(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】混成栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 18/69 20180101AFI20230124BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20230124BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20230124BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A01G18/69
A01G7/02
A01G7/00 601A
A01G9/24 A
(21)【出願番号】P 2019184786
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂 幸憲
(72)【発明者】
【氏名】平野 正徳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和正
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-051929(JP,A)
【文献】特開2015-136356(JP,A)
【文献】特開2014-103958(JP,A)
【文献】特開2019-095937(JP,A)
【文献】特開2018-029568(JP,A)
【文献】特開昭57-144451(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044244(WO,A1)
【文献】特開2017-070230(JP,A)
【文献】特開2000-139219(JP,A)
【文献】特開昭62-171619(JP,A)
【文献】特開平04-304819(JP,A)
【文献】特開2003-009661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0029574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00 - 2/38
A01G 5/00 - 7/06
A01G 9/14 - 9/28
A01G 17/00 - 17/02
A01G 17/18 - 22/67
A01G 24/00 - 24/60
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコ栽培及び植物栽培を同じ室内空間で実施する混成栽培システムであって、
前記室内空間に設置される多段式の栽培棚と、
植物を収容するとともに前記栽培棚に配置される植物栽培容器と、
培養段階のキノコを収容するとともに前記栽培棚に配置される菌床と、
前記植物栽培容器が配置される前記栽培棚の段に設けられ、前記植物に対して光を照射する照明装置と、
前記室内空間の温度を調整するとともに前記室内空間の空気を流動させる空調設備、前記室内空間の湿度を調整する加湿器、前記室内空間と室外との間で空気を給排する換気装置、及び二酸化炭素ガスを供給する二酸化炭素供給装置を含み、前記室内空間の栽培環境を調整する栽培環境調整装置と、
前記室内空間の二酸化炭素濃度、温度
、湿度
、及び、前記キノコ栽培及び前記植物栽培に影響を及ぼす屋外の情報を含む栽培環境情報を検出する検出部と、
前記栽培環境情報に基づき前記栽培環境調整装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記栽培棚において、前記植物栽培容器に光が照射される点灯状態と、前記植物栽培容器に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返し、
前記検出部は、前記栽培環境情報として、前記植物の生育状態を示す第1画像データと前記菌床の培養状態を示す第2画像データとを検出し、
前記制御装置は、
前記第1画像データから前記植物の大きさ、葉数、及び葉面積を認識するとともに、前記第2画像データから前記菌床の表面に形成されるカビの色、カビの大きさ、及びカビの形状を認識する認識部と、
前記認識部が認識した結果に基づいて前記植物の生育結果及び前記菌床の培養結果を判断する判断部と、
前記検出部により検出された前記栽培環境情報と、前記判断部が判断した結果
とから導かれる前記菌床の培養状態の変化、前記植物の生育状態の変化、及び前記室内空間の外部環境の変化をラベルとして、前記判断部により生成された最適環境制御モデルに基づいて前記栽培環境調整装置を制御する出力制御部と、を有することを特徴とする混成栽培システム。
【請求項2】
キノコ栽培及び植物栽培を同じ室内空間で実施する混成栽培システムであって、
前記室内空間に設置される多段式の栽培棚と、
植物を収容するとともに前記栽培棚に配置される植物栽培容器と、
培養段階のキノコを収容するとともに前記栽培棚に配置される菌床と、
前記植物栽培容器が配置される前記栽培棚の段に設けられ、前記植物に対して光を照射する照明装置と、
前記室内空間の温度を調整するとともに前記室内空間の空気を流動させる空調設備、前記室内空間の湿度を調整する加湿器、前記室内空間と室外との間で空気を給排する換気装置、及び二酸化炭素ガスを供給する二酸化炭素供給装置を含み、前記室内空間の栽培環境を調整する栽培環境調整装置と、
前記室内空間の二酸化炭素濃度、温度
、湿度
、及び、前記キノコ栽培及び前記植物栽培に影響を及ぼす屋外の情報を含む栽培環境情報を検出する検出部と、
前記栽培環境情報に基づき前記栽培環境調整装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記栽培棚において、前記植物栽培容器に光が照射される点灯状態と、前記植物栽培容器に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返し、
前記検出部は、前記栽培環境情報を検出するカメラとして、前記植物の生育状態を示す第1画像データと前記菌床の培養状態を示す第2画像データとを検出するカメラと、前記植物の葉面の温度及び蒸散のデータと前記菌床の表面温度及び水分のデータとを検出する赤外線カメラとを有し、
前記制御装置は、前記第1画像データに基づいて判断される前記植物の栽培結果と、前記第2画像データに基づいて判断される前記菌床の栽培結果と、前記赤外線カメラにより検出されるデータと
、前記検出部により検出される前記栽培環境情報とを学習して、今後の前記植物の生育状態及び前記菌床の培養状態を予測することにより栽培環境モデル又は最適環境制御モデルを生成し、前記栽培棚毎に前記栽培環境モデル又は前記最適環境制御モデルを適用することを特徴とする混成栽培システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記栽培棚において、前記植物栽培容器が配置されている前記栽培棚の段の全域に光が照射される前記点灯状態と、前記植物栽培容器が配置されている前記栽培棚の段の全域に光が照射されていない前記消灯状態とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返すことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の混成栽培システム。
【請求項4】
前記室内空間には、前記栽培棚が複数設けられ、
前記複数の栽培棚は、
前記菌床のみが各段に配置されるキノコ栽培棚と、
前記植物栽培容器のみが各段に配置される複数の植物栽培棚と、を含み、
前記照明装置は、前記植物栽培棚の各段に設けられ、
前記制御装置は、
