(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】容積式往復ポンプ、容積式往復ポンプの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
F04B 43/06 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
F04B43/06 B
(21)【出願番号】P 2019116477
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】洞戸 翔太
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-239866(JP,A)
【文献】特表2016-508563(JP,A)
【文献】特開平5-332465(JP,A)
【文献】特開2010-38276(JP,A)
【文献】米国特許第4936753(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/00- 7/06
F04B 9/00-15/08
F04B 23/00-23/14
F04B 43/00-47/14
F04B 53/00-53/22
F16K 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送対象となる材料の入口と出口が設けられたポンプ本体と、
前記ポンプ本体の内部に設けられ容積が可変に構成された少なくとも2つのポンプ室と、
駆動力を受けて往復移動することで各前記ポンプ室の容積を可変させる可変機構と、
各前記ポンプ室に対応して設けられ前記入口と各前記ポンプ室とを繋ぐ吸入経路と、
各前記ポンプ室に対応して設けられ各前記ポンプ室と前記出口とを繋ぐ排出経路と、
前記吸入経路内に設けられ各前記吸入経路を移動する材料について前記入口側から前記ポンプ室側への移動を許可し前記ポンプ室側から前記入口側への移動を禁止する吸入側逆止弁と、
前記排出経路内に設けられ各前記排出経路を移動する材料について前記ポンプ室側から前記出口側への移動を許可し前記出口側から前記ポンプ側へ移動を禁止する排出側逆止弁と、
前記排出側逆止弁を中立位置で保持し前記排出側逆止弁が逆止弁としての機能を発揮できない状態と、前記排出側逆止弁の保持を解放し前記排出側逆止弁が逆止弁としての機能を発揮できる状態と、に切り替える切替機構と、
を備える容積式往復ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ本体は、少なくとも一部が透明な部材で構成されており、前記ポンプ本体の外部から各前記ポンプ室のうち少なくとも1つの内部を視認可能である、
請求項1に記載の容積式往復ポンプ。
【請求項3】
前記ポンプ本体のうち前記透明な部材で構成された部分に設けられて、前記ポンプ室内を流れる洗浄液の汚れ状況を判断可能な汚れ検知センサを更に備えている、
請求項2に記載の容積式往復ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の容積式往復ポンプの洗浄方法であって、
前記入口から前記ポンプ本体内に洗浄剤を吸入する洗浄剤吸入工程と、
前記出口側を閉じて前記ポンプ本体内に吸入した洗浄液が前記出口から前記ポンプ本体外に流出することを規制する出口側閉鎖工程と、
前記切替機構により前記排出側逆止弁を中立位置に保持することで前記排出側逆止弁が逆止弁としての機能を発揮できない状態に切り替える切替工程と、
前記可変機構の駆動を継続させて前記洗浄剤を各前記ポンプ室内で行き来させることで各前記ポンプ室を洗浄するポンプ室洗浄工程と、
を含んでいる容積式往復ポンプの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、容積式往復ポンプ、及び容積式往復ポンプの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばダヤフラムポンプ等の容積式往復ポンプを、塗装システムにおいて塗料の供給用に用いることが周知である。この場合、塗装作業の終了後には、ポンプ内で塗料が乾燥固化してしまうことを防ぐためにポンプ内を十分に洗浄する必要がある。また、塗料の色を変更する際には、変更前後の塗料が混ざってしまうことを防ぐためにポンプ内を十分に洗浄する必要がある。
【0003】
従来、このようなポンプに対し、作業者は、例えば次の(1)~(5)の手順に沿ってポンプ内部の洗浄を行っていた。(1)まず、作業者は、サクションホースを塗料タンクから引き抜き、ポンプ内に溜まっている塗料を排出する。(2)次に、作業者は、サクションホースを洗浄液タンクに移動させると共に、リターンホースを廃液タンクに移動させる。これにより、サクションホースから洗浄液タンクに貯留されたシンナー等の洗浄液をポンプ内に吸入させると共に、その吸入した洗浄液がリターンホースから廃液タンクに排出させる。
【0004】
(3)次に、作業者は、廃液タンクに排出される洗浄液の色を確認し、洗浄液の成分が増えてきたらつまり塗料による着色が薄くなってきたら、リターンホースを洗浄液に移動させる。すると、洗浄液タンクからサクションホースを介してポンプに吸入された洗浄液は、リターンホースを介して再び洗浄液タンクに排出される。このように、洗浄液タンクとポンプ内とで洗浄液を循環させる。(4)そして、作業者は、洗浄液の循環をある程度継続したら、洗浄液タンクの洗浄液を新品のものに交換し、再び上記(3)を行う。(5)そして、上記(3)、(4)の作業を何度か繰り返し、リターンホースから排出される洗浄液に塗料の色が付いていないことを確認して作業を終了する。
【0005】
