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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】めっき皮膜及びめっき皮膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20230124BHJP
   C03C 17/25 20060101ALI20230124BHJP
   C23C 18/36 20060101ALI20230124BHJP
   C23C 18/38 20060101ALI20230124BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20230124BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20230124BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20230124BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C23C18/18
C03C17/25 A
C23C18/36
C23C18/38
C23C18/40
C25D7/00 H
H05K3/18 A
H05K3/18 E
H05K3/18 G
H05K3/38 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022567694
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2022022268
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021105229
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022003941
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佃 真優
(72)【発明者】
【氏名】長尾 敏光
(72)【発明者】
【氏名】片山 順一
(72)【発明者】
【氏名】島田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】速水 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】坂田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】福 秀平
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 あすか
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188843(WO,A1)
【文献】特開平8-144061(JP,A)
【文献】特開2001-32086(JP,A)
【文献】特表2015-509146(JP,A)
【文献】国際公開第2005/038086(WO,A1)
【文献】特開平7-309638(JP,A)
【文献】特許第6917587(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/18
C03C 17/25
C23C 18/36
C23C 18/38
C23C 18/40
C25D 7/00
H05K 3/18
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上にめっき皮膜を形成するめっき皮膜の製造方法であって、
(I)ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させて、前記ガラス基板上に酸化物層を形成する工程I、
(II)前記酸化物層上に、触媒を付与する工程II、
(III)前記触媒を付与した前記酸化物層のフッ素を除去する工程III、
(IV)前記触媒を付与した前記酸化物層上に、無電解めっき皮膜を形成する工程IV、及び、
(V)前記無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜を形成する工程Vを有する、
ことを特徴とするめっき皮膜の製造方法。
【請求項2】
前記工程IIIにおけるフッ素を除去する工程は、前記触媒を付与した前記酸化物層をアニールする工程、及び、前記触媒を付与した前記酸化物層をアルカリ溶液に接触させる工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程である、請求項に記載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項3】
前記無電解めっき皮膜は、無電解銅めっき皮膜である、請求項に記載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項4】
前記無電解銅めっき皮膜の平均結晶粒子径は、500nm以下である、請求項3に記載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項5】
前記無電解めっき皮膜は、無電解ニッケル-リンめっき皮膜である、請求項1に記載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項6】
前記無電解ニッケル-リンめっき皮膜のリン含有量は、無電解ニッケル-リンめっき皮膜を100質量%として4質量%以上である、請求項5に記載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項7】
前記無電解ニッケル-リンめっき皮膜の厚みは、0.5μm以上である、請求項5に記載のめっき皮膜の製造方法。
【請求項8】
前記酸化物層は、チタン、ケイ素、錫、ジルコニウム、亜鉛、ニッケル、インジウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、及び銅から選択される少なくとも1種の元素を含有する、請求項1~7のいずれかに記載のめっき皮膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき皮膜及びめっき皮膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、プリント配線板が用いられている。プリント配線板では、一般に、基材上に無電解めっき(Ni、Cu等)を施した後、硫酸銅めっきを施すことで、回路を構成する。更に、Niめっき、Auめっき等を施し、はんだ付けをすることで、プリント配線板が形成される。
【0003】
近年、電子機器の通信高速化が進んでいる。通信の高速化には、高周波が用いられていることから、配線を形成する基材は、平滑性が重要である。そこで、ガラス基板のように平滑な基材上に、めっきを施す場合、めっきを析出させて、めっきの密着性を向上させることが求められる。
【0004】
特許文献1は、導体回路に用いられるポリイミド樹脂基板の表面に無電解ニッケルめっき皮膜を形成する無電解めっき方法を開示している。しかしながら、特許文献1に記載の無電解めっき方法では、表面が平滑な基材へのめっきの密着性については検討されておらず、ガラス基板への密着性が十分でないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-255460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化物層、無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜をこの順に有するめっき皮膜によれば、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記のめっき皮膜、及びめっき皮膜の製造方法に関する。
1.酸化物層、無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜をこの順に有することを特徴とするめっき皮膜。
2.前記無電解めっき皮膜は、無電解ニッケル-リンめっき皮膜である、項1に記載のめっき皮膜。
3.前記無電解ニッケル-リンめっき皮膜のリン含有量は、無電解ニッケル-リンめっき皮膜を100質量%として4質量%以上である、項2に記載のめっき皮膜。
4.前記無電解ニッケル-リンめっき皮膜の厚みは、0.5μm以上である、項2又は3に記載のめっき皮膜。
5.前記無電解めっき皮膜は、無電解銅めっき皮膜である、項1に記載のめっき皮膜。
6.前記無電解銅めっき皮膜の平均結晶粒子径は、500nm以下である、項5に記載のめっき皮膜。
7.前記酸化物層は、チタン、ケイ素、錫、ジルコニウム、亜鉛、ニッケル、インジウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、及び銅から選択される少なくとも1種の元素を含有する、項1~6のいずれかに記載のめっき皮膜。
8.ガラス基板上に、酸化物層、無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜をこの順に有することを特徴とするめっき品。
9.ガラス基板上にめっき皮膜を形成するめっき皮膜の製造方法であって、
(1)ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させて、前記ガラス基板上に酸化物層を形成する工程1、
(2)前記酸化物層のフッ素を除去する工程2、
(3)前記酸化物層上に、触媒を付与する工程3、
(4)前記触媒を付与した前記酸化物層上に、無電解めっき皮膜を形成する工程4、及び、
(5)前記無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜を形成する工程5を有する、
ことを特徴とするめっき皮膜の製造方法。
10.前記工程2におけるフッ素を除去する工程は、前記酸化物層をアニールする工程、及び、前記酸化物層をアルカリ溶液に接触させる工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程である、項9に記載のめっき皮膜の製造方法。
11.前記無電解めっき皮膜は、無電解ニッケル-リンめっき皮膜である、項9又は10に記載のめっき皮膜の製造方法。
12.ガラス基板上にめっき皮膜を形成するめっき皮膜の製造方法であって、
(I)ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させて、前記ガラス基板上に酸化物層を形成する工程I、
(II)前記酸化物層上に、触媒を付与する工程II、
(III)前記触媒を付与した前記酸化物層のフッ素を除去する工程III、
(IV)前記触媒を付与した前記酸化物層上に、無電解めっき皮膜を形成する工程IV、及び、
(V)前記無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜を形成する工程Vを有する、
ことを特徴とするめっき皮膜の製造方法。
13.前記工程IIIにおけるフッ素を除去する工程は、前記触媒を付与した前記酸化物層をアニールする工程、及び、前記触媒を付与した前記酸化物層をアルカリ溶液に接触させる工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程である、項12に記載のめっき皮膜の製造方法。
14.前記無電解めっき皮膜は、無電解銅めっき皮膜である、項12又は13に記載のめっき皮膜の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のめっき皮膜は、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮することができる。また、本発明のめっき皮膜の製造方法は、ガラス基板上に良好な密着性を示すめっき皮膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】無電解めっき皮膜の結晶粒子径の測定方法を示す図である。図1は、ガラス基板上の酸化物層と無電解めっき皮膜との界面部(界面から300nmまでの間)のSEM像である。
図2】無電解めっき皮膜の結晶粒子径の測定方法を示す図である。図2は、図1中の結晶粒子の拡大図である。
図3】本発明の第1実施形態の製造方法の一例を示すフロー図である。
図4】本発明の第2実施形態の製造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
なお、本発明のめっき皮膜においては、酸化物層側(ガラス基板に積層される側)とは反対側(電解銅めっき皮膜側)の面が視認される面である。本明細書では、電解銅めっき皮膜側の面の方向を「上」又は「表面」と称し、その反対側、すなわち酸化物層側の面の方向を「下」又は「裏面」と称することがある。
【0013】
1.めっき皮膜
本発明のめっき皮膜は、酸化物層、無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜をこの順に有することを特徴とするめっき皮膜である。本発明のめっき皮膜は、ガラス基板に接する層として酸化物層を有しており、当該酸化物層とガラス基板との密着性に優れている。また、本発明のめっき皮膜は、酸化物層の上に無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜をこの順に有しているので、これらの層間の密着性に優れている。このため、本発明のめっき皮膜は、ガラス基板に対して優れた密着性を示すことができる。
【0014】
(酸化物層)
酸化物層を形成する酸化物としては、ガラス基板に密着性を示すことができる酸化物であれば特に限定されず、例えば、チタン、ケイ素、錫、ジルコニウム、亜鉛、ニッケル、インジウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅等の金属を含有する酸化物が挙げられる。これらの金属は、1種単独で含有されていてもよいし、2種以上が混合して含有されていてもよい。
【0015】
上記酸化物層を形成する酸化物としては、具体的には、SnO、TiO、SiO等が挙げられる。また、SnO、TiO、SiO、SnO等のうち2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
酸化物層は、後述する製造方法において、ガラス基板の表面が、フッ素と、酸化物前駆体イオンを含む反応溶液と接触し、反応することにより形成される。このため、酸化物層はフッ素を含有する。当該フッ素は、無電解めっき皮膜に悪影響を及ぼすため、酸化物層のフッ素の含有量は少ないことが好ましく、後述のようにフッ素を除去する工程2において、アニール(以下、本明細書において「ベーキング」とも示す。)処理によりフッ素が除去される。
【0017】
酸化物層中のフッ素含有量は、酸化物層を100質量%として、8質量%以下が好ましく、3質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。より具体的には、めっき皮膜の製造方法において後述する、アニール処理等のフッ素を除去する工程2を行わない場合には、酸化物層中のフッ素含有量は4~8質量%が好ましく、150℃でアニール処理を施した場合は1質量%以下が好ましく、550℃でアニール処理を施した場合は0.1質量%以下が好ましい。酸化物層中の残留フッ素量の下限は少なければ少ないほどよく、0質量%であってもよい。しかし、後述する製造方法のように、フッ素を含む反応溶液を用いて、液中処理で形成された酸化物層中の残留フッ素を0質量%にすることは困難である。したがって、フッ素の含有量は、検出装置の検出限界以下でよく、例えば0.01質量%程度が好ましい。
【0018】
酸化物層に対して、常法に従って、Sn触媒、Ag触媒、Pd触媒等の金属触媒核を付着させた後に、後述する無電解めっき皮膜を形成してもよい。
【0019】
酸化物層の厚みは特に限定されず、30~150nmが好ましい。
【0020】
(無電解めっき皮膜)
本発明のめっき皮膜は、酸化物層上に無電解めっき皮膜を有する。本発明のめっき皮膜が無電解めっき皮膜を有することで、電解銅めっき皮膜の密着性が良好となる。
【0021】
本発明のめっき皮膜は、酸化物層を有するため、当該酸化物層と無電解めっき皮膜との密着性に優れるので、公知の無電解めっき皮膜を形成すればよい。このような無電解めっき皮膜としては、無電解ニッケル-リン(Ni-P)めっき皮膜、無電解銅めっき皮膜、無電解ニッケル-ホウ素(Ni-B)めっき皮膜等が挙げられる。これらの中でも、酸化物層との密着性がより向上する点で、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解銅めっき皮膜が好ましい。
【0022】
無電解ニッケル-リンめっき皮膜のリン含有量は、無電解ニッケル-リンめっき皮膜を100質量%として4質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。リン含有量の下限が上記範囲であることにより、酸化皮膜と無電解めっき皮膜との密着性がより一層向上する。また、上記リン含有量の上限は特に限定されず、20質量%以下程度であればよい。なお、上記無電解ニッケル-リンめっき皮膜のリン含有量は、リン元素としての含有量である。
