(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】位置決め装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/18 20060101AFI20230124BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B23Q3/18 A
B23P19/00 301D
(21)【出願番号】P 2018166447
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000207816
【氏名又は名称】大豊精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【氏名又は名称】大川 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120994
【氏名又は名称】山田 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】浦川 隆幸
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-300564(JP,A)
【文献】特開平09-300301(JP,A)
【文献】特開2002-103294(JP,A)
【文献】特開2015-208591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/18
B23Q 5/00
B23P 19/00
A47B 1/00 - 41/06
A47B 77/00 - 77/18
A47B 83/00 - 88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場ラインにおいて、作業者により前方に引っ張られ且つ位置決め対象物がワークセット又はラフセットされたテーブルを、後方にスライドさせてストッパ部に押し当てることで、前記位置決め対象物を位置決めする位置決め装置であって、
ベースと、
前記ベース上に固定され、前後方向に平行に延びる2本のリニアガイドと、
前記ベース上に配置され、前記
リニアガイドにより前記前後方向に案内される前記テーブルと、
前記ベース上に固定され、前記テーブルに当接することで前記テーブルの後方への移動を規制する前記ストッパ部と、
作業者が把持可能に前記テーブルに設けられた把持部と、
前記テーブルに対し後方に電力を用いず引張力を付与し、所定の押圧力で前記テーブルを前記ストッパ部に当接させる引張部と、
前記ベース上に固定され、前記テーブルに接触することで前記テーブルの移動速度を調整する弾性部材と、
を備え、
前記引張部は、前記テーブルに対し後方に一定の引張力を付与し、一定の力で前記テーブルを前記ストッパ部に押し当てるように構成された定荷重ばねであり、
前記テーブルは、平板状に形成され、
前記ストッパ部は、左右方向の幅が
前記前後方向の幅よりも大きい直方体状に形成され、
前記テーブルの後端部の中央には、上から見て、前方に凹状に凹んだ凹状部が形成されており、
前記凹状部の左右方向の開口幅は、前記ストッパ部の左右方向の幅よりも大きく、
前記ストッパ部に当接する前記凹状部の底面は、
前記前後方向に直交し且つ前記ベースの上面に対して直交し、
前記底面に対向する前記ストッパ部の後端面は、
前記前後方向に直交し且つ前記ベースの上面に対して直交し、
前記テーブルは、前方にスライドされた後に作業者が手を放した場合、前記定荷重ばねにより前記テーブルが後方にスライドし、前記ストッパ部に前記一定の力で当接する、
位置決め装置。
【請求項2】
前記ストッパ部は、上から見て、前記テーブルに当接した状態で、前記凹状部に収容される、
請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記定荷重ばねの先端部は、上から見て、少なくとも一方の前記リニアガイドの延長線上の後方の位置であって、前記テーブルの後端部に固定されている請求項1又は2に記載の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動の位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手動の位置決め装置は、例えば、ベースと、ベース上に一方向(例えばX軸方向)に進退可能に配置されたテーブル(ステージ)と、テーブルに設けられた把持部と、ベースの一端部に設けられたストッパ部と、を備えている。作業者は、把持部を掴んでテーブルをスライドさせ、テーブルをストッパ部に押し当てることで、テーブルの一方向における位置を決めることができる。例えば、角型電池セルなどの位置決め対象物を、ワークセットやラフセットから位置決めするために、作業者がテーブルを引っ張り、作業者がテーブルをストッパ部に押し当てることで対象物の位置決めが行われていた。このような、手動の位置決め装置は、電動の動力源(電動モータやエア供給装置等)を必要とせず、省エネルギーや環境の観点から好ましい。