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特許7215864粘着剤組成物、粘着剤組成物を用いた積層体及び包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤組成物を用いた積層体及び包装材料
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20230124BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230124BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20230124BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20230124BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230124BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20230124BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230124BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
G09F3/04 C
G09F3/10 C
B32B7/12
B32B27/12
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018182183
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020050778
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501460383
【氏名又は名称】住化ケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】熊野 晶文
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-128249(JP,A)
【文献】特開2006-030668(JP,A)
【文献】特開2005-313389(JP,A)
【文献】特開2002-203525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J,B32B,B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮フィルムと不織布とを貼り合わせるための粘着剤組成物であって、
アクリル系粘着剤と芳香族ポリイソシアネート架橋剤とを含み、
乾燥硬化した粘着剤組成物のガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃であり、かつトルエン不溶分(TIP)が2質量%以上であり、かつ融点が0℃以下又は非晶性で融点がないことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記TIPが53質量%以下である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
熱収縮フィルムと不織布との間に、アクリル系粘着剤と芳香族ポリイソシアネート架橋剤とを含む接着剤層を有し、
該接着剤層のガラス転移温度(Tg)が-50℃~-20℃で、かつトルエン不溶分(TIP)が2質量%以上であり、かつ融点が0℃以下又は非晶性で融点がないことを特徴とする積層体。
【請求項4】
150℃にて10秒間の熱負荷により少なくとも1方向に5%以上の収縮率を示す請求項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の積層体からなる包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤組成物を用いた積層体及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮フィルムは、シュリンクフィルムという名称で知られており、例えば、被包装体を覆った後に所定温度に加熱すると、短時間で収縮し、被包装体に密着して良好な外観の包装体を形成することができる。
近年、熱収縮フィルムに不織布を貼り合わせて、意匠性及び手触り等を向上させ、さらに、熱収縮フィルム自体の強度の向上、被包装体の傷つき防止等の機械特性を付加することが検討されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-76259号公報
【文献】特開2015-55791号公報
【文献】特開2005-70739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、熱収縮フィルムと不織布を貼り合わせる場合、不織布自体は熱収縮するが、熱収縮フィルムとは収縮性が異なる。従って、不織布又は熱収縮フィルムに接着し得る接着剤を用いて両者を常温で貼り合わせたり、熱圧着によって両者を貼り合わせても、熱収縮させた場合に、熱収縮フィルムと不織布との間で層間剥離を生じたり、これらの積層体の表面に皺が発生することがある。特に、熱収縮フィルムと不織布とを熱可塑性樹脂タイプの接着剤を用いて熱圧着により連続的に貼り合わせる場合には、加熱ロール等で加熱圧着する必要があるが、加熱温度が低いと、熱収縮フィルムと不織布とを強固に熱圧着できない。また、加熱温度を高くすると、熱収縮フィルムが収縮し、熱圧着により連続的に貼り合わせることは困難である。
本願は、上記課題を解決するためになされたものであり、熱収縮フィルムと不織布とを強固に貼り合わせることができ、熱収縮後においても熱収縮フィルムと不織布との接着性を確保して、熱収縮フィルムと不織布との層間剥離、表面における皺の発生等を有効に防止することができる粘着剤組成物、これを用いた積層体及び包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は以下の発明を提供する。