【0023】
無電解ニッケル-リンめっき皮膜の酸化物層界面近傍における含リン率(リン含有量)は、好ましくは、9.3質量%以上であり、より好ましくは、10.5質量%以上であり、更に好ましくは、11.5質量%以上である。無電解ニッケル-リンめっき皮膜の酸化物層界面近傍における含リン率は、高い方が好ましいが、上限値は、好ましくは、15.0質量%以下であり、より好ましくは、14.0質量%以下である。本発明のめっき皮膜が有する無電解ニッケル-リンめっき皮膜は、ガラス界面近傍における含リン率が高く、ガラスと無電解Ni-Pめっき皮膜中のリンとの親和性が上昇し、めっき密着性が向上する。
【0024】
本明細書において、「無電解ニッケル-リンめっき皮膜の酸化物層界面近傍におけるリン含有量」の「酸化物層界面近傍」とは、無電解ニッケル-リンめっき皮膜の膜厚において、酸化物層界面から、好ましくは、約1%~50%の厚みの部分、より好ましくは、約1%~25%の厚みの部分を指す。
【0025】
例えば、無電解ニッケル-リンめっき皮膜の膜厚を2μmとする場合は、その膜厚において、酸化物層側から、好ましくは、約1%~50%の厚みの部分、つまり、約1μmの厚みの部分、より好ましくは、約1%~25%の厚みの部分、つまり、約0.5μmの厚みの部分を酸化物層界面近傍という。
【0026】
無電解銅めっき皮膜の水分含有量は、無電解銅めっき皮膜を100質量%として0.01質量%以下が好ましく、0.001質量%以下がより好ましい。水分含有量が上記範囲であることにより、酸化皮膜と無電解めっき皮膜との密着性がより一層向上する。また、水分含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
【0027】
無電解銅めっき皮膜の水分含有量は、無電解銅めっき皮膜を形成後、40~400℃程度の温度でアニールを行うことにより低減させることができる。
【0028】
無電解銅めっき皮膜の平均結晶粒子径は、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、90nm以下が特に好ましく、80nm以下が最も好ましい。平均結晶粒子径の上限が上記範囲であることにより、酸化皮膜と無電解めっき皮膜との密着性がより一層向上する。また、無電解銅めっき皮膜の平均結晶粒子径の下限は特に限定されず、10nm程度である。
【0029】
本明細書において、無電解めっき皮膜の平均結晶粒子径は、図1及び図2に示す測定方法により測定することができる。図1は、ガラス基板上の酸化物層と無電解めっき皮膜との界面部(界面から300nmまでの間)のSEM像であり、図2は、図1中の結晶粒子の拡大図である。具体的には、図1に示すように、ガラス基板上の酸化物層と無電解めっき皮膜との界面部(界面から300nmまでの間)のSEM像を撮影し、図2に示すように、結晶粒子の縦方向(SEM像において、界面部と垂直方向)の最長径と、横方向(SEM像において、界面部と水平方向)の最長径とを測定し、下記式に基づいて算出する。
結晶粒子径(nm)=(縦方向の最長径(nm)+横方向の最長径(nm))/2
各無電解めっき皮膜について15点測定し、平均値を平均結晶粒子径とする。
【0030】
無電解めっき皮膜の厚みは、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましく、0.5μm以上が特に好ましく、0.8μm以上が最も好ましい。また、無電解めっき皮膜の厚みは、3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。無電解めっき皮膜の厚みが上記範囲内であると、応力が低減され、めっき密着性がより向上する。
【0031】
(電解銅めっき皮膜)
本発明のめっき皮膜は、無電解めっき皮膜上に電解銅めっき皮膜を有する。
【0032】
電解銅めっき皮膜としては特に限定されず、回路基板に用いられる公知の電解銅めっき皮膜が挙げられる。
【0033】
銅めっき皮膜としては特に限定されず、例えば、硫酸銅めっき皮膜、ピロリン酸銅めっき皮膜等が挙げられる。これらの中でも、よりめっき密着性に優れる点で、硫酸銅めっき皮膜が好ましい。
【0034】
電解銅めっき皮膜の膜厚は、好ましくは、0.5μm以上であり、より好ましくは、0.7μm以上であり、更に好ましくは、1.0μm以上である。電解銅めっき皮膜の膜厚は、上限値は、特に限定されない。本発明のめっき皮膜が有する電解銅めっき皮膜は、上記範囲内であると、めっき密着性がより向上する。
【0035】
2.めっき品
本発明のめっき品は、ガラス基板上に、酸化物層、無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜をこの順に有するめっき品である。
【0036】
(ガラス基板)
本発明のめっき品では、ガラス基板としては特に限定されず、各種電子デバイスの回路基板として用いられる公知のガラス基板を用いることができる。ガラス基板は、好ましくは、例えば、配線を形成する基材であり、通信高速化が進んでいる電子機器の作製に用いるガラス基板である。
【0037】
ガラス基板は、シリカネットワークからなる非晶質基板であり、アルミニウム、ホウ素、リン等のネットワークフォーマー(網目形成酸化物)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マグネシウム等のネットワークモディファイヤー(網目修飾酸化物)を含んでいてもよい。
【0038】
ガラス基板を構成するガラスとしては、具体的には、例えば、ソーダガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等を用いる。ガラスは、また、好ましくは、強化ガラスとして用いられるアルミノシリケートガラス等のガラスからなるガラス基板が挙げられる。
【0039】
ガラス基板の厚みは特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができるが、300~1000μm程度である。
【0040】
なお、上記ガラス基板に代えて、他の基板を用いた場合にも、当該他の基板と酸化物層との間で密着性を示すことができる。このような他の基板としては、金属基板、カーボン基板、樹脂基板、樹脂フィルム、セラミック基板、シリコン基板等が挙げられる。基板の中でも平滑であり、誘電率や誘電正接が低く信号特性に優れており、熱膨張率が低いため寸法安定性が良く、低コストで大量生産できる点でガラス基板が好ましく、本発明のめっき品は、ガラス基板と酸化物層との間で優れた密着性を示すことができる点で有用である。
【0041】
上記金属基板を形成する金属としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、鉄、チタン、ニッケル、亜鉛、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、黄銅、ネオジウム、ステンレス鋼、コバール、フェライト等が挙げられる。
【0042】
上記樹脂基板としては、例えば、繊維強化プラスチック基板(FRP、CFRP、GFRP)、紙フェノール基板(FR-1、FR-2)、紙エポキシ基板(FR-3)、ガラスエポキシ基板(FR-4、FR-5)、ガラスコンポジット基板(CEM-3)、ガラスポリイミド基板(GPY)、フッ素樹脂基板(PTFE、PFA、PVDF)、PPO基板(ポリフェニレンオキシド)等が挙げられる。
【0043】
上記樹脂フィルムを形成する樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)等が挙げられる。
【0044】
上記セラミック基板としては、例えば、アルミナ基板、アルミナジルコニア基板、窒化アルミニウム基板(AlN)、窒化ケイ素基板(Si)等が挙げられる。
【0045】
本発明のめっき品において、酸化物層、無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜は、上述のめっき皮膜において説明したものと同一である。
【0046】
3.めっき皮膜の製造方法
(第1実施形態)
本発明のめっき皮膜の製造方法は、ガラス基板上にめっき皮膜を形成するめっき皮膜の製造方法であって、
(1)ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させて、前記ガラス基板上に酸化物層を形成する工程1、
(2)前記酸化物層のフッ素を除去する工程2、
(3)前記酸化物層上に、触媒を付与する工程3、
(4)前記触媒を付与した前記酸化物層上に、無電解めっき皮膜を形成する工程4、及び、
(5)前記無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜を形成する工程5を有する、
めっき皮膜の製造方法である。以下、上記本発明のめっき皮膜の製造方法の形態を、「第1実施形態」とも示す。
【0047】
上記第1実施形態の製造方法は、工程4の無電解めっき皮膜を形成する工程において、無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成する場合に好適に適用することができる。上記第1実施形態の製造方法の一例のフロー図を図3に示す。
【0048】
以下、第1実施形態の製造方法の各工程について説明する。
【0049】
(工程1)
工程1は、ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させて、前記ガラス基板上に酸化物層を形成する工程である。
【0050】
ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させる方法としては特に限定されず、例えば、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液で満たした水槽にガラス基板を浸漬、スプレー噴霧、又は、塗布する方法を好適に利用することができる。
【0051】
酸化物層が上述のように液相で形成される場合、酸化物層はガラス基板のスルーホールの内壁にも形成することができ、緻密な連続膜が形成される。ここで、連続膜とは、ガラス基板の被処理面との間で隙間を作らず、また被処理面全体にわたって、形成されていない部分(いわゆる「膜の抜け」)の発生が抑制されている状態をいう。
【0052】
また、酸化物層が上述のように液相で形成される場合、酸化物層はブラインドビアの内壁にも均一に形成することができる。
【0053】
反応溶液は、フッ素及び酸化物前駆体を含む。酸化物前駆体としては、チタン、ケイ素、錫、ジルコニウム、亜鉛、ニッケル、インジウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅等の酸化物前駆体イオンを含む水溶液を用いることができる。これらの酸化物前駆体イオンは、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
上記酸化物前駆体イオンはMn+(M:前駆体元素、n:イオンの価数)の形態で存在していてもよく、前駆体元素のフッ化物、又は酸化物をフッ化水素酸に溶解させて得ることができる。
【0055】
反応溶液には、フッ化物を別途添加してもよい。フッ化物としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0056】
酸化物前駆体イオンはフルオロ錯体(例えば、MF 2- M:前駆体元素)の形態で存在していてもよく、HMF、又は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の形態で存在していてもよい。
【0057】
反応溶液は、フッ素を含むため、ガラス基板の表面を溶解(エッチング)する可能性があるため、pHを制御して、エッチングを抑制してもよい。反応溶液のpHは、12以下が好ましい。
【0058】
ガラス基板と反応との接触温度は、高い方が好ましく、より好ましくは20~80℃、更に好ましくは30~70℃である。反応時間は必要とする酸化物層の膜厚によって適宜調整すればよい。反応時間と膜厚とは、概ね直線的な関係があり、反応時間を調整することで、数nmから数十μmの膜厚とすることができる。
【0059】
反応溶液の組成としては、例えば、酸化物前駆体を1mmol/L以上含有し、且つ、それを完全に溶解させるだけのフッ素を含んでいればよい。酸化物前駆体の含有量の上限は特に限定されず、酸化物前駆体の溶解度以下であればよい。
【0060】
反応溶液中の酸化物前駆体と、フッ素とのモル比は特に限定されず、酸化物前駆体が溶解可能な分量のフッ素があればよく、好ましくは酸化物前駆体1モルに対して、フッ素が2モル以上である。
【0061】
酸化物層は、ホウ酸塩、アルミニウム塩、過酸化水素等の添加剤を含有することにより、ホウ素又はアルミニウムの元素を含んでいてもよい。反応溶液がホウ酸塩、アルミニウム塩、過酸化水素等の添加剤を含有することで、酸化物層の成膜速度をより向上させることができる。以下、当該作用機序を、酸化物前駆体としてヘキサフルオロチタン酸イオン(TiF 2-)を用いる場合を例として説明する。
【0062】
ヘキサフルオロチタン酸イオン(TiF 2-)を用いる場合、下記式(1)の反応により酸化物層としてTiOをガラス基板の表面に成膜することができる。
【0063】
TiF 2-+2HO=TiO+6F+4H (1)
【0064】
上記式(1)の反応は、TiF62-の加水分解反応であり、ホウ酸塩、アルミニウム塩、過酸化水素等の添加剤を添加することにより加速される。例えば、ホウ酸を添加すると、上記式(1)の右辺のFが、下記式(2)の反応により、BF となる。その結果、上記式(1)の反応が右に進行することとなり、ガラス基板の表面への酸化チタンの形成を加速できる。反応開始剤は、ホウ酸に限らず、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸カリウム等の塩であってもよい。
【0065】
BO+4H+4F=H+BF +3HO (2)
【0066】
同様に、アルミニウムイオン源を反応開始剤として添加すると、下記式(3)の反応により、AlF 3-が生成することで、上記式(1)の反応が右に進行する。その結果、ガラス基板の表面への酸化チタンの形成を加速できる。アルミニウムイオン源は、金属アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等の無機酸塩、クエン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、酢酸アルミニウム等の有機酸塩を好適に使用できる。
【0067】
Al3++6F=AlF 3- (3)
【0068】
また、フッ素イオンとの錯形成能はないが、過酸化水素も反応開始剤として好適に利用することができる。過酸化水素は、フルオロチタン酸イオンを加水分解する特性がある。結果、チタンペルオキソ錯体が生成される。これは酸化チタンの前駆体であり、この状態でガラス基板の表面と接触させることで、酸化チタンをガラス基板の表面上に析出させ、酸化物層の形成を促進させることができる。
【0069】
反応中、ガラス基板の表面に酸化物層が形成されるとともに、酸化物が反応溶液中に粒子として発生する場合がある。その際は、反応溶液中の粒子を除去するために、一部の反応溶液を引き抜いてフィルタでろ過した後、返送する工程を行ってもよい。当該工程を「フィルタ工程」という。
【0070】
以上説明した工程1により、ガラス基板の表面に、酸化物層が形成される。
【0071】
(工程2)
工程2は、酸化物層のフッ素を除去する工程である。
【0072】
工程1により形成した酸化物層には、フッ素が残留する。この残留フッ素は、水による洗浄や放置によっても消失、揮発が困難である。一方、後述する工程4により、触媒を付与した酸化物層上に無電解めっき皮膜が形成されると、残留フッ素は、積層時の化学処理、積層後の熱処理等で酸化物層から脱離し、無電解めっき皮膜に悪影響を及ぼす。このため、工程1により酸化物層を形成した後に、工程2によりフッ素の除去を行う。
【0073】
本発明の製造方法により得られるめっき皮膜では、酸化物層中のフッ素含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下が好ましい。酸化物層中のフッ素含有量が上記範囲であると、後述する工程3において酸化物層上に付与された触媒の密着性がより向上する。酸化物層中の残留フッ素量は少なければ少ないほどよく、0質量%であってもよい。しかし、フッ素を含む反応溶液を用いて、液中処理で形成された酸化物層中の残留フッ素を0質量%にすることは困難である。したがって、フッ素の含有量は、検出装置の検出限界以下でよく、例えば0.01質量%である。
【0074】
一方、酸化物層中のフッ素含有量が1.0質量%を超えると、無電解めっき皮膜を積層した際、又はその後の継時変化によりフッ素が酸化物層から脱離し、無電解めっき皮膜を持ち上げることで、ムラ、微小膨れ、割れ、剥離が発生するおそれがある。また、後述する工程3において酸化物層上に、無電解めっきのために付与する触媒の担持量が減少し、無電解めっき皮膜が形成し難くなるおそれがある。
