(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】消化設備
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
C02F11/04 Z ZAB
(21)【出願番号】P 2017065892
(22)【出願日】2017-03-29
【審査請求日】2019-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】山田 倍司
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186799(JP,A)
【文献】特表2010-527762(JP,A)
【文献】特開2005-81182(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0878444(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104528917(CN,A)
【文献】中国実用新案第204079581(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103725605(CN,A)
【文献】特開平10-156384(JP,A)
【文献】特開2016-83598(JP,A)
【文献】特開平2-115100(JP,A)
【文献】特開2010-273663(JP,A)
【文献】特開平4-87698(JP,A)
【文献】特開2015-51420(JP,A)
【文献】特開2015-51405(JP,A)
【文献】特開昭57-197096(JP,A)
【文献】特公昭50-285(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28,11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の消化槽を備える消化設備であって、前記複数の消化槽の最大直径が3.5m以下であり、
前記複数の消化槽が並列に接続されており、
前記複数の消化槽内の撹拌は、1つのポンプで被消化物が前記複数の消化槽を順に循環することにより行われることを特徴とする、消化設備。
【請求項2】
前記被消化物の循環方向が、定期的に逆方向に変更される、請求項
1に記載の消化設備。
【請求項3】
前記複数の消化槽が、互いに連結されている、請求項1
又は2に記載の消化設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場生産と道路輸送が可能な消化槽を複数用いて消化処理を行う消化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等に設けられる汚泥消化設備は、汚泥を減容化できるとともに、嫌気性消化過程で発生した消化ガスをエネルギー源として活用できる利点があり、消化ガスを消化槽の熱源や焼却炉の補助燃料等に利用するほか、発電燃料や都市ガスとして利用することも期待されている。
【0003】
汚泥の嫌気性消化においては、適正な消化日数、消化温度、汚泥の撹拌が必要となるが、機械撹拌を行う汚泥消化槽として、槽内にドラフトチューブを設け、撹拌用ポンプでドラフトチューブ内に上向流と下向流を交互に生じさせて撹拌する消化槽が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
下水処理場等に設けられる汚泥消化設備では、直径10mを超える大型の消化槽が主に用いられており、それを設置場所で土木構造物として建設する必要があるため、消化設備の高コスト化に繋がり、普及の妨げとなっていた。
本発明は、低コストで設置可能な消化設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、大型の消化槽の代替として直径3.5m以下の消化槽を複数用いることにより、消化槽自体の工場生産と道路輸送が可能となって、消化設備のコストを削減することができることを見出し、本発明を完成させた。
具体的には、以下の消化設備である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の消化設備は、複数の消化槽を備える消化設備であって、前記複数の消化槽の最大直径が3.5m以下であることを特徴とする。
【0008】
日本国においては、「制限外積載許可」を受けることにより、車両積載時の幅が3.5m以下になるものまで車両輸送が認められている。従って、最大直径が3.5m以下の消化槽を選択することにより、工場生産した消化槽やその構造部品を設置場所に輸送して設置することが可能になるため、消化設備のコストを削減することができる。
【0009】
更に本発明の消化設備一実施態様としては、複数の消化槽が並列に接続されているという特徴を有する。
この特徴によれば、消化槽の増設等の簡易的な手段によって、目的の処理能力を確保することができる。また、各消化槽ごとに運転の管理をするため、被消化物の物性等の変動に対して迅速に対応することが可能である。
【0010】
更に本発明の消化設備の一実施態様としては、複数の消化槽が直列に接続されているという特徴を有する。
この特徴によれば、消化処理を多段階で行い、消化処理の効率を改善することができる。また、被消化物の投入口および排出部の数が少なくなるため、装置の構成を簡素化できるという効果を奏する。更には、複数の消化槽の運転を一括して管理するため、運転管理が容易である。