(1)熱収縮フィルムと不織布とを貼り合わせるための粘着剤組成物であって、
乾燥硬化した粘着剤組成物のガラス転移温度(Tg)が-70℃~-10℃であり、かつトルエン不溶分(TIP)が2質量%以上であり、かつ融点が0℃以下又は非晶性で融点がないことを特徴とする粘着剤組成物。
(2)アクリル系樹脂と架橋剤とを含む(1)に記載の粘着剤組成物。
(3)前記TIPが53質量%以下である(1)又は(2)に記載の粘着剤組成物。
(4)熱収縮フィルムと不織布との間に接着剤層を有し、
該接着剤層のガラス転移温度(Tg)が-70℃~-10℃で、かつトルエン不溶分(TIP)が2質量%以上であり、かつ融点が0℃以下又は非晶性で融点がないことを特徴とする積層体。
(5)150℃にて10秒間の熱負荷により少なくとも1方向に5%以上の収縮率を示す(4)に記載の積層体。
(6)前記粘着剤層が、アクリル系樹脂と架橋剤とを含む(4)又は(5)に記載の積層体。
(7)上記(4)~(6)のいずれか1つに記載の積層体からなる包装材料。
【発明の効果】
【0006】
本願によれば、熱収縮後においても熱収縮フィルムと不織布との接着性を確保することができ、熱収縮フィルムと不織布との層間剥離、表面における皺の発生等を確実に防止することができる。これによって、被包装体を覆い、熱収縮によって被包装体に密着させる場合に、良好な収縮を与えて被包装体への密着性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔粘着剤組成物〕
本願における粘着剤組成物は、熱収縮フィルムと不織布とを貼り合わせるために特に有効であり、常温又は低温、例えば、50℃以下で両者を貼り合わせることが可能であり、かつ良好な密着性を確保し得るものである。これによって、熱収縮フィルムと不織布とを貼り合わせた積層体を、連続的に、強固な貼り合わせにより製造することができる。そして、従来のように、熱収縮フィルムと不織布との貼り合わせのために、加熱ロールを通した熱圧着をする必要がないために、貼り合わせ時における熱収縮フィルムの熱収縮を生じさせることがなく、積層体を簡便かつ高品質で製造することができる。また、熱収縮フィルムと不織布とを貼り合わせた積層体の熱収縮時においても、強固な密着性を確保して、熱収縮フィルムと不織布との層間剥離、表面における皺の発生等を確実に防止することができる。これによって、本願における粘着剤組成物を用いた積層体によって被包装体を覆い、熱収縮によって被包装体に密着させる場合に、適度にかつ良好な収縮を与えて被包装体への密着性を確保することができる。
【0008】
本願における粘着剤組成物は、熱収縮フィルムと不織布とを貼り合わせた積層体を熱収縮させるものであるため、耐熱性を有する。
本願における粘着剤組成物は、積層体の貼り合わせ時の密着性、使用時の耐熱性を考慮して、性能をコントロールするために、2液硬化タイプであることが適している。
本願における粘着剤組成物は、粘着性及び耐熱性の双方を確保するために、例えば、粘着剤組成物の乾燥硬化物のガラス転移温度(Tg)を-70℃~-10℃とすることが好ましく、-50℃~-20℃がさらに好ましい。また、本願における粘着剤組成物は、耐熱性を確保するために、例えば、トルエン不溶分(TIP)を2質量%以上とすることが好ましい。また、53質量%以下であることが好ましい。特に、5質量%~53質量%がより好ましく、8質量%~53質量%がさらに好ましく、10%質量~53質量%がより一層好ましく、10質量%~49質量%が特に好ましい。また、本願における粘着剤組成物は、常温での貼り合わせ時の密着性を確保するために、融点が0℃以下又は非晶性で融点がないことが好ましく、非晶性で融点がないことがより好ましい。融点については、融解ピークが観察されるか否か、またそれが観測された場合は、そのピーク面積、すなわち結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークの頂点を融点とした。結晶融解ピークは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
ここで、Tg及びトルエン不溶分及び融点は、実施例に記載した方法によって測定した値を示す。
【0009】
通常、粘着剤組成物は、非晶性の場合、ガラス転移温度が低く、分子量が低いと粘着性が高いが、耐熱性が良好でなく、一方、ガラス転移温度が高く、分子量が高いと、耐熱性が高くなり、粘着性が低くなる傾向がある。また、融点が存在する場合は、融点以上で粘着性を示す。従って、上述したガラス転移温度及び分子量及び融点を調整することにより、粘着性及び耐熱性のバランスを図ることができる。粘着剤組成物の乾燥硬化物のガラス転移温度及び融点は、樹脂組成等によって調整することができる。粘着剤組成物の乾燥硬化物におけるトルエン不溶分は、例えば、粘着剤組成物を構成する主成分の樹脂を重合する際に、分子量調整剤である連鎖移動剤の種類及び/又は量を選択して、分子量を増減することにより調整することができる。また、トルエン不溶分は、トルエン不溶分の異なる2種類以上の樹脂をブレンドすること、樹脂の重合時の重合開始剤量、重合開始温度等の設定、含有する架橋剤の種類及び量を選択することによって調整することもできる。連鎖移動剤としては、公知のもののいずれを用いてもよいが、ハロゲン系化合物である臭化メチル又はα-メチルスチレンダイマーを使用する場合には、その使用量は用いるモノマーの全質量に対して10質量%以下であり、メルカプタン類であるt-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン等を使用する場合には、その使用量は5質量%以下とすることができる。特に、トルエン不溶分は、熱収縮フィルムと不織布とを貼り合わせた積層体を、自動包装機で溶断したい場合は、2~53質量%になるように調整するのが好ましく、さらに溶断温度を低温で切断したい場合は、2~49質量%になるように調整することがより好ましい。
