(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】レコメンデーション装置およびレコメンデーション方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0282 20230101AFI20230124BHJP
【FI】
G06Q30/02 480
(21)【出願番号】P 2022055674
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2022-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522127645
【氏名又は名称】ATC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田邉 孝夫
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0211317(US,A1)
【文献】米国特許第07039594(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推奨要求元の情報システムとネットワークを介して接続され、前記推奨要求元の要求に応じた取引先企業を提示するレコメンデーション装置であって、
個別の取引における取引先候補企業の優劣を判定するために取引種毎に定める評価要素と、同種の評価要素を一つにまとめる評価軸と、評価要素の相互比較が可能なように同一スケールで評点化する正規化のための演算方法と、複数の評価要素からなる評価軸の評点を評価要素の評点の加重平均で算出する演算に用いる重みづけ情報と、取引種毎の取引先候補の最終評点を評価軸の評点の加重平均で算出する演算に用いる重みづけ情報とが、ビジネスルールとして少なくとも登録されたビジネスルールマスタと、
取引先候補企業に関して前記推奨要求元で保有する企業情報および外部に公開されているオープンデータから収集された前記評価要素に係る情報が登録された法人マスタと、
前記ビジネスルールマスタに登録された取引種別の評価軸を構成する評価要素と、評価要素の評点正規化の演算方法と、評価軸を構成する評価要素の評点加重平均演算に用いる重みづけ情報と、前記評価要素を構成する取引先候補企業と前記推奨要求元との取引データの最新値とを用いて、取引種別に取引先候補企業が評価軸毎に演算され、評点化されたリストとして登録された評価マスタと、
取引先候補企業に関する公開あるいは販売されている企業情報をオープンデータとして収集し、前記法人マスタに登録するオープンデータ収集部と、
法令の定めの他、企業が自ら定めるコンプライアンス方針、ESG方針、販売や購買の方針、政策、規程の少なくとも何れかを収集し、収集された各情報を
取引種毎に定式化し
たビジネスルールを、取引種、評価要素、評価軸、評点を同一スケールに正規化するための演算方法、評価軸評点を加重平均で求めるための評価要素の重みづけ情報、最終評点を加重平均で求めるために用いる評価軸の重みづけ情報、として前記ビジネスルールマスタに登録するビジネスルール変換部と、
前記評価要素を構成する情報を前記推奨要求元の既存の業務システムおよび前記法人マスタ、ならびに外部のインターネット空間から収集するイベント情報収集部と、
前記ビジネスルールマスタを参照し、イベント情報収集部で収集された情報から取引種毎の取引先候補企業に対する評価結果を、
取引種別の個別の評価軸毎に
評価リストとして評価マスタに登録するイベント評価部と、
取引先企業に関する推奨要求があると、前記法人マスタ、評価マスタおよびビジネスルールマスタを参照して取引先として推奨できる企業を提示する
法人推奨部とを備え、
前記
法人推奨部は、
前記取引種毎の取引先候補企業に関する推奨要求に応じて、前記ビジネスルールマスタに登録されているビジネスルールから、当該推奨要求の判定に適用されるべき評価軸と、複数の評価軸の評点を統合するための加重平均演算に用いる各評価軸の重みづけ情報とを取得し、
前記法人マスタに登録されている個別企業毎に、評価マスタに登録されている評価軸毎の評価結果を用いて最終評点を求める加重平均演算を実施し、
算出された各取引先企業の最終評価値を比較することで最適な取引先企業を
選択して提示する、レコメンデーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載された装置であって、
取引先推奨を求める新規取引に関する入力情報を加算して特定の評価要素を修正し、最終評価値の演算を行う旨のビジネスルールが前記ビジネスルールマスタに登録されている場合、イベント評価部は前記イベント情報収集部より前記評価要素に関する取引照会前の最新の情報を前記評価マスタに格納し、
前記法人推奨部は前記評価マスタに格納された前記評価要素の最新情報に、前記新規取引の実施により変化する修正差分を加算し、前記ビジネスルールマスタに登録されている演算方式により最終評価値の再計算を行って結果を提示する、レコメンデーション装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載された装置であって、
前記イベント評価部は、前記推奨要求元が実績として保有する前記評価
要素に係る情報以外に、
前記評価要素に係る前記推奨要求元と同種の企業と取引先候補企業との取引実績に関する情報、前記推奨要求元と同種の企業による取引先候補企業に関する評価情報、ないし取引先候補企業の自己申告による評価要素に係る情報の少なくとも何れかを含む外部評価を収集し、
それぞれの評価情報を同一の評価スケールで表現するとともに、それぞれの評価者毎の信頼度係数を乗じる評価者補正式により正規化した評価値を前記評価マスタに登録
するとともに、前記評価値をビジネスルールマスタに登録された評価軸評点の加重平均演算の計算要素とて用いた評価軸の評点を評価マスタに登録し、
前記法人推奨部は、
前記評点を複数の評価軸評点を用いて行う最終評点の加重平均演算に用いて、取引先として推奨できる企業を提示する、レコメンデーション装置。
【請求項4】
請求項
1から3の何れか1項に記載された装置であって、
