(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】液体を収容する耐圧保存容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20230124BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20230124BHJP
B01J 4/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N35/02 A
B01J4/00 103
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019228807
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516125624
【氏名又は名称】ユーロイミューン・メディツィニシェ・ラボルディアグノシュティカ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ビアンカ・フート
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・コフトゥン
(72)【発明者】
【氏名】ラース・コシナート
(72)【発明者】
【氏名】フランク・モレンハウアー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンフリート・シュテッカー
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0109009(US,A1)
【文献】米国特許第04890757(US,A)
【文献】国際公開第2014/195409(WO,A1)
【文献】特開2009-222443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(F2)を収容する耐圧保存容器(V)であって、
耐圧保存容器(V)が、長手方向に延びており、かつ対称軸(SA)に対して回転対称である本体(G)を備え、前記本体(G)が、少なくとも部分的に、液体(FL)を十分に収容可能とする空洞部(H)であって、回転対称である空洞部(H)、特に、円筒形状又は円錐円筒形状である空洞部(H)を形成し、
前記本体(G)が、下面(U)にて底部(B)によって閉鎖され、さらに、上面(O)にて開口(OF)を有し、前記開口(OF)が、閉鎖部(VS)によって耐圧状態で閉鎖され、
耐圧保存容器(V)が、前記本体(G)に対してその外部にて隣接する複数の補強要素(VE)をさらに備え、前記複数の補強要素(VE)が、前記本体(G)の対称軸(SA)に対して平行に延びるとともに、前記本体(G)の対称軸(SA)周りに回転対称に配置され、これによって、隣り合う補強要素(VE)間それぞれに、前記本体(G)の外部に露出した壁部分(W)が形成され、
前記露出した壁部分(W)に、少なくとも2つの中空針(N1,N2)を、圧力を遮断した状態で刺し込むことが可能になっており、
前記針(N1,N2)を刺し込む前記露出した壁部分(W)に、分離継ぎ目及びゲート残りを有さず、
前記保存容器(V)が、前記上面(O)にて、前記本体(G)の開口(OF)の周りを囲む周縁部(UR)を有し、前記周縁部(UR)が、前記開口(OF)の外周縁(R)から離れ、
前記保存容器の閉鎖部が、溶融法を用いて前記周縁部に設けられる箔であり(S.8 Z.25-26)、
前記本体(G)及び前記補強要素(VE)が、射出成形法を用いて、プラスチック、又は、ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレン、から単一部品として作製され(A4)、
前記本体(G)が、前記本体(G)の下面(U)に凹部(AN)を有している(A8)、耐圧保存容器。
【請求項2】
前記露出した壁部分(W)それぞれが、同じ壁厚(WS)を有している、請求項1に記載の保存容器。
【請求項3】
前記底部(B)が、この底部(B)の最深点(TP)から、前記本体(G)の内側壁(I)に向かって湾曲している、請求項1に記載の保存容器。
【請求項4】
前記本体(G)の内側面(IS)が、実質的に一定の表面粗さを有している、請求項1に記載の保存容器。
【請求項5】
前記露出した壁部分(W)の壁厚(WS)が、0.15mmよりも大きくなっている、請求項1に記載の保存容器。
【請求項6】
前記液体(FL)が、不均質の液相、または、ビードを含む水溶液となっている、請求項1に記載の保存容器。
【請求項7】
前記液体(FL)が、生物学的薬剤若しくは科学的薬剤入りの水溶液又は液体サンプル、あるいは、血液サンプル、あるいは、血清を含む均質な液相となっている、請求項1に記載の保存容器。
【請求項8】
