(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】立体格納装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
E04H6/18 608C
(21)【出願番号】P 2018225112
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】田内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】大庭 央久
(72)【発明者】
【氏名】西森 裕伸
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-071236(JP,A)
【文献】特開平11-022235(JP,A)
【文献】特開平07-127301(JP,A)
【文献】特開平07-082927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に固定され、上下方向に延びる第1地下柱および第2地下柱と、
前記第1地下柱および前記第2地下柱の上方に設けられ、前記第1地下柱および前記第2地下柱に支持された支持構造体と、
前記支持構造体に取り付けられた駆動装置と、
前記駆動装置に接続されたワイヤーと、
前記ワイヤーに接続された昇降フレームと、
を備え、前記駆動装置が前記ワイヤーを巻き取りまたは繰り出すことで、前記昇降フレームが上下動する立体格納装置であって、
前記支持構造体は、前記第1地下柱から上方に延びる第1主柱部と、前記第2地下柱から上方に延びる第2主柱部と、前記駆動装置を支持する第1取付梁および第2取付梁と、を有し、
前記第1取付梁および前記第2取付梁の両端部は、前記第1主柱部および前記第2主柱部によって支持され、
前記第1地下柱と前記第2地下柱とが対向する方向を対向方向とし、
前記対向方向および前記上下方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、
前記第1取付梁および前記第2取付梁は、前記直交方向において間隔を空けて配置され、
前記駆動装置の少なくとも一部が、前記第1取付梁と前記第2取付梁との間に位置し、
前記第1主柱部および前記第2主柱部はそれぞれ、前記直交方向に分岐した分岐部を有し、
前記第1取付梁および前記第2取付梁の一端部は、前記第1主柱部の前記分岐部にそれぞれ接続され、
前記第1取付梁および前記第2取付梁の他端部は、前記第2主柱部の前記分岐部にそれぞれ接続されている、立体格納装置。
【請求項2】
前記支持構造体に、建屋の壁部もしくは屋根部を支持する建屋フレームが含まれている、請求項
1に記載の立体格納装置。
【請求項3】
前記ワイヤーの延びる方向を変換させる第1シーブおよび第2シーブをさらに備え
、
前記第1主柱部における
前記分岐部同士の間に前記第1シーブが配置され、前記第2主柱部における
前記分岐部同士の間に前記第2シーブが配置されている、請求項
1または2に記載の立体格納装置。
【請求項4】
前記駆動装置を覆うカバーが、前記支持構造体に着脱可能に取り付けられている、請求項1から
3のいずれか1項に記載の立体格納装置。
【請求項5】
2つの前記駆動装置を備え
、
一方の前記駆動装置が前記第1主柱部によって下方から支持され、他方の前記駆動装置が前記第2主柱部によって下方から支持されている、請求項1から
4のいずれか1項に記載の立体格納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示されるような立体格納装置が知られている。この立体格納装置は、地上に設けられた建屋と、地下に設けられた格納空間と、を備えている。搬器の駆動装置は、地下に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、駆動装置を地下に設けた場合、駆動装置の設置作業が複雑になり、コストの増大などにつながっていた。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、駆動装置の設置作業を簡略化できる立体格納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る立体格納装置は、地面に固定され、上下方向に延びる第1地下柱および第2地下柱と、前記第1地下柱および前記第2地下柱の上方に設けられ、前記第1地下柱および前記第2地下柱に支持された支持構造体と、前記支持構造体に取り付けられた駆動装置と、を備える。