前記
法人推奨部は、取引先の推奨に
際して、単一の企業を推奨するのではなく、
取引が可能な推奨企業のリストを作り、
最終評価値の高い順に推奨取引先企業を一覧表示する、レコメンデーション装置。
【請求項5】
請求項1から
4の何れか1項に記載された装置であって、
前記
法人推奨部は、取引先候補の
最終評価値がネガティブな取引先が選択された場合には、ビジネスルールマスタにあらかじめ登録されている注意事項を企業毎に警告表示する、レコメンデーション装置。
【請求項6】
請求項1から
5の何れか1項に記載された装置であって、
前記
法人推奨部は、推奨されていない取引先が選択されると、前記
ビジネスルールマスタにあらかじめ登録されている注意事項を抽出して提示することでビジネスルールの遵守を促すとともに、ビジネスルール外の行動を行う理由の記述ないし入力を要求する、レコメンデーション装置。
【請求項7】
推奨要求元の情報システムとネットワークを介して接続されたコンピュータで構成されたレストサーバで実行され
、前記推奨要求元の要求に応じた取引先企業を提示するレコメンデーション方法であって、
前記レストサーバは、
個別の取引における取引先候補企業の優劣を判定するために取引種毎に定める評価要素と、同種の評価要素を一つにまとめる評価軸と、評価要素の相互比較が可能なように同一スケールで評点化する正規化のための演算方法と、複数の評価要素からなる評価軸の評点を評価要素の評点の加重平均で算出する演算に用いる重みづけ情報と、取引種毎の取引先候補の最終評点を評価軸の評点の加重平均で算出する演算に用いる重みづけ情報とが、ビジネスルールとして少なくとも登録されたビジネスルールマスタと、
取引先候補企業に関して前記推奨要求元が保有する企業情報および外部に公開されているオープンデータから収集された前記評価要素に係る情報が登録された法人マスタと、
前記ビジネスルールマスタに登録された取引種別の評価軸を構成する評価要素と、評価要素の評点正規化の演算方法と、評価軸を構成する評価要素の評点加重平均演算に用いる重みづけ情報と、前記評価要素を構成する取引先候補企業と前記推奨要求元との取引データの最新値を用いて、取引種別に取引先候補企業が評価軸毎に演算され、評点化されたリストとして登録された評価マスタと、
取引先候補企業に関する公開あるいは販売されている企業情報をオープンデータとして収集し、
前記法人マスタに登録する
オープンデータ収集部と、
法令の定めの他、企業が自ら定めるコンプライアンス方針、ESG方針、販売や購買の方針、政策、規程の少なくとも何れかを収集し、収集された各情報を
取引種毎に定式化し
たビジネスルールを、取引種、評価要素、評価軸、評点を同一スケールに正規化するための演算方法、評価軸評点を加重平均で求めるための評価要素の重みづけ情報、最終評点を加重平均で求めるために用いる評価軸の重みづけ情報、として前記ビジネスルールマスタに登録する
ビジネスルール変換部と、
前記評価要素を構成する情報を前記推奨要求元の既存の業務システムおよび前記法人マスタ、ならびに外部のインターネット空間から収集するイベント情報収集部と、
前記ビジネスルールマスタを参照し、イベント情報収集部で収集された情報から取引種毎の取引先候補企業に対する評価結果を、
取引種別の個別の評価軸毎に
評価リストとして評価マスタに登録する
イベント評価部と、
取引先企業に関する推奨要求があると、前記法人マスタ、評価マスタおよびビジネスルールマスタを参照して取引先として推奨できる企業を提示する
法人推奨部とを備え、
前記法人推奨部は、
前記取引種毎の取引先候補企業に関する推奨要求に応じて、前記ビジネスルールマスタに登録されているビジネスルールから、当該推奨要求の判定に適用されるべき評価軸と、複数の評価軸の評点を統合するための加重平均演算に用いる各評価軸の重みづけ情報とを取得し、
前記法人マスタに登録されている個別企業毎に、評価マスタに登録されている評価軸毎の評価結果を用いて最終評点を求める加重平均演算を実施し、
算出された各取引先企業の最終評価値を比較することで最適な取引先企業を
選択して提示する、レコメンデーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、企業ごとに異なるビジネスルールに従い、当該ルールの下で最適な取引先企業を推奨するレコメンデーション装置およびレコメンデーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品またはサービス、ならびにそれらの提供元に関するレコメンデーションの装置ないし方法に関しては様々な提案があるが、個人や個人に近い中小企業向けにはレコメンデーションを受ける個人の好みを様々な方法で推測し、その個人の嗜好にあった商品やサービスを推奨する方法(特許文献1参照)が一般的である。一方、多種多様な取引を行う大企業向けには、商品またはサービスの提供元(取引先)候補の提示を行う提案はあるが(特許文献2参照)、「個人の嗜好にあった推奨」にあたる部分に関しては、未だ確立された手法はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-084189号公報
【文献】特開2002-74103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商品またはサービス、ならびにそれらの提供元(取引先)に関するレコメンデーション装置ないし方法については様々な提案があるが、インターネット上で収集できる情報量の増大に伴い、レコメンデーションに際しては、情報の量ではなく、検索者(レコメンデーションを受ける者)の嗜好に対する適合性、一致度が重要になっている。そして、個人や個人に近い中小企業が検索者である場合においては、協調フィルタリング技術により、同種の嗜好を持つ検索者の評価をもって、推奨の順位を決める手法が一般的に用いられている。
【0005】
