(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20230124BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20230124BHJP
C08L 75/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/30
C08L75/00
(21)【出願番号】P 2019044671
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591012738
【氏名又は名称】ヤヨイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】二口 真
(72)【発明者】
【氏名】関根 啓次
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健一
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 保孝
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143952(JP,A)
【文献】特開2007-152266(JP,A)
【文献】特開昭61-257318(JP,A)
【文献】特開2014-001333(JP,A)
【文献】特表2016-508169(JP,A)
【文献】特開2001-247644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J175/04-175/16
C09D175/04-175/16
C08G18/00-18/87
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C08J11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤中のイソシアネート基と反応するイソシアネート反応剤と、
前記ウレタン樹脂系接着剤の固化を促進する固化促進剤とを含有
し、
前記イソシアネート反応剤が、水、水溶性の第一級アミン類、水溶性の第二級アミン類から選ばれたものであり、
前記固化促進剤が、第三級アミン類、炭酸塩から選ばれたものであることを特徴とするウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤。
【請求項2】
前記イソシアネート反応剤が、水、尿素、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンから選ばれたものであり、
前記固化促進剤が、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、エチレンビスモルホリン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、アミン系ポリオール、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれたものであることを特徴とする請求項
1に記載のウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤。
【請求項3】
前記イソシアネート反応剤と固化促進剤との合計が100重量部中、
前記イソシアネート反応剤が、50重量部~97重量部であり、
前記固化促進剤が、50重量部~3重量部であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤。
【請求項4】
前記イソシアネート反応剤と固化促進剤との合計が100重量部中、
前記イソシアネート反応剤が、60重量部~80重量部であり、
前記固化促進剤が、40重量部~20重量部であることを特徴とする請求項1~
3の何れか1項に記載のウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば内装工事等で使用するウレタン樹脂系接着剤を廃棄する際に短時間で固化させることが可能な固化処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内装床材の施工において、一昔前の耐水型接着剤は、2液タイプのエポキシ樹脂系接着剤が主流であった。2液タイプのエポキシ樹脂系接着剤は、現場で使用する必要量のA剤(主剤)とB剤(硬化剤)を使用直前に混合し使用していた。従って、2液(A剤とB剤)を混合しなければ、使い残した未使用分の接着剤を次の現場で再度使用することが可能であった。
【0003】
この2液タイプのエポキシ樹脂系接着剤は、使用する際には、その度毎に混ぜる手間が必要である。このことから、耐水型接着剤の市場としては、近年、1液タイプのウレタン樹脂系接着剤が主流となっている。このウレタン樹脂系接着剤は接着剤成分中のイソシアネート基が下地や空気中の湿気(水分)と反応して硬化する。
【0004】
従って、ウレタン樹脂系接着剤では湿気硬化型の1液タイプの接着剤として使用することができ、使用の際にエポキシ樹脂系接着剤のように使用する度毎に混合の必要が生じない点が施工者、使用者等の支持を得て、現在では主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、施工現場で使い残しがあった場合に、一度開封した容器(金属缶)の隙間から空気中の湿気(水分)を呼び込み、気相との界面より徐々に反応が進んで、部分硬化、増粘、強度低下等をもたらす課題があった。そのため、使い残した1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、多くの場合には、廃棄せざるを得なくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、接着剤を廃棄する場合、ペースト状態のままだと産業廃棄物としての処理の委託が難しくなる。建設現場においては建築廃材等を処分するラック等が設けられている。それらのラックには固形の建築廃材は廃棄できるが、ペースト状態のままでは現場で廃棄できず、業者が持ち帰るほかなかった。
【0008】
その為、1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を廃棄する場合、通常では、接着剤が空気中の湿気(水分)により徐々に硬化するのを数日から数週間待ち、固形物の産業廃棄物として処理を委託することになる。ペースト状態ではなく、固形物として処理を委託するので、単なるウレタン樹脂の固化物として廃棄が可能となるからである。
【0009】
このため、数日から数週間の固化を待つことなく、簡便に1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を固めて廃棄しやすくする固化剤を市場から要望されていた。本発明は、1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を廃棄するに際して、共に撹拌混合するだけで速やかに固化させることができる1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤用固化剤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明に係るウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤は、1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤中のイソシアネート基と反応するイソシアネート反応剤と、
前記ウレタン樹脂系接着剤の固化を促進する固化促進剤とを含有し、
前記イソシアネート反応剤が、水、水溶性の第一級アミン類、水溶性の第二級アミン類から選ばれたものであり、