【0007】
上記態様によれば、駆動装置を地上に設けることができる。これにより、駆動装置の設置作業を簡略化することができる。また、駆動装置を地上に設けることで、ワイヤーの掛け回しをシンプルにして、ワイヤーを長寿命化させることもできる。さらに、地上では主柱部が位置する部分を除いて出入口を設けることが可能となり、出入口の設置可能範囲を大きくすることができる。
【0008】
ここで、前記支持構造体は、前記第1地下柱から上方に延びる第1主柱部と、前記第2地下柱から上方に延びる第2主柱部と、前記駆動装置を支持する第1取付梁および第2取付梁と、を有し、前記第1取付梁および前記第2取付梁の両端部は、前記第1主柱部および前記第2主柱部によって支持されていてもよい。
【0009】
この場合、駆動装置やシーブに作用する荷重を、取付梁および主柱部を介して地下柱に伝え、地下柱によって受け止めることができる。
【0010】
また、前記第1地下柱と前記第2地下柱とが対向する方向を対向方向とし、前記対向方向および前記上下方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、前記第1取付梁および前記第2取付梁は、前記直交方向において間隔を空けて配置され、前記駆動装置の少なくとも一部が、前記第1取付梁と前記第2取付梁との間に位置していてもよい。
【0011】
この場合、例えば駆動装置の全体を第1取付梁および第2取付梁の上方に載置する場合と比較して、駆動装置の上下方向における位置を低くすることができる。したがって、立体格納装置をよりコンパクトにすることができる。
【0012】
また、前記支持構造体に、建屋の壁部もしくは屋根部を支持する建屋フレームが含まれていてもよい。
【0013】
この場合、建屋のフレームを別途設ける場合と比較して、建屋の建築工程をより簡略化することができる。
【0014】
また、上記態様に係る立体格納装置は、前記駆動装置に接続されたワイヤーの延びる方向を変換させる第1シーブおよび第2シーブをさらに備え、前記第1主柱部および前記第2主柱部はそれぞれ、前記直交方向に分岐した分岐部を有し、前記第1主柱部における分岐部同士の間に前記第1シーブが配置され、前記第2主柱部における分岐部同士の間に前記第2シーブが配置されていてもよい。
【0015】
この場合、第1主柱部の分岐部同士の間および第2主柱部の分岐部同士の間にワイヤーを通すことが可能となり、第1シーブおよび第2シーブに作用する下向きの荷重を、より直接的に地下柱に伝えることができる。さらに、シーブを分岐部同士の間に配置することで、シーブの上下方向における位置が低くなり、立体格納装置をよりコンパクトにすることができる。
【0016】
また、前記駆動装置を覆うカバーが、前記支持構造体に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0017】
この場合、駆動装置のメンテナンスを行う際に、カバーを上方移動させたり取り外したりすることで、駆動装置に上方からアクセス可能となる。したがって、メンテナンスを行うための空間(機械室等)を建屋に設ける必要がなくなり、立体格納装置をよりコンパクトにすることができる。
【0018】
また、上記態様に係る立体格納装置は、2つの前記駆動装置を備え、前記支持構造体は、前記第1地下柱から上方に延びる第1主柱部と、前記第2地下柱から上方に延びる第2主柱部と、を有し、一方の前記駆動装置が前記第1主柱部によって下方から支持され、他方の前記駆動装置が前記第2主柱部によって下方から支持されていてもよい。
【0019】