前記複数の植物栽培棚において、各段の前記照明装置が全て点灯することにより前記点灯状態となっている第1棚と、各段の前記照明装置が全て消灯することにより前記消灯状態となっている第2棚とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返すことを特徴とする請求項
3に記載の混成栽培システム。
【請求項5】
前記栽培棚は、
前記菌床のみが配置されるキノコ栽培段と、
前記植物栽培容器のみが配置される複数の植物栽培段と、を含み、
前記照明装置は、前記植物栽培段の各段に設けられ、
前記制御装置は、
複数の前記植物栽培段において、前記点灯状態となっている第1段と、前記消灯状態となっている第2段とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返すことを特徴とする請求項
3に記載の混成栽培システム。
【請求項6】
前記室内空間の空気を、前記植物に対して噴き付ける噴出機構を備え、
前記噴出機構は、前記室内空間の空気に含まれる異物を捕捉する濾材を有していることを特徴とする請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の混成栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混成栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるようにキノコ栽培室を有するキノコ栽培施設と、植物栽培室を有する園芸施設とを備えるキノコと施設園芸の複合栽培システムが知られている。
上記の複合栽培システムは、送風機と、キノコ栽培室から植物栽培室へ二酸化炭素を供給するダクトと、植物栽培室からキノコ栽培室へ酸素を供給するダクトと、各ダクトを開閉する切換弁と、キノコ栽培室及び植物栽培室の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度センサと、キノコ栽培室及び植物栽培室の温度を検出する温度センサとを備えている。
【0003】
複合栽培システムは、二酸化炭素濃度に基づき送風機と切換弁を操作することで、キノコ栽培室から発生した二酸化炭素を植物栽培室に、植物栽培室から発生した酸素をキノコ栽培室に向けて送出する。ここで、キノコ栽培における菌床培養は最適な温度、湿度、二酸化炭素濃度が必要で、特に高湿度を維持することで培養を促進させる。また、植物栽培における光合成は最適な温度、湿度、二酸化炭素濃度が必要で、特に温度、湿度の維持することで、葉の気孔の開口を最適な状態に維持し、二酸化炭素の吸収を促進させ光合成を活性化させる。そのため、キノコ栽培及び植物栽培において、栽培環境を調整するにあたっては二酸化炭素濃度、温度、及び湿度を含む栽培環境情報が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記複合栽培システムでは、キノコ栽培室及び植物栽培室の栽培環境を調整するにあたり、送風機、各ダクト、及び各切換弁等の設備を導入する必要があり、且つ送風機及び各切換弁を動作させるための電力も必要となる。また、植物栽培室にキノコ栽培室から二酸化炭素を送出するにあたり、第1ダクトに二酸化炭素が残存してしまう分だけ植物栽培室に送出される二酸化炭素が少なくなるため、二酸化炭素ガスボンベを導入し、植物栽培室に二酸化炭素を供給することも考えられる。さらに、キノコ栽培室及び植物栽培室が個別に存在するため、二酸化炭素濃度センサ、温度センサ、及び湿度センサを含む検出部を各室それぞれに導入する必要がある。すなわち、上記複合栽培システムでは、キノコ栽培及び植物栽培を実施するにあたりコストがかかる虞がある。
【0006】
また、上記コストを抑制するためにキノコ栽培及び植物栽培を同室にて実施することが考えられる。キノコ栽培及び植物栽培を同室で実施することによりキノコ栽培により発生する二酸化炭素をより効率良く植物の光合成に利用できる。
【0007】
ここで、キノコ栽培により発生する二酸化炭素を利用して植物の生育を促すためには、植物に対して光を照射する必要がある。そのため、植物に対して常に光を照射し続けることにより植物の生育を促すことが考えられるが、植物の生育では植物に光が照射されない時間帯も必要となることが知られている。
【0008】
本発明の目的は、キノコ栽培及び植物栽培にかかるコストを低減しつつ植物の生育を好適に促すことができる混成栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する混成栽培システムは、キノコ栽培及び植物栽培を同じ室内空間で実施する混成栽培システムであって、前記室内空間に設置される多段式の栽培棚と、植物を収容するとともに前記栽培棚に配置される植物栽培容器と、培養段階のキノコを収容するとともに前記栽培棚に配置される菌床と、前記植物栽培容器が配置される前記栽培棚の段に設けられ、前記植物に対して光を照射する照明装置と、前記室内空間の温度を調整するとともに前記室内空間の空気を流動させる空調設備、前記室内空間の湿度を調整する加湿器、前記室内空間と室外との間で空気を給排する換気装置、及び二酸化炭素ガスを供給する二酸化炭素供給装置を含み、前記室内空間の栽培環境を調整する栽培環境調整装置と、前記室内空間の二酸化炭素濃度、温度、及び湿度を含む栽培環境情報を検出する検出部と、前記栽培環境情報に基づき前記栽培環境調整装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記栽培棚において、前記植物栽培容器に光が照射される点灯状態と、前記植物栽培容器に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返す。
【0010】
上記の混成栽培システムにおいて、前記制御装置は、前記栽培棚において、前記植物栽培容器が配置されている前記栽培棚の段の全域に光が照射される前記点灯状態と、前記植物栽培容器が配置されている前記栽培棚の段の全域に光が照射されていない前記消灯状態とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返すことを特徴とするとよい。
【0011】
上記の混成栽培システムにおいて、前記室内空間には、前記栽培棚が複数設けられ、前記複数の栽培棚は、前記菌床のみが各段に配置されるキノコ栽培棚と、前記植物栽培容器のみが各段に配置される複数の植物栽培棚と、を含み、前記照明装置は、前記植物栽培棚の各段に設けられ、前記制御装置は、前記複数の植物栽培棚において、各段の前記照明装置が全て点灯することにより前記点灯状態となっている第1棚と、各段の前記照明装置が全て消灯することにより前記消灯状態となっている第2棚とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返すとよい。
【0012】
上記の混成栽培システムにおいて、前記栽培棚は、前記菌床のみが配置されるキノコ栽培段と、前記植物栽培容器のみが配置される複数の植物栽培段と、を含み、前記照明装置は、前記植物栽培段の各段に設けられ、前記制御装置は、複数の前記植物栽培段において、前記点灯状態となっている第1段と、前記消灯状態となっている第2段とが同時に存在するように前記照明装置の点灯と消灯との切り換えを繰り返すとよい。
【0013】
上記の混成栽培システムにおいて、前記室内空間の空気を、前記植物に対して噴き付ける噴出機構を備え、前記噴出機構は、前記室内空間の空気に含まれる異物を捕捉する濾材を有しているとよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、キノコ栽培及び植物栽培にかかるコストを低減しつつ植物の生育を好適に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態における混成栽培システムの全体構成を示す模式図。
【
図3】(a),(b)、(c)は、栽培棚の点灯状態と消灯状態とを示した模式図。
