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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】変形可能な自転車
(51)【国際特許分類】
   B62K 13/08 20060101AFI20230124BHJP
   B62K 15/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B62K13/08
B62K15/00
A61G5/12 701
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022528727
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2022019869
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021080692
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307014371
【氏名又は名称】誠 忠元
(74)【代理人】
【識別番号】100136146
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 明生
(72)【発明者】
【氏名】誠 忠元
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0049022(US,A1)
【文献】特開2003-246290(JP,A)
【文献】特開2010-184523(JP,A)
【文献】登録実用新案第3119552(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 13/08
B62K 15/00
A61G 5/12
B62H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部がヘッドチューブと連結された前側トップチューブと、一方の端部がシートチューブと連結された後側トップチューブとを有するトップチューブを備え、
前記後側トップチューブが前記前側トップチューブに対しスライドすることによって前記トップチューブの長さが変化し、
前記後側トップチューブを前記前側トップチューブに対し固定する長さ調整機構を備える
自転車であって、
一方の端部が前記ヘッドチューブと連結された前側ダウンチューブと、一方の端部がボトムブラケットシェルと連結された後側ダウンチューブとを有するダウンチューブを備え、
前記前側ダウンチューブは水平方向に延伸する回転軸を有する前側ヒンジ部を備え、
前記後側ダウンチューブは水平方向に延伸する回転軸を有する後側ヒンジ部を備え、
前記後側ダウンチューブが前記前側ダウンチューブに対しスライドすることによって前記ダウンチューブの長さが変化し、
前記長さ調整機構を第1の長さ調整機構とするとき、前記後側ダウンチューブを前記前側ダウンチューブに対し固定する第2の長さ調整機構を備える
転車。
【請求項2】
一方の端部がヘッドチューブと連結された前側トップチューブと、一方の端部がシートチューブと連結された後側トップチューブとを有するトップチューブを備え、
前記後側トップチューブが前記前側トップチューブに対しスライドすることによって前記トップチューブの長さが変化し、
前記後側トップチューブを前記前側トップチューブに対し固定する長さ調整機構を備える
自転車であって、
前記前側トップチューブは前側ヒンジ部を有し、前記前側ヒンジ部によって前記前側トップチューブは真っ直ぐな状態と折れ曲がった状態との間で変化でき、
前記後側トップチューブは後側ヒンジ部を有し、前記後側ヒンジ部によって前記後側トップチューブは真っ直ぐな状態と折れ曲がった状態との間で変化でき、
前記前側ヒンジ部の回転軸と前輪の回転軸との水平方向における距離と、前記後側ヒンジ部の回転軸と後輪の回転軸との水平方向における距離とが、実質的に等しく、
前記前側トップチューブと前記後側トップチューブが真っ直ぐな状態で自転車として機能し、前記前側トップチューブと前記後側トップチューブが折れ曲がった状態で手押し車として機能し、
自転車として機能する状態における前記前輪及び前記後輪とは別に、自転車として機能する状態において地面に接さず、手押し車として機能する状態において地面に接する1以上の補助輪を備え、
前記後輪を前方に回転させる力が加わった時に当該力を前記後輪に伝達し前記後輪を後方に回転させる力が加わった時に当該力を前記後輪に実質的に伝達しない片方向フリーホイール状態と、前記後輪を前方に回転させる力が加わった時と前記後輪を後方に回転させる力が加わった時のいずれにおいても当該力を前記後輪に実質的に伝達しない両方向フリーホイール状態との間で切り替え可能な力伝達機構を備える
転車。
【請求項3】
前記補助輪を2つ備え、
手押し車として機能する状態において、前記2つの補助輪のうち前記前輪側に配置されている補助輪が地面に接する位置と前記前輪が地面に接する位置との距離と、前記2つの補助輪のうち前記後輪側に配置されている補助輪が地面に接する位置と前記後輪が地面に接する位置との距離とが、実質的に等しい
請求項に記載の自転車。
【請求項4】
手押し車として機能する状態において、前記トップチューブ、前記前輪の回転軸、及び、前記後輪の回転軸に自重が掛かるように取り付けられ、人が座れる器具であるシートを備える
請求項に記載の自転車。
【請求項5】
手押し車として機能する状態において、前記トップチューブ、前記前輪の回転軸、及び、前記後輪の回転軸に自重が掛かるように取り付けられ、物を収容する器具であるコンテナを備える
請求項に記載の自転車。
【請求項6】
前記1以上の補助輪の少なくとも1つが前記トップチューブに着脱可能である
請求項に記載の自転車。
【請求項7】
前記1以上の補助輪の少なくとも1つが前記トップチューブから下方に伸縮可能な脚部により連結されている
請求項に記載の自転車。
【請求項8】
前記1以上の補助輪の少なくとも1つが前記シートチューブ又はボトムブラケットシェルから下方に伸縮しない脚部により連結されている
請求項に記載の自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形できる自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車が変形できれば便利な場合がある。例えば、ユーザの身体の成長に伴い、そのユーザの身体に適した自転車のジオメトリは変化する。従って、ジオメトリを変更可能な自転車があれば、ユーザは身体が成長しても、同じ自転車を使用し続けることができる。
【0003】