前記補強要素及び前記本体が、前記保存容器の下面まで延びており、これによって、前記補強要素が、前記本体と協働してガイド溝を形成し、前記ガイド溝が、前記本体の下面に向かって開口している、請求項1に記載の保存容器。
【請求項9】
前記保存容器が、前記上面にて、前記ガイド溝を上方に向かって制限する中断部を有している、請求項8に記載の保存容器。
【請求項10】
前記本体(G)が、少なくとも部分的に又は少なくとも一部にて、円筒形状の空洞部又は円錐円筒形状の空洞部を形成している、請求項1に記載の保存容器。
【請求項11】
複数の保存容器を保管するマガジン(M)であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの保存容器を備えるマガジン。
【請求項12】
複数の保存容器を保管し、前記複数の保存容器のうち少なくとも1つの保存容器が請求項8に記載の保存容器であるマガジン(M)であって、
前記マガジンが、少なくとも1つのマガジンチャネル(MK)を有し、前記少なくとも1つのマガジンチャネル(MK)が、前記マガジンの上面(OM)から前記マガジンの下面(UM)まで延び、前記少なくとも1つのマガジンチャネル(MK)内に、上側から又は前記マガジンの上面(OM)から、前記少なくとも1つの保存容器を先ずその下面(U)と共に挿入可能になっており、
前記マガジンチャネル(MK)の下側領域には、機械的に可撓性である抑止要素が設けられ、前記抑止要素が、静止位置にて、前記マガジンチャネル内に突出し、前記抑止要素が、前記少なくとも1つの保存容器の第1の位置にて、前記ガイド溝のうちの1つに係合するとともに、さらに、前記少なくとも1つの保存容器の中断部が前記抑止要素の上に載るようにさらに構成されている、マガジン。
【請求項13】
前記マガジンチャネル(MK)の下側領域にて、機械的に可撓性であるガイド要素(FE)が設けられ、前記ガイド要素(FE)が、少なくとも、前記第1の位置の下における前記少なくとも1つの保存容器の第2の位置にて、前記ガイド溝(VR)のうちの1つに係合するとともに、前記ガイド溝を形成する前記補強要素(VE)に隣接し、
前記第2の位置にて、前記少なくとも1つの保存容器の下面(U)が、前記マガジンチャネル(MK)から突出している、
請求項12に記載されたマガジン。
【請求項14】
保存容器(V)から反応容器(RG)に液体(FL)を移送する方法であって、
a)
請求項1~10のいずれか一項に記載の前記保存容器(V)を準備するステップと、
b)パージ液体リザーバ(SR)に接続されている第1の中空針(N1)を、圧力を遮断した状態で刺し込むステップと、
c)前記反応容器(RG)に接続されている第2の中空針(N2)を、圧力を遮断した状態で刺し込むステップと、
d)パージ液体(SF)を、前記第1の中空針(N1)を介して前記パージ液体リザーバ(SR)から前記保存容器(VG)に導入しながら、前記液体(FL)を、前記第2の中空針(N2)を介して前記保存容器(V)から前記反応容器(RF)に排出するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する耐圧保存容器(druckdichtes Vorratsgefaess)に関する。耐圧保存容器は、長手方向に延び、かつ対称軸に対して回転対称である本体(Grundkoerper)を備え、本体は、少なくとも部分的に又は少なくとも一部において、液体を十分に収容可能とするか又は液体の大部分を収容可能とし、かつ回転対称である空洞部を形成する。本体は、下面において底部によって閉鎖され、さらに、上面において開口を有し、開口は、閉鎖部によって耐圧(druckdicht)状態で閉鎖される。耐圧保存容器は、本体に対してその外部にて隣接する複数の補強要素をさらに備え、複数の補強要素は、本体の対称軸に対して平行に、特に、本体の長手方向に延びるとともに、本体の対称軸の周りに回転対称に配置され、これによって、隣り合う補強要素間それぞれに、本体の外部に露出した壁部分が形成される。露出した壁部分の性質によって、少なくとも2つの中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込むことが可能になっている。空洞部は、好ましくは、円筒形状又は円錐円筒形状(kegelzylindrischer)の空洞部になっている。
【0002】
本発明はさらに、保存容器から反応容器に液体を移送する方法に関する。本方法は、本発明に係る保存容器を準備する工程と、パージ液体リザーバに接続されている第1の中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込む工程と、反応容器に接続されている第2の中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込む工程と、パージ液体(Spuelfluessigkeit)を、第1の中空針を介してパージ液体リザーバから保存容器に導入しながら、液体を、第2の中空針を介して保存容器から反応容器に排出する工程とを含む。