【
図4】第2の実施形態における混成栽培システムの全体構成を示す模式図。
【
図5】(a),(b),(c)は、栽培棚の点灯状態と消灯状態とを示した模式図。
【
図6】第3の実施形態における混成栽培システムの全体構成を示す模式図。
【
図8】(a),(b),(c)は、第4の実施形態における栽培棚の点灯状態と消灯状態とを示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、混成栽培システムを具体化した第1の実施形態を
図1~
図3にしたがって説明する。
【0017】
図1に示すように、混成栽培システム1は、キノコ栽培及び植物栽培を実施するシステムである。混成栽培システム1は、キノコ栽培及び植物栽培を同じ室内空間12で実施している。混成栽培システム1は、混成栽培装置10を備えている。混成栽培装置10は、工場11の室内空間12に設置される多段式の栽培棚13を複数備えている。混成栽培装置10は、植物15を収容する複数の植物栽培容器16と、培養段階のキノコを収容する複数の菌床17とを備えている。植物15は、例えば葉物野菜や苺などの果実が挙げられる。本実施形態の植物15は、レタスである。菌床17は、おがくず等と栄養素とを混ぜて植菌された人工培地をビニール袋に詰めたものである。本実施形態では、キノコは例えば椎茸である。本実施形態において、複数の栽培棚13は、植物15を収容する複数の植物栽培容器16のみが各段に配置される3つの植物栽培棚13aと、培養段階のキノコを収容する複数の菌床17のみが各段に配置される1つのキノコ栽培棚13bと、を含む。なお、複数の栽培棚13は、各段に植物栽培容器16もしくは菌床17が配置される点のみが異なり、その他は全て同じ構成であり、全て5段構成である。また、図示していないが、植物栽培棚13aには植物の生育に必要な栄養素を水と共に根から吸収させるための養液供給システムが設置されている。例えば水耕栽培の場合は、植物栽培棚13aの各段に養液が流れる栽培槽が其々配置され、栽培槽の中に植物栽培容器16が納められ、植物15は栽培槽に満たされた養液から成長に必要な栄養素を水と共に吸収する。
【0018】
栽培棚13における上下方向に対して直交する第1方向を栽培棚13の左右方向とし、栽培棚13における上下方向に直交し、且つ左右方向に対しても直交する第2方向を栽培棚13の奥行方向とすると、栽培棚13の左右方向の長さは、栽培棚13の奥行方向の長さよりも長くなっている。栽培棚13における左右方向の両側方、及び栽培棚13における奥行方向の両側方は開口している。また、複数の栽培棚13は、栽培棚13の奥行方向の一方にキノコ栽培棚13bが配置され、複数の植物栽培棚13aは、キノコ栽培棚13bを基準として栽培棚13の奥行方向の他方に向けて並んでいる。
【0019】
混成栽培装置10は、植物15に対して光を照射する照明装置18を備えている。照明装置18は、植物栽培棚13aの植物栽培容器16が配置されている各段に設けられている。照明装置18は、植物15の上方であって、且つ植物15に対して上下方向に重なる位置に配置されている。なお、
図1では、説明の都合上、栽培棚13の最も上段である最上段の照明装置18のみ図示しており、植物栽培棚13aにおける最上段以外の各段に配置されている照明装置18の図示を省略している。照明装置18は、例えば発光ダイオードや蛍光灯等からなる。本実施形態では、照明装置18は、柱状の蛍光灯をその長手方向が栽培棚13の奥行方向と一致するように配置され、複数の蛍光灯を栽培棚13の左右方向に並設した構成になっている。照明装置18からは、植物15の光合成に必要な所定波長の光が植物15に向けて照射される。
【0020】
図2に示すように、混成栽培装置10は、植物栽培棚13aの各段に一対の反射板80を備えている。一対の反射板80は、植物栽培容器16が配置されている栽培棚13の各段において、栽培棚13の奥行方向の両開口を閉塞するように配置され、照明装置18から照射される光を植物栽培棚13aの各段に向けて反射させる光の反射機能を有している。一対の反射板80は、照明装置18における栽培棚13の奥行方向の両側に位置する部位に取り付けられている。一対の反射板80は、
図2において実線で示すような栽培棚13の奥行方向の両開口を閉塞した閉塞状態と、
図2において二点鎖線で示すような栽培棚13の奥行方向の両開口を開放した開放状態とを自在に変更できる程度にめくり上げ開放状態で固定することができる薄板である。具体的には、例えば反射板80には、磁石81が取り付けられており、反射板80が開放状態になったときに栽培棚13の一部に磁石81が張り付くことにより反射板80が開放状態で固定される。なお、説明の都合上、
図1では一対の反射板80の図示を省略している。
【0021】
図1に示すように、工場11は、二酸化炭素ガスボンベ11aを備えている。二酸化炭素ガスボンベ11aは、図示しない圧力調整器、制御弁が配置された導入配管11bを介して室内空間12内に連通している。そして、二酸化炭素ガスボンベ11aから導入配管11bを介して室内空間12内へ二酸化炭素ガスの導入が行われている。よって、室内空間12内の空気には、二酸化炭素が混合されている。なお、二酸化炭素ガスボンベ11a及び導入配管11bとで、室内空間12に二酸化炭素ガスを供給する二酸化炭素供給装置11cを構成する。
【0022】
室内空間12には、室内空間12の温度を調整するとともに室内空間12の空気を流動させる空調設備としての空調装置12aと、室内空間12の湿度を調整する加湿器12bとが設けられている。室内空間12内は、空調装置12aによって温度が調整され、加湿器12bによって湿度が調整されている。空調装置12aは、栽培棚13の奥行方向において、キノコ栽培棚13bとは反対側に配置されている。ここで、キノコの菌糸の培養段階には、菌床17からは大量の二酸化炭素が発生することが知られている。空調装置12aから送り出される風により、菌床17から発生した二酸化炭素は、室内空間12に撹拌される。また、工場11には、室内空間12と室外との間で空気を給排する換気装置12dが設けられている。換気装置12dは、室内空間12と室外とを連通するダクトや、ダクトに設けられた送風機を有している。換気装置12dは、送風機が動作することによって室内空間12の空気を室外に排気したり、室外の空気を室内空間12に給気したりできる。つまり、換気装置12dは、室内空間12の換気を行う装置である。ここで、上述した二酸化炭素供給装置11c、空調装置12a、加湿器12b、及び換気装置12dは、室内空間12の栽培環境を調整する栽培環境調整装置を構成している。
【0023】
工場11は、室内空間12の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度センサ21と、室内空間12の温度を検出する温度センサ22と、室内空間12の湿度を検出する湿度センサ23とを備えている。二酸化炭素濃度センサ21、温度センサ22、及び湿度センサ23は、二酸化炭素濃度、温度、及び湿度を含む栽培環境情報を検出する検出部を構成している。なお、図示しないが、二酸化炭素濃度、温度、湿度以外に、栽培環境情報として風速、光強度を含んでいてもよい。また、栽培対象である植物の成育状態やキノコの培養状態などの画像データを栽培環境情報として含んでいてもよい。そのため、栽培環境情報を検出するため、各種センサやカメラなど必要な機材を追加して、栽培環境情報を検出する検出部を構成する場合もある。また、室内空間12以外にキノコ栽培及び植物栽培に影響を及ぼす屋外に、各種センサやカメラなど必要な機材を追加して、屋外の情報も含めた栽培環境情報を検出する検出部を構成する場合もある。
【0024】
