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特許7215742建設機械管理システム、建設機械管理プログラム、建設機械管理方法、建設機械および建設機械の外部管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】建設機械管理システム、建設機械管理プログラム、建設機械管理方法、建設機械および建設機械の外部管理装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20230124BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230124BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E02F9/26 B
G01C15/00 104D
G01B11/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020048774
(22)【出願日】2020-03-19
(62)【分割の表示】P 2019075348の分割
【原出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020183696
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】517368224
【氏名又は名称】J THINK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】玉里 芳直
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179577(WO,A1)
【文献】特開2014-074317(JP,A)
【文献】特開2018-172858(JP,A)
【文献】特開2018-184815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
G01C 15/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場エリアを移動可能な建設機械に搭載される検出センサ部と、
前記検出センサ部での検出結果を基に前記建設機械または当該建設機械が有する可動作業具の位置および姿勢を認識する位置認識部と、を備え、
前記検出センサ部は、前記建設機械または前記可動作業具の位置検出のために所定指標を検出するセンサとしての複数のカメラと、前記建設機械または前記可動作業具の姿勢検出に用いられる傾斜センサと、を含み、
前記位置認識部は、前記複数のカメラのそれぞれの検出結果を利用した測量演算を行って前記建設機械における複数箇所のそれぞれの位置を認識して、前記複数箇所の位置認識結果を組み合わせ、さらには前記傾斜センサによる検出結果を基にしつつ、前記建設機械または前記可動作業具の位置および姿勢を認識する
建設機械管理システム。
【請求項2】
施工現場エリアを移動可能な建設機械に搭載される検出センサ部が、前記建設機械または当該建設機械が有する可動作業具の位置検出のために所定指標を検出するセンサとしての複数のカメラと、前記建設機械または前記可動作業具の姿勢検出に用いられる傾斜センサとを含む場合に、前記検出センサ部に接続されたコンピュータを、
前記複数のカメラのそれぞれの検出結果を利用した測量演算を行って前記建設機械における複数箇所のそれぞれの位置を認識して、前記複数箇所の位置認識結果を組み合わせ、さらには前記傾斜センサによる検出結果を基にしつつ、前記建設機械または前記可動作業具の位置および姿勢を認識する位置認識手段
として機能させる建設機械管理プログラム。
【請求項3】
施工現場エリアを移動可能な建設機械に搭載される検出センサ部が、前記建設機械または当該建設機械が有する可動作業具の位置検出のために所定指標を検出するセンサとしての複数のカメラと、前記建設機械または前記可動作業具の姿勢検出に用いられる傾斜センサとを含む場合に、前記検出センサ部を用い、
前記複数のカメラのそれぞれの検出結果を利用した測量演算を行って前記建設機械における複数箇所のそれぞれの位置を認識して、前記複数箇所の位置認識結果を組み合わせ、さらには前記傾斜センサによる検出結果を基にしつつ、前記建設機械または前記可動作業具の位置および姿勢を認識する
建設機械管理方法。
【請求項4】
施工現場エリアを移動可能な建設機械であって、
前記建設機械に搭載される検出センサ部と、
前記検出センサ部に接続されたコンピュータ部と、を備え、
前記検出センサ部は、前記建設機械または当該建設機械が有する可動作業具の位置検出のために所定指標を検出するセンサとしての複数のカメラと、前記建設機械または前記可動作業具の姿勢検出に用いられる傾斜センサと、を含み、
前記コンピュータ部は、前記複数のカメラのそれぞれの検出結果を利用した測量演算を行って前記建設機械における複数箇所のそれぞれの位置を認識して、前記複数箇所の位置認識結果を組み合わせ、さらには前記傾斜センサによる検出結果を基にしつつ、前記建設機械または前記可動作業具の位置および姿勢を認識する位置認識部を有する
建設機械。
【請求項5】
施工現場エリアを移動可能な建設機械と離れて配置され、前記建設機械との間で情報授受を行うように構成された建設機械の外部管理装置であって、
前記建設機械に搭載される検出センサ部が、前記建設機械または当該建設機械が有する可動作業具の位置検出のために所定指標を検出するセンサとしての複数のカメラと、前記建設機械または前記可動作業具の姿勢検出に用いられる傾斜センサとを含む場合に、前記検出センサ部を用い、
前記複数のカメラのそれぞれの検出結果を利用した測量演算を行って前記建設機械における複数箇所のそれぞれの位置を認識して、前記複数箇所の位置認識結果を組み合わせ、さらには前記傾斜センサによる検出結果を基にしつつ、前記建設機械または前記可動作業具の位置および姿勢を認識した認識結果について、
少なくとも前記認識結果または当該認識結果からの導出情報のいずれかを出力するように構成されている、
建設機械の外部管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械管理システム、建設機械管理プログラム、建設機械管理方法、建設
機械および建設機械の外部管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設施工現場においては、その施工現場エリアで用いられる建設機械による施工
箇所について、電子機器を利用してモニタするといったことが行われている。建設機械に
よる施工箇所を認識できれば、例えば、その認識結果を地形データと照合することにより
、施工中の作業管理等が可能となるからである。
【0003】
従来、建設機械による施工箇所のモニタは、例えば、トータルステーション(Total St
ation、以下「TS」ともいう。)として知られているレーザ発光装置を施工現場エリア
に設置し、そのレーザ発光装置が出射するレーザ光を利用して行われる(例えば、特許文
献1参照)。また、その他に、例えば、GPS(Global Positioning System)に代表さ
れる全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System、以下「GNSS」と
もいう。)を利用して行われることもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-340556号公報
【文献】特表平09-500700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術では、建設機械による施工箇所のモニタが、TSまたはGNSSを利
用して行われる。つまり、建設機械からみたら外部システムとなるTSまたはGNSSを
利用しつつ、その建設機械についてのモニタが他律的に行われることになる。
【0006】
しかしながら、外部システムを利用した他律的なモニタでは、以下のような難点が生じ
得る。例えば、TSまたはGNSSは総じて高価であり、また利用にあたり専門的な知識
を要するため、必ずしも建設機械についてのモニタを簡便に行えるとは言えない。また、
外部システムを利用する施工現場エリアの環境や条件等によっては、建設機械に届くはず
のレーザ光または衛星電波が遮られ、そのことがモニタ精度に悪影響を及ぼしてしまうお
それがある。
【0007】
そこで、本発明は、建設機械による施工箇所をその建設機械からみて自律的にモニタす
ることで、当該モニタを簡便かつ高精度に行うことを可能にする技術を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたもので、その一態様は以下のとおりで
ある。
【0009】
本発明の一態様によれば、
施工現場エリアを移動可能な建設機械に搭載される検出センサ部と、
前記施工現場エリアに設置された外部指標についての前記検出センサ部での検出結果と
、前記建設機械が有する可動作業具に付された可動指標についての前記検出センサ部での
検出結果とを基に、前記施工現場エリアでの前記可動作業具による施工箇所の位置情報を
認識する位置認識部と、
を備える建設機械管理システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建設機械に搭載される検出センサ部の利用により、その建設機械によ
る施工箇所を自律的にモニタし得るので、当該モニタを簡便かつ高精度に行うことが可能
になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の基本的な技術思想を説明する図であり、当該技術思想が適用される建設機械管理システムの概略構成例を示す機能ブロック図である。
図2】本発明の第一実施形態において施工現場エリアで用いられる建設機械の一例であるバックホウの概略構成例を模式的に示す説明図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る建設機械管理システムで用いられるマーカ図形の二次元パターンの例を示す説明図であり、(a)はマーカ図形の一具体例を示す図、(b)はマーカ図形の他の具体例を示す図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る建設機械管理システムの構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る建設機械管理方法の処理手順の流れの一例を示すフロー図である。
図6】本発明の第一実施形態で用いられる2カメラ画像による測量技術の概要を示す説明図である。
図7】本発明の第一実施形態で用いられるバケット施工箇所の位置認識モデルの概要を示す説明図である。
図8】本発明の第一実施形態に係る建設機械管理システムが出力する操作ガイダンス情報の例を示す説明図であり、(a)は操作ガイダンス情報の一具体例を示す図、(b)は操作ガイダンス情報の他の具体例を示す図である。
図9】本発明の第二実施形態において施工現場エリアで用いられる建設機械の一例であるスリップフォーム機の基本的な構成例を模式的に示す側面図である。
図10】本発明の第二実施形態においてスリップフォーム機を用いて行うスリップフォーム工法の施工状況を示す説明図である。
図11】本発明の第二実施形態におけるスリップフォーム機を構成する前部切削機の構成例を模式的に示す説明図であり、(a)は正面から見た図、(b)は要部を側面から見た図である。