【背景技術】
【0003】
化学、バイオテクノロジー、薬学、及び医学の分野における多くの技術的方法それぞれにおいては、多大なコストを掛けなければ製造できない又は詰め替えできない複数の液体試薬を使用する必要がある。そのため、各試薬を、方法を実施する都度、新たに製造するのではなく、複数回の実施のために十分な量を一回で準備し、その後、使用時まで適切な分量を保存することが合理的である。
【0004】
このことは、経済面及び物流面での利点とは別に、医学、より詳細には、検査診断学の分野において、所望の診断方法を実施する都度、実質的に同一の試薬を使用することができるため、システム全体のエラーの発生し易さを最小限に抑えることに直結する。結果が不明瞭である場合には、使用される試薬の品質欠陥がこの不明瞭さの原因であるか否かを、簡単に調べることができる。
【0005】
しかしながら、分析及び診断の分野における小型化の傾向により、高価であることの多い試薬を節約するために、必要最低限の最小体積(Mindestvolumen)まで反応バッチを縮小し、これによって、個々の分量が僅かな体積しかなく、極端な例では数マイクロリットルである場合の分配を行うことは困難である。体積が小さいほど、ある容器から別の容器に液相を移送するときに、表面の非特異的吸着及び各装置固有のデッドボリュームに起因する相対損失が大きくなる。
【0006】
僅かな体積分の移送では、方法の再現性の低さに結び付くことも多くある。これは、温度差、振動、又は技術的に生じ得る使用量の変動に起因する異なる蒸発量等のランダムな作用が、結果に対してより大きな影響を及ぼすためである。
【0007】
特に問題となるのは、不均質の液体、例えば、ビードが底部に沈み得るように水よりも高い密度を有し、かつビードが水溶液中に入った状態となる懸濁液である。このような水溶液を均質になるように混合し、その後、分配する場合、水相中のビードの割合は、全てのビードが沈殿するまで、分配している間に減少する。従って、1回量当たりのビードの数が減り、分配の開始時に移し取られた分量は、後から移し取られたものよりもビードを含む量が多くなる。
【0008】
さらに、液相中のそのようなビードは、例えば、保存容器における蓋の下側の表面に蓄積し易い。また、これによって、特に、移送容器内のビードの位置及びビードの完全な移送が視覚的に確認されない自動化工程においては、ビードの濃度が同じになるような分量を取り出すことが困難になる。
【0009】
多くの小型化システムにおいては、ビードを試薬の担体として使用する。例えば、ビードは、免疫診断分野においては、ヒト由来サンプル内の検出すべき抗体に結合する、固定化された抗原の担体とすることができる。このようなビードが液体サンプルとともにインキュベートされると、抗体が存在する場合、ビードに固定化された抗原抗体複合体が形成される。洗浄工程の後、この複合体は、好適な試薬、例えば、マーカー付き二次抗体によって検出することができる。市販のランダムアクセス分析器は、この原理に基づいている。ビードは、通常、水溶液の形で提供され、使用するときまで保存される。
【0010】
本出願人の特許文献1によれば、パージ液体を、パージ液体リザーバから第1の中空針を介して、液体を収容する耐圧保存容器に導入し、その液体を試薬容器に移送させるという原理が知られている。第2の中空釘を保存容器に刺し込めば、保存容器内に貯留されている液体が、パージ液体の導入によって、好ましくは、圧力を受けることによって、保存容器から、保存容器に刺し込まれた第2の中空針を通って流れ出す。このような第2の中空針は反応容器に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、僅かな体積の液体を、保存容器から反応容器に定量的に、すなわち、可能な限り完全に移送するとりわけ簡単な自動化システムを実現可能又提供可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る課題は、本発明に係る保存容器、本発明に係る保存容器を備える本発明に係るマガジン、及び本発明に係る方法によって解決することができる。
【0014】