工場11は、空調装置12a、加湿器12b、二酸化炭素供給装置11c、及び換気装置12dを含む栽培環境調整装置を制御する制御装置30を備えている。制御装置30は、二酸化炭素濃度センサ21、温度センサ22、及び湿度センサ23により検出される二酸化炭素濃度、温度、及び湿度を含む栽培環境情報に基づき栽培環境調整装置を制御する。本実施形態では、室内空間12で椎茸とレタスが栽培されている。椎茸の栽培に適した栽培環境は、例えば二酸化炭素濃度が2000ppm以下であり、温度が20~23℃であり、湿度が70~80%である。また、レタスの栽培に適した栽培環境は、例えば二酸化炭素濃度が400~2000ppmであり、温度が20~25℃であり、湿度が70~80%である。そのため、室内空間12に椎茸とレタスとを同時に栽培する上で、室内空間12の栽培環境は、二酸化炭素濃度が400~2000ppmであり、温度が20~23℃であり、湿度が70~80%であることが好ましい。よって、制御装置30は、二酸化炭素濃度センサ21により検出される二酸化炭素濃度が400ppmを下回る場合には、二酸化炭素供給装置11cの二酸化炭素ガスボンベ11aから二酸化炭素を室内空間12に供給し、二酸化炭素濃度が2000ppm以上である場合には、換気装置12dの送風機を制御して、室内空間12の二酸化炭素を室外に排出する。制御装置30は、温度センサ22により検出される温度が20~23℃の範囲に入らない場合には、空調装置12a及び換気装置12dを制御して、室内空間12の温度を調整する。制御装置30は、湿度センサ23により検出される湿度が70~80%の範囲に入らない場合には、加湿器12b及び換気装置12dを制御して、室内空間12の湿度を調整する。
【0025】
また、制御装置30は、照明装置18と電気的に接続されている。制御装置30は、照明装置18の点灯と消灯とを切り換える。すなわち、制御装置30は、照明装置18を点灯させて植物15に光を照射させたり、照明装置18を消灯したりすることにより、植物15が光合成を行う昼の時間と、光合成を行わない夜の時間とを人工的に作り出している。
【0026】
制御装置30には、複数の植物栽培棚13aにおいて、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように照明装置18の点灯と消灯との切り換えを繰り返すプログラムが予め記憶されている。また、制御装置30は、タイマー30aを備えている。制御装置30には、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、消灯していた照明装置18を点灯させるプログラムが予め記憶されている。そして、制御装置30には、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、照明装置18が点灯状態であった複数の植物栽培棚13aのうちの一つの植物栽培棚13aの照明装置18を全て消灯するプログラムが予め記憶されている。
【0027】
第1の実施形態の作用を説明する。
制御装置30は、植物栽培棚13aにおいて、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように照明装置18の点灯と消灯との切り換えを繰り返す。なお、以下、点灯状態及び消灯状態について説明するが、
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)に示される網掛け部分が消灯状態であることを示しており、網掛け部分がない部分が点灯状態を示している。また、以下の説明では、3つの植物栽培棚13aのうち、キノコ栽培棚13bとは反対側に位置する植物栽培棚13aを第1植物栽培棚13aaとする。また、キノコ栽培棚13bに隣接する植物栽培棚13aを第2植物栽培棚13abとする。さらに、第1植物栽培棚13aaと第2植物栽培棚13abとに挟み込まれた植物栽培棚13aを第3植物栽培棚13acとする。
【0028】
図3(a)に示すように、制御装置30は、第1植物栽培棚13aaの各段に設けられた照明装置18を全て消灯させ、第2植物栽培棚13ab及び第3植物栽培棚13acの各段に設けられた照明装置18を全て点灯させたタイミングでタイマー30aをオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、第1植物栽培棚13aaの各段に設けられた照明装置18を全て点灯させるとともに、第3植物栽培棚13acの各段に設けられた照明装置18を全て消灯する。このとき、第2植物栽培棚13abの各段は点灯状態が継続している。
【0029】
図3(b)に示すように、制御装置30は、第3植物栽培棚13acの各段に設けられた照明装置18を全て消灯させ、第1植物栽培棚13aaの各段に設けられた照明装置18を全て点灯させたタイミングで、タイマー30aをオフにし、タイマー30aのカウントをリセットする。そして、制御装置30は、タイマー30aを再びオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、第3植物栽培棚13acの各段に設けられた照明装置18を全て点灯させるとともに、第2植物栽培棚13abの各段に設けられた照明装置18を全て消灯する。このとき、第1植物栽培棚13aaの各段は点灯状態が継続している。
【0030】
図3(c)に示すように、制御装置30は、第2植物栽培棚13abの各段に設けられた照明装置18を全て消灯させ、第3植物栽培棚13acの各段に設けられた照明装置18を全て点灯させたタイミングで、タイマー30aをオフにし、タイマー30aのカウントをリセットする。そして、制御装置30は、タイマー30aを再びオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、第2植物栽培棚13abの各段に設けられた照明装置18を全て点灯させるとともに、第1植物栽培棚13aaの各段に設けられた照明装置18を全て消灯する。このとき、第3植物栽培棚13acの各段は点灯状態が継続している。
【0031】
このように、制御装置30は、
図3(a)の状態、
図3(b)の状態、及び
図3(c)の状態が繰り返されるように、栽培棚13において、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように各照明装置18の点灯と消灯との切り換えを行う。
【0032】
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)に示すように、制御装置30は、3つの植物栽培棚13aそれぞれの消灯状態となるタイミングを8時間ずつずらしている。すなわち、制御装置30は、1サイクルを24時間として、3つの植物栽培棚13aそれぞれが1サイクル中のうち16時間が点灯状態となり、8時間が消灯状態となるように照明装置18の点灯と消灯とを繰り返し切り換えている。そのため、制御装置30は、複数の植物栽培棚13aにおいて、各段の全域に光が照射されるように照明装置18が全て点灯することにより点灯状態となる第1棚41と、各段の全域に光が照射されないように照明装置18が全て消灯することにより消灯状態となる第2棚42とが同時に存在し、且つ複数の植物栽培棚13aそれぞれにおいて1サイクル中の点灯状態の期間が消灯時間の期間よりも長くなるように照明装置18の点灯と消灯との切り換えを繰り返している。
【0033】
このように、制御装置30は、複数の植物栽培棚13aにおいて、消灯状態をつくりつつも点灯状態が存在するように照明装置18を制御しているため、菌床17から発生した二酸化炭素が常に植物15の光合成に利用される。よって、植物15の生育が好適に促される。
【0034】
本実施形態の効果を説明する。