図12】本発明の第二実施形態におけるスリップフォーム機を構成する後部成型機の構成例を模式的に示す説明図であり、(a)は正面から見た図、(b)は要部を側面から見た図である。
図13】本発明の第二実施形態において施工現場エリアで用いられる建設機械の一例であるスリップフォーム機の概略構成例を模式的に示す斜視図である。
図14】本発明の第二実施形態に係る建設機械管理システムの構成例を示すブロック図である。
図15】本発明の第二実施形態に係る建設機械管理方法の処理手順の流れの一例を示すフロー図である。
図16】本発明の第二実施形態で用いられる測量技術の概要を示す説明図であり、(a)はカメラとマーカ図形の関係を示す図、(b)はカメラ座標系のベクトルを説明する図、(c)は高さを求めるためにモデル化した図、(d)は(c)をOO´の向きに透視した図である。
図17】本発明の第二実施形態に係る建設機械管理システムが出力する操作ガイダンス情報の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
<1.基本的な技術思想の概要>
まず、本発明の基本的な技術思想について、その概要を説明する。
図1は、本発明の基本的な技術思想が適用される建設機械管理システムの概略構成例を
示す機能ブロック図である。
【0014】
(システムの概要)
図例の建設機械管理システムは、建設施工現場の施工現場エリア1で用いられる建設機
械2について、その建設機械2が有する可動作業具3による施工箇所をモニタして、その
モニタ結果(すなわち、施工箇所についての認識結果)を取得するように構成されたもの
である。さらには、建設機械2による施工箇所のモニタ結果を取得したら、そのモニタ結
果に基づいて施工中の作業管理等を行い得るように構成されたものである。
【0015】
ここで、施工現場エリア1とは、建設機械2を用いた施工の対象となる領域のことであ
る。施工とは、建設機械2を用いて行う工事または処理のことをいう。施工の内容(種類
)については、建設機械2を用いて行うものであれば、特に限定されることはない。
また、施工現場エリア1については、施工後の状態(例えば工事後の地形)についての
設計データに相当する施工計画データが予め用意されているものとする。施工計画データ
は、施工後状態を特定し得るものであれば、データ形式等が特に限定されることはない。
なお、施工現場エリア1における施工前状態または施工中状態と、施工計画データによ
って特定される施工後状態とは、例えばその施工現場エリア1内に設定された基準点を利
用することで、互いに対応付けられるようになっている。
【0016】
施工現場エリア1の施工を行う建設機械2は、その施工現場エリア1内の任意位置に移
動可能に構成されている。施工現場エリア1内の移動は、自走によるものであってもよい
し、他の動力源を利用するものであってもよい。また、建設機械2は、停止状態または移
動中に動作させることが可能な可動作業具3を有しており、その可動作業具3を動作させ
ることで、施工現場エリア1に対する施工を行うように構成されている。このような建設
機械2において、可動作業具3による施工箇所は、その可動作業具3が実際に被施工物(
例えば地面)と接する箇所となる。
【0017】
このような建設機械2については、代表的な例として、油圧ショベルやブルドーザ等と
いった土木用途の建設機械が挙げられる。例えば、油圧ショベルであれば、アームの先端
に取り付けられたバケット(ショベル)が、可動作業具3に相当することになる。ただし
、ここでいう建設機械2は、土木用途に限定されることはなく、可動作業具3を有して移
動可能に構成されたものであれば、広義な意味での様々な作業機械が含まれる。例えば、
ここでいう建設機械2には、油圧ショベルやブルドーザ等の土木用途機械の他に、トラッ
クやローダ等の運搬機械、クレーン等の荷役機械、基礎工事用機械、せん孔機械、トンネ
ル工事用機械、圧砕機等のコンクリート機械、舗装機械、道路維持用機械等が含まれ、さ
らには圧雪車や自走型草刈機についても含まれ得る。
【0018】
(発明者が得た知見)
ところで、建設機械2の可動作業具3による施工箇所のモニタにあたっては、そのモニ
タを簡便かつ高精度に行えることが好ましい。しかしながら、既述の従来技術によるモニ
タでは、外部システムを利用して他律的に行うため、必ずしもモニタを簡便かつ高精度に
行えるとは限らない。
【0019】
施工箇所のモニタは、例えば、そのモニタ結果に基づいて施工中の作業管理等を可能に
するために行う。よって、モニタによる施工箇所の位置認識は、数mオーダーの精度では
足りず、少なくとも数cmオーダーの高精度で行う必要がある。このような高精度でのモ
ニタを行う場合、非常に高価であるTSまたはGNSSを利用すれば対応可能であるが、
非常に高価であるが故に必ずしも簡単に導入し得るものではない。しかも、TSまたはG
NSSの利用にあたり専門的な知識を要するため、利便性の点でも難がある。つまり、T
SまたはGNSSといった外部システムを利用して高精度でモニタを行う場合には、その
モニタを必ずしも簡便に行えるとは言えない。
【0020】
また、施工現場エリア1については、様々な環境下や条件下等に設定されることが想定
される。具体的には、例えば、市街地のようにレーザ光の照射を控えるべき場所に施工現
場エリア1が設定されたり、地下空間のように衛星電波が届かない場所に施工現場エリア
1が設定されたりすることがあり得る。そのため、外部システムを利用してモニタを行う
場合、施工現場エリア1の環境や条件等によってはレーザ光または衛星電波が遮られ、そ
のことがモニタ精度に悪影響を及ぼしてしまうおそれがある。
【0021】
これらのことを踏まえた上で鋭意検討を重ねた結果、本願の発明者は、建設機械2に搭
載される検出センサ部11の利用により、建設機械2による施工箇所をその建設機械2か
らみて自律的にモニタすることで、当該モニタを簡便かつ高精度に行うことが可能になる
のではないかという着想を得るに至った。つまり、ここで説明する基本的な技術思想は、
外部システムを利用した他律的なモニタではなく、建設機械2による施工箇所をその建設
機械2が自律的にモニタするという、従来にはない新規な着想に基づいて案出されたもの
である。
【0022】
(システム構成例)
具体的には、図1に示すように、建設機械管理システムが以下のような構成を備えてい
る。すなわち、建設機械管理システムは、少なくとも、建設機械に搭載される検出センサ
部11と、外部管理装置20との間で情報授受を行う情報通信部12と、検出センサ部1
1および情報通信部12に接続されたコンピュータ部13と、を備えている。
【0023】
検出センサ部11は、建設機械2または当該建設機械2が有する可動作業具3の位置、
姿勢または方位を検出するために用いられるものである。ここでいう位置とは、施工現場
エリア1を三次元座標空間と考えた場合の座標位置である。姿勢とは、水平面に対する傾
きの量である。方位とは、移動方向または可動方向の向きである。
このような検出センサ部11としては、例えば、イメージセンサ(カメラ)、傾斜計、
加速度センサ、ジャイロセンサ(角加速度センサ)の少なくとも一つ、好ましくはこれら
を適宜組み合わせて構成されたものが挙げられる。また、検出センサ部11として、単独
計測タイプのGPS装置を複数用いることも考えられる。
【0024】
情報通信部12は、外部管理装置20との間の通信を確立するためのものである。この
ような情報通信部12としては、例えば、LTE(Long Term Evolution)回線、Wi-
Fi(Wireless Fidelity)、ブルートゥース(登録商標)等といった公知の無線通信技
術を利用して、外部管理装置20との通信を確立するものを用いればよい。
情報通信部12の通信相手となる外部管理装置20としては、例えば、建設機械2とは
離れて(施工現場エリア1内または施工現場エリア1外の別を問わず)配置されるコンピ
ュータ装置が挙げられる。ただし、これに限定されることはなく、コンピュータ装置と同
視できる機能を有していれば、例えば、可搬性を有するタブレット端末を外部管理装置2
0としてもよい。外部管理装置20が可搬性を有する場合、その外部管理装置20を持つ
者は、建設機械2に搭乗した状態においても、その外部管理装置20を利用することが可
能となる。
【0025】
コンピュータ部13は、例えば、いわゆるシングルボードコンピュータ(Single Board
Computer、以下「SBC」ともいう。)を用いて構成されたもので、予め設定された所
定プログラムを実行することにより、以下に述べる機能を実現するように構成されたもの
である。すなわち、コンピュータ部13は、コンピュータとしてのハードウエア資源を備
えており、所定プログラムを実行することで、そのプログラム(ソフトウエア)とハード
ウエア資源とが協働して、位置認識部13a、データ取得部13b、差分情報抽出部13
c、ガイダンス出力部13d、動作計画生成部13eおよび動作指示部13fとして機能
するように構成されている。
【0026】
位置認識部13aは、施工現場エリア1に設置された外部指標1aについての検出セン
サ部11での検出結果と、建設機械2が有する可動作業具3に付された可動指標3aにつ
いての検出センサ部11での検出結果とを基に、施工現場エリア1での建設機械2の可動
作業具3による施工箇所の位置情報を認識する機能である。
外部指標1aとしては、例えば、施工現場エリア1内の基準点に設置された標尺、また
はこれに準ずるものを用いる。外部指標1aは、施工現場エリア1に単数が設置されてい
てもよいし、複数が設置されていてもよい。
外部指標1aを検出する検出センサ部11としては、例えば、外部指標1aの画像を撮
像するイメージセンサ(カメラ)を用いる。その場合に、外部指標1aには、画像パター
ンで識別される二次元のマーカ図形、または、発光パターンで識別される二次元の発光面
を有する発光器、若しくは、発光パターンの一例としての点滅パターンで識別される点光
源を有する発光器が付設されていると、当該外部指標1aの識別が容易になる点で好まし
い。ただし、外部指標1aを検出可能であれば、イメージセンサ以外の検出センサ部11
を用いてもよい。
また、可動指標3aは、建設機械2の可動作業具3に予め付設されているものとする。
可動作業具3についての検出は、外部指標1aの場合と同様に、例えば、可動作業具3
に関する画像を撮像するイメージセンサ(カメラ)を用いる。その場合に、可動作業具3
には、可動指標3aとして、外部指標1aとは異なるパターンの二次元のマーカ図形、ま
たは、外部指標1aとは異なるパターンの二次元の発光面を有する発光器、若しくは、外
部指標1aとは異なる点滅パターンの点光源を有する発光器が付設されていると、当該可
動作業具3についての検出および当該可動指標3aの識別が容易になる点で好ましい。ま
た、可動指標3aの検出は、外部指標1aの場合と同様に、イメージセンサ以外の検出セ
ンサ部11を用いて行ってもよい。
【0027】
そして、位置認識部13aは、外部指標1aについての検出結果と、可動指標3aにつ
いての検出結果とを基に、例えば詳細を後述する測量技術を利用しつつ、少なくとも建設
機械2の可動作業具3による施工箇所の位置を認識する。これにより、可動作業具3によ
る施工箇所について、施工現場エリア1(三次元座標空間)内の座標位置を認識すること
ができる。
なお、位置認識部13aは、施工箇所の位置に加えて、傾斜計やジャイロセンサ等とい
った検出センサ部11での検出結果を基に、建設機械2の姿勢または方位を認識するもの
であってもよい。つまり、位置認識部13aが認識する位置情報には、少なくとも建設機