先ずは、液体を収容する耐圧保存容器であって、耐圧保存容器が、長手方向に延び、かつ対称軸に対して回転対称である本体を備え、本体が、少なくとも部分的に又は一部において、液体を十分に収容可能とするか又は液体の大部分を収容可能とし、かつ回転対称である空洞部を形成する、耐圧保存容器が提案される。空洞部は、円筒形状又は円錐円筒形状の空洞部であることが好ましい。本体は、下面において底部によって閉鎖され、さらに、上面において開口を有し、開口は、閉鎖部によって耐圧状態で閉鎖される。耐圧保存容器は、本体に対してその外部にて隣接する複数の補強要素をさらに備え、複数の補強要素は、本体の対称軸に対して平行に延びるとともに、本体の対称軸の周りに回転対称に配置され、これによって、隣り合う補強要素間それぞれに、本体の外部に露出した壁部分が形成される。露出した壁部分の性質によって、少なくとも2つの中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込むことが可能である。補強要素は、壁厚又は壁部分の材料厚さの少なくとも2倍の材料厚さを有する細長リブであることが好ましい。
【0015】
保存容器は、蒸気を通さず、水密(wasserdicht)で、2バールまでの内圧に対して耐圧性であることが好ましい。露出した壁部分の性質によって、少なくとも2つの中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込むことが可能であり、その際、中空針を刺し込むと、刺し込み箇所は、キャピラリ内の内圧が2バールまでの場合、壁部分と中空針との間に液体が浸入しないように耐圧状態になることが好ましい。
【0016】
本体は、長手方向にて本体の対称軸に対して回転対称であることが好ましい。
【0017】
補強要素は、本体の対称軸に対して、特に、回転対称に配置され、また、本体の対称軸の軸中心点に対して点対称に配置される。本体の対称軸は、本体の長手方向に延びることが好ましい。
【0018】
特に、補強要素は、好ましくは、保存容器の長手方向に細長くなっている。補強要素は、本体に対してその外部にて隣接するいわゆるリブであることが好ましい。補強要素は、壁厚又は壁部分の材料厚さの少なくとも2倍の材料厚さを有する細長リブであることが好ましい。
【0019】
補強要素は、本体の長さに対して少なくとも70%の長さを有すると好ましい。
【0020】
補強要素は、対称軸の周りでのキャピラリの1つ以上の回転に関して、所定の角度、特に、360度を補強要素の数で割った所定の角度で、対称軸に対して回転対称であることが好ましい。すなわち、保存容器は、保存容器の対称軸周りにおける保存容器の回転に関して、特に、360度を補強要素の数で割った所定の角度で実質的に回転対称になっている。また、保存容器は、長手方向において、保存容器の対称軸周りにて、特に、回転対称になっている。
【0021】
補強要素が本体の対称軸周りに上述の方法で回転対称に配置されることによって、自動化処理のために、1つ以上の把持要素によって保存容器を外側から把持可能とすることができ、この場合、保存容器は、所定の単一の位置だけでなく、複数の位置において、このような把持システムに適合する。例えば、4つの補強要素を使用し、従って、本体の対称軸又は保存容器の対称軸周りに4つの異なる回転構成を用いる場合、自動化のために、保存容器がこれらの4つの位置のうちのいずれをとるかは重要ではない。すなわち、本発明に係る保存容器が自動化工程において提供され、この保存容器が把持システムに供給され、次いで、把持システムが保存容器を把持し、さらに、例えば、中空針を刺し込む工程のために保存容器を固く保持する場合、自動化の過程で、事前に行われた保存容器の分類工程又は準備工程によって、複数の所定位置のうちのいずれにおいて保存容器が把持具に供給又は提供されるかを考慮する必要がない。
【0022】
さらに、隣り合う補強要素間に、本体の外部に露出した各壁部分が形成されることによって、この露出した壁部分への中空針の望ましい刺し込みが可能になり、そのため、壁厚、すなわち、壁に中空針を十分に刺し通すことが容易にできるように壁部分の壁厚の寸法を決めることができる。しかしながら、保存容器全体の機械的な安定性は、これらの壁部分又は壁厚の寸法決めのみによって必ずしももたらされず、補強要素の寸法決めによっても確実にすることができる。従って、保存容器全体の機械的な安定性又はロバスト性が低下しすぎないように、中空針を壁部分に刺し込む労力を最小限にすることができる。従って、この場合、保存容器の機械的な安定性は、特に、把持具による把持工程にて生じる力に関して、補強要素の寸法決めによって確実にすることができる。
【0023】
さらに、補強要素が本体の外部にあることによって、例えば、空洞部を通って延びる支持要素等のように、空洞部内のさらなる機械的要素を形成することなく、液体を収容する空洞部を設けることが可能になる。空洞部内にそのような支持要素を設けた場合、このような機械的要素は、空洞部を通るパージ液体の流れを妨害し、これによって、液体を排出する効率を低下させてしまう。従って、保存容器内に液体の残留体積が残される可能性があり、このことは望ましくない。
【0024】