粘着剤組成物の硬化物のトルエン不溶分をこの範囲とすることにより、積層体が熱収縮するときに熱収縮フィルムと不織布との層間剥離を効果的に防止することができるとともに、粘着剤組成物の硬化物を適切な硬さとすることができ、熱収縮フィルム及び不織布への密着性を低下させることを防止することができる。その結果、例えば、自動包装機等で、この積層体によって被包装体を包装する際に、積層体の熱溶断を容易にすることができ、包装材としての包装効率を確保又は向上させることができる。
【0010】
(樹脂)
粘着剤組成物は、その主成分の樹脂として、種々の樹脂を用いることができる。なかでも熱可塑性樹脂で融点が0℃以下又は非晶性で融点がないものを用いることが好ましい。例えば、エチレン-ビニルエステル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構造単位を有する樹脂ならびにその塩素化物及び変性物、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合樹脂、塩化ビニリデン-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂、塩素化された炭素数2~20のα-オレフィン由来の構造単位を有する樹脂、エチレン-ビニルエステル樹脂、ポリウレア、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、クロロプレン系樹脂、酸変性クロロプレン樹脂、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、変性ゴム、スチレン-(メタ)アクリル酸樹脂、合成ゴム、天然ゴム、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン系ブロック共重合体及びこれらのオリゴマー体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を組み合わせてもよい。なかでも、アクリル系樹脂を主成分の樹脂として含むものが好ましい。主成分の樹脂とは、粘着剤組成物の不揮発分に対して、50質量%以上を占めるものを意味する。
【0011】
アクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、アクリル系モノマーと、アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。
アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸環状エステル類、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1-メチルアリル、(メタ)アクリル酸2-メチルアリル等の(メタ)アクリル酸ビニル等の不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル等の複素環含有(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N-トリブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル等のアミノ機含有(メタ)アクリル酸エステル類、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物などの(メタ)アクリル酸誘導体類、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロブチル等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル類、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類等のモノマーに由来する共重合体が挙げられる。
これらのモノマーは、後述する架橋剤の官能基と反応させるために、カルボン酸基又は水酸基等を導入したモノマーを加えて共重合するものが好ましい。
【0012】
アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、ラジカル重合性不飽和基に少なくとも1個のカルボキシル基を有するモノマーとして、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。また、ラジカル重合性不飽和基の他に少なくとも1個の水酸基を有するモノマーとして、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、アクリル系モノマーと共重合可能なビニルモノマー等として、例えば、スチレン、α-スチレン、等の芳香族ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシランなどのトリアルキルオキシシリル基含有ビニルモノマー類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー類、アクリルアミド、メタクリルアミド基含有ビニル系モノマー類、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
なかでも、ノルマルブチルアクリレートを共重合した樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを、30質量%以上含有するものが好ましく、50質量%以上含有するものがより好ましく、80質量%含有するものがさらに好ましい。
【0013】
粘着剤組成物で用いられる樹脂は、有機溶剤中でラジカル重合することにより得ることができる。
用いられる有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合の際には、重合触媒を用いることが好ましい。重合触媒としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系重合開始剤、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(架橋剤)
