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特許7215777調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法及び自己校正機能を持つスペクトル収集装置
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  • 特許-調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法及び自己校正機能を持つスペクトル収集装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法及び自己校正機能を持つスペクトル収集装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20230124BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G02B26/00
G01J3/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021553005
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 CN2019119299
(87)【国際公開番号】W WO2021097634
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】521399803
【氏名又は名称】深▲せん▼市海譜納米光学科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN HYPERNANO OPTICS TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】1903,1904, Building1, COFCO Chuangxin R&D Centre Zone 69, Xingdong Community Xin’an Street, Bao’an District Shenzhen, Guangdong 518000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】郭 斌
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181361(JP,A)
【文献】特開2009-244498(JP,A)
【文献】特開2019-045230(JP,A)
【文献】特開2015-099239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0146401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00
G01J 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法であって、
入射光をフィルタガラスに照射し、前記フィルタガラス上の校正用フィルタ膜を透過した後、固定波長を有する校正光を得るステップであって、ここで、前記フィルタガラスは、基板と、透過波長帯域が前記校正用フィルタ膜の透過波長帯域をその中に含む、より広いバンドパスフィルタ膜と、を備え、一定の波長範囲内のイメージング光に前記バンドパスフィルタ膜を透過させるように、前記バンドパスフィルタ膜は前記基板の表面に塗布されているものである、ステップS1と、
前記校正光を前記ファブリーペロキャビティによりストローブし、前記ファブリーペロキャビティを透過した後、ストローブ光を得るステップS2と、
前記ストローブ光をイメージングチップに照射してイメージングを行って、出力信号を得るステップS3と、を含むことを特徴とする調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法。
【請求項2】
前記ステップS2において、前記ファブリーペロキャビティの駆動電圧を制御することにより、前記校正光をストローブして前記ストローブ光を得ることを特徴とする請求項1に記載の調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法。
【請求項3】
前記出力信号は校正電圧を含み、前記校正電圧は前記校正光がストローブされる際の前記ファブリーペロキャビティの駆動電圧であることを特徴とする請求項2に記載の調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法。
【請求項4】
新しい制御曲線を改めてフィッティングするように、前記校正電圧と前記ファブリーペロキャビティの制御曲線における電圧を比較することを特徴とする請求項3に記載の調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法。
【請求項5】