保存容器の本体及び補強要素は、特に、射出成形法又は3D印刷法を用いて、単一部品(einstueckig:ワンピース)として作製されることが好ましい。このことは、保存容器の安定性をもたらす材料の均質性を保証できるという利点を有する。
【0025】
露出した壁部分それぞれが、同じ壁厚を有することが好ましい。露出した壁部分それぞれが、本体の長手方向において、同じ一定の壁厚を有することが特に好ましい。このことは、1つ以上の中空針をそれに対応する壁部分に刺し込む際の機械的挙動又は力挙動が、全ての壁部分について同じになり、そのため、中空針を壁部分に刺し込む処理工程が、所定の好ましい位置に対する容器の対称軸周りの保存容器の回転に左右されないという利点を有する。このような好ましい位置は、上述したような対応する角度を考慮して得られる位置として得られる。
【0026】
保存容器の本体及び補強要素は、射出成形法を用いて、プラスチック、好ましくは、ポリエチレン、特に好ましくは、高密度ポリエチレンから単一部品として作製されることが好ましい。
【0027】
プラスチックがポリエチレンである場合、壁部分は、この壁部分を破壊するおそれなく、又は壁部分の小片が剥がれ落ちて液体中に入り込むことなく、1つ以上の中空針を刺し込むのに十分な柔らかさであるという利点をもたらす。これによって、そのような小片が液体中に達し、場合によっては、その上、パージ液体を保存容器から排出させるための中空針を詰まらせるといったことが回避される。特に、高密度ポリエチレンは、このプラスチックが、生体サンプルを処理するための実験室での使用条件に適合するという利点も有する。
【0028】
プラスチックの選択を高密度ポリエチレンとした場合、このようなプラスチックは、特に、高い引き裂き強度及び安定性を有し、そのため、非常に薄い厚さで作製又は加工することができるという特別な利点を有する。従って、このようにして、単数又は複数の壁部分のとりわけ薄い、すなわち、僅かな壁厚をもたらすことができ、これによって、壁部分をさらに容易に刺し通すことが可能になる。特に、ポリエチレンは、このプラスチックが、生体サンプルを処理するための実験室での使用条件に適合するという利点を有する。
【0029】
本体は、針が刺し込まれる露出した壁部分に、分離継ぎ目及びゲート残り(Angussrueckstaende)を有さないようになっていることが好ましい。このような分離継ぎ目又はゲート残りは、射出成形法における材料の副産物としては一般的である。このような副産物が露出した壁部分に存在しないことによって、壁部分の材料の均質性、ひいては、この壁部分における機械的な安定性も実現することができる。さらに、これによって、壁部分が射出成形法における対応する材料の副産物を有するか否かに左右されないような労力にて、中空針を壁部分に刺し込むことができるということが保証され得る。これによって、中空針を壁部分に刺し込む際の刺し込み挙動又は消費される力の特に高い再現性を得ることができる。
【0030】
底部は、この底部の最深点から本体の内側壁に向かって湾曲していることが好ましい。底部は、この底部の最深点から本体の内側壁に向かって外方に湾曲していることが特に好ましい。
【0031】
液体が流れ出るときに、液体中に含まれる可能性がある粒子又はビードも一緒に流れ出るため、底部の縁領域にそのような粒子が取り残されることを回避しなければならない。本明細書に言及した底部の湾曲した構造によって、本体の底部及び内側壁間の領域における液体及びパージ液体の流れ挙動が円滑化され、このような領域にいくらかの液体又は液体中の粒子若しくはビードが取り残される確率を低くすることができる。
【0032】
本体の内側面は、実質的に一定の表面粗さを有し、特に、0.8Rz未満、特に好ましくは、0.4Rz未満の深さ方向平均粗さ(gemittelte Rautiefe)を有することが好ましい。本明細書に記載の方法で選択された表面粗さによって、本体の内側面における粒子又はビードの流れが改善又は促進され、保存容器内に液体中の粒子又はビードが残る確率を低くすることができる。
【0033】
本体は、底部の下面に凹部を有することが好ましい。このことは、この凹部において、材料を射出成形法により射出することができる位置若しくは場所、又は材料を射出成形工具に導入することができる位置若しくは場所が与えられるという利点を有する。この凹部に、例えば、ゲート残り等のような材料の副産物が生じる場合であっても、この材料の副産物は、底部の下面を越えて突出することなく、凹部内に留まる。これによって、例えば、保存容器を互いに積み重ねる場合に、このような材料の副産物が保存容器の当該組合せ体の機械的な安定性に関わる又は影響を及ぼすことなく、第1のキャピラリ又は第1の保存容器における底部の下面を、第2のキャピラリ又は第2のキャピラリにおける上面に配置することができるということが保証され得る。さらに、材料の副産物が、下にある保存容器の上面の閉鎖部を損なうこともない。