粘着剤組成物は、架橋剤を含むものが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤組成物を架橋させ、トルエン不溶分を調整することができる。その結果、粘着剤組成物の凝集力及び/又は耐熱性を向上させ、熱収縮フィルムが収縮しても、剥離を抑制することができる。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。これら架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イソシアネート系架橋剤としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
【0015】
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
アミン系架橋剤としては、1級アミノ基を2個以上有するポリアミンであればよく、硬化速度が優れる点から、芳香環には直接結合していない1級アミノ基を2個以上有するポリアミン、例えば、1級アミノ基が脂肪族官能基又は脂環族官能基に直接結合している脂肪族系ポリアミンが好ましい。脂肪族系ポリアミンは、1級アミノ基に芳香環が直接結合していなければ、その骨格内に芳香環を含んでもよい。
【0016】
カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に2個以上有する化合物が好ましく、公知のポリカルボジイミドを用いることができる。カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドも使用できる。このような化合物は、以下のジイソシアネートを脱炭酸縮合反応したものが挙げられる。ジイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの架橋剤の内、イソシアネート系の架橋剤が低温養生で反応するため、好ましい。
これらの架橋剤の添加量は、粘着剤組成物の乾燥硬化物のトルエン不溶分が上述した範囲になるように調整することが好ましい。例えば、粘着剤組成物を構成する主成分の樹脂及び粘着付与剤等の添加剤を含む不揮発分100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~9質量部がより好ましく、0.5~6質量部がさらに好ましい。
【0017】
(粘着付与剤)
さらに、粘着剤組成物は、粘着付与剤を含んでいてもよい。粘着付与剤としては、ロジン類、テルペン系樹脂、炭素数5の石油留分を重合した石油系樹脂及びこの水素添加樹脂、炭素数9の石油留分を重合した石油系樹脂及びこの水素添加樹脂、その他の石油系樹脂、クマロン樹脂並びにインデン樹脂等が挙げられる。具体的には、ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、トリエチレングリコールエステル、フェノール変性物及びそのエステル化物等のロジン類;テルペン重合体、テルペンフェノール、β-ピネン重合体、芳香族変性テルペン重合体、α-ピネン重合体、テルペン系水素添加樹脂等のテルペン系樹脂;炭素数5の石油留分を重合した石油系樹脂、炭素数9の石油留分を重合した石油系樹脂及びこれらの水素添加樹脂;マレイン酸変性物並びにフマル酸変性物等の石油系樹脂、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン-インデン樹脂、フェノール樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、変性ロジン、水添ロジン等)等が好ましい。
本発明の粘着剤組成物が粘着付与剤を含む場合、その含有量は、主成分の樹脂100質量部に対して、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0018】
(溶剤)
粘着剤組成物は、水系よりも有機溶媒系の溶媒を用いることが好ましい。これによって、低温での乾燥を早期に行うことができる。有機溶媒としては、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル;メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン;メタノ-ル、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール及びn-ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びプロピレングリコール等のグリコール系溶媒;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)及びブチルカルビトール等のセルソルブ系溶媒;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコール系溶媒及び;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。なかでも、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、MIBK等が好ましい。
本願の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、その含有量は、主成分の樹脂及び粘着付与剤を含む添加剤等を含む不揮発分100質量部に対して、70質量部以上が好ましく、100質量部~400質量部がより好ましく、200質量部~300質量部がさらに好ましい。
【0019】
(その他の成分)
本願の粘着剤組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で、種々の添加剤を配合することができる。例えば、粘着付与樹脂、酸化防止剤等の耐候安定剤、可塑剤、軟化材、染料、顔料、無機フィラー等の各種添加成分を含有させることができる。これらは、公知のもののいずれをも用いることができる。
【0020】
