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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/72 20060101AFI20230124BHJP
   B29C 35/16 20060101ALI20230124BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
B29D30/72
B29C35/16
B29L30:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018233658
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020093476
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴弘
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078342(JP,A)
【文献】特開2003-340935(JP,A)
【文献】特表2014-522757(JP,A)
【文献】特開2005-349587(JP,A)
【文献】特開2015-100925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/72
B29C 35/16
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤケースのサイド部に、ストリップゴムを螺旋状に巻き付けてサイドウォール部を形成することによりグリーンタイヤを完成するサイドウォール部形成工程と、
前記グリーンタイヤを、前記サイドウォール部が設定温度範囲内となるように冷却する冷却工程と、を含む空気入りタイヤの製造方法であって、
前記グリーンタイヤは、前記サイドウォール部形成工程の後、内周面を保持されて、タイヤ軸心を水平方向に向けた姿勢で前記タイヤ軸心周りに回転しながら、前記グリーンタイヤの全体を覆う冷却室に搬送されて、前記冷却工程が行われる、
空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記冷却室は、前記グリーンタイヤの搬送経路に対して接離可能な少なくとも2つの冷却室構成部により構成される、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記設定温度範囲は、20℃以下である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記設定温度範囲は、15℃以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記グリーンタイヤの搬送は、前記サイドウォール部と非接触状態で行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リボン工法によりサイドウォール部を形成する際、冷却しながらリボン(サイドウォールゴム)を巻き付けてグリーンタイヤを完成するようにした空気入りタイヤの製造方法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の方法では、サイドウォール部が十分に冷却されないことがある。このため、グリーンタイヤの搬送時、サイドウォール部が搬送経路のいずれかの部材に当接していると、変形することがある。この変形は、加硫成型時の成型不良の原因となる。この場合、カーカスプライの枚数を増やしたり、その巻き上げ高さを高くしたりしてグリーンタイヤの剛性を高めることも考えられるが、コストアップを招来してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-349587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、グリーンタイヤの変形を抑制して加硫成型時の成型不良の発生を防止できる空気入りタイヤの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、タイヤケースのサイド部に、ストリップゴムを螺旋状に巻き付けてサイドウォール部を形成することによりグリーンタイヤを完成するサイドウォール部形成工程と、を含む空気入りタイヤの製造方法であって、前記グリーンタイヤは、前記サイドウォール部形成工程の後、内周面を保持されて、タイヤ軸心を水平方向に向けた姿勢で前記タイヤ軸心周りに回転しながら、前記グリーンタイヤの全体を覆う冷却室に搬送されて、前記冷却工程が行われる、前記グリーンタイヤを、前記サイドウォール部が設定温度範囲内となるように冷却する冷却工程と、を含む空気入りタイヤの製造方法を提供する。