一方、大企業(取引先、取引の種類、あるいはその規模が多い大規模な企業のこと、以下、同じ。)においては、この嗜好にあたる部分は企業が自ら定める方針にもとづくビジネスルールとなる。大企業においては、属人的な判断を廃し、社内の各部門が統一された基準で取引の可否や取引先優劣の判定を行えるよう、規程等のビジネスルールを網羅的に策定しているためである。本発明は、個人の嗜好に代わり、属人性を排したビジネスルールにもとづいて、大企業の取引先の選定および取引の運用を行えるように、適切なレコメンデーションを行う装置および方法を提供する。
【0006】
現代の大企業は、法令の定めの他、企業が自ら定めるコンプライアンス方針、ESG(Environment、Social、Governance)方針、販売や購買の方針、戦略、政策、規程等を「ビジネスルール」(法令、方針、戦略、政策、規程等の全てを含む総称。以下、同じ意味で用いる)として定めている。一方、大企業では、販売や購買行動は各種の情報システム上で行われているため、これらのビジネスルールは、本来、その情報システム上に組み込まれ、自動制御される必要がある。
【0007】
しかしながら、現状では、ビジネスルールの情報システムへの組み込みは不十分で、ルールの解釈や運用は人手で行われている場合が多い。
【0008】
また、ビジネスルールを外れた行動を行う際には、ビジネスルール外の行動を行った履歴と理由につき、企業のステークホルダに対する説明責任が生じるが、現状では、ルール外の選択が敢えて行われた履歴とその理由はシステム上に残らない。
【0009】
そのため、企業毎に異なるビジネスルール上、取引が許容される取引先と、その中でより好ましい取引先を、当該取引を実施する情報システム上で推奨する装置や方法の提供が望まれる。大企業においてはビジネスルール自体が多岐にわたるため、取引を行おうとする担当者が全てのルールを十分に理解しているとは考え難く、何らかの支援システムがなければ、全ルールに適合的な適切な取引先選定を行うことが困難であるためである。
【0010】
企業のビジネスルールに合致する取引先の推奨の際には、資本金、従業員数、保有する公的資格や許可、ESG対応状況、財務体質の安定性、推奨先企業との過去の取引実績等、多様かつ最新の評価要素を収集し、最新の全てのビジネスルールに従い、推奨理由も明確にした上で、取引先候補企業のリスト化と、より好ましい取引先の推奨を行う必要がある。加えて、業務遂行者が、推奨されていない取引先の選択を行おうとする場合には、その取引における注意事項を喚起することでビジネスルールの遵守を促すとともに、ビジネスルール外の行動を行う理由の記述ないし入力を必須とすることが望ましい。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、個別企業毎に異なるビジネスルールを数値演算が可能な形に定式化し、そのビジネスルールにもとづく判定・評価に必要な各種評価情報を収集、数値化し、企業にとって、その時点で最適な取引先企業を自動演算により推奨(単一の取引先に対する判定結果を示す場合と、複数の取引先に推奨順位をつけたリストになる場合がある。以下、同じ)するとともに、推奨外の選択を行う場合には、選択者にその理由の説明を求めることができるレコメンデーション装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための実施形態は、オープンデータ収集部と、ビジネスルール変換部と、イベント収集部と、イベント評価部と、推奨処理部とを備えるレコメンデーション装置および方法である。
【0013】
オープンデータ収集部は、既に取引がある取引先候補企業、および、今後、新たに取引可能な企業の公開あるいは取得が可能な情報をオープンデータとして収集し、法人マスタに登録する。ビジネスルール変換部は、法令の定めの他、企業が自ら定めるコンプライアンス方針、ESG方針、販売や購買の方針、政策、規程等を収集し、収集された各情報を定式化してビジネスルールマスタに登録する。イベント収集部は、取引先候補企業との過去の取引実績情報、および必要に応じて自社と同種の企業の取引実績や評価情報、ないし取引先候補企業の自己評価情報を収集し、イベント評価部は、前記ビジネスルールマスタを参照して前記取引先企業に対する自社の評価結果を、個別の評価軸毎に、評価マスタに登録する。推奨処理部は、企業内における個別取引の社内申請から承認に至る過程で、取引先候補企業に関する推奨要求があると、前記法人マスタ、評価マスタおよびビジネスルールマスタを参照して取引先として推奨できる候補企業と、必要に応じて、その企業との取引における注意事項や推奨理由を提示する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザーが業務遂行のために利用する既存システム上で、取引先の選定を行うプロセスで、取引の内容や取引規模、取引の実施時期や納品・作業現場等の取引の概要に関する諸条件を入力し、パラメータとしてリクエスト送信すると、自社のビジネスルールの下で推奨される取引先と、必要に応じて、取引先毎の注意事項や推奨理由をレスポンスとして取得することができる。また、各既存システムにビジネスルールの演算機能を装備する必要が無い為、企業内で統一管理されたビジネスルールでの取引先選定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るレコメンデーション装置の一実施形態が適用されたレコメンデーションシステムを示す構成図である。
【
図2】
図1に示すレコメンデーション装置を構成する法人マスタの一例を示す構成図である。
【
図3】
図2に示す法人マスタのレコードを示す説明図である。
【
図4】法人推奨部が提示する一覧表示を示す説明図である。
【