【0034】
露出した壁部分の壁厚は、0.15mmよりも大きく、好ましくは、0.2mmよりも大きいことが好ましい。本明細書に記載の方法で壁厚を選択することによって、針が刺し込まれる壁部分の最低限の安定性が保証される。補強要素の壁厚は、好ましくは、少なくとも0.5mm、より好ましくは、少なくとも0.8mm、最も好ましくは、少なくとも1mmであるとよい。
【0035】
各壁部分は、この壁部分の境界を成す2つの補強要素間それぞれにおいて、同じ壁幅を有することが好ましい。
【0036】
保存容器は、上面において、本体の開口の周りを囲む周縁部を有し、この周縁部は、開口の外縁部からある距離だけ離れていることが好ましい。この距離は、好ましくは、少なくとも0.01mm、特に好ましくは、0.05mmであるとよい。周縁部は、好ましくは、少なくとも0.2mmの高さであるとよい。
【0037】
保存容器の閉鎖部は、溶融法を用いて周縁部に設けられる又は固定される箔であることが好ましい。
【0038】
周縁部は、箔の起点としての役目を果たすことができるという利点を有するが、箔の溶着の際にこの縁部の形状が変化する可能性がある。溶着工程の間に縁部の幅が広くなりすぎると、これにより、縁部が保存容器の対称軸の方向に広がり、この方向において本体の開口の外縁部を越えて拡大することにつながる場合があり、開口の外縁部を越えてはみ出した縁部及び箔の材料によって形成される、いわゆるアンダーカットを形成する可能性がある。このようなアンダーカットには、パージ工程の間に、液体の体積だけでなく、液体中の粒子又はビードも押し留められる可能性がある。好ましくは外縁部が開口から離れていることによって、溶着工程においてそのようなアンダーカットが形成されないことが確実になる。
【0039】
液体は、不均質の液相、好ましくは、ビードを含む水溶液であることが好ましい。
【0040】
液体は、好ましくは、生物学的薬剤若しくは化学的薬剤入りの水溶液又は液体サンプル、特に好ましくは、血液サンプル、最も好ましくは、血清を含む均質な液相であることが好ましい。
【0041】
補強要素は、露出した壁部分の壁厚に対して少なくとも2倍の材料厚さを有することが好ましい。これによって、保存容器の最低限の機械的な安定性を保証できる。
【0042】
保存要素は、露出した壁部分の壁厚に対して最大でも4倍の材料厚さを有することが好ましい。このことは、本体及び補強要素を共通の単一部品として作製する射出成形法において、材料厚さの差が大きすぎると、金型又は射出成形工具内でのプラスチック材料の流れが、工具内又は金型内の全ての容積領域に確実に達することができないことから有利である。
【0043】
保存容器から反応容器に液体を移送する方法であって、
a)本発明に係る保存容器を準備する工程と、
b)パージ液体リザーバに接続されている第1の中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込む工程と、
c)反応容器に接続されている第2の中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込む工程と、
d)パージ液体を、第1の中空針を介してパージ液体リザーバから保存容器に導入しながら、液体を、第2の中空針を介して保存容器から反応容器に排出する工程と、
を含む方法がさらに提案される。
【0044】
全ての態様及び実施形態のうちの好ましい実施形態において、液体は、不均質の液相、好ましくは、粒子又はビード等の固形物を含む水溶液であるとよい。
【0045】
「不均質の液相」という用語は、液相が、主要な液体成分に加え、これとは区別される相における少なくとも1つのさらなる成分、例えば、主要な液体成分とは混合しないさらなる液体、又は固形物を含むことを意味することが好ましい。
【0046】
全ての態様及び実施形態のうちの好ましい実施形態において、液体は、好ましくは、生物学的薬剤若しくは化学的薬剤入りの水溶液又は液体サンプル、特に好ましくは、血液サンプル、最も好ましくは、血清を含む均質な液相である。均質な液相は、診断検査のために採取され、任意に調製されたヒト又は動物由来のサンプル、例えば、血液、好ましくは、血清、尿、髄液、唾液、又は汗であることが好ましい。
【0047】