しかしながら、上述した従来の構成では、何度も洗浄液を交換する必要がある。そのため、洗浄に使用する洗浄液の量が多くなって洗浄液のコストも増大し、また、交換作業に時間がかかり生産性も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗浄作業時の洗浄液の使用量を低減することができ、更には作業性の向上を図ることができる、容積式往復ポンプ、及び容積式往復ポンプの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の容積式往復ポンプは、移送対象となる材料の入口と出口が設けられたポンプ本体と、前記ポンプ本体の内部に設けられ容積が可変に構成された少なくとも2つのポンプ室と、駆動力を受けて往復移動することで各前記ポンプ室の容積を可変させる可変機構と、各前記ポンプ室に対応して設けられ前記入口と各前記ポンプ室とを繋ぐ吸入経路と、各前記ポンプ室に対応して設けられ各前記ポンプ室と前記出口とを繋ぐ排出経路と、前記吸入経路内に設けられ各前記吸入経路を移動する材料について前記入口側から前記ポンプ室側への移動を許可し前記ポンプ室側から前記入口側への移動を禁止する吸入側逆止弁と、前記排出経路内に設けられ各前記排出経路を移動する材料について前記ポンプ室側から前記出口側への移動を許可し前記出口側から前記ポンプ側へ移動を禁止する排出側逆止弁と、前記排出側逆止弁を中立位置で保持し前記排出側逆止弁が逆止弁としての機能を発揮できない状態と、前記排出側逆止弁の保持を解放し前記排出側逆止弁が逆止弁としての機能を発揮できる状態と、に切り替える切替機構と、を備える。
【0009】
また、実施形態の容積式往復ポンプの洗浄方法は、前記容積式往復ポンプの洗浄方法であって、前記入口から前記ポンプ本体内に洗浄剤を吸入する洗浄剤吸入工程と、前記出口側を閉じて前記ポンプ本体内に吸入した洗浄液が前記出口から前記ポンプ本体外に流出することを規制する出口側閉鎖工程と、前記切替機構により前記排出側逆止弁を中立位置に保持することで前記排出側逆止弁が逆止弁としての機能を発揮できない状態に切り替える切替工程と、前記可変機構の駆動を継続させて前記洗浄剤を各前記ポンプ室内で行き来させることで各前記ポンプ室を洗浄するポンプ室洗浄工程と、を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態による容積式往復ポンプを用いた塗装システムの構成の一例を概念的に示す図
【
図2】第1実施形態による容積式往復ポンプの一例について、停止時の状態を示す断面図
【
図3】第1実施形態による容積式往復ポンプの一例について、ポンプ室の内部構成の一例を示す図
【
図4】第1実施形態による容積式往復ポンプの一例について、材料の圧送時の状態を示す断面図(その1)
【
図5】第1実施形態による容積式往復ポンプの一例について、材料の圧送時の状態を示す断面図(その2)
【
図6】第1実施形態による容積式往復ポンプの一例について、切替機構が排出側逆止弁を中立位置に保持していない状態を示す断面図
【
図7】第1実施形態による容積式往復ポンプの一例について、切替機構が排出側逆止弁を中立位置に保持している状態を示す断面図
【
図8】第1実施形態による容積式往復ポンプについて、洗浄時の作業フローの一例を示すフローチャート
【
図9】第1実施形態による容積式往復ポンプを用いた塗装システムについて、洗浄時の構成の一例を概念的に示す図
【
図10】第1実施形態による容積式往復ポンプを用いた塗装システムについて、洗浄時におけるエアバルブ、塗料バルブ、及び切替機構の動作状態の一例を示す図
【
図11】第1実施形態による容積式往復ポンプの概略構成の一例について、洗浄時のポンプ本体内の状態を示す断面図(その1)
【
図12】第1実施形態による容積式往復ポンプの概略構成の一例について、洗浄時のポンプ本体内の状態を示す断面図(その2)
【
図13】第2実施形態による容積式往復ポンプを用いた塗装システムについて、洗浄時の構成の一例を概念的に示す図
【
図14】第2実施形態による容積式往復ポンプを用いた塗装システムについて、電気的構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態による容積式往復ポンプを、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
まず第1実施形態について
図1~
図12を参照して説明する。
図1は、実施形態の容積式往復ポンプの適用対象の一例として、容積式往復ポンプを塗装システムに適用した例である。本実施形態の容積式往復ポンプ10は、例えば液体の塗料を移送対象としている。なお、容積式往復ポンプ10の移送対象となる材料は、液体の塗料に限られず、例えば液体の薬液等であっても良い。
【0013】
まず、
図1~
図7を参照して、塗装システム1及び容積式往復ポンプ10の概略構成の一例について説明する。
図1に示す塗装システム1は、駆動源2、塗料タンク3、噴射部4、接続ホース5、及び容積式往復ポンプ10を含んで構成されている。駆動源2は、容積式往復ポンプ10を駆動させるための駆動力を供給する。本実施形態の場合、容積式往復ポンプ10は、エア駆動式である。そのため、駆動源2は、コンプレッサ等のエア供給源である。なお、容積式往復ポンプ10がモータ等を用いた電気駆動式である場合、駆動源2は、例えば商用電源やバッテリー等の電力供給源で構成される。
【0014】
塗料タンク3は、容積式往復ポンプ10の移送対象となる材料、この場合、塗料を貯留するためのタンクである。塗装システム1が複数色の塗料を扱うものである場合、塗装システム1は、色ごとに塗料タンク3を備えている。噴射部4は、塗料タンク3から容積式往復ポンプ10によって圧送された塗料を、塗装対象に向けて噴射するためのものである。噴射部4は、例えばスプレイガンのように手作業で塗装するためのものであっても良いし、ロボット等に取り付けられて自動で塗装するための構成であっても良い。容積式往復ポンプ10と噴射部4とは、接続ホース5により接続されている。
【0015】