この場合、取付梁を無くしたり、取付梁を軽量化したりすることができる。さらに、駆動装置から昇降フレームに向けて、ワイヤーを直接垂下させることが可能となり、シーブを省略して部品点数を削減することもできる。特に、シーブのように大きな荷重が作用する部材を削減することで、メンテナンスの簡略化を図ることも可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記態様によれば、駆動装置の設置作業を簡略化できる立体格納装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る立体格納装置の透視斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る支持構造体の斜視図である。
【
図7】本実施形態の支持構造体および格納台の配置を示す平面図である。
【
図8】本実施形態に係る立体格納装置の施工方法を説明する図である。
【
図10】(a)は
図1の建屋の斜視図である。(b)は、(a)の建屋からカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図11】本実施形態の第1の変形例に係る支持構造体の側面図である。
【
図12】本実施形態の第2の変形例に係る支持構造体の平面図である。
【
図13】本実施形態の第3の変形例に係る支持構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態の立体格納装置について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の立体格納装置1は、地下の格納空間および地上の建屋6を有している。地下の格納空間には、複数の格納台Pが配置されている。
図1では、立体格納装置1は自動車を格納可能な地下駐車場であるが、格納する対象は適宜変更可能である。例えば、自転車を格納可能な地下駐輪場を立体格納装置1として採用してもよい。以下、格納される対象物を「車両等」という。
【0023】
建屋6は、壁部6aと、出入口6bと、操作パネル6cと、カバー6dと、サイドカバー6eと、を有している。壁部6aは略円筒状に形成されている。出入口6bは壁部6aに設けられている。なお、複数の出入口6bが建屋6に設けられていてもよい。操作パネル6cは、壁部6aに設けられている。操作パネル6cは、不図示の制御部に電気的に接続されている。カバー6dは、駆動装置3(後述)を上方から覆っている。サイドカバー6eは、支持構造体10の主柱部13、14(後述)を上方から覆っている。なお、操作パネル6cは建屋6から独立して設けられていてもよい。
【0024】
図2に示すように、立体格納装置1は、一対の地下柱2A、2Bと、一対の昇降レール7A、7Bと、昇降フレーム9aと、を備えている。操作パネル6cを操作することで、昇降フレーム9aが昇降レール7A、7Bに沿って昇降する。これにより、格納空間に格納されている車両等を建屋6内に引き上げたり、建屋6内の車両などを地下空間内に格納したりすることができる。
【0025】
(方向定義)
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。X軸方向は、一対の地下柱2A、2Bが対向する方向である。Z軸方向は上下方向である。Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交する方向である。
本明細書では、X軸方向を対向方向Xといい、Y軸方向を直交方向Yといい、Z軸方向を上下方向Zという。また、対向方向Xにおける一方側を+X側、他方側を-X側という。直交方向Yにおける一方側を+Y側、他方側を-Y側という。また、上下方向Zにおける一方側(+Z側)を上方、他方側(-Z側)を下方という。上下方向Zから見ることを平面視という。
【0026】
一対の地下柱2A、2Bは、上下方向Zに延びるとともに、地面に固定されている。地下柱2A、2Bの少なくとも一部は、地中に位置している。地下柱2A、2Bの全体が地中に位置していてもよいし、地下柱2A、2Bの上端部が地上に位置していてもよい。地下柱2A、2Bを地面に固定する方法は、適宜選択可能である。例えば、地下柱2A、2Bの下端部を、地下に埋設された基礎Kに固定してもよい。固定の方法としては、例えば地下柱2A、2Bを基礎Kにボルトによって締結してもよいし、地下柱2A、2Bの下端部を基礎Kに埋設してもよい。あるいは、地下柱2A、2Bの一部を地面に貫入することで、地下柱2A、2Bを固定してもよい。