【0075】
酸化物層のフッ素を除去する方法としては、酸化物層からフッ素を除去できれば特に限定されず、具体的には、酸化物層の膜厚と、酸化物層に用いた金属種により好適な方法が異なる。工程2におけるフッ素を除去する工程は、酸化物層をアニールする工程、及び、酸化物層をアルカリ溶液に接触させる工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程であることが好ましい。以下、具体的に説明する。
【0076】
酸化物層の膜厚が200nm以上であれば、金属種にかかわらず100℃~150℃のアニール処理、及び、pH10.5以上の溶液によるアルカリ溶液処理の併用によって、酸化物層中のフッ素を除去することが好ましい。
【0077】
また、膜厚が200nm未満の場合であって、酸化物層の金属種がSn(錫)、Al(アルミニウム)、Zn(亜鉛)、Be(ベリリウム)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Pb(鉛)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)、Cd(カドミウム)等の両性酸化物を用いる場合は、100℃~150℃のアニール処理とpH10.5以上の溶液によるアルカリ溶液処理の併用か、又は、150℃以上のアニール処理によって酸化物層のフッ素を除去することが好ましい。
【0078】
アニール処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気が挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニア等である。
【0079】
また、膜厚が200nm未満の場合であって、酸化物層の金属種が両性酸化物でない場合は、150℃以上のアニール処理、又は、pH10.5以上のアルカリ溶液処理により酸化物層のフッ素を除去することができる。
【0080】
以上説明した工程2により、酸化物層のフッ素が除去される。
【0081】
(工程3)
工程3は、酸化物層上に、触媒を付与する工程である。
【0082】
工程3では、後述する工程4において無電解めっき皮膜を形成することができる触媒を付与し、担持させることが好ましい。このような触媒を付与することができる触媒溶液は、金、パラジウム、銀等の金属イオンを含む溶液が挙げられ、それらに、酸化物層を形成したガラス基板を接触することで触媒の付与が施される。これは、触媒溶液を満たした水槽に酸化物層を有するガラス基板を浸漬、又は、スプレー噴霧、塗布等の方法を好適に利用することができる。担持された触媒は、触媒層と称してもよい。すなわち、触媒層は酸化物層の直上に形成される層であってもよい。
【0083】
酸化物層への触媒の担持は、表面吸着、酸化物層内への拡散によるものであり、通常、イオンの状態で担持される。これが後述する工程4における無電解めっき皮膜の形成において、めっき液に含まれる還元剤により金属に還元され、触媒核として作用するため、めっき皮膜が形成されることとなる。
【0084】
工程4の前に、あらかじめ触媒を金属化したい場合は、工程3の前に、二価のスズイオン(Sn2+)を含む溶液に晒し、Sn2+を担持させることで感受化した後、触媒溶液に晒せばよい。又は、触媒溶液に晒した後、無電解めっき前に還元剤に晒すことでも触媒を金属化することができる。
【0085】
酸化物層としてSnOを成膜する場合、層内にSn2+を潤沢に含むため、これが還元剤として機能するので、工程3において、金属状態で触媒を担持することができる。
【0086】
工程3における触媒を付与する工程としては、具体的には、
(3-1)酸化物層の表面に、錫(Sn)触媒を付与する工程3-1、
(3-2)前記Sn触媒付与後、銀(Ag)触媒を付与する工程3-2、
(3-3)前記Ag触媒付与後、パラジウム(Pd)触媒を付与する工程3-3
を有する工程であることが好ましい。また、工程3としては、上記工程3-3の後に、
(3-4)前記Pd触媒付与後、熱処理を行う工程3-4、
(3-5)前記熱処理後、還元処理を行う工程3-5
を有していてもよい。以下、これらの工程について説明する。なお、工程3-4及び工程3-5は、後述する工程4において無電解めっき皮膜として無電解銅めっき皮膜を形成する場合に行えばよく、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解ニッケル-ホウ素めっき皮膜を形成する場合には行わなくてもよい。
【0087】
表1に、酸化物層上にめっき皮膜を形成する際の工程の一例を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
(工程3-1)
工程3-1は、酸化物層の表面に、錫(Sn)触媒を付与する工程である。
【0090】
酸化物層は、予め、脱脂処理、UV処理、プラズマ処理等の前処理を施しておくことが好ましい。
【0091】
酸化物層の表面に、Sn触媒を付与する工程は、好ましくは、Sn触媒を含む触媒付与液を用いる。Sn触媒付与液に含まれるSn化合物(Sn触媒)は、好ましくは、塩化スズ、ホウフッ化スズ、酸化スズ、硫酸スズ、酢酸スズ、スズ酸ナトリウム等である。Sn化合物(Sn触媒)として、好ましくは、塩化スズ、ホウフッ化スズ等を用いることで、めっき皮膜がより一層十分に析出し、めっき密着性が向上する。
【0092】
Sn化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
Sn触媒付与液中のSn化合物は、Sn濃度として、好ましくは、0.01g/L以上であり、より好ましくは、0.05g/L以上であり、更に好ましくは、0.1g/L以上である。Sn触媒付与液中のSn化合物は、Sn濃度として、好ましくは、10.0g/L以下であり、より好ましくは、7.0g/L以下であり、更に好ましくは、5.0g/L以下である。Sn濃度の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のSn触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Sn濃度の上限値を上記範囲とすることで、Sn触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0094】
酸化物層の表面に、Sn触媒を付与する工程は、好ましくは、Sn触媒を含む触媒付与液を用いて、Sn触媒付与液を、酸化物層に接触させる方法である。Sn触媒を付与する工程は、好ましくは、酸化物層を形成したガラス基板を、Sn触媒付与液中に浸漬する方法、酸化物層の表面に、Sn触媒付与液を噴霧する方法等である。
【0095】
Sn触媒を含む触媒付与液には、その他、好ましくは、無機酸、有機酸、芳香族化合物等を含む。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸等が挙げられる。芳香族化合物としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、フェノール、ベンジルアルコール、カテコール、キシレン、フタル酸等が挙げられる。
【0096】
Sn触媒を含む触媒付与液のpHは、好ましくは、pH0.3~3.0であり、より好ましくは、pH0.5~2.5であり、更に好ましくは、pH1.0~2.0である。Sn触媒を含む触媒付与液のpHの範囲を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。
【0097】
酸化物層を形成したガラス基板を、Sn触媒付与液中に浸漬する際、Sn触媒付与液の液温は、好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは、15℃以上であり、更に好ましくは、20℃以上である。Sn触媒付与液の液温は、好ましくは、50℃以下であり、より好ましくは、40℃以下であり、更に好ましくは、30℃以下である。液温の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のSn触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、液温の上限値を上記範囲とすることで、Sn触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0098】
酸化物層を形成したガラス基板を、Sn触媒付与液中に浸漬する時、Sn触媒付与の処理時間は、好ましくは、数秒以上であり、より好ましくは、30秒以上であり、更に好ましくは、1分以上である。Sn触媒付与の処理時間は、好ましくは、20分以下であり、より好ましくは、10分以下であり、更に好ましくは、5分以下である。Sn触媒付与の処理時間の下限値を上記範囲とすることで、ガラス表面に十分な量のSn触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Sn触媒付与の処理時間の上限値を上記範囲とすることで、Sn触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0099】
以上説明した工程3-1により、酸化物層の表面に、錫(Sn)触媒が付与される。
【0100】
(工程3-2)
工程3-2は、Sn触媒付与後、銀(Ag)触媒を付与する工程である。
【0101】
Sn触媒を付与した酸化物層に、Ag触媒を付与する工程は、好ましくは、Ag触媒を含む触媒付与液を用いる。Ag触媒付与液に含まれるAg化合物(Ag触媒)は、好ましくは、硝酸銀、塩化銀、硫化銀、リン酸銀、臭化銀、フッ化銀、ヨウ化銀、酸化銀等である。Ag化合物(Ag触媒)として、好ましくは、硝酸銀、塩化銀、硫化銀、リン酸銀等を用いることで、めっき皮膜がより一層十分に析出し、めっき密着性が向上する。
【0102】
Ag化合物は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0103】
Ag触媒付与液中のAg化合物は、Ag濃度として、好ましくは、0.1g/L以上であり、より好ましくは、0.2g/L以上であり、更に好ましくは、0.4g/L以上である。Ag触媒付与液中のAg化合物は、Ag濃度として、好ましくは、3.0g/L以下であり、より好ましくは、2.0g/L以下であり、更に好ましくは、1.6g/L以下である。Ag濃度の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のAg触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Ag濃度の上限値を上記範囲とすることで、Ag触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0104】
Sn触媒を付与した酸化物層の表面に、Ag触媒を付与する工程は、好ましく
は、Ag触媒を含む触媒付与液を用いて、Ag触媒付与液を、Sn触媒を付与した酸化物層に接触させる方法である。Ag触媒を付与する工程は、好ましくは、Sn触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を、Ag触媒付与液中に浸漬する方法、Sn触媒を付与した酸化物層の表面に、Ag触媒付与液を噴霧する方法等である。
【0105】
Ag触媒を含む触媒付与液には、その他、好ましくは、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸を含む。
【0106】
Ag触媒を含む触媒付与液のpHは、好ましくは、pH3.0~6.5であり、より好ましくは、pH4.0~6.0であり、更に好ましくは、pH5.0~5.5である。Ag触媒を含む触媒付与液のpHの範囲を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。
【0107】
Sn触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を、Ag触媒付与液中に浸漬する際、Ag触媒付与液の液温は、好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは、15℃以上であり、更に好ましくは、20℃以上である。Ag触媒付与液の液温は、好ましくは、50℃以下であり、より好ましくは、40℃以下であり、更に好ましくは、30℃以下である。液温の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のAg触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、液温の上限値を上記範囲とすることで、Ag触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0108】
Sn触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を、Ag触媒付与液中に浸漬する際、Ag触媒付与の処理時間は、好ましくは、数秒以上であり、より好ましくは、10秒以上であり、更に好ましくは、30秒以上である。Ag触媒付与の処理時間は、好ましくは、10分以下であり、より好ましくは、5分以下であり、更に好ましくは、2分以下である。Ag触媒付与の処理時間の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のAg触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Ag触媒付与の処理時間の上限値を上記範囲とすることで、Ag触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0109】
以上説明した工程3-2により、酸化物層にSn触媒付与後、銀(Ag)触媒が付与される。
【0110】
(工程3-3)
工程3-3は、Ag触媒付与後、パラジウム(Pd)触媒を付与する工程である。
【0111】
Ag触媒を付与した酸化物層に、Pd触媒を付与する工程は、好ましくは、Pd触媒を含む触媒付与液を用いる。Pd触媒付与液に含まれるPd化合物(Pd触媒)は、好ましくは、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、酸化パラジウム、臭化パラジウム等である。Pd化合物(Pd触媒)として、好ましくは、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム等を用いることで、めっき皮膜がより一層十分に析出し、めっき密着性が向上する。
【0112】
Pd化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
Pd触媒付与液中のPd化合物は、Pd濃度として、好ましくは、0.05g/L以上であり、より好ましくは、0.1g/L以上であり、更に好ましくは、0.15g/L以上である。Pd触媒付与液中のPd化合物は、Pd濃度として、好ましくは、1g/L以下であり、より好ましくは、0.7g/L以下であり、更に好ましくは、0.5g/L以下である。Pd濃度の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Pd濃度の上限値を上記範囲とすることで、Pd触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0114】
Ag触媒を付与した酸化物層の表面に、Pd触媒を付与する工程は、好ましくは、Pd触媒を含む触媒付与液を用いて、Pd触媒付与液を、Ag触媒を付与した酸化物層に接触させる方法である。Pd触媒を付与する工程は、好ましくは、Ag触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を、Pd触媒付与液中に浸漬する方法、Ag触媒を付与した酸化物層の表面に、Pd触媒付与液を噴霧する方法等である。
【0115】
Pd触媒を含む触媒付与液には、その他、好ましくは、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸を含む。
【0116】
Pd触媒を含む触媒付与液のpHは、好ましくは、pH0.3~3.0であり、より好ましくは、pH0.5~2.5であり、更に好ましくは、pH1.0~2.0である。Pd触媒を含む触媒付与液のpHの範囲を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。
【0117】
Ag触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を、Pd触媒付与液中に浸漬する際、Pd触媒付与液の液温は、好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは、15℃以上であり、更に好ましくは、20℃以上である。Pd触媒付与液の液温は、好ましくは、50℃以下であり、より好ましくは、40℃以下であり、更に好ましくは、30℃以下である。液温の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、液温の上限値を上記範囲とすることで、Pd触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0118】