容積式往復ポンプ10は、容積式の往復ポンプである。本実施形態の場合、容積式往復ポンプ10は、ダイヤフラムポンプで構成されている。なお、容積式往復ポンプ10は、ダイヤフラムポンプに限られず、ピストンポンプ、ベローズポンプ、プランジャーポンプ等であっても良い。容積式往復ポンプ10は、エアレギュレータ11、エア圧力計12、エアバルブ13、エア回路14、サクションホース15、塗料レギュレータ16、塗料圧力計17、リターンホース18、塗料バルブ19、及びポンプ本体20を備えている。
【0016】
エアレギュレータ11、エア圧力計12、及びエアバルブ13は、駆動源2とポンプ本体20との間に設けられている。エアレギュレータ11、エア圧力計12、及びエアバルブ13は、駆動源2側からポンプ本体20に向かって順に配置されている。エアレギュレータ11は、駆動源2から供給されたエアの圧力を減圧調整するためのものである。エア圧力計12は、エアレギュレータ11を通ってポンプ本体20に供給されるエアの圧力を表示するためのものである。
【0017】
エアバルブ13は、例えば三方ボールバルブで構成されており、エアレギュレータ11及びエア圧力計12と、ポンプ本体20との間に設けられている。エアバルブ13は、駆動源2とポンプ本体20との間を開いて両者間を繋いだ状態と、ポンプ本体20を大気開放した状態と、駆動源2とポンプ本体20との間、ポンプ本体20と大気との間、及びポンプ本体20と外部との間の全てを閉じて相互間を遮断した状態と、を切り替え可能に構成されている。
【0018】
駆動源2は、エアレギュレータ11、エア圧力計12、及びエアバルブ13を介して、ポンプ本体20に設けられたエア回路14に接続されている。また、駆動源2は、エアレギュレータ11の上流側で分岐し、ポンプ本体20内に内蔵された図示しない切替回路に接続されている。駆動源2から供給される圧縮エアの一部は、エアレギュレータ11を通って減圧調整されて、エア回路14に供給される。
【0019】
また、駆動源2から供給される圧縮エアの他の一部は、エアレギュレータ11の上流側で分岐し、減圧されずにそのままの圧力で図示しない切替回路に供給される。この場合、エア回路14は、例えば2ポジション5ポートのエアオペレートバルブで構成されており、ポンプ本体20内に設けられたダイヤフラムを駆動させるためのエアを供給する。また、図示しない切替回路は、エア回路14を操作するためのエア、つまりエア回路14から出力されるエアの向きを切り替えるためエアをエア回路14に入力するためのものである。なお、図示しない切替回路の代わりに、エア回路14をソレノイドバルブで構成しても良い。
【0020】
ポンプ本体20は、塗料の入口21及び出口22を有しており、入口21からポンプ本体20内に塗料を吸入し、その塗料を出口22から圧送する。サクションホース15は、ポンプ本体20の入口21に接続されている。塗料レギュレータ16及び塗料圧力計17は、ポンプ本体20の出口22に接続されている。塗料レギュレータ16は、出口22から吐出された塗料の圧力を減圧調整するためのものである。塗料圧力計17は、塗料レギュレータ16を通って減圧調整された塗料の圧力を表示するためのものである。ポンプ本体20の出口22から圧送された塗料の一部は、塗料レギュレータ16で減圧調整されて、噴射部4へ供給される。
【0021】
リターンホース18は、ポンプ本体20の出口22と塗料レギュレータ16との間から分岐して設けられている。塗料バルブ19は、例えば二方ボールバルブで構成されており、リターンホース18と出口22との間に設けられている。塗料バルブ19は、リターンホース18と出口22との間を開いて両者間を繋いだ状態と、リターンホース18と出口22との間を閉じた両者間を遮断した状態と、を切り替え可能に構成されている。
【0022】
塗装システム1を用いて塗装を行う際、エアバルブ13は、駆動源2とポンプ本体20のエア回路14との間を繋いだ状態になっている。塗料バルブ19は、リターンホース18と出口22との間を繋いだ状態になっている。また、サクションホース15とリターンホース18とは、いずれも塗料タンク3内に差し込まれている。
【0023】
この状態で駆動源2からポンプ本体20に設けられたエア回路14及び図示しない切替回路に圧縮エアが供給されると、ポンプ本体20が駆動する。すると、塗料タンク3に貯留されている塗料は、サクションホース15を介して入口21からポンプ本体20内に吸入され、その後、出口22から圧送される。そして、噴射部4が操作されることで、噴射部4から塗料が噴射する。
【0024】
このとき、噴射部4から塗料が噴射されている場合は噴射部4から噴射されなかった塗料の残りが、また、噴射部4から塗料が噴射されていない場合は出口22から圧送された塗料の全部が、リターンホース18を通って塗料タンク3内に戻され、その後、サクションホース15から再びポンプ本体20内に吸入される。このように、容積式往復ポンプ10の駆動時には、塗料タンク3内の塗料が、サクションホース15、ポンプ本体20、リターンホース18を介して循環し、これにより塗料が固まって塗料タンク3内に沈殿物が生じることを抑制している。
【0025】
ポンプ本体20は、
図2に示すように、入口21及び出口22の他、ポンプ室23、エア室24、可変機構25、吸入経路26、排出経路27、吸入側逆止弁28、及び排出側逆止弁29を有している。本実施形態の場合、ポンプ本体20は、ポンプ室23、エア室24、吸入経路26、及び排出経路27をそれぞれ2つずつ有している。そして、ポンプ室23、エア室24、吸入経路26、及び排出経路27は、ポンプ本体20の内部に設けられて対称形に配置されている。
【0026】
可変機構25は、駆動力を受けて往復移動することで各ポンプ室23の容積を可変させ、これにより各ポンプ室23内の圧力を変化させる機能を有する。本実施形態の場合、可変機構25は、ダイヤフラム251とシャフト252とを有して構成されている。ダイヤフラム251は、例えば樹脂製や金属製の薄い円板で構成されており、ポンプ室23とエア室24との間を仕切っている。シャフト252は、2つのダイヤフラム251を連結している。これにより、2つのダイヤフラム251が連動して動作する。
【0027】