【0007】
この方法によれば、サイドウォール部を設定温度範囲に冷却することで、グリーンタイヤが搬送途中で変形することを防止できる。したがって、グリーンタイヤを加硫成型する際、芯ずれを防止し、ベア、ビードピンチ等の成型不良の発生を抑制できる。また、グリーンタイヤの内周面が保持されることにより、サイドウォールの非接触状態が保たれる。さらに、グリーンタイヤの全体を覆う冷却室で冷却工程が行われることにより、サイドウォールが冷却されて、剛性が高まる。さらに、グリーンタイヤを回転させることにより、グリーンタイヤの一部が常に下方側に位置することがなくなる。
【0008】
前記冷却工程は冷却室内で行うのが好ましい。
【0009】
この方法によれば、グリーンタイヤを冷却室内に搬入するだけで冷却できる。
【0010】
前記冷却室は、前記グリーンタイヤの搬送経路に対して接離可能な少なくとも2つの冷却室構成部により構成されるのが好ましい。
【0011】
この方法によれば、既存の搬送経路に対して冷却室構成部を接近させて冷却室を形成できる。このため、既存の搬送経路に対して特別な構成を追加することなく冷却室を提供できる。
【0012】
前記設定温度範囲は、20℃以下であるのが好ましい。
【0013】
この方法によれば、グリーンタイヤを横向きにして搬送したとしても、サイドウォール部が20℃以下に冷却されて剛性が高められるので、その変形を抑制できる。
【0014】
前記設定温度範囲は、15℃以上であるのが好ましい。
【0015】
この方法によれば、グリーンタイヤを15℃以上に冷却するだけであれば、冷却用の設備を大掛かりなものとする必要がなく、安価に製作できる。
【0016】
前記グリーンタイヤの搬送は、前記サイドウォール部と非接触状態で行うのが好ましい。
【0017】
この方法によれば、サイドウォール部の変形をより一層確実に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、サイドウォール部形成工程後に冷却工程を実行するようにしたので、サイドウォール部を冷却して剛性を高めることができ、グリーンタイヤが搬送途中で変形することを防止可能となる。したがって、グリーンタイヤを加硫成型する際、成型不良が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るグリーンタイヤの子午線半断面図である。
図2】本実施形態に係るサイドウォール部形成装置の概略説明図である。
図3図2に示すサイドウォール部形成装置から加硫機に至る搬送経路を示す概略説明図である。
図4図3に示すタイヤ支持部の概略説明図である。
図5】他の実施形態に係るグリーンタイヤの搬送方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0021】
図1は、グリーンタイヤ1の子午線半断面図である。このグリーンタイヤ1は、タイヤケース2のサイド部12にサイドウォール部3を一体化したものである。タイヤケース2は、ケース本体4とトレッドリング5とからなる。
【0022】
ケース本体4は、ビードコア6、ビードフィラー7、カーカスプライ8、インナーライナー9及びリムストリップゴム10を備える。ケース本体4は、全体として円筒状となっており、外周部分を構成するクラウン部11と、その両側面部のサイド部12とを備える。
【0023】
トレッドリング5は、内周側からベルト13及びベルト補強層14を備え、外周部にはトレッドゴム層15が配置されている。トレッドゴム層15は、ストリップゴム16を螺旋状に巻き付ける、あるいは、板状のゴムを貼り付けることにより形成される。トレッドリング5は、ケース本体4のクラウン部11の外周面に一体化される。
【0024】
サイドウォール部3は、タイヤケース2のサイド部12に、トレッドゴム層15と同様なストリップゴム16を螺旋状に巻き付けることにより形成される。
【0025】
前記構成のグリーンタイヤ1は、図2に示す空気入りタイヤ製造装置の一部を構成するサイドウォール部形成装置17によって形成される。形成されたグリーンタイヤ1は、図3に示すように、搬送経路18を介して次の加硫機19へと搬送されるが、その搬送途中で冷却室20にて冷却される。