Ag触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を、Pd触媒付与液中に浸漬する際、Pd触媒付与の処理時間は、好ましくは、数秒以上であり、より好ましくは、10秒以上であり、更に好ましくは、30秒以上である。Pd触媒付与の処理時間は、好ましくは、10分以下であり、より好ましくは、5分以下であり、更に好ましくは、2分以下である。Pd触媒付与の処理時間の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Pd触媒付与の処理時間の上限値を上記範囲とすることで、Pd触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0119】
以上説明した工程3-3により、Ag触媒付与後、パラジウム(Pd)触媒が付与される。
【0120】
なお、上記工程3における触媒を付与する工程では、工程3-1及び工程3-3を有していればよく、工程3-2を行わなくてもよい。また、工程3-2を行わす、工程3-1及び工程3-3を行う場合は、工程3-1及び工程3-3を、2~5回程度で複数回繰り返してもよい。
【0121】
(触媒付与液の添加剤)
上記Sn触媒、Ag触媒、Pd触媒等の触媒付与液には、その他、必要に応じて、好ましくは、各種の添加剤を配合する。添加剤は、好ましくは、例えば、安定剤、pH緩衝剤、界面活性剤等である。
【0122】
安定剤は、好ましくは、例えば、硝酸鉛、酢酸鉛等の鉛塩;硝酸ビスマス、酢酸ビスマス等のビスマス塩;チオ硫酸ナトリウム等の硫黄化合物等を、1種単独で用いるか、又は2種以上を組み合わせて添加する。安定剤を添加する場合、その添加量は、好ましくは、例えば、0.01mg/L~100mg/L程度とする。
【0123】
pH緩衝剤は、好ましくは、例えば、酢酸、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、炭酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を、1種単独で用いるか、又は2種以上を組み合わせて添加する。pH緩衝剤を添加する場合、その添加量は、好ましくは、浴安定性等の観点から、0.002mol/L~1mol/L程度とする。
【0124】
界面活性剤は、好ましくは、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性等の各種界面活性剤を用いる。界面活性剤は、好ましくは、例えば、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ塩、芳香族又は脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩等を用いる。界面活性剤は、1種単独で用いるか、又は2種以上を組み合わせて添加する。界面活性剤を添加する場合、その添加量は、好ましくは、例えば、0.01~1,000mg/L程度とする。
【0125】
(工程3-4)
工程3-4は、Pd触媒付与後、熱処理を行う工程である。熱処理を行うことにより、触媒が酸化物層上で良好に拡散し、密着性がより一層向上する。なお、工程3-4は、後述する工程4において無電解めっき皮膜として無電解銅めっき皮膜を形成する場合に行えばよく、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解ニッケル-ホウ素めっき皮膜を形成する場合には行わなくてもよい。
【0126】
Pd触媒を付与したガラス基板に、熱処理を行う工程は特に限定されず、従来公知の方法により熱処理することができる。熱処理を行う工程は、好ましくは、Pd触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を加熱炉内で加熱する方法等により行うことができる。
【0127】
熱処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気が挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニア等である。
【0128】
Pd触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を熱処理する際、熱処理の温度は、好ましくは、150℃以上であり、より好ましくは、300℃以上であり、更に好ましくは、400℃以上であり、特に好ましくは、450℃以上であり、最も好ましくは、500℃以上である。熱処理の温度は、好ましくは、800℃以下であり、より好ましくは、750℃以下であり、更に好ましくは、700℃以下である。熱処理の温度を、好ましくは、150℃以上、800℃以下とすることで、金属触媒が酸化物層に強固に吸着し、金属触媒を介して密着強度の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0129】
Pd触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を熱処理する際、熱処理の時間は、好ましくは、1分以上であり、より好ましくは、2分以上であり、更に好ましくは、5分以上である。熱処理の時間は、好ましくは、60分以下であり、より好ましくは、30分以下であり、更に好ましくは、20分以下である。熱処理の時間を、好ましくは、1分以上、60分以下とすることで、短時間で金属触媒が酸化物層に強固に吸着し、金属触媒を介して密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0130】
以上説明した工程3-4により、Pd触媒付与後、熱処理が施される。
【0131】
(工程3-5)
工程3-5は、熱処理後、還元処理を行う工程である。還元処理を行うことにより、触媒が酸化物層上で良好に拡散し、密着性がより一層向上する。なお、工程3-5は、後述する工程4において無電解めっき皮膜として無電解銅めっき皮膜を形成する場合に行えばよく、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解ニッケル-ホウ素めっき皮膜を形成する場合には行わなくてもよい。
【0132】
熱処理した酸化物層が形成されたガラス基板に還元処理を行う方法としては特に限定されず、従来公知の方法により還元処理することができる。
【0133】
還元処理を行う工程は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ、及び、還元剤を含む還元処理液を用いて還元処理を行う方法等により行うことができる。
【0134】
アルカリは、好ましくは、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であり、この限りにおいて特に制限されない。
【0135】
アルカリ金属水酸化物としては、特に制限されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
【0136】
また、アルカリ土類金属水酸化物としては、特に制限されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0137】
アルカリの中でも、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0138】
還元処理液中のアルカリの濃度は、好ましくは0.3 g/L~100 g/L、より好ましくは、0.5g/L~10 g/L、更に好ましくは、1g/L~5 g/Lであることにより、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解Ni-Pめっき皮膜を得ることができる。
【0139】
工程3-5は、好ましくは還元剤を含む還元処理液を、熱処理した酸化物層が形成されたガラス基板に接触させる方法である。還元処理を行う工程は、より好ましくは、熱処理した酸化物層が形成されたガラス基板を、還元処理液中に浸漬する方法、熱処理した酸化物層の表面に、還元処理液を噴霧する方法等である。
【0140】
還元剤は、好ましくは、Sn触媒、Ag触媒、Pd触媒等の金属触媒(核)となる金属を析出させることが可能な還元剤であれば特に限定されず、還元めっきで使用され得る還元剤を使用することができる。
【0141】
還元剤は、好ましくは、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン等のアミン化合物;水素化ホウ素ナトリウム等のホウ素含有化合物;、次亜リン酸、次亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、並びにその水和物等のリン含有化合物;等が挙げられる。
【0142】
還元剤は、例えば、アミン化合物であり、且つ、ホウ素含有化合物である還元剤も存在する。その場合、その還元剤を含有する場合は、アミン化合物を含有するといえ、且つ、ホウ素含有化合物を含有するといえる。
【0143】
アミン化合物は、好ましくは、アミンボラン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体等である。
【0144】
アミンボランは、ボラン(例えばBH3)とアミンとの錯体であるアミンボラン錯体である。アミンボランを構成するアミンとしては、鎖状アミン(非環状アミン)、環状アミンのいずれでもよいが、好ましくは鎖状アミンである。ボラン錯体を構成するアミンは、好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メトキシエチルアミン、ジシクロへキシルアミン、t-ブチルアミン、アミノピリジン、エチレンジアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール等である。これらの中でも、より好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、メトキシエチルアミン、ジシクロへキシルアミン等であり、更に好ましくは、ジメチルアミン等が挙げられる。
【0145】
アミンボランの好適な具体例は、ジメチルアミンボラン(DMAB)、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン等が挙げられる。還元剤として、好ましくは、アミンボランを用い、より好ましくは、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン等を用いることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0146】
ヒドラジン誘導体としては、無電解めっきの還元剤として使用し得るものであれば、特に制限されない。
【0147】
ホウ素含有化合物は、好ましくは、水素化ホウ素化合物であり、具体的には、アミン化合物でもある上記アミンボラン、アミンボラン以外のボラン錯体(ボランと他の化合物との錯体)、水素化ホウ素アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩等)等である。
【0148】
リン含有化合物は、好ましくは、次亜リン酸、次亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、亜リン酸、亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、それらの水和物等である。
【0149】
還元剤は、好ましくは、アミン化合物を含む。アミン化合物は、好ましくは、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含み、より好ましくは、アミンボラン及びヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、更に好ましくは、アミンボラン(DMAB等)を含む。
【0150】
還元剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0151】
還元剤を含む還元処理液中の還元剤の濃度として、好ましくは、0.3g/L以上であり、より好ましくは、0.4g/L以上であり、更に好ましくは、0.5g/L以上である。還元処理液中の還元剤の濃度として、好ましくは、20g/L以下であり、より好ましくは、10g/L以下であり、更に好ましくは、5g/L以下である。還元処理液中の還元剤の濃度として、好ましくは、0.3g/L以上、20g/L以下とすることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0152】
熱処理した酸化物層を還元処理する際、還元処理の温度は、好ましくは、25℃以上であり、より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上である。還元処理の温度は、好ましくは、80℃以下であり、より好ましくは、75℃以下であり、更に好ましくは、70℃以下である。還元処理の温度を、好ましくは、25℃以上、80℃以下とすることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0153】
熱処理した酸化物層を還元処理する際、還元処理の時間は、30秒以上であり、より好ましくは、1分以上であり、更に好ましくは、3分以上である。還元処理の時間は、好ましくは、15分以下であり、より好ましくは、10分以下であり、更に好ましくは、5分以下である。還元処理の時間を、好ましくは、30秒以上、15分以下とすることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0154】
以上説明した工程3により、酸化物層上に、触媒が付与される。
【0155】
(工程4)
工程4は、触媒を付与した酸化物層上に、無電解めっき皮膜を形成する工程である。
【0156】
本発明のめっき皮膜は、酸化物層を有するため、無電解めっき皮膜との密着性に優れているので、公知の無電解めっき皮膜を形成すればよい。このような無電解めっき皮膜としては、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解銅めっき皮膜、無電解ニッケル-ホウ素めっき皮膜等が挙げられる。これらの中でも、酸化物層との密着性がより向上する点で、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解銅めっき皮膜が好ましい。特に、第1実施形態の製造方法は、工程4において無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成する場合に好適である。
【0157】
無電解ニッケル-リンめっき皮膜のリン含有量は、無電解ニッケル-リンめっき皮膜を100質量%として4質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。リン含有量の下限が上記範囲であることにより、酸化皮膜と無電解めっき皮膜との密着性がより一層向上する。また、リン含有量の上限は特に限定されず、20質量%以下程度であればよい。
【0158】
なお、上記無電解ニッケル-リンめっき皮膜の酸化物層界面近傍におけるリン含有量は、リン元素としての含有量であり、9.3質量%以上が好ましい。
【0159】
以下、上記無電解ニッケル-リンめっき皮膜を形成する方法について説明する。
【0160】
無電解ニッケル-リン(Ni-P)めっき皮膜を形成する方法は特に限定されず、従来公知の方法により無電解Ni-Pめっき皮膜を形成することができる。無電解Ni-Pめっき皮膜を形成する工程は、好ましくは、無電解Ni-Pめっき浴を用いてめっき皮膜を形成する方法等である。以下、無電解Ni-Pめっき浴に含まれる各成分について説明する。
【0161】
水溶性ニッケル化合物
無電解Ni-Pめっき浴を用いてめっき皮膜を形成する場合、無電解Ni-Pめっき浴は、好ましくは、水溶性ニッケル化合物を含む。
【0162】
水溶性ニッケル化合物は特に限定されず、無電解Ni-Pめっき浴に用いられる公知のニッケル化合物を用いることができる。水溶性ニッケル化合物は、好ましくは、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル、炭酸ニッケル等の水溶性ニッケル無機塩;酢酸ニッケル、リンゴ酸ニッケル等の水溶性ニッケル有機塩等、並びにその水和物等である。
【0163】
水溶性ニッケル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0164】