【0011】
更に本発明の消化設備の一実施態様としては、複数の消化槽内の撹拌が、ポンプで被消化物を循環させることにより行われるという特徴を有する。
この特徴によれば、消化槽内の撹拌に利用するポンプを消化槽外に設置することが可能であるため、撹拌装置の維持管理が容易となる。
また、アスペクト比(高さ/直径)の大きな消化槽において、インペラ式撹拌機等の物理的な撹拌手段を利用した場合、消化槽内の上下方向の撹拌が不十分となるが、ポンプを利用した撹拌によれば、上下方向の撹拌を容易に行うことができる。
【0012】
更に本発明の消化設備の一実施態様としては、複数の消化槽内の撹拌が、1つのポンプで被消化物を循環させることにより行われるという特徴を有する。
この特徴によれば、1つのポンプで複数の消化槽内を撹拌するため、装置が簡素化し、設備コストも低減することができる。また、消化槽を増設した場合であっても、ポンプの数を増やす必要がないため、増設時のコストも削減することができる。
【0013】
更に本発明の消化設備の一実施態様としては、被消化物の循環方向が、定期的に逆方向に変更されるという特徴を有する。
この特徴によれば、ポンプによる攪拌作用が高まるため、消化槽内の未撹拌領域を低減することができる。
【0014】
更に本発明の消化設備の一実施態様としては、複数の消化槽が、互いに連結されているという特徴を有する。
この特徴によれば、消化槽の強度や構造安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、消化設備を低コストで設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態である消化設備の消化槽の概略説明断面図である(
図1のA-A断面図)。
【
図3】本発明の消化設備に利用することができる消化槽の他の実施形態を示す説明概略側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態である消化設備の消化槽の概略説明斜視図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態である消化設備を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一態様である消化設備は、最大直径が3.5m以下の複数の消化槽を用いて消化処理を行う消化設備である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一態様である消化設備の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態である消化設備を示す説明概略図であり、
図2は、消化槽の概略説明断面図であり(
図1のA-A断面図)、
図4は、消化槽の概略説明斜視図である。
【0019】
図1の消化設備1は、3つの円筒形の消化槽が並列に接続された設備であり、それぞれの消化槽で処理される一段階消化設備である。汚泥濃縮槽等から移送されてきた汚泥(被消化物)は、管路P1を介して直接消化槽2に投入されるか、管路P2を介して破砕機3に移送されて固形物等が細断された後、循環ポンプ4を経由し、熱交換器5で消化温度等に温度調節がなされて、管路P3を介して消化槽2に投入される。消化槽2では、汚泥の嫌気性消化を促進するために、汚泥の温度(消化温度)管理や撹拌が行われ、消化日数を経過した消化汚泥は、管路P8を介して脱水処理機等に移送される。なお、消化過程で発生した消化ガスは、管路P9を介して回収されて、熱交換器5の加熱や焼却炉の補助燃料等に利用することもできる。
【0020】
図1の左側の消化槽は、管路P5を介して循環ポンプ4と接続した下部吸入排出口7と、管路P4を介して中央の消化槽の下部吸入排出口7と接続した上部吸入排出口6を備えている。また、中央の消化槽は右側の消化槽の下部吸入排出口7と接続した上部吸入排出口6を、右側の消化槽は管路P3を介して循環ポンプ4と接続した上部吸入排出口6を備えており、循環ポンプ4を利用して汚泥を吸入、排出させることにより、1つの循環ポンプで3つの消化槽内の汚泥を循環させて撹拌することができる仕組みとなっている。循環ポンプ4は、消化槽外に設置することが可能であるため、撹拌装置の維持管理が容易となり、さらに1つの循環ポンプで複数の消化槽内の撹拌が可能であるため、消化槽を増設した場合であっても、循環ポンプの数を増やす必要がないため、コストを削減することができる。
【0021】
消化設備1は、開閉弁V3~V6を利用した管路切り替えユニットを備えており、汚泥の循環方向を定期的に逆方向に変更できる仕組みとなっている。例えば、ポンプ4は、破砕機3から熱交換器5の方向へ輸送する場合、開閉弁V4と開閉弁V3を開け、開閉弁V6と開閉弁V5を閉じることにより、汚泥を左側の消化槽2の下部吸入排出口7から吸入し、右側の消化槽2の上部吸入排出口6から排出する循環を行い、逆に開閉弁V4と開閉弁V3を閉じ、開閉弁V6と開閉弁V5を開けることにより、汚泥を右側の消化槽2の上部吸入排出口6から吸入し、左側の消化槽2の下部吸入排出口7から排出する循環を行うことができる。汚泥の循環方向を定期的に逆方向に変更することによって、撹拌作用が高まり、消化槽内の未撹拌領域を低減することができる。
なお、消化槽内の撹拌は、ポンプで被消化物を循環させることによって行うことに限られず、インペラ式撹拌機等の公知の撹拌方法を利用したものであってもよい。
