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特許7215794こませかご及び釣り針のかご外部への放出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】こませかご及び釣り針のかご外部への放出方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 97/02 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
A01K97/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022177716
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592218919
【氏名又は名称】有限会社サニー商事
(74)【代理人】
【識別番号】100194342
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊明
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-190197(JP,A)
【文献】特開平7-313032(JP,A)
【文献】実開昭63-18073(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも中心軸に対して上下移動自在であって撒き餌を内部に収納するためのかご本体と、
少なくとも前記中心軸に対して上下移動自在であって前記かご本体の底部に位置し下端が開口された釣り針収納部と、
少なくとも前記中心軸に対して上下移動自在であって前記釣り針収納部の下方に位置する下部フタ体とを備え、
前記釣り針収納部は、前記かご本体の底部の開口を被う平板部と、当該平板部の外周から下方向に延在する側壁とが一体に形成され、前記平板部の中心軸から径方向に所定距離離れた位置から軸方向に延在する少なくとも一つのピン部材が形成されている、
ことを特徴とするこませかご。
【請求項2】
前記カゴ本体及び前記釣り針収納部の素材は比重が1未満になる素材であり、前記下部フタ体の素材は比重が1以上になる素材である、
ことを特徴とする請求項1に記載のこませかご。
【請求項3】
前記釣り針収納部に釣り針が収納された状態において、こませかごが水底に到着した後に、前記釣り針収納部は下方に向かって移動し、前記釣り針収納部および前記下部フタ体は所定距離離れた状態となり、前記釣り針収納部の開口から前記釣り針が前記釣り針収納部から放出される、
ことを特徴とする請求項1に記載のこませかご。
【請求項4】
前記釣り針収納部に釣り針が収納された状態において、こませかごが水面に着水後、水中沈降中に、前記かご本体、前記釣り針収納部および前記下部フタ体は互いに接合された状態となり、前記釣り針収納部内に前記釣り針が収納された状態が維持される、
ことを特徴とする請求項1に記載のこませかご。
【請求項5】
前記ピン部材は、前記中心軸から前記側壁までの距離の1/2の位置に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のこませかご。
【請求項6】
前記ピン部材の延在方向が、前記釣り針収納部の糸通し溝に向かう方向とは逆方向に向かって中心軸に対して所定の傾斜角度に傾斜された方向である、
ことを特徴とする請求項1に記載のこませかご。
【請求項7】
少なくとも中心軸に対して上下移動自在であって撒き餌を内部に収納するためのかご本体の底部に形成され、少なくとも前記中心軸に対して上下移動自在であって下端が開口され、前記かご本体の底部の開口を被う平板部と、当該平板部の外周から下方向に延在する側壁とが一体に形成され、前記平板部の中心軸から径方向にそれぞれ所定距離離れた位置から軸方向に延在する少なくとも一つのピン部材が形成された釣り針収納部と、少なくとも前記中心軸に対して上下移動自在であって前記釣り針収納部の下方に位置する下部フタ体とを備えたこませかごにおける釣り針放出方法であって、
前記釣り針収納部に釣り針が収納された状態において、こませかごが水底に到着した後に、前記釣り針収納部を下方に向かって移動させて前記釣り針収納部および前記下部フタ体を所定距離離れた状態にし、前記釣り針収納部の開口から前記釣り針を前記釣り針収納部から放出させる、