好ましい実施形態において、本明細書で用いられる「液体」という用語は、20℃で大気圧下にて、少なくとも10重量パーセント、好ましくは、20重量パーセント、30重量パーセント、40重量パーセント、50重量パーセント、75重量パーセントが液体によって構成される物質又は混合物として理解される。ただし、この液体は、特に、固形物を含むという点で不均質となり得る。液体は、本発明に係る方法を実施する際には液状であるが、凍結状態で保存容器に保存することもできる。保存容器は、主に液体で満たされ、すなわち、例えば、少なくとも75%、80%、90%、又は95%を液体で満たされていることが好ましい。気相は、空気によって構成されるか、又は化学的に不活性なシールドガス、例えば、アルゴン若しくは窒素を含むことができる。保存容器の容積は、100μl未満、より好ましくは、50μl未満、さらにより好ましくは、45μl未満、最も好ましくは、35μl未満とすることができる。特に、保存容器の容積は、一例として25μlとすることができる。
【0048】
液体は、生物学的薬剤若しくは化学的薬剤の溶液、又は検出すべき反応物を含むヒト若しくは動物由来のサンプルとすることができる。特に好ましくは、液体は、血清、尿、髄液、若しくは唾液、又はこれらの希釈若しくは処理形態を含む群から選択される体液を含むサンプルである。代替的には、液体は、食品、飲料品、飲料水若しくは入浴水、糞便、土壌材料等からのサンプルとすることができる。サンプルは、採取後に好適な方法で、例えば、血液サンプルの場合、血液の不溶性成分を遠心分離することによって処理され、及び/又は保存可能な状態にされることが好ましい。
【0049】
液体は、不均質の相を有し、非混和性であるか若しくは限定的にのみ混和性である2つの液体、又は固形物入りの液体を含むことができると好ましい。好ましい実施形態において、液体は、ビード入りの水溶液である。このようなビードには、ビードに固定化された生物学的試薬、例えば、抗原として機能するポリペプチドを具備することができる。主に炭水化物(例えば、アガロース)又はプラスチックをベースとした、数多くの用途に対する様々なビードが市販されている。これらのビードは、試薬、例えば、抗体又は抗原の固定化に利用することができる、カルボキシ基等の活性又は活性化可能な化学基を含む。ビードは、0.2μm~5mm、0.5μm~1mm、0.75μm~100μm、又は1μm~10μmの断面直径を有することが好ましい。ビードは、診断に関連する抗体に結合する抗原、又は親和性リガンド、例えば、ビオチン若しくはグルタチオンによって被覆することができる。液体は、ビード含量が10%~90%、より好ましくは、20%~80%、より好ましくは、30%~70%、さらにより好ましくは、40%~60%(w/w)である水性懸濁液の形態にて、ビードを含むことが好ましい。
【0050】
特に好ましい実施形態において、ビードは、磁石を用いて表面に容易に集めることができる常磁性ビードであるとよい。このために、市販の常磁性ビードは、大抵の場合、常磁性鉱物、例えば酸化鉄を含んでいる。
【0051】
均質性の状態にかかわらず、水性液相が用いられることが好ましい。これには、保存のために、エタノール若しくはアジド等の好適な添加剤を含むことができるか、又は、例えば、生物学的薬剤若しくは化学的薬剤を安定化させるために、pH緩衝剤、グリセリン、若しくは塩等の安定化剤を生理的濃度で含むことができる。好適な緩衝剤は、例えば、リン酸ナトリウム10mM、塩化ナトリウム150mM、グリセロール50%、及びアジ化ナトリウム0.02(w/v)、pH7.4である。
【0052】
以下、本発明を、特定の実施形態に基づいて、本発明の全体的な構想を制限することなく、図面に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】従来技術から知られている、保存容器から液体を流し出す基本原理を示す図である。
【
図2】横置き状態で、本発明に係る保存容器の好ましい実施形態を示す図である。
【
図3】直立した縦置き状態で、本発明に係る保存容器の好ましい実施形態を側面図として示す図である。
【
図4】保存容器の好ましい実施形態を示す上面図である。
【
図5】保存容器の好ましい実施形態を示す断面図である。
【
図6】保存容器の好ましい実施形態を示す底面図である。
【
図7】保存容器の好ましい実施形態の底部を示す詳細図である。
【
図8】本発明に係る保存容器の開口の周縁部を示す詳細図である。
【
図9】2つの視点から見た状態で、提案されるマガジンの一実施形態を示す図である。
【
図10】提案されるマガジンの一実施形態を示す側面図である。
【
図12】提案されるマガジンの一実施形態を示す上面図である。
【
図13】提案されるマガジンの一実施形態を示す底面図である。
【
図14】提案されるマガジンの一実施形態のマガジンチャネルを通るように示す断面図である。
【
図16】
図16a、
図16b、及び
図16cは、提案されるマガジンの一実施形態を斜め下から見た状態でマガジンチャネルを示す詳細図である。の詳細図である。
【
図17】
図17a及び
図17bは、提案されるマガジンの一実施形態を真下から見た状態でマガジンチャネルを示す詳細図である。