【0027】
建屋6の内部には、
図3に示す支持構造体10が収容されている。支持構造体10は、地上に位置している。支持構造体10は、一対の取付梁11、12と、一対の主柱部13、14と、建屋フレーム15と、補強フレーム16a~16cと、を有している。支持構造体10の各部は、溶接などにより一体化されていてもよいし、ボルトなどによって互いに固定されていてもよい。
【0028】
支持構造体10は、駆動装置3およびシーブ5A、5Bを支持している。本実施形態の駆動装置3は、ドラム3aおよびモータ3bを有する巻上ウィンチである。ドラム3aにはワイヤーWが巻き付けられている。ワイヤーWは、ドラム3aからシーブ5Aまたはシーブ5Bを経由して、昇降フレーム9aに接続されている(
図6参照)。昇降フレーム9a上に、ターンテーブル9bが設けられている。シーブ5A、5Bは、ワイヤーWが延びる方向を対向方向Xから上下方向Zへと変換させている。
【0029】
図3に示すように、第1主柱部13は、第1地下柱2Aから上方に向けて延びている。第1主柱部13は、第1分岐部13aと第2分岐部13bとを有している。第1分岐部13aおよび第2分岐部13bの下端部同士は近接若しくは一体化しており、第1地下柱2Aの上端部に接続されている。第1分岐部13aと第2分岐部13bとの間の直交方向Yにおける間隔は、上方に向かうに従って、漸次大きくなっている。第1分岐部13aおよび第2分岐部13bは、上方に向かうに従って、漸次-X側に向かうように傾斜している。第1分岐部13aの上端部と第2分岐部13bの上端部との間に、第1シーブ5Aが配置されている。
【0030】
第2主柱部14は、第2地下柱2Bから上方に向けて延びている。
図4に示すように、第2主柱部14は、第1分岐部14aと第2分岐部14bとを有している。第1分岐部14aおよび第2分岐部14bの下端部同士は近接若しくは一体化しており、第2地下柱2Bの上端部に接続されている。第1分岐部14aと第2分岐部14bとの間の直交方向Yにおける間隔は、上方に向かうに従って、漸次大きくなっている。第1分岐部14aおよび第2分岐部14bは、上方に向かうに従って、漸次+X側に向かうように傾斜している。第1分岐部14aの上端部と第2分岐部14bの上端部との間に、第2シーブ5Bが配置されている。
【0031】
第1取付梁11は、第1主柱部13の第1分岐部13aの上端部と、第2主柱部14の第1分岐部14aの上端部との間に設けられている。第2取付梁12は、第1主柱部13の第2分岐部14bの上端部と、第2主柱部14の第2分岐部14bの上端部と、の間に設けられている。第1取付梁11および第2取付梁12は、直交方向Yにおいて間隔を空けて配置されている。第1取付梁11および第2取付梁12の上下方向Zにおける位置は異なっていてもよい。第1取付梁11および第2取付梁12は、駆動装置3を支持している。
【0032】
第1取付梁11の中間部11aは、対向方向Xに沿って延びている。第1取付梁11の第1端部11bは、中間部11aと第1主柱部13の第1分岐部13aとの間を接続している。第1端部11bは、+X側に向かうに従って、漸次+Y側に向かうように延びている。第1取付梁11の第2端部11cは、中間部11aと第2主柱部14の第1分岐部14aとの間を接続している。第2端部11cは、-X側に向かうに従って、漸次+Y側に向かうように延びている。
【0033】
第2取付梁12の中間部12aは、対向方向Xに沿って延びている。第2取付梁12の第1端部12bは、中間部12aと第1主柱部13の第2分岐部13bとの間を接続している。第1端部12bは、+X側に向かうに従って、漸次-Y側に向かうように延びている。第2取付梁12の第2端部12cは、中間部12aと第2主柱部14の第2分岐部14bとの間を接続している。第2端部12cは、-X側に向かうに従って、漸次-Y側に向かうように延びている。
【0034】