変形可能な自転車を開示している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、左右に配置された2つの前輪を有する自転車の前輪の間にキャスターを備えるカート部を配置し、自転車のフレーム(トップチューブ)にヒンジ機構を1つ設け、ヒンジ機構において自転車のフレームをL字形状に折り曲げた状態で自転車の後輪を地面から浮いた状態とし、2つの前輪及びキャスターにより接地するカート部をハンドルにより押してゆけるように構成した、手押し車に変形可能な自転車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-143340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常の自転車においては、トップチューブに対しスライド可能なハンドルポストの、トップチューブに対する位置を変更することによって、ハンドルの高さを変更できる。また、シートチューブに対しスライド可能なシートポストの、シートチューブに対する位置を変更することによって、サドルの高さを変更できる。また、ハンドルやステムを交換することによって、ハンドルとサドルの距離を変更できる。
【0006】
しかしながら、通常の自転車においては、ホイールベース、すなわち、前輪の中心から後輪の中心までの距離を変更することができない。ホイールベースは長い程、直進安定性に優れる。従って、ユーザの身体の成長に伴い、自転車のハンドルの高さ、サドルの高さ、ハンドルとサドルの距離を調整した場合、そのユーザにとって直進安定性の劣る自転車となってしまう。
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は、ホイールベースを変更可能な自転車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は、一方の端部がヘッドチューブと連結された前側トップチューブと、一方の端部がシートチューブと連結された後側トップチューブとを有するトップチューブを備え、前記後側トップチューブが前記前側トップチューブに対しスライドすることによって前記トップチューブの長さが変化し、前記後側トップチューブを前記前側トップチューブに対し固定する長さ調整機構を備える自転車であって、一方の端部が前記ヘッドチューブと連結された前側ダウンチューブと、一方の端部がボトムブラケットシェルと連結された後側ダウンチューブとを有するダウンチューブを備え、前記前側ダウンチューブは水平方向に延伸する回転軸を有する前側ヒンジ部を備え、前記後側ダウンチューブは水平方向に延伸する回転軸を有する後側ヒンジ部を備え、前記後側ダウンチューブが前記前側ダウンチューブに対しスライドすることによって前記ダウンチューブの長さが変化し、前記長さ調整機構を第1の長さ調整機構とするとき、前記後側ダウンチューブを前記前側ダウンチューブに対し固定する第2の長さ調整機構を備える自転車をの態様として提案する
【0012】
第1の態様に係る自転車においては、ホイールベースが変更可能である。また、の態様に係る自転車のフレームは、長さの調整可能なトップチューブは備えるがダウンチューブを備えないホイールベースが変更可能な自転車のフレームと比較し、剛性が高い。
【0013】
また、本発明は、一方の端部がヘッドチューブと連結された前側トップチューブと、一方の端部がシートチューブと連結された後側トップチューブとを有するトップチューブを備え、前記後側トップチューブが前記前側トップチューブに対しスライドすることによって前記トップチューブの長さが変化し、前記後側トップチューブを前記前側トップチューブに対し固定する長さ調整機構を備える自転車であって、前記前側トップチューブは前側ヒンジ部を有し、前記前側ヒンジ部によって前記前側トップチューブは真っ直ぐな状態と折れ曲がった状態との間で変化でき、前記後側トップチューブは後側ヒンジ部を有し、前記後側ヒンジ部によって前記後側トップチューブは真っ直ぐな状態と折れ曲がった状態との間で変化でき、前記前側ヒンジ部の回転軸と前輪の回転軸との水平方向における距離と、前記後側ヒンジ部の回転軸と後輪の回転軸との水平方向における距離とが、実質的に等しく、前記前側トップチューブと前記後側トップチューブが真っ直ぐな状態で自転車として機能し、前記前側トップチューブと前記後側トップチューブが折れ曲がった状態で手押し車として機能し、自転車として機能する状態における前記前輪及び前記後輪とは別に、自転車として機能する状態において地面に接さず、手押し車として機能する状態において地面に接する1以上の補助輪を備え、前記後輪を前方に回転させる力が加わった時に当該力を前記後輪に伝達し前記後輪を後方に回転させる力が加わった時に当該力を前記後輪に実質的に伝達しない片方向フリーホイール状態と、前記後輪を前方に回転させる力が加わった時と前記後輪を後方に回転させる力が加わった時のいずれにおいても当該力を前記後輪に実質的に伝達しない両方向フリーホイール状態との間で切り替え可能な力伝達機構を備える自転車をの態様として提案する
【0014】
の態様に係る自転車によれば、自転車として機能する状態における前輪と後輪が、手押し車として機能する状態における左右の前輪として機能する。そのため、手押し車として機能する状態における重心が左右方向に大きくずれることがない。従って、手押し車として機能する状態における安定性が高く、ユーザは快適に手押し車を押して歩くことができる。
【0015】
の態様の自転車において、前記補助輪を2つ備え、手押し車として機能する状態において、前記2つの補助輪のうち前記前輪側に配置されている補助輪が地面に接する位置と前記前輪が地面に接する位置との距離と、前記2つの補助輪のうち前記後輪側に配置されている補助輪が地面に接する位置と前記後輪が地面に接する位置との距離とが、実質的に等しい、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0016】
の態様に係る自転車によれば、手押し車として機能する状態において、2つの補助輪が左右の後輪として機能し、2つの前輪とともに合計4点で地面に接することになる。そのため、補助輪が1つの場合と比較し、手押し車として機能する状態における安定性が高く、ユーザは快適に手押し車を押して歩くことができる。
【0017】
の態様に係る自転車において、手押し車として機能する状態において、前記トップチューブ、前記前輪の回転軸、及び、前記後輪の回転軸に自重が掛かるように取り付けられ、人が座れる器具であるシートを備える、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0018】
の態様に係る自転車は、手押し車として機能する状態において、子どもを乗せて手押しできるベビーカー、又は、歩行困難者を乗せて手押しできる車椅子の役割を果たすことができる。
【0019】
の態様に係る自転車において、手押し車として機能する状態において、前記トップチューブ、前記前輪の回転軸、及び、前記後輪の回転軸に自重が掛かるように取り付けられ、物を収容する器具であるコンテナを備える、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0020】
の態様に係る自転車によれば、手押し車として機能する状態において、ユーザは手押し車に荷物を載せて押して歩くことができる。
【0021】