粘着剤組成物は、例えば、粘度が50mPa・s~10000mPa・sとすることが挙げられ、50mPa・s~5000mPa・sとすることが好ましく、50mPa・s~1000mPa・sとすることがより好ましい。このような粘度は、重合度、架橋剤及び溶剤等の添加剤の量等によって適宜調整することができる。使用する塗工機性能によって変化するが、使用時における粘着剤組成物の粘度もこのような範囲に設定することが好ましい。
【0021】
〔積層体〕
積層体は、熱収縮フィルムと不織布との間に粘着剤層を有して構成されている。なお、この積層体には、文字及び/又は絵等を表示するための印刷層が含まれていてもよいし、これらの他に印刷層が積層されていてもよい。印刷層は、熱収縮フィルムの不織布と接着される面の反対面、熱収縮フィルムと粘着剤層との間、粘着剤層と不織布との間、不織布の熱収縮フィルムと接着される面の反対面のいずれか又は2以上において、全面にわたって又は部分的に配置することができる。
【0022】
(粘着剤層)
粘着剤層は、上述した粘着剤組成物によって形成されている。粘着剤層の厚みは、例えば、20μm以下が挙げられ、2μm~10μmが好ましく、2μm~5μmがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、熱収縮フィルムと不織布とを強固に密着させることができるとともに、積層体が熱収縮する際においても、層間剥離を阻止することができる。また、例えば、この積層体によって、自動包装機を用いて、被包装体を包装する際に、積層体の熱溶断を容易にすることができ、包装材としての包装効率を確保又は向上させることができる。
【0023】
(熱収縮フィルム)
熱収縮フィルムは、加熱すると収縮するフィルムを指す。つまり、フィルムを、電子線照射で架橋してから又はすることなく、ガラス転移点以上、融点以下で延伸して分子配向を与え、熱処理を施し、常温では収縮せずに加熱によって収縮する特性を付与したフィルムである。熱収縮フィルムは、例えば、これを用いた積層体がラベル等の用途に用いられる場合、少なくとも一方向に熱収縮性を有するものであればよく、テンター延伸による一軸延伸方式を利用して熱収縮性を与えることが一般的である。また、包装材等の用途に用いられる場合、二軸方向に熱収縮性を有するもの好ましく、ロール延伸とテンター延伸とによる逐次二軸延伸方式を利用して熱収縮性を与えることが一般的である。また、収縮包装用フィルムとして、JIS Z 1709に規定されているものを用いてもよい。熱収縮フィルムは、公知のもののいずれをも用いることができる。
【0024】
熱収縮フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の単独の又は複数の熱可塑性樹脂を組み合わせてなるフィルムが挙げられる。なかでも、熱収縮フィルムは、積層体を自動包装機でシール及び/又は溶断をする場合、用いる樹脂の融点が170℃以下のオレフィン系樹脂が好ましい。これらは、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。熱収縮フィルムは、熱可塑性樹脂の他に、酸化防止剤、界面活性剤、孔形成剤等を含んでいてもよい。これらは、当該分野で公知のものを利用することができる。
熱収縮フィルムは、有色、無色、透明、半透明、不透明のいずれのフィルムであってもよい。なかでも、透明なフィルムが好ましい。
熱収縮フィルムの厚みは、例えば、10μm~100μmが挙げられ、10μm~50μmが好ましい。
【0025】
(不織布)
本願における不織布は、文字通り繊維を織らずに絡み合わせたシート状ものであり、繊維が一方向又はランダムに配向しており、交絡、融着及び/又は接着によって繊維間が結合されたものである。このような不織布は、JIS L 0222に準拠したものが挙げられる。不織布は、繊維の長さによっては短繊維不織布、長繊維不織布に大別される。なかでも、不織布の強度、糸抜け等の取り扱い上、短繊維不織布より長繊維不織布が好ましい。その製法は、繊維集積層を形成する工程と繊維間結合する工程を含む。繊維集積層形成工程としては、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等が挙げられる。繊維間結合工程としては、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法等の1又は2以上を組み合わせて利用することができる。なかでも、スパンボンド法で集積層を形成し、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等で1又は2以上組み合わせた繊維間結合工程を得て製造したものが好ましい。
不織布は、熱収縮フィルムが熱収縮する際に追随しなければ、層間剥離が発生する。
不織布の繊維の融点が熱収縮フィルムの収縮する温度とかけ離れると追随しにくい。このようなことから、不織布繊維の融点は、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
不織布は、ポリエステル、ポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィン、レーヨン紙、ナイロン、キュプラ等の繊維によって形成することができる。なかでも、ポリオレフィン系繊維を用いた不織布は、融点が170℃以下であるために好ましい。ポリオレフィン系繊維は、他種の樹脂を混合してもよく、他の樹脂と芯鞘構造を有してもよい。
【0026】