ことを特徴とする釣り針放出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、こませかご及び釣り針のかご外部への放出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の周壁を有し内部にコマセ(撒き餌)を収納(収容)可能としたカゴ本体と、そのカゴ本体の下端に中心軸方向に移動自在とした下部フタ体を備え、上記周壁の一部に形成された撒き餌充填用窓から撒き餌を筒内に充填し、撒き餌充填用窓とは異なる位置に形成された撒き餌放出用窓を開閉して撒き餌を放出するようにしたこませかごが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
ところで、一般に、付け餌が付いた釣り針は、カゴ本体の上部に形成された連結部に天秤を連結(接続)させ、その天秤は釣り竿から伸長する道糸に接続されると共に、その天秤の一端部に道糸が接続され、他端部にはハリスを介して釣り針が接続される。その釣り針は、例えば、オキアミ等の付け餌が付けられた状態で、撒き餌を収納したカゴ本体内の撒き餌収納部(収納スペース)内に一緒に収納される(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭60-168379号公報
【文献】特開平9-248113公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こませかごを利用して所望水深位置(棚、ポイント)に到達する際に撒き餌とともに釣り針も水中に放出されるのが理想ではあるが、かごを遠投する投げ釣りやかごを船の近くに投入する船釣りに用いられるこませかごにおいては、着水から水底到達までの間に、道糸に対してテンションがかけ続けられることが多い。特に、船釣りの場合は仕掛け(ラインに釣り針を結んだものの名称)が長く(3~20m程度)、カゴを先に投入してから仕掛けの絡み防止のために手で仕掛けにテンションを掛ける(仕掛けを引っ張って伸ばしながら入れる)ことが一般的である。このため、上記した構造では、釣り針にテンションが掛かると撒き餌を収納したカゴ本体内の撒き餌収納部(スペース)内から釣り針が容易に外部へ排出されてしまうという問題が生じる。
【0006】
また、こませかごが水中に投げ込まれて水面に着水するまでの間には空気抵抗を受け、こませかごが着水してから水中を沈降して水底に到達するまでの間には水圧や水流(例えば潮の流れ)の力を受けるので、上記した構造では釣り針が撒き餌収納部内から外部に放出され易いという問題が生じる。
【0007】
撒き餌を所望の水深位置(特定の位置の場合もあれば複数箇所にわたる場合もある)で放出させて所望の魚(釣り果)を釣り針近くまでおびき寄せ、釣り針近くの撒き餌に群がったところで釣り針(釣り餌が付けられている釣り針)にかけるというのが理想である。しかし、上記のようなこませかごの構造では、特に底釣りのように水底まで距離があるような場合であれば水底に到着する前に釣り針がかご外部に放出されてしまうことがあり所望の魚を釣るタイミングを逃してしまっている。
【0008】
そこで、本発明は、カゴ本体の下側に、釣り針を収納する釣り針収納部(第2のスペース)を撒き餌収納部(第1のスペース)とは別に設け、釣り針収納部内に、釣り針の収納部内での移動を規制(釣り針が外部に放出されないようにする規制)するためのピンを形成し、さらに水底到達時に釣り針収納部の開口部を塞ぐ開閉を制御し、比重が1未満のカゴ本体および釣り針収納部と、比重が1以上であるフタ部(下部フタ体)を設けた。