前記校正用フィルタ膜は前記フィルタガラスにおける前記ファブリーペロキャビティに対応するクリアアパーチャ内の一部の領域に設置されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のファブリーペロキャビティの自己校正方法。
【請求項6】
前記校正用フィルタ膜は前記フィルタガラスにおける前記イメージングチップに対応するエッジ位置の一部の領域に設置されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のファブリーペロキャビティの自己校正方法。
【請求項7】
異なる固定波長の複数の光に前記校正用フィルタ膜を透過させるように、前記校正用フィルタ膜は複数設置され、前記フィルタガラスの異なる位置に配置されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のファブリーペロキャビティの自己校正方法。
【請求項8】
自己校正機能を持つスペクトル収集装置であって、
順に間隔を置いて配列されるフィルタガラス、ファブリーペロキャビティ及びイメージングチップを備え、前記フィルタガラスの一部の領域に校正用フィルタ膜を設置することにより固定波長の光に前記校正用フィルタ膜を透過させ、ファブリーペロキャビティの電圧信号を変更することにより前記校正用フィルタ膜を透過した光をストローブし、且つ前記イメージングチップにより画像信号を生成し、
前記フィルタガラスは、基板と、透過波長帯域が前記校正用フィルタ膜の透過波長帯域をその中に含む、より広いバンドパスフィルタ膜と、を備え、一定の波長範囲内のイメージング光に前記バンドパスフィルタ膜を透過させるように、前記バンドパスフィルタ膜は前記基板の表面に塗布されていることを特徴とする自己校正機能を持つスペクトル収集装置。
【請求項9】
前記校正用フィルタ膜は前記フィルタガラスにおける前記ファブリーペロキャビティに対応するクリアアパーチャ内の一部の領域に設置されることを特徴とする請求項8に記載の自己校正機能を持つスペクトル収集装置。
【請求項10】
前記校正用フィルタ膜は前記フィルタガラスにおける前記イメージングチップに対応するエッジ位置の一部の領域に設置されることを特徴とする請求項8に記載の自己校正機能を持つスペクトル収集装置。
【請求項11】
異なる波長の複数の光に前記校正用フィルタ膜を透過させるように、前記校正用フィルタ膜は複数設置され、前記フィルタガラスの異なる位置に配置されることを特徴とする請求項8に記載の自己校正機能を持つスペクトル収集装置。
【請求項12】
前記校正用フィルタ膜を透過した光が前記ファブリーペロキャビティによりストローブされる際の前記ファブリーペロキャビティの駆動電圧は校正電圧であり、新しい制御曲線を改めてフィッティングするように、前記校正電圧と前記ファブリーペロキャビティの制御曲線における電圧を比較することを特徴とする請求項8~11のいずれか1項に記載の自己校正機能を持つスペクトル収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタ分野に関し、特に調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法及び自己校正機能を持つスペクトル収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Fabry-Perotキャビティ構造を有する調整可能な高調波フィルタの原理は昔のマルチビーム干渉原理にまで遡ることができる。簡単には、Fabry-Perotキャビティは高反射率を提供できる2つの鏡面と、共振空間を提供できる1つのチャンバーとからなり、入射光はF-Pキャビティにおいて繰り返し複数回振動、干渉するように制限され、干渉光信号がある条件に達すれば射出されることとなる。この構造を有するフィルタは、主に、F-Pキャビティの長さ又はチャンバーの屈折率を調整することにより共振条件を変更し、フィルタリング効果を実現する。従って、F-Pキャビティ(ファブリーペロキャビティ)はスペクトル微細構造の分析、レーザー共振キャビティ、光学フィルタ等の面で広く応用されている。
【0003】
Fabry-Perotキャビティは光学フィルタに応用され、垂直入射の場合、キャビティ長の光学的厚さが入射光の半波長の整数倍であれば、この波長における光は低損失で透過できるが、この条件を満足しない波長は反射され、それによりフィルタリング機能を実現する。Fabry-Perot(ファブリーペロキャビティ)干渉に基づく調整可能な光学フィルタリングデバイス(tuneable FPI)は超小型分光計及び小型乃至ミニハイパースペクトルカメラに応用できる。可視光-近赤外(400~1000nm)のハイパースペクトルイメージング分野では、他の解決案と比べて、Fabry-Perotキャビティは最も簡単なシステム構造及び光路を提供し、従って、ハイパースペクトルカメラのコスト、体積及び電力消費を大幅に低減することができる。
【0004】
