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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】組電池用温度調節装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20230124BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230124BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20230124BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20230124BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230124BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230124BHJP
   H01M 10/6552 20140101ALI20230124BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230124BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230124BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20230124BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6552
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/244
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018075857
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019186049
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】山内 忍
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246990(JP,A)
【文献】特開2016-192280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6552
H01M 50/20
H01M 10/617
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体用の流路を有し、複数個の単電池からなる組電池を搭載する温度調節板を備え、
前記温度調節板が、各単電池に対応するそれぞれの位置に単電池との接触によって変形するばね部を有し、前記流路が分岐して各ばね部を通り、
前記ばね部が、温度調節板に切り込みを入れて該温度調節板の流路を含む部分を屈曲させた板ばねであることを特徴とする組電池用温度調節装置。
【請求項2】
前記ばね部が片持ちの板ばねである請求項1に記載の組電池用温度調節装置。
【請求項3】
前記ばね部は、温度調節板のばね部を除く部分と平行な平行部を有している請求項1または2に記載の組電池用温度調節装置。
【請求項4】
前記流路に熱媒体を流通させる請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の組電池用温度調節装置。
【請求項5】
前記温度調節板が流路に作動液を封入したヒートパイプパネルである請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の組電池用温度調節装置。
【請求項6】
前記温度調節板に接触する冷熱源および/または温熱源を備えている請求項5に記載の組電池用温度調節装置。
【請求項7】
前記温度調節板は、ばね部を有し組電池を搭載する本体部と、前記本体部の端部から延長して屈曲形成され、冷熱源および/または温熱源に接触する熱源接触部とを有する請求項6に記載の組電池用温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に冷熱を伝えて冷却したり、温熱を伝えて加熱したりする組電池用伝熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばハイブリッド自動車、電気自動車等の電動機駆動用バッテリー装置として、たとえばリチウムイオン二次電池などの各種の二次電池からなる複数個の小型単電池を直列または並列に接続して組電池の形態としたものが用いられている。特に、電気自動車においては航続距離の延長のニーズから組電池の大容量化が求められるので、複数の組電池が直列または並列に接続されるように組み合わされている。また、前記二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要がある。
