は電解質膜を変形させることなくスプレイでもスロットノズルでも塗布できる。しかし電解質膜は25ミクロン以下更には15ミクロン以下と薄くまた引っ張ると伸びがあり、上記のごとく空気中の水分で簡単に変形する極めてデリケートな基材もあるため反対面の電極形成は極めて難しく、また電解質膜の両サイドに電極形成された電解質膜を巻き取ることは極めて難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は高品質で耐久性のあるPEFC型燃料電池用膜・電極の製造方法とCCMあるいはMEAを高速生産し大量に提供することである。
より具体的にはロール・ツー・ロール(Roll to Roll)の電解質膜に直接電極インクを塗布し高性能の膜・電極アッセンブリーを製造し、ひいては高性能の燃料電池を製造することにある。
【0009】
本発明は燃料電池用の長尺の電解質膜を連続的または間欠的に移動して電解質膜の少なくとも片側に電極インクをスロットノズルで塗布し電極を形成する方法であって、電極インクを塗布した電解質膜を加熱し吸着する加熱吸着ロールを設ける工程と、前記加熱吸着ロールの上流に加熱吸着ロールに近接して前記加熱吸着ロールより小径の少なくとも一つのロールを設ける工程と、
前記小径ロール上と加熱吸着ロールに前記電解質膜が接するまでとの間でスロットノズルをもって電極インクを塗布する工程とからなることを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0010】
本発明は前記加熱吸着ロールが加熱ロールであって、前記電解質膜に20乃至80ニュートンの張力をかけながら移動することを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0011】
本発明は前記加熱吸着ロールが加熱吸着ベルトであることを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は前記小径ロールの前後の電解質膜に20乃至80ニュートンの張力をかけ、前記小径ロールの前後のオフロール上で電極インクを塗布することを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0013】
本発明は前記スロットノズルがエアアシストスロットノズルまたはミスト噴出スリットノズルであって電解質膜とノズルヘッドの距離を0乃至10ミリメートルに設定することを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0014】
本発明は前記加熱吸着ロールまたは加熱ロールの真円度が±50マイクロメートル以下であって、前記加熱吸着ロールまたは加熱ロールに電解質膜が接触する直前のオフロール上で電極インクを塗布することを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0015】
本発明は前記電解質膜にアノード極インクをスロットノズルで塗布し乾燥し、次いでカソード極インクを粒子または繊維にして塗布するにあたり、反転した電極面を通気性基材と接触させ、加熱吸着ロール上で前記通気性基材を介して電解質膜を吸引し、前記電解質膜に積層されているバックシートを剥離する工程と、アノード極の反対側にカソード極の触媒を含む電極を形成した燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0016】
本発明はバックシートが積層された電解質膜に電極インクを塗布し乾燥して電極を形成し電極の上に第一の通気性のある保護基材を積層し、前記第一の通気性保護基材を介して加熱吸着ドラムで電解質膜及び電極を吸着し、前記バックシートを剥離したあと反対極の電極インクを塗布して電極を形成させ、前記通気性保護基材を回収し、新たな第二の通気性基材を積層し、第二の通気性基材で両方の電極を保護しながら巻き取ることを特徴とする燃料電池の膜・電極製造方法を提供する。
【0017】
本発明での前記電極インク触媒はコアシェル型の触媒を使用することが出来る。
【0018】
本発明の燃料電池の膜電極アッセンブリーの製造方法によればデリケートで例えば15ミクロン以下と極薄の電解質膜であっても直接電解質膜にそれぞれの面に電極インクを塗布できる。更に電解質膜の負荷を低減するため加熱吸引して電解質膜に塗布された電極インクが電解質膜を濡らした後瞬時に、例えば3秒以内に溶媒量の99パーセント以上を揮発することができるので、膜と電極の密着性を高め、界面抵抗を最大に低くできるので理想的である。
【0019】