各エア室24には、エア回路14と図示しない切替回路の作用により、駆動源2からの圧縮エアの供給と開放が交互に行われる。すると、2つのダイヤフラム251が連動して動作し、
図2の左右方向に往復動作する。これにより、2つのポンプ室23の容積の合計が一定に維持された状態で各ポンプ室23の容積が可変することで、ポンプ動作が行われる。
【0028】
2つの吸入経路26及び2つの排出経路27は、それぞれ2つのポンプ室23に対応して設けられている。2つの吸入経路26は、入口21付近で分岐し、それぞれ入口21と各ポンプ室23とを接続している。入口21から吸入された塗料は、吸入経路26を通ってポンプ室23内に至る。2つの排出経路27は、それぞれポンプ室23と出口22とを接続し、出口22付近で合流している。
【0029】
この場合、各ポンプ室23は、
図3に示すように、平面視で見た場合、つまりダイヤフラム251の面方向に対して直角方向に見た場合に円形状に構成されている。また、ポンプ本体20は、少なくとも一部が透明な部材で構成されており、ポンプ本体20の外部から各ポンプ室23のうち少なくとも1つの内部を視認可能に構成されている。本実施形態の場合、ポンプ本体20は、ボディ201とフランジ202とを有している。ボディ201は、例えば金属製の部材によって構成されている。
【0030】
フランジ202は、ボディ201に対してポンプ室23に対応する位置に設けられて、ボディ201とフランジ202との間にポンプ室23を形成する。本実施形態の場合、フランジ202は、透明で耐摩耗性や耐薬品性に優れた部材、例えば透明ナイロンやポリカーボネート、若しくは塩化ビニリデン樹脂等のいわゆるエンジニアリングプラスチック、又は強化ガラス等で構成されている。これにより、ポンプ本体20の外部から各ポンプ室23の内部が視認可能に構成されている。なお、必ずしもフランジ202全体を透明な部材で構成する必要はなく、例えばフランジ202は金属製で構成し、フランジ202の一部分に透明な部材を嵌め込むことで、ポンプ本体20の外部から各ポンプ室23の内部が視認できる窓部を設けて構成としても良い。
【0031】
ここで、吸入経路26とポンプ室23との接続部分を吸入経路26の先端部261とする。また、ポンプ室23と排出経路27との接続部分を排出経路27の基端部271とする。本実施形態の場合、吸入経路26の先端部261及び排出経路27の基端部271は、ポンプ室23を平面視で見た場合の中心Pよりも径方向の外側で、かつ、ポンプ室23の最外径よりも内側の位置に設けられている。そして、吸入経路26の先端部261とポンプ室23の中心部Pと排出経路27の基端部271との成す角が鋭角となるように、吸入経路26の先端部261と排出経路27の基端部271とが配置されている。
【0032】
なお、吸入経路26の先端部261及び排出経路27の基端部271の配置は、上述したものに限られない。例えば吸入経路26の先端部261とポンプ室23の中心部Pと排出経路27の基端部271との成す角が鈍角となるように、先端部261と基端部271とが配置されていても良い。また、吸入経路26の先端部261とポンプ室23の中心部Pと排出経路27の基端部271とが直線上となるように、先端部261と基端部271とが配置されていても良い。
【0033】
ポンプ本体20は、2つの吸入側逆止弁28と、1つの排出側逆止弁29と、を有している。2つの吸入側逆止弁28は、それぞれ吸入経路26内に設けられている。吸入側逆止弁28は、吸入経路26を移動する塗料について、入口21側からポンプ室23側への移動を許可し、ポンプ室23側から入口21側への移動を禁止する。つまり、吸入側逆止弁28は、吸入経路26を移動する塗料の移動方向を入口21側からポンプ室23側への一方通行とし、ポンプ室23側から入口21側への塗料の逆流を防止する。
【0034】
本実施形態の場合、吸入側逆止弁28は、ボール式であり、チャッキボール281を有して構成されている。なお、吸入側逆止弁28は、ボール式に限られず、例えばポペット式、スイング式、ウエハー式、リフト式、又はフート式等であっても良い。
【0035】
排出側逆止弁29は、ポンプ室23から出口22までの間に設けられている。排出側逆止弁29は、各排出経路27を移動する塗料について、ポンプ室23側から出口22側への移動を許可するが、出口22側からポンプ室23側へ移動を禁止する。つまり、排出側逆止弁29は、排出経路27を移動する塗料の移動方向をポンプ室23側から出口22側への一方通行とし、出口22側からポンプ室23側への塗料の逆流を防止する。
【0036】
本実施形態の場合、1つの排出側逆止弁29で2つの排出経路27に対応している。排出側逆止弁29は、2つの排出経路27が合流する合流部221に設けられている。この場合、排出側逆止弁29は、ボール式であり、チャッキボール291を有して構成されている。ここで、各排出経路27と合流部221との接続部分を排出経路27の先端部272とする。チャッキボール291は、2つの先端部272のうちいずれか一方を閉じ他方を開く。これにより、排出側逆止弁29は、2つの排出経路27のうち一方が出口22側に繋がり、他方が閉鎖された状態にすることができる。なお、吸入側逆止弁28は、ボール式に限られず、例えばポペット式、スイング式、ウエハー式、リフト式、又はフート式等であっても良い。
【0037】
この構成において、
図4に示すように、2つのエア室24のうち一方この場合
図4の右側のエア室24に圧縮エアが供給されるとともに他方この場合左側のエア室24が大気開放されると、圧縮エアに押されて右側のダイヤフラム251が動作し、右側のポンプ室23の容積を縮小させる。また、右側のダイヤフラム251の動作がシャフト252を介して左側のダイヤフラム251に伝達される。そして、左側のダイヤフラム251に連動して左側のダイヤフラム251も動作し、左側のポンプ室23の容積を増大させる。これにより、右側のポンプ室23の圧力が増大するとともに、左側のポンプ室23の圧力が低下する。
【0038】