取付梁11、12の中間部11a、12a同士は、略平行となっている。取付梁11、12の+X側の端部11b、12b同士は、+X側に向かうに従って漸次近づいている。平面視において、取付梁11、12の-X側の端部11c、12c同士は、-X側に向かうに従って漸次近づいている。以上の構成により、第1取付梁11と第2取付梁12との間の直交方向Yにおける間隔は、主柱部13、14から離れるに従って、漸次大きくなっている。支持構造体10の対向方向Xにおける中央部(中間部11a、12a同士の間の部分)において、第1取付梁11と第2取付梁12との間の直交方向Yにおける間隔が最も大きくなる。
【0035】
上下方向Zにおいて、駆動装置3の一部は、第1取付梁11の中間部11aと、第2取付梁12の中間部12aとの間に位置している。なお、駆動装置3の全体が第1取付梁11と第2取付梁12との間に位置していてもよい。
図4に示すように、平面視において、駆動装置3(ドラム3aおよびモータ3b)の全体が第1取付梁11と第2取付梁12との間に位置している。
【0036】
建屋フレーム15は、平面視で円弧状に形成されており、取付梁11、12に接続されている。建屋フレーム15は、建屋6の壁部6aを支持する。補強フレーム16aは、建屋フレーム15と第2取付梁12とを接続している。補強フレーム16b、16cは、建屋フレーム15と第1取付梁11とを接続している。補強フレーム16a~16cは、直交方向Yに沿って延びている。補強フレーム16a~16cにより、建屋フレーム15の強度が高められている。なお、建屋フレーム15は主柱部13、14に接続されていてもよい。なお、建屋フレーム15の形状は適宜変更可能である。例えば、平面視で多角形状の建屋フレーム15を採用してもよい。
【0037】
図5は、
図4のV方向から支持構造体10の一部を見た側面図である。
図5に示すように、地盤面GLの下側(地中)において、第1地下柱2Aには地下梁20が接続されている。図示は省略するが、第2地下柱2Bにも地下梁20が接続されている。
【0038】
図6に示すように、カバー6dは、駆動装置3およびシーブ5A、5Bを上方から覆っている。カバー6dは、支持構造体10に対して着脱可能に取り付けられている。本明細書において「着脱可能」とは、カバー6dを除去および再度取付可能である場合に加えて、カバー6dが昇降可能となっている場合も含む。カバー6dの支持構造体10への取付方法(固定方法)は、ボルトによる締結や、テコやクサビなどを利用したハンドルによる締め付けなどを採用できる。
【0039】
カバー6dを除去する際には、クレーンなどを用いて、カバー6dを吊り上げてもよい。カバー6dを昇降可能にする構成としては、カバー6dを昇降させるための昇降機構(油圧シリンダーなど)を、カバー6dの下方に設ける構成が挙げられる。この場合、昇降機構を支持構造体10に取り付けてもよい。
なお、カバー6dを着脱可能とするための構成は、上記に限られず、適宜変更してもよい。
【0040】
図7は、支持構造体10および地下の格納空間のレイアウトの一例を示す平面図である。
図7に示すように、隣り合う格納台P同士の間に地下柱2A、2Bを配置することで、格納台Pの設置スペースを大きくすることができる。
また、本実施形態では、主柱部13、14を除く部分(角度θの範囲)に出入口6bを設けることが可能である。
【0041】
次に、立体格納装置1の施工方法の一例を説明する。
図8、
図9は、本実施形態の立体格納装置1の施工方法を示す図である。立体格納装置1を建設するには、まず
図8に示すように、複数の杭を並べて地中に打設することで、地上から地下にかけて筒状の躯体100を形成する(打設工程)。杭の打設には圧入装置200を用いることができる。特に、既設杭上をクランプ装置でクランプすることで、既設杭から圧入のための反力を得て新たな杭を圧入するとともに、既設杭上を移動する圧入装置200が好適である。圧入装置200を、円形の軌跡を描くように移動させながら、順次杭を並べて打設することで、杭を壁面とする円筒状の躯体100が形成される。
【0042】
躯体100を構成する杭としては、U形鋼矢板、ハット型鋼矢板、Z型鋼矢板、H型鋼、鋼管矢板、鋼管杭、コンクリート杭などを選択することができる。また、隣り合う杭同士の間に、止水材を介在させてもよい。例えば、鋼矢板の継ぎ手部分に、止水材としてパッキンを設けることで、鋼矢板同士の間の隙間から水や土砂などが躯体100の内側に漏れることを抑制できる。
【0043】
躯体100が形成された後、
