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  • 特許-ケーブル離隔確保器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ケーブル離隔確保器
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20230124BHJP
   H02G 9/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G9/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019060997
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162355
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】591032747
【氏名又は名称】株式会社三和クリーン
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】榊原 宏行
(72)【発明者】
【氏名】座馬 知司
(72)【発明者】
【氏名】日向野 明
(72)【発明者】
【氏名】森 公一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】沼波 秀行
(72)【発明者】
【氏名】並木 淳
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊一朗
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017014(JP,A)
【文献】特開2009-071915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
H02G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の単心ケーブルが撚り合わされたケーブルのうちの2本の単心ケーブルの間隔または複数本の単心ケーブルが撚り合わされたケーブルのうちの1本の単心ケーブルと併設されたケーブルとの間隔を確保するための平面形状が略長方形に形成されたケーブル離隔確保器本体と、
前記ケーブル離隔確保器本体に設けられた貫通孔に挿通され前記ケーブル離隔確保器本体が前記2本の単心ケーブルの間または前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとの間に差し込まれた状態で前記2本の単心ケーブルまたは前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとが前記ケーブル離隔確保器本体の短辺部で支持される状態となるまで前記ケーブル離隔確保器本体を回転させるための操作棒とを備え、
前記ケーブル離隔確保器本体の下部に前記2本の単心ケーブルの間または前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとの間に差し込まれる先尖長辺部が設けられ、
前記ケーブル離隔確保器本体の側面周辺部に前記ケーブル離隔確保器本体が前記2本の単心ケーブルの間または前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとの間に差し込まれたとき前記2本の単心ケーブルまたは前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルを支持するケーブル支持部が設けられたことを特徴とするケーブル離隔確保器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の単心ケーブルを撚り合わせて形成されたケーブルの各々の単心ケーブル間や、その単心ケーブルと併設されたケーブルとの間に所定の間隔を確保するためのケーブル離隔確保器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、三相の電力を送電するCVTケーブルは、3本の単心ケーブル(CV-1Cケーブル)から構成され隣り合う単心ケーブル同士の外周面が接するようにして撚り合わせて形成されている。このようなケーブルにおいては、ケーブルを新しい物に交換する場合や、新たな電気設備に電力を供給する時に、ケーブルの撚りを戻すことが必要である。これは、接続作業や切断作業を安全に行えるように作業スペースを確保するためである。
【0003】
撚り合わせた状態のケーブルの撚りを戻すには、ドライバーやハンマー等の柄を使って撚り戻すことが行われているが、撚りの反発力によりドライバーやハンマー等が外れてしまい、作業者の手足が単心ケーブルに巻き込まれる等の危険性がある。
【0004】
そこで、複数本の単心ケーブルの撚り戻し作業を安全且つ確実に行ない、電力用ケーブルの停止確認作業を行い易くするようにした電力用ケーブルの撚り戻し工具がある(例えば、特許文献1参照)。これは、互いに撚り合わされている各単心ケーブルの相互間に挿入して撚り戻しを行う撚り戻し棒と、各単心ケーブルの撚りを戻した状態を保持する撚り戻し状態保持部材とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-71915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものでは、撚り戻し棒により各単心ケーブルの撚りを戻すので、撚り戻し棒を作業者が手から離すと撚りの反発力により撚り合わせた状態に戻る可能性がある。すなわち、各単心ケーブルの撚りを戻した状態を継続的に安定して維持することが難しい。また、撚り戻し棒と撚り戻し状態保持部材との二つの部材が必要であり、撚り戻し棒により各単心ケーブルの撚りを戻した状態で、撚り戻し状態保持部材を配置しなければならないので、撚りの反発力により撚り合わせた状態に戻る可能性があり、撚り戻し状態保持部材の配置にも注意が必要となる。
【0007】