本発明の課題は、上記した構造によって、かご投げ込みからかごが水底に到着するまでにこませかごから釣り針が容易に外部へ放出されてしまうのを防止することができるこませかご、および、かご水底到達後における釣り針のかご外部への放出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るこませかごの一側面は、少なくとも中心軸に対して上下移動自在であって撒き餌を内部に収納するためのかご本体と、少なくとも中心軸に対して上下移動自在であってかご本体の底部に位置し下端が開口された釣り針収納部と、少なくとも中心軸に対して上下移動自在であって釣り針収納部の下方に位置する下部フタ体とを備え、釣り針収納部は、かご本体の底部の開口を被う平板部と、当該平板部の外周から下方向に延在する側壁とが一体に形成され、平板部の中心軸から径方向に所定距離離れた位置から軸方向に延在する少なくとも1つのピン部材が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るこませかごの他の側面は、カゴ本体及び釣り針収納部の素材は比重が1未満になる素材であり、下部フタ体の素材は比重が1以上になる素材であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るこませかごの他の側面は、釣り針収納部に釣り針が収納された状態において、こませかごが水底に到着した後に、釣り針収納部は下方に向かって移動し、釣り針収納部および下部フタ体は所定距離離れた状態となり、釣り針収納部の開口から釣り針が釣り針収納部から放出されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るこませかごの他の側面は、釣り針収納部に釣り針が収納された状態において、こませかごが水面に着水後、水中沈降中に、かご本体、釣り針収納部および下部フタ体は互いに接合された状態となり、釣り針収納部内に釣り針が収納された状態が維持されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るこませかごの他の側面は、ピン部材は、中心軸から側壁までの距離の1/2の位置に形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るこませかごの他の側面は、ピン部材の延在方向が、釣り針収納部の糸通し溝に向かう方向とは逆方向に向かって中心軸に対して所定の傾斜角度に傾斜された方向であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る釣り針のかご外部への放出方法の一側面は、少なくとも中心軸に対して上下移動自在であって撒き餌を内部に収納するためのかご本体の底部に形成され、少なくとも中心軸に対して上下移動自在であって下端が開口され、かご本体の底部の開口を被う平板部と、当該平板部の外周から下方向に延在する側壁とが一体に形成され、平板部の中心軸から径方向にそれぞれ所定距離離れた位置から軸方向に延在する少なくとも1本のピン部材が形成された釣り針収納部と、少なくとも中心軸に対して上下移動自在であって釣り針収納部の下方に位置する下部フタ体とを備えたこませかごにおける釣り針放出方法であって、釣り針収納部に釣り針が収納された状態において、こませかごが水底に到着した後に、釣り針収納部を下方に向かって移動させて釣り針収納部および下部フタ体を所定距離離れた状態にし、釣り針収納部の開口から釣り針を釣り針収納部から放出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、着水から水底到達までの間にこませかごに収納された釣り針が容易に外部へ放出されてしまうのを抑制するとともに水底到達後にこませかごに収納された釣り針を容易に外部へ放出させることができるこませかご及び釣り針のかご外部への放出方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態におけるこませかごの全体斜視図である。
図2】着水前におけるこませかごの状態を示した図である。
図3】着水後かご沈降中におけるこませかごの状態を示した図である。
図4】水底到達後におけるこませかごの状態を示した図である。
図5図4のA-A´線断面図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明に係るこませかごについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。また、本発明は特に底釣りにおいて効果を発揮するため以下の説明では底釣りの場合を例にして説明するが、例えば棚釣りにおいても棚が水底に近い層である場合や所望の魚が水底近くにあるような場合にも適用できることは言うまでもない。