図5】本発明に係るレコメンデーション装置の一実施形態における“部品の安定供給”の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明に係るレコメンデーション装置の一実施形態における“パートナー戦略”の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明に係るレコメンデーション方法の一実施形態における“CSR調達”あるいは“ESG調達”の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】本発明に係るレコメンデーション装置の一実施形態における“支払いベースの変更”の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】本発明に係るレコメンデーション方法の一実施形態における“法令対応”の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】本発明に係るレコメンデーション装置の一実施形態における“与信限度額見直し”の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】第三者機関によるリスク評価の一例を示す説明図である。
【
図12】発注金額による評価例を示す説明図である。
【
図13】法令対応による評価例を示す説明図である。
【
図14】自社基準による推奨/非推奨リストを示す説明図である。
【
図15】方針や規程ではカバーしていない評価軸での自部門での独自評価リストの一例を示す説明図である。
【
図16】同種取引での他部門評価の一例を示す説明図である。
【
図17】各軸の値の正規化と、総合評価値とを一覧表示して示す説明図である。
【
図18】各法人を総合評価の高い順に一覧表示して示す説明図である。
【
図19】対象法人が推奨合格値に達するために必要な各軸の最適な評価値を示す説明図である。
【
図20】
図15で示す最適化の具体例として、対象法人が改善すべき各軸のポイント数の最小二乗和を最小化した結果を示す説明図である。
【
図21】各法人の評価を6軸の評価データで示すレーダーチャートである。
【
図22】各法人の評価を重ねて示すレーダーチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《実施形態の構成》
図1は本発明に係るレコメンデーション装置の一実施形態が適用されたレコメンデーションシステムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すレコメンデーションシステムは、レコメンデーション装置10と、このレコメンデーション装置10とはネットワークを介して接続されている既存システム20とから構成されている。
【0018】
レコメンデーション装置10は、いわゆるレストサーバとして位置づけられ、各種マスタとして、評価マスタ11と、ビジネスルールマスタ12と、法人マスタ13とを備える。また、レコメンデーション装置10は、イベント情報収集部14と、このイベント収集部14、評価マスタ11及びビジネスルールマスタ12と接続されたイベント評価部15を備える。さらにビジネスルールマスタ12と接続されたビジネスルール変換部16と、法人マスタ13と接続されたオープンデータ収集部17とを備える。さらに、評価マスタ11と、ビジネスルールマスタ12と、法人マスタ13および既存システム20と接続された法人推奨部18とを備える。
【0019】
評価マスタ11は、既存システム20から収集された実績情報、企業が独自に収集した評価リスト、取引先からの自己評価リスト、企業が独自に設定した評価リスト等から成る。
【0020】
既存システム20から収集された実績情報としては、例えば、ビジネスルールで定義された集計方法(集計単位と集計値)で集計したレコードをいう。
【0021】
企業が独自に収集した評価リストとしては、例えば、第三者による取引先評点P、ESGネガティブリスト、公的機関からの取引停止/非推奨リスト、競合リストが挙げられる。
【0022】
取引先からの自己評価リストとしては、取引先が取引を希望する「エリア・品目」、取引先が取得している認定リスト等から成る。企業が独自に設定した評価リストとしては、例えば、取引先毎の与信限度額も挙げられる。
【0023】
ビジネスルールマスタ12は、評価マスタ11を作成する為に必要となる、評価者補正式、評価軸ウエイト、実績の集計方法、並びに、リクエストされたパラメータに応じた推奨演算を行う為に必要となる、ルール情報(各ルールが対象とする評価マスタ11のデータ範囲と採用する評価軸ウエイト、非推奨の取引先を選択した場合の注意事項等)、と各ルール(取引分散ルール、CSR(Corporate Social Responsibility:社会的責任)ないしESG(以下、CSRと総称する)遵守ルール、請求書払可能ルール、与信限度額見直し基準等)の演算方法が設定される。
【0024】
評価者補正式は、評価者毎に補正式を設定したものである。ここで、補正式は、個々の評価基準にはバラツキがあるため、補正式により評価基準を正規化する処理である。例えば、補正式を、活性化関数と、その結果に対する重み付けで構成する場合、活性化関数は、線形関数、シグモイド関数などにより、評価者固有の評価スケールを、推奨、非推奨の判断が別れる感度帯を中心にスケールし直す(例えば-1~1)。そして、重み付けは、複数の評価者の評点Pに対する信頼度を示す係数(信頼度係数、例えば0~1)として設定し、最終的な評点Pを計算する。尚、重み付けの係数については、企業内で予め各評価者を査定の上設定する。若しくは、重み付け前の評価値と、過去に実際に取引先として選択された法人の結果の比較から、機械学習により重み付け係数を補正することも可能である。極めて単純な補正式の具体例を示すと、ある評価者が1~5の5段階評価(1がネガティブ、3が中立、5がポジティブ)の場合、評点Pを-1~1に正規化する為に、評点Pから3を減じ2で除する、更に、その評価者の信頼度を査定し(例えば、0.5とすると)、正規化した結果に対して、信頼度係数(0.5)を乗じて評点Pを補正する。
【0025】
また、取引先の評価は画一的なものではなく、評価軸や、その重要度は、取引の種類、規模、品目によって異なるため、取引種別・規模・品目別に評価軸ウエイトを設定することで、取引内容に対応した取引先の評価を可能とする。ここで、評価軸ウエイトは評価軸に対する重要度を示す数値であり、重要度の高い評価軸は数値が高く設定される。
【0026】
実績の集計方法は、例えば、集計期間=過去1年、集計単位=品目+取引先、集計値=発注金額(百万円)、というような集計方法を設定したものである。