【0026】
サイドウォール部形成装置17は、ゴム供給部材21、ドラム22、圧着部材23、等を備える。
【0027】
ゴム供給部材21は、押出機24とダイ25を備える。押出機24は、供給されたゴム材料を内部のスクリュー26で混練して押し出す。ダイ25は、押出機24から押し出されたゴムを断面三角形状の帯状とする。
【0028】
ドラム22は、軸心Oを中心とする円筒状に形成されている。ドラム22の外周面は径方向に拡縮可能な金属セグメントやブラダー等で構成されている。またドラム22は、図示しないモータ等の駆動手段によって軸心Oを中心として、図2中、反時計回り方向に回転する。さらにドラム22は、図示しないモータ等の駆動手段によって軸心Oに沿った方向に往復移動する。
【0029】
圧着部材23は、シリンダ27によって進退可能なピストンロッド28の先端に回転軸29aを中心として、円筒状の圧着ローラ29を回転可能に取り付けたものである。圧着ローラ29は、その回転軸29aの軸心方向がドラム22の軸心方向と平行となるように配置される。シリンダ27を駆動してピストンロッド28を前進させることにより、圧着ローラ29の外周面で、ゴム供給部から供給されたストリップゴム16をタイヤケース2の外周面に押し付けて貼り付けることができるようになっている。
【0030】
搬送経路18は、レール30aに沿って移動可能なタイヤ支持部30を備える。タイヤ支持部30は、グリーンタイヤ1を保持する一対の保持部30bを備える。各保持部30bには、ブラダーやホイール等が使用されている。各保持部は、グリーンタイヤ1の内径側に挿入された状態から外径側に拡径してグリーンタイヤ1の内周面を保持する。各保持部30bには、図示しないモータ等の駆動手段等で回転可能な軸部30cが連結されている。軸部30c同士は、屈曲した連結棒30dによって連結されている。連結棒30dは、レール30aに取り付けられ、図示しないモータ等の駆動手段によってレール30aに沿って移動する。タイヤ支持部30には、各保持部30bにグリーンタイヤ1がそれぞれ縦向き状態で支持される。
【0031】
冷却室20は、ここでは、左右に2分割された第1冷却室構成部31と第2冷却室構成部32とで構成されている。第1冷却室構成部31と第2冷却室構成部32は、図示しない駆動機構により搬送経路18に対してそれぞれ水平方向に接離可能である。第1冷却室構成部31と第2冷却室構成部32は接近することにより、搬送経路18の途中に搬送中のグリーンタイヤ1の全体を覆う冷却室20を形成する。冷却室20内には内部熱交換器33が設けられている。内部熱交換器33には図示しない外部熱交換器、コンプレッサ等が接続されている。コンプレッサを駆動することにより、冷媒を循環して流動させ、内部熱交換器33で周囲の空気を冷却できるようになっている。
【0032】
冷却室20は、グリーンタイヤ1が通過する前に十分に冷却されており、空気中に含まれる水蒸気は結露水として外部に排出される。また、冷却室20内は、設定温度範囲(ここでは、15℃以上、20℃以下)に温調されている。冷却室20内を15℃以上とすることにより、冷却のための設備をそれ程大掛かりなものとする必要がなくなり、安価に製作できる。冷却室20内を20℃以下とすることにより、サイドウォール部3を冷却してその剛性を高めることができる。すなわち、少なくともサイドウォール部3の表面温度が20℃以下となるように温調することにより、たとえグリーンタイヤ1を横向きで載置したとしても、サイドウォール部3での撓み量を抑制することができる。
【0033】
このように、冷却室20内に搬送されたグリーンタイヤ1、特にサイドウォール部3は所定温度に温調されるので、自重によって変形しにくくなる。
【0034】
次に、前記構成からなるサイドウォール部形成装置17によりグリーンタイヤ1を完成し、成型機に搬送する工程について説明する。
【0035】
前工程で、ケース本体4のタイヤ径方向外側にトレッドリング5を一体化してタイヤケース2を完成する。そして、タイヤケース2をドラム22にセットし、ドラム22を回転させる。続いて、タイヤケース2のサイド部12に向かって押出機24からダイ25を介してストリップゴム16を供給する。供給するストリップゴム16は、圧着部材23によってタイヤケース2のサイド部12に押し付ける。また、ドラム22を軸心方向に往復移動させることにより、タイヤケース2のサイド部12に対してストリップゴム16を螺旋状に巻き付ける(サイドウォール部形成工程)。これにより、グリーンタイヤ1が完成する。この状態では、サイドウォール部3の温度が他の部位に比べて高くなっている(例えば、サイドウォール部3の表面温度は、巻付直後であれば75~95℃である。)。