の態様に係る自転車において、前記1以上の補助輪の少なくとも1つが前記トップチューブに着脱可能である、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0022】
の態様に係る自転車によれば、自転車として機能する状態において補助輪をトップチューブから取り外せば、補助輪が走行の邪魔にならない。
【0023】
の態様に係る自転車において、前記1以上の補助輪の少なくとも1つが前記トップチューブから下方に伸縮可能な脚部により連結されている、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0024】
の態様に係る自転車によれば、自転車として機能する状態において、伸縮可能な脚部を縮めて補助輪をトップチューブに近い位置に置くことで、補助輪が走行の邪魔になりにくくできる。
【0025】
の態様に係る自転車において、前記1以上の補助輪の少なくとも1つが前記シートチューブ又はボトムブラケットシェルから下方に伸縮しない脚部により連結されている、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0026】
の態様に係る自転車によれば、シートチューブ又はボトムブラケットシェルの下方に配置される補助輪は、自転車として機能する状態において邪魔になりにくく、また、手押し車として機能する状態においてその補助輪をトップチューブ等に取り付ける必要がない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ホイールベースを変更可能な自転車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る自転車を右側から見た図。
図2】第1実施形態に係る自転車を前後に分離した状態を示した図。
図3】第1実施形態に係る自転車の長さ調整機構の一例を示した図。
図4】第1実施形態に係る自転車のフレームに対する補助輪の位置を示した図。
図5】第1実施形態に係る手押し車を左後方から見た図。
図6】第1実施形態に係る手押し車のクランクロック機構を示した図。
図7】第1実施形態に係る手押し車(カートとして用いられる状態)を右前方から見た図。
図8】第1実施形態に係る手押し車(ベビーカーとして用いられる状態)を右前方から見た図。
図9】第1実施形態に係る手押し車(車椅子として用いられる状態)を右前方から見た図。
図10】第1実施形態に係る自転車のフリーホイールの構造を示した図。
図11】第1実施形態に係る自転車のフリーホイールの構造を示した図。
図12】第1実施形態に係る自転車のフリーホイールの押圧ヘッドの形状示した図。
図13】第1実施形態の一変形例に係る自転車を左側から見た図。
図14】第1実施形態の一変形例に係る手押し車を右後方から見た図。
図15】第1実施形態の一変形例に係る自転車の長さ調整機構を示した図。
図16】第1実施形態の一変形例に係る自転車のフリーホイールの構造を示した図。
図17】第1実施形態の一変形例に係る自転車のフリーホイールの構造を示した図。
図18】第1実施形態の一変形例に係る自転車用のアタッチメントを示した図。
図19】第1実施形態の一変形例に係るアタッチメントが取り付けられた自転車を示した図。
図20】第1実施形態の一変形例に係るアタッチメントが取り付けられた自転車を示した図。
図21】第1実施形態の一変形例に係るアタッチメントが取り付けられた手押し車を示した図。
図22】第1実施形態の一変形例に係るアタッチメントが取り付けられた手押し車を示した図。
図23】第2実施形態に係る自転車を右側から見た図。
図24】第2実施形態に係る自転車を前後に分離した状態を示した図。
図25】第2実施形態の一変形例に係る自転車を右側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態に係る自転車1を説明する。自転車1は、手押し車に変形可能な自転車である。以下、自転車として機能する状態の自転車1を自転車1Bと呼び、手押し車として機能する状態の自転車1を手押し車1Cと呼ぶ。
【0030】
以下の説明において、自転車1の前後、左右とは、自転車1のハンドルを持ったユーザから見た前後、左右を意味する。また、以下の説明において、自転車1の上下、鉛直方向、水平方向とは、自転車1を通常使用する姿勢で地面の上に置いた状態における上下、鉛直方向、水平方向を意味する。
【0031】
図1は、自転車1Bを右側から見た外観図である。自転車1Bは、まず、本体を構成するフレーム101を備える。フレーム101は、延伸方向が実質的に水平方向であるトップチューブ1011と、トップチューブ1011の前側の端部においてトップチューブ1011と連結されたヘッドチューブ1012と、トップチューブ1011の後側の端部においてトップチューブ1011と連結されたシートチューブ1013と、シートチューブ1013の上側の端部付近においてシートチューブ1013と連結され後下方向に延伸するシートステー1014と、シートチューブ1013の下側の端部においてシートチューブ1013と連結された図示せぬBB(ボトムブラケット)シェルと、一方の端部がシートステー1014の後側端部と連結され他方の端部がBBシェルと連結されたチェーンステー1015を備える。フレーム101は、一般的な自転車のフレームが備えるダウンチューブを備えない。
【0032】
自転車1Bは、さらに、ヘッドチューブ1012に取り付けられたフロントフォーク102と、フロントフォーク102に取り付けられた前輪103と、フレーム101の後側の端部に取り付けられた後輪104と、図示せぬBB(ボトムブラケット)を介してBBシェルに取り付けられたクランク105と、クランク105の左右の各々に取り付けられた1対のベダル106と、ユーザがベダル106を踏んでクランク105を図1における時計回りに回転させたときにクランク105とともに回転するチェーンリング107を備える。
【0033】
自転車1Bは、さらに、ヘッドチューブ1012内でフロントフォーク102と下端側で連結されたハンドルポスト108と、ハンドルポスト108の上端付近でハンドルポスト108に取り付けられたハンドル109と、シートチューブ1013と下端側で連結されたシートポスト110と、シートポスト110の上端部に取り付けられたサドル111を備える。
【0034】
自転車1Bは、さらに、後輪104のハブ(図示略)に連結されているスプロケット(図示略)と、チェーンリング107とスプロケットに掛け渡された環状のチェーン(図示略)を備える。
【0035】
自転車1Bが備えるトップチューブ1011は、前側に位置する前側トップチューブ1011Fと、後側に位置する後側トップチューブ1011Bで構成される。例えば、後側トップチューブ1011Bは前側トップチューブ1011Fの中に挿入され、長さ調整機構により前側トップチューブ1011Fに対し固定される。ユーザは、長さ調整機構による固定を解除して、前側トップチューブ1011Fに対し後側トップチューブ1011Bを前後方向にスライドさせて、希望する位置で長さ調整機構により後側トップチューブ1011Bを前側トップチューブ1011Fに対し固定することで、トップチューブ1011の前後方向の長さを調整できる。