械2の位置に関する情報が含まれており、さらに好ましくは位置に加えて姿勢や方位等の
情報が含まれているものとする。
【0028】
データ取得部13bは、施工現場エリア1についての施工計画データ(設計データ)を
取得する機能である。施工計画データの取得手法については、特に限定されることはなく
、例えば、コンピュータ部13における記憶領域に施工計画データを予め格納しておくこ
とで取得可能としてもよいし、情報通信部12を通じて外部から取得し得るようにしても
よい。
【0029】
差分情報抽出部13cは、位置認識部13aでの認識結果を建設機械2の可動作業具3
による施工箇所のモニタ結果として得た上で、そのモニタ結果をデータ取得部13bが取
得した施工計画データと対比して、施工計画データに対する可動作業具3による施工箇所
の差分を差分情報として抽出する機能である。差分情報の抽出手法については、特に限定
されることはなく、例えば、公知の演算手法を利用して行えばよい。
【0030】
ガイダンス出力部13dは、差分情報抽出部13cが抽出した差分情報を基に可動作業
具3の操作ガイダンス情報を生成するとともに、生成した操作ガイダンス情報の出力を行
う機能である。操作ガイダンス情報は、建設機械2の可動作業具3による施工箇所を施工
計画データに合致させるために、当該建設機械2において必要となる操作を案内する情報
である。このような操作ガイダンス情報の生成および出力は、建設機械の技術分野でいわ
ゆるマシンガイダンスとして知られている公知技術を利用して行えばよい。なお、操作ガ
イダンス情報の出力先としては、例えば、建設機械2のオペレータが操作する操作パネル
、またはこれに準ずるものが挙げられるが、これに限定されることはなく、情報通信部1
2を通じて外部管理装置20に出力しても構わない。
【0031】
動作計画生成部13eは、差分情報抽出部13cが抽出した差分情報を基に、建設機械
2における可動作業具3の動作計画情報を生成する機能である。動作計画情報は、建設機
械2の可動作業具3による施工箇所を施工計画データに合致させるために、当該可動作業
具3をどのように動作させればよいかを特定する情報である。つまり、動作計画情報は、
建設機械2の動作の自動制御(運転の自動化)を実現するために必要となる情報である。
なお、ここでいう自動制御は、建設機械の技術分野でいわゆるマシンコントロールとして
知られている公知技術を利用して実現したものであればよい。
【0032】
動作指示部13fは、動作計画生成部13eが生成した動作計画情報を基に、建設機械
2が有する駆動制御部4に対する動作指示を与える機能である。動作指示部13fが動作
指示を与えると、建設機械2では、その動作指示に従いつつ、駆動制御部4が可動作業具
3を動作させることになる。なお、建設機械2への動作指示は、上述した自動制御の一端
を担うものであり、いわゆるマシンコントロールとして知られている公知技術を利用して
実現したものであればよい。
【0033】
以上に説明した各部13a~13fとしての機能は、コンピュータ部13が所定プログ
ラムを実行することによって実現される。つまり、各部(各手段)13a~13fとして
の機能を実現する所定プログラムは、本発明に係る「建設機械管理プログラム」の一実施
形態に相当する。その場合に、各機能を実現する所定プログラムは、コンピュータ部13
にインストール可能なものであれば、当該コンピュータ部13で読み取り可能な記録媒体
(例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等)に格納されて
提供されるものであってもよいし、インターネットや専用回線等のネットワークを通じて
外部から提供されるものであってもよい。
【0034】
なお、ここでは、コンピュータ部13が各部13a~13fとしての機能の全てを備え
ている場合を例に挙げているが、必ずしもこれに限定されることはなく、コンピュータ部
13は少なくとも位置認識部13aとしての機能を備えたものであればよい。位置認識部
13aを除く他の各部13b~13fとしての機能については、コンピュータ部13では
なく外部管理装置20が備えていてもよいし、コンピュータ部13と外部管理装置20と
が重複して備えていてもよいし、コンピュータ部13と外部管理装置20とのいずれも備
えていなくてもよい。
【0035】
(処理動作例)
続いて、上述した構成の建設機械管理システムにおける処理動作を説明する。ここで例
に挙げる処理動作は、建設機械管理方法の一具体例に相当する。
【0036】
施工現場エリア1において建設機械2を用いて施工を行う場合には、まず、その建設機
械2の移動後の位置において、建設機械2に搭載される検出センサ部11により、施工現
場エリア1内の基準点に設置された外部指標1aについての検出を行う。例えば、検出セ
ンサ部11としてイメージセンサを用いる場合であれば、外部指標1aの画像を撮像でき
るまで、その外部指標1aについての検出を継続的に行う。複数の外部指標1aが設置さ
れている場合には、少なくとも一つの外部指標1aを検出する。
【0037】
また、検出センサ部11は、建設機械2の移動後の位置において、外部指標1aの検出
に加えて、可動指標3aについての検出も行う。
【0038】
そして、検出センサ部11が外部指標1aおよび可動指標3aを検出したら、これらの
検出結果を基に、例えば詳細を後述する測量技術を利用しつつ、建設機械2の可動作業具
3による施工箇所の位置を認識する。これにより、位置認識部13aは、可動作業具3に
よる施工箇所について、施工現場エリア1内における位置(三次元座標値)を認識するこ
とになる。このとき、位置認識部13aは、必要に応じて、可動作業具3の姿勢または方
位についても認識する。
【0039】
このようにして得た認識結果によれば、建設機械2が有する可動作業具3による施工箇
所について、基準点を基準とした場合の施工現場エリア1内の絶対的な位置(必要に応じ
て姿勢または方位を含む。)を特定することが可能となる。つまり、建設機械2に搭載さ
れる検出センサ部11を利用しつつ、外部指標1aおよび可動指標3aの検出結果に基づ
く位置認識部13aでの認識処理を経ることで、TSまたはGNSSといった外部システ
ムを要することなく、建設機械2による施工箇所を、その建設機械2からみて自律的にモ
ニタし得るようになる。
【0040】
位置認識部13aでの認識処理を経て、建設機械2の可動作業具3による施工箇所のモ
ニタ結果を得たら、差分情報抽出部13cが、そのモニタ結果をデータ取得部13bが取
得した施工計画データと対比して、当該施工計画データとの差分情報を抽出する。差分情
報抽出部13cが差分情報を抽出したら、以下のようなマシンガイダンス処理動作または
マシンコントロール処理動作を行うことが可能となる。
【0041】
マシンガイダンス処理動作を行う場合には、差分情報抽出部13cが抽出した差分情報
を基に、ガイダンス出力部13dが操作ガイダンス情報を生成する。そして、生成した操
作ガイダンス情報を、例えば、建設機械2の操作パネルまたはこれに準ずるもので出力す
る。これにより、建設機械2のオペレータは、操作パネルの出力内容を参照することで、
施工計画データによる施工内容、当該建設機械2の姿勢や動き等を把握しつつ、当該建設
機械2(すなわち自機)の操作を行うことができる。したがって、オペレータにとっては
、建設機械2の可動作業具3による施工箇所を施工計画データに合致させる上で、非常に
利便性に優れたものとなる。なお、操作ガイダンス情報の出力先は、情報通信部12を介
して接続された外部管理装置20であってもよい。その場合には、例えば、建設機械2を
実際に操作するオペレータが非熟練者であっても、建設機械2とは離れて配置される外部
管理装置20の出力内容を参照した熟練者が、建設機械2による施工の状況を把握しつつ
、非熟練者に対して操作の助言を行うといったことが実現可能となる。
【0042】
マシンコントロール処理動作を行う場合には、差分情報抽出部13cが抽出した差分情
報を基に、その差分情報による差分を低減させるように、動作計画生成部13eが動作計
画情報を生成する。そして、動作計画生成部13eが生成した動作計画情報を基に、動作
指示部13fが建設機械2の駆動制御部4に対して動作指示を与える。これにより、建設
機械2は、可動作業具3による施工箇所を施工計画データに合致させるように、当該建設
機械2(すなわち自機)の動作や姿勢等が自動運転されることになる。なお、建設機械2
の自動運転を行う場合、差分情報抽出部13cが抽出した差分情報や動作計画生成部13
eが生成した動作計画情報等を、情報通信部12を介して接続された外部管理装置20に
出力し、その外部管理装置20から建設機械2の動作や姿勢等を補助的に制御し得るよう
にしてもよい。このようにすれば、例えば、外部管理装置20を操作する熟練者が、建設
機械2による施工の状況を把握しつつ、当該建設機械2に対する制御内容を適宜修正する
ことが可能となるので、当該建設機械2の自動運転についての精度や信頼性等の向上が図
れるようになる。
【0043】
(作用効果)
以上に説明した建設機械管理システムにおいては、建設機械2に搭載される検出センサ
部11を利用しつつ、外部指標1aおよび可動指標3aの検出結果を組み合わせ、これら
の検出結果に基づく位置認識部13aでの認識処理を経ることで、建設機械2の可動作業
具3による施工箇所のモニタ結果を得る。したがって、TSまたはGNSSといった外部
システムを要することなく、建設機械2の可動作業具3による施工箇所を自律的にモニタ
することが可能になる。
【0044】
検出センサ部11を利用した自律的なモニタであれば、非常に高価であるTSまたはG
NSSを利用する場合に比べると、簡単に導入し得るようになる。検出センサ部11とし
て、イメージセンサ(カメラ)や傾斜計等といった普及品の使用が可能だからである。し
かも、TSまたはGNSSのように専門的な知識を必要としないため、利便性の点でも優
れている。つまり、検出センサ部11を利用した自律的なモニタであれば、TSまたはG
NSSといった外部システムを利用する場合に比べて、そのモニタを簡便に行えるように
なる。
【0045】
また、検出センサ部11を利用した自律的なモニタであれば、外部からのレーザ光また
は衛星電波が必須とはならないので、様々な環境下や条件下等に施工現場エリア1が設定
されることが想定される場合であっても、これに柔軟かつ適切に対応することが可能とな
る。例えば、市街地のようにレーザ光の照射を控えるべき場所に施工現場エリア1が設定
されたり、地下空間のように衛星電波が届かない場所に施工現場エリア1が設定されたり
しても、建設機械2の可動作業具3による施工箇所について柔軟かつ適切にモニタするこ
とができ、そのモニタ精度に悪影響が及んでしまうこともない。
【0046】
また、検出センサ部11を利用した自律的なモニタを行う場合であっても、その検出セ
ンサ部11およびその検出対象となる外部指標1a等の設定、並びに、位置認識部13a
での認識処理アルゴリズムの設定によっては、そのモニタを数cmオーダーの高精度で行
うことが可能である。つまり、検出センサ部11を利用した自律的なモニタによっても、
建設機械2の可動作業具3による施工箇所について、高精度での位置や姿勢等の認識を行
うことができる。
【0047】
以上のように、本実施形態の技術的思想によれば、建設機械2に搭載される検出センサ
部11の利用により、その建設機械2の可動作業具3による施工箇所を自律的にモニタし
得るので、当該モニタを簡便かつ高精度に行うことが可能になる。
【0048】
<2.第一実施形態>
次に、上述の技術思想が具現化された実施形態について、具体例を挙げて説明する。