【0022】
本発明の消化装置では、撹拌手段として、ポンプを利用することが好ましい。本発明の消化装置は、消化槽の最大直径が3.5m以下と小さいため、所定の処理能力を確保するためには、消化槽の高さを高くする必要がある。ここで、消化槽の高さが高くなると、インペラ式撹拌機等の物理的撹拌手段では、上下方向の撹拌が不十分となる。一方、ポンプによる撹拌では、上下方向の撹拌が十分にされるため、本発明の消化装置に適した撹拌手段であるといえる。
【0023】
消化槽2は、
図2に図示するように、最大直径3.5m以下の円筒形の消化槽であるが、消化槽の形状は円筒形に限られず、
図3の(a)のような卵形や(b)のような亀甲形等であってもよい。「最大直径」とは、卵形や亀甲形のように、直径が一定でない場合の消化槽における最大の直径を意味し、最大直径は3.5m以下であり、好ましくは3.3m以下であり、より好ましくは3.2m以下である。一方、消化槽の処理能力を勘案すれば、最大直径の下限としては、通常2.0m以上であり、好ましくは2.5m以上であり、より好ましくは2.8m以上である。
【0024】
消化槽は、分割して輸送し、設置場所において組み立てることも可能であるため、その高さは制限されないが、アスペクト比(高さ/直径)は、通常1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上であり、通常7.0以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下である。
【0025】
消化槽2は、
図4に図示するように、3つの円筒形の消化槽が互いに連結されている。「連結」とは、円筒形の消化槽において、構造体として繋がっていることを意味し、消化槽が互いに連結することにより、消化槽の強度や構造安定性を高めることができる。
【0026】
連結方法としては、複数の消化槽を連結部材で連結しても、複数の消化槽を結合して一体としてもよい。また、複数の消化槽の配置は、一列で配置しても、複数列で配置してもよい。構造安定性を勘案すると、複数列で配置することが好ましい。
【0027】
消化槽2は、鋼板製の円筒形の消化槽であるが、材料は繊維強化プラスティック(FRP)等の軽量な高強度材料製であってもよい。FRPのような軽量な材料であると、輸送や設置がさらに容易となる。
【0028】
消化設備は、複数の消化槽を並列に接続して1つの消化槽において一段階で消化する設備のほか、複数の消化槽を直列に接続して多段階で消化処理を行う設備であってもよい。なお、「並列に接続」とは、複数の消化槽が管路等を介して接続されているが、消化槽への被消化物の投入、消化処理、消化物の排出等がそれぞれの消化槽で独立して行われるもの、「直列に接続」とは、複数の消化槽が管路等を介して接続されており、被消化物が投入された消化槽から次の消化槽に被消化物や消化物が移送されて消化処理が行われるものを意味する。消化槽の数は、1つ当たりの消化槽の容量や処理容量によって適宜選択されるべきであるが、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。
【0029】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態である消化設備を示す説明概略図である。
図5の消化設備は、最大直径が3.5m以下の2つの円筒形の消化槽が直列に接続された設備であり、多段階で消化処理を行う多段階消化設備である。
図5の消化設備は、
図1の消化設備と同様に、循環ポンプ4と管路切り替えユニットを備えており、消化槽内の汚泥を循環させて撹拌すること、さらに汚泥の循環方向を定期的に逆方向に変更することができる設備である。また、
図5の消化設備は、上部吸入排出口6は、消化槽内の略中央で上方向に向かって開口し、下部吸入排出口7は、消化槽内の略中央で下方向に向かって開口している。この構成により、消化槽内に上向流又は下向流を発生させることができるため、汚泥をより効率良く撹拌できるようになっている。
【0030】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態である消化設備を示す説明概略図である。
図6の消化設備は、第2の実施形態の消化設備において、消化槽の内部にドラフトチューブ8を備えたものである。ドラフトチューブ8を設けることにより、消化槽の内部にドラフトチューブ8の内外を循環する循環流が形成され、上下方向の撹拌作用をより高めることができる。
【0031】
[第4の実施形態]
図7は、本発明の第4の実施形態である消化設備を示す説明概略図である。
図7の消化設備は、最大直径が3.5m以下の4つの円筒形の消化槽が直列に接続された設備であり、多段階で消化処理を行う多段階消化設備である。
図7の消化設備は、それぞれの消化槽にインペラ式撹拌機9を備えており、インペラ式撹拌機9の回転により、消化槽内を撹拌する設備である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の消化設備は、下水処理場等の汚泥消化設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 消化設備、2 消化槽、3 破砕機、4 循環ポンプ、5 熱交換器、6 上部吸入排出口、7 下部吸入排出口、8 ドラフトチューブ、9 インペラ式撹拌機、P1~P9 管路、V1~V8 開閉弁