一般的に、超小型の調整可能なファブリーペロキャビティは電圧信号により駆動されることでファブリーペロキャビティのキャビティ長を調整し、更にスペクトルにおける異なる波長域の光をストローブする。駆動電圧の増加又は減少に伴い、ファブリーペロキャビティにおける2つの鏡面同士の相対位置d(キャビティ長)は減少又は増加する。dの減少又は増加はファブリーペロキャビティのフィルタリングするピーク位置を調整することができ、それによりスペクトルにおける調整可能なフィルタリングを実現する。
【0005】
電圧制御曲線が温度、機械及び時間の変化につれて形成したドリフトは調整可能なファブリーペロキャビティが応用される際の誤差を引き起こす主要な要因である。従って、実際の応用では、このような誤差をどのように低減するかはデバイス及びモジュール設計の重要な部分である。従来の解決方法は温度校正のためのルックアップ解決案又は容量帰還に基づく閉ループ解決案を用いることに限る。スペクトルイメージングシステムにおけるファブリーペロキャビティの校正方法にとっては、現在、より簡単で実用できる技術案がまだない。
【0006】
これに鑑みて、スペクトルイメージングシステムにおけるファブリーペロキャビティの校正方法及び装置を設計することは、非常に重要なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
調整可能なファブリーペロキャビティが応用されるとき、電圧制御曲線は温度、機械及び時間の変化につれてドリフトしやすいので誤差が生じ、誤差を低減する難度は高く、操作しにくく、自己校正を実現できないという上記問題に対して、本願の実施例は調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法及び自己校正機能を持つスペクトル収集装置を提供し、上記問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に基づいて、本願の実施例は調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法を提供し、
入射光をフィルタガラスに照射し、フィルタガラス上の校正用フィルタ膜を透過した後、固定波長を有する校正光を得るステップS1と、
校正光をファブリーペロキャビティによりストローブし、ファブリーペロキャビティを透過した後、ストローブ光を得るステップS2と、
ストローブ光をイメージングチップに照射してイメージングを行って、出力信号を得るステップS3と、を含む。
【0009】
いくつかの実施例では、ステップS2において、ファブリーペロキャビティの駆動電圧を制御することにより校正光をストローブして、ストローブ光を得る。ファブリーペロキャビティの駆動電圧とファブリーペロキャビティのキャビティ長は一定の関係を満足し、即ちファブリーペロキャビティの制御曲線の法則に適合する。ファブリーペロキャビティの駆動電圧を制御することによりファブリーペロキャビティのキャビティ長を変更することができ、それにより一定波長の光をストローブする。
【0010】
いくつかの実施例では、出力信号は校正電圧を含み、校正電圧は校正光がストローブされる際のファブリーペロキャビティの駆動電圧である。校正電圧は校正光の波長に対応する。
【0011】
いくつかの実施例では、新しい制御曲線を改めてフィッティングするように、校正電圧とファブリーペロキャビティの制御曲線における電圧を比較する。最終的に、ファブリーペロキャビティが応用される際のリアルタイムな自己校正を実現する。
【0012】
いくつかの実施例では、フィルタガラスは基板とバンドパスフィルタ膜を備え、一定の波長範囲内のイメージング光にバンドパスフィルタ膜を透過させるように、バンドパスフィルタ膜は基板の表面に塗布される。バンドパスフィルタ膜はファブリー-ペロ干渉計の透過率を向上させ、十分なイメージング光にファブリーペロキャビティを透過させてイメージングチップに照射してイメージングを行えるように確保することができる。
【0013】
いくつかの実施例では、校正用フィルタ膜はフィルタガラスにおけるファブリーペロキャビティに対応するクリアアパーチャ内の一部の領域に設置される。従って、校正用フィルタ膜を透過した校正光はファブリーペロキャビティのクリアアパーチャ内に直接照射されることができる。
【0014】
いくつかの実施例では、校正用フィルタ膜はフィルタガラスにおけるイメージングチップに対応するエッジ位置の一部の領域に設置される。従って、校正用フィルタ膜以外の他の位置の通常のイメージング機能に影響せずに、リアルタイムな自己校正を実現することができる。
【0015】
いくつかの実施例では、異なる固定波長の複数の光に校正用フィルタ膜を透過させるように、校正用フィルタ膜は複数設置され、フィルタガラスの異なる位置に配置される。一層正確なフィッティングを実現するように、複数の校正用フィルタ膜を設置することにより複数の異なる校正電圧を得ることができる。
【0016】
本発明の第2態様に基づいて、本願の実施例は自己校正機能を持つスペクトル収集装置を提供し、順に間隔を置いて配列されるフィルタガラス、ファブリーペロキャビティ及びイメージングチップを備え、フィルタガラスの一部の領域に校正用フィルタ膜を設置することにより固定波長の光に校正用フィルタ膜を透過させ、ファブリーペロキャビティの電圧信号を変更することにより校正用フィルタ膜を透過した光をストローブし、且つイメージングチップにより画像信号を生成する。