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。図1は本発明に係るこませかごの全体斜視図であり、図2はこませかごが投げ込まれ着水するまでのこませかごの状態を説明するための図であり、図3は、こませかごが着水してから水中を沈降し水底に到達するまでのこませかごの状態を説明するための図である。図4は、こませかごが水底に到達した際のこませかごの状態を説明するための図である。図5図4のA-A´線断面図である。
【0020】
こませかご1は、かご本体2と、かご本体2の底部に配置された釣り針収納部14と、釣り針収納部14の下方に位置する円筒形状の下部フタ体16と、下部フタ体16の下方に位置する円錐台形状の錘体20とを備える。かご本体2は、円筒形状の円筒部7と、円筒部7の上方に位置する円錐形状の屋根部3と、円筒部7の下方に位置する円筒形状の撒き餌放出部11が一部品として一体に形成されている。
【0021】
[屋根部3]
屋根部3は、周面に撒き餌放出(散出)兼水抜き用開口5(5a)が形成された外側の円錐体6と、同じく周面に周面に撒き餌放出兼水抜き用開口5(5b)が形成され外側の円錐体6内に摺動自在に挿入される内側の円錐体4とを嵌合着させて形成されており、外側の円錐体6と内側の円錐体4を相対的に回動させることによって撒き餌放出兼水抜き用開口5a,5bの開閉の調節が行えるようになっている。なお、撒き餌放出兼水抜き用開口5(5a,5b)は撒き餌を放出させる機能以外に、釣り竿をしゃくりあげた際のかごの上穴(図示せず)から入った水の圧力によるかご本体2内部の詰まりを防止するための水抜き孔としても機能する。
【0022】
屋根部3の頂上には、例えばT形状の天秤(図示せず)を間にして釣り針が接続されている道糸を連結するための連結部13が設けられている。そして道糸に接続されている釣り針は、例えば、オキアミ等の付け餌が付けられた状態で、糸通し溝(挿通口)23a(23b)から釣り針収納部14内に収納されるが詳細については後述する。
【0023】
[中心軸(シャフト)の作用・機能]
この連結部13は剛性の中心軸(シャフト)17に接続されている。この中心軸17をかご本体2、撒き餌放出部11および下部フタ体16に上下方向に貫通させ、下部フタ体16の下方へ貫出した中心軸17の下端に錘体20が固定されている。なお、かご本体2、釣り針収納部14、下部フタ体16および後述する雄ねじ22の中空部(図示せず)に中心軸17を挿通した後に中心軸17の下方側端部を変形させて(例えば、潰して平板状に変形させて)釣り針収納部14および下部フタ体16が中心軸17から抜けないようにしている。錘体20の内部には雌ねじ(図示せず)が形成され、雄ねじ22を螺合させて中心軸17が錘体20に固定される。このような構造によって、かご本体2、釣り針収納部14、下部フタ体16および錘体20は上下方向(軸方向)に移動可能なるとともに周方向にも回動可能となる。
【0024】
[円筒部7]
円筒形状の円筒部7は、周面に撒き餌充填用開口9(9a)が形成された外側の筒体8と、同じく周面に周面に撒き餌充填用開口9(9b)が形成され外側筒体8内に摺動自在に挿入される内側の筒体10とを嵌合着させて形成されており、外側の筒体8と内側の筒体10を相対的に回動させることによって撒き餌充填用開口9a,9bの開閉の調節が行えるようになっている。なお、外側の筒体8と内側の筒体10の各撒き餌充填用開口9a,9bが一致する位置では開口面積が最も大きくなり、開口面積の調整は開口の重なる領域を各筒体8,10を相対的に回動させて調整される。また、各筒体8,10には、各撒き餌充填用開口9a,9bの一致に合わせて一致する多数の貫通孔(水抜穴:図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0025】
[撒き餌放出部11]
撒き餌放出部11は、周面に撒き餌放出(散出)用開口15(15a)が形成された外側の筒体25と、同じく周面に撒き餌放出用開口15aと略同形状の撒き餌放出用開口15(15b)が形成され外側の筒体25内に摺動自在に挿入される内側の筒体12とを嵌合着させて形成されており、外側の筒体25と内側の筒体12を相対的に回動させることによって撒き餌放出用開口15a,15bの開閉の調節が行えるようになっている。また、底部には開口部19が形成され下端面は開口されているが、これに限定されず下端面は開口されていなくてもよい。