【0036】
図2は、前側トップチューブ1011Fと後側トップチューブ1011Bを分離した状態の自転車1Bの一部を示した図である。
【0037】
図3は、後側トップチューブ1011Bを前側トップチューブ1011Fに対し任意の位置で固定する長さ調整機構の一例を示した図である。図3に例示の長さ調整機構は、後側トップチューブ1011Bの右側面に前後方向に延伸するように設けられた細長い孔であるスリットSと、スリットSと連通するように前側トップチューブ1011Fの後側端部付近の右側面に設けられた孔とスリットSとを貫くように配置された軸10111と、軸10111の外側端部に取り付けられたレバー10112と、前側トップチューブ1011F及び後側トップチューブ1011Bの内側に配置されレバー10112が倒されると軸10111から遠ざかる方向に押し出される押圧ヘッド10113で構成される。
【0038】
ユーザは、レバー10112を起こした状態で前側トップチューブ1011Fに対する後側トップチューブ1011Bの前後方向の位置を調整した後、レバー10112を倒すことで、押圧ヘッド10113により後側トップチューブ1011Bを前側トップチューブ1011Fに押し付け、前側トップチューブ1011Fに対する後側トップチューブ1011Bの固定を行うことができる。
【0039】
図1を参照し、トップチューブ1011の構成の説明を続ける。トップチューブ1011は、ヒンジ部10114F(前側ヒンジ部の一例)とヒンジ部10114B(後側ヒンジ部の一例)を備える。ヒンジ部10114Fは、前側トップチューブ1011Fに設けられ、鉛直軸周りに前側トップチューブ1011Fを折り曲げ可能とする機構である。ヒンジ部10114Bは、後側トップチューブ1011Bに設けられ、鉛直軸周りに後側トップチューブ1011Bを折り曲げ可能とする機構である。
【0040】
ヒンジ部10114Fの回転軸と前輪103の回転軸との水平方向における距離DFと、ヒンジ部10114Bの回転軸と後輪104の回転軸との水平方向における距離DBとが、実質的に等しくなるように、ヒンジ部10114F及びヒンジ部10114Bの位置が定められている。
【0041】
ヒンジ部10114Fはレバーを備え、ユーザはレバーを起こした状態で前側トップチューブ1011Fを真っ直ぐにした後、レバーを倒すことで、前側トップチューブ1011Fを真っ直ぐな状態に保つことができる。
【0042】
ヒンジ部10114Bもヒンジ部10114Fと同様の役割を果たすレバーを備え、ユーザは前側トップチューブ1011Fと同様に、レバーを操作して、後側トップチューブ1011Bを折れ曲がった状態にしたり、真っ直ぐな状態にしたりできる。
【0043】
前側トップチューブ1011Fと後側トップチューブ1011Bが鉛直軸周りに折れ曲がる方向は同じ方向である。図1の例では、前側トップチューブ1011Fは上から見て、真っ直ぐな状態から、前側が後側に対し反時計回りに折れ曲がる。また、後側トップチューブ1011Bは上から見て、真っ直ぐな状態から、後側が前側に対し時計回りに折れ曲がる。従って、前側トップチューブ1011Fと後側トップチューブ1011Bが各々、約90度に折れ曲がると、トップチューブ1011は上から見て「コ」の字形状となる。
【0044】
トップチューブ1011は、さらに、補助輪の脚部を取り付けるための取付部10115F及び取付部10115Bを備える。取付部10115Fは前側トップチューブ1011Fに設けられ、取付部10115Bは後側トップチューブ1011Bに設けられている。
【0045】
図4は、フレーム101に対する補助輪の位置を示した図である。図4に示されるように、取付部10115Fには脚部112Fの上側端部が取り付けられる。その結果、脚部112Fの下側端部に取り付けられた補助輪113Fが、トップチューブ1011の下方に配置されることになる。また、取付部10115Bには脚部112Bの上側端部が取り付けられる。その結果、脚部112Bの下側端部に取り付けられた補助輪113Bが、トップチューブ1011の下方に配置されることになる。
【0046】
脚部112Fと脚部112Bがトップチューブ1011に取り付けられた状態において、補助輪113Fの回転軸と補助輪113Bの回転軸の上下方向における位置(高さ)が実質的に等しくなり、かつ、前輪103の回転軸と補助輪113Fの回転軸の水平方向における距離EFと、後輪104の回転軸と補助輪113Bの回転軸の水平方向における距離EBとが実質的に等しくなるように、脚部112Fと脚部112Bの長さと、それらのトップチューブ1011に対する取付角度が決定されている。
【0047】
補助輪113Fと補助輪113Bの直径は実質的に等しい。従って、後述する手押し車1Cの状態の自転車1において、前輪103が地面に接する位置と補助輪113Fが地面に接する位置との距離と、後輪104が地面に接する位置と補助輪113Bが地面に接する位置との距離とは、実質的に等しくなる。
【0048】
トップチューブ1011は、さらに、ハンドル109が付いた状態のハンドルポスト108を取り付けるための取付部10116を備える(図1参照)。
【0049】
図5は、手押し車1Cの状態の自転車1を左後方から見た図である。ユーザがトップチューブ1011に脚部112Fと脚部112Bを取り付け、前側トップチューブ1011Fと後側トップチューブ1011Bを折り曲げ、ハンドルポスト108をヘッドチューブ1012から取外し、取付部10116に取り付けると、自転車1は図5に示す手押し車1Cの状態になる。なお、図5においては、図1において図示されていなかったBBシェル1016が示されている。
【0050】
ユーザは、手押し車1Cの後側に立って、ハンドル109を握って手押し車1Cを押しながら歩くことができる。ユーザは、荷物をトップチューブ1011に引っ掛けることで、荷物の重さに耐えることなく楽に歩くことができる。
【0051】
手押し車1Cが押されて移動する際、後輪104の回転に伴いクランク105が回転しないように、自転車1にはクランクロック機構118が設けられている。図6は、クランクロック機構118を例示した図である。
【0052】
また、ユーザは、手押し車1Cに着脱可能な部品であるアタッチメントを取り付けることによって、手押し車1Cを、荷物を載せて運ぶためのカート、子どもを乗せて押し歩くためのベビーカー、又は、歩行困難者を乗せて押し歩くための車椅子として使用することができる。
【0053】
図7は、カート用のアタッチメントであるコンテナ114が取り付けられた状態の手押し車1Cを右前方から見た図である。コンテナ114は、物を収容するための器具である。図8は、ベビーカー用のアタッチメントであるシート115が取り付けられた状態の手押し車1Cを右前方から見た図である。シート115は子どもがその中に座るための器具である。図9は、車椅子用のアタッチメントであるシート116が取り付けられた状態の手押し車1Cを右前方から見た図である。シート116は歩行困難者がその中に座るための器具である。