【0017】
いくつかの実施例では、フィルタガラスは基板とバンドパスフィルタ膜を備え、一定の波長範囲内のイメージング光にバンドパスフィルタ膜を透過させるように、バンドパスフィルタ膜は基板の表面に塗布される。
【0018】
いくつかの実施例では、校正用フィルタ膜はフィルタガラスにおけるファブリーペロキャビティに対応するクリアアパーチャ内の一部の領域に設置される。従って、校正用フィルタ膜を透過した校正光はファブリーペロキャビティのクリアアパーチャ内に直接照射されることができる。
【0019】
いくつかの実施例では、校正用フィルタ膜はフィルタガラスにおけるイメージングチップに対応するエッジ位置の一部の領域に設置される。従って、校正用フィルタ膜以外の他の位置の通常のイメージング機能に影響せずに、リアルタイムな自己校正を実現することができる。
【0020】
いくつかの実施例では、異なる波長の複数の光に校正用フィルタ膜を透過させるように、校正用フィルタ膜は複数設置され、フィルタガラスの異なる位置に配置される。一層正確なフィッティングを実現するように、複数の校正用フィルタ膜を設置することにより複数の異なる校正電圧を得ることができる。
【0021】
いくつかの実施例では、校正用フィルタ膜を透過した光がファブリーペロキャビティによりストローブされるとき、ファブリーペロキャビティの駆動電圧は校正電圧であり、新しい制御曲線を改めてフィッティングするように、校正電圧とファブリーペロキャビティの制御曲線における電圧を比較する。最終的に、ファブリーペロキャビティが応用される際のリアルタイムな自己校正を実現する。
【発明の効果】
【0022】
本願の実施例は調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法を開示し、校正用フィルタ膜を設置することによりファブリーペロキャビティの制御曲線をフィッティングし、調整可能なファブリーペロキャビティのストローブ波長はある位置の校正用フィルタ膜を透過した校正光の波長にマッチする場合のみ、この位置の光はストローブされてイメージングチップに到達し、該対応位置のイメージングチップの出力信号は自己校正の検出信号とされてもよい。その上で、フィルタガラス上の校正用フィルタ膜以外の他の位置の通常のイメージングに影響することがない。該方法は操作しやすく、正確で、実行可能である。本願の他の実施例は自己校正機能を持つスペクトル収集装置を開示し、該装置は上記調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法を用いて調整可能なファブリーペロキャビティのリアルタイムな自己校正を実現することができる。装置は簡単で、コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面を含んで実施例の更なる理解を提供し、図面は本明細書に取り込まれて本明細書の一部となる。図面は実施例を示し、且つ説明とともに本発明の原理を解釈することに用いられる。他の実施例及び実施例の多くの所期の利点は容易に理解され、その理由は以下の詳細な説明を援用することにより、それらがより良く理解されるためである。図面の素子は必ず比率に応じるものではない。同様の符号は対応の類似部材を指す。
図1】本願の実施例の調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法のフローチャートである。
図2】本願の実施例の調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法のファブリーペロキャビティ制御曲線の模式図である。
図3】本願の実施例の調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法のスペクトル応答を示す図である。
図4】本願の実施例の自己校正機能を持つスペクトル収集装置の模式図である。
図5】本願の実施例の自己校正機能を持つスペクトル収集装置のフィルタガラスの断面図である。
図6】本願の実施例の自己校正機能を持つスペクトル収集装置のフィルタガラスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら実施例によって本願を更に詳しく説明する。理解されるように、ここで説明される具体的な実施例は関連発明を解釈するためのものであり、本発明を制限するものではない。また、更に説明されるように、説明の都合上、図面に関連発明に関わる部分のみを示す。
【0025】
なお、衝突しない限り、本願の実施例及び実施例の特徴は互いに組み合わせられてもよい。以下、図面を参照しながら実施例によって本願を詳しく説明する。
【0026】
図1に示すように、本発明の実施例は調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法を提供し、
入射光をフィルタガラスに照射し、フィルタガラス上の校正用フィルタ膜を透過した後、固定波長を有する校正光を得るステップS1と、