まず、建設機械2が油圧ショベルの一種であるバックホウである場合を、第一実施形態
として説明する。
【0049】
(建設機械)
図2は、第一実施形態において施工現場エリアで用いられる建設機械の一例であるバッ
クホウの概略構成例を模式的に示す説明図である。
建設機械の一例であるバックホウ2は、油圧ショベルと称される建設機械のうち、バケ
ット(ショベル)をオペレータ側向きに取り付けたものであり、主として施工現場エリア
1の掘削用途に用いられる。さらに詳しくは、バックホウ2は、走行装置としての右無限
軌道2aおよび左無限軌道2bを有しており、施工現場エリア1内を移動可能に構成され
ている。また、バックホウ2は、走行装置に支持される旋回可能な機台2cを有しており
、その機台2cにオペレータが搭乗して操作(操縦)を行うように構成されている。
【0050】
バックホウ2の機台2cには、可動作業具3としての第一アーム3b、第二アーム3c
およびバケット3dが取り付けられており、これらを動作させることで地表面に対して掘
削等の施工を行うようになっている。つまり、バケット3dの剣先位置が、そのバケット
3dによる施工箇所に相当する。
【0051】
また、バックホウ2には、検出センサ部11として、画像を撮像するイメージセンサ(
カメラ)11a,11bと、二軸方向の傾き(具体的には、左右方向および前後方向の傾
き)を検出可能な傾斜センサ11cと、が搭載されている。イメージセンサ11a,11
bは、バックホウ2における優れた視野の箇所(例えば、機台2cの天井面または前面等
)に同方向を向いて並設された複数(例えば、二つ)のカメラ11a,11bによって構
成されている。
さらに、バックホウ2が有する可動作業具3には、バケット3dの向き(傾き)を検出
可能な傾斜センサ11dが取り付けられている。
なお、カメラ11a,11bおよび傾斜センサ11c,11dは、いずれも、公知のも
のを用いればよい。また、バックホウ2には、これらに加えて、さらに他の検出センサ部
11が設けられていてもよい。
【0052】
このようなバックホウ2が用いられる施工現場エリア1には、基準点となる位置(予め
座標が特定されている位置)に、外部指標1aとしての標尺またはこれに準ずるものが立
設されている。そして、外部指標1aには、画像パターンで識別される二次元のマーカ図
形1bが付設されている。なお、外部指標1aには、マーカ図形1bに代えて、発光パタ
ーンで識別される二次元の発光面を有する発光器、または、発光パターンの一例としての
点滅パターンで識別される点光源を有する発光器が付設されていてもよい。外部指標1a
におけるマーカ図形1bは、カメラ11a,11bによる撮像対象となるものである。
【0053】
施工現場エリア1に複数の基準点が設定されている場合には、それぞれの基準点に外部
指標1aおよびマーカ図形1bが配置されていてもよい。つまり、外部指標1aおよびマ
ーカ図形1bは、施工現場エリア1内の異なる位置のそれぞれに個別に設置されていても
よい。
【0054】
また、バックホウ2が有する可動作業具3には、例えば第二アーム3cにおけるバケッ
ト3dの近傍箇所に、可動指標としてのマーカ図形3aが付設されている。なお、マーカ
図形3aに代えて、発光パターンで識別される二次元の発光面を有する発光器、または、
発光パターンの一例としての点滅パターンで識別される点光源を有する発光器が付設され
ていてもよい。可動指標としてのマーカ図形3aは、外部指標1aにおけるマーカ図形1
bと同様に、カメラ11a,11bによる撮像対象となるものである。
【0055】
ただし、可動指標としてのマーカ図形3aと、外部指標1aにおけるマーカ図形1bと
は、それぞれが互いに異なる二次元パターンによって構成されていることが好ましい。な
お、発光器の場合は、発光パターンまたは点滅パターンが互いに異なることが好ましい。
図3は、本実施形態に係る建設機械管理システムで用いられるマーカ図形の二次元パタ
ーンの例を示す説明図である。
例えば、図3(a)に示す二次元パターンをマーカ図形1bとして用いる場合には、図
3(b)に示す二次元パターンをマーカ図形3aとして用いることが考えられる。このよ
うにすれば、各マーカ図形1b,3aについての検出を、同一のイメージセンサ(カメラ
)11a,11bを用いて行う場合であっても、それぞれの識別を容易かつ的確に行える
ようになる。
【0056】
(システム構成例)
次に、第一実施形態における建設機械管理システムの構成例を説明する。
図4は、第一実施形態に係る建設機械管理システムの構成例を示すブロック図である。
【0057】
第一実施形態に係る建設機械管理システムは、バックホウ2に搭載される検出センサ部
11としてのカメラ11a,11bおよび傾斜センサ11c,11dと、これらに接続さ
れたSBC13と、を備えている。SBC13は、既述のコンピュータ部13として機能
するものである。
【0058】
SBC13には、情報通信部12としてのデータ通信端末12を介して、外部管理装置
20が接続されている。また、SBC13には、Wi-Fi端末31を介して、タブレッ
ト端末32が接続されている。タブレット端末32は、バックホウ2のオペレータが利用
するもので、当該バックホウ2の操作パネルに準ずるものに相当する。なお、バックホウ
2の操作パネルが画像を表示する機能を有していれば、タブレット端末32は省略しても
構わない。
【0059】
さらに、SBC13には、バックホウ2が有する駆動制御部4としての機構制御部4a
および油圧制御部4bが接続されている。機構制御部4aは、右無限軌道2aの前後進、
左無限軌道2bの前後進、機台2cの旋回等をコントロールするものである。油圧制御部
4bは、可動作業具3を構成する第一アーム3b、第二アーム3cおよびバケット3dの
動作をコントロールするものである。
【0060】
なお、SBC13と外部との接続は、例えばUSB(Universal Serial Bus)またはI
2C(Inter-Integrated Circuit)を利用して行うことが考えられるが、これに限定され
ることはなく、他の公知の通信方式を利用して行うようにしても構わない。
【0061】
(処理動作例)
次に、上述した構成の建設機械管理システムにおける処理動作例、すなわち第一実施形
態における建設機械管理方法を説明する。
図5は、第一実施形態に係る建設機械管理方法の処理手順の流れの一例を示すフロー図
である。
【0062】
上述した構成の建設機械管理システムでは、バックホウ2による施工箇所のモニタにあ
たり、まず、施工現場エリア1の基準点に設置された外部指標1aについてのマーカ認識
を行う(ステップ101、以下ステップを「S」と略す。)。具体的には、外部指標1a
に付設されたマーカ図形1bをカメラ11a,11bで撮像して、そのマーカ図形1bに
ついての撮像画像を得る。このときの撮像は、複数(例えば、二つ)のカメラ11a,1
1bを用いることから、施工現場エリア1に配置されたいずれか一つのマーカ図形1bに
ついて行えば、後述する測量技術を利用した位置認識を行うことができる。施工現場エリ
ア1に複数のマーカ図形1bが配置されていれば、ある一つのマーカ図形1bとバックホ
ウ2との間に遮蔽物が存在していても、他のマーカ図形1bについての撮像画像を得るこ
とが可能となるので、外部指標1aについてのマーカ認識に支障を来してしまうことがな
い。
【0063】
また、マーカ認識は、外部指標1aのマーカ図形1bのみならず、バックホウ2の可動
作業具3に付設された可動指標としてのマーカ図形3aについても行う(S101)。具
体的には、可動作業具3に付設されたマーカ図形3aをカメラ11a,11bで撮像して
、そのマーカ図形3aについての撮像画像を得る。このとき、各マーカ図形1b,3aに
ついての撮像を、同一のカメラ11a,11bを用いて行えば、検出センサ部11の構成
が複雑化してしまうのを抑制することができる。
【0064】
さらに、建設機械管理システムでは、傾斜センサ11cがバックホウ2自体についての
傾斜認識を行うとともに、傾斜センサ11dが可動作業具3のバケット3dについての傾
斜認識を行う(S102)。
【0065】
マーカ認識および傾斜認識を行うと、建設機械管理システムでは、続いて、SBC13
における位置認識部13aとしての機能が、バックホウ2のバケット3dによる施工箇所
についての位置判定(位置認識)を行う(S103)。
【0066】
位置判定に際して、位置認識部13aは、第一認識処理と、第二認識処理と、を行う。
まず、第一認識処理として、外部指標1aのマーカ図形1bについての撮像結果を基に、
施工現場エリア1におけるバックホウ2の位置情報を認識する。具体的には、一方のカメ
ラ11aで得た撮像結果と、他方のカメラ11bで得た撮像結果と、カメラ11a,11
b同士の位置関係とを基に、以下に説明する2カメラ画像による測量技術を利用して、マ
ーカ図形1bとカメラ11a,11bとの位置関係を認識する。
【0067】
図6は、第一実施形態で用いられる2カメラ画像による測量技術の概要を示す説明図で
ある。
図中において、A、Bは各カメラ11a,11bの位置を、またTは測量対象(例えば
、マーカ図形1b)の位置を、AA´、BB´は各カメラ11a,11bの光軸を、それ
ぞれ表している。また、QはABの中点を、Q´はA´B´の中点を、それぞれ表してい
る。したがって、AQ=BQ、A´Q´=B´Q´、AA´∥QQ´∥、BB´の関係が
成り立つ。なお、A´、O、Q´、B´の各点はQQ´に垂直な面上の仮想点であり、A
´およびB´は各カメラ11a,11bで得られる撮像画像の中心点(原点)に相当する
ことになる。
【0068】
ここで、例えば、点Iと点Jの実距離をIJと表記し、点Iと点Jの画像上の画素距離
をIJpと表記し、被写体の大きさと被写体の画素距離とから被写体までの距離を求める
ための予め測定可能なカメラ11a,11bの特性値をkとする場合を考える。その場合
、以下に示す関係式が成り立つ。
【0069】
【数1】
【0070】
以上の関係式を基にすれば、カメラ11a,11bについてのA、Bの位置関係と、そ
れぞれによる撮像画像におけるA´、O、Q´、B´の各点の位置関係とから、測量対象
との間の距離QT、光軸面上の測量対象までの距離QO、および、光軸面から測量対象ま
での高さ距離OTを求めることが可能となる。また、傾斜センサ11cによる線分QOの
水平面からの仰角の検出結果から、点Tから点Qへの距離と仰角を求めることが可能であ
る。また、例えば二つのマーカ図形1bまでの距離と仰角を測定することで、点Qの絶対
座標を求めることも可能である。
【0071】
つまり、位置認識部13aは、以上に説明した2カメラ画像による測量技術を利用しつ
つ、バックホウ2の位置を特定する上で基準となる当該バックホウ2の所定部分(例えば
、各カメラ11a,11bの設置点の中点である点Q)点について、マーカ図形1b(す
なわち、施工現場エリア1内の基準点)に対する三次元座標位置を算出して認識する。こ
のようにして認識した三次元座標位置は、施工現場エリア1におけるバックホウ2の所定
部分の絶対位置に相当する。
【0072】
このとき、位置認識部13aは、マーカ図形1bの撮像結果を基に外部指標1aが設置
された基準点の位置を特定することで、施工現場エリア1内におけるバックホウ2の方位
(すなわち、機台2cが向いている方向)を認識することができる。さらに、位置認識部
13aは、傾斜センサ11cによる検出結果を基に、バックホウ2自体の姿勢(すなわち
、施工現場エリア1内での傾きの状態)についても認識することができる。
【0073】