【0027】
取引分散ルールは、同一の集計方法に対する取引先毎のシェアーを上下限の許容範囲付で、パートナー戦略ルールは、同一の集計方法に対する取引先毎の取引額を上下限の許容範囲付で設定したもので、取引量の基準を定めたものである。
【0028】
CSR調達ルールは、取引種別・規模・品目・評価者別の乗数、資本金比、売上高比、等のCSR調達基準を定めたものである。CSR調達とは、人権や労働、環境といった様々なことを考慮して、健全な調達を目指す活動全般を指す。CSR調達には“ESG調達”も含める。なお、ESG調達とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮した調達活動である。
【0029】
法令対応ルールは、取引種別・品目・所在地(国)・届け先(国)別に資本金(下限値)、注意事項等を定めたものである。
【0030】
請求書払可能ルールは、取引種別・品目・予算・取引先別に年間支払額上限を定めたものである。
【0031】
与信限度額見直しルールは、株価騰落率、資本金の増減率、売上の増減率、従業員の増減率、粗利の増減率等に基づき、与信限度額見直しルールを定めたものである。
【0032】
法人マスタ13は、登記情報、有価証券報告書情報、株価情報等に基づき、取引先となる法人の情報を設定したものである。
【0033】
図2は、法人マスタ13の一例を示している。ここで、登記情報は、法人番号、法人名、所在地等の情報である。有価証券報告書情報からは、資本金、従業員数、売上、粗利、経常利益当の情報を得る。また、株価情報としては、株式コード、Nケ月騰落率等の情報を得る。また、
図3は、法人番号毎の国別標準産業分類コードや国際標準産業分類コードとの対応を示している。
【0034】
イベント情報収集部14は、既存システム20から実績情報等を収集するとともに、企業が独自に収集した評価リスト、取引先からの自己評価リスト、企業が独自に設定した評価リスト等を収集する。
【0035】
イベント評価部15は、イベント情報収集部14が収集した収集情報を評価して評価マスタ11に格納する。
【0036】
ビジネスルール変換部16は、イベント評価部15が収集した情報(企業が自ら定めるコンプライアンス方針、ESG方針、販売や購買の方針、政策、規程の少なくとも何れか)に対する演算方法、並びに法人推奨部18が実施する最終評価値の演算方法をビジネスルールマスタ12に格納する。
【0037】
オープンデータ収集部17は、登記情報、有価証券報告書情報、株価情報等の公開されたデータを収集して法人マスタ13に格納する。
【0038】
法人推奨部18は、評価マスタ11、ビジネスルールマスタ12、法人マスタ13および既存システム20と接続され、既存システム20からのレコメンデーション要求に応じて、最適なレコメンデーションデータを既存システム20に提示する。例えば、レコメンデーションとしては、
図4に示すように、推奨法人名を評価値とともに一覧表示する。
【0039】
既存システム20は、与信限度額管理システム21と、RFx管理システム22と、オーダ管理システム23と、在庫管理システム24と、債権債務管理システム25等から成る。
【0040】
与信限度額管理システム21は、法人推奨部から与信限度額の見直し要求を受けて、企業の独自評価として与信限度額を評価マスタ11に再設定する。
【0041】
RFx管理システム22は、情報提供依頼書(RFI)、提案依頼書(RFP)、見積依頼書(RFQ)等、調達先決定の際に重要な3つの依頼書を管理する。
【0042】
オーダ管理システム23は、発注先を選択する際に、レコメンデーション装置10を呼び出し、評価の高い発注先を提示させる。
【0043】
在庫管理システム24は、在庫状況をシステムで管理・把握し、余剰在庫や欠品を生み出さないよう在庫状況をシステムで管理する。
【0044】
債権債務管理システム25は、企業活動において発生する債権・債務について、残高や支払い状況などの情報をシステムで一括管理する。
【0045】
《実施形態の処理手順》
次に、本発明の実施形態に係るレコメンデーション装置の処理手順を
図5~
図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0046】
以下では、(1)部品の安定供給、(2)パートナー戦略、(3)CSR調達、(4)支払いベースの変更、(5)法令対応、および(6)与信限度額の見直し、の6つの処理について順番に説明する。尚、6つの処理は単一のプロセスを前提とはせず、並列に処理され結果を組み合わせたレコメンデーションを行うことが可能である。
【0047】
<(1)の部品の安定供給について>
図5のフローチャートを参照して、調達対象、例えば、部品を調達する際、安定的に部品の調達をする際の処理手順を説明する。
【0048】
部品を安定的に確保するためには、部品の仕入先を1か所に限定せず、戦略的に分散させる方がいい。例えば、仕入先として、A社、B社、その他の会社、の3か所に分け、それぞれのシェアーを5:4:1とする調達方針を決定したとする。
【0049】
オーダ管理システム23から、ビジネスルール・パラメータ(取引種別・品目、発注予定金額、対象予算)を指定して、法人推奨部18に発注先の選択(推奨)がリクエストされると(ステップS1YES)、法人推奨部18は、ビジネスルールマスタ12を参照し、本発注が遵守すべき(パラメータが合致する)取引分散ルールを選択する(ステップS2)。
【0050】
選択された取引分散ルールの計算に必要な最新のイベント評価値(取引種別・品目・予算・法人別に集計された発注金額)を評価マスタ11から収集する(ステップS3)。次いで、本発注の予定金額を加味した上で、各法人の最終評価値(-1:ネガティブ~0:中立~+1:ポジティブ)を計算する(ステップS4)。
【0051】
法人推奨部18は、最終評価値の高い順に候補仕入先を一覧にして表示する(ステップS5)する。表示一覧から最終評価値がネガティブ(マイナス値)な取引先が選択された場合には(ステップS6YES)、ビジネスルールマスタ12に設定されている注意事項を警告表示する(ステップS7)。