校正光をファブリーペロキャビティによりストローブし、ファブリーペロキャビティを透過した後、ストローブ光を得るステップS2と、
ストローブ光をイメージングチップに照射してイメージングを行って、出力信号を得るステップS3と、を含む。
【0027】
具体的な実施例では、ステップS2において、ファブリーペロキャビティの駆動電圧を制御することにより校正光をストローブして、ストローブ光を得る。一般的に、超小型の調整可能なファブリーペロキャビティは電圧信号によりファブリーペロキャビティを駆動する。具体的には、以下の2つの方式がある。方式1としては、ファブリーペロキャビティの2つの鏡面に2つの対向する電極を形成して、2つの電極に電圧を与えて、キャパシタにより駆動されるファブリーペロキャビティを形成する。方式2としては、圧電アクチュエータはファブリーペロキャビティの可動鏡面を駆動して移動させ、圧電アクチュエータの上下電極に電圧を与えて圧電アクチュエータを駆動する。従って、電圧信号を変更することによりファブリーペロキャビティのキャビティ長を変更して、光をストローブする。好ましい実施例では、キャパシタによる駆動方式においてファブリーペロキャビティのキャビティ長を制御し、ファブリーペロキャビティの駆動電圧とファブリーペロキャビティのキャビティ長は一定の関係を満足し、即ち図2に示されるファブリーペロキャビティの制御曲線を得ることができ、且つ、以下の公式を満足する。
【数1】
ここで、Vはファブリーペロキャビティの駆動電圧を示し、kはファブリーペロキャビティ構造の弾性係数を示し、εは真空中の誘電率を示し、Aはファブリーペロキャビティの静電容量駆動電極の面積を示し、dはファブリーペロキャビティの初期キャビティ長であり、dはファブリーペロキャビティの現在キャビティ長である。図2に示すように、ファブリーペロキャビティの駆動電圧がVである場合の対応のファブリーペロキャビティのキャビティ長はdであり、ファブリーペロキャビティの駆動電圧がVである場合の対応のファブリーペロキャビティのキャビティ長はdである。従って、駆動電圧の増加又は減少に伴い、ファブリーペロキャビティのキャビティ長は減少又は増加する。ファブリーペロキャビティのキャビティ長と光の波長は以下の公式を満足する。
λ=2d/m
ここで、λがストローブされた光の波長であり、dがファブリーペロキャビティの現在キャビティ長であり、mが正の整数である。
【0028】
以上の2つの公式によれば、ファブリーペロキャビティを透過した後にストローブされた光の波長を計算することができる。逆に、ファブリーペロキャビティを透過した後にストローブされた光の波長を把握した後、ファブリーペロキャビティの駆動電圧を推定することができる。校正光はファブリーペロキャビティを透過した後にストローブされた場合、ファブリーペロキャビティの実際に測定した駆動電圧は校正電圧であり、校正電圧は校正光の波長に対応する。一方、校正光の波長に基づいて、以上の2つの公式によってファブリーペロキャビティの駆動電圧を計算することができる。計算した駆動電圧と実際に測定した校正電圧を比較することにより、通常のイメージング光のイメージング効果に影響せずに、ファブリーペロキャビティの制御曲線を改めてフィッティングすることができ、それによりリアルタイムな自己校正機能を実現する。他の選択可能な実施例では、他の電圧信号により駆動されるファブリーペロキャビティの電圧とキャビティ長は他の制御曲線公式を満足し、以上の方式でファブリーペロキャビティを自己校正してもよい。
【0029】
具体的な実施例では、フィルタガラスは基板とバンドパスフィルタ膜を備え、一定の波長範囲内のイメージング光にバンドパスフィルタ膜を透過させるように、バンドパスフィルタ膜は基板の表面に塗布される。ファブリー-ペロ干渉計自体の透過性は理想的ではないため、バンドギャップの透過率が高すぎることになり、バンドパスフィルタ膜を設置することにより、ファブリー-ペロ干渉計の透過率を向上させ、十分なイメージング光にファブリーペロキャビティを透過させてイメージングチップに照射してイメージングを行うように確保することができる。好ましい実施例では、バンドパスフィルタ膜は基板の校正用フィルタ膜に向かう片面に設置され、即ち基板に1層のバンドパスフィルタ膜を塗布し、更にバンドパスフィルタ膜の一部の領域に小面積の校正用フィルタ膜を塗布する。当然ながら、バンドパスフィルタ膜は更に基板の校正用フィルタ膜を離れる片面に設置され、即ち基板の片面に校正用フィルタ膜を設置し、基板のもう片面にバンドパスフィルタ膜を設置してもよい。バンドパスフィルタ膜と校正用フィルタ膜の光路は重なってもよく、重ならなくてもよい。上記校正用フィルタ膜とバンドパスフィルタ膜の光路が重なる場合、バンドパスフィルタ膜は一定の波長範囲内のイメージング光を透過させることができ、校正用フィルタ膜は一定の波長範囲内のある固定波長を透過させることができる。また、基板は透明基板であり、ガラス基板又は他の光学樹脂基板を含む。そうすると、スペクトルイメージングシステムにおける光のイメージング効果を効果的に向上させることができる。且つ、装置は簡単で、コストが低く、精度が高い。
【0030】