位置判定に際して、上述した第一認識処理を行うと、位置認識部13aは、続いて、第
二認識処理を行う。第二認識処理では、可動指標としてのマーカ図形3aについての撮像
結果を基に、バケット3dによる施工箇所の位置情報を認識する。具体的には、一方のカ
メラ11aで得た撮像結果と、他方のカメラ11bで得た撮像結果と、マーカ図形3aと
バケット3dとの位置関係と、さらにはバケット3dについての傾斜センサ11dでの検
出結果とを基に、上述した2カメラ画像による測量技術を利用しつつ、マーカ図形3aと
カメラ11a,11bとの位置関係を認識した上で、さらにマーカ図形3aとバケット3
dによる施工箇所との位置関係を認識する。
【0074】
図7は、第一実施形態で用いられるバケット施工箇所の位置認識モデルの概要を示す説
明図である。
図中において、Sは第一アーム3bのサイズ、Rは第二アーム3cのサイズ、Pはバケ
ット3dのサイズ、R1,R2は第二アーム3cにおけるマーカ図形3aの位置を、それ
ぞれ表しており、いずれもバックホウ2の利用時点で既知の値である。したがって、上述
した2カメラ画像による測量技術を利用しつつ、カメラ11a,11bのAB光軸面上の
点Qからマーカ図形3aまでの水平距離Mおよび垂直距離Hを認識した上で、傾斜センサ
11dによる検出結果を基にバケット3dの回転角(傾き)がわかれば、点Q(すなわち
、バックホウ2の位置を特定する上で基準となる当該バックホウ2の所定部分)に対する
バケット3dの剣先位置の三次元座標位置を算出して認識することができる。バケット3
dの剣先位置は、当該バケット3dによる施工箇所の位置に相当する。つまり、このよう
にして認識した三次元座標位置は、バケット3dによる施工箇所についてのバックホウ2
の所定部分に対する相対位置に相当することになる。
【0075】
このとき、位置認識部13aは、第一認識処理でのバックホウ2の姿勢等についての認
識結果を反映させることで、可動作業具3の姿勢または方位についても認識する。これに
より、位置認識部13aは、例えばバックホウ2に傾き等が生じた状態であっても、その
バックホウ2におけるバケット3dの剣先位置を正しく認識することができる。
【0076】
このようにして得た第一認識処理での絶対位置の認識結果と第二認識処理での相対位置
の認識結果とを組み合わせることで、位置認識部13aは、バックホウ2のバケット3d
による施工箇所について、基準点を基準とした場合の施工現場エリア1内の絶対的な位置
のモニタ結果を得ることが可能となる。
【0077】
その後、図5に示すように、建設機械管理システムでは、SBC13における差分情報
抽出部13cとしての機能が、施工現場エリア1の施工計画データに対するバックホウ2
の姿勢認識を行う(S104)。具体的には、バックホウ2のバケット3dによる施工箇
所についてのモニタ結果を、施工現場エリア1の施工計画データにおける該当位置の座標
値と対比して、それぞれの間の差分情報を抽出する。
【0078】
差分情報を抽出したら、建設機械管理システムでは、SBC13におけるガイダンス出
力部13dとしての機能が、マシンガイダンス処理動作を行って操作ガイダンス情報を出
力することで、バックホウ2のオペレータに対して当該バックホウ2の姿勢表示を行う(
S105)。このとき、操作ガイダンス情報の出力は、外部管理装置20で行うようにし
てもよい。つまり、外部管理装置20を扱うセンター熟練者に対して、バックホウ2の姿
勢表示を行うようにしてもよい(S106)。
【0079】
操作ガイダンス情報の出力は、例えば、以下のような態様で行う。
図8は、第一実施形態に係る建設機械管理システムが出力する操作ガイダンス情報の例
を示す説明図である。
【0080】
操作ガイダンス情報の出力は、例えば、図8(a)に示すような表示画面41によって
行うことが考えられる。図例の表示画面41は、施工計画データに基づいて三次元形状が
ワイヤーフレーム形式で描画された施工面41aに対して、バックホウ2のバケット3d
を表す画像41bが、抽出された差分情報が反映された位置に表示されて構成されている
。表示画面41中には、バケット3dの現在位置を施工面41aに導くためのガイド線(
誘導曲線)41cが表示されていてもよい。さらに、表示画面41中には、関連の数値(
例えば、座標値)が表示されていてもよい。
【0081】
また、操作ガイダンス情報を出力は、必ずしも三次元形式の表示画面41による必要は
なく、例えば、図8(b)に示すような二次元形式の表示画面42によるものであっても
よいし、必要に応じて三次元形式と二次元形式を切り換え可能なものであってもよい。
【0082】
このような表示画面41,42によって操作ガイダンス情報の出力を行えば、オペレー
タにとっては、バックホウ2のバケット3dによる施工箇所を施工計画データに合致させ
る上で、非常に利便性に優れたものとなる。また、操作ガイダンス情報の出力を外部管理
装置20で行うようにすれば、例えば、バックホウ2を実際に操作するオペレータが非熟
練者であっても、遠隔箇所にいるセンター熟練者が、バックホウ2による施工の状況を把
握しつつ、非熟練者に対して操作の助言を行うといったことが実現可能となる。
【0083】
また、建設機械管理システムでは、上述したマシンガイダンス処理動作とは別に、また
はマシンガイダンス処理動作に加えて、SBC13における動作計画生成部13eおよび
動作指示部13fとしての機能が、マシンコントロール処理動作を行うものであってもよ
い。具体的には、図5に示すように、まず、動作計画生成部13eが、動作計画情報とし
てバケット3dを施工面に移動させる移動曲線を生成する処理(すなわち、図中の姿勢制
御)を行うとともに(S107)、その移動を行うための動作を、第一アーム3bの油圧
動作、第二アーム3cの油圧動作、バケット3dの油圧動作、右無限軌道2aまたは左無
限軌道2bの前後進動作、機台2cの旋回動作の各シーケンスで構成する処理(すなわち
、図中の制御生成)を行う(S108)。そして、動作指示部13fが、各シーケンスに
よる動作指示を、機構制御部4aおよび油圧制御部4bに与える処理(すなわち、図中の
制御指示)を行う(S109)。この動作指示を受けて、機構制御部4aが必要に応じて
右無限軌道2a、左無限軌道2bまたは機台2cを動作させるとともに(S110)、油
圧制御部4bが必要に応じて第一アーム3b、第二アーム3cまたはバケット3dを動作
させることで(S111)、バックホウ2のバケット3dを所定位置に導く。
【0084】
このようなマシンコントロール処理動作を行うことで、施工面に沿ってバケット3dが
動くように、バックホウ2の位置調整を自動的に行うことが可能となる。つまり、バケッ
ト3dによる施工箇所を施工計画データに合致させるように、バックホウ2の動作や姿勢
等が自動運転されることになる。
【0085】
なお、マシンコントロール処理動作を行う場合において、ここでは姿勢制御(S107
)、制御生成(S108)および制御指示(S109)をSBC13で行っているが、こ
れらの処理をSBC13に比べて高い処理能力を有する外部管理装置20で行うようにし
ても構わない。
【0086】
また、姿勢制御(S107)で生成した動作計画情報(移動曲線等)については、外部
管理装置20で出力し、その外部管理装置20での制御監視に供するようにしてもよい(
S112)。このようにすれば、例えば、外部管理装置20からバックホウ2の動作や姿
勢等を補助的に制御し得るようになる。したがって、遠隔箇所にいるセンター熟練者が、
バックホウ2による施工の状況を把握しつつ、当該バックホウ2に対する制御内容を適宜
修正することが可能となるので、当該バックホウ2の自動運転についての精度や信頼性等
の向上が図れるようになる。
【0087】
(作用効果)
以上に説明した第一実施形態によれば、バックホウ2に搭載される検出センサ部11の
利用により、そのバックホウ2のバケット3dによる施工箇所を自律的にモニタし得るの
で、当該モニタを簡便かつ高精度に行うことが可能になる。
【0088】
また、第一実施形態によれば、バケット3dによる施工箇所についてのモニタ結果を、
施工現場エリア1の施工計画データと対比して、これらの間の差分を差分情報として抽出
する。したがって、抽出した差分情報を基にマシンガイダンス処理動作またはマシンコン
トロール処理動作を行うことが可能となり、バックホウ2が自律的に得たモニタ結果を有
効に活用する上で非常に好適なものとなる。
【0089】
また、第一実施形態で説明したように、自律的なモニタ結果に基づいて、マシンガイダ
ンス処理動作またはマシンコントロール処理動作を行うようにすれば、バックホウ2のオ
ペレータにとって、非常に利便性に優れたものとなる。しかも、これらの処理動作が自律
的なモニタ結果(すなわち、簡便かつ高精度に得られるモニタ結果)に基づいて行われる
ので、その処理動作に対する信頼性等も担保し得るようになる。
【0090】
また、第一実施形態で説明したように、外部管理装置20との間で、差分情報または当
該差分情報からの導出情報である動作計画情報等を授受すれば、遠隔箇所にいるセンター
熟練者による助言や補助制御等が可能となる。したがって、オペレータやセンター熟練者
等にとって非常に利便性に優れたものとなり、しかもバックホウ2による施工の精度、効
率、信頼性等についても非常に優れたものとすることができる。
【0091】
また、第一実施形態では、バックホウ2には検出センサ部11としてイメージセンサ(
カメラ)11a,11bが搭載されており、そのイメージセンサ11a,11bで得た画
像に対する認識処理を行うことで、バックホウ2の絶対位置およびバケット3dの相対位
置の認識を行う。このように、カメラ11a,11bを用いて位置認識を行えば、非常に
高価であるTSまたはGNSSを利用する場合に比べて簡単に導入し得るようになり、ま
たTSまたはGNSSのように専門的な知識を必要としないため利便性の点でも優れてお
り、結果としてシステム構築を簡便に行えるようになる。しかも、カメラ11a,11b
で得た画像を解析して位置認識を行うので、その解析アルゴリズムの設定次第で、必要十
分な位置精度(例えば、数cmオーダーの高精度)での位置認識を行うことが可能である
【0092】
また、第一実施形態では、外部指標1aにおけるマーカ図形1bについての検出と、第
二アーム3cにおける可動指標としてのマーカ図形3aについての検出とを、バックホウ
2に搭載された同一のイメージセンサ(カメラ)11a,11bを用いて行う。そのため
、バックホウ2の絶対位置およびバケット3dの相対位置の認識にあたり、マーカ図形1
bとマーカ図形3aとの検出が必要となる場合であっても、それぞれに対応するイメージ
センサ(カメラ)を個別に設ける必要がなく、センサ構成が複雑化してしまうのを抑制す
ることができる。このことは、センサ導入コストの抑制や画像処理のための処理負荷軽減
等にも繋がるため、システム構築を簡便に行えるようにする上でも好適である。
【0093】
また、第一実施形態では、イメージセンサが同方向を向いて並設された複数(例えば、
二つ)のカメラ11a,11bによって構成されている。つまり、一つのマーカ図形1b
,3aについての検出結果として、複数(例えば、二つ)の撮像画像が得られる。したが
って、例えば2カメラ画像による測量技術を利用することが可能となり、検出対象となる
マーカ図形1b,3aが単数の場合であっても、高精度での位置認識を行うことが可能と
なる。
【0094】
また、第一実施形態では、外部指標1aに二次元パターンのマーカ図形1b(または発
光器)が付設されている。そのため、外部指標1aについての検出にイメージセンサ(カ