【
図18】
図18a及び
図18bは、異なる視点又は視野から見たマガジンチャネルを断面視した状態で、提案されるマガジンのマガジンチャネルの一実施形態における異なる位置又は異なる地点にある保存容器を示す図である。
【
図19】
図19a及び
図19bは、異なる視点又は視野から見たマガジンチャネルを断面視した状態で、提案されるマガジンのマガジンチャネルの一実施形態における異なる位置又は異なる地点にある保存容器を示す図である。
【
図20】
図20a及び
図20bは、異なる視点又は視野から見たマガジンチャネルを断面視した状態で、提案されるマガジンのマガジンチャネルの一実施形態における異なる位置又は異なる地点にある保存容器を示す図である。
【
図21】異なる視点又は視野から見たマガジンチャネルを断面視した状態で、提案されるマガジンのマガジンチャネルの一実施形態における異なる位置又は異なる地点にある保存容器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、パージ液体SFが、パージリザーバSRから、好ましくは、ポンプPによって、ホースS1と保存容器Vに刺し込まれた中空針N1とを介して保存容器内に導入される、従来技術から既知の基本原理を示している。パージ液体SGによって、保存容器V内に既に存在していた液体FLが、さらなる中空針N2及びさらなるホースS2を介して試薬容器RGに流れ出る。このようなパージ工程の終了後、全ての液体FLが保存容器Vから流れ出て、試薬容器RG内に入ることが理想的である。中空針の刺し込みは、ここでは圧力を遮断した状態で行われる。
【0055】
図2は、液体を収容する保存容器Vの好ましい実施形態を示している。液体FLは、
図5において詳細に示されている。
【0056】
図2において、保存容器Vは横置き状態にある。保存容器Vは、本体Gの壁部分Wと、本体Gに隣接する補強要素VEとを備える。
【0057】
本体Gは、周りを囲む周縁部URによって上方に画定される開口OFを有する。
【0058】
保存容器Vは、特に好ましくは、射出成形法又は3D印刷法を用いて、単一部品として作製されることが好ましい。射出成形法の場合、保存容器Vは、ポリエチレン、特に好ましくは、高密度ポリエチレンから作製されることが好ましい。
【0059】
本体G及び補強要素VEが射出成形法を用いて単一部品として作製される場合、壁部分Wは、分離継ぎ目もゲート残りも有さないようになっている。
【0060】
図3は、直立の縦置き状態において、保存容器Vを再び示している。
【0061】
図4において、保存容器Vは、上面から示されている。保存容器Vを把持するために、対応する方向R1,R2から保存容器Vに延ばすことができる、いわゆる把持要素G1,G2を概略的に示している。
図2により良く見て取れるように、保存容器Vの回転対称性及び補強要素VEの回転対称的な配置によって、保存容器Vを異なる位置において把持することが可能である。この一例では、保存容器Vは、4つの補強要素VEを有するため、
図4に見て取れるように、保存容器の対称軸又は本体の対称軸の軸中心点MP周りにおける保存容器の回転に関して、保存容器Vを同様に把持することができる4つの異なる位置がもたらされる。従って、自動化手法の過程において、保存容器Vは、この保存容器の対称軸又は本体の対称軸の中心点MP周りにおける回転に関して、単一の位置に明確に位置合わせする必要はなく、保存容器を把持要素G1,G2によって同様に把持することができる複数の位置のうち1つをとればよいだけである。従って、保存容器は、360度を補強要素の数で割った角度で、対称軸に対して回転対称になっている。補強要素VEは、壁部分Wの壁厚又は材料厚さに対して少なくとも2倍の材料厚さを有する細長リブであると好ましい。
【0062】
図5は、保存容器を、
図3の点A間の軸に沿った断面図により示している。
【0063】
保存容器Vは、
図2の補強要素VEに隣接する本体Gを形成する部分を有する。
【0064】
本体Gは、対称軸SAに対して回転対称である。
【0065】
本体Gは、少なくとも部分的に又は少なくとも一部において、回転対称の空洞部Hを形成する。空洞部H内には、液体FLの特に大部分が、少なくとも部分的に又は十分に収容される。空洞部Hは、好ましくは、円筒形状又は円錐円筒形状の空洞部であるとよい。
【0066】
本体Gは、下面Uにおいて底部Bによって閉鎖されており、かつ上面Oにおいて開口OFを有する。開口OFの周縁部URに閉鎖部VSが設けられるため、開口は、閉鎖部VSによって、特に、間接的に耐圧状態で閉鎖される。
【0067】
閉鎖部VSは、プラスチック製又はアルミニウム製の蓋であることが好ましい。閉鎖部VSは、特に、アルミニウム箔、特に好ましくは、例えば、周縁部UR等のプラスチック上に溶着されるアルミニウム箔