具体的な実施例では、校正用フィルタ膜はフィルタガラスにおけるファブリーペロキャビティに対応するクリアアパーチャ内の一部の領域に設置される。従って、校正用フィルタ膜を透過した校正光はファブリーペロキャビティのクリアアパーチャを超えて校正効果に影響することなく、ファブリーペロキャビティのクリアアパーチャ内に直接照射されることができる。好ましい実施例では、校正用フィルタ膜はフィルタガラスにおけるイメージングチップに対応するエッジ位置の一部の領域に設置される。校正用フィルタ膜はイメージングチップに対応するエッジ位置に設置されることにより、リアルタイムな校正を実現することができるだけでなく、校正用フィルタ膜以外の他の位置の通常のイメージング機能に影響することもない。従って、最終的に自己校正の目的を実現する。
【0031】
具体的な実施例では、異なる固定波長の複数の光に校正用フィルタ膜を透過させるように、校正用フィルタ膜は複数設置され、フィルタガラスの異なる位置に配置される。複数の校正用フィルタ膜を設置することにより複数の異なる校正電圧を得ることができ、それにより一層正確なフィッティングを実現する。好ましい実施例では、校正用フィルタ膜は3つ設置されてもよく、それらはそれぞれイメージングチップに対応するエッジの端点に設置される。バンドパスフィルタ膜はスペクトルにおける一定の波長範囲内の光を透過することができるが、校正用フィルタ膜は固定波長の狭帯域光線のみを透過する。従って、この3つの校正用フィルタ膜はバンドパスフィルタスペクトル範囲内の3つの異なる波長位置に対応する。最終的に、図3に示されるスペクトル応答図を得る。且つ、3つの位置に対応するイメージングチップ画素に信号出力があるための校正電圧は3つある。この3つの校正電圧とファブリーペロキャビティの最初に校正された制御曲線における対応波長に対応する電圧を比較し、ドリフトが生じる場合、以上の公式に基づいて新しい制御曲線を改めてフィッティングすることができ、それによりファブリーペロキャビティがスペクトルイメージングに応用される際のリアルタイムな自己校正を実現する。
【0032】
本願の実施例に係る調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法に対して、自己校正機能を持つスペクトル収集装置を対応して提供し、該スペクトル収集装置は調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法を用いて自己校正を行うことができる。図4に示すように、該スペクトル収集装置は順に間隔を置いて配列されるフィルタガラス1、ファブリーペロキャビティ2及びイメージングチップ3を備え、フィルタガラス1の一部の領域に校正用フィルタ膜11を設置することにより固定波長の光に校正用フィルタ膜11を透過させ、ファブリーペロキャビティ2の電圧信号を変更することにより校正用フィルタ膜11を透過した光をストローブし、且つイメージングチップ3により画像信号を生成する。
【0033】
具体的な実施例では、図5に示すように、フィルタガラス1は基板10とバンドパスフィルタ膜12を備え、一定の波長範囲内のイメージング光にバンドパスフィルタ膜12を透過させるように、バンドパスフィルタ膜12は基板10の表面に塗布される。ファブリーペロキャビティ自体の透過性は理想的ではないため、バンドギャップの透過率が高すぎることになり、バンドパスフィルタ膜12を設置することにより、装置の透過率を向上させ、十分なイメージング光にファブリーペロキャビティ2を透過させてイメージングチップに照射してイメージングを行うように確保することができる。好ましい実施例では、バンドパスフィルタ膜12は基板10の校正用フィルタ膜11に向かう片面に設置され、即ち基板10に1層のバンドパスフィルタ膜12を塗布し、更にバンドパスフィルタ膜12の一部の領域に小面積の校正用フィルタ膜11を塗布する。当然ながら、バンドパスフィルタ膜は更に基板10の校正用フィルタ膜11を離れる片面に設置され、即ち基板10の片面に校正用フィルタ膜11を設置し、基板10のもう片面にバンドパスフィルタ膜12を設置してもよい。バンドパスフィルタ膜12と校正用フィルタ膜11の光路は重なってもよく、重ならなくてもよい。上記校正用フィルタ膜11とバンドパスフィルタ膜12が重なる場合、バンドパスフィルタ膜12は一定の波長範囲内のイメージング光を透過させることができ、校正用フィルタ膜11は一定の波長範囲内のある固定波長を透過させることができる。また、基板10は透明基板であり、ガラス基板又は他の光学樹脂基板を含む。そうすると、スペクトル収集装置は構造が簡単で、コストが低く、精度が高い。
【0034】
具体的な実施例では、図6に示すように、校正用フィルタ膜11はフィルタガラス1におけるファブリーペロキャビティ2に対応するクリアアパーチャ内の一部の領域に設置される。従って、校正用フィルタ膜11を透過した校正光はファブリーペロキャビティ2のクリアアパーチャを超えて校正効果に影響することなく、ファブリーペロキャビティ2のクリアアパーチャ内に直接照射されることができる。好ましい実施例では、校正用フィルタ膜11はフィルタガラス1におけるイメージングチップ3に対応するエッジ位置の一部の領域に設置される。校正用フィルタ膜11はイメージングチップ3に対応するエッジ位置に設置されることにより、リアルタイムな校正を実現することができるだけでなく、校正用フィルタ膜11以外の他の位置の通常のイメージング機能に影響することもない。従って、最終的に自己校正の目的を実現する。