【0036】
完成したグリーンタイヤ1は、タイヤ支持部30の各保持部30bによって内周面を保持される。そして、レール30aに沿って保持部30bを移動させることにより、グリーンタイヤ1を加硫機へと搬送する。この間、グリーンタイヤ1が重力の影響を受け、下方側へと変形する虞がある。そこで、グリーンタイヤ1の一部が常に下方側に位置することがないように、グリーンタイヤ1を回転させる。
【0037】
ベルトコンベア30の途中には、第1冷却室構成部31と第2冷却室構成部32とを互いに接近させることにより冷却室20を形成し、内部空間を冷却しておく。内部空間の冷却はグリーンタイヤ1が通過する以前に十分に行っておき、空気中の水蒸気を除去しておく。これにより、搬入したグリーンタイヤ1の表面に結露水が発生することがない。
【0038】
グリーンタイヤ1は、タイヤ支持部30によって支持された状態で搬送され、冷却室20を通過する間に冷却される(冷却工程)。冷却室20で冷却されたグリーンタイヤ1は、冷却に伴ってサイドウォール部3の剛性が高くなり、変形しにくくなる。したがって、グリーンタイヤ1を加硫機19にセットする際、ブラダーに保持した状態での芯ずれを防止できる。そして、加硫成型で、ベア、ビードピンチ等の成型不良の発生を抑制可能となる。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0040】
前記実施形態では、冷却室20の内部空間を内部熱交換器33で冷却するだけの構成について説明したが、ファンを設けてグリーンタイヤ1に直接冷風を吹き付けるようにしてもよい。
【0041】
前記実施形態では、冷却室20を左右に2分割した第1冷却室構成部31と第2冷却室構成部32で構成したが、上下に2分割した構成としてもよいし、3分割あるいは5分割以上の構成としてもよい。要は、搬送経路18の周囲から接近して冷却室20を形成できる構成であればよい。また、冷却室20を2分割とする場合、一方を固定とし、他方を固定した冷却室構成部に対して接離する構成としてもよい。この場合、固定した冷却室構成部に内部熱交換器33を設けるようにすれば、配管等を冷却室構成部と共に移動させる必要がない点で好ましい。
【0042】
前記実施形態では、グリーンタイヤ1を縦向き状態で支持するようにしたが、冷却後であれば、ベルトコンベア等に横向きで載置して搬送するようにしてもよい。また、サイドウォール部3がいずれの部材にも接触しない状態かつグリーンタイヤ1の形状を保持した状態であれば、冷却前にベルトコンベア等で横向きに搬送を開始し、搬送中に冷却してもよい。例えば、図5に示すように、レール34に沿って往復移動可能なブラダー35でグリーンタイヤ1の内径側を保持した状態で搬送・冷却できるようにしてもよい。
【0043】
前記実施形態では、冷却室20は、内部熱交換器33で内部空気を直接冷却するようにしたが、冷却室20内に外部から冷風を供給するように構成してもよい。これによれば、冷却室20の構成をさらに簡略化できるので、搬送経路18に対して接離する移動式の構成を採用しても構造が複雑化することがない。
【0044】
前記実施形態では、グリーンタイヤ1を搬送途中で停止することなく、冷却するようにしたが、停止して冷却室20内で所定時間待機させることにより冷却するようにしてもよい。これによれば、冷却室20をグリーンタイヤ1を収容可能な必要最小限のサイズとでき、設備の大型化やコストアップを抑制可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1…グリーンタイヤ
2…タイヤケース
3…サイドウォール部
4…ケース本体
5…トレッドリング
6…ビードコア
7…ビードフィラー
8…カーカスプライ
9…インナーライナー
10…リムストリップゴム
11…クラウン部
12…サイド部
13…ベルト
14…ベルト補強層
15…トレッドゴム層
16…ストリップゴム
17…サイドウォール部形成装置
18…搬送経路
19…加硫機
20…冷却室
21…ゴム供給部材
22…ドラム
23…圧着部材
24…押出機
25…ダイ
26…スクリュー
27…シリンダ
28…ピストンロッド
29…圧着ローラ
30…タイヤ支持部
31…第1冷却室構成部
32…第2冷却室構成部
33…内部熱交換器
34…レール
35…ブラダー
図1
図2
図3
図4
図5