【0052】
注意事項が警告された場合には、評価マスタ11に警告履歴が保存される(ステップS8)。
【0053】
イベント情報収集部14は、常にイベント評価値を最新化する為に既存システム20から実績データを収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(取引種別・品目・予算・法人別に集計された発注金額)を更新する(ステップS9)。
【0054】
尚、ビジネスルールマスタ12には、取引分散ルールとして、パラメータ組合せパターン毎(取引種別・品目・予算・法人別)に発注ロットサイズ、目標シェアー(%)、許容範囲(上限%,下限%)、並びに最終評価値(目標シェアーからの乖離度合いを-1~+1で数値化)の計算方法を設定する。
【0055】
<(2)のパートナー戦略について>
図6のフローチャートを参照してパートナー戦略の処理手順について説明する。
【0056】
企業では、パートナー戦略として、毎年、戦略パートナー会社に対して一定規模の取引を維持したいという要望がある。
【0057】
オーダ管理システム23からビジネスルール・パラメータ (取引種別、発注予定金額)を指定して法人推奨部18に発注先の選択(推奨)がリクエストされると(ステップS11YES)、法人推奨部18は、ビジネスルールマスタ12を参照し、本発注が遵守すべき(パラメータが合致する)パートナー戦略ルールを選択する(ステップS12)。
【0058】
選択されたパートナー戦略ルールの計算に必要な最新のイベント評価値(取引種別・法人別に集計された発注金額)を評価マスタ11から収集する(ステップS13)。次いで、本発注の予定金額を加味した上で、各法人の最終評価値(-1:ネガティブ~0:中立~+1:ポジティブ)を計算する(ステップS14)。
【0059】
法人推奨部18は、最終評価値の高い順に候補仕入先を一覧にして表示する(ステップS15)。表示一覧から最終評価値がネガティブ(マイナス値)な取引先が選択された場合には(ステップS16YES)、ビジネスルールマスタ12に設定されている注意事項を警告表示する(ステップS17)。
【0060】
注意事項が警告された場合には、評価マスタ11に警告履歴が保存される(ステップS18)。
【0061】
イベント情報収集部14は、常にイベント評価値を最新化する為に既存システム20から実績データを収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(取引種別・法人別に集計された発注金額)を更新する(ステップS19)。
【0062】
尚、ビジネスルールマスタ12には、パートナー戦略ルールとして、パラメータ組合せパターン毎(取引種別・法人別)に発注ロットサイズ、目標発注額、許容範囲(上限%,下限%)、並びに最終評価値(目標発注額からの乖離度合いを-1~+1で数値化)の計算方法を設定する。
【0063】
<(3)のCSR調達について>
図7のフローチャートを参照してCSR調達の処理手順を説明する。
【0064】
直材に対しては企業のCSR調達を徹底したいとの要望がある。ここで、CSR調達とは、企業などが調達先の選定や調達条件を設定する際に、社会的責任CSRの観点から基準を設定することをいう。CSR調達により、例えば、輸出規制のある商品の調達、反社会的企業からの調達等を排除することができる。
【0065】
RFx管理システム22から、ビジネスルール・パラメータ(取引種別・品目、エリア、予想金額)を指定して、法人推奨部18に見積依頼先の選択(推奨)がリクエストされると(ステップS21YES)、法人推奨部18は、ビジネスルールマスタ12を参照し、本見積依頼が遵守すべき(パラメータが合致する)CSR調達ルールを選択する(ステップS22)。
【0066】
選択されたCSR調達ルールの計算に必要な最新のイベント評価値(評価者・法人別の評点P、資本金、売上高、所在地、取引種別・品目・エリア・法人別に集計された発注金額)を評価マスタ11から収集する(ステップS23)。次いで、本見積依頼の予定金額を考慮した上で、各法人の最終評価値(-1:ネガティブ~0:中立~+1:ポジティブ)を計算する(ステップS24)。
【0067】
法人推奨部18は、最終評価値の高い順に候補仕入先を一覧にして表示する(ステップS25)。但し、取引先が申告している、品目とエリアで絞り込んで初期表示し、画面操作によって品目やエリアの条件を変更や、取引実績の無い法人を表示対象にすることもできる。一覧表示から最終評価値がネガティブ(マイナス値)な取引先が選択された場合には(ステップS26YES)、ビジネスルールマスタ12に設定されている注意事項を警告表示する(ステップS27)。
【0068】
注意事項が警告された場合には、評価マスタ11に警告履歴が保存される(ステップS28)。
【0069】
イベント情報収集部14は、常にイベント評価値を最新化する為に既存システム20から実績データを収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(取引種別・品目・エリア・法人別に集計された発注金額)を更新する(ステップS29)。
【0070】
尚、ビジネスルールマスタ12には、CSR調達基準として、パラメータ組合せパターン毎(取引種別・品目・規模・評価者毎)に評価者補正式、並びに評価軸ウエイトを設定する。
【0071】
オープンデータ収集部17は、一定の周期(例えば、1日1回)で、株価や有価証券報告書等から最新の企業情報を収集し、法人マスタ13を更新する。
【0072】
イベント情報収集部14は、社内、若しくは第三社機関からの最新の評点P、取引先からの自己申告(品目、エリア、資本金、売上高)に加えて、法人マスタ13の情報(資本金、売上高、所在地)を収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(評価者・法人別の評点P、資本金、売上高、所在地)を更新する。
【0073】
<(4)の支払いベースの変更について>