【0003】
組電池を効率良く冷却する方法として、平坦な伝熱面を有し内部に冷媒通路を有する冷却用部材を用い、この冷却部材と組電池の間に樹脂製で弾性変形する熱伝導性シートを挟み込むことによって組電池と冷却部材とを熱的に接続するようにした冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、組電池以外の発熱部材と放熱部材の間に介在させる伝熱部材としては
、金属板の一部を切り起こして弾性力を有する突起体を形成し、熱によって発生した応力や発熱部材と放熱部材との間で生じた振動を吸収する伝熱ばねが提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6020942号公報
【文献】特開平10-303340号公報
【文献】特開2016-70408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された熱伝導性シートの熱伝導率は金属よりも小さいので、組電池と放熱部材との密着性を最大限に高めたとしても熱抵抗は大きい。また、各単電池の平面度の公差や複数個の単電池の組み付け誤差によって、組電池の冷却部材に対する組み付け面に段差が生るじることは避けられない。組電池の組み付け面に生じた段差は前記熱伝導性シートを十分に厚くすることで吸収でき、組電池と冷却部材を熱的に接続できるが、熱伝導性シートの厚みの増大に伴って熱抵抗も大きくなる、とういう問題点がある。また、伝熱性シートとして用いられる高熱伝導性のインターフェースマテリアル(TIM)は高価であり、TIM層が厚くなるとコストが高くなるという問題点もある。
【0007】
引用文献2、3に記載された伝熱ばねによれば、ばねの弾性力によって組電池の組み付け面の段差を吸収できると考えられる。しかも、金属製であるから、特許文献1の樹脂製の伝熱性シートよりも熱伝導率が小さい。しかし、伝熱ばねと冷却部材とを密着させるために何らかの手段、例えばTIMが必要となり、伝熱ばねと冷却部材の間で伝熱ロスが生じる。また、部品点数の増加によりコストが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、組電池を構成する各単電池を効率良く所定温度に制御できる組電池用温度調節装置を提供するものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記[1]~[8]に記載の構成を有する。
【0010】
[1]熱媒体用の流路を有し、複数個の単電池からなる組電池を搭載する温度調節板を備え、
前記温度調節板が、各単電池に対応するそれぞれの位置に単電池との接触によって変形するばね部を有していることを特徴とする組電池用温度調節装置。
【0011】
[2]前記ばね部が、温度調節板に切り込みを入れて該温度調節板の一部を屈曲させた板ばねである前項1に記載の組電池用温度調節装置。
【0012】
[3]前記ばね部が片持ちの板ばねである前項2に記載の組電池用温度調節装置。
【0013】
[4]前記ばね部は、温度調節板のばね部を除く部分と平行な平行部を有している前項1~3のうちのいずれか1項に記載の組電池用温度調節装置。
【0014】
[5]前記流路に熱媒体を流通させる前項1~4のうちのいずれか1項に記載の組電池用温度調節装置。
【0015】
[6]前記温度調節板が流路に作動液を封入したヒートパイプパネルである前項1~4のうちのいずれか1項に記載の組電池用温度調節装置。
【0016】
[7]前記温度調節板に接触する冷熱源および/または温熱源を備えている前項6に記載の組電池用温度調節装置。
【0017】
[8]前記温度調節板は、ばね部を有し組電池を搭載する本体部と、前記本体部の端部から延長して屈曲形成され、前記熱源接触部に冷熱源および/または温熱源を接触させる熱源接触部とを有する前項7に記載の組電池用温度調節装置。
【発明の効果】
【0018】
上記[1]に記載の組電池用温度調節装置によれば、組電池を温度調節板に搭載すると、ばね部が凹み、ばね部の復元力によって組電池にばね部が接触する。ばね部は温度調節板の組み付け面の各単電池に対応するそれぞれの位置に設けられているので、組電池の下面に段差があっても確実に温度調節板を全ての単電池に接触させ、全ての単電池を温度調節板の温度に基づいた温度に制御でき、単電池の温度のばらつきを小さくできる。
【0019】
上記[2]に記載の組電池用温度調節装置によれば、ばね部が温度調節板の一部であるから伝熱ロスがなく、組電池を効率よく温度調節できる。