図9に示すように、躯体100の内部を掘削する(掘削工程)。躯体100の内部の土砂を取り除いた後、躯体100の底部に鉄筋を配置してコンクリートを流し込むことなどにより、基礎Kを形成する。必要に応じて、基礎Kに地下柱2A、2Bの下端部を埋設してもよいし、地下柱2A、2Bの下端部を基礎Kにボルトなどで固定してもよい。基礎Kの上に、立体格納装置1の構成部材を配置していくことで、立体格納装置1を施工することができる。
【0044】
なお、上記の例では杭を地中に圧入することで躯体100を形成したが、他の工法を採用してもよい。例えば、地中を円柱状に掘削し、掘削により形成された空洞の内壁を覆うように、壁面部材を配置してもよい。この場合、壁面部材としては、平面視で円弧状に湾曲した鉄板などを用いることができる。複数の湾曲した壁面部材を、上下方向Zおよび空洞の周方向に順次並べて配置することで、円筒状の躯体100を形成することができる。なお、躯体100の形状は多角柱状であってもよい。
【0045】
次に、以上のように構成された立体格納装置1の作用について説明する。
【0046】
図6に示すように、昇降フレーム9aには昇降ガイド8A、8Bが取り付けられている。昇降ガイド8A,8Bは、上下方向Zに延びる昇降レール7A、7Bに沿って上下動する。なお、昇降レール7A,7Bは、地下柱2A、2Bにそれぞれ取り付けられていてもよいし、他の構造物に取り付けられていてもよい。モータ3bが作動してドラム3aが回転すると、ワイヤーWがドラム3aに巻かれたり、ドラム3aに巻かれたワイヤーWが繰り出されたりする。この動作によって、昇降フレーム9aが上下動する。このとき、シーブ5A、5Bには下向きの力が作用するが、この力は主柱部13、14によって地下柱2A、2Bへと伝えられる。地下柱2A、2Bは地面に固定されているため、この荷重を安定して受けることができる。
【0047】
ここで、本実施形態の立体格納装置1は、地面に固定されて上下方向Zに延びる地下柱2A、2Bと、地下柱2A、2Bの上方に設けられて地下柱2A、2Bに支持された支持構造体10と、支持構造体10に取り付けられた駆動装置3と、を備えている。この構成により、駆動装置3を地上に設けることが可能となり、駆動装置3の設置作業を簡略化することができる。また、駆動装置3を地上に設けることで、ワイヤーWの掛け回しをシンプルにして、ワイヤーWを長寿命化させることもできる。さらに、地上では主柱部13,14が位置する部分を除いて出入口6bを設けることが可能となり、出入口6bの設置可能範囲を大きくすることができる。具体的には、
図7に示す角度θの範囲内で、出入口6bを接地することができる。
【0048】
また、支持構造体10は、地下柱2A、2Bから上方に延びる一対の主柱部13、14と、駆動装置3を支持する取付梁11、12と、を有しており、取付梁11、12の両端部は主柱部13、14によって支持されている。この構成により、駆動装置3やシーブ5A、5Bに作用する荷重を、主柱部13、14を介して地下柱2A、2Bに伝え、地下柱2A、2Bによって受け止めることができる。
【0049】
また、支持構造体10は、直交方向Yにおいて間隔を空けて配置された一対の取付梁11、12を有し、駆動装置3の少なくとも一部が、一対の取付梁11、12の間に位置している。この構成により、駆動装置3の上下方向Zにおける位置を低くして、立体格納装置1をよりコンパクトにすることができる。
【0050】
また、支持構造体10には、建屋6の壁部6aを支持する建屋フレーム15が含まれている。これにより、建屋6のフレームを別途設ける場合と比較して、建屋6の建築工程をより簡略化することができる。なお、本実施形態の建屋フレーム15は壁部6aを支持しているが、例えば建屋6の屋根部や、その他の部分を建屋フレーム15によって支持してもよい。
【0051】
また、駆動装置3を覆うカバー6dが、支持構造体10に着脱可能に取り付けられている。この構成により、駆動装置3のメンテナンスを行う際に、
図10(a)、(b)に示すようにカバー6dを上方移動させたり取り外したりすることで、駆動装置3等に上方からアクセス可能となる。したがって、メンテナンスを行うための空間(機械室等)を設ける必要がなくなり、立体格納装置1をよりコンパクトにすることができる。