無電解Ni-Pめっき浴における水溶性ニッケル化合物の濃度は、無電解Ni-Pめっき皮膜を形成できる範囲内であれば特に制限されず、適宜調整することができる。水溶性ニッケル化合物の濃度は、好ましくは、ニッケル金属として、例えば、0.01g/L~100g/L程度、より好ましくは、0.5~50g/L、更に好ましくは、1g/L~10g/Lとする。水溶性ニッケル化合物の濃度が、ニッケル金属として、0.01g/L未満であると析出速度が遅くなる場合があり、100g/Lを超えると浴安定性が低下する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0165】
還元剤
還元剤は、次亜リン酸及び次亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0166】
還元剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0167】
無電解Ni-Pめっき浴における還元剤(次亜リン酸、次亜リン酸塩、及びその水和物等)の濃度は、好ましくは、35g/L~80g/L程度であり、より好ましくは、48g/L~60g/L程度である。還元剤の濃度が、35g/L未満、80g/L以上であると無電解Ni-Pめっきの密着性が低下する場合があるため、上記範囲とすることが好ましい。
【0168】
錯化剤
無電解Ni-Pめっき浴は、好ましくは、錯化剤として、グリシン、グルコン酸塩等を含む。グルコン酸塩は、好ましくは、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等である。
【0169】
他の錯化剤は、好ましくは、ギ酸、酢酸等のモノカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸又はこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等);アラニン、アルギニン等のアミノ酸等である。
【0170】
錯化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0171】
無電解Ni-Pめっき浴における錯化剤の濃度は、特に限定的ではなく、適宜調整することができる。無電解Ni-Pめっき浴は、錯化剤を、好ましくは、1g/L~100g/L程度含み、より好ましくは、2g/L~50g/L程度含み、更に好ましくは、5g/L~30g/L程度含む。錯化剤の濃度が、1g/L未満であると浴安定性が低下する場合があり、100g/Lを超えると析出速度が低下する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0172】
安定剤、pH調整剤、界面活性剤等
上記無電解Ni-Pめっき浴は、上述の成分の他、必要に応じて、無電解Ni-Pめっき浴に用いられる公知の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、安定剤、pH調整剤、界面活性剤等である。
【0173】
安定剤は、例えば、鉛化合物(例えば、硝酸鉛、酢酸鉛等)、カドミウム化合物(例えば、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム等)、タリウム化合物(例えば、硫酸タリウム、硝酸タリウム等)、アンチモン化合物(例えば、塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウム等)、テルル化合物(例えば、テルル酸、塩化テルル等)、クロム化合物(例えば、酸化クロム、硫酸クロム等)、鉄化合物(例えば、硫酸鉄、塩化鉄等)、マンガン化合物(例えば、硫酸マンガン、硝酸マンガン等)、ビスマス化合物(例えば、硝酸ビスマス、酢酸ビスマス等)、スズ化合物(例えば、硫酸スズ、塩化スズ等)、セレン化合物(例えば、セレン酸、亜セレン酸等)、シアン化物(例えば、メチルシアニド、イソプロピルシアニド等)、アリル化合物(例えば、アリルアミン、ジアリルアミン等)等が挙げられる。
【0174】
安定剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0175】
無電解Ni-Pめっき浴における安定剤の濃度としては、特に限定的ではなく、例えば、0.1mg/L~500mg/L程度とすることができる。無電解Ni-Pめっき浴の安定性を向上させる目的で、安定剤の濃度を0.1mg/L程度以上とすることが好ましい。安定剤の濃度が500mg/Lを超えると、めっき皮膜が形成されない箇所(未析出箇所)が発生する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0176】
pH調整剤は、好ましくは、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリを用いる。
【0177】
無電解Ni-Pめっき浴のpHは、好ましくは、3~12程度であり、より好ましくは、4~9程度である。めっき浴のpHは上記したpH調整剤を用いて調整することができる。pHが、3未満であると未析出が発生する場合があり、12を超えると浴安定性が低下する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0178】
界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性等の各種界面活性剤を用いることができる。例えば、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ塩、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独又は2種以上混合して用いることができる。界面活性剤を2種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
【0179】
無電解Ni-Pめっき浴における界面活性剤の濃度としては特に限定的ではなく、例えば0.01 mg/L~1000 mg/L程度とすることができる。無電解Ni-Pめっき浴のピット防止の効果をより一層向上させる目的で、界面活性剤の濃度を0.01 mg/L程度以上とすることが好ましい。界面活性剤の濃度が1000 mg/L以下であると、発泡による析出性の低下がより一層抑制される。
【0180】
無電解めっき方法
無電解めっき皮膜を形成する工程4(無電解めっき方法)は、好ましくは、無電解めっき浴に、触媒付与された酸化物層が形成されたガラス基板(被めっき物)を接触させる工程である。
【0181】
被めっき物は、表面に、Sn触媒、Ag触媒、Pd触媒等が付与された酸化物層が形成されたガラス基板、好ましくは、Pd触媒付与後に、熱処理、還元処理等が施された酸化物層が形成されたガラス基板である。
【0182】
無電解めっき浴に、被めっき物を接触させる方法は、特に限定的ではなく、常法に従って行うことができる。工程4は、好ましくは、例えば、被めっき物を無電解めっき浴に浸漬する方法等が挙げられる。
【0183】
めっき処理条件(例えば、浴温、めっき処理時間等)については、無電解めっき皮膜が形成される条件であれば特に制限されず、適宜決定することができる。
【0184】
めっき工程における無電解めっき浴の浴温は、めっき浴の組成等に応じて適宜決定することができる。例えば、めっき工程における無電解ニッケル-リンめっき浴の浴温は、好ましくは、25℃程度以上とすることができ、より好ましくは、40℃~100℃程度であり、更に好ましくは、45℃~95℃程度である。浴温が25℃未満であるとめっき皮膜の析出速度が遅く、生産効率が低下する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0185】
めっき工程における処理時間は、特に限定的ではなく、被めっき物に必要な膜厚の無電解めっき皮膜が形成されるまでの時間とすることができる。めっき工程における処理時間は、具体的には、めっき浴の組成、被めっき物の種類等に応じて適宜決定することができ、例えば、好ましくは、1分~40分程度、より好ましくは、3分~20分とすることができる。
【0186】
以上説明した工程4により、触媒を付与した前記酸化物層上に、無電解めっき皮膜が形成される。
【0187】
(熱処理工程1)
本発明の製造方法では、工程4と工程5との間に、熱処理(アニール)工程1を有していてもよい。本発明の製造方法が工程4と工程5との間に熱処理工程1を有することにより、無電解めっき皮膜の密着性がより向上する。
【0188】
上記熱処理工程1の熱処理方法としては、通常めっき皮膜の形成において行われる熱処理方法であれば特に限定されず、例えば、恒温槽に入れる方法、加熱炉、電気炉に入れる方法等が挙げられる。熱処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニア等が挙げられる。
【0189】
上記熱処理工程1の熱処理温度としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される温度であれば特に限定されず、40~400℃が好ましく、50~300℃がより好ましい。
【0190】
上記熱処理工程1の熱処理時間としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される程度であれば特に限定されず、30分~3時間程度であればよい。
【0191】
(工程5)
工程5は、無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜を形成する工程である。
【0192】
電解銅めっき皮膜を形成する方法は特に限定されず、従来公知の方法により、電解銅めっき皮膜を形成することができる。電解銅めっき皮膜を形成する工程は、好ましくは、電解銅めっき浴を用いてめっき皮膜を形成する方法等である。
【0193】
電解銅めっき浴
電解銅めっきの浴種は、特に限定されず、いずれのめっき液でも使用できる。特に、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっきを用いることが好ましい。銅めっきの銅イオン源は、特に限定されず、硫酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)、青化銅(I)、酢酸銅(II)等が挙げられ、好ましくは、硫酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)である。
【0194】
銅イオン源は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0195】
電解銅めっき浴における水溶性銅化合物の濃度は、例えば、銅イオン濃度として、好ましくは、1g/L~60g/L程度含み、より好ましくは、10g/L~40g/L程度である。
【0196】
電解銅めっき浴のpH範囲は、好ましくは、弱アルカリ性から強酸性の範囲である。
【0197】
pH調整剤は、好ましくは、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の各種の酸、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の各種の塩基等を使用する。pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0198】
電解銅めっき浴のpHの変動を少なくする為に、好ましくは、pH緩衝剤を添加する。pH緩衝剤としては公知のものを使用することができる。pH緩衝剤は、好ましくは、例えば、酢酸ナトリウム又はカリウム、ホウ酸ナトリウム、カリウム又はアンモニウム、ギ酸ナトリウム又はカリウム、酒石酸ナトリウム又はカリウム、リン酸二水素ナトリウム、カリウム又はアンモニウム、ピロリン酸ナトリウム又はカリウム等である。pH緩衝剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0199】
上記電解銅めっき浴には、必要に応じて、好ましくは、錯化剤、高分子化合物、界面活性剤、レベラー、応力減少剤、導電性補助剤、消泡剤、光沢剤等の添加剤を添加する。
【0200】
電解銅めっき方法
電解銅めっき浴の建浴方法は、特に限定されない。電解銅めっき浴の建浴方法は、好ましくは、硫酸等の酸を溶解した水溶液に、水溶性銅化合物を溶解し、その後、錯化剤、還元剤等の添加剤を配合し、最後に所定のpHに調整することにより、電解銅めっき液を調製する。
【0201】
電解銅めっきを行う際に、めっき温度は、好ましくは、10℃~60℃程度とし、より好ましくは、20℃~50℃程度とし、更に好ましくは、25℃~40℃程度とする。好ましくは、必要に応じて、めっき液の撹拌や被めっき物の揺動を行う。
【0202】
電解銅めっきを行う際に、めっき温度を10℃程度以上にすることで、より均一な銅めっき皮膜が得ることができる。電解銅めっきを行う際に、めっき温度を60℃程度以下にすることで、銅めっき皮膜の密着性及び外観を向上させることができる。
【0203】
電解銅めっきを行う際に、電流密度は、好ましくは、0.1A/dm2~20A/dm2程度とし、より好ましくは、0.5A/dm2~10A/dm2程度とし、更に好ましくは、1A/dm2~5A/dm2程度とする。
【0204】
電解銅めっきを行う際に、電流密度を0.1A/dm2程度以上にすることで、銅めっき速度がよく、目的とする膜厚を得るのに時間がかからず、経済的に有利である。電解銅めっきを行う際に、電流密度を20A/dm2程度以下にすることで、析出効率が良く、経済的に有利である。
【0205】
(防錆処理工程)
第1実施形態の製造方法では、工程5の後に、防錆処理工程を有していてもよい。第1実施形態の製造方法が工程5の後に防錆処理工程を有することにより、電解銅めっき皮膜の表面における酸化銅の形成を抑制することができ、特に、後述する熱処理工程において大気中で加熱する際に、当該酸化銅の形成を抑制することができる。
【0206】
防錆処理方法としては、通常めっき皮膜の形成において行われる防錆処理方法であれば特に限定されず、例えば、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、オルトリン酸塩等のリン酸塩;ケイ酸塩;メタケイ酸塩;クロム酸塩;ベンゾトリアゾール;トリルトリアゾール;メルカトベンゾチアゾール等を含有する防錆処理液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0207】
(熱処理工程2)
本発明の製造方法では、工程5の後に、熱処理(アニール)工程2を有していてもよい。本発明の製造方法が工程5の後に熱処理工程2を有することにより、電解銅めっき皮膜の密着性がより向上する。
【0208】
上記熱処理工程の熱処理方法としては、通常めっき皮膜の形成において行われる熱処理方法であれば特に限定されず、例えば、恒温槽に入れる方法、加熱炉、電気炉に入れる方法等が挙げられる。熱処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気が挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニア等が挙げられる。
【0209】
上記熱処理工程2の熱処理温度としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される温度であれば特に限定されず、40~500℃程度であればよい。
【0210】
上記熱処理工程2の熱処理時間としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される程度であれば特に限定されず、30分~3時間程度であればよい。
【0211】
(第2実施形態)
本発明のめっき皮膜の製造方法は、また、ガラス基板上にめっき皮膜を形成するめっき皮膜の製造方法であって、
(I)ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させて、前記ガラス基板上に酸化物層を形成する工程I、
(II)前記酸化物層上に、触媒を付与する工程II、
(III)前記触媒を付与した前記酸化物層のフッ素を除去する工程III、
(IV)前記触媒を付与した前記酸化物層上に、無電解めっき皮膜を形成する工程IV、及び、
(V)前記無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜を形成する工程Vを有する、
ことを特徴とするめっき皮膜の製造方法である。以下、上記本発明のめっき皮膜の製造方法の形態を、「第2実施形態」とも示す。
【0212】
上記第2実施形態の製造方法は、工程IVの無電解めっき皮膜を形成する工程において、無電解銅めっき皮膜を形成する場合に好適に適用することができる。上記第2実施形態の製造方法の一例のフロー図を図4に示す。
【0213】
以下、第2実施形態の製造方法の各工程について説明する。
【0214】
(工程I)
工程Iは、ガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させて、前記ガラス基板上に酸化物層を形成する工程である。
【0215】
第2実施形態の製造方法における工程Iは、第1実施形態の製造方法において説明した工程1と同じであり、工程1と同じ条件によりガラス基板の表面に、フッ素及び酸化物前駆体を含む反応溶液を接触させることにより、ガラス基板上に酸化物層が形成される。