メラ)11a,11bを用いる場合において、パターン認識技術を利用し得るようになる
ので、撮像画像に含まれるマーカ図形1bの識別および抽出を容易かつ的確に行うことが
できる。
さらに、第一実施形態では、バックホウ2の第二アーム3cに可動指標としてのマーカ
図形3a(または発光器)が付設されているので、外部指標1aにおけるマーカ図形1b
の場合と同様に、マーカ図形3aの識別および抽出を容易かつ的確に行うことができる。
しかも、マーカ図形1bとは異なるパターンのマーカ図形3aとすれば、これらを混同し
てしまうこともない。
【0095】
<3.第二実施形態>
次に、建設機械2が、いわゆるスリップフォーム工法で用いられるスリップフォーム機
である場合を、第二実施形態として説明する。なお、ここでは、主として第一実施形態と
の相違点について説明し、第一実施形態の場合と同様の内容については説明を省略する。
【0096】
(建設機械)
図9は、第二実施形態において施工現場エリアで用いられる建設機械の一例であるスリ
ップフォーム機の基本的な構成例を模式的に示す側面図である。
建設機械の一例であるスリップフォーム機2は、少なくとも、進行方向の前方側に配さ
れる前部切削機(以下、単に「切削機」ともいう。)2dと、進行方向の後方側に配され
る後部成型機(以下、単に「成型機」ともいう。)2eと、を備えて構成されている。切
削機2dと成型機2eとは、互いに連結されて一体で移動するようになっているが、それ
ぞれが別々の機械として移動するように構成されていてもよい。
【0097】
ここで、スリップフォーム機2を用いて行うスリップフォーム工法について簡単に説明
する。
図10は、スリップフォーム機を用いて行うスリップフォーム工法の施工状況を示す説
明図である。
スリップフォーム工法による施工にあたっては、まず、切削機2dを用いて溝を掘削す
る掘削工程を行う。掘削溝を形成したら、続いて、その掘削溝の溝内に成型機2eが有す
る鋼製型枠(モールド)を配置する。そして、モールド内に生コンクリートを投入し、そ
の内部で生コンクリートを所定形状に締固め、成型する成型工程を行う。これらの工程は
、切削機2dおよび成型機2eを移動させながら行う。
このように、スリップフォーム工法では、自走機能を持つスリップフォーム機を用いて
、同一断面のコンクリート構造物(例えばU字溝)を連続的に打設していくのである。
なお、コンクリート構造物は、内部に鉄筋が敷設されたものであってもよい。その場合
には、切削機2dと成型機2eとを離して配置し、切削機2dと成型機2eとの間で鉄筋
の敷設を行うようにすればよい。
【0098】
このようなスリップフォーム工法による施工を行うために、スリップフォーム機2にお
ける切削機2dおよび成型機2eは、それぞれが以下に述べるように構成されている。
【0099】
図11は、第二実施形態におけるスリップフォーム機を構成する前部切削機の構成例を
模式的に示す説明図である。
図11(a)に示すように、切削機2dは、無限軌道(クローラ)やタイヤ等の走行装
置2fと、その走行装置2fに支持される車体部2gとを有し、施工現場エリア内を移動
可能に構成されている。車体部2gには、油圧で動作するアクチュエータ2hを介して、
可動作業具3としての上部筐体3eおよび掘削ドラム3fが取り付けられている。掘削ド
ラム3fは、上部筐体3eに回転可能に支持されているとともに、その外周面に複数のカ
ッタービット3gが設けられている。
このような構成の切削機2dでは、アクチュエータ2hが上部筐体3eを動かし、これ
により掘削ドラム3fの位置および姿勢を制御するようになっている。また、図11(b
)に示すように、掘削ドラム3fを回転させることで、地表面に対して掘削等の施工を行
うようになっている。なお、掘削ドラム3fの回転によって生じる掘削物(土、砂、石、
アスファルト片等)は、前方側に延びる搬送コンベア2iによって搬送されるものとする
【0100】
つまり、切削機2dでは、進行する際に可動する上部筐体3e、掘削ドラム3fおよび
カッタービット3gが、建設機械2の可動作業具3に相当する。また、回転する掘削ドラ
ム3fの外周面に設けられたカッタービット3gの先端位置が、可動作業具3による施工
箇所に相当する。
【0101】
図12は、第二実施形態におけるスリップフォーム機を構成する後部成型機の構成例を
模式的に示す説明図である。
図12(a)に示すように、成型機2eは、上述した切削機2dと同様に、走行装置2
jと、その走行装置2jに支持される車体部2kとを有し、施工現場エリア内を移動可能
に構成されている。車体部2kには、油圧で動作するアクチュエータ2lを介して、可動
作業具3としての上部筐体3hおよびモールド3iが取り付けられている。
モールド3iには、図12(b)に示すように、モールド内に生コンクリートを投入す
るためのコンクリート注入器2mが接続されている。さらに、モールド3iには、振動で
モールド内に生コンクリートを充填させるためのバイブレータ3jが付設されている。
このような構成の成型機2eでは、アクチュエータ2lが上部筐体3hを動かし、これ
によりモールド3iの位置および姿勢を制御するようになっている。また、位置および姿
勢が制御されるモールド3iへのコンクリート注入を行いつつ、そのモールド3iを進行
方向に移動させることで、同一断面のコンクリート構造物を連続的に打設するようになっ
ている。
【0102】
つまり、成型機2eでは、進行する際に可動する上部筐体3hおよびモールド3iが、
建設機械2の可動作業具3に相当する。また、モールド3iが配された位置が、可動作業
具3による施工箇所に相当する。
【0103】
ところで、ここで説明する第二実施形態において、スリップフォーム機2には、検出セ
ンサ部11が搭載されている。
図13は、第二実施形態において施工現場エリアで用いられる建設機械の一例であるス
リップフォーム機の概略構成例を模式的に示す斜視図である。
スリップフォーム機2には、検出センサ部11として、画像を撮像するイメージセンサ
(カメラ)11e~11hと、傾きを検出可能な傾斜センサ11i,11jと、が搭載さ
れている。イメージセンサ11e~11hは、切削機2dにおける上部筐体3eの側面に
下方向を向いて並設された複数(例えば、二つ)のカメラ11e,11fと、成型機2e
における上部筐体3hの側面に下方向を向いて並設された複数(例えば、二つ)のカメラ
11g,11hと、によって構成されている。なお、切削機2dと成型機2eとが連結さ
れている場合、切削機2dの上部筐体3eにおけるカメラ11fと成型機2eの上部筐体
3hにおけるカメラ11gとは、必ずしも別体で備える必要はなく、一つのカメラで共用
するようにしてもよい。また、傾斜センサ11i,11jは、切削機2dの上部筐体3e
と成型機2eの上部筐体3hとのそれぞれに個別に配置されている。
なお、カメラ11e~11hおよび傾斜センサ11i,11jは、いずれも、公知のも
のを用いればよい。また、スリップフォーム機2には、これらに加えて、さらに他の検出
センサ部11が設けられていてもよい。
【0104】
このようなスリップフォーム機2が用いられる施工現場エリア1には、基準点となる位
置(予め座標が特定されている位置)に、外部指標1aとして、画像パターンで識別され
る二次元のマーカ図形1cが配置されている。マーカ図形1cは、カメラ11e~11h
による撮像対象となるものであり、スリップフォーム機2の進行方向に沿って複数が所定
間隔で配列されているものとする。なお、マーカ図形1cに代えて、発光パターンで識別
される二次元の発光面を有する発光器、または、点滅パターンで識別される点光源を有す
る発光器が配置されていてもよい。
【0105】
また、切削機2dの可動作業具3を構成する上部筐体3eと、成型機2eの可動作業具
3を構成する上部筐体3hとには、それぞれにおけるカメラ11e~11hの個別に対応
するように、可動指標としてのマーカ図形3kが付設されている。マーカ図形3kは、外
部指標1aとしてのマーカ図形1cと同様に、カメラ11e~11hによる撮像対象とな
るものである。そのため、マーカ図形3kは、マーカ図形1cとは異なる二次元パターン
によって構成されていることが好ましい。なお、マーカ図形3kに代えて、発光パターン
で識別される二次元の発光面を有する発光器、または、点滅パターンで識別される点光源
を有する発光器が付設されていてもよい。
【0106】
(システム構成例)
次に、第二実施形態における建設機械管理システムの構成例を説明する。
図14は、第二実施形態に係る建設機械管理システムの構成例を示すブロック図である
【0107】
第二実施形態に係る建設機械管理システムは、切削機2dの上部筐体3eに搭載される
検出センサ部11としてのカメラ11e,11fおよび傾斜センサ11iと、成型機2e
の上部筐体3hに搭載される検出センサ部11としてのカメラ11g,11hおよび傾斜
センサ11jと、これらに接続されたSBC13と、を備えている。SBC13は、切削
機2dまたは成型機2eの少なくとも一方に搭載されていればよく、既述のコンピュータ
部13として機能するものである。
【0108】
SBC13に、データ通信端末12を介して外部管理装置20が接続されており、Wi
-Fi端末31を介してタブレット端末32が接続されている点は、第一実施形態の場合
と同様である。
【0109】
さらに、SBC13には、スリップフォーム機2が有する駆動制御部4としての油圧制
御部4cが接続されている。油圧制御部4cは、切削機2dにおけるアクチュエータ2h
および成型機2eにおけるアクチュエータ2lの動作をコントロールするものである。
【0110】
(処理動作例)
次に、上述した構成の建設機械管理システムにおける処理動作例、すなわち第二実施形
態における建設機械管理方法を説明する。
図15は、第二実施形態に係る建設機械管理方法の処理手順の流れの一例を示すフロー
図である。
【0111】
上述した構成の建設機械管理システムでは、スリップフォーム機2による施工箇所のモ
ニタにあたり、まず、施工現場エリア1に設置されたマーカ図形1cについてのマーカ認
識を行うとともに、上部筐体3e,3hに付設されたマーカ図形3kについてのマーカ認
識を行う(S201)。具体的には、マーカ図形1c,3kを各カメラ11e~11hで
撮像して、そのマーカ図形1c,3kについての撮像画像を得る。このときの撮像は、そ
れぞれのカメラ11e~11hにおいて、少なくとも二つのマーカ図形1cと一つのマー
カ図形3kとが一つの画像内に収まるように行う。少なくとも二つのマーカ図形1cと一
つのマーカ図形3kとを撮像すれば、各カメラ11e~11hでの撮像結果のそれぞれに
おいて、後述する測量技術を利用した位置認識を行うことができる。そのために、マーカ
図形1cは、各カメラ11e~11hの画角を考慮して設定された所定間隔で配列されて
いるものとする。
【0112】
さらに、建設機械管理システムでは、傾斜センサ11iが切削機2dの上部筐体3eに
ついての傾斜認識を行うとともに、傾斜センサ11jが成型機2eの上部筐体3hについ
ての傾斜認識を行う(S202)。
【0113】
マーカ認識および傾斜認識を行うと、建設機械管理システムでは、続いて、SBC13
における位置認識部13aとしての機能が、スリップフォーム機2による施工箇所につい
ての位置判定(位置認識)を行う(S203)。
【0114】
位置判定に際して、位置認識部13aは、マーカ図形1c,3kについての撮像画像を
基に、切削機2dによる施工箇所と成型機2eによる施工箇所とのそれぞれを認識する。
具体的には、各カメラ11e~11h別に、それぞれで得た撮像結果に基づいて、以下に