【0026】
[釣り針収納部14]
釣り針収納部14は、かご本体2の開口部19を被う円盤状の平板部26と、平板部26の外周から下方向に延在する側壁28とが一部品として一体に形成されている。底部には開口部24が形成され、下端面は開口されている。平板部26の中心軸から径方向にそれぞれ所定距離離れた位置から軸方向に延在する第1のピン部材21a,第2のピン部材21bが形成されている。このピン部材の太さ(外径)および長さは釣り針が引っ掛けられる程度の太さおよび長さであればよい。中心軸から径方向に所定距離離れたところに形成すればよいが、好ましくは各ピン部材から側壁までの距離が中心軸から側壁までの距離の1/2(半分)程度の距離であることが望ましい(図5参照)。釣り針を効果的に引っ掛けさせることができるからである。なお、ピン部材の断面形状は本実施の形態では、断面円形状であるが、釣り針を引っ掛けさせやすい形状であれば断面円形状に限定されない。例えば断面三角形状、断面四角形状、断面五角形状、断面六角形状、断面星型形状のようなものであってもよい。
【0027】
また、側壁28の環状周縁部には、釣り針に接続されている糸(ハリス)を通すための糸通し溝(スリット)23a,23bが形成されている。糸通し溝(スリット)23a,23bの形成位置は中心軸を挟んで互いに対向する位置に形成されているが、これに限定されない。例えば、釣り針収納部14に2本の釣り針を収納し第1のピン部材21aには一方の釣り針を引っ掛けさせ、第2のピン部材21bには他方の釣り針を引っ掛けさせたい場合に、一方の糸通し溝(スリット)23aには、第1のピン部材21aに引っ掛けさせた釣り針に接続されている糸が挿通され、他方の糸通し溝(スリット)23bには、第2のピン部材21bに引っ掛けさせた釣り針に接続されている糸が挿通されるようにする。なお、ピン部材に引っ掛けさせたい釣り針が一つだけの場合には、第1のピン部材21aおよび第2のピン部材21bのいずれかに糸を挿通させればよい。なお、糸通し溝(スリット)の数は少なくとも一つあればよく3つ以上設けるようにしてもよい。
【0028】
本実施の形態では、ピン部材として第1のピン部材21aおよび第2のピン部材21bの2つを設け、対応する糸通し溝も糸通し溝23a,23bの2つを設けているが、ピン部材を一つだけ形成するようにしてもよいし、3つ以上形成するようにしてもよい。また、ピン部材の形成位置は、好ましくは中心軸17から側壁14までの距離(半径)の1/2(半分)程度の位置に形成されることが望ましい。
【0029】
(ピン部材の傾斜:変形例)
上記した実施の形態では、ピン部材の延在方向は軸方向であったが、以下のような変形例が考えられる。図5を例にすると、第1のピン部材21a,21bは糸通し溝23a,23bのいずれからも等距離の位置に形成されているが、例えば第1のピン部材21aに引っ掛けさせる釣り針に接続される糸(ハリス)を糸通し溝23aに通し、第2のピン部材21bに引っ掛けさせる釣り針に接続される糸(ハリス)を糸通し溝23bに通すと仮定して以下に説明する。
【0030】
第1のピン部材21aの延在方向については、軸方向とするのではなく糸通し溝23aに向かう方向とは逆方向に向かってピンを中心軸に対して所定の傾斜角度(概ね0度<中心軸の軸方向に対する傾斜角度<45度)に傾斜させる。第2のピン部材21bの延在方向についても軸方向とするのではなく糸通し溝23bに向かう方向とは逆方向に向かってピンを中心軸に対して所定の傾斜角度(概ね0度<中心軸の軸方向に対する傾斜角度<45度)で傾斜させる。なお、傾斜させた理由はピンが引っ張られる方向とは逆方向に傾斜させることによって釣り針を外しにくくするためであるが、上記傾斜角度を大きくして中心軸17に対して傾斜させすぎると逆に外れにくくなるので上記範囲はあくまで目安であり上記範囲に限定されない。例えば後述する第3の状態(こませかご1が水底に到着した状態)になり釣り針収納部14と下部フタ体16が所定距離離れた状態になった際にそこで予測される釣り針収納部14内にかかる水圧や水流等を考慮して適宜上記傾斜角度が設定されることが好ましい。
【0031】
また、例えばピン部材を3つ形成する場合にはその形成位置は、各ピン部材同士の距離を等しく、かつ、好ましくは各ピン部材から側壁までの距離が中心軸17から側壁14までの距離(半径)の1/2(半分)程度の距離であることが望ましい。ピン部材を4つ以上形成する場合にもそれらの形成位置は上記と同様の方法で決定すればよい。