【0216】
(工程II)
工程IIは、酸化物層上に、触媒を付与する工程である。
【0217】
第2実施形態の製造方法における工程IIは、第1実施形態の製造方法において説明した工程3とほぼ同じであるが、図4に示す第2実施形態の製造方法のように、工程IVにおいて無電解銅めっき皮膜を形成する場合は、酸化物層上にSn触媒を付与し、次いでAg触媒を付与してからPd触媒を付与する必要がなく、酸化物層上にPd触媒が付与されることが好ましい。すなわち、図4に示す第2実施形態の製造方法のように、工程IVにおいて無電解銅めっき皮膜を形成する場合は、第1実施形態の工程3-1、及び、工程3-2の工程を経る必要がなく、酸化物層上に直接Pd触媒を付与することができる。以下、第2実施形態の工程IIについて説明する。
【0218】
工程IIでは、後述する工程IVにおいて無電解めっき皮膜を形成することができる触媒を付与し、担持させることが好ましい。このような触媒を付与することができる触媒溶液は、金、パラジウム、銀等の金属イオンを含む溶液が挙げられるが、図4に示す第2実施形態の製造方法のように、工程IVにおいて無電解銅めっきを形成する場合は、パラジウム触媒が好適に用いられる。上記金属イオンを含む溶液に、酸化物層を形成したガラス基板を接触することで触媒の付与が施される。これは、触媒溶液を満たした水槽に酸化物層を有するガラス基板を浸漬、又は、スプレー噴霧、塗布等の方法を好適に利用することができる。担持された触媒は、触媒層と称してもよい。すなわち、触媒層は酸化物層の直上に形成される層であってもよい。
【0219】
酸化物層への触媒の担持は、表面吸着、酸化物層内への拡散によるものであり、通常、イオンの状態で担持される。これが後述する還元処理工程により還元され、工程IVにおける無電解めっき皮膜の形成において、めっき液に含まれる還元剤により金属に還元されて、触媒核として作用するため、めっき皮膜が形成されることとなる。
【0220】
工程IIの前に、あらかじめ触媒を金属化したい場合は、工程IIの前に、二価のスズイオン(Sn2+)を含む溶液に晒し、Sn2+を担持させることで感受化した後、触媒溶液に晒せばよい。又は、触媒溶液に晒した後、無電解めっき前に還元剤に晒すことでも触媒を金属化することができる。
【0221】
酸化物層としてSnOを成膜する場合、層内にSn2+を潤沢に含むため、これが還元剤として機能するので、工程IIにおいて、金属状態で触媒を担持することができる。
【0222】
工程IIにおける触媒を付与する工程としては、具体的には、(II-1)前記酸化物層にパラジウム(Pd)触媒を付与する工程II-1を有する工程であることが好ましい。上述のとおり、図4に示す第2実施形態の製造方法のように、工程IVにおいて無電解銅めっきを形成する場合は、酸化物層上にSn触媒を付与し、次いでAg触媒を付与してからPd触媒を付与する必要がなく、酸化物層上にPd触媒が付与されることが好ましい。すなわち、図4に示す第2実施形態の製造方法のように、工程IVにおいて無電解銅めっきを形成する場合は、第1実施形態の工程3-1、及び、工程3-2の工程を経ることなく、酸化物層上に直接Pd触媒を付与することができる。すなわち、第2実施形態の製造方法では、上記工程II-1は、第1実施形態の製造方法の工程3-3と同じである。
【0223】
酸化物層に、Pd触媒を付与する工程は、好ましくは、Pd触媒を含む触媒付与液を用いる。Pd触媒付与液に含まれるPd化合物(Pd触媒)は、好ましくは、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、酸化パラジウム、臭化パラジウム等である。Pd化合物(Pd触媒)として、好ましくは、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム等を用いることで、めっき皮膜がより一層十分に析出し、めっき密着性が向上する。
【0224】
Pd化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0225】
Pd触媒付与液中のPd化合物は、Pd濃度として、好ましくは、0.005g/L以上であり、より好ましくは、0.05g/L以上であり、更に好ましくは0.1g/L以上であり、特に好ましくは、0.15g/L以上である。Pd触媒付与液中のPd化合物は、Pd濃度として、好ましくは、1g/L以下であり、より好ましくは、0.7g/L以下であり、更に好ましくは、0.5g/L以下である。Pd濃度の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Pd濃度の上限値を上記範囲とすることで、Pd触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0226】
酸化物層の表面にPd触媒を付与する工程は、好ましくは、Pd触媒を含む触媒付与液を用いて、Pd触媒付与液を、酸化物層に接触させる方法である。Pd触媒を付与する工程は、好ましくは、酸化物層が形成されたガラス基板を、Pd触媒付与液中に浸漬する方法、酸化物層の表面に、Pd触媒付与液を噴霧する方法等である。
【0227】
Pd触媒を含む触媒付与液には、その他、好ましくは、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸を含む。
【0228】
Pd触媒を含む触媒付与液のpHは、好ましくは、pH0.3~4.0であり、より好ましくは、pH0.5~3.5であり、更に好ましくは、pH1.0~3.0である。Pd触媒を含む触媒付与液のpHの範囲を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。
【0229】
酸化物層が形成されたガラス基板を、Pd触媒付与液中に浸漬する際、Pd触媒付与液の液温は、好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは、15℃以上であり、更に好ましくは、20℃以上である。Pd触媒付与液の液温は、好ましくは、50℃以下であり、より好ましくは、40℃以下であり、更に好ましくは、30℃以下である。液温の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、液温の上限値を上記範囲とすることで、Pd触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0230】
酸化物層が形成されたガラス基板を、Pd触媒付与液中に浸漬する際、Pd触媒付与の処理時間は、好ましくは、数秒以上であり、より好ましくは、10秒以上であり、更に好ましくは、30秒以上である。Pd触媒付与の処理時間は、好ましくは、10分以下であり、より好ましくは、5分以下であり、更に好ましくは、3分以下である。Pd触媒付与の処理時間の下限値を上記範囲とすることで、酸化物層表面に十分な量のPd触媒が吸着して無電解めっき皮膜がより一層十分に析出する。また、Pd触媒付与の処理時間の上限値を上記範囲とすることで、Pd触媒が過剰に吸着することなく、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0231】
(触媒付与液の添加剤)
上記Pd触媒等の触媒付与液には、その他、必要に応じて、好ましくは、各種の添加剤を配合する。添加剤は、好ましくは、例えば、安定剤、pH緩衝剤、界面活性剤等である。
【0232】
安定剤は、好ましくは、例えば、硝酸鉛、酢酸鉛等の鉛塩;硝酸ビスマス、酢酸ビスマス等のビスマス塩;チオ硫酸ナトリウム等の硫黄化合物等を、1種単独で用いるか、又は2種以上を組み合わせて添加する。安定剤を添加する場合、その添加量は、好ましくは、例えば、0.01mg/L~100mg/L程度とする。
【0233】
pH緩衝剤は、好ましくは、例えば、酢酸、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、炭酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を、1種単独で用いるか、又は2種以上を組み合わせて添加する。pH緩衝剤を添加する場合、その添加量は、好ましくは、浴安定性等の観点から、0.002mol/L~1mol/L程度とする。
【0234】
界面活性剤は、好ましくは、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性等の各種界面活性剤を用いる。界面活性剤は、好ましくは、例えば、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ塩、芳香族又は脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩等を用いる。界面活性剤は、1種単独で用いるか、又は2種以上を組み合わせて添加する。界面活性剤を添加する場合、その添加量は、好ましくは、例えば、0.01~1,000mg/L程度とする。
【0235】
以上説明した工程IIにより、酸化物層上に、触媒が付与される。
【0236】
(工程III)
工程IIIは、触媒を付与した前記酸化物層のフッ素を除去する工程である。
【0237】
工程Iにより形成した酸化物層には、フッ素が残留する。この残留フッ素は、水による洗浄や放置によっても消失、揮発が困難である。また、工程IIにより、触媒を付与した酸化物層上に無電解めっき皮膜が形成されると、残留フッ素は、積層時の化学処理、積層後の熱処理等で酸化物層から脱離し、無電解めっき皮膜に悪影響を及ぼす。このため、工程IIにより酸化物層上に触媒を付与した後に、工程IIIによりフッ素の除去を行う。
【0238】
第2実施形態の製造方法では、工程IIにより酸化物層上に触媒を付与した後、工程IIIにより酸化物層のフッ素を除去する。工程IIIにおいてフッ素を除去する方法としては特に限定されず、触媒を付与した酸化物層をアニール(熱処理)する工程、及び、触媒を付与した酸化物層をアルカリ溶液に接触させる工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程であることが好ましい。これらの中でも、触媒を付与した酸化物層をアニール(熱処理)する工程が好適である。熱処理を行うことにより、触媒を付与した酸化物層のフッ素を除去することができると共に、触媒が酸化物層上で良好に拡散し、密着性がより一層向上する。なお、工程IIIは、後述する工程IVにおいて無電解めっき皮膜として無電解銅めっき皮膜を形成する場合に好適に行われる。
【0239】
Pd触媒を付与したガラス基板に、熱処理を行う工程は特に限定されず、従来公知の方法により熱処理することができる。熱処理を行う工程は、好ましくは、Pd触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を加熱炉内で加熱する方法等により行うことができる。
【0240】
熱処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気が挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニア等である。
【0241】
Pd触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を熱処理する際、熱処理の温度は、好ましくは、150℃以上であり、より好ましくは、300℃以上であり、更に好ましくは、400℃以上であり、特に好ましくは、450℃以上であり、最も好ましくは、500℃以上である。熱処理の温度は、好ましくは、800℃以下であり、より好ましくは、750℃以下であり、更に好ましくは、700℃以下であり、特に好ましくは、600℃以下であり、最も好ましくは、550℃以下である。熱処理の温度を、好ましくは、150℃以上、800℃以下とすることで、酸化物層のフッ素がより十分に除去されると共に、金属触媒が酸化物層に強固に吸着し、金属触媒を介して密着強度の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0242】
Pd触媒を付与した酸化物層が形成されたガラス基板を熱処理する際、熱処理の時間は、好ましくは、1分以上であり、より好ましくは、2分以上であり、更に好ましくは、5分以上である。熱処理の時間は、好ましくは、180分以下であり、より好ましくは、120分以下であり、更に好ましくは、60分以下である。熱処理の時間を、好ましくは、1分以上、180分以下とすることで、金属触媒が酸化物層に強固に吸着し、金属触媒を介して密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0243】
以上説明した工程IIIにより、触媒を付与した酸化物層のフッ素が除去される。
【0244】
(還元処理工程)
第2実施形態の製造方法は、上記工程IIIの後、還元処理を行う工程(還元処理工程)を有していることが好ましい。還元処理を行うことにより、触媒が酸化物層上で良好に拡散し、密着性がより一層向上する。還元処理工程は、図4に示す第2の実施形態の製造方法のように、後述する工程IVにおいて無電解めっき皮膜として無電解銅めっき皮膜を形成する場合に行えばよく、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解ニッケル-ホウ素めっき皮膜を形成する場合には行わなくてもよい。
【0245】
触媒が付与された酸化物層が形成されたガラス基板に還元処理を行う方法としては特に限定されず、従来公知の方法により還元処理することができる。
【0246】
還元処理を行う工程は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ、及び、還元剤を含む還元処理液を用いて還元処理を行う方法等により行うことができる。また、上記還元処理液は、pH緩衝剤を含んでいてもよい。
【0247】
アルカリは、好ましくは、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であり、この限りにおいて特に制限されない。
【0248】
アルカリ金属水酸化物としては、特に制限されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げられる。
【0249】
また、アルカリ土類金属水酸化物としては、特に制限されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0250】
アルカリの中でも、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0251】
還元処理液中のアルカリの濃度は、好ましくは0.3 g/L~100 g/L、より好ましくは、0.5g/L~10 g/L、更に好ましくは、1g/L~5 g/Lであることにより、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解銅めっき皮膜を得ることができる。
【0252】
還元処理工程は、好ましくは還元剤を含む還元処理液を、熱処理した酸化物層が形成されたガラス基板に接触させる方法である。還元処理を行う工程は、より好ましくは、熱処理した酸化物層が形成されたガラス基板を、還元処理液中に浸漬する方法、熱処理した酸化物層の表面に、還元処理液を噴霧する方法等である。
【0253】
還元剤は、好ましくは、Sn触媒、Ag触媒、Pd触媒等の金属触媒(核)となる金属を析出させることが可能な還元剤であれば特に限定されず、還元めっきで使用され得る還元剤を使用することができる。
【0254】
還元剤は、好ましくは、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン等のアミン化合物;水素化ホウ素ナトリウム等のホウ素含有化合物;、次亜リン酸、次亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、並びにその水和物等のリン含有化合物;等が挙げられる。
【0255】
還元剤は、例えば、アミン化合物であり、且つ、ホウ素含有化合物である還元剤も存在する。その場合、その還元剤を含有する場合は、アミン化合物を含有するといえ、且つ、ホウ素含有化合物を含有するといえる。
【0256】
アミン化合物は、好ましくは、アミンボラン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体等である。
【0257】
アミンボランは、ボラン(例えばBH3)とアミンとの錯体であるアミンボラン錯体である。アミンボランを構成するアミンとしては、鎖状アミン(非環状アミン)、環状アミンのいずれでもよいが、好ましくは鎖状アミンである。ボラン錯体を構成するアミンは、好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メトキシエチルアミン、ジシクロへキシルアミン、t-ブチルアミン、アミノピリジン、エチレンジアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール等である。これらの中でも、より好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、メトキシエチルアミン、ジシクロへキシルアミン等であり、更に好ましくは、ジメチルアミン等が挙げられる。