一方、自動の位置決め装置は、例えば特開2004-223647号公報に記載されているように、ボールねじとモータ、又はアクチュエータ等の電動の駆動源を備えている。自動の位置決め装置は、電動の駆動源をもつため、購入コスト及びランニングコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、自動の位置決め装置は、コスト面及び環境への配慮の面において、手軽に工場ライン等に導入することができない。一方で、手動の位置決め装置では、作業者が操作するため、作業者によって位置決めにバラツキが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、電動の動力源を用いることなく、位置決め精度の向上が可能な位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位置決め装置は、工場ラインにおいて、作業者により前方に引っ張られ且つ位置決め対象物がワークセット又はラフセットされたテーブルを、後方にスライドさせてストッパ部に押し当てることで、前記位置決め対象物を位置決めする位置決め装置であって、ベースと、前記ベース上に固定され、前後方向に平行に延びる2本のリニアガイドと、前記ベース上に配置され、前記リニアガイドにより前記前後方向に案内される前記テーブルと、前記ベース上に固定され、前記テーブルに当接することで前記テーブルの後方への移動を規制する前記ストッパ部と、作業者が把持可能に前記テーブルに設けられた把持部と、前記テーブルに対し後方に電力を用いず引張力を付与し、所定の押圧力で前記テーブルを前記ストッパ部に当接させる引張部と、前記ベース上に固定され、前記テーブルに接触することで前記テーブルの移動速度を調整する弾性部材と、を備え、前記引張部は、前記テーブルに対し後方に一定の引張力を付与し、一定の力で前記テーブルを前記ストッパ部に押し当てるように構成された定荷重ばねであり、前記テーブルは、平板状に形成され、前記ストッパ部は、左右方向の幅が前記前後方向の幅よりも大きい直方体状に形成され、前記テーブルの後端部の中央には、上から見て、前方に凹状に凹んだ凹状部が形成されており、前記凹状部の左右方向の開口幅は、前記ストッパ部の左右方向の幅よりも大きく、前記ストッパ部に当接する前記凹状部の底面は、前記前後方向に直交し且つ前記ベースの上面に対して直交し、前記底面に対向する前記ストッパ部の後端面は、前記前後方向に直交し且つ前記ベースの上面に対して直交し、前記テーブルは、前方にスライドされた後に作業者が手を放した場合、前記定荷重ばねにより前記テーブルが後方にスライドし、前記ストッパ部に前記一定の力で当接する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動力源として、電動ではない引張部が用いられており、コスト及び環境の面で効果的である。また、作業者は任意の力でテーブルを所定方向他方側にスライドさせることができ、スライド後に手を放すと、テーブルは引張部により自動的にストッパ部にまでスライドさせられ、ストッパ部に所定の力で当接して位置決めされる。つまり、作業者がテーブルを引っ張る力にかかわらず、最終的にはテーブルを所定の力でストッパ部に当接させることができ、位置決めのバラツキが抑制され、位置決め精度の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の位置決め装置の平面図(上方から見た図)である。
【
図2】本実施形態の位置決め装置の側面図(右方から見た図)である。
【
図3】本実施形態の位置決め装置の正面図(後方から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
本実施形態の位置決め装置1は、
図1、
図2、及び
図3に示すように、ベース2と、2本のリニアガイド3と、テーブル4と、ストッパ部5と、把持部6と、定荷重ばね(「引張部」に相当する)7と、弾性部材8と、を備えている。ベース2は、固定の台座であって、平面状の金属部材である。リニアガイド(「案内部」に相当する)3は、例えばレールとボールベアリング等で構成される公知の案内手段である。2本のリニアガイド3は、それぞれ、ベース2上に固定され、X軸方向(「所定方向」に相当する)に平行に延びている。
【0010】
以下、説明において、X軸方向を前後方向とし、X軸方向一方側を「後」とし、X軸方向他方側を「前」とする。また、ベース2の平面上でX軸に直交するY軸方向を左右方向とし、Y軸方向一方側を「右」とし、Y軸方向他方側を「左」とする。また、X軸及びY軸に直交するZ軸方向を上下方向とし、Z軸方向一方側を「上」とし、Y軸方向他方側を「下」とする。
【0011】
テーブル4は、平板状の金属部材であって、ステージとも称される部材である。テーブル4は、ベース2上に配置され、リニアガイド3により前後方向に案内される。ストッパ部5は、ベース2上に固定され、テーブル4に当接することでテーブル4の後方への移動を規制する直方体状の金属部材である。ストッパ部5は、ベース2の後方端部に設けられ、ベース2から上方に突出している。なお。テーブル4は、ストッパ部5が当接する部分が凹状に凹んだ形状になっている。