【0032】
[下部フタ体16]
下部フタ体16は、釣り針収納部14の開口24を被う円盤状の平板部30と、平板部30の外周から下方向に延在する側壁32とが一部品として一体に形成されている。なお下部フタ体16の平板部30の内側には中心軸17を挿通させるための中空の突起部18が形成されているが、この突起部18は必須構成ではなく、平板部30の中心に挿通孔が設けられていればよい。
【0033】
[釣り針充填(収納)状態から釣り針放出状態までの遷移]
(着水前におけるこませかごの状態および作用:第1の状態および作用)
釣り針が釣り針収納部14内に充填(収納)され、こませかご1が水中に投げ込まれて水面40に着水する前におけるこませかご1を構成するかご本体2、釣り針収納部14および下部フタ体16の動作、作用について図2を参照して説明する。
【0034】
こませかご1が投げ込まれ水面40に着水するまでの間、こませかご1は、図2に示すようにかご本体2、釣り針収納部14および下部フタ体16が互いに接合された状態となっている。したがって、かご本体2の下端面と釣り針収納部14の上端面がくっついている(接合されている)状態であるとともに、釣り針収納部14の平板部26の下端面と下部フタ体16の上端面がくっついている状態である。すなわち、かご本体2の開口部19は釣り針収納部14の平板部26によって塞がれており、釣り針収納部14の平板部26の開口部24は下部フタ体16の平板部30によって塞がれている状態である。
【0035】
上記した状態において、こませかご1の釣り針収納部14は完全に内部が周囲の壁に塞がれているので、この時点で釣り針は釣り針収納部14の外部に放出されておらず内部に充填されたままの状態が維持されている。
【0036】
(着水後沈降中におけるこませかごの状態および作用:第2の状態および作用)
水面40に着水後、水中沈降中におけるこませかご1を構成するかご本体2、釣り針収納部14および下部フタ体16の動作、作用について図3を参照して説明する。なお、カゴ本体2及び釣り針収納部14は、比重が1未満になる素材、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等で作られているので、水中では浮力により上方に浮く。一方、下部フタ体16は、比重が1以上になる素材、例えばポリスチレン、ABS樹脂等で作られているので、水底では浮力より自重の方が大きいので浮くことはない。
【0037】
こませかご1が水面40に着水した後、水中沈降中においては、図3に示すようにかご本体2、釣り針収納部14および下部フタ体16が互いに接合された状態となっている。カゴ本体2が着水して自重によって水中を沈降(下降)し始めると、カゴ本体2は、浮力およびカゴ本体2の円筒部7に設けられた多数の貫通孔から内部へ侵入する水によって発生する水流により上方に浮き、釣り針収納部14も浮力により上方に浮き、下部フタ体16は沈降中における下方からの水流により上方に浮き、一方、錘体20は自重により下方に沈む。
【0038】
したがって、かご本体2の開口部19は釣り針収納部14の平板部26によって塞がれている状態であるとともに、釣り針収納部14の開口部24も下部フタ体16の平板部30によって塞がれている状態である。すなわち、かご本体2の下端面と釣り針収納部14の上端面が依然としてくっついている状態であるとともに釣り針収納部14の下端面と下部フタ体16の上端面も依然としてくっついている状態である。上記した状態において、こませかご1の釣り針収納部14は上記第1の状態と同様に完全に内部が周囲の壁に塞がれているので、水中沈降中においても釣り針は釣り針収納部14の外部に放出されておらず内部に充填されたままである。なお、下部フタ体16の下端面と錘体20の上端面はくっついておらず所定距離離れた状態となっている。
【0039】
この状態を維持することによって、水中沈降中に釣り針が外部に放出されることによる課題、例えば所望の魚とは異なる他の魚が釣り針に引っかかるという課題を解決する。一方、円筒部7内に収納されたコマセ等の撒き餌は、撒き餌充填用開口9から放出されることで撒き餌が実行される。なお、撒き餌の放出量は、撒き餌充填用開口9から充填される量を調整した上で、撒き餌放出用開口15の開口量をあらかじめ調整するとともに所望水深位置(棚、ポイント)で釣り竿を上下動させる(しゃくる)ことにより調整する。