このとき、右側のポンプ室23の圧力が増大するとともに左側のポンプ室23の圧力が低下することにより、
図4の白抜き矢印で示すように、入口21から左側のポンプ室23内に塗料が吸入される。また、このとき、排出側逆止弁29のチャッキボール291は、左側の排出経路27の先端部272側に移動して左側の排出経路27の先端部272を閉鎖している。
【0039】
次に、図示しない切替回路によってエア回路14から吐出される圧縮エアの向きが切り替えられて、
図5に示すように右側のエア室24が大気開放されるとともに左側のエア室24に圧縮エアが供給されると、上述した動作と逆の動作が行われる。つまり、この場合、右側のポンプ室23の容積が増大するとともに、左側のポンプ室23の容積が縮小する。これにより、右側のポンプ室23の圧力が低下するとともに、左側のポンプ室23の圧力が増大する。
【0040】
このとき、排出側逆止弁29のチャッキボール291は、左側の排出経路27から流れる塗料に押されるとともに右側のポンプ室23の負圧により吸引されるため、右側の排出経路27の先端部272側に移動して右側の排出経路27の先端部272を閉鎖する。つまり、右側の排出経路27は出口22に繋がった状態になっている。そのため、
図5の黒色矢印で示すように、左側のポンプ室23から流出した塗料が出口22から圧送される。また、このとき、右側のポンプ室23の圧力が低下することにより、
図5の白抜き矢印で示すように、入口21から右側のポンプ室23内に塗料が吸入される。そして、上記動作を繰り返すことで、入口21から吸入された塗料が出口22から連続して吐出される。
【0041】
また、ポンプ本体20は、
図1、
図2、
図6、及び
図7に示すように、切替機構30を有している。切替機構30は、排出側逆止弁29を中立位置で保持し排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できない状態と、排出側逆止弁29の保持を解放し排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できる状態と、に切り替える機能を有する。
【0042】
排出側逆止弁29を中立位置で保持した状態、すなわち排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できない状態とは、出口22側から左右両側のポンプ室23への塗料の逆流が可能になっている状態、つまり、左右側のポンプ室23と出口22側との間で塗料の移動が可能となっている状態を意味する。この場合、切替機構30によって排出側逆止弁29が中立位置に保持されると、左右2つのポンプ室23が排出経路27を介して相互に連通する。
【0043】
以下の説明では、排出側逆止弁29を中立位置で保持した状態、すなわち排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できない状態のことを、保持状態と称する。また、排出側逆止弁29の保持を解放し排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できる状態のことを、非保持状態と称する。
【0044】
本実施形態の場合、切替機構30は、排出側逆止弁29のチャッキボール291を中立位置に物理的に固定することで、排出側逆止弁29を逆止弁としての機能を発揮できない状態にすることができる。この場合、切替機構30は、例えば保持部31と操作レバー32とを有している。保持部31は、チャッキボール291が設けられた空間内、この場合、合流部221内に設けられており、チャッキボール291の外形形状に沿って湾曲した形状に形成されている。保持部31は、回転可能に構成されており、湾曲形状の向きを反転させることができる。
【0045】
操作レバー32は、保持部31に接続されており、ポンプ本体20を貫いてポンプ本体20の外部に露出して設けられている。作業者は、ポンプ本体20の外部から操作レバー32を操作することで保持部31の向きを反転させる。これにより、作業者は、
図6に示すようにチャッキボール291を保持部31で保持していない状態つまり排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できる状態と、
図7に示すようにチャッキボール291を保持部31で保持している状態つまり排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できない状態と、を任意に切り替えることができる。
【0046】
なお、切替機構30は、上述したように操作レバー32を有する構成に限られない。切替機構30は、例えば空気圧の印加及び開放によってチャッキボール291の保持及び解放を切り替える構成、すなわちエアオペレートによってチャッキボール291の着座状態を切り替える構成としても良い。また、例えばチャッキボール291が磁性体で構成されている場合、切替機構30は、磁力の入り切りによってチャッキボール291の保持及び解放を切り替える構成としても良い。また、切替機構30は、ソレノイドやモータ等のアクチュエータを用いて、チャッキボール291を機械的に保持及び解放する構成としても良い。そして、切替機構30は、作業者の操作によるものに限られず、例えばコンピュータの指令に基づいて自動で動作するものでも良い。
【0047】
次に、容積式往復ポンプ10の洗浄方法について
図8~
図12も参照して説明する。本実施形態の洗浄方法では、主として容積式往復ポンプ10が洗浄されるが、他の塗料経路つまりサクションホース15、リターンホース18、及び噴射部4についても洗浄される。容積式往復ポンプ10の洗浄では、作業者は、
図9に示すように洗浄液タンク6及び廃液タンク7を用いる。洗浄液タンク6には、洗浄液として例えばシンナー等の有機溶剤が貯留されている。廃液タンク7は、容積式往復ポンプ10を洗浄し終わった洗浄液が排出され貯留される。この場合、容積式往復ポンプ10、駆動源2、洗浄液タンク6、及び廃液タンク7は、容積式往復ポンプ10の洗浄システムの構成要素となる。