また、電力を供給するケーブルは、複数のケーブルが梯子状のケーブルラックに布設される。例えば、CVTケーブル、CV-2Cケーブル(2本の心線を1本のケーブルとしたもの)、CV-3Cケーブル(3本の心線を1本のケーブルとしたもの)などが併設される。従って、作業対象であるCVTケーブルに隣接して、併設されたケーブルが存在することになるので、作業対象であるCVTケーブルの1本の単心ケーブルと併設されたケーブルとの間にも作業スペースを確保する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、複数本の単心ケーブルを撚り合わせて形成されたケーブルの各単心ケーブル間や、その単心ケーブルと併設されたケーブルとの間に所定の間隔を継続的に安定して維持することができるケーブル離隔確保器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のケーブル離隔確保器は、複数本の単心ケーブルが撚り合わされたケーブルのうちの2本の単心ケーブルの間隔または複数本の単心ケーブルが撚り合わされたケーブルのうちの1本の単心ケーブルと併設されたケーブルとの間隔を確保するための平面形状が略長方形に形成されたケーブル離隔確保器本体と、
前記ケーブル離隔確保器本体に設けられた貫通孔に挿通され前記ケーブル離隔確保器本体が前記2本の単心ケーブルの間または前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとの間に差し込まれた状態で前記2本の単心ケーブルまたは前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとが前記ケーブル離隔確保器本体の短辺部で支持される状態となるまで前記ケーブル離隔確保器本体を回転させるための操作棒とを備え、前記ケーブル離隔確保器本体の下部に前記2本の単心ケーブルの間または前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとの間に差し込まれる先尖長辺部が設けられ、 前記ケーブル離隔確保器本体の側面周辺部に前記ケーブル離隔確保器本体が前記2本の単心ケーブルの間または前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルとの間に差し込まれたとき前記2本の単心ケーブルまたは前記1本の単心ケーブルと前記併設されたケーブルを支持するケーブル支持部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作棒により2本の単心ケーブルまたは1本の単心ケーブルと併設されたケーブルとがケーブル離隔確保器本体の短辺部で支持される状態となるまでケーブル離隔確保器本体を回転させ、2本の単心ケーブルまたは1本の単心ケーブルと併設されたケーブルとがケーブル離隔確保器本体の短辺部で支持される状態を保持するので、各単心ケーブルの撚りを戻した状態を継続的に安定して維持でき、また、1本の単心ケーブルと併設されたケーブルとの間に作業スペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器本体の平面図。
図3】本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器本体の正面図。
図4】本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器の使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器の斜視図、図2はケーブル離隔確保器本体の平面図、図3はケーブル離隔確保器本体の正面図である。本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器は、作業対象である複数本の単心ケーブルを撚り合わせて形成されたケーブルの2本の単心ケーブル間、または作業対象である複数本の単心ケーブルを撚り合わせて形成されたケーブルの1本の単心ケーブルとの間に所定の間隔を保つものであるが、以下の説明では、作業対象であるCVTケーブルの2本の単心ケーブル間に所定の間隔を保つ場合について説明する。
【0013】
図1において、ケーブル離隔確保器本体11の上部は、平面形状が略長方形の平板部12に突起部13が搭載された形状であり、ケーブル離隔確保器本体11の下部は凸状の湾曲部14を有した形状に形成されている。ケーブル離隔確保器本体11の下部の凸状の湾曲部14の縁部に先尖長辺部15が設けられている。また、凸状の湾曲部14と平板部12との間の側面周辺部には、ケーブル支持部16が設けられている。
【0014】
ケーブル離隔確保器本体11の上部の突起部13には、貫通孔17x、17y、17zが設けられている。貫通孔17x、17y、17zには、ケーブル離隔確保器本体11を回転させるための操作棒18が挿入される。操作棒18は、ケーブル離隔確保器本体11が2本の単心ケーブルの間に差し込まれた状態でケーブル離隔確保器本体11を回転させるものである。この操作棒18により、2本の単心ケーブルがケーブル離隔確保器本体11の短辺部で支持される状態(2本の単心ケーブル間の間隔をケーブル離隔確保器の略長辺長さで確保した状態)になるまで、ケーブル離隔確保器本体11の回転操作が行われる。
【0015】
図1では、操作棒18が貫通孔17xに挿入された場合を示しており、この場合は、操作棒18はケーブル離隔確保器本体11の上部の平板部12の短辺方向(X軸方向)に平行となる。操作棒18が貫通孔17yに挿入された場合は、操作棒18はケーブル離隔確保器本体11の上部の平板部12の長辺方向(Y軸方向)に平行となり、操作棒18が貫通孔17zに挿入された場合は、操作棒18はケーブル離隔確保器本体11のZ軸方向に平行となる。図2図3では、操作棒18の記載を省略している。
【0016】