【0012】
把持部6は、作業者が把持可能にテーブル4に設けられた部材である。把持部6は、テーブル4の前端部に設置され、テーブル4から上方に突出し、下方が開放したU字状に形成されている。
【0013】
定荷重ばね7は、テーブル4に対し後方に電力を用いず引張力を付与し、所定の押圧力でテーブル4をストッパ部5に当接させるように構成されている。定荷重ばね7は、テーブル4に対し後方に一定の引張力を付与する部材である。定荷重ばね7は、公知の構成であって、ゼンマイ等により構成されている。定荷重ばね7は、ベース2の後端部に設置され、引張力が加わるゼンマイの先端部がテーブル4の後端部に固定されている。テーブル4に固定される定荷重ばね7の先端部は、一方のリニアガイド3(ここでは左方)の延長線上に位置している。定荷重ばね7は、左方のリニアガイド3の延伸方向の延長線上で、リニアガイド3に対してその延伸方向に力が加わるように配置されている。つまり、定荷重ばね7とテーブル4との接続部(固定部)は、上から見て(
図1参照)、少なくとも一方のリニアガイド3の延長線上(リニアガイド3を後方に伸ばした場合の伸びたリニアガイド3上)に位置している。
【0014】
弾性部材8は、ベース2上に固定され、テーブル4に接触することでテーブル4の移動速度を調整する部材である。弾性部材8は、ベース2から円柱状に突出するゴムパットであり、ベース2上に複数設置されている。弾性部材8は、例えば4つのゴムパットで構成され、ベース2の後方の2つの角部(二隅)に配置されている。
【0015】
リニアガイド3の案内のもと、テーブル4が作業者に引っ張られて前進し、作業者がテーブル4(把持部6)から手を放した際、定荷重ばね7の引張力よりテーブル4が後方に移動する。そして、テーブル4とストッパ部5とが当接する手前で、テーブル4の下面が弾性部材8と接触し、テーブル4が弾性部材8に対して摺動する。これにより、テーブル4の移動速度が減速され、テーブル4とストッパ部5とがゆっくりと当接する。
【0016】
本実施形態によれば、定荷重ばね7の作用により、作業者は一定の力でテーブル4を移動させることができ、また、自動的にテーブル4がストッパ部5で位置決めされ、位置決め精度を向上させることができる。本実施形態によれば、作業者は把持部6を持ってテーブル4を引っ張るだけでよく、作業性は向上する。また、定荷重ばね7は、電動ではないため、コスト及び環境の観点で優れている。また、定荷重ばね7は、所定の移動速度でテーブル4を後進させ、一定の荷重でストッパ部5への押し当てを可能とする。また、定荷重ばね7が弾性部材8と組み合わされた構成は、ストッパ部5へ加える荷重は保ちつつ、テーブル4とストッパ部5との当接速度を低減させ、耐久性と安全性の向上を可能とする。
【0017】
本実施形態によれば、電力レス及びエアレスの構成であっても、作業者による位置決めのバラツキを抑制できる。作業者により、テーブル4のストッパ部5への押し当ての力にバラツキが生じるが、本構成によれば、電力レスで一定の押し当て力を実現できる。また、リニアガイド3の採用により、金属異物の発生や、金属同士の擦れによる傷つきの発生を抑制することができる。テーブル4のY軸方向とZ軸方向の位置はリニアガイド3により決定され、テーブル4のX軸方向の位置はテーブル4のストッパ部5への押し当て(押し当て機構)により決定される。
【0018】
このように、本実施形態によれば、動力源として、電動ではない定荷重ばね7が用いられており、コスト及び環境の面で効果的である。また、作業者は一定の力でテーブル4を前方にスライドさせることができ、スライド後に手を放すと、テーブル4は定荷重ばね7により自動的にストッパ部5にまでスライドさせられ、ストッパ部5に一定の力(所定の力)で当接して位置決めされる。つまり、作業者がテーブル4を引っ張る力にかかわらず、最終的にはテーブル4を一定の力(所定の力)でストッパ部5に当接させることができ、位置決めのバラツキが抑制され、位置決め精度の向上が可能となる。また、ピンによる位置決めは不要となり、作業性の改善が可能となり、カジリ等の発生も抑制される。また、作業者のストッパ部への押し当てが強いことによる位置決め対象物の変形や損傷を抑制することができる。
【0019】
なお、本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、リニアガイド3は、他の直動部品であってもよい。また、定荷重ばね7は、2つのリニアガイド3に対応して、2つ設けられてもよい。また、本発明の引張部は、定荷重ばね7に替えて、例えばマグネットや、他のゼンマイ方式の引張手段であってもよい。また、弾性部材8は、配置できる任意の位置に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1…位置決め装置、2…ベース、3…リニアガイド(案内部)、4…テーブル、5…ストッパ部、6…把持部、7…定荷重ばね(引張部)、8…弾性部材。