【0048】
容積式往復ポンプ10の洗浄を行う際、作業者は、まず、
図8のステップS11に示す残留塗料排出工程を実行する。残留塗料排出工程は、ポンプ本体20内に残留している塗料をポンプ本体20外に排出する工程である。この残留塗料排出工程において、作業者は、容積式往復ポンプ10を動作させた状態でサクションホース15を塗料タンク3から引き抜いて空気を吸入しつつ、容積式往復ポンプ10内に残留している残留塗料をリターンホース18から塗料タンク3に排出する。このとき、
図10に示すように、エアバルブ13及び塗料バルブ19は、いずれも開状態となっている。また、切替機構30は、非保持状態となっており、逆止弁としての機能を発揮できる状態になっている。
【0049】
次に、作業者は、
図8に示すステップS12の洗浄液吸入工程を実行する。洗浄液吸入工程は、ポンプ本体20内に洗浄液を吸入してポンプ室23内、吸入経路26、及び排出経路27内を洗浄液で満たす工程である。この洗浄液吸入工程において、作業者は、
図9に示すようにサクションホース15を洗浄液タンク6に移動させるとともに、リターンホース18を廃液タンク7に移動させる。そして、作業者は、容積式往復ポンプ10を動作させて、洗浄液タンク6内の洗浄液をポンプ本体20内に吸入させるとともに、その吸入させた洗浄液を廃液タンク7に排出させる。
【0050】
洗浄液の吸入を開始した初期の段階では、ポンプ本体20内に未だ多くの塗料が残留しているため、リターンホース18から排出される排出液は、塗料成分を多く含んでいるが、洗浄液吸入工程を継続することで徐々に洗浄液成分の割合が増えていく。そして、作業者は、リターンホース18から排出される排出液の色を確認し、洗浄液成分の割合がある程度増えたと判断したら、
図8のステップS13の出口側閉鎖工程を実行する。
【0051】
出口側閉鎖工程は、ポンプ本体20の出口22側を閉じて、ポンプ本体20内に吸入した洗浄液を出口22からポンプ本体20の外部に流出しないようにする工程である。この出口閉側鎖工程において、作業者は、
図10に示すように、塗料バルブ19を閉じて、ポンプ本体20とリターンホース18との接続を遮断する。これにより、ポンプ本体20内に吸入された洗浄液が、リターンホース18からポンプ本体20の外部に流出しないようになる。なお、出口側閉鎖工程は、ポンプ本体20の出口22にバルブを設け、このバルブを閉じるようにしても良い。
【0052】
次に作業者は、
図8のステップS14のポンプ停止工程を実行し、駆動源2からの圧縮エアの供給を止めるなどして容積式往復ポンプ10の動作を停止させる。次に作業者は、ステップS15の残留エア開放工程を実行し、
図10に示すように、エアバルブ13を大気開放状態となるように操作し、ポンプ本体20内に残留しているエアを大気開放する。すると、ポンプ本体20内の圧力が大気圧まで低下し、これにより、排出側逆止弁29のチャッキボール291がフリーの状態つまりポンプ本体20内の圧力によって固定されていない状態となる。なお、本実施形態の場合、エアバルブ13が三方ボールバルブで構成されているため、ステップS14のポンプ停止工程とステップS15の残留エア開放工程とを、エアバルブ13に対する一の操作で同時に行うことができる。
【0053】
次に作業者は、
図8のステップS16の切替工程を実行する。切替工程は、排出側逆止弁29の逆止弁としての機能の発揮状態を切り替える工程である。切替工程では、作業者は、切替機構30を操作して、
図7に示すように排出側逆止弁29のチャッキボール291を中立位置で保持する。すると、チャッキボール291の移動が規制され、これにより排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できない状態になる。その結果、左右2つのポンプ室23が排出経路27を介して相互に連通されて、
図11及び
図12に示すように左右両側のポンプ室23の相互間で洗浄液の移動が可能になる。
【0054】
次に、作業者は、
図8のステップS17のポンプ室洗浄工程を実行する。ポンプ室洗浄工程は、左右両側のポンプ室23内で洗浄液を行き来させることで、各ポンプ室23内を洗浄する工程である。ポンプ室洗浄工程では、作業者は、エアバルブ13を操作して開状態にし、駆動源2からの圧縮エアをエア回路14にして容積式往復ポンプ10の動作を再開する。すると、ポンプ本体20内に吸入された洗浄液が左右両側のポンプ室23の相互間で行き来し、これにより各ポンプ室23及び排出経路27の内部が洗浄される。
【0055】
作業者は、ステップS17においてポンプ室洗浄工程を所定期間継続し、その後、ステップS14~S16と同様に、ステップS18のポンプ停止工程、ステップS19の残留エア開放工程、及びステップS20の切替工程を順に実行する。この場合、ステップS20の切替工程において、作業者は、切替機構30を操作して、
図6に示すように排出側逆止弁29のチャッキボール291の保持を解除する。すると、チャッキボール291の移動の規制が解除されてチャッキボール291が移動可能になり、これにより排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できる状態になる。なお、本実施形態の場合、エアバルブ13が三方ボールバルブで構成されているため、ステップS14、S15の場合と同様に、ステップS18のポンプ停止工程とステップS19の残留エア開放工程とを、エアバルブ13に対する一の操作で同時に行うことができる。
【0056】
次に、作業者は、ステップS21の洗浄液排出工程を実行する。ステップS21の洗浄液排出工程では、作業者は、塗料バルブ19を開き、ポンプ本体20の出口22とリターンホース18とを連通させる。すると、ポンプ本体20内の洗浄液がリターンホース18から洗浄液タンク6に排出されるとともに、サクションホース15を介して洗浄液タンク6内の洗浄液がポンプ本体20内に吸入される。これにより、洗浄液が、洗浄液タンク6とポンプ本体20との間で循環する。
【0057】