(1-1)キノコ栽培室と植物栽培室とが個別に存在する混成栽培システムと比較すると、キノコ栽培室と植物栽培室とを接続するダクト等の設備を導入する必要がなく、且つ二酸化炭素濃度、温度、及び湿度等の栽培環境情報を検出するための検出部の設置数も少なくなるため、キノコ栽培及び植物栽培にかかるコストが抑えられる。また、複数の植物栽培棚13aにおいて、消灯状態をつくりつつも点灯状態が存在するように制御装置30が照明装置18を制御しているため、菌床17から発生した二酸化炭素が常に植物15の光合成に利用される。よって、植物15の生育が好適に促される。したがって、キノコ栽培及び植物栽培にかかるコストを低減しつつ植物15の生育を好適に促すことができる。
【0035】
(1-2)植物栽培棚13aを3つに区分、いずれか一つを消灯させ、他を点灯させることで、植物栽培棚13aのいずれかの植物15を光合成させる構成とし、菌床17から24時間連続的に発生する二酸化炭素を点灯している植物栽培棚13aの植物15により連続的に消費させ、室内空間12の二酸化炭素濃度の上昇を抑え、二酸化炭素ガスを無駄に外部に放出することを無くすことができる。
【0036】
(1-3)夏場もしくは冬場に換気を実施すると、室内空間12に外気が入り込み、ひいては室内空間12の温度の変動が大きくなる。そのため、空調装置12aの稼働頻度が多くなり、大電力が必要となる虞がある。その点、本実施形態では、換気の頻度を少なくできるため、キノコ栽培及び植物栽培にかかる電力を削減することができる。
【0037】
(1-4)換気をすると外気に紛れて屋外から虫が室内空間12に侵入することがある。その点、本実施形態では、換気の頻度を少なくできるため、室内空間12への虫の侵入を抑制できる。
【0038】
(1-5)キノコ栽培及び植物栽培を室内空間12で同時に実施しているため、菌床17から発生する二酸化炭素を利用して植物15を栽培できる。そのため、植物15の生育のために二酸化炭素ガスボンベ11aから二酸化炭素を室内空間12に導入する頻度が少なくなり、ひいては二酸化炭素ガスボンベ11aにかかるコストを削減することができる。
【0039】
(1-6)植物栽培容器16が配置されている植物栽培棚13aの各段において、植物栽培棚13aの奥行方向の両開口を閉塞するように一対の反射板80が配置されているため、植物栽培棚13aの外側に光が洩れてしまうことを抑制できる。したがって、植物15に照射される光の強さである光強度を増加させることができ、植物15の光合成が促進され、植物15の生育が促進される。
【0040】
(1-7)一対の反射板80がめくり上げた開放状態で固定することができる薄板であるため、植物15の生育状態を簡易的に確認できる。
<第2の実施形態>
以下、混成栽培システムを具体化した第2の実施形態を
図4及び
図5にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は割愛する。
【0041】
図4に示すように、複数の栽培棚13は、全て同じ構成を有し、全て4段構成である。なお、
図4では、説明の都合上、紙面手前の栽培棚13に対して詳細に説明し、その他の栽培棚13については二点鎖線で示してそれらの栽培棚13に関する詳細な説明を省略する。
【0042】
栽培棚13は、複数の菌床17のみが配置されるキノコ栽培段17aと、複数の植物栽培容器16のみが配置される複数の植物栽培段16aとを有している。キノコ栽培段17aは、栽培棚13の最も下段である最下段に位置している。植物栽培段16aは、栽培棚13の最下段を除く各段である。照明装置18は、植物栽培段16aの各段に設けられている。
【0043】
混成栽培装置10は、送風機12cと、キノコ栽培段17aに向けて延びる吸気管51と、栽培棚13の上下方向に延びる排気管52と、排気管52から分岐している第1分岐管53、第2分岐管54、及び第3分岐管55とを備えている。
【0044】
送風機12cは、栽培棚13の外部に位置し、室内空間12の下方に配置されている。吸気管51は、キノコ栽培段17aにおける栽培棚13の左右方向の一方の側方に位置している。吸気管51のキノコ栽培段17aとは反対側の端部は、送風機12cに接続されている。排気管52は、送風機12cに接続されている。排気管52には、吸気管51を介して送風機12cが吸引した室内空間12の空気が流れる。第1分岐管53は、キノコ栽培段17aに隣接する植物栽培段16aに向けて延びている。第2分岐管54は、複数の植物栽培段16aの中央に配置されている植物栽培段16aに向けて延びている。第3分岐管55は、栽培棚13の最上段の植物栽培段16aに向けて延びている。第1分岐管53、第2分岐管54、及び第3分岐管55は、各植物栽培段16aにおける栽培棚13の左右方向の一方の側方に位置している。このように構成されることにより、送風機12cにより吸気管51を介して吸引した菌床17から発生した二酸化炭素を含む空気は、排気管52を通じて第1分岐管53、第2分岐管54、及び第3分岐管55に供給される。そして、各分岐管53,54,55を通じて排気された二酸化炭素を含む空気は、各植物栽培段16aに供給される。すなわち、送風機12c、吸気管51、排気管52、第1分岐管53、第2分岐管54、及び第3分岐管55によって室内空間12の空気を植物15に向けて噴き付ける噴出機構60が構成されている。なお、送風機12cは、室内空間12の空気を流動させている。そのため、本実施形態において、空調装置12a及び送風機12cによって室内空間12の温度を調整するとともに室内空間12の空気を流動させる空調設備が構成されている。
【0045】
制御装置30には、複数の植物栽培段16aにおいて、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように照明装置18の点灯と消灯との切り換えを繰り返すプログラムが予め記憶されている。制御装置30には、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、消灯していた照明装置18を点灯させるプログラムが予め記憶されている。そして、制御装置30には、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、照明装置18が点灯状態であった複数の植物栽培段16aのうちの一つの植物栽培段16aの照明装置18を消灯するプログラムが予め記憶されている。
【0046】
第2の実施形態の作用を説明する。
制御装置30は、複数の植物栽培段16aにおいて、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように照明装置18の点灯と消灯との切り換えを繰り返す。なお、以下、点灯状態及び消灯状態について説明するが、
図5(a)、
図5(b)、及び
図5(c)に示される網掛け部分が消灯状態であることを示しており、網掛け部分がない部分が点灯状態を示している。また、以下の説明では、3つの植物栽培段16aのうち、キノコ栽培段17aに隣接している植物栽培段16aを第1植物栽培段16aaとする。また、栽培棚13の最上段の植物栽培段16aを第2植物栽培段16abとする。さらに、第1植物栽培段16aaと第2植物栽培段16abとに挟み込まれている植物栽培段16aを第3植物栽培段16acとする。
【0047】
図5(a)に示すように、制御装置30は、第1植物栽培段16aaに設けられた照明装置18を消灯させ、第2植物栽培段16ab及び第3植物栽培段16acに設けられた照明装置18を点灯させたタイミングでタイマー30aをオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、第1植物栽培段16aaに設けられた照明装置18を点灯させるとともに、第3植物栽培段16acに設けられた照明装置18を消灯させる。このとき、第2植物栽培段16abは点灯状態が継続している。
【0048】