【0020】
上記[3]に記載の組電池用温度調節装置によれば、ばね部が片持ちの板ばねであるから、屈曲位置に応じてばね部の高さを変えることができ、組電池のより大きい段差に対応できる。
【0021】
上記[4]に記載の組電池用温度調節装置によれば、ばね部の平行部によって組電池との接触面積が大きくなり、伝熱効率を高めることができる。
【0022】
上記[5]に記載の組電池用温度調節装置によれば、流路を流れる熱媒体によって温度調節板を所定温度に冷却または加熱できる。
【0023】
上記[6]に記載の組電池用温度調節装置によれば、温度調節板を構成するヒートパイプパネルによって熱伝達できる。
【0024】
上記[7]に記載の組電池用温度調節装置によれば、温度調節板に冷熱源および/または温熱源を接触させることによって、温度調節板を所定の温度に冷却または加熱し、組電池の温度調節を行える。
【0025】
上記[8]に記載の組電池用温度調節装置によれば、温度調節板において冷熱源および/または温熱源を接触させる熱源接触部が本体部の端部から延長して屈曲形成されているので、熱源接触部が追加された温度調節装置の寸法拡大を最小限にとどめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の組電池用温度調節装置および組電池の一例を示す斜視図である。
図2A図1の組電池用温度調節装置を裏面から見た斜視図である。
図2B図2Aの2B-2B線断面図である。
図3図1の組電池用温度調節装置に組電池を搭載した状態を示す断面図である。
図4】本発明の組電池用温度調節装置の他の例を示す斜視図である。
図5】本発明の組電池用温度調節装置のさらに他の例を示す斜視図である。
図6】本発明の組電池用温度調節装置のさらに他の例を示す斜視図である。
図7図6の組電池用温度調節装置を裏面から見た斜視図である。
図8図6の組電池用温度調節装置の使用例を示す斜視図である。
図9】本発明の組電池用温度調節装置のさらに他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1図9に本発明の組電池用温度調節装置の複数の例を示す。
【0028】
以下の説明において、上下方向は図面に表された上下方向を示すものである。また、同じ符号は同一物または同等物を示すものであり、重複する説明を省略する。
[温度調節板のばね部の形状]
(ブリッジ状のばね部)
図1図3は組電池1とこの組電池用の温度調節装置10を示している。
【0029】
組電池1は、12個の直方体の単電池2からなり、単電池2の大面積の側面同士を接触させ組み付けられている。また、図1および図3において、各単電池2の平面度の公差や単電池2の組み付け誤差によって生じる寸法差を組電池1の下面の段差として表示している。なお、図1および図3は単電池2の端子や接続用部材の図示を省略し、単電池2の外形の輪郭のみを示している。
【0030】
温度調節装置10は、前記組電池1を搭載する長方形の温度調節板11を備えている。前記温度調節板11は、図2Aおよび図2Bに示すように、組電池1の組み付け面12の裏面13に流路14が突出するアルミニウム製ロールボンドパネルからなり、流路14の両端部が一方の短辺に開口して入口部材15および出口部材16が取り付けられている。前記温度調節板11は中央領域の各単電池2に対応する位置に12個のばね部18が形成されている。前記ばね部18は、温度調節板11に、温度調節板11の短辺に平行な13本のスリット状の切り込み17を単電池2の厚みに対応する間隔で入れ、隣り合う2本の切り込み17の間の帯状部分を組み付け面12側に突出する方向に曲げることにより形成された板ばねである。前記ばね部18は、長手方向(温度調節板11の短辺方向)の両端で支持され、中間部分18aが温度調節板11のばね部18を除く部分と平行なブリッジ状であり、温度調節板11の裏面13側に凹んで組み付け面12側に復元する弾性力を有している。
【0031】
図2Aおよび図2Bに示すように、前記温度調節板11は、流路14を裏面13に膨出させたロールボンドパネルであり、組み付け面12はフラットである。前記流路14は、一方の端部から温度調節板11の長辺に沿って延びながら各ばね部18で分岐し、各ばね部18から合流しながら対向する長辺に沿って延び、他方の端部に至る。そして、入口部材15から導入した熱媒体は流路14の経路に従って各ばね部18を通り、て出口部材16から排出される。温度調節板11は流路14に導入する熱媒体の温度に応じた温度に冷却または加熱されている。
【0032】