【0040】
(水底到着後におけるこませかごの状態および作用:第3の状態および作用)
水底到着後におけるこませかご1を構成するかご本体2、釣り針収納部14および下部フタ体16の動作、作用について図4を参照して説明する。
【0041】
こませかご1が水底50に到着した後においては、図4に示すようにかご本体2および釣り針収納部14が互いに接合された状態となっているが、釣り針収納部14および下部フタ体16は所定距離離れた状態となっている。カゴ本体2が水底50に到着すると、カゴ本体2は、浮力およびカゴ本体2の円筒部7に設けられた多数の貫通孔から内部へ侵入する水の圧力(浮力)により上方に浮き、釣り針収納部14も浮力により上方に浮くが、下部フタ体16および錘体20は自重により下方に沈む。
【0042】
したがって、釣り針収納部14の開口部24は開口されている状態である。上記した状態において、こませかご1の釣り針収納部14は上記第1の状態および第2の状態とは異なり下端面が開口されているので、こませかご1が水底に到着した後に開口部24の下方からの水流(水圧)によって釣り針がピン部材21a(21b)から外れて釣り針収納部14の内部から外部へ放出され、撒き餌がなされた中で、天秤を介して付け餌が付けられた釣り針が浮遊することになる。また、この時点(タイミング)で釣り竿をしゃくることにより円筒部7内に収納されたコマセ等の撒き餌を撒き餌放出用開口15から放出させることが望ましい。なお、下部フタ体16の下端面と錘体20の上端面はくっついている。
【0043】
この状態を維持することによって、所望の魚が存在する水底に到着後、釣り針が外部に放出されるので、所望の魚の周囲に釣り針を配置させることができる。また、撒き餌もこの時点(タイミング)で釣り竿をしゃくることにより撒き餌放出用開口15から放出されれば撒き餌近くに位置する釣り針に釣果である魚をおびき寄せて引っ掛けさせることができる。このため、水底に到着前に釣り針が外部に放出されて本来の釣果でない魚を釣り針に引っ掛けてしまう(釣ってしまう)というリスクを減少させることができる。
【0044】
なお、コマセ等の撒き餌の放出タイミングは一般的には水中から水底までの間であるが、本実施の形態では、上記した理由により釣り針の放出と同時に釣り竿をしゃくって撒き餌充填用開口9および撒き餌放出用開口15から放出させることがより好ましい。また、撒き餌の放出量は、撒き餌放出用開口15の開口量をあらかじめ調整するとともに釣り竿をしゃくることにより調整されるようにしている。
【0045】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 こませかご
2 かご本体
3 屋根部
4,6 円錐体
5,5a,5b 撒き餌放出兼水抜き用開口
7 円筒部
8,10 筒体
9,9a,9b 撒き餌充填用開口
11 撒き餌放出部
12,25 筒体
13 連結部
14 釣り針収納部
15,15a,15b 撒き餌放出用開口
16 下部フタ体
17 中心軸(シャフト)
18 突起部
19 開口部
20 錘体
21a 第1のピン部材
21b 第2のピン部材
22 雄ねじ
23a,23b 糸通し溝(挿通口)
24 開口部
26 平板部
27 基部
28 側壁
29 スリット
30 平板部
32 側壁
40 水面
50 水底

【要約】
【課題】着水から水底到達までの間着水から水底到達までの間にこませかごに収納された釣り針が容易に外部へ放出されてしまうのを抑制するとともに水底到達後にこませかごに収納された釣り針を容易に外部へ放出させることができるこませかご及び釣り針放出方法を提供すること
【解決手段】かご本体2の底部に位置し下端が開口された釣り針収納部14と、中心軸に対して上下移動自在であって釣り針収納部14の下方に位置する下部フタ体16を備える。釣り針収納部14は、かご本体2の底部の開口を被う平板部26と、平板部26の外周から下方向に延在する側壁28とが一体に形成され、平板部26の中心軸から径方向に所定距離離れた位置から軸方向に延在するピン部材21a,21bが形成されている。
【選択図】図4


図1
図2
図3
図4
図5