【0054】
図7図9に示されるように、アタッチメントは、トップチューブ1011と、前輪103の回転軸と、後輪104の回転軸とにその自重が掛かるように取り付けられる。
【0055】
例えば、コンテナ114(図7)は、上側に設けられたフック1141と、左右に取り付けられた1対の連結バー1142を備える。ユーザは、フック1141をトップチューブ1011に引っ掛け、右側の連結バー1142を前輪103に引っ掛け、左側の連結バー1142(図示略)を後輪104の回転軸に引っ掛けることで、コンテナ114を手押し車1Cの本体に取り付けることができる。
【0056】
また、シート115(図8)は、上側の背面に設けられたフック(図示略)と、左右に取り付けられた1対の連結バー1151を備える。ユーザは、フックをトップチューブ1011に引っ掛け、右側の連結バー1151を前輪103に引っ掛け、左側の連結バー1151を後輪104の回転軸に引っ掛けることで、シート115を手押し車1Cの本体に取り付けることができる。
【0057】
また、シート116(図9)は、底面の背面側に設けられたフック(図示略)と、底面の左右に下に延びるように取り付けられた1対のフットレスト1161を備える。ユーザは、シート116をトップチューブ1011の上に載せた状態でフックをトップチューブ1011に引っ掛けて位置決めをした後、右側のフットレスト1161を前輪103に取り付け、左側のフットレスト1161を後輪104の回転軸に取り付けることで、シート116を手押し車1Cの本体に取り付けることができる。
【0058】
後輪104の回転軸には、フリーホイール117が設けられている。通常の自転車が備えるフリーホイールは、ペダルを正方向(右側から見て時計回り)に漕いで後輪104を前方に回転させる力が加わった時にはその力を後輪104に伝達し、ペダルを逆方向(右側から見て反時計回り)に漕いで後輪104を後方に回転させる力が加わった時にはその力を後輪104に実質的に伝達しない所謂ラチェット機構を有している。
【0059】
自転車1が備えるフリーホイール117は、さらに、上記の通常の自転車が備えるフリーホイールの状態(以下、「片方向フリーホイール状態」という)と、後輪104を前方に回転させる力が加わった時と後輪104を後方に回転させる力が加わった時のいずれにおいてもその力を後輪104に実質的に伝達しない状態(以下、「両方向フリーホイール状態」という)との間で、ユーザが切り替え可能な所謂クラッチ機構(力伝達機構の一例)を有している。
【0060】
図10及び図11は、フリーホイール117の構造の一例を示した図である。フリーホイール117は、後輪104の回転軸を構成する管状の後輪シャフト1041の周りに取り付けられたハブフランジ1171と、ハブフランジ1171に取り付けられたラチェット機構1172と、ラチェット機構1172が備えるラチェット爪11721を倒れた状態に維持することでハブフランジ1171に対し前方に回転させる力を加えようとするスプロケット11726(図10において図示略)の力がハブフランジ1171に伝達されないようにするクラッチ1173と、クラッチ1173とラチェット機構1172の間に配置されクラッチ1173に対しラチェット機構1172から離れる方向に力を加えるスプリング1174と、スプリング1174の力に抗ってクラッチ1173をラチェット機構1172に近づく方向に押圧する押圧ヘッド1175と、一方の端部が押圧ヘッド1175に連結され他方の端部が後輪シャフト1041から外部に露出するように配置されたクラッチバー1176と、クラッチバー1176の後輪シャフト1041から露出する部分に取り付けられたピン1177を備える。図12は、押圧ヘッド1175の形状を示した図である。
【0061】
ラチェット機構1172は、後輪104の回転軸方向の軸周りに回動し、回転軸から離れる方向に起き上がった状態と、回転軸に近づく方向に倒れた状態との間で切り替えられる複数のラチェット爪11721と、ラチェット爪11721から回転軸方向に突起している凸部11722と、ラチェット爪11721に対し起き上がった状態となるように付勢をするリング状のスプリング11723を備える。
【0062】
ユーザがピン1177に指を掛けてクラッチバー1176を後輪シャフト1041の端面から軸方向に凹むように設けられた溝から引っ張り出し、軸周りに回転させ、ピン1177を後輪シャフト1041の端面(溝でない部分)に引っ掛けると、クラッチ1173がスプリング1174の力に抗ってラチェット機構1172側に押し付けられ、ラチェット機構1172のラチェット爪11721からクラッチ1173側に突起している凸部11722をクラッチ1173が回転軸に近づく方向に押した状態となる。そのため、ラチェット爪11721が常に倒れた状態となり、スプロケット11726がいずれの方向に回転しても、スプロケット11726にラチェット爪11721が引っ掛からなくなる。これにより、フリーホイール117は両方向フリーホイール状態となる。
【0063】
両方向フリーホイール状態のフリーホイール117において、ユーザがピン1177に指を掛けてクラッチバー1176を後輪シャフト1041から引っ張り出す方向に力を加えながら軸周りに回転させ、後輪シャフト1041の溝にピン1177を落とし込むと、スプリング1174の力によりクラッチ1173がラチェット機構1172から離れ、フリーホイール117は片方向フリーホイール状態となる。
【0064】
片方向フリーホイール状態のフリーホイール117において、ラチェット機構1172は、図11において、右から見た場合、スプロケット11726に取り付けられたラチェットリング11724が時計回りに回転する場合、ラチェットリング11724の凹部にラチェット爪11721が引っ掛かり、後輪104を前方に回転させようとする力をハブフランジ1171に伝達する。その結果、後輪104が前方に回転する。一方、ラチェット機構1172は、図11において、右から見た場合、スプロケット11726に固定したラチェットリング11724が反時計回りに回転する場合、ラチェット爪11721がラチェットリング11724に押し倒されてラチェットリング11724に引っ掛からず、ラチェットリング11724の後輪104を後方に回転させようとする力をハブフランジ1171に伝達しない。
【0065】
ユーザは、自転車1Bの状態の自転車1においては、ピン1177を操作してハブフランジ1171を片方向フリーホイール状態とする。それにより、ユーザはベダル106を踏むことで後輪104を回転駆動し、自転車1Bを前進させることができる。一方、ユーザは、手押し車1Cの状態の自転車1においては、ピン1177を操作してハブフランジ1171を両方向フリーホイール状態とする。それにより、ユーザが手押し車1Cを押して歩く際、後輪104の回転力がラチェットリング11724に伝達されず、ラチェットリング11724、チェーン、チェーンリング107、クランク105が回転しなくなる。その結果、手押し車1Cを押している際にクランク105等が回転して歩くユーザの邪魔になる、という不都合が生じない。