説明する測量技術を利用して、カメラ11e~11hを搭載した上部筐体3e,3hの位
置を認識する。
【0115】
図16は、第二実施形態で用いられる測量技術の概要を示す説明図である。
ここでは、図16(a)に示すように、カメラ11eでのマーカ図形1c,3kについ
ての撮像画像を基に、切削機2dの上部筐体3eの側方距離および高さを測量する技術に
ついて説明する。なお、他のカメラ11f~11hでの撮像画像に対しても、全く同様の
測量技術を適用可能であることは言うまでもない。
図16(a)中において、Pはカメラ11eの位置を、A,Bは二つのマーカ図形1c
のそれぞれの位置を、Rはマーカ図形3kの位置を、それぞれ表している。各マーカ図形
1cの間の距離ABは、これらの設置時に規定されて既知であるものとする。カメラ11
eとマーカ図形3kとの間の距離PRは、これらの上部筐体3eへの設置時に測定されて
既知であるものとする。また、カメラ11eは、上部筐体3eが水平状態の場合に光軸が
鉛直方向に沿い、かつ、光軸がマーカ図形3kの中心近傍を通るように、調整された状態
で上部筐体3eに設置されているものとする。
【0116】
また、図16(b)~(d)中において、Oはカメラ11eによる撮像画像の中心を、
dは上部筐体3eの傾斜角(水平状態で0、マーカ図形1c側に傾く方向に+)を、それ
ぞれ表している。
【0117】
ここで、例えば、点Iと点Jの実距離をIJと表記し、点Iと点Jの画像上の画素距離
をIJpと表記し、被写体の大きさと被写体の画素距離とから被写体までの距離を求める
ための予め測定可能なカメラ11eの特性値をkとする場合を考える。また、カメラ11
eの設置時に、上部筐体3eのカメラ設置面と水平面上で直交し、上部筐体3eからマー
カ図形1cの向きの、カメラ座標系のおける任意のベクトルを、ベクトルSとして求めて
おく。Cは、カメラ座標上でRからベクトルS方向の直線と線分ABとの交点である。ま
た、カメラ座標上でのOから線分RCへの垂線の足をO´とする。
そうすると、ACPとBCPとの按分により、AとBから実座標Cが求まる。なお、カ
メラ座標上で∠ACO´をθとする。また、光軸POに垂直でCを含む面上へのRの射影
をR´とする。O´も同面上で扱う。
その場合、以下に示す関係式が成り立つ。
【0118】
【数2】
【0119】
以上の関係式を基にすれば、ある一つのカメラ11eの位置と二つのマーカ図形1cの
それぞれの位置と一つのマーカ図形3kの位置との関係から、カメラ11eが設置された
上部筐体3eの位置について、側方距離CDおよび高さPDを求めることが可能となる。
そして、距離CDおよび高さPDがわかれば、これらに基づいて、マーカ図形3kの位
置である点Rを求めることが可能となる。マーカ図形3kの位置である点Rは、点Cから
上部筐体3eに向け線分ABと角度θをなす直線上で、点Cから上部筐体3eに向けた距
離CD-PRsin(d)に位置し、点Cからの高さPD-PRcos(d)に位置する
点となる。
【0120】
つまり、位置認識部13aは、以上に説明した測量技術を利用しつつ、マーカ図形1c
の点A,Bを絶対的な位置、これに対するマーカ図形3kの点Rを相対的な位置と捉え、
これらの検出結果に基づいて、上部筐体3eの位置を特定する上で基準の一つとなる当該
上部筐体3eの所定部分(具体的には、マーカ図形3kが付された点Rの位置)について
、その三次元座標位置を算出して認識する。
【0121】
位置認識部13aは、以上のような位置認識処理を、カメラ11eによる検出結果のみ
ならず、他のカメラ11f~11hによる検出結果についても、全く同様に行う。これに
より、位置認識部13aは、各カメラ11e~11hのそれぞれに対応する上部筐体3e
,3hの所定部分について、三次元座標位置の認識結果を得ることになる。
【0122】
位置判定に際して、各カメラ11e~11hの対応部分についての位置認識結果を得る
と、次いで、位置認識部13aは、これらの位置認識結果を組み合わせて、上部筐体3e
,3hの位置情報を認識する。
【0123】
具体的には、例えば上部筐体3eであれば、カメラ11eの検出結果に基づく位置認識
結果と、カメラ11fの検出結果に基づく位置認識結果とから、当該上部筐体3eにおけ
る2箇所のマーカ図形3k(点R)のそれぞれの三次元座標位置が特定されるので、位置
認識部13aは、これらの三次元座標位置に基づき、施工現場エリア1内での上部筐体3
eの位置、方位、姿勢(傾きの状態)等を認識する。このとき、位置認識部13aは、傾
斜センサ11iによる検出結果を基に、上部筐体3eの姿勢について認識する。
【0124】
このように、位置認識部13aは、カメラ11eの検出結果に基づく位置認識結果とカ
メラ11fの検出結果に基づく位置認識結果とを組み合わせ、さらには傾斜センサ11i
による検出結果を基にしつつ、上部筐体3eの位置情報を認識する。これにより、切削機
2dについては、可動作業具3としての上部筐体3e、掘削ドラム3fおよびカッタービ
ット3gによる施工箇所について、基準点であるマーカ図形1cの位置を基準とした場合
の施工現場エリア1内の絶対的な位置のモニタ結果を得ることが可能となる。
【0125】
また、例えば上部筐体3hであれば、カメラ11gの検出結果に基づく位置認識結果と
、カメラ11hの検出結果に基づく位置認識結果とから、当該上部筐体3hにおける2箇
所の三次元座標位置が特定されるので、位置認識部13aは、これらの三次元座標位置に
基づき、施工現場エリア1内での上部筐体3hの位置、方位、姿勢(傾きの状態)等を認
識する。このとき、位置認識部13aは、傾斜センサ11jによる検出結果を基に、上部
筐体3hの姿勢について認識する。
【0126】
このように、位置認識部13aは、カメラ11gの検出結果に基づく位置認識結果とカ
メラ11hの検出結果に基づく位置認識結果とを組み合わせ、さらには傾斜センサ11j
による検出結果を基にしつつ、上部筐体3hの位置情報を認識する。これにより、成型機
2eについては、可動作業具3としての上部筐体3hおよびモールド3iによる施工箇所
について、基準点であるマーカ図形1cの位置を基準とした場合の施工現場エリア1内の
絶対的な位置のモニタ結果を得ることが可能となる。
【0127】
その後、図15に示すように、建設機械管理システムでは、SBC13における差分情
報抽出部13cとしての機能が、施工現場エリア1の施工計画データに対するスリップフ
ォーム機2の姿勢認識を行う(S204)。具体的には、スリップフォーム機2の切削機
2dおよび成型機2eによる施工箇所についてのモニタ結果を、施工現場エリア1の施工
計画データにおける該当位置の座標値と対比して、それぞれの間の差分情報を抽出する。
【0128】
差分情報を抽出したら、建設機械管理システムでは、SBC13におけるガイダンス出
力部13dとしての機能が、マシンガイダンス処理動作を行って操作ガイダンス情報を出
力することで、スリップフォーム機2を扱う現場作業者に対して当該スリップフォーム機
2の姿勢表示を行う(S205)。
【0129】
操作ガイダンス情報の出力は、例えば、以下のような態様で行う。
図17は、第二実施形態に係る建設機械管理システムが出力する操作ガイダンス情報の
例を示す説明図である。
【0130】
操作ガイダンス情報の出力は、例えば、図17に示すような表示画面43によって行う
ことが考えられる。図例の表示画面43は、施工計画データに基づいて描画された施工面
43aに対して、スリップフォーム機2を表す画像43bが、抽出された差分情報が反映
された位置に表示されて構成されている。表示画面43中には、スリップフォーム機2の
切削機2dおよび成型機2eの現在位置を施工面43aに導くためのガイド線(誘導曲線
)43cが表示されていてもよい。さらに、表示画面43中には、関連の数値(例えば、
座標値)が表示されていてもよい。
【0131】
このような表示画面43によって操作ガイダンス情報の出力を行えば、現場作業者にと
っては、スリップフォーム機2の切削機2dおよび成型機2eによる施工箇所を施工計画
データに合致させる上で、非常に利便性に優れたものとなる。
【0132】
なお、図15に示すように、施工計画データに対するスリップフォーム機2の姿勢認識
(S206)、および、操作ガイダンス情報の出力によるスリップフォーム機2の姿勢表
示(S207)については、外部管理装置20で行うようにしてもよい。操作ガイダンス
情報の出力を外部管理装置20で行うようにすれば、例えば、スリップフォーム機2を実
際に操作する現場作業者が非熟練者であっても、遠隔箇所にいるセンター熟練者が、スリ
ップフォーム機2による施工の状況を把握しつつ、非熟練者に対して操作の助言を行うと
いったことが実現可能となる。
【0133】
また、外部管理装置20は、マシンガイダンス処理動作とは別に、またはマシンガイダ
ンス処理動作に加えて、マシンコントロール処理動作を行うものであってもよい。具体的
には、外部管理装置20は、スリップフォーム機2の切削機2dおよび成型機2eを施工
面に移動させる移動曲線を生成する処理(すなわち、図中の姿勢制御)を行うとともに(
S208)、その移動を行うための動作を、アクチュエータ2h,2lの油圧動作等の各
シーケンスで構成する処理(すなわち、図中の制御生成)を行う(S209)。そして、
各シーケンスによる動作指示を、油圧制御部4cに与える処理(すなわち、図中の制御指
示)を行う(S210)。この動作指示を受けて、油圧制御部4cが必要に応じてアクチ
ュエータ2h,2lを動作させることで(S211)、切削機2dにおける上部筐体3e
、掘削ドラム3fおよびカッタービット3g、並びに、切削機2eにおける上部筐体3h
およびモールド3iを所定位置に導く。
【0134】
このようなマシンコントロール処理動作を行うことで、施工面に沿って切削機2dにお
ける上部筐体3e、掘削ドラム3fおよびカッタービット3g、並びに、切削機2eにお
ける上部筐体3hおよびモールド3iが動くように、切削機2dおよび成型機2eの位置
調整を自動的に行うことが可能となる。つまり、切削機2dおよび成型機2eによる施工
箇所を施工計画データに合致させるように、スリップフォーム機2の動作や姿勢等が自動
運転されることになる。
【0135】
なお、マシンコントロール処理動作を行う場合において、ここでは姿勢制御(S208
)、制御生成(S209)および制御指示(S210)を外部管理装置20で行う場合を
例に挙げたが、これらの処理をスリップフォーム機2のSBC13で行うようにしても構
わない。
【0136】
また、姿勢制御(S208)で生成した動作計画情報(移動曲線等)については、外部
管理装置20での制御監視に供するようにしてもよい(S212)。このようにすれば、
例えば、外部管理装置20からスリップフォーム機2の動作や姿勢等を補助的に制御し得
るようになる。したがって、遠隔箇所にいるセンター熟練者が、スリップフォーム機2に
よる施工の状況を把握しつつ、当該スリップフォーム機2に対する制御内容を適宜修正す
ることが可能となるので、当該スリップフォーム機2の自動運転についての精度や信頼性
等の向上が図れるようになる。
【0137】
(作用効果)
以上に説明した第二実施形態によれば、スリップフォーム機2に搭載される検出センサ
部11の利用により、そのスリップフォーム機2の切削機2dおよび成型機2eによる施
工箇所を自律的にモニタし得るので、上述した第一実施形態の場合とほぼ同様の作用効果
が得られる。
【0138】
また、第二実施形態では、検出センサ部11として、切削機2dの上部筐体3eに複数
のカメラ11e,11fが搭載され、成型機2eの上部筐体3hにも複数のカメラ11g