前記固化促進剤が、第三級アミン類、炭酸塩から選ばれたものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載された発明に係るウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤は、請求項1に記載のイソシアネート反応剤が、水、尿素、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンから選ばれたものであり、
前記固化促進剤が、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、エチレンビスモルホリン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、アミン系ポリオール、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれたものであることを特徴とするものである。なお、上記第三級アミン類は塩であってもよい。
【0013】
請求項3に記載された発明に係るウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤は、請求項1又は2に記載のイソシアネート反応剤と前記固化促進剤との合計が100重量部中、
前記イソシアネート反応剤が、50重量部~97重量部であり、
前記固化促進剤が、50重量部~3重量部であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明に係るウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤は、請求項1~3の何れか1項に記載のイソシアネート反応剤と前記固化促進剤との合計が100重量部中、
前記イソシアネート反応剤が、60重量部~80重量部であり、
前記固化促進剤が、40重量部~20重量部であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、1液タイプのウレタン樹脂系接着剤を廃棄するに際して、共に撹拌混合するだけで速やかに固化させることができるウレタン樹脂系接着剤用固化剤を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の固化処理剤としては、1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤中のイソシアネート基と反応するイソシアネート反応剤と、この湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の固化を促進する固化促進剤とを含有するものである。このため、湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤を廃棄するに際して、共に撹拌混合するだけで速やかに固化させることができる。
【0017】
本発明のイソシアネート反応剤としては、1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤中のイソシアネート基と反応するものであればよく、好ましくは、水、水溶性第一級アミン類の水溶液、水溶性第二級アミン類の水溶液から選ばれたものであればよい。より具体的には、水、又は、尿素、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンの水溶液から選ばれたものであればよい。
【0018】
本発明の固化促進剤としては、1液タイプの湿気硬化型ウレタン樹脂系接着剤の固化を促進するものであればよく、好ましくは、第三級アミン類、炭酸塩から選ばれたものであればよい。より具体的には、第三級アミン類としては、トリエチルアミン又はその塩、トリエタノールアミン又はその塩、ジメチルエタノールアミン又はその塩、ジエチルエタノールアミン又はその塩、ジアザビシクロオクタン又はその塩、ジアザビシクロウンデセン又はその塩、モルホリノ基を有する化合物、アミン系ポリオールから選ばれたものであればよい。また、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれたものであればよい。
【0019】
本発明の固化処理剤は、イソシアネート反応剤と固化促進剤との合計が100重量部中、イソシアネート反応剤が50重量部以上97重量部以下であり、好ましくは55重量部以上、95重量部以下であり、固化促進剤が50重量部以下、3重量部以上であり、好ましくは45重量部以下、5重量部以上である。より好ましくは、イソシアネート反応剤と固化促進剤との合計が100重量部中、イソシアネート反応剤が60重量部以上、80重量部以下であり、固化促進剤が40重量部以上、20重量部以下である。
【0020】
本発明のウレタン樹脂系接着剤用固化処理剤としては、廃棄されるウレタン樹脂系接着剤に10%程度混ぜるだけで、5分~30分程で固まり廃棄しやすくなる。しかも、イソシアネート反応剤が液体状態であるため、廃棄されるウレタン樹脂系接着剤に添加して撹拌する際に固くならず、容器(金属缶)からの取り出しも容易である。
【0021】
また、固化促進剤は、イソシアネート基と反応し、イソシアネート反応剤との反応を促進して固化時間を短くすることができる。また、炭酸塩は系中を塩基性にすることで、イソシアネート反応剤のイソシアネート基への反応性を上げる働きがある。水とイソシアネート基の反応によって炭酸ガスが発生するため、固化したウレタン樹脂系接着剤には細かい泡が閉じ込められるため、前述の液体状態のイソシアネート反応剤と相まってスポンジ状となり、硬くならず、カッターでも切ること、そぐことが可能となり、容器からの取り出しもより容易となる。
【実施例】
【0022】
(製造)
下記の表1及び表2に示す処方(%)の配合で実験例1~実験例8の固化処理剤を製造した。
【0023】
(固化時間)
製造された実験例1~実験例8の固化処理剤を用いて、固化時間を計測した。即ち、プラゾールNEW-UF(ヤヨイ化学社製ウレタン樹脂系接着剤)3kg缶を開封し、複数の500mlビーカー毎に接着剤を200gずつに分取した。分取された接着剤に実験例1~実験例8の固化処理剤を20g(10重量%)添加し、撹拌棒で充分に撹拌した後、固化するまでの時間を測定した。尚、試験温度は23℃±2℃として行った。結果を表1及び表2に示す。
【0024】
表1及び表2に示す通り、比較例として、何も添加せずに分取して撹拌もせずに放置した場合には、2~3日間の固化時間であった。また、水のみを添加して撹拌した場合には、1~2時間の固化時間であった。
【0025】
また、イソシアネート反応剤のみとした水と尿素との実験例では、40分の固化時間であった。これに対して、イソシアネート反応剤とした水が95重量部、固化促進剤としてのエチレンビスモルホリンが5重量部の場合には、15分の固化時間となっている。また、固化促進剤としてのエチレンビスモルホリンの添加量については、2重量部で40分の固化時間、3重量部で25分の固化時間で大きな差が生じることが判った。
【0026】
【0027】
【0028】
また、イソシアネート反応剤としての水と尿素とが合計60重量部、固化促進剤としてのエチレンビスモルホリンとアミン系ポリオールと炭酸ナトリウムとが合計40重量部の場合(実験例9)には、固化時間が1分であったのに対して、イソシアネート反応剤としての水が55重量部、固化促進剤としてのエチレンビスモルホリンとアミン系ポリオールと炭酸ナトリウムとが合計45重量部の場合(実験例10)には、同じ1分と表記したが、詳しくは、後者の場合には撹拌中に部分的に固化する状況が生じることが確認された。
【0029】
このため、実験例10では、撹拌装置で撹拌する等の撹拌速度を速くすることにより、均一な固化状態を得らる場合も想定されるが、撹拌棒を用いて手動でゆっくりと撹拌する等の撹拌速度が遅い場合には、均一な固化状態を得られない状況も想定された。これにより、本実施例の限界値としては、撹拌装置で撹拌する等の撹拌速度を速くすることを想定し、実験例10の割合よりもイソシアネート反応剤が少ない50重量部以上であり、固化促進剤が多い50重量部以下とした。