取引に際しては、請求書ベースの支払に対して統制強化策として発注ベースへ切り替えたいとの要望がある。一般に請求書ベースの支払とは、取引相手先を継続取引相手としてシステム上にマスタ登録することなく、都度限りの取引として支払いを行う形態を言う。発注ベース取引とは継続取引先としてシステム上にマスタ登録を行い、指定納入業者として発注を行う形態を言う。統制水準としては発注ベースでの支払の方が数段上であり、繰り返しの取引がある取引先は、本来、発注ベースでの取引を行うことが企業の内部統制上は望ましい。その統制強化に役立つのが下記の仕組みである。
【0074】
図8のフローチャートにおいて、債権債務管理システム25から、ビジネスルール・パラメータ(取引種別・品目、請求金額、予算)と対象取引先を指定して、法人推奨部18に取引先選択(確認)がリクエストされると(ステップS31YES)、法人推奨部18は、ビジネスルールマスタ12を参照し、本請求書払が遵守すべき(パラメータが合致する)請求書払可能ルールを選択する(ステップS32)。
【0075】
選択された請求書払可能ルールの計算に必要な最新のイベント評価値(取引種別・品目・予算・法人別に集計された請求金額)を評価マスタ11から収集する(ステップS33)。次いで、本請求書払の請求金額を加算した上で、対象取引先の最終評価値(-1:ネガティブ~0:中立~+1:ポジティブ)を計算する(ステップS34)。
【0076】
法人推奨部18は、最終評価値がネガティブ(マイナス値)な場合には(ステップS35YES)、ビジネスルールマスタ12に設定されている注意事項を警告表示する(ステップS36)。
【0077】
警告表示としては、例えば、次回からは、取引先登録を行い発注ベースの取引を促すと同時に、評価マスタ11に請求書払不適切取引としての残された警告履歴も表示する。警告履歴は評価マスタ11に保存される(ステップS37)。
【0078】
尚、イベント情報収集部14は、常にイベント評価値を最新化する為に既存システム20から実績データを収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(取引種別・品目・予算・法人別に集計された請求金額)を更新する。
【0079】
ビジネスルールマスタ12には、請求書払可能ルールとして、パラメータ組合せパターン毎(取引種別・品目・予算・法人別)に請求書払上限額、並びに最終評価値(請求額上限からの乖離度合いを-1~+1で数値化)の計算方法を設定する。
【0080】
<(5)の法令対応について>
図9のフローチャートを参照して、法令対応の手順について説明する。
企業が守るべき法令や社会的ルールは数多く、それらに違反することは社会からの信用を失うことになり、大きな経済的損失を受ける為、定期的な社内教育に加えて、取引先選択の都度、その取引で注意すべき事項を喚起したいとの要望がある。
【0081】
オーダ管理システム23から、ビジネスルール・パラメータ(取引種別・品目、発注予定金額、届け先(国))と対象取引先を指定して、法人推奨部18に発注先の選択(確認)がリクエストされると(ステップS41YES)、法人推奨部18は、ビジネスルールマスタ12を参照し、本発注が遵守すべき(パラメータが合致する)法令対応ルールを選択する(ステップS42)。
【0082】
選択された法令対応ルールの計算に必要な最新のイベント評価値(対象法人の資本金、所在地(国)、親会社の所在地(国)並びに評価者別の評点P)を評価マスタ11から収集する(ステップS43)。次いで、各対象取引先の最終評価値(-1:ネガティブ~0:中立~+1:ポジティブ)を計算して表示する(ステップS44)。
【0083】
法人推奨部18は、最終評価値がマイナスな場合は(ステップS45YES)、選択された法令に対応するビジネスルールマスタ12の注意事項を警告表示する(ステップS46)。警告表示の履歴は評価マスタ11に保存される(ステップS47)。
【0084】
イベント情報収集部14は、常にイベント評価値を最新化する為に、各種評価情報や申告情報、並びに法人マスタ13から最新データを収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(評価者・法人別の評点P、法人別の資本金、所在地、親会社)を更新する(ステップS48)。
【0085】
尚、ビジネスルールマスタ12には、法令対応ルールとして、パラメータ組合せパターン毎(取引種別・品目・所在地(国)・届け先(国)別)に資本金(下限値)、注意事項、並びに最終評価値(法令対応の警告度-1~+1で数値化)の計算方法を設定する。
【0086】
<(6)の与信限度額の見直しについて>
図10のフローチャートを参照して、与信限度額の見直し処理の手順について説明する。
【0087】
企業では、与信限度額の見直しをタイムリーに実施したいとの要望がある。
与信限度額管理システム21から、ビジネスルール・パラメータ(取引期間、決済サイト、取引金額)と対象取引先を指定して、法人推奨部18に与信限度額対象の取引先選択(確認)がリクエストされると(ステップS51YES)、法人推奨部18は、評価マスタ11を参照し、本取引が遵守すべき(パラメータが合致する)与信限度額見直しルールを選択する。(ステップS52)。
【0088】
選択された与信限度額見直しルールの計算に必要な最新のイベント評価値(債権残高と未検収金額の合計額、債務残高、評価者別の評点P、資本金、売上高、株価騰落率、資本金の増減率、売上高の増減率、従業員数の増減率、粗利の増減率)を評価マスタ11から収集する(ステップS53)。次いで、本与信限度額チェックの取引金額を加算した上で、対象法人の最終評価値(-1:ネガティブ~0:中立~+1:ポジティブ)を計算する(ステップS54)。
【0089】
法人推奨部18は、最終評価値がマイナスの場合は(ステップS55YES)、ビジネスルールマスタ12に設定されている注意事項を警告表示する(ステップS56)。
【0090】
イベント情報収集部14は、イベント評価値を最新化する為に既存システム20から実績データを収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(法人別に集計された債権残高と未検収金額の合計額、債務残高)を更新する(ステップS57)。
【0091】