図3に示すように、前記組電池1を温度調節板11の組付け面12に搭載すると、各単電池2の上下方向の寸法に応じてばね部18が凹み、ばね部18の復元力によって全ての単電池2の下面にばね部18がしっかりと接触する。温度調節板11の組み付け面12の各単電池2に対応するそれぞれの位置にばね部18を設けられているので、組電池1の下面に段差があっても確実に温度調節板11を全ての単電池2に接触させ、全ての単電池2を温度調節板11の温度に基づいた温度に制御できる。全ての単電池2をばね部18に接触させることによって単電池2の温度のばらつきを小さくできる。なお、図3はばね部18における流路14の表示を省略している。
【0033】
また、組電池1と温度調節板11の組み付け面12の密着性を高めるためにTIMを使用する場合でも、TIMの使用量を最小限にとどめることができる。このため、TIM使用量削減によりTIMによる熱抵抗を最小限にとどめ、かつコストダウンを図ることができる。
(片持ちのばね部)
図4の温度調節装置20の温度調節板21および図5の温度調節装置30の温度調節板31は、片持ちのばね部28、38を有している。
【0034】
図4に示すように、温度調節板21のばね部28は、温度調節板21に単電池2数の亀甲括弧形の切り込み27を入れ、切り込み27に囲まれ長辺で繋がった台形部を形成し、この台形部を長辺で支持して組み付け面22側に曲げ起こし、さらに台形部の高さ方向の中間部を屈曲させることによって作製されたものである。前記ばね部28の先端部分28aは温度調節板21のばね部28を除く部分と平行である。
【0035】
前記温度調節板21は、裏面23に流路24が膨出するロールボンドパネルである。前記流路24は一方の端部から温度調節板21の長辺に沿って延びながら各ばね部28で分岐し、各ばね部28から合流しながら対向する長辺に沿って延び、他方の端部に至る。
【0036】
図5に示すように、温度調節板31のばね部38は、温度調節板31に単電池2数の角括弧形の切り込み37を入れ、切り込み37に囲まれ一方の長辺で繋がった長方形部を形成し、この長方形部を長辺で支持して曲げ起こし、さらに短辺方向の中間部を屈曲させることによって作製されたものである。前記ばね部38の先端部分38aは温度調節板31のばね部38を除く部分と平行である。
【0037】
前記温度調節板31は、組付け面32および裏面33の両面に流路34が膨出するロールボンドパネルである。前記流路34は一方の端部から温度調節板31の長辺に沿って延びながらばね部38とばね部38の間で分岐し、分岐したばね部38間から合流しながら対向する長辺に沿って延び、他方の端部に至る。
【0038】
前記片持ちのばね部28、38は、温度調節板21、31の裏面23、33側に凹み、組み付け面22、32側に復元する弾性力を有しており、ブリッジ状のばね部18と同じく、温度調節板21、31に搭載した組電池1の全ての単電池2の下面にばね部28、38をしっかりと接触させることができる。また、片持ちのばね部28、38は屈曲させる位置によって組み付け面22、32からの突出高さを変更することが容易であり、ブリッジ状のばね部18よりも多様な高さのばね部を形成することができる。ひいては、組電池のより大きい段差に対応できる。
【0039】
前記ばね部18、28、38は熱媒体によって温度調節された温度調節板11、21、31の一部であり温度調節板11、21、31と一体であり、温度調節板11、21、31が直接組電池1に接触するから、伝熱ロスがなく効率良く組電池1の温度調節を行える。前記ばね部18、28、38の高さは組電池1に生じる段差分を補えれば足り、このような高さのばね部18、28、38は温度調節板11、21、31に切り込みを入れて曲げ起こすことによって作製できる。
【0040】
また、ばね部は温度調節板のばね部を除く部分と平行な平行部を有していることが好ましい。平行部を有するばね部は組電池との接触面積が大きく伝熱効率が高い。図1のブリッジ状のばね部18は中間部分18aが平行部であり、図4および図5の片持ちのばね部28、38は先端部分28a、38aが平行部である。
(流路の位置)
流路内の熱媒体は熱伝達手段であり、熱伝達を効率良く行うために、流路は各ばね部を通るかあるいは各ばね部に近い経路で形成することが好ましい。ばね部を通る場合でも、特に組電池と接触する部分を通って流路が形成されていることが好ましい。流路は切り込みを避けて形成しなければならないが、曲げ加工によって流路が潰れない限りばね部に形成することができる。図1~2Bの流路14は各ばね部18の幅方向の中心を通り、各単電池2が接触する中間部分18a(平行部)を通っている。図4の流路24は各ばね部28の支持側部分を通っている。図5の流路34はばね部38を通らず隣り合う全てのばね部38の間を通っている。
【0041】
図1図5の温度調節板11、21、31は、流路14、24、34を温度調節板11、21、31の端部で開口させて外部から熱媒体を導入するように構成されている。また、本発明の温度調節板は流路に作動液を封入したヒートパイプパネルで構成することもできる(図6、7参照)。