図5(b)に示すように、制御装置30は、第3植物栽培段16acに設けられた照明装置18を消灯させ、第1植物栽培段16aaに設けられた照明装置18を点灯させたタイミングで、タイマー30aをオフにし、タイマー30aのカウントをリセットする。そして、制御装置30は、タイマー30aを再びオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、第3植物栽培段16acに設けられた照明装置18を点灯させるとともに、第2植物栽培段16abに設けられた照明装置18を消灯する。このとき、第1植物栽培段16aaは点灯状態が継続している。
【0049】
図5(c)に示すように、制御装置30は、第2植物栽培段16abに設けられた照明装置18を消灯させ、第3植物栽培段16acに設けられた照明装置18を点灯させたタイミングで、タイマー30aをオフにし、タイマー30aのカウントをリセットする。そして、制御装置30は、タイマー30aを再びオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、第2植物栽培段16abに設けられた照明装置18を点灯させるとともに、第1植物栽培段16aaに設けられた照明装置18を消灯する。このとき、第3植物栽培段16acは点灯状態が継続している。
【0050】
このように、制御装置30は、
図5(a)の状態、
図5(b)の状態、及び
図5(c)の状態が繰り返されるように、複数の植物栽培段16aにおいて、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように各照明装置18の点灯と消灯との切り換えを行う。
【0051】
図5(a)、
図5(b)、及び
図5(c)に示すように、制御装置30は、3つの植物栽培段16aそれぞれの消灯状態となるタイミングを8時間ずつずらしている。すなわち、制御装置30は、1サイクルを24時間として、3つの植物栽培段16aそれぞれが1サイクル中のうち16時間が点灯状態となり、8時間が消灯時間となるように照明装置18の点灯と消灯とを繰り返し切り換えている。そのため、制御装置30は、複数の植物栽培段16aのうち2つの植物栽培段16aの全域に光が照射されるように照明装置18が点灯することにより点灯状態となる第1段61と、複数の植物栽培段16aのうち1つの植物栽培段16aの全域に光が照射されないように照明装置18が消灯することにより消灯状態となる第2段62とが同時に存在し、且つ複数の植物栽培段16aそれぞれにおいて1サイクル中の点灯状態の期間が消灯時間の期間よりも長くなるように照明装置18の点灯と消灯との切り換えを繰り返している。
【0052】
本実施形態の作用及び効果は、第1の実施形態と同様となるとともに以下の効果も得られる。
(2-1)キノコ栽培段17aに配置される菌床17から発生した二酸化炭素を含む空気が吸気管51、送風機12c、排気管52、及び各分岐管53,54,55により各植物栽培段16aに供給される。そのため、各植物栽培段16aにおける植物15の光合成を促進させることができる。よって、室内空間12における二酸化炭素の消費を促され、キノコ栽培及び植物栽培において、換気の頻度をより少なくすることができる。
【0053】
(2-2)栽培棚13が1台でもキノコ栽培と植物栽培とが可能で、各植物栽培段16aの順次消灯により植物15の二酸化炭素ガスの連続的な消費も可能で、小規模な混成栽培システムを実現できる。
【0054】
<第3の実施形態>
以下、混成栽培システムを具体化した第3の実施形態を
図6及び
図7にしたがって説明する。なお、本実施形態は、第2の実施形態と基本的に同じ構成を有しており、第2の実施形態との相違点は、送風機から各植物栽培段に向けて二酸化炭素を含む空気を供給する経路が異なる点である。そのため、第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は割愛する。
【0055】
図6に示すように、混成栽培装置10において、送風機12cに接続される排気管52は、栽培棚13の上下方向に延びている。そして、排気管52における栽培棚13の上下方向の上方に位置する端部は、栽培棚13の最上段を構成する栽培棚13の上壁に沿って延びている。
【0056】
混成栽培装置10は、栽培棚13の各植物栽培段16aにそれぞれ設けられるノズル本体71を備えている。ノズル本体71は、栽培棚13の各植物栽培段16aの各段において、その長手方向が栽培棚13の左右方向に一致しており、且つ栽培棚13の左右方向において、各植物栽培段16aの各植物栽培容器16に対応して複数並設されている。よって、複数のノズル本体71は、栽培棚13の各植物栽培段16aにそれぞれ配置されることにより上下方向に所定の間隔をおいて配置されている。本実施形態では、1つの植物栽培容器16に対して1つのノズル本体71が配置されている。
【0057】
混成栽培装置10は、送風機12cから送り出されたキノコ栽培段17aの空気を各ノズル本体71に分配する複数の配管72を備えている。各配管72は、排気管52の栽培棚13の最上段に沿った部分に接続されている。各配管72は、栽培棚13の上下方向に延びる一対の供給配管73を備えている。一対の供給配管73の一方は、上下方向に所定の間隔をおいて配置されている複数のノズル本体71の長手方向の一方の端部に接続されるとともに、一対の供給配管73の他方は、上下方向に所定の間隔をおいて配置されている複数のノズル本体71の長手方向の他方の端部に接続されている。そして、各ノズル本体71内には、送風機12cから送り出されたキノコ栽培段17aの空気が配管72の一対の供給配管73を介して、長手方向の両端部から供給される。
【0058】
図7に示すように、ノズル本体71は、円筒状をなしている。ノズル本体71は、シート状の粘着シート71aと、濾材71cとを有している。粘着シート71aは、PET樹脂からなる帯状のシートを用いて形成される。粘着シート71aは、濾材71cを覆っている。粘着シート71aは、粘着性を有し、濾材71cを覆ったときに濾材71cに接着されている。粘着シート71aは、濾材71cを覆った状態で円筒状をなしている。粘着シート71aは、植物15に向けて空気を噴き出す噴出口71bを複数有している。粘着シート71aには、粘着シート71aの周方向で45度の間隔をおいて噴出口71bが並んで配置されている。各噴出口71bは、円孔状であるとともに、粘着シート71aの長手方向において、所定の間隔をおいて複数並設されている。よって、ノズル本体71は、ノズル本体71の周方向及び長手方向において植物15に向けて空気を噴き出す噴出口71bを所定の間隔をおいて複数有している。
【0059】
濾材71cは、材料として、例えば熱可塑性樹脂であるポリプロピレンからなる帯状の不織布を用いて形成されている。濾材71cの目の大きさは、空気に含まれる埃、塵、カビの胞子等の異物が通過できない大きさであるとともに、空気が通過できる大きさになっている。そのため、濾材71cは、各噴出口71bから噴き出される空気に含まれる異物を捕捉する機能を有している。ノズル本体71は、濾材71cとなる不織布シートを円筒状に巻いて加熱し、硬化させものの外周を粘着シート71aで覆うことにより構成される。
【0060】
ノズル本体71は、栽培棚13の奥行方向の一端部に配置されている。ノズル本体71は、植物15に対して斜め上方であり、且つ照明装置18よりも側方に配置されている。各噴出口71bは、栽培棚13の奥行方向の他端に向いている。具体的には、粘着シート71aの周方向に45度の間隔をおいた位置にそれぞれ形成された二つの噴出口71bのうちの一方は、栽培棚13の奥行方向に沿う方向に向いている。また、粘着シート71aの周方向に45度の間隔をおいた位置にそれぞれ形成された二つの噴出口71bのうちの他方は、栽培棚13の奥行方向に対して斜め下方に向いている。
【0061】