この場合、ステップS17のポンプ室洗浄工程からステップS21の洗浄液排出工程への移行タイミングは、ステップS17のポンプ室洗浄工程の実行時間で規定することができる。すなわち、作業者は、ステップS17のポンプ室洗浄工程を開始してから予め定めた一定時間の経過後に、画一的にステップS21の洗浄液排出工程に移行させることができる。
【0058】
また、本実施形態の場合、フランジ202が透明な部材で構成されているため、作業者は、ポンプ本体20の外部からポンプ室23内を視認するこができる。そのため、作業者は、ポンプ本体20の外部からポンプ室23内の洗浄状況を確認し、その確認結果に応じてステップS21の洗浄液排出工程に移行させても良い。
【0059】
次に作業者は、ステップS22において、リターンホース18から排出された洗浄液つまり排出洗浄液の色を目視にて確認する。排出洗浄液の透明度が不十分である場合すなわち排出洗浄液に未だ塗料による着色が付いている場合(ステップS22でNG)、作業者は、ステップS23の洗浄液交換工程を実行し、洗浄液タンク61の洗浄液を新しい綺麗なものに交換する。その後、作業者は、ステップS13の作業に戻り、ステップS13~ステップS22の作業を繰り返す。
【0060】
そして、作業者は、ステップS22において排出洗浄液の透明度が十分であること、つまりリターンホース18から排出液に塗料の色が付いていないことを確認し(ステップS22でOK)、一連の作業を終了する。なお、上記作業とは別に、作業者は、噴射部4から洗浄液を噴射させることで、噴射部4及び接続ホース5を洗浄することができる。
【0061】
以上説明した実施形態によれば、容積式往復ポンプ10は、ポンプ本体20と、少なくとも2つのポンプ室23と、可変機構25と、吸入経路26と、排出経路27と、吸入側逆止弁28と、排出側逆止弁29と、切替機構30と、を備えている。ポンプ本体20は、移送対象となる材料この場合塗料の入口21と出口22が設けられている。ポンプ室23は、ポンプ本体20の内部に設けられており、容積が可変に構成されている。
【0062】
可変機構25は、駆動力を受けて往復移動することで各ポンプ室23の容積を可変させることができる。吸入経路26は、各ポンプ室23に対応して設けられており、入口21と各ポンプ室23とを繋いで形成されている。吸入経路26は、塗料をポンプ本体20の外部からポンプ室23内に吸入するための経路である。排出経路27は、各ポンプ室23に対応して設けられており、各ポンプ室23と出口22とを繋いで形成されている。排出経路27は、ポンプ室23内の塗料をポンプ室23からポンプ本体20の外部へ排出するための経路である。
【0063】
吸入側逆止弁28は、吸入経路26内に設けられている。吸入側逆止弁28は、各吸入経路26を移動する材料この場合塗料について入口21側からポンプ室23側への移動を許可し、ポンプ室23側から入口21側への移動を禁止する機能を有する。つまり、吸入側逆止弁28は、吸入経路26内を流れる塗料の流れを、入口21側からポンプ室23側へ向かう一方通行に規制する機能を有する。
【0064】
排出側逆止弁29は、排出経路27内に設けられている。排出側逆止弁29は、各排出経路27を移動する材料この場合塗料についてポンプ室23側から出口22側への移動を許可し、出口22側からポンプ室23側へ移動を禁止する機能を有する。つまり、排出側逆止弁29は、排出経路27内を流れる塗料の流れを、ポンプ室23側から出口22側へ向かう一方通行に規制する機能を有する。
【0065】
そして、切替機構30は、排出側逆止弁29を中立位置で保持し排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できない状態と、排出側逆止弁29の保持を解放し排出側逆止弁が逆止弁としての機能を発揮できる状態と、に切り替える機能を有する。
【0066】
また、本実施形態の容積式往復ポンプの洗浄方法は、
図8に示すように、ステップS12の洗浄剤吸入工程と、ステップS13の出口側閉鎖工程と、ステップS16の切替工程と、ステップS17のポンプ室洗浄工程と、を有している。洗浄剤吸入工程は、入口21からポンプ本体20内に洗浄剤を吸入する工程である。出口側閉鎖工程は、出口22側を閉じてポンプ本体20内に吸入した洗浄液が出口22からポンプ本体20外に流出することを規制する工程である。切替工程は、切替機構30により排出側逆止弁29を中立位置に保持することで排出側逆止弁29が逆止弁としての機能を発揮できない状態に切り替える工程である。そして、ポンプ室洗浄工程は、可変機構25この場合ダイヤフラム251を駆動させて洗浄剤を各ポンプ室23内で行き来させることで各ポンプ室23を洗浄する工程である。
【0067】
これによれば、ポンプ本体20内に吸入した洗浄剤を各ポンプ室23間で行き来させることができ、したがって、洗浄液の洗浄能力を有効に利用することができる。更に、各ポンプ室23間で行き来させることで、ポンプ室23内には、
図3の太実線矢印及び破線矢印で示すように、ポンプ室23内に洗浄液の乱流が生じる。その結果、洗浄液の洗浄能力を更に有効に利用するこができる。このように、実施形態の構成によれば、従来のポンプの洗浄方法のようにポンプ内に吸入した洗浄液を直ぐに排出してしまうものに比べて、洗浄液の使用量を大幅に削減することができ、ひいては塗装システム1のランニングコストを低減することができる。
【0068】
更に、洗浄液の使用量を低減することで、洗浄液の交換頻度も低減するこができ、その結果、作業性つまり生産性を向上させることもできる。また、実施形態の構成によれば、シンナー等の洗浄液の使用量を低減することにより、環境負荷の低減にも寄与することができる。そして、例えば塗料の色変えなど材料の交換頻度が多いユーザほど、これらの効果が大きい。
【0069】