また、不織布は、硬い場合には、熱収縮フィルムの収縮に追随せず、層間剥離する。不織布の硬さは材質由来だけでなく、繊維間結合の程度、表面加工等によっても異なる。このようなことから、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等で繊維間結合することにより、不織布の面積に対して結合点の面積で、繊維間結合の程度をコントロールできるため、好ましい。サーマルボンド法は、不織布を、平滑性がある熱ロールでウェブをプレスしながら熱融着させるもの、オーブン内でウェブ中を高温の熱風が通過することで結合させるもの、エンボス模様がある熱ロールでウェブをプレスしながら熱融着させるものがある。ケミカルボンド法は、グラビア印刷のように版を用いて接着剤組成物の塗布面積をコントロールすることが可能である。特にサーマルボンドのエンボス加工はコントロールが容易であり、ニードルパンチ法と組み合わせて使用することが好ましい。不織布表面におけるエンボス加工面積は、光学顕微鏡で観察することができる。エンボス加工面積は、不織布シート表面の平面積に対して50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、38%以下がさらに好ましく、30%以下が特に好ましい。ここでのエンボス加工面積とは、サーマルボンドにおいて、不織布表面へ押圧を行った領域の総面積を指す。このような範囲である場合には、粘着剤組成物との密着性、特に、粘着剤層を介して熱収縮フィルムとの積層体とし、熱負荷により積層体を収縮させた場合の密着性が良好であることを確認している。
【0027】
市販されている不織布例としては、ツジトミ製リーファ、ユニチカ製エルベス、三井化学製シンテックス、東レ製リブセン等がある。
不織布の目付量としては、15g/m~200g/mのものが挙げられる。不織布の目付量が大きくなると厚みが増し、粘着剤組成物の厚みも増やす必要がある。また、不織布の熱伝導に時間がかかるので、熱収縮追随性を考慮すると、目付量は小さい方が有利である。また、粘着剤層の厚みを、工業的にコントロール可能な範囲とし、また、熱収縮性を考慮すると15g/m~120g/mが好ましい。
不織布の融点は、200℃以下のものが挙げられ、110℃~180℃が好ましく、120℃~170℃のものがより好ましい。この範囲とすることにより、積層体の製造時において、積層体を所定の大きさに切断することが容易となり、また、被包装体の包装時において、例えば、自動包装機を用いて被包装体を包装する際に、積層体の熱溶断を容易にすることができ、包装材としての包装効率を確保又は向上させることができる。さらに、被包装体の包装時において、溶融した不織布が熱収縮フィルムに追随して収縮し、不織布と熱収縮フィルムとの間の層間剥離及び積層体表面のしわの発生を効果的に防止することができる。
不織布の厚みは、50μm~600μmが挙げられ、50μm~400μmが好ましく、100μm~350μmがより好ましい。不織布の厚みはJIS L 1913記載の方法で測定することができる。
【0028】
(印刷層)
印刷層は、例えば、特開2007-76259号公報、特開平5-70739号公報、特開2005-70739号公報、特開2013-189718号公報等の意匠印刷層、装飾層の形成に使用されるインキ等のいずれを用いてもよい。
【0029】
〔積層体及び包装材料の製造方法〕
積層体は、粘着剤組成物を不織布又は熱収縮フィルムのいずれかに塗工して接着剤層を形成し、この接着剤層を介して不織布と熱収縮フィルムとを貼り合せることにより製造することができる。
積層体は、例えば、150℃にて10秒間の熱負荷により、少なくとも1方向に5%以上の収縮率を示すものが好ましく、少なくとも2方向にそれぞれ5%以上の収縮率を示すものが好ましい。ここでの収縮率(%)は、
によって表される。
【0030】
(接着剤組成物の塗工)
接着剤組成物は、アプリケーター、バーコーター等を用いて塗布量を調整しながら塗工してもよいし、一般的な塗工機、例えば、グラビアロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター等を用いて塗工してもよい。粘着剤組成物の塗工量は、粘着剤組成物の粘度、不織布の目付等によって、適宜調整することができる。粘着剤組成物は、熱収縮フィルム側に塗工することが好ましい。
粘着剤組成物を塗工した後、熱風乾燥機等を用いて、熱収縮フィルムの縮みが発生しない温度以下及び粘着剤組成物の溶媒が揮発し得る程度でなるべく低い温度、例えば、50℃以下の温度で、風量を調整しながら、粘着剤組成物を乾燥することが好ましい。乾燥時間は、粘着剤組成物の溶剤種、不揮発分濃度、塗工量、乾燥時の風量等によって適宜設定することができる。例えば、数秒から1時間が挙げられる。
【0031】
(熱収縮フィルムと不織布との貼り合わせ)
熱収縮フィルムと不織布との貼り合わせは、粘着剤層の乾燥工程を行った後、作業を簡便かつ容易に行うために、連続して行うことが好ましい。乾燥工程の後、一旦積層体の形成作業を止める場合には、表面に粘着剤層が形成された不織布又は熱収縮フィルムを巻き取るなどの作業を要し、また、この巻取りの際には、粘着剤層はその表面にタックが生じるため、離型紙等を挟む必要が生じるからである。さらに、粘着剤組成物に架橋剤を含有する場合には、粘着剤層の乾燥後、架橋剤の種類によって、架橋反応が進行し、被貼り合わせ物との初期密着力が低下することがあるからである。
熱収縮フィルムと不織布の貼り合わせは、熱収縮フィルムと不織布とを粘着剤層を介して重ね、ラミネーター又はハンドローラー等を用いて、加熱せずに行うことが好ましい。このように貼り合わせることにより、層間剥離及び積層体表面のしわを発生させることなく、不織布と熱収縮フィルムとを接着させることができる。あるいは、圧着機を用いて、熱収縮フィルムと不織布とを粘着剤層を介して重ねた多層状態で、ロール間に通すことにより圧着させることができる。圧着時には、熱収縮フィルムの収縮を防止するために、ロールをできるだけ低い温度に設定して行うことが好ましい。但し、冬場等で気温が低い場合には、粘着剤組成物の初期粘着力が低下するため、熱収縮フィルムが縮まない程度にロールを加温することが好ましい。
【0032】
熱収縮フィルムと不織布との貼り合わせをした後、粘着剤組成物を完全に硬化させるために、養生を実施することが好ましい。養生は、常温±20℃程度の温度で、数時間から数ヶ月行うことが好ましい。このような養生によって、粘着剤層の分子同士を十分に架橋させることができ、積層体の機械特性を高めることができる。
なお、包装材料として、得られた積層体に意匠を施す場合には、あらかじめ、意匠層を形成し、任意の位置に配置して、上記工程を行うことによって、意匠を施すことができる。また、積層体を形成した後に、任意の位置に意匠層を貼付、塗布等により配置してもよい。