【0042】
また、流路に導入する熱媒体の種類は何ら限定されず、ロングライフクーラント(LLC)を例示できる。
(温度調節板の冷却および加熱)
温度調節板がヒートパイプパネルで構成された温度調節装置は、温度調節板に冷熱源および/または温熱源(以下「冷温熱源」と略称する)を接触させて搭載した組電池の冷却および/または加熱することができる。組電池搭載の妨げにならない限り、冷温熱源の接触位置は限定されないが、温度調節板に冷温熱源接触部を追加することもできる。
【0043】
図6、7の温度調節装置40の温度調節板41はヒートパイプパネルで構成され、ばね部18を有して組電池を搭載する本体部42と、この本体部42の一方の端部から延長されて組み付け面12側にL字形に屈曲して冷熱温源を接触させる熱源接触部43とを有する。前記本体部41は図1の温度調節板11と同等の構造であり、ブリッジ状のばね部18および流路14を備えている。前記熱源接触部43は、本体部42の流路14に連通する流路44が設けられ、これらの流路14、44に作動液が封入されている。また、前記熱源接触部43内の流路44は網目状の分岐路を形成し、冷温熱源(図示省略)と流路44の接触面積が大きくなるように設定されている。
【0044】
図8は、冷凍サイクル50による低温冷媒と前記温度調節板41を用いて組電池1を冷却する構造を示している。冷凍サイクル50において、凝縮器51で凝縮した冷媒を膨張弁52を介して扁平多穴管からなる冷媒管53に送り込み、冷媒管53から送り出された冷媒は圧縮機54で圧縮されて凝縮器51に送られる。前記温度調節板41の本体部42に組電池1を搭載し、熱源接触部43に冷熱源として冷凍サイクル50の冷媒管51を接触させている。
【0045】
前記温度調節装置40において冷却と加熱の両方を行う場合は、温度調節板41にヒーター等の温熱源を接触させて冷熱源と温熱源を切り換えて稼働させる。図7は、温度調節板41の本体部42の裏面13の流路14上に温熱源55を接触させた例を示している。
【0046】
温度調節板に熱源接触部を追加する場合、本体部からの延長部分を屈曲させずに本体部と同一平面に熱源接触部を設けることもできる。しかし、熱源接触部を本体部に対してL字形に屈曲させることによって、屈曲させない場合よりも温度調節装置の平面寸法を小さくすることができ、熱源接触部の追加による寸法拡大を最小限にとどめることができる。る。
【0047】
なお、温度調節板に2つの冷温熱源接触部を追加して、それぞれ冷熱源用、温熱源用とすることもできる。また一つの冷温熱源接触部に冷熱源および温熱源の両方を接触させることもできる。また、前記熱源接触部は本体部の任意の辺に設けることができる。
(複数個の組電池用温度調節板)
本発明の温度調節装置は1枚の温度調節板に複数組の組電池を搭載することができる。図9の温度調節装置60は2組の組電池を搭載する温度調節板61を備えている。前記温度調節板61は本体部62と屈曲形成された熱源接触部63を有するヒートパイプパネルで構成され、本体部62に2列のばね部列68a、68bが形成され、各ばね部列68a、68bが複数個のばね部18で構成されている。また、流路64は各ばね部18に分岐し、熱源接触部63に及んでいる、そして、それぞれのばね部列68a、68bに組電池が搭載される。
【0048】
本発明において温度調節板の材料はアルミニウム、銅などの熱伝導率の大きい金属またはその金属の合金を用いることが好ましい。また、ロールボンドパネルを用いてばね部および流路を形成することが好ましい。本発明は平板に流路用パイプを接合した温度調節板を除外するものではないが、ロールボンドパネルは薄く軽量であり、車載用バッテリーの温度調節装置に適している。
【0049】
また、本発明の組電池用温度調節装置は、温度調節板の流路を電池ケースや絶縁板に接触させてこれらに排熱することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、複数のリチウムイオン二次電池の単電池からなる組電池が搭載された電気自動車において、組電池の温度調節に用いられる。
【符号の説明】
【0051】
1…組電池
2…単電池
10、20、30、40、60…温度調節装置
11、21、31、41、61…温度調節板
12、22、32…組み付け面
14、24、34、44、64…流路
17…スリット(切り込み)
18、28、38…ばね部
18a…中間部分(平行部)
27…亀甲括弧形の切り込み
28a…先端部分(平行部)
37…角括弧形の切り込み
38a…先端部分(平行部)
42、62…本体部
43、63…熱源接触部
53…冷媒管(冷熱源)
55温熱源
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9