【0258】
アミンボランの好適な具体例は、ジメチルアミンボラン(DMAB)、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン等が挙げられる。還元剤として、好ましくは、アミンボランを用い、より好ましくは、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン等を用いることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0259】
ヒドラジン誘導体としては、無電解めっきの還元剤として使用し得るものであれば、特に制限されない。
【0260】
ホウ素含有化合物は、好ましくは、水素化ホウ素化合物であり、具体的には、アミン化合物でもある上記アミンボラン、アミンボラン以外のボラン錯体(ボランと他の化合物との錯体)、水素化ホウ素アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩等)等である。
【0261】
リン含有化合物は、好ましくは、次亜リン酸、次亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、亜リン酸、亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、それらの水和物等である。
【0262】
還元剤は、好ましくは、アミン化合物を含む。アミン化合物は、好ましくは、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含み、より好ましくは、アミンボラン及びヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、更に好ましくは、アミンボラン(DMAB等)を含む。
【0263】
還元剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0264】
還元剤を含む還元処理液中の還元剤の濃度として、好ましくは、0.3g/L以上であり、より好ましくは、0.4g/L以上であり、更に好ましくは、0.5g/L以上である。還元処理液中の還元剤の濃度として、好ましくは、20g/L以下であり、より好ましくは、10g/L以下であり、更に好ましくは、5g/L以下である。還元処理液中の還元剤の濃度として、好ましくは、0.3g/L以上、20g/L以下とすることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0265】
pH緩衝剤としては、ホウ酸、酸化ホウ素、酢酸、リン酸、亜リン酸、炭酸、及び、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。上記pH緩衝剤は、1種単独で用いるか、又は2種以上を混合して用いることができる。還元処理液中のpH緩衝剤の含有量は特に限定されず、還元処理液のpHを5~12程度に調整することができる含有量が好ましい。このような含有量としては、例えば、2g/L以上50g/L以下程度の含有量が挙げられる。
【0266】
熱処理した酸化物層を還元処理する際、還元処理の温度は、好ましくは、25℃以上であり、より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上である。還元処理の温度は、好ましくは、80℃以下であり、より好ましくは、75℃以下であり、更に好ましくは、70℃以下である。還元処理の温度を、好ましくは、25℃以上、80℃以下とすることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0267】
熱処理した酸化物層を還元処理する際、還元処理の時間は、30秒以上であり、より好ましくは、1分以上であり、更に好ましくは、2分以上である。還元処理の時間は、好ましくは、15分以下であり、より好ましくは、10分以下であり、更に好ましくは、5分以下である。還元処理の時間を、好ましくは、30秒以上、15分以下とすることで、効率よく金属触媒を還元し、密着性の高い無電解めっき皮膜を得ることができる。
【0268】
(工程IV)
工程IVは、触媒を付与した酸化物層上に、無電解めっき皮膜を形成する工程である。
【0269】
本発明のめっき皮膜は、酸化物層を有するため、無電解めっき皮膜との密着性に優れているので、公知の無電解めっき皮膜を形成すればよい。このような無電解めっき皮膜としては、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解銅めっき皮膜、無電解ニッケル-ホウ素めっき皮膜等が挙げられる。これらの中でも、酸化物層との密着性がより向上する点で、無電解ニッケル-リンめっき皮膜、無電解銅めっき皮膜が好ましい。特に、第2実施形態の製造方法は、工程IVにおいて無電解銅めっき皮膜を形成する場合に好適である。
【0270】
無電解銅めっき皮膜を形成する方法は特に限定されず、従来公知の方法により無電解銅めっき皮膜を形成することができる。無電解銅めっき皮膜を形成する工程は、好ましくは、無電解銅めっき浴を用いてめっき皮膜を形成する方法等である。以下、無電解銅めっき浴に含まれる各成分について説明する。
【0271】
銅化合物
銅化合物は特に限定されず、無電解銅めっき浴に用いられる公知の銅化合物を用いることができる。水溶性銅化合物は、好ましくは、例えば、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、炭酸銅、酸化銅、酢酸銅、メタンスルホン酸銅、スルファミン酸銅、フッ化銅、2-ヒドロキシエタンスルホン酸銅、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸銅、ピロリン酸銅等が挙げられる。これらの銅化合物は、水和物を用いてもよい。
【0272】
銅化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0273】
無電解銅めっき浴における銅化合物の濃度は、無電解銅めっき皮膜を形成できる範囲内であれば特に制限されず、適宜調整することができる。銅化合物の濃度は、好ましくは、銅金属として、例えば、0.01g/L~100g/L程度、より好ましくは、0.5~50g/L、更に好ましくは、1g/L~10g/Lとする。銅化合物の濃度が、銅金属として、0.01g/L未満であると析出速度が遅くなる場合があり、100g/Lを超えると浴安定性が低下する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0274】
還元剤
還元剤としては、公知の無電解銅めっき液において用いられている各種の還元剤を用いることができる。具体的には、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸等のアルデヒド化合物;水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミンボラン等の水素化ホウ素化合物;ヒドラジン類等が挙げられる。これらの中でも、めっき析出性に優れる点で、アルデヒド化合物が好ましく、ホルムアルデヒドがより好ましい。
【0275】
上記還元剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0276】
本発明の無電解めっき液中の還元剤の含有量は、1~20g/Lが好ましく、2~15g/Lがより好ましく、3~9g/Lが更に好ましい。
【0277】
錯化剤
錯化剤は、銅化合物の沈殿を抑制し、更に、銅の析出反応を適度な速度として分解を抑制するために有効な成分であり、公知の無電解めっき液において用いられている各種の錯化剤を用いることができる。
【0278】
錯化剤としては、具体的には、酒石酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸、及びそれらの可溶性塩;エチレンジアミン、トリエタノールアミン等のアミノ化合物;エチレンジアミン四酢酸、バーセノール(N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンーN,N',N'-三酢酸)、クォードロール(N,N,N',N'-テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン)等のエチレンジアミン誘導体、その可溶性塩;1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等のホスホン酸、及びその可溶性塩等を挙げることができる。
【0279】
これらの錯化剤は、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0280】
無電解銅めっき浴における錯化剤の濃度は、特に限定的ではなく、適宜調整することができる。無電解銅めっき浴は、錯化剤を、好ましくは、1g/L~100g/L程度含み、より好ましくは、2g/L~50g/L程度含み、更に好ましくは、5g/L~30g/L程度含む。錯化剤の濃度が1g/L未満であると浴安定性が低下する場合があり、100g/Lを超えると析出速度が低下する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0281】
結晶粒子微細化剤
無電解銅めっき浴は、銅の結晶粒子を微細化するための添加剤として、結晶粒子微細化剤を含んでいてもよい。無電解銅めっき浴が上記結晶粒子微細化剤を含むことにより、無電解銅めっきの結晶粒子が微細化され、めっき皮膜の密着性がより一層向上する。
【0282】
添加剤としては、ニッケル塩、鉄塩、コバルト塩、カルボン酸及びその塩、アミン等が挙げられる。これらの中でも、より銅の結晶粒子が微細化され、めっき皮膜の密着性がより一層向上する点で、ニッケル塩、鉄塩が好ましく、ニッケル塩がより好ましい。
【0283】
これらの結晶粒子微細化剤は、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0284】
無電解銅めっき浴における結晶粒子微細化剤の濃度は、特に限定的ではなく、適宜調整することができる。無電解銅めっき浴は、結晶粒子微細化剤を、好ましくは、0.05g/L~10g/L程度含み、より好ましくは、0.1g/L~5g/L程度含み、更に好ましくは、0.2g/L~2g/L程度含み、特に好ましくは、0.3g/L~1g/L程度含み、最も好ましくは、0.5g/L~0.9g/L程度含む。結晶粒子微細化剤の濃度の下限が上記範囲であると、銅の結晶粒子の微細化がより一層向上する。結晶粒子微細化剤の濃度の上限が上記範囲であると、酸化物層と無電解銅めっき皮膜との密着性がより一層向上する。
【0285】
安定剤、pH調整剤、界面活性剤等
上記無電解銅めっき浴は、上述の成分の他、必要に応じて、無電解銅めっき浴に用いられる公知の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、安定剤、pH調整剤、界面活性剤等である。
【0286】
安定剤は、例えば、鉛化合物(例えば、硝酸鉛、酢酸鉛等)、カドミウム化合物(例えば、硝酸カドミウム、酢酸カドミウム等)、タリウム化合物(例えば、硫酸タリウム、硝酸タリウム、等)、アンチモン化合物(例えば、塩化アンチモン、酒石酸アンチモニルカリウム等)、テルル化合物(例えば、テルル酸、塩化テルル等)、クロム化合物(例えば、酸化クロム、硫酸クロム等)、鉄化合物(例えば、硫酸鉄、塩化鉄等)、マンガン化合物(例えば、硫酸マンガン、硝酸マンガン等)、ビスマス化合物(例えば、硝酸ビスマス、酢酸ビスマス等)、スズ化合物(例えば、硫酸スズ、塩化スズ等)、セレン化合物(例えば、セレン酸、亜セレン酸等)、シアン化物(例えば、メチルシアニド、イソプロピルシアニド等)、アリル化合物(例えば、アリルアミン、ジアリルアミン等)等が挙げられる。
【0287】
安定剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0288】
無電解銅めっき浴における安定剤の濃度としては、特に限定的ではなく、例えば、0.1mg/L~500mg/L程度とすることができる。無電解Ni-Pめっき浴の安定性を向上させる目的で、安定剤の濃度を0.1mg/L程度以上とすることが好ましい。安定剤の濃度が500mg/Lを超えると、めっき皮膜が形成されない箇所(未析出箇所)が発生する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0289】
pH調整剤は、好ましくは、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリを用いる。
【0290】
無電解銅めっき浴のpHは、好ましくは、7~13程度であり、より好ましくは、9~12程度である。めっき浴のpHは上記したpH調整剤を用いて調整することができる。pHが、6未満であると未析出が発生する場合がある。
【0291】
界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性等の各種界面活性剤を用いることができる。例えば、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ塩、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独又は2種以上混合して用いることができる。界面活性剤を2種以上混合して用いる場合、その混合比率は特に限定的ではなく、適宜決定することができる。
【0292】
無電解銅めっき浴における界面活性剤の濃度としては特に限定的ではなく、例えば0.01 mg/L~1000 mg/L程度とすることができる。無電解銅めっき浴のピット防止の効果をより一層向上させる目的で、界面活性剤の濃度を0.01 mg/L程度以上とすることが好ましい。界面活性剤の濃度が1000 mg/L以下であると、発泡による析出性の低下がより一層抑制される。
【0293】
無電解めっき方法
無電解めっき皮膜を形成する工程IV(無電解めっき方法)は、好ましくは、無電解めっき浴に、触媒付与された酸化物層が形成されたガラス基板(被めっき物)を接触させる工程である。
【0294】
被めっき物は、表面に、Pd触媒等が付与された酸化物層が形成されたガラス基板であり、具体的には、工程IIにおいてPd触媒付与後に、工程III、還元処理等が施された酸化物層が形成されたガラス基板である。
【0295】
無電解めっき浴に、被めっき物を接触させる方法は、特に限定的ではなく、常法に従って行うことができる。工程IVは、好ましくは、例えば、被めっき物を無電解めっき浴に浸漬する方法等が挙げられる。
【0296】
めっき処理条件(例えば、浴温、めっき処理時間等)については、無電解めっき皮膜が形成される条件であれば特に制限されず、適宜決定することができる。
【0297】
めっき工程における無電解めっき浴の浴温は、めっき浴の組成等に応じて適宜決定することができる。例えば、めっき工程における無電解銅めっき浴の浴温は、好ましくは、20℃程度以上とすることができ、より好ましくは、25℃~80℃程度であり、更に好ましくは、30℃~70℃程度である。浴温が25℃未満であるとめっき皮膜の析出速度が遅く、生産効率が低下する場合があるため、上記した範囲とすることが好ましい。
【0298】
めっき工程における処理時間は、特に限定的ではなく、被めっき物に必要な膜厚の無電解めっき皮膜が形成されるまでの時間とすることができる。めっき工程における処理時間は、具体的には、めっき浴の組成、被めっき物の種類等に応じて適宜決定することができ、例えば、好ましくは、1分~60分程度、より好ましくは、3分~40分とすることができる。
【0299】
以上説明した工程IVにより、触媒を付与した前記酸化物層上に、無電解めっき皮膜が形成される。
【0300】
(防錆処理工程1)
第2実施形態の製造方法では、工程IVと工程Vとの間に、防錆処理工程1を有していてもよい。第2実施形態の製造方法が工程IVと工程Vとの間に防錆処理工程1を有することにより、無電解めっき皮膜の表面における酸化銅の形成を抑制することができ、特に、後述する熱処理工程1において大気中で加熱する際に、当該酸化銅の形成を抑制することができる。
【0301】
防錆処理方法としては、通常めっき皮膜の形成において行われる防錆処理方法であれば特に限定されず、例えば、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、オルトリン酸塩等のリン酸塩;ケイ酸塩;メタケイ酸塩;クロム酸塩;ベンゾトリアゾール;トリルトリアゾール;メルカトベンゾチアゾール等を含有する防錆処理液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0302】
(熱処理工程1)
本発明の製造方法では、工程IVと工程Vとの間であって、上記防錆処理工程1の後に、熱処理(アニール)工程1を有していてもよい。第2実施形態の製造方法が熱処理工程1を有することにより、無電解めっき皮膜に含まれる水分を除去することができ、無電解めっき皮膜の密着性がより向上する。