また、包装材料として、種々の物品を包装する場合に、適当な大きさ、形状等に切断又は熱溶断等してもよいし、切断された包装材料を単独で又は2種以上組み合わせて、筒状、二次元又は三次元の袋状等、適当な形状に貼り合わせ、熱シール等の利用によって加工してもよい。ここでの切断又は熱溶断としては、溶断ヒータ、針金・ピアノ線状のヒータ等を用いる方法が挙げられる。熱シールは、熱板シーラ、インパルスシーラ、超音波シーラ、バンドシーラ、熱風シーラ、高周波シーラ、フレームシーラ等を利用して行うことができる。
【0033】
〔包装材料の使用方法〕
本願の包装材料は、被包装体として、箱物(化粧品籍、素麺等の木箱、和菓子、缶詰等の食品箱等、建材関係(化粧合板、ドア、アルミサッシ等)、割れ物(液晶ディスプレイ、ガラス板、酒及びワイン等のガラス瓶等)、各種部品(自動車部品、家電部品、精密機器部品等)、食品(果物、野菜、冷凍食品、ハム及びソーセージ等の加工食品)、長期保管物(海から引き上げた沈没船等)等の、種々の用途に使用することができる。
【0034】
被包装体への包装は、包装材料としての積層体を、被包装体の一部又は全に被覆した後、積層体を加熱することによって、積層体を収縮させ、被包装体に密着させることができる。この場合の加熱は、積層体を構成する材料によって適宜設定することができる。例えば、110℃以上が挙げられ、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。加熱時間は、例えば、1秒~数分間が挙げられる。加熱の方法は、熱風の吹きつけ、温水への浸漬又は塗布等、加熱スチームの吹き付け、赤外線照射等の公知の方法が挙げられる。
このような加熱によって、包装材料の表面において、皺のない外観、被包装体に対し可能な限り空隙を有しない又は被包装体に対して適度な余裕率を与えて密着させる等、良好な外観を付与することができる。
加熱によって、包装材料を収縮させた後、任意に被包装体を冷却してもよい。
【実施例
【0035】
〔粘着剤組成物の調製〕
(実施例1)
主剤CMX AC1002-S16(アクリル系粘着剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分25質量%、粘度100mPa・s)と架橋剤CMX KO1001-S17(TDI系ポリイソシアネート架橋剤 住化ケムテックス製試作品、不揮発分37.5質量%)とを不揮発分比:主剤/架橋剤=100/2で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度100mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-34℃、TIP:30質量%、融点なし)。
(実施例2)
主剤CMX AC1002-S16と架橋剤CMX KO1001-S17とを不揮発分比:主剤/架橋剤=100/3で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度100mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-34℃、TIP:47質量%、融点なし)。
(実施例3)
主剤CMX AD1001-S18(アクリル系粘着剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分25質量%、粘度660mPa・s)と架橋剤CMX KO1002-S18(TDI系ポリイソシアネート架橋剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分46質量%)とを不揮発分比:主剤/架橋剤=100/0.5で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度760mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-24℃、TIP:49質量%、融点なし)。
(実施例4)
主剤CMX AD1002-S17(アクリル系粘着剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分25質量%、粘度220mPa・s)と架橋剤CMX KO1003-S17(TDI系ポリイソシアネート架橋剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分46質量%)とを不揮発分比:主剤/架橋剤=100/1.5で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度240mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-30℃、TIP:47質量%、融点なし)。
(実施例5)
主剤CMX AD1003-S19(アクリル系粘着剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分25質量%、粘度420mPa・s)と架橋剤CMX KO1003-S17とを不揮発分比:主剤/架橋剤=100/1.2で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度460mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-40℃、TIP:48質量%、融点なし)。
(実施例6)
主剤CMX AD1001-S18と架橋剤CMX KO1002-S18とを不揮発分比:主剤/架橋剤=100/1で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度760mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-24℃、TIP:53質量%、融点なし)。
【0036】
(比較例1)
主剤CMX AC1002-S16のみで粘着剤組成物を調製した(乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-34℃、TIP:0質量%、融点なし)。