【0052】
また、
図4に示すように、第1主柱部13および第2主柱部14はそれぞれ、直交方向Yに分岐した分岐部13a、13b、14a、14bを有している。そして、第1主柱部13の分岐部13a、13b同士の間に第1シーブ5Aが配置され、第2主柱部14の分岐部14a、14b同士の間に第2シーブ5Bが配置されている。この構成により、分岐部13a、13b同士の間および分岐部14a、14b同士の間にワイヤーWを通すことが可能となり、シーブ5A、5Bに作用する下向きの荷重をより直接的に地下柱2A、2Bに伝えることができる。さらに、シーブ5A、5Bを分岐部13a、13b同士の間または分岐部14a、14b同士の間に配置することで、シーブ5A、5Bの上下方向Zにおける位置が低くなり、立体格納装置1をよりコンパクトにすることができる。
【0053】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
例えば、
図11に示すように、第1主柱部13が分岐部13a、13bに加えて、平行柱部13c、13dを有していてもよい。
図11では、第1平行柱部13dと第2平行柱部13cとが上下方向に沿って互いに平行に延びている。また、第1平行柱部13dは第1分岐部13aから上方に延びており、第2平行柱部13cは第2分岐部13bから上方に延びている。第1分岐部13aと第1平行柱部13dとの接続部、および第2分岐部13bと第2平行柱部13cとの接続部には、地下梁20が接続されている。平行柱部13c、13dの下端部は地盤面GLの下側(地中)に位置している。分岐部13a、13bおよび地下梁20は地盤面GLの下側(地中)に位置している。このような構成でも、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、図示は省略するが、第2主柱部14も上記第1主柱部13と同様に、第1平行柱部、第2平行柱部、第1分岐部、第2分岐部を有していてもよい。
【0055】
また、
図12に示すように、立体格納装置1は2つの駆動装置3を備えていてもよい。さらに、一方の駆動装置3が第1主柱部13によって下方から支持され、他方の駆動装置3が第2主柱部14によって下方から支持されていてもよい。この場合、取付梁11、12を無くしたり、取付梁11、12を軽量化したりすることができる。さらに、駆動装置3から昇降フレーム9aに向けて、ワイヤーWを直接垂下させることが可能となり、シーブ5A、5Bを省略して部品点数を削減することもできる。特に、シーブ5A、5Bのように大きな荷重が作用する部材を削減することで、メンテナンスの簡略化を図ることも可能である。
【0056】
また、
図13に示すように、複数(2本)の第1地下柱2Aを対向方向Xで並べて配置し、複数の第1地下柱2Aによって第1主柱部13を支持してもよい。同様に、複数(2本)の第2地下柱2Bを対向方向Xで並べて配置し、複数の第2地下柱2Bによって第2主柱部14を支持してもよい。この場合、複数の第1地下柱2A、第2地下柱2Bによって、支持構造体10をより安定して支持することができる。さらに、例えば複数の地下柱2A、2Bを直交方向Yで並べて配置する場合には、これらの地下柱2A、2Bがスペースを占有してしまい、格納台P(
図7参照)の配置の自由度が小さくなる。これに対して、複数の地下柱2A、2Bを対向方向Xで並べて配置することで、格納台Pの配置の自由度を高めることができる。
【0057】
また、前記実施形態では主柱部13、14が直交方向Yに分岐していたが、このように分岐していない主柱部13、14を採用してもよい。この場合でも、取付梁11、12の両端部を主柱部13、14の上端部に接続することで、駆動装置3の荷重などを支持することができる。
【0058】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…立体格納装置 2A…第1地下柱 2B…第2地下柱 3…駆動装置 6…建屋 6a…壁部 6d…カバー 10…支持構造体 11…第1取付梁 12…第2取付梁 13…第1主柱部 13a、13b…分岐部 14…第2主柱部 14a、14b…分岐部 15…建屋フレーム X…対向方向 Y…直交方向 Z…上下方向