また、ポンプ本体20は、少なくとも一部が透明な部材で構成されており、ポンプ本体20の外部から各ポンプ室23のうち少なくとも1つの内部を視認可能である。本実施形態の場合、ポンプ本体20のうちフランジ202が透明な部材で構成されている。そして、フランジ202は、ポンプ室23に対応する位置に設けられている。このため、洗浄作業を行う作業者は、洗浄作業の途中にポンプ本体20の外部からポンプ室23内の洗浄状況を確認することができる。これにより、作業者は、ポンプ本体20に吸入された洗浄液が十分に洗浄を行ったか否かを、ポンプ本体20から洗浄液を排出する前に判断することができ、その結果、洗浄液の排出や交換のタイミングをより適切に判断することができる。このように本実施形態によれば、洗浄液の洗浄力を更に効果的に利用することができるため、洗浄液の使用量や交換頻度を更に低減でき、その結果、作業性や生産性の更なる向上を図ることができるとともに、環境負荷の更なる低減にも寄与することができる。
【0070】
また、可変機構25は、各ポンプ室23内に設けられたダイヤフラム251と、各ダイヤフラム251を相互に連結するシャフト252と、を有している。この場合、ダイヤフラム251を用いたダイヤフラムポンプ10は、ポンプ室23内の表面積が大きいため、従来の構成では、洗浄液の使用量が多くなりがちである。これに対し、本実施形態によれば、ポンプ室23内の表面積が大きいダイヤフラム式のポンプであっても、洗浄液の使用量を削減することができる。
【0071】
また、各ポンプ室23は、ダイヤフラム251の面方向に対して直角方向に見た場合に円形状に構成されている。これによれば、各ポンプ室23間で洗浄液を行き来させた場合に、洗浄液は、
図3の太実線矢印及び破線矢印で示すように、各ポンプ室23内を往復するように流れる。そして、このときの洗浄液の流れは、破線矢印のように、塗料を圧送する際の通常の塗料の流れ方向とは逆方向の流れも含まれる。そのため、本実施形態によれば、各ポンプ室23内に生じる洗浄液の流れをより複雑にすることができ、その結果、ダイヤフラムポンプにおいてより高い洗浄効果を発揮することができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図13及び
図14を参照して説明する。
第2実施形態による塗装システム1は、容積式往復ポンプ10の洗浄を自動又は半自動で行うものである。本実施形態の容積式往復ポンプ10は、上記第1実施形態で説明した手動のエアバルブ13、塗料バルブ19、及び切替機構30に換えて、それぞれエア用電磁バルブ41、塗料用電磁バルブ42、及び自動切替機構43を備えている。エア用電磁バルブ41、塗料用電磁バルブ42、及び自動切替機構43は、それぞれエアバルブ13、塗料バルブ19、及び切替機構30と同様の機能を有し、外部のコンピュータ等からの指令に基づき自動で動作可能な構成である。
【0073】
また、本実施形態の容積式往復ポンプ10は、汚れ検知センサ44を更に備えている。汚れ検知センサ44は、例えば透明部材で構成されたフランジ202に設けられており、ポンプ本体20内を流れる洗浄液、この場合、ポンプ室23内の洗浄液の汚れ具合を検知することができる。汚れ検知センサ44は、例えば洗浄液の透明度を数値として出力することができる。この汚れ検知センサ44は、例えばレーザセンサのような透過型であっても良いし、画像センサのような非透過型であっても良い。
【0074】
エア用電磁バルブ41、塗料用電磁バルブ42、自動切替機構43、汚れ検知センサ44は、
図14に示すように制御装置50に接続されており、制御装置50からの指令に基づいて動作する。制御装置50は、例えばCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。そして、制御装置50は、エア用電磁バルブ41、塗料用電磁バルブ42、自動切替機構43、汚れ検知センサ44を制御して容積式往復ポンプ10の洗浄を行うためのプログラムを記憶しており、このプログラムを実行することで、例えば
図8のステップS13~S22の工程を自動で行う。
【0075】
すなわち、制御装置50は、エア用電磁バルブ41、塗料用電磁バルブ42、自動切替機構43を、
図10に示すように自動で動作させる。また、汚れ検知センサ44は、作業者の目視による洗浄液の汚れの判断の代わりとなる。すなわち、制御装置50は、
図8のステップS22において、汚れ検知センサ44から出力された数値に基づきポンプ室23内の洗浄液の透明度を判断する。
【0076】
このような構成によっても、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、本実施形態によれば、作業者が行っていた洗浄作業を自動化又は半自動化できるため、作業効率を向上させて生産性の更なる向上を図ることができる。
【0077】
なお、上記実施形態において排出側逆止弁29は、2つの排出経路27の合流部221に設けられ、1つの排出側逆止弁29で2つの排出経路27の開閉を行うものであったが、これに限られず、2つの排出経路27のそれぞれに排出側逆止弁29を設けても良い。この場合、切替機構30も、各排出側逆止弁29に対応して設ければ良い。
【0078】
また、例えば
図8のステップS17において、ポンプ本体20内に外部から少量の空気を供給して洗浄液に混ぜても良い。これによれば、各ポンプ室23内を行き来する洗浄液の流速が上がり、洗浄性能を更に向上させることができる。
また、例えば上記実施形態は、2つ以上のポンプ室を有し、往復動作により各ポンプ室の容積を変更させて材料を圧送する構成のポンプであれば、例えばピストンポンプ、ベローズポンプ、プランジャーポンプ等についても適用することができる。
【0079】
なお、上記説明した各実施形態は、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0080】
図面中、1は塗装システム、10は容積式往復ポンプ、20はポンプ本体、21は入口、22は出口、23はポンプ室、25は可変機構、251はダイヤフラム、252はシャフト、26は吸入経路、27は排出経路、28は吸入側逆止弁、29は排出側逆止弁、30は切替機構、44は汚れ検知センサ、を示す。