(比較例2)
主剤CMX AC1002-S16と架橋剤CMX KO1001-S17を不揮発分比:主剤/架橋剤=100/1で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度100mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-34℃、TIP:0質量%、融点なし)。
(比較例3)
主剤CMX AC1002-S16と架橋剤CMX KO1001-S17を不揮発分比:主剤/架橋剤=100/10で配合し、粘着剤組成物を得た(粘度100mPa・s、乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-34℃、TIP:55質量%、融点なし)。
(比較例4)
主剤CMX AB1002-S01(オレフィン系接着剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分5質量%、粘度70mPa・s)のみで粘着剤組成物を調製した(乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-9℃、TIP:0質量%、融点なし)。
(比較例5)
主剤CMX AB1003-S03(オレフィン系接着剤 住化ケムテックス製試作品 不揮発分17質量%、粘度40mPa・s)のみで粘着剤組成物を調製した(乾燥硬化した粘着剤組成物のTg:-28℃、TIP:0質量%、融点71℃)。
【0037】
実施例1~6及び比較例1~5におけるTg、TIP及び融点は、以下の方法で測定した。
(DSCによるTg及び融点測定)
実施例1~6及び比較例1~5の粘着剤組成物を離型紙上で乾固させ、40℃で3日間養生したものを測定サンプルとした。測定サンプル8~10mgをDSC測定用アルミパンに量り取り、DSC7020(日立製作所製)にて測定した。温度プログラムは20℃からスタートし、30℃/minで200℃まで昇温→5分間保持→-10℃/minで-60℃まで冷却→5分間保持→10℃/minで200℃まで昇温→5分間保持→終了とした。測定結果の2nd run(2回目の昇温)時のデータを用いてJIS K 7121の方法を用いて、Tgと融点とを測定した。融点については、融解ピークが観察されるか否か、またそれが観測された場合は、そのピーク面積、すなわち結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークの頂点を融点とした。
(トルエン不溶分(TIP)の測定)
実施例1~6及び比較例1~5の粘着剤組成物を離型紙上で乾固させ、40℃で3日間養生したものを測定用サンプルとした。測定サンプル0.5g(1)(有効桁数4桁)とトルエン100ml(メスシリンダーで計量)を150mlサンプル瓶に量り取り、十分に蓋を閉めた状態で80℃にて3時間加温した。加温の際にサンプル瓶を30分毎に円を描くように10回振り混ぜた。その後、常温に冷却し、#300メッシュの金網で溶出液を濾過して金網に残った不溶物を乾固させた。#300メッシュの金網の試験前後の質量差より不溶物の質量(2)を算出し、以下の式により算出した。
トルエン不溶分(質量%)=(不溶物の質量/測定用サンプルの質量)×100
【0038】
〔積層体Aの製造〕
熱収縮性フィルム(ベリカ製、製品名ベリーシュリンク、オレフィン素材、厚み19μm)に、実施例1~6及び比較例1~5で調製した粘着剤組成物をバーコーターで塗工し、50℃で2分間乾燥した(乾燥後の粘着剤層の厚み:2μm~4μm。この厚みは粘着剤塗布量の密度換算により求めた)。
粘着剤層の塗工面に、ポリプロピレン不織布(株式会社ツジトミ製、製品名リーファLP0152D、目付量:15g/m、融点:165℃)又は三井化学株式会社製、製品名シンテックスPS-103、目付量:16g/m、融点:165℃)を貼り合わせ、ハンドローラーで仮圧着した。その後、ラミネーター(VA-700、太平ラミネーター株式会社製)でローラー温度を室温下で、ローラー圧力を0.2MPa、送り出し速度を1m/minで圧着した。表1に接着性としてラミネーターで圧着して結果、接着したものを〇、接着しなかったものを×として表した。
貼り合わせた後、40℃で3日間養生して、包装材料としての積層体Aを得た。
なお、比較例4~5の粘着剤組成物を用いたものは、ラミネーターで圧着したが、熱収縮性フィルムと不織布とが接着しなかった。
【0039】
(積層体Aの収縮試験)
得られた積層体Aを、12cm四方に切り出し、12cm四方のアルミフレームに角4点固定した状態で150℃にて5秒間加熱することにより収縮させた。その際、不織布と熱収縮フィルムとの間で剥離が発生するかどうかを目視により確認した。
その結果を以下の表に示す。表1において、不織布と熱収縮フィルムとの間で剥離が全く観察されなかったものを○、わずかでも観察されたものを×として表した。
なお、実施例1~6で調製した粘着剤組成物を用いた積層体Aについて、別途上記と同様のサンプルを切り出し、アルミフレームに固定せずに150℃にて10秒間の熱負荷した場合、互いに垂直に交わる縦横方向に5%以上収縮することを確認した。
(溶断試験)
得られた積層体Aについて、自動シュリンク包装機(HP-10Z型)で溶断試験を行った。
2枚の積層体Aの熱収縮フィルム同士を重ねた状態で包装機のシール部にセットし、シール温度200℃、ゲージ圧力0.5MPa、圧着時間1秒で溶断し、溶断部を確認した。
その結果を以下の表に示す。表1において、溶断が可能であったものを二重丸、一部溶断に不良があったものの実用においては問題ないと判断できたものを○、溶断ができなかったものを×として表した。
【0040】
【表1】
:不織布がポリプロピレン不織布(株式会社ツジトミ製、製品名リーファLP0152D、目付量:15g/m、融点:165℃)
**:不織布がポリプロピレン不織布(三井化学株式会社製、製品名シンテックスPS-103、目付量:16g/m、融点:165℃)
【産業上の利用可能性】
【0041】
本願の粘着剤組成物及びこれを用いた積層体は、種々の包装材料等に好適に利用することができる。