このように構成されることにより、送風機12cにより吸気管51を介して吸引した菌床17から発生した二酸化炭素を含む空気は、排気管52を通じて各配管72に供給される。そして、各配管72を構成する一対の供給配管73を通じてノズル本体71に供給された二酸化炭素を含む空気は、各植物栽培段16aに供給される。すなわち、送風機12c、吸気管51、排気管52、各配管72、及びノズル本体71によって室内空間12の空気を植物15に向けて噴き付ける噴出機構70が構成されている。よって、噴出機構70は、室内空間12の空気に含まれる異物を捕捉する濾材71cを有している。
【0062】
また、混成栽培装置10は、第1の実施形態と同様に一対の反射板80を備えている。栽培棚13の奥行方向の一方に配置されている反射板80は、ノズル本体71を覆うように設けられている。
【0063】
本実施形態の作用及び効果は、第2の実施形態と同様となるとともに以下の効果も得られる。
(3-1)ノズル本体71は、噴出口71bから噴き出される室内空間12の空気に含まれる異物を捕捉する濾材71cを有している。そのため、送風機12cから配管72を介して栽培棚13の各植物栽培段16aにそれぞれ設けられた各ノズル本体71の噴出口71bから栽培棚13の各植物栽培段16aに配置された植物栽培容器16の植物15に向けて室内空間12の空気が噴き出す。このとき、空気が濾材71cを通過する際に、空気に含まれる埃、塵、カビの胞子等の異物が濾材71cにより捕捉され、除去される。よって、植物栽培容器16に異物が混入することを抑制できる。
【0064】
(3-2)また、送風機12cから送り出される空気には、キノコ栽培段17aから発生するキノコの胞子が含まれる虞があるが、ノズル本体71の濾材71cにより捕捉することができる。その為、室内空間12に各植物栽培段16aにキノコの胞子が飛散することを抑制できる。
【0065】
(3-3)空気は、植物15の上部を流れ、葉が密集した部分には、空気が流れ難くなる。その点、一対の反射板80を設けることにより、ノズル本体71から噴き出された空気は栽培棚13の外側に噴き抜けることが抑制され、空気が拡散することにより植物15の葉が揺れ、少ない空気でも葉の表面に滞留した空気層を拡散させることができる。よって、植物15の蒸散を活発化させ、植物15の成長を促すことができる。
【0066】
<第4の実施形態>
以下、混成栽培システムを具体化した第4の実施形態を
図8にしたがって説明する。第4の実施形態を説明するにあたり、第2の実施形態に記載される構成の一部を一例として使用する。そのため、第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は割愛する。なお、以下、点灯状態及び消灯状態について説明するが、
図8(a)、
図8(b)、及び
図8(c)に示される網掛け部分が消灯状態であることを示しており、網掛け部分がない部分が点灯状態を示している。
【0067】
図8(a)、
図8(b)、及び
図8(c)に示すように、栽培棚13の各植物栽培段16aには、3つの照明装置18が設けられている。3つの照明装置18は、栽培棚13の左右方向に並設されている。各植物栽培段16aを栽培棚13の奥行方向から見て、栽培棚13の左右方向において各植物栽培段16aが3つの領域に区画される。具体的には、各植物栽培段16aの栽培棚13の左右方向の一方に位置する領域を第1領域16adとする。また、各植物栽培段16aの栽培棚13の左右方向の他方に位置する領域を第2領域16aeとする。さらに、各植物栽培段16aの栽培棚13の左右方向の中央に位置し、第1領域16adと第2領域16aeとに挟み込まれている領域を第3領域16afとする。なお、各領域16ad,16ae,16afは、3つの照明装置18それぞれに対応した領域である。
【0068】
図8(a)に示すように、制御装置30は、各第1領域16adに設けられている全ての照明装置18を消灯させ、各第2領域16ae及び各第3領域16afに設けられている全ての照明装置18を点灯させたタイミングでタイマー30aをオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、各第1領域16adに設けられた全ての照明装置18を点灯させるとともに、各第3領域16afに設けられた全ての照明装置18を消灯させる。このとき、各第2領域16aeは点灯状態が継続している。
【0069】
図8(b)に示すように、制御装置30は、各第3領域16afに設けられた全ての照明装置18を消灯させ、各第1領域16adに設けられた全ての照明装置18を点灯させたタイミングで、タイマー30aをオフにし、タイマー30aのカウントをリセットする。そして、制御装置30は、タイマー30aを再びオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、各第3領域16afに設けられた全ての照明装置18を点灯させるとともに、各第2領域16aeに設けられた全ての照明装置18を消灯する。このとき、各第1領域16adは点灯状態が継続している。
【0070】
図8(c)に示すように、制御装置30は、各第2領域16aeに設けられた全ての照明装置18を消灯させ、各第3領域16afに設けられた全ての照明装置18を点灯させたタイミングで、タイマー30aをオフにし、タイマー30aのカウントをリセットする。そして、制御装置30は、タイマー30aを再びオンにし、時間を計測する。そして、制御装置30は、タイマー30aの計測時間が8時間経過したタイミングで、各第2領域16aeに設けられた全ての照明装置18を点灯させるとともに、各第1領域16adに設けられた全ての照明装置18を消灯する。このとき、各第3領域16afは点灯状態が継続している。
【0071】
このように、制御装置30は、
図8(a)の状態、
図8(b)の状態、及び
図8(c)の状態が繰り返されるように、各領域16ad,16ae,16afそれぞれにおいて、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように各照明装置18の点灯と消灯との切り換えを行う。
【0072】
図8(a)、
図8(b)、及び
図8(c)に示すように、制御装置30は、各領域16ad,16ae,16afそれぞれの消灯状態となるタイミングを8時間ずつずらしている。すなわち、制御装置30は、1サイクルを24時間として、各領域16ad,16ae,16afそれぞれが1サイクル中のうち16時間が点灯状態となり、8時間が消灯時間となるように照明装置18の点灯と消灯とを繰り返し切り換えている。そのため、制御装置30は、栽培棚13において、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在している。
【0073】
本実施形態の作用及び効果は第1の実施形態と同様となる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
・ 噴出機構60,70は、第1の実施形態に適用してもよい。
・ 噴出機構70は、濾材71cを有していたが、例えば、噴出機構60にも同様に濾材71cと同じ材質で構成された濾材を適用してもよい。この場合、濾材は、例えば排気管52の内部、各分岐管53,54,55における各植物栽培段16aに面する空気の出口に設けてもよいし、吸気管51の空気の入口に設けてもよい。すなわち、噴出機構70から植物15に噴き付けられる空気に含まれる異物を捕捉することができればよい。
【0075】
・ 上記各実施形態及び上記の変更例において、濾材は、噴出機構60,70に限らず、例えば空調装置12aの空気の出入口や換気装置12dのダクトに設けられるように変更してもよい。このように変更すると、植物15だけでなく菌床17に対する異物の付着も抑制できるため、菌床17の培養を好適に促進させることができる。
【0076】