また、イベント情報収集部14は、社内、若しくは第三者機関からの最新の評点P、取引先からの自己申告(資本金、売上高、従業員数、粗利)に加えて、法人マスタ13の情報(資本金、売上高、株価騰落率、資本金の増減率、売上高の増減率、従業員数の増減率、粗利の増減率)を収集し、イベント評価部15は、イベント評価値(評価者・法人別の評点P、資本金、売上高)を更新する。
【0092】
尚、ビジネスルールマスタ12に、与信限度額の計算方法、並びに与信限度額見直し基準(株価騰落率「±30%」、資本金の増減率「±50%」、売上の増減率「±20%」、従業員の増減率「±10%」、粗利の増減率「±10%」、等)を設定する。
【0093】
オープンデータ収集部17は、一定の周期(例えば、1日1回)で、株価や有価証券報告書等から最新の企業情報を収集し、法人マスタ13を更新する。
【0094】
イベント評価部15は、上記レコードに対して、ビジネスルールマスタ12の与信限度額見直しルールを参照し、見直し基準(株価騰落率、資本金の増減率、売上高の増減率、従業員数の増減率、粗利の増減率)に該当する法人をリスト出力し、社内評点Pの見直しが必要な対象として、管理者に通知する(ステップS58)。
【0095】
<評価値算出の具体例と表示例>
次に、
図11~
図22に基づき、本発明に係るレコメンデーション装置で実現される推奨法人の具体的な表示例を説明する。
【0096】
本事例では、軸A~軸Fの6軸で総合評価をする。また、各軸A~Fには、軸を構成する要素に対する正規化方法を設定する。この際、評価者補正式は、各構成要素の評点Pを変数とした計算式で設定される。たとえば、活性化関数(P-50)/50は、評価者の評点Pがリニアに推奨の優先度を表現していると判断した場合、活性化関数のタイプを線形関数とし、評価者のスケールが、最大値100点、最小値0点、中立値50点の場合の計算式を示している。また、評価者が信頼できる機関として重み付け(1.0)を乗じていることを示す。
【0097】
軸Aは、第三者機関x,y,zの3機関の評点Pから、評価者補正式で求めた結果を集計する。
【0098】
軸Bは、取引方針e,f,gの3方針の評点Pから、評価者補正式で求めた結果を集計する。
【0099】
軸Cは、法令対応h,i,jの3対応の評点Pから、評価者補正式で求めた結果を集計する。
【0100】
軸Dは、企業が収集、作成したリスト(取引が推奨されない法人のネガティブリスト、ESG宣言を行っている法人リスト、有効な基本契約を締結している法人リストの対象法人か否か(対象法人は「1」、非対象法人は「0」)で、評価者補正式で求めた結果を集計する。
【0101】
軸Eは、自部門での独自評価u,v,w,の3つの評価項目の評点Pから、評価者補正式で求めた結果を集計する。
【0102】
軸Fは、同種の取引類型での他部門r,s,t,の3部門の評価軸Eの評点Pから、評価者補正式で求めた結果を集計する。
【0103】
図11は、第三者機関によるリスク評価である軸A評価値の一例を示す。
図12は、発注金額による評価例である軸B評価値を示す。
図13は、法令対応による評価例である軸C評価値を示す。
図14は、自社基準による推奨/非推奨リストである軸D評価値を示す。
図15は、方針や規程ではカバーしていない評価軸での自部門での独自評価リストの一例である軸E評価値を示す。
図16は、同種取引での他部門の独自評価の一例である軸F評価値を示す。
【0104】
そして、
図17に示すように、各法人a~fの各軸A~Fについての評価値にビジネスルールの評価軸ウエイトを乗じて総合評価値を求める。次に、
図18に示すように、
図17に示した評価結果を並べ替えて総合評価の高い順に一覧表示する。
【0105】
また、
図19に示すように、対象法人aが、推奨合格値(例えば0.5)に達するために必要な各軸の最適な評価値を示し、非推奨の法人と取引を行うための何を改善すれば良いかを示す。
【0106】
尚、本事例では、実現可能性の高い改善策として、現状の評点Pからの乖離を最小化する為に、
図20に示すように、対象法人が改善しなければならない各軸のポイント数と、その最小二乗和を最小にする組合せを演算して表示する。
【0107】
なお、表示例としては、
図21に示すように、各法人a~fの評価結果をレーダーチャートで表示するようにする。また、
図22に示すように、各法人a~fの評価結果を一つのレーダーチャートに重ねて表示するようにしてもよい。
【0108】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これは一例であり、発明の範囲を限定するものではない。実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0109】
10…レコメンデーション装置、11…評価マスタ、12…ビジネスルールマスタ、13…法人マスタ、14…イベント情報収集部、15…イベント評価部、16…ビジネスルール変換部、17…オープンデータ収集部、18…法人推奨部(推奨処理部)、20…既存システム、21…与信限度額管理システム、22…RFx管理システム、23…オーダ管理システム、24…在庫管理システム、25…債権債務管理システム
【要約】
【課題】取引先候補となる企業の推奨を行うレコメンデーション装置およびレコメンデーション方法。
【解決手段】オープンデータ収集部17は、取引先候補企業に関する公開あるいは販売されている企業情報をオープンデータとして収集し、法人マスタ13に登録する。ビジネスルール変換部16は、取引主体企業のコンプライアンス方針、ESG方針、販売や購買の方針、政策、規程等を収集し、収集された各情報を定式化してビジネスルールマスタ12に登録する。イベント評価部15は、イベント情報収集部14によって収集された過去の取引実績情報や外部の評価データに基づきビジネスルールマスタ12を参照して取引先企業に対する評価軸毎の評価結果を評価マスタ11に登録する。法人推奨部18は、取引先企業に関する推奨要求があると、法人マスタ13、評価マスタ11およびビジネスルールマスタ12を参照して取引先として推奨できる企業を提示する。
【選択図】
図1