また本発明ではカソード極はスロットノズル方式に限らず、スプレイ法あるいはスプレイに属するパルス的スプレイであってスプレイ粒子に更にスピードを付加した工法でありエムテックスマート株式会社の商標登録であるインパクトパルス工法を単独あるいはスロットノズルと併用して採用すれば電解質膜への触媒の密着性は更に高めることができ、理想的なマイクロポア、メソポア、マクロポアのある電極を形成できる。尚、エアアシストスロットノズルやミスト噴出スリットノズル、メルトブローン式スプレイノズルでスプレイあるいはパルス的スプレイを行うことができる。
【0020】
更に本発明では単一のノズルヘッドに限定するものでなく複数のヘッドを電解質膜の移動方向に直列的に配置し薄膜で積層出来る。特にエアアシストスロットノズルやミスト噴出スリットノズルあるいはメルトブローン式ノズルヘッドを用いることにより平方センチメートル当たりの1層の電極量を0.01~0.3ミリグラムに調整できるので
例えば2~30層の電極インクの薄膜積層もできる。加熱吸着ドラムなどとの組み合わせで1層当たりの塗布量を少なくできるが、更に1層当たりの塗布量を少なくするには例えば白金触媒担持のカーボンと、電解質溶液と、アルコール系溶媒、あるいは水とアルコールからなる電極インクの固形分量を重量比で10%以下例えば3%以下にすることさえできる。
【0021】
固形分濃度を上記のようにするメリットはより薄膜にして積層すればするほど電解質膜の溶媒ショックの負荷が少なく単位面積当たりの塗布量がより均一になるので燃料電池の性能アップにつながる。
【0022】
さらに本発明では電解質膜をマイクロポーラスの通気性基材、例えば無塵紙や通気性プラスチックフィルムを介して例えば加熱吸着ドラムを50乃至120℃で加熱し、例えば市販の安価なマイナス60kPa程度の真空度の真空ポンプで吸引できるので電解質膜にダメージを与えないばかりか欠陥のない膜・電極アッセンブリーを製造できる。通気性基材は加熱吸着ドラムに巻き付けて使用すると経済的である。また前記電解質膜の電極形成部以外の特に両サイドにグラビアロールなどを使用して粘着剤をポーラス状に点在させて、電極サイズにくり抜かれたマスキング基材を貼り付けて移動させスロットノズル、スプレイ法に限らず使用して正確な電極パターンを形成することができる。マスキング基材は電極インクを粒子化するスプレイ法などに特に有用である。
【0023】
加熱吸着ロールの表面はステンレススチールなどの円筒に1乃至3mmのピッチで例えば千鳥に、0.1乃至1mmの直径の多くの孔を形成して製造することが出来る。無数の孔明けは通常レーザーや電子ビームなどで行うことができる。大きい孔や、粗の孔数であってさえも吸着分布をより均一にするため、ドラムの表面に無塵紙やマイクロメートルオーダーなどのポーラスフィルムなどを加熱吸着ドラムに巻きつけて固定して使用できる。例えば複数層巻きができ、あるいは複数の通気性基材を用意して粗めのものから順に微細なものを積層することで安価に加熱吸着ドラムを製作できるので経済的である。またマイクロメートルやナノメートルオーダーの通気性基材を使用するとマイクロやナノメートルオーダーの加熱吸着ドラムと同等の効果があるので性能面からしてコストパフォーマンスが抜群である。あるいはそれらは単数複数に限らず電解質膜と一緒に巻き出し、巻き取りで使用することもきる。
【0024】
本発明は特開2004-351413の液体の塗布及び乾燥方法の特許出願時の想定外の極薄膜で変形しやすく扱いづらい電解質膜に直接電極インクをスロットノズルやスプレイ方法等により薄膜で、必要により積層して品質的に安定した膜・電極アッセンブリーを製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記のように本発明によればデリケートな電解質に電極インクを直接塗布しても理想的な膜・電極の界面を得ることができ高品質の膜・電極アッセンブリーをひいては燃料電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る加熱(吸着)ロールと小径ロールと電解質膜とスロットノズルの配置略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る、加熱(吸着)ロール、小径ロール、電解質膜とスロットノズルの組み合わせに関する略断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る加熱(吸着)ロール、電解質膜、小径ロール、スロットノズルなどの配置と通気性基材等の移動方向に関する略断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る第二の電極形成のための反転した電解質膜その他の構成物に関する略断面図である。
図5】本発明の実施の形態の第二の電極形成の応用編の電解質膜等の移動方向の略断面図である。
図6】本発明の実施の形態に関する膜・電極アッセンブリーの略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎず本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加、置換、変形等を施すことを排除するものではない。