・ 各実施形態において、混成栽培システム1は、栽培棚13において、植物栽培容器16に光が照射される点灯状態と、植物栽培容器16に光が照射されない消灯状態とが同時に存在するように制御装置30によって照明装置18の点灯と消灯との切り換えが繰り返れる構成であれば、栽培棚13における点灯箇所、消灯箇所はどのように変更してもよい。
【0077】
・ 各実施形態において、菌床17からは二酸化炭素が発生する。特にキノコの培養段階における約100日間における二酸化炭素の発生量が多いことが知られているが、培養が完了に近づくと二酸化炭素の発生量が少なくなる。そこで、室内空間12において菌床17から発生する二酸化炭素の量を安定させるために、例えば複数の菌床17を、培養期間が1カ月おきのものを用意して、100日に近くなったものから順次新しい菌床17に交換していくことが好ましい。
【0078】
・ 各実施形態において、栽培棚13の段数、又は栽培棚13の個数は適宜変更してもよい。
・ 各実施形態において、栽培棚13における左右方向の両側方が、例えば、照明装置18からの光を植物15に向けて反射させる反射板80によって閉塞されていてもよい。
【0079】
・ 各実施形態及び上記変更例において、反射板80に代替して、柔らかい布を用いた反射布を採用してもよい。
・ 反射布は、1枚の布で栽培棚の最上段から下段まで同時に全ての開口を閉寒するように配置してもよい。反射布を最上段の上部に巻物の様に巻き取り、全ての開口を開放状態を保ってもよい。
【0080】
・ 反射布、または反射板80は、栽培棚13の内部の照明装置18の光を植物15の方向に反射し、外部から栽培棚13内部の植物15を透過するマジックミラーを採用してもよい。
【0081】
・ 送風機12cの配置は特に限定されるものではなく、例えば室内空間12の上方に配置されていてもよい。
・ 各実施形態において、キノコは椎茸に限らず他の菌類であってもよい。同様に、植物15は、レタスに限らず他の野菜、果物であってもよい。
【0082】
・ 各実施形態において、二酸化炭素濃度センサ21、温度センサ22、及び湿度センサ23により検出部が構成されていたが、光量子センサ、風速センサ、飽差センサ、ECセンサ、pHセンサ、液滴センサ、振動センサ、カメラ、赤外線センサ、紫外線センサ、照度センサ、荷重センサ等を検出部に含めてもよい。すなわち、室内空間12の栽培環境情報を検出できるセンサであれば採用してもよい。
【0083】
・ 二酸化炭素濃度センサ21は、二酸化炭素濃度計に変更してもよい。温度センサ22は、温度計に変更してもよい。湿度センサ23は、湿度計に変更してもよい。
・ 各実施形態において、制御装置30は、AIの機能を有しているとよい。この場合、例えば、制御装置30は、認識部と、判断部と、出力制御部と、記憶部とを有している。認識部は、検出部に含まれる各種センサやカメラ等で検出される栽培対象である植物15の生育状況や栽培対象である菌床17の培養状況などの画像データを含む栽培環境情報に基づいて植物15及び菌床17を認識する機能を有している。画像データは、植物15の大きさや葉数、葉面積、菌床17の表面に形成されるカビの色、大きさ、及び形状などを確認している。判断部は、認識部による栽培対象を認識した結果に基づいて植物15の生育結果や菌床17の培養結果を判断する。判断部は、検出部により検出された二酸化炭素濃度、温度、湿度、及び画像データを含む栽培環境情報と、植物15の生育結果や菌床17の培養結果とをラベルとして、機械学習アルゴリズムや機械学習モデルを用いて栽培環境情報と栽培対象とに関連付いた栽培環境モデルを生成している。
【0084】
また、上記の制御装置30の判断部は、検出部から出力された二酸化炭素濃度、温度、湿度、及び画像データを含んだ栽培環境情報と、植物15の生育結果や菌床17の培養結果とから導かれる菌床17の培養状況の変化、植物15の生育状態の変化、室内空間12の外部環境の変化をラベルとして、機械学習アルゴリズムや機械学習モデルを用いて室内空間12の最適な栽培環境を判断するための最適環境制御モデルを生成してもよい。出力制御部は、判断部により生成された栽培環境モデル又は最適環境制御モデルに基づいて栽培対象にかかる出力を制御する。すなわち、出力制御部は、栽培環境モデル又は最適環境制御モデルに基づいて室内空間12の二酸化炭素濃度、温度、及び湿度を含む栽培環境を調整するために栽培環境調整装置を制御する。
【0085】
よって、制御装置30を上記のように構成することにより、判断部が栽培対象である植物15及び菌床17の生育結果及び培養結果や検出部により検出される栽培環境情報を入力とする機械学習を用いて栽培環境モデル又は最適環境制御モデルを生成でき、より最適な植物15の栽培環境及び菌床17の培養環境を提供できる。
【0086】
なお、上記の機械学習モデルは、栽培環境モデル及び最適環境制御モデルの機械学習に利用可能なモデルのいずれであってもよい。例えば、SVM(Support Vector Machine)、HMM(Hidden Markov Model)、カルマンフィルタ等のフィルタ、ランダムフォレスト、近傍法、ディープラーニング等のニューラルネットワークまたはベイジアンネットワークなどを用いてもよい。
【0087】
・ また、認識部により栽培対象を認識する場合、赤外線センサも合わせて用いてもよい。例えば、赤外線センサは、赤外線カメラであり、植物15の葉面の温度や蒸散のデータ、及び菌床17の表面温度や水分のデータを検出する。上記変更例において、制御装置30では、カメラにより検出される植物15及び菌床17の画像データと、赤外線センサにより検出される表面温度や蒸散、水分のデータと、栽培対象の栽培結果とを学習して、現状の画像データ、表面温度や蒸散、水分、植物15の生育状態及び菌床17の培養状態から今後の植物15及び菌床17の生育状態を予測することにより栽培環境モデル又は最適環境制御モデルを生成してもよい。
【0088】
・上記変更例において、複数の栽培棚13毎に栽培環境モデル又は最適環境制御モデルを適用してもよい。また、各栽培棚13毎に複数の栽培環境モデル又は複数の最適環境制御モデルを生成し、使用されるモデルの優先順位をつけるとよい。
【0089】
・上記変更例において、栽培環境モデルと最適環境制御モデルとを適宜切り換えてもよい。具体的には、気象状態が晴れであれば栽培環境モデルを使用し、それ以外の気象であれば最適環境制御モデルを使用するようにしてもよい。また、気象状態が晴れであれば最適環境制御モデルを使用し、それ以外の気象であれば栽培環境モデルを使用するようにしてもよい。
【0090】
・上記変更例において、各栽培棚13に配置される栽培対象の種類に応じて異なる栽培環境モデル又は異なる最適環境制御モデルを使用してもよい。例えば、栽培棚13において、菌床17が配置される栽培棚13に対しては最適環境制御モデルとしての第1最適環境制御モデルを生成し、植物15が配置される栽培棚13に対しては最適環境制御モデルとしての第2最適環境制御モデルを生成してもよい。そして、第1最適環境制御モデルと第2最適環境モデルとを適宜切り換えるようにしてもよい。また、第1最適環境制御モデルと第2最適環境モデルとを適宜切り換えは、例えば二酸化炭素濃度の高低、温度の高低、湿度の高低等によって実施してもよい。
【0091】
・上記変更例において、制御装置30の判断部は、栽培環境モデル及び最適環境制御モデルだけに限らず、3種類以上のモデルを生成してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…混成栽培システム、11c…二酸化炭素供給装置、12…室内空間、12a…空調装置、12b…加湿器、12c…送風機、12d…換気装置、13…栽培棚、13a…植物栽培棚、13b…キノコ栽培棚、15…植物、16…植物栽培容器、16a…植物栽培段、17…菌床、17a…キノコ栽培段、18…照明装置、30…制御装置、41…第1棚、42…第2棚、61…第1段、62…第2段、60,70…噴出機構、71c…濾材。