次に、本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器の使用状態を説明する。図4は、本発明の実施形態に係るケーブル離隔確保器の使用状態を示す斜視図であり、図4(a)は操作棒18をケーブル離隔確保器本体11の貫通孔17xに挿入し所定の間隔を確保する2本の単心ケーブル19a、19b間にケーブル離隔確保器を接触させた状態を示す斜視図、図4(b)は2本の単心ケーブル19a、19bがケーブル離隔確保器本体11の長辺部で支持される状態(2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔をケーブル離隔確保器の略短辺長さで確保した状態)を示す斜視図、図4(c)は図4(b)に示す状態、すなわち、2本の単心ケーブル19a、19bがケーブル離隔確保器本体11の長辺部で支持される状態(2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔をケーブル離隔確保器の略短辺長さで確保した状態)から2本の単心ケーブル19a、19bがケーブル離隔確保器本体11の短辺部で支持される状態(ケーブル離隔確保器の略長辺長さで確保した状態)に移行する過程を示す斜視図、図4(d)は2本の単心ケーブル19a、19bがケーブル離隔確保器本体11の短辺部で支持される状態(2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔をケーブル離隔確保器の略長辺長さで確保した状態)を示す斜視図である。
【0017】
図4(a)に示すように、ケーブル離隔確保器本体11の下部の凸状の湾曲部14の縁部に設けられた先尖長辺部15を2本の単心ケーブル19a、19b間に接触させる。図4(a)では、先尖長辺部15を2本の単心ケーブル19a、19b間の上部から接触させたので、ケーブル離隔確保器本体11の上部と下部とが反対の位置になっている。
【0018】
この状態で、ケーブル離隔確保器本体11の上部の平板部12に搭載された突起部13の貫通孔17xに操作棒18を挿入する。操作棒18がケーブル離隔確保器本体11の短辺に平行となるようにケーブル離隔確保器本体11の貫通孔17xに操作棒18を挿通する。そして、操作棒18を矢印方向(X軸からZ軸に向けた方向)に回転させる。
【0019】
これにより、図4(b)に示すように、ケーブル離隔確保器本体11が2本の単心ケーブル19a、19b間に入った状態となる。この状態は、2本の単心ケーブル19a、19b間にケーブル離隔確保器本体11が入り込み、ケーブル離隔確保器本体11の長辺部のケーブル支持部16が2本の単心ケーブル19a、19bに接触している状態である。つまり、2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔をケーブル離隔確保器本体11の略短辺長さで確保した状態である。
【0020】
次に、図4(b)の状態から図4(c)に示す矢印方向(X軸からY軸に向けた方向)に操作棒18を回転させると、図4(d)に示すように、2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔をケーブル離隔確保器本体11の略短辺長さで確保した状態から、ケーブル離隔確保器本体11の略長辺長さで2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔を確保した状態に移行する。その際、2本の単心ケーブル19a、19bを支持する支持部は、ケーブル離隔確保器本体11の長辺部のケーブル支持部16から短辺部のケーブル支持部16に移行する。
【0021】
さらに、図4(c)に示す矢印方向(X軸からY軸に向けた方向)に、ケーブル離隔確保器本体11の略長辺長さで2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔を確保した状態になるまで操作棒18を回転させる。
【0022】
これにより、図4(d)に示すように、ケーブル離隔確保器本体11の略長辺長さで2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔を確保した状態となる。つまり、2本の単心ケーブル19a、19bの間の間隔がケーブル離隔確保器本体11の略長辺長さに維持される。
【0023】
ここで、図4(b)の状態での操作棒18を貫通孔17xから抜き、ケーブル離隔確保器本体11の貫通孔17yに挿入し直すようしてもよい。この場合、ケーブル離隔確保器本体11の略長辺長さで2本の単心ケーブル19a、19b間の間隔を確保した状態では、操作棒18が2本の単心ケーブル19a、19bと直角方向に位置した状態となるが、操作棒18が作業の邪魔になることがない場合は、そのようにしても問題はない。
【0024】
以上述べたように、本発明の実施形態によれば、操作棒18により、2本の単心ケーブル19a、19bがケーブル離隔確保器本体11の長辺部で支持される状態とし、さらに、2本の単心ケーブル19a、19bがケーブル離隔確保器本体11の短辺部で支持される状態となるまでケーブル離隔確保器本体11を回転させ、2本の単心ケーブル19a、19bがケーブル離隔確保器本体11の短辺部で支持される状態を保持する。従って、2本の単心ケーブル19a、19bの間の間隔がケーブル離隔確保器本体11の略長辺長さに保持され、各単心ケーブルの撚りを戻した状態を継続的に安定して維持することができる。さらに、ケーブル離隔確保器本体11で2本の単心ケーブル19a、19bの間の間隔を確保した後に、別途、撚り戻し状態保持部材にて2本の単心ケーブル19a、19bの間の間隔を確保することも可能である。
【0025】
以下の説明では、作業対象であるCVTケーブルの2本の単心ケーブル間に所定の間隔を保つ場合について説明したが、作業対象であるCVTケーブルの2本の単心ケーブル間だけでなく、複数本の単心ケーブルを撚り合わせて形成されたケーブルの2本の単心ケーブル間または複数本の単心ケーブルを撚り合わせて形成されたケーブルのうちの1本の単心ケーブルと隣接して併設されたケーブルとの間に所定の間隔を保つようにしてもよい。
【0026】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
11…ケーブル離隔確保器本体、12…平板部、13…突起部、14…湾曲部、15…先尖長辺部、16…ケーブル支持部、17…貫通孔、18…操作棒、19…単心ケーブル
図1
図2
図3
図4