,11hが搭載されている。各カメラ11e~11hは、それぞれが、少なくとも二つの
マーカ図形1cと一つのマーカ図形3kとを検出対象とする。つまり、イメージセンサが
同方向を向いて並設された複数(例えば、一筐体あたり二つ)のカメラ11e~11hに
よって構成されており、各カメラ11e~11hが複数の指標(具体的には、二つのマー
カ図形1cと一つのマーカ図形3k)を検出対象とする。そして、位置判定に際して、位
置認識部13aは、各カメラ11e~11hでの検出結果について個別に位置認識を行う
とともに、これらの位置認識結果を適宜組み合わせて上部筐体3e,3hの位置情報を認
識する。したがって、第二実施形態においては、上部筐体3e,3hのそれぞれについて
、各カメラ11e~11hでの検出結果から、三次元座標位置のみならず、その方位や姿
勢(傾きの状態)等についても認識することができ、しかもその認識を高精度に行うこと
が可能となる。
【0139】
また、第二実施形態では、外部指標1aとして、所定間隔で配列された複数のマーカ図
形1cを用いる。したがって、自走機能を持つスリップフォーム機2を用いて長尺状のコ
ンクリート構造物を連続的に打設していく場合に適用して非常に好適なものとなる。例え
ば、スリップフォーム工法では、スリップフォーム機2の進行方向に沿って長尺状の連続
体からなるセンサラインを敷設し、そのセンサラインに沿ってスリップフォーム機2を移
動させることがある。これに対して、外部指標1aとして複数のマーカ図形1cを用いれ
ば、連続体の敷設を要することなく、当該マーカ図形1cを点在させることで、スリップ
フォーム機2を高精度に移動させることが可能となる。しかも、センサラインの場合とは
異なり、姿勢(傾斜)についても認識することが可能となる。そのため、スリップフォー
ム工法のように、建設機械を所定方向に移動させながら施工を行う場合に適用して非常に
好適なものとなる。
【0140】
<4.他の実施形態>
以上に、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施形
態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0141】
例えば、第一実施形態ではバックホウ2を、また第二実施形態ではスリップフォーム機
2を、それぞれ建設機械として例示したが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるこ
とはない。つまり、本発明は、土木用途機械、運搬機械、荷役機械、基礎工事用機械、せ
ん孔機械、トンネル工事用機械、圧砕機等のコンクリート機械、舗装機械、道路維持用機
械、圧雪車、自走型草刈機等、様々な種類の建設機械に適用可能である。
建設機械が圧雪車である場合には、例えば、スキー場のゲレンデに外部指標を配置する
ことで、その圧雪車のブレードによる施工箇所(圧雪箇所)を、当該圧雪車が自律的にモ
ニタすることが可能になる。また、建設機械が自走型草刈機である場合には、例えば、ゴ
ルフ場のコースに外部指標を配置することで、その自走型草刈機のカッタ刃による施工箇
所(草刈箇所)を、当該自走型草刈機が自律的にモニタすることが可能になる。
【0142】
また、第一実施形態では、外部指標1aにマーカ図形1bが付設されている場合を例に
挙げたが、本発明の技術的範囲がこれに限定されることはない。つまり、マーカ図形1b
が付設されていなくても、例えば、外部指標1aとして標尺またはこれに準ずるものを用
いれば、その標尺の目盛等の画像を解析することで、その外部指標1aが配置された基準
点の位置を特定することが可能である。
【0143】
また、第一実施形態および第二実施形態では、いずれも、検出センサ部11としてイメ
ージセンサ(カメラ)11a,11b,11e~11hを用いる場合を例に挙げたが、本
発明の技術的範囲がこれに限定されることはない。つまり、検出センサ部11は、少なく
とも建設機械の位置認識を行い得るものであれば、イメージセンサに代えて、またはイメ
ージセンサに加えて、他のセンサを用いてもよい。
例えば、他のセンサとして、赤外線カメラまたは赤外線センサを用いることが考えられ
る。赤外線を利用したものであれば、夜間やトンネル工事現場等といった特殊な環境下で
あっても、照明の影響等を抑制しつつ、高精度な位置認識を行うことが可能となる。
また、位置認識を行い得る他のセンサとしては、例えば、単独計測タイプのGPS装置
を複数用いることが考えられる。単独計測タイプのGPS装置であれば近年安価なものが
流通しており、またGPS装置同士の相対位置であれば高精度に認識し得るという特性を
利用しつつ、複数のGPS装置を用いることで、少なくとも数cmオーダーの高精度な位
置認識を行うことが可能となる。
【0144】
また、第一実施形態および第二実施形態では、いずれも、検出センサ部11としてイメ
ージセンサ(カメラ)11a,11b,11e~11hと傾斜センサ11c,11d,1
1i,11jとを組み合わせてを用いる場合を例に挙げたが、本発明の技術的範囲がこれ
に限定されることはない。例えば、検出センサ部11がイメージセンサ(カメラ)のみに
よって構成されている場合であっても、その検出結果に基づいて位置認識を行うことは可
能である。ただし、第一実施形態および第二実施形態で説明したように、イメージセンサ
(カメラ)と傾斜センサとを組み合わせて用いれば、検出センサ部11としての構成が複
雑化してしまうのを抑制しつつ、高精度の位置認識を行うことが実現可能となる。
【0145】
また、第一実施形態では、第二認識処理に際して、可動指標としてのマーカ図形3aの
撮像結果を基にバケット3dによる施工箇所の位置認識をする場合を例に挙げたが、例え
ば、第一アーム3b、第二アーム3cおよびバケット3dのそれぞれに傾斜センサが設け
られていれば、各傾斜センサによる検出結果を利用して位置認識をするようにしてもよい
。第一アーム3b、第二アーム3cおよびバケット3dのそれぞれの回転角の検出結果を
組み合わせれば、バケット3dの剣先位置を特定することが可能だからである。
【0146】
また、第二実施形態では、スリップフォーム工法によりコンクリート構造物(例えばU
字溝)を打設する場合を例に挙げたが、U字溝の他に、縁石、側溝、円形水路、防護柵、
路面舗装等を施工対象物とする場合であっても、全く同様に本発明を適用することが可能
である。
また、第二実施形態では、主として切削機2dと成型機2eを連動させる場合について
説明したが、切削機2dと成型機2eとが別々の建設機械として運転するようにしてもよ
い。その場合に、マシンガイダンス処理動作およびマシンコントロール処理動作は、それ
ぞれに対して別々に行われることになる。
また、第二実施形態では、マシンコントロール処理動作にあたり、アクチュエータ2h
,2lの油圧動作等を制御する場合を例に挙げたが、例えば、切削機2dの走行装置2f
や成型機2eの走行装置2j等に対する動作制御を行うようにしてもよい。
また、第二実施形態では、スリップフォーム工法で用いられるスリップフォーム機2に
本発明を適用した場合を例に挙げたが、進行方向に移動しながら施工を行う建設機械であ
れば、例えば、オープンシールド機(オープンピット機)の前筐体と後筐体等のように、
別工法において用いられる建設機械であっても、全く同様に本発明を適用することが可能
である。
【0147】
また、上述の各実施形態では、本発明の技術思想を「建設機械管理システム」として具
現化した場合を例に挙げたが、必ずしもこれに限定されることはない。
例えば、本発明は、各実施形態で説明した建設機械の自律的なモニタ処理をコンピュー
タに実行させる「建設機械管理プログラム」としても成立し得る。つまり、本発明は、
「施工現場エリアを移動可能な建設機械に搭載される検出センサ部に接続されたコンピュ
ータを、
前記施工現場エリアに設置された外部指標についての前記検出センサ部での検出結果と
、前記建設機械が有する可動作業具に付された可動指標についての前記検出センサ部での
検出結果とを基に、前記施工現場エリアでの前記可動作業具による施工箇所の位置情報を
認識する位置認識手段、
として機能させる建設機械管理プログラム。」としても成立し得る。
【0148】
また、例えば、本発明は、各実施形態で説明した建設機械の自律的なモニタ処理を行う
「建設機械管理方法」としても成立し得る。つまり、本発明は、
「施工現場エリアを移動可能な建設機械に搭載される検出センサ部を用い、
前記施工現場エリアに設置された外部指標についての前記検出センサ部での検出結果と
、前記建設機械が有する可動作業具に付された可動指標についての前記検出センサ部での
検出結果とを基に、前記施工現場エリアでの前記可動作業具による施工箇所の位置情報を
認識する
建設機械管理方法。」としても成立し得る。
【0149】
また、例えば、本発明は、各実施形態で説明した自律的なモニタ処理を行う機能を備え
た「建設機械」としても成立し得る。つまり、本発明は、
「施工現場エリアを移動可能な建設機械であって、
前記建設機械に搭載される検出センサ部と、
前記検出センサ部に接続されたコンピュータ部と、を備え、
前記コンピュータ部は、前記施工現場エリアに設置された外部指標についての前記検出
センサ部での検出結果と、前記建設機械が有する可動作業具に付された可動指標について
の前記検出センサ部での検出結果とを基に、前記施工現場エリアでの前記可動作業具によ
る施工箇所の位置情報を認識する位置認識部を有する
建設機械。」としても成立し得る。
【0150】
また、例えば、本発明は、建設機械との間で情報授受を行うように構成されるとともに
、各実施形態で説明した建設機械の自律的なモニタ処理を行うように構成された「建設機
械の外部管理装置」としても成立し得る。つまり、本発明は、
「施工現場エリアを移動可能な建設機械と離れて配置され、前記建設機械との間で情報授
受を行うように構成された建設機械の外部管理装置であって、
施工現場エリアを移動可能な建設機械に搭載される検出センサ部を用い、
前記施工現場エリアに設置された外部指標についての前記検出センサ部での検出結果と
、前記建設機械が有する可動作業具に付された可動指標についての前記検出センサ部での
検出結果とを基に、前記施工現場エリアでの前記可動作業具による施工箇所の位置情報を
認識した認識結果について、
少なくとも前記認識結果または当該認識結果からの導出情報のいずれかを出力するよう
に構成されている、
建設機械の外部管理装置。」としても成立し得る。
【符号の説明】
【0151】
1…施工現場エリア、1a…外部指標、1b,1c…マーカ図形、2…建設機械(バッ
クホウ、スリップフォーム機)、2a…右無限軌道、2b…左無限軌道、2c…機台、2
d…前部切削機、2e…後部成型機、2f…走行装置、2g…車体部、2h…アクチュエ
ータ、3…可動作業具、3a,3k…可動指標(マーカ図形)、3b…第一アーム、3c
…第二アーム、3d…バケット、3e…上部筐体、3f…掘削ドラム、3g…カッタービ
ット、3h…上部筐体、3i…モールド、3j…バイブレータ、11…検出センサ部、1
1a,11b,11e~11h…イメージセンサ(カメラ)、11c,11d,11i,
11j…傾斜センサ、12…情報通信部(データ通信端末)、13…コンピュータ部(S
BC)、13a…位置認識部、13b…データ取得部、13c…差分情報抽出部、13d
…ガイダンス出力部、13e…動作計画生成部、13f…動作指示部、20…外部管理装
図1
図2
図3
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