【0303】
上記熱処理工程1の熱処理方法としては、通常めっき皮膜の形成において行われる熱処理方法であれば特に限定されず、例えば、恒温槽に入れる方法、加熱炉、電気炉に入れる方法等が挙げられる。熱処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニア等が挙げられる。
【0304】
上記熱処理工程1の熱処理温度としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される温度であれば特に限定されず、40~400℃が好ましく、50~300℃がより好ましい。
【0305】
上記熱処理工程1の熱処理時間としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される程度であれば特に限定されず、30分~3時間程度であればよい。
【0306】
(工程V)
工程Vは、無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜を形成する工程である。
【0307】
第2実施形態の製造方法における工程Vは、第1実施形態の製造方法において説明した工程5と同じであり、工程5と同じ条件により無電解めっき皮膜上に、電解銅めっき皮膜が形成される。
【0308】
(防錆処理工程2)
第2実施形態の製造方法では、工程Vの後に、防錆処理工程2を有していてもよい。本発明の製造方法が工程Vの後に防錆処理工程を有することにより、電解銅めっき皮膜の表面における酸化銅の形成を抑制することができ、特に、後述する熱処理工程2において大気中で加熱する際に、当該酸化銅の形成を抑制することができる。
【0309】
防錆処理方法としては、通常めっき皮膜の形成において行われる防錆処理方法であれば特に限定されず、例えば、ポリリン酸塩、ホスホン酸塩、オルトリン酸塩等のリン酸塩;ケイ酸塩;メタケイ酸塩;クロム酸塩;ベンゾトリアゾール;トリルトリアゾール;メルカトベンゾチアゾール等を含有する防錆処理液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0310】
(熱処理工程2)
本発明の製造方法では、工程Vの後、又は、防錆処理工程2の後に、熱処理(アニール)工程2を有していてもよい。第2実施形態の製造方法が熱処理工程2を有することにより、無電解めっき皮膜及び電解めっき皮膜に含まれる水分を除去することができ、且つ、無電解銅めっき皮膜及び電解銅めっき皮膜から、酸化物層中に金属銅が拡散し、めっき皮膜の密着性がより一層向上する。
【0311】
上記熱処理工程2の熱処理方法としては、通常めっき皮膜の形成において行われる熱処理方法であれば特に限定されず、例えば、恒温槽に入れる方法、加熱炉、電気炉に入れる方法等が挙げられる。熱処理の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、アンモニア等が挙げられる。
【0312】
上記熱処理工程2の熱処理温度としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される温度であれば特に限定されず、40~600℃が好ましく、50~500℃がより好ましく、100~400℃が更に好ましく、200~400℃が特に好ましく、300~400℃が最も好ましい。
【0313】
上記熱処理工程2の熱処理時間としては、通常めっき皮膜の形成において加熱される程度であれば特に限定されず、30分~3時間程度であればよい。
【0314】
上記熱処理工程2において、最高温度に達するまでの時間は90分以上が好ましい。また、最高温度までに達するまでの昇温方法は、多段昇温であってもよい。当該多段昇温としては、例えば、室温→10分昇温→180℃で30分保持→10分昇温→250℃で30分保持→10分昇温→370℃で60分保持する多段昇温が挙げられる。また、上記昇温方法は、スロープ昇温であってもよい。当該スロープ昇温としては、例えば、室温→90分昇温→370℃で60分保持するスロープ昇温が挙げられる。
【0315】
上記第2実施形態の製造方法は、工程IVの無電解めっき皮膜を形成する工程において、無電解銅めっき皮膜を形成する場合に好適に適用することができる。上記第2実施形態の製造方法の一例の具体的な条件等を下記表2に示す。
【0316】
【表2】
【0317】
3.めっき皮膜の用途
本発明のめっき皮膜は、ガラス基板に対して密着性が良好である。本発明のめっき皮膜は、更に、電解銅めっき皮膜の密着性も良好である。本発明のめっき皮膜は、好ましくは、電子機器のプリント配線板に用いられる。
【0318】
電子機器の通信高速化が進んでおり、通信の高速化には、高周波が用いられていることから、配線を形成する基材は、平滑性が重要である。
【0319】
本発明のめっき皮膜は、平滑なガラス基材上に、めっきを施す場合、めっきを析出させて、良好な密着性を発揮する。本発明のめっき皮膜は、ガラス基材(例えば、配線を形成する基材、ガラス基板)に対して、平滑性を発揮して、配線を形成することができ、通信高速化が進んでいる電子機器の作製に最適である。
【実施例
【0320】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0321】
(第1実施形態の製造方法)
下記製造法により、ガラス基板上に実施例及び比較例のめっき皮膜を製造した。
【0322】
ガラス基板上に、LPD法で酸化物層を形成した。具体的には、ガラス基板として、無アルカリガラスを用意した。前洗浄として、ガラス基板を超音波照射下の1Mの水酸化ナトリウムに10分間浸漬させ、更に超音波照射下の0.1Mのフッ酸(HF)に10分間浸漬し、その後純水で洗浄した。酸化物層の膜種は、表に示すように、酸化スズ、酸化チタン、又は、これらの混合膜(酸化スズ+酸化チタン)とした。
【0323】
酸化物層の膜種が酸化スズの場合は、フッ素と、酸化物前駆体イオンを含む反応溶液として、0.01Mのフッ化第一錫(SnF:CAS番号7783-47-3)、及び、添加剤として、0.1Mのホウ酸(HBO:CAS番号10043-35-3)、0.3Mの過酸化水素(H)を含有する反応溶液を用いた。
【0324】
酸化物層の膜種が酸化チタンの場合は、フッ素と、酸化物前駆体イオンを含む反応溶液として、0.3Mのヘキサフルオロチタン酸アンモニウム((NHTiF:CAS番号16962-40-2)、及び、添加剤として、0.1Mのホウ酸(HBO)を含有する反応溶液を用いた。
【0325】
酸化物層の膜種が酸化錫及び酸化チタンを混合した膜種(酸化スズ+酸化チタン)の場合は、フッ素と、酸化物前駆体イオンを含む反応溶液として、上述の酸化物層の膜種が酸化スズの場合の反応溶液と、上述の酸化物層の膜種が酸化チタンの場合の反応溶液とを混合して調製した反応溶液を用いた。
【0326】
なお、上記いずれの場合も反応時間を変えることで、表3~表5のように膜厚を調整した。
【0327】
上述のようにして調製された、酸化物層が形成されたガラス基板を、表3~表5に示す温度及び時間でアニール処理を行い、酸化物層に含まれるフッ素を除去した。
【0328】
酸化物層が形成されたガラス基板を純水で洗浄し、次いで、0.1Mの塩化第一錫(SnCl)に2分間浸漬させて純水で洗浄して、窒素ブローで乾燥させた。
【0329】
乾燥後、以下の条件によりSn触媒付与工程、Ag触媒付与工程、Pd触媒付与工程、熱処理工程、及び、還元処理工程を、表1に示す組み合わせで経て、酸化物層上に触媒を付与した。
【0330】
(Sn触媒付与工程)
組成及び濃度
塩化第一スズ・2H2O:1.5 g/L
ホウフッ化スズ:1.5 g/L
pH=1.8
温度及び時間
25℃、2分
【0331】
(Ag触媒付与工程)
組成及び濃度
硝酸銀:0.8 g/L
pH=5.3
温度及び時間
25℃、1分
【0332】
(Pd触媒付与工程)
組成及び濃度
塩化パラジウム(II):0.3 g/L
pH=1.8
温度及び時間
25℃、1分
【0333】
触媒が付与された酸化物層が形成されたガラス基板に、無電解Ni-Pめっきを施した。無電解Ni-Pめっきに使用する無電解Ni-Pめっき浴は、塩化ニッケル・6H2Oを12.15g/L、、及びグリシンを6g/L含み、更に次亜リン酸ナトリウムを含む基本組成とし、錯化剤、安定剤、及びpH調整剤を加えて、pHを調整した。無電解Ni-Pめっき浴中の次亜リン酸ナトリウム(次亜リン酸Na)の濃度については、表に記載する。また、無電解Ni-Pめっき浴の温度及び時間の条件は、以下の条件とした。
【0334】
温度及び時間
50℃、10分
【0335】
無電解Ni-Pめっきを施したガラス基板を恒温槽に入れ、熱処理(アニール)を施した。熱処理の温度及び時間の条件は、以下の条件とした。
(熱処理(アニール)工程)
温度及び時間
50℃、1時間
【0336】
無電解Ni-Pめっき皮膜上に、以下の条件で電解銅めっきを施した。
【0337】
(電解銅めっき工程)
組成及び濃度
硫酸銅・5H2O:200 g/L
98%硫酸:100 g/L
35%塩酸:0.15 g/L
トップルチナSFT(奥野製薬工業株式会社製の硫酸銅めっき用添加剤)
温度及び時間
25℃、50分
電流密度
1A/dm2(膜厚10 μm)
【0338】
以上説明した方法により、ガラス基板上にめっき皮膜を形成した。
【0339】
(評価)
上述のようにして製造された実施例及び比較例のめっき皮膜について、以下の方法により評価を行った。
【0340】
(1)めっき皮膜の厚さ
蛍光X線膜厚計を用いて、めっき皮膜の厚さを測定した。
【0341】
(2)無電解Ni-Pめっき皮膜の含リン率
X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて、無電解Ni-Pめっき皮膜の含リン率(リン含有量)を測定した。
【0342】
(3)めっき皮膜の密着性(ピール強度)
卓上形精密万能試験機((株)島津製作所製 AGS-X)を用いて、クロスヘッドスピード100mm/min、測定方向90°、試験ストローク50mmの条件でピール強度を測定し、下記評価基準に従って評価した。
○:1N/cm以上
×:1N/cm未満
【0343】
(4)酸化物層の表面粗さ(Ra)
形状解析レーザー顕微鏡を用いて、酸化物層の表面粗さ(Ra)を測定した。
【0344】
結果を下記表に示す。
【0345】
【表3】
【0346】
【表4】
【0347】
なお、表4において、触媒付与工程のSn/Pd×2、Sn/Pd×3等の記載は、Sn触媒の付与し、次いでPdを付与する工程を1セットとして、2セット、3セット等を行ったことを示している。この場合、Ag触媒の付与は行っていない。
【0348】
【表5】
【0349】
【表6】
【0350】
(第2実施形態)
下記製造法により、ガラス基板上に実施例及び比較例のめっき皮膜を製造した。
【0351】
ガラス基板上に、LPD法で酸化物層を形成した。具体的には、ガラス基板として、無アルカリガラスを用意した。前洗浄として、ガラス基板を超音波照射下の1Mの水酸化ナトリウムに10分間浸漬させ、更に超音波照射下の0.1Mのフッ酸(HF)に10分間浸漬し、その後純水で洗浄した。酸化物層の膜種は、表に示すように、酸化スズ、酸化チタン、又は、これらの混合膜(酸化スズ+酸化チタン)とした。
【0352】
酸化物層の膜種が酸化スズの場合は、フッ素と、酸化物前駆体イオンを含む反応溶液として、0.01Mのフッ化第一錫(SnF:CAS番号7783-47-3)、及び、添加剤として、0.1Mのホウ酸(HBO:CAS番号10043-35-3)、0.3Mの過酸化水素(H)を含有する反応溶液を用いた。
【0353】
酸化物層の膜種が酸化チタンの場合は、フッ素と、酸化物前駆体イオンを含む反応溶液として、0.3Mのヘキサフルオロチタン酸アンモニウム((NHTiF:CAS番号16962-40-2)、及び、添加剤として、0.1Mのホウ酸(HBO)を含有する反応溶液を用いた。
【0354】
酸化物層の膜種が酸化錫及び酸化チタンを混合した膜種(酸化スズ+酸化チタン)の場合は、フッ素と、酸化物前駆体イオンを含む反応溶液として、上述の酸化物層の膜種が酸化スズ場合の反応溶液と、上述の酸化物層の膜種が酸化チタンの場合の反応溶液とを混合して調製した反応溶液を用いた。
【0355】
なお、上記いずれの場合も反応時間を変えることで、表7~12のように膜厚を調整した。
【0356】
酸化物層が形成されたガラス基板を純水で洗浄し、次いで、0.1Mの塩化第一錫(SnCl)に2分間浸漬させて純水で洗浄して、窒素ブローで乾燥させた。
【0357】
乾燥後、以下の条件によりPd触媒付与工程を行い、酸化物層上に触媒を付与した。
【0358】
(Pd触媒付与工程)
組成及び濃度
塩化パラジウム(II):0.3 g/L
pH=1.8
温度及び時間
25℃、3分
【0359】
上述のようにして調製された、触媒が付与された酸化物層が形成されたガラス基板を、表7~12に示す雰囲気、温度及び時間でアニール処理を行い、酸化物層に含まれるフッ素を除去した。
【0360】
触媒が付与された酸化物層が形成されたガラス基板に、無電解銅めっきを施した。無電解銅めっきに使用する無電解銅めっき浴は、溶媒としての水に硫酸銅・5H2Oを8.6g/L、ホルムアルデヒド(還元剤)を2.0g/L、及び酒石酸(錯化剤)を20g/L含む基本組成とし、更に安定剤、及びpH調整剤を加えて、pHを調整した。また、無電解銅めっき浴に、表7~12に示す配合で結晶粒子微細化剤を添加した。また、無電解銅めっき浴の温度及び時間の条件は、以下の条件とした。
【0361】
温度及び時間
32℃、30分
【0362】
上述のようにして形成された無電解銅めっき皮膜に、防錆処理工程により防錆処理を施した。防錆処理は、酸化物層及び無電解銅めっき皮膜が形成されたガラス基板を防錆処理液に浸漬することにより行った。防錆処理液の組成及び防錆処理の条件は以下の通りである。
(防錆処理工程)
組成及び濃度
ベンゾトリアゾール(芳香族化合物):0.15g/L
温度及び時間
25℃、10秒
【0363】
防錆処理工程に次いで、無電解銅めっきを施したガラス基板を、表7~12に示す雰囲気、温度及び時間でアニール処理を行い、無電解めっき皮膜に含まれる水分を除去した。
【0364】
次いで、無電解銅めっき皮膜上に、以下の条件で電解銅めっきを施した。
【0365】
(電解銅めっき工程)
組成及び濃度
硫酸銅・5H2O:70 g/L
98%硫酸:200 g/L
35%塩酸:0.15 g/L
トップルチナSF(奥野製薬工業株式会社製の硫酸銅めっき用添加剤)
温度及び時間
25℃、50分
電流密度
1A/dm2(膜厚10 μm)
【0366】
上述のようにして調製された、めっき皮膜が形成されたガラス基板を、表7~12に示す雰囲気、温度及び時間でアニール処理を行い、無電解銅めっき皮膜及び電解銅めっき皮膜に含まれる水分を除去し、且つ、無電解銅めっき皮膜及び電解銅めっき皮膜から、酸化物層中に金属銅を拡散させた。
【0367】
以上説明した方法により、ガラス基板上にめっき皮膜を形成した。
【0368】
(評価)
上述のようにして製造された実施例及び比較例のめっき皮膜について、以下の方法により評価を行った。
【0369】
(1)めっき皮膜の厚さ
蛍光X線膜厚計を用いて、めっき皮膜の厚さを測定した。
【0370】
(2)無電解銅めっき皮膜の平均結晶粒子径
図1及び図2に示す測定方法により、無電解めっき皮膜の平均結晶粒子径を測定した。図1は、ガラス基板上の酸化物層と無電解めっき皮膜との界面部(界面から300nmまでの間)のSEM像であり、図2は、図1中の結晶粒子の拡大図である。具体的には、図1に示すように、ガラス基板上の酸化物層と無電解めっき皮膜との界面部(界面から300nmまでの間)のSEM像を撮影し、図2に示すように、結晶粒子の縦方向(SEM像において、界面部と垂直方向)の最長径と、横方向(SEM像において、界面部と水平方向)の最長径とを測定し、下記式に基づいて算出した。
結晶粒子径(nm)=(縦方向の最長径(nm)+横方向の最長径(nm))/2
各無電解めっき皮膜について15点測定し、平均値を平均結晶粒子径とした。
【0371】
(3)めっき皮膜の密着性(ピール強度)
卓上形精密万能試験機((株)島津製作所製 AGS-X)を用いて、クロスヘッドスピード100mm/min、測定方向90°、試験ストローク50mmの条件でピール強度を測定し、下記評価基準に従って評価した。なお、〇又は△判定であれば実使用において使用できると判断される。
〇:3N/cm以上
△:1N/cm以上3N/cm未満
×:1N/cm未満
【0372】
(4)酸化物層の表面粗さ(Ra)
形状解析レーザー顕微鏡を用いて、酸化物層の表面粗さ(Ra)を測定した。
【0373】
結果を下記表に示す。
【0374】
【表7】
【0375】
【表8】
【0376】
【表9】
【0377】
【表10】
【0378】
【表11】
【0379】
【表12】
【要約】
本発明は、ガラス基板に対して良好な密着性を発揮するめっき皮膜を提供する。
本発明は、酸化物層、無電解めっき皮膜、及び、電解銅めっき皮膜をこの順に有することを特徴とするめっき皮膜である。
図1
図2
図3
図4