【0035】
具体的な実施例では、異なる波長の複数の光に校正用フィルタ膜11を透過させるように、校正用フィルタ膜11は複数設置され、フィルタガラス1の異なる位置に配置される。一層正確なフィッティングを実現するように、複数の校正用フィルタ膜11を設置することにより複数の異なる校正電圧を得ることができる。一層正確なフィッティングを実現するように、複数の校正用フィルタ膜11を設置することにより複数の異なる校正電圧を得ることができる。好ましい実施例では、校正用フィルタ膜11は3つ設置されてもよく、それらはそれぞれイメージングチップ3に対応するエッジの端点に設置される。バンドパスフィルタ膜12はスペクトルにおける一定の波長範囲内の光を透過することができるが、校正用フィルタ膜11は固定波長の狭帯域光線のみを透過する。従って、この3つの校正用フィルタ膜11はバンドパスフィルタスペクトル範囲内の3つの異なる波長位置に対応する。且つ、3つの位置に対応するイメージングチップ画素に信号出力があるための校正電圧は3つある。最終的に、図3に示されるスペクトル応答図を得る。この3つの校正電圧とファブリーペロキャビティ2の最初に校正された制御曲線における対応波長に対応する電圧を比較し、ドリフトが生じる場合、以上の公式に基づいて新しい制御曲線を改めてフィッティングすることができ、それによりファブリーペロキャビティ2がスペクトルイメージングに応用される際のリアルタイムな自己校正を実現する。
【0036】
具体的な実施例では、校正用フィルタ膜11を透過した光がファブリーペロキャビティ2によりストローブされるとき、ファブリーペロキャビティ2の駆動電圧は校正電圧であり、新しい制御曲線を改めてフィッティングするように、校正電圧とファブリーペロキャビティ2の制御曲線における電圧を比較する。最終的に、ファブリーペロキャビティ2のリアルタイムな自己校正を実現する。
【0037】
本願の実施例は調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法を開示し、入射光をフィルタガラスに照射し、フィルタガラス上の校正用フィルタ膜を透過した後、固定波長を有する校正光を得て、校正光をファブリーペロキャビティによりストローブし、ファブリーペロキャビティを透過した後、ストローブ光を得て、ストローブ光をイメージングチップに照射してイメージングを行って、出力信号を得る。校正用フィルタ膜を設置することによりファブリーペロキャビティの制御曲線をフィッティングし、調整可能なファブリーペロキャビティのストローブ波長はある位置の校正用フィルタ膜を透過した校正光の波長にマッチする場合のみ、この位置の光はストローブされてイメージングチップに到達し、該対応位置のイメージングチップの出力信号は自己校正の検出信号とされてもよい。その上で、フィルタガラス上の校正用フィルタ膜以外の他の位置の通常のイメージングに影響することがない。該方法は操作しやすく、正確で、実行可能である。本願の他の実施例は自己校正機能を持つスペクトル収集装置を開示し、該装置は上記調整可能なファブリーペロキャビティの自己校正方法を用いて調整可能なファブリーペロキャビティのリアルタイムな自己校正を実現することができる。該装置は構造が簡単で、コストが低く、校正精度が高い。
【0038】
以上は本願の具体的な実施形態を説明したが、本願の保護範囲はこれに限らない。当業者が本願に開示される技術的範囲内で容易に想到し得る変更や置換は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。従って、本願の保護範囲は特許請求の範囲に準じるべきである。
【0039】
本願の記述において、理解されるように、用語「上」、「下」、「内」、「外」等で示される方位又は位置関係は図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本願を説明しやすくし及び説明を簡素化するためのものであって、指す装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構築・操作しなければならないことを指示又は暗示するものではなく、従って、本願を制限するものと理解されるべきではない。用語「含む」は特許請求の範囲に列挙しない素子又はステップが存在することを排除しない。素子の前の用語「一」又は「1つ」はこのような素子が複数存在することを排除しない。異なる従属請求項にいくつかの措置が記載されるという簡単な事実はこれらの措置の組み合わせが改良のために使用できないことを表明しない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号は範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6