【0028】
図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。
【0029】
図1において加熱吸着ドラム1の上流に加熱吸着ドラムより小径の小径ロール4を設け、巻き出し装置5で巻き出された電解質膜2はニップロール10を経由し小径ロール4と加熱吸着ドラム1間のOFFロール上でスロットノズル3で図示していない電極インクを塗布し下流の巻取り装置6で、膜・電極アッセンブリーとして巻き取る。加熱吸着ドラムには図示していないマイクロメートルオーダーの通気性基材を1重または複数重ね巻きできる。電解質膜には反対極の電極が形成されていても良い。またスロットノズル3での電解質膜への塗布は小径ロール4上のONロールでも良く、小径ロールの前後であって加熱吸着ロールまでのOFFロールでも良い。理想的には加熱吸着ドラムぎりぎりのOFFロール上で行うと塗布とほぼ同時に加熱吸着が始まるので乾燥の面からも理想的である。特にOFFロールで行う際は電解質膜に20乃至80ニュートンの張力がかけられているのが望ましい。スロットノズル内の開閉バルブ機構はサックバックタイプにすることによりクリーンカットできるので長方形や正方形の電極パターンを形成できる。また移動方向に直交して複数のパターンを設けたい場合は所望する寸法に形成したシムを組み付けると便利である。
【0030】
図2図1の構成に小径ロール(14,14´)を複数設置した図である。スロットノズル13の配置は小径ロール14,14´上のONロールでも良く前後の、OFFロールでもよい。また小径ロールは加熱しても良い。
【0031】
図3は小径ロール34上のONロールでスロットノズル33で電解質膜32に電極インクを塗布し電極パターン205を形成している。加熱吸着ロール31上で乾燥した電極205に保護基材38を保護基材巻き出し装置39で巻き出し電解質膜32、電極205に積層して複合体として巻き取り装置36で巻き取っている。保護基材は通気性基材でも良く、予め第一の電極が形成され、第二の電極を形成した後であれば保護基材は材質、種類、形状を限定しないがコスト的に一番安く、電極が転写されないものあるいは転写しにくいものから選択したら良い。
【0032】
図4は第一の電極が形成された電解質膜42の上流でバックシート165が剥離されバックシート巻き取り装置102で巻き取る。反対面に第一の電極が形成されている位置を検知センサーで検知しスロットノズル43で第二の電極を形成するため電極インクが塗布される。第一の電極を保護して加熱吸着ドラム上を移動した通気性基材138は通気性基材巻取り装置101で巻き取られる。第一と第二の電極が形成された電解質膜は新たな保護基材148と一緒に巻き取り装置46で巻き取られる。保護基材は通気性基材でも良いが電極面に影響がなくコストが低いものを選択すべきである。
【0033】
図5は第二の電極形成をスロットノズルの代わりにスプレイで行っている図である。スプレイ以外は図4とほぼ同じ構成になる。電極インクをミストにしてミスト噴出スリットノズルやスロットノズルから流出する電極インクに沿わしたエアカーテンと一緒に塗布するエアアシスト塗布方法以外のスプレイは第一の電極パターンとほぼ同じ形状のマスクを設置すべきである。第一の電極形成はスロットノズルスピードを上げて行い、第二の電極はスプレイによりカソード対応で電極にミクロ的なポーラスを形成できるので性能面で効果的である。
【0034】
図6は電解質膜302の両サイドに第一の電極305と第二の電極305´が形成され第二の電極に保護基材348が積層されている断面図である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によればPEFC燃料電池用膜・電極アッセンブリーを高速でかつ高品質に製造できる。
【符号の説明】
【0036】
1,11,31,41,51 加熱(加熱吸着)ドラム
2,12,32,42,302 電解質膜
3,13,33,43 スロットノズル
4,14,14´,34,34´,44 小径ローラー
5,25,35,45,55 電解質膜巻き出し装置
6,26,36,46,56 電解質膜巻き取り装置
7,17 CCM
10,20,30,40,50 ニップロール
38,138,148,248,348 電極保護基材(通気性基材)
39,49,59 電極保護基材 巻き出し装置
101,201 電極保護基材巻き取り装置
102,202 バックシート巻き取り装置
203 スプレイ塗布ヘッド
205 電極
305 第一の電極
305´ 第二の電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6