【0066】
上述した自転車1によれば、ユーザは、自転車1を自転車1Bとして用いたり、手押し車1Cとして用いたりできる。そして、手押し車1Cとして用いる際、左右方向における重心は概ね中央位置となるため、ユーザが手押し車1Cを押して歩く際、安定性がよく、快適に歩くことができる。
【0067】
[第1実施形態の変形例]
上述した第1実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下の変形例の2以上が適宜組み合わされてもよい。
【0068】
(1)上述した実施形態において、手押し車1Cの状態の自転車1は補助輪を2つ備える。補助輪の数は2つに限られず、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0069】
(2)上述した実施形態において、補助輪113F及び補助輪113Bはトップチューブ1011に対し着脱可能である。これに代えて、補助輪113F及び補助輪113Bの少なくとも一方がトップチューブ1011に常に取り付けられた状態であってもよい。
【0070】
図13は、この変形例の一例に係る自転車1の自転車1Bの状態を左側から見た図であり、図14は、この変形例の一例に係る自転車1の手押し車1Cの状態を右後方から見た図である。図13及び図14に示す自転車1において、補助輪113Fはトップチューブ1011から下方に伸縮可能な脚部112Fによりトップチューブ1011に連結されている。ユーザは、自転車1Bの状態(図13)においては、脚部112Fを縮める。それにより、補助輪113Fがトップチューブ1011に近い位置に配置されることになり、ユーザが自転車1Bを漕いでいるときに補助輪113Fが邪魔になりにくい。一方、ユーザは、手押し車1Cの状態(図14)においては、脚部112Fを伸ばす。それにより、補助輪113Fが接地することになる。
【0071】
また、図13及び図14に示す自転車1において、補助輪113Bはシートチューブ1013又はBBシェル1016から下方に延伸する伸縮しない脚部112Bによりフレーム101に連結されている。なお、自転車1Bの状態において、補助輪113Bは接地しない。補助輪113BはBBシェル1016の下方に位置しているため、ユーザが自転車1Bを漕いでいるときに補助輪113Fが邪魔になることはない。
【0072】
(3)上述した実施形態において、トップチューブ1011の長さを調整する長さ調整機構は、前側トップチューブ1011Fに対し後側トップチューブ1011Bを前後方向における任意の位置で固定できる。これに代えて、長さ調整機構が、前側トップチューブ1011Fに対し、予め定められた複数の位置からユーザにより選択された位置において後側トップチューブ1011Bを固定してもよい。
【0073】
図15は、この変形例の一例に係る長さ調整機構を示した図である。図15の長さ調整機構において、ユーザは、後側トップチューブ1011Bの側面に前後方向に間をあけて設けられた3つの孔Tのいずれかに、前側トップチューブ1011Fの孔を連通させ、連通したそれらの孔にレバー10112を起こした状態で軸10111を差し込み、レバー10112と反対側において前側トップチューブ1011Fから外に出た軸10111の端部にロックピン10117を嵌めて、レバー10112を倒すことで、前側トップチューブ1011Fに対し後側トップチューブ1011Bを固定できる。
【0074】
(4)上述した実施形態において、ラチェット機構1172は、リング状のスプリング11723によりラチェット爪11721を起き上がった状態に付勢する構造を備える。ラチェット機構の構造はこれに限られない。図16図17は、上述した実施形態とは異なる構造のスター型のラチェット機構1172を備えるフリーホイール172の一例を示した図である。図16及び図17に示すスター型のラチェット機構1172は、側面に複数の鋸歯を備える一対のスターラチェットリングを備えている。一対のスターラチェットリングのうち、従動ラチェットリング11824が備える複数の鋸歯は、右側から見たときの稜線より時計回り側の側面が傾斜しており、稜線より反時計回り側の側面が90度に切り立っている。従動ラチェットリング11824はスプラインに填め込まれていて、スプリング11825により図16又は図17における右側に付勢されている。また、従動ラチェットリング11824は、スプロケット11726に取り付けられた駆動ラチェットリング11826と互いの鋸歯が噛み合う位置に取り付けられている。
【0075】
そのため、図16図17の右側から見て、スプロケット11726に取り付けられた駆動ラチェットリング11826が時計回りに回転するときには、従動ラチェットリング11824の鋸歯が駆動ラチェットリング11826の鋸歯と噛み合って、スプロケット11726の力がハブフランジ1171に伝達される。一方、駆動ラチェットリング11826が、図16図17の右側から見て反時計回りに回転するときには、駆動ラチェットリング11826の鋸歯がスプラインに填め込まれている従動ラチェットリング11824の鋸歯と噛み合わず、従動ラチェットリング11824を押し下げながら回転する。その結果、スプロケット11726の力がハブフランジ1171に伝達されない。
【0076】
図16図17のスター型のラチェット機構1172において、両方向フリーホイール状態のときには、スプラインに填め込まれている従動ラチェットリング11824が押圧ヘッド1175に押圧され、従動ラチェットリング11824の右側にあるスプロケット11726に取り付けられた駆動ラチェットリング11826(図16において図示略)と接触しない状態になり、スプロケット11726からの力がハブフランジ1171に伝達されなくなる。
【0077】
なお、図16においては、理解しやすいように従動ラチェットリング11824はスプラインから出ている形に描いているが、実際は図17に示されるようにスプラインから一部しか出てない構造になっている。
【0078】
(5)上述した実施形態において、トップチューブ1011は、ヒンジ部10114Fとヒンジ部10114Bにおいて、鉛直軸周りに折り曲げられる。すなわち、ヒンジ部10114Fとヒンジ部10114Bの回転軸は鉛直方向に延伸する。トップチューブ1011が折り曲げられるときの回転軸は鉛直方向に限られない。例えば、ヒンジ部10114Fの回転軸とヒンジ部10114Bの回転軸が、図1において「ハ」の字を描くように、鉛直方向に対し同じ角度だけ異なる方向に傾斜していてもよい。
【0079】
(6)上述した実施形態において、手押し車1Cとして使う場合に、トップチューブ1011が、ヒンジ部10114Fの回転軸周りに上から見て反時計回り、ヒンジ部10114Bの回転軸周りに上から見て時計回りに折り曲げられるものとしたが、これらの回転方向が逆でもよい。すなわち、トップチューブ1011が、ヒンジ部10114Fの回転軸周りに上から見て時計回り、ヒンジ部10114Bの回転軸周りに上から見て反時計回りに折り曲げられてもよい。
【0080】
(7)上述した実施形態において示したコンテナ114、シート115、シート116は、手押し車1Cに着脱可能なアタッチメントの一例であって、アタッチメントの形状、大きさ、構造等は、様々に変更されてよい。
【0081】
図18は、それらのアタッチメントの一例を示した図である。図18に例示のアタッチメントAは、図18(A)に示されるように展開されると、肘掛け及び背もたれを備える椅子となる。また、図18(C)に示されるように折り畳まれると、アタッチメントAは持ち運びが容易になる。なお、図18(B)は、図18(A)の展開された状態と図18(C)の折り畳まれた状態との間の状態のアタッチメントAを示している。
【0082】
図19及び図20は、図18(C)に示されるように、折り畳まれた状態のアタッチメントAが自転車1Bに取り付けられた状態を示している。図19及び図20の状態において、アタッチメントAは自転車1Bの荷台の役割を果たす。
【0083】
図21及び図22は、図18(A)に示されるように、展開された状態のアタッチメントAが手押し車1Cに取り付けられた状態を示している。
【0084】
(7)上述した実施形態において、後側トップチューブ1011Bが前側トップチューブ1011Fの中に挿入されることにより、後側トップチューブ1011Bが前側トップチューブ1011Fに対しスライドする。後側トップチューブ1011Bが前側トップチューブ1011Fに対しスライドするための構成はこれに限られない。例えば、前側トップチューブ1011Fが後側トップチューブ1011Bの中に挿入されることにより、後側トップチューブ1011Bが前側トップチューブ1011Fに対しスライドしてもよい。また、前側トップチューブ1011Fと後側トップチューブ1011Bの一方が他方に挿入されなくてもよい。例えば、前側トップチューブ1011Fと後側トップチューブ1011Bが左右方向に並んだ状態で噛み合い、スライドしてもよい。
【0085】
なお、後側トップチューブ1011Bが前側トップチューブ1011Fに対しスライドすることと、前側トップチューブ1011Fが後側トップチューブ1011Bに対しスライドすることは同義である。また、後側トップチューブ1011Bを前側トップチューブ1011Fに対し固定することと、前側トップチューブ1011Fを後側トップチューブ1011Bに対し固定することは同義である。
【0086】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態に係る自転車2を説明する。自転車2は、ホイールベースが変更可能な自転車である。
【0087】
第2実施形態に係る自転車2の構成の多くは、上述した第1実施形態に係る自転車1の構成と共通している。従って、以下に、自転車2が自転車1と異なる点を説明し、共通する点の説明は省略する。
【0088】
図23は自転車2を右側から見た図である。また、図24は、自転車2を前後に分離した状態を示した図である。図23及び図24において、自転車2が自転車1と共通して有する構成部には、第1実施形態の説明において用いた符号と同じ符号が付されている。
【0089】
自転車2は、自転車1が備えるトップチューブ1011に代えて、トップチューブ2011を備える。また、自転車2は、自転車1が備えないダウンチューブ2012を備える。
【0090】
トップチューブ2011は、前側トップチューブ2011Fと、後側トップチューブ2011Bを有する。前側トップチューブ2011Fは、一方の端部がヘッドチューブ1012と連結されている。後側トップチューブ2011Bは、一方の端部がシートチューブ1013と連結されている。
【0091】
後側トップチューブ2011Bは、前側トップチューブ2011Fに対し、スライドすることができる。本実施形態においては、例えば、前側トップチューブ2011Fが、後側トップチューブ2011Bの中に挿入された状態で、後側トップチューブ2011Bが前側トップチューブ2011Fに対しスライドする。
【0092】
前側トップチューブ2011Fに対しスライドする後側トップチューブ2011Bは、長さ調整機構により前側トップチューブ2011Fに対し固定される。本実施形態においては、例えば、自転車1が備えるレバー10112と押圧ヘッド10113(図23及び図24において図示略)により構成される長さ調整機構により、前側トップチューブ2011Fに対する後側トップチューブ2011Bの固定が行われる。
【0093】
ユーザは、レバー10112を起こして、前側トップチューブ2011Fに対する後側トップチューブ2011Bの固定を解除する。続いて、ユーザは、前側トップチューブ2011Fに対し後側トップチューブ2011Bを前後方向にスライドさせて、トップチューブ2011の長さを希望する長さとする。続いて、ユーザは、レバー10112を倒して、後側トップチューブ2011Bを前側トップチューブ2011Fに対し固定することで、トップチューブ2011の長さの調整を完了する。
【0094】
ダウンチューブ2012は、一方の端部が後側トップチューブ2011Bに連結されており、他方の端部がBBシェル1016(図23及び図24において図示略)に連結されている。ダウンチューブ2012は、自転車2のフレーム201の剛性を高める役割を果たす。
【0095】
上述した自転車2によれば、ユーザは、トップチューブ2011の長さを調整することによって、前輪103の中心から後輪104の中心までの距離であるホイールベースHの長さを変更することができる。
【0096】
従って、ユーザは、以下の(A)~(C)の調整を行うことで、自転車2のジオメトリを、自分の身体に適するジオメトリに調整することができる。
(A)ハンドルポスト108の長さ(又は、ヘッドチューブ1012に対するハンドルポスト108の位置)を変更することによるハンドル109の高さの調整
(B)シートポスト110の長さ(又は、シートチューブ1013に対するシートポスト110の位置)を変更することによるサドル111の高さの調整
(C)前側トップチューブ2011Fに対する後側トップチューブ2011Bの位置を変更することによるホイールベースHの長さの調整
【0097】
[第2実施形態の変形例]
上述した第2実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下の変形例の2以上が適宜組み合わされてもよい。
【0098】
(1)上述した実施形態において、前側トップチューブ2011Fが後側トップチューブ2011Bの中に挿入されることにより、後側トップチューブ2011Bが前側トップチューブ2011Fに対しスライドする。後側トップチューブ2011Bが前側トップチューブ2011Fに対しスライドするための構成はこれに限られない。例えば、前側トップチューブ2011Fと後側トップチューブ2011Bが左右方向に並んだ状態で噛み合い、スライドしてもよい。
【0099】
なお、後側トップチューブ2011Bが前側トップチューブ2011Fに対しスライドすることと、前側トップチューブ2011Fが後側トップチューブ2011Bに対しスライドすることは同義である。また、後側トップチューブ2011Bを前側トップチューブ2011Fに対し固定することと、前側トップチューブ2011Fを後側トップチューブ2011Bに対し固定することは同義である。
【0100】
(2)上述した実施形態においては、ダウンチューブの前側の端部は、後側トップチューブ2011Bと連結されている。これに代えて、ダウンチューブの前側の端部がトップチューブ1011に連結されてもよい。
【0101】
図25は、この変形例に係る自転車3を右側から見た図である。なお、図25においては、チェーンリング107の図示が省略されている。
【0102】
この変形例に係る自転車3は、上述した実施形態に係る自転車2が備えるダウンチューブ2012に代えて、ダウンチューブ3012を備える。ダウンチューブ3012は、前側ダウンチューブ3012Fと、後側ダウンチューブ3012Bを有する。前側ダウンチューブ3012Fは、一方の端部がヘッドチューブ1012と連結されている。後側ダウンチューブ3012Bは、一方の端部がBBシェル1016と連結されている。
【0103】
後側ダウンチューブ3012Bは、前側ダウンチューブ3012Fに対し、スライドすることができる。本実施形態においては、例えば、前側ダウンチューブ3012Fが、後側ダウンチューブ3012Bの中に挿入された状態で、後側トップチューブ2011Bが前側トップチューブ2011Fに対しスライドする。
【0104】
前側ダウンチューブ3012Fに対しスライドする後側ダウンチューブ3012Bは、長さ調整機構(第2の長さ調整機能の一例)により前側ダウンチューブ3012Fに対し固定される。本実施形態においては、例えば、自転車1が備えるレバー10112と押圧ヘッド10113(図25において図示略)により構成される長さ調整機構と同様の構成の長さ調整機構により、前側ダウンチューブ3012Fに対する後側ダウンチューブ3012Bの固定が行われる。
【0105】
なお、図25においては、前側ダウンチューブ3012Fに対する後側ダウンチューブ3012Bの固定を行う長さ調整機構を構成するレバーと押圧ヘッドのうち、外から見えるレバー3013のみが図示されている。
【0106】
前側ダウンチューブ3012Fは、ヒンジ部30121Fを備える。ヒンジ部30121Fは、水平軸周りに前側ダウンチューブ3012Fを折り曲げ可能とする機構である。また、後側ダウンチューブ3012Bは、ヒンジ部30121Bを備える。ヒンジ部30121Bは、水平軸周りに後側ダウンチューブ3012Bを折り曲げ可能とする機構である。
【0107】
ヘッドチューブ1012及びシートチューブ1013に対するトップチューブ2011の角度は固定されている。従って、仮に、ヒンジ部30121F及びヒンジ部30121Bが無ければ、トップチューブ2011及びダウンチューブ3012の長さの調整ができない。すなわち、ヒンジ部30121F及びヒンジ部30121Bは、実質的に、ヘッドチューブ1012及びBBシェル1016に対するダウンチューブ3012の角度を自由に変更可能とすることにより、トップチューブ2011及びダウンチューブ3012の長さの調整を可能とする役割を果たす。
【0108】
ユーザは、レバー10112を起こして、前側トップチューブ2011Fに対する後側トップチューブ2011Bの固定を解除する。また、ユーザは、レバー3013を起こして、前側ダウンチューブ3012Fに対する後側ダウンチューブ3012Bの固定を解除する。続いて、ユーザは、前側トップチューブ2011Fに対し後側トップチューブ2011Bを前後方向にスライドさせると同時に、前側ダウンチューブ3012Fに対し後側ダウンチューブ3012Bを前後方向にスライドさせて、ホイールベースHの長さを希望する長さとする。続いて、ユーザは、レバー10112を倒して、後側トップチューブ2011Bを前側トップチューブ2011Fに対し固定する。また、ユーザは、レバー3013を倒して、後側ダウンチューブ3012Bを前側ダウンチューブ3012Fに対し固定する。これにより、ユーザは、ホイールベースHの長さの調整を完了する。
【0109】
なお、この変形例において、後側ダウンチューブ3012Bが前側ダウンチューブ3012Fに対しスライドするための構成として、上述した構成以外の構成が採用されてもよい。例えば、前側ダウンチューブ3012Fと後側ダウンチューブ3012Bが左右方向に並んだ状態で噛み合い、スライドしてもよい。
【0110】
なお、後側ダウンチューブ3012Bが前側ダウンチューブ3012Fに対しスライドすることと、前側ダウンチューブ3012Fが後側ダウンチューブ3012Bに対しスライドすることは同義である。また、後側ダウンチューブ3012Bを前側ダウンチューブ3012Fに対し固定することと、前側ダウンチューブ3012Fを後側ダウンチューブ3012Bに対し固定することは同義である。
【符号の説明】
【0111】
1…自転車、101…フレーム、102…フロントフォーク、103…前輪、104…後輪、105…クランク、106…ベダル、107…チェーンリング、108…ハンドルポスト、109…ハンドル、110…シートポスト、111…サドル、112…脚部、113…補助輪、114…コンテナ、115…シート、116…シート、117…フリーホイール、118…クランクロック機構、1011…トップチューブ、1012…ヘッドチューブ、1013…シートチューブ、1014…シートステー、1015…チェーンステー、1016…BBシェル、1041…後輪シャフト、1141…フック、1142…連結バー、1151…連結バー、1161…フットレスト、1171…ハブフランジ、1172…ラチェット機構、1173…クラッチ、1174…スプリング、1175…押圧ヘッド、1176…クラッチバー、1177…ピン、10111…軸、10112…レバー、10113…押圧ヘッド、10114…ヒンジ部、10115…取付部、10116…取付部、10117…ロックピン、11721…ラチェット爪、11722…凸部、11723…スプリング、11724…ラチェットリング、11726…スプロケット、11824…従動ラチェットリング、11825…スプリング、11826…駆動ラチェットリング、2…自転車、201…フレーム、2011…トップチューブ、2012…ダウンチューブ、3…自転車、301…フレーム、3012…ダウンチューブ、3013…レバー、30121…ヒンジ部。
【要約】
ホイールベースを変更可能な自転車を提供する。
自転車1が備えるトップチューブ1011は、前側に位置する前側トップチューブ1011Fと、後側に位置する後側トップチューブ1011Bで構成される。後側トップチューブ1011Bは前側トップチューブ1011Fの中に挿入され、長さ調整機構により前側トップチューブ1011Fに対し固定される。ユーザは、長さ調整機構による固定を解除して、前側トップチューブ1011Fに対し後側トップチューブ1011Bを前後方向にスライドさせて、希望する位置で長さ調整機構により後側トップチューブ1011Bを前側トップチューブ1011Fに対し固定することで、トップチューブ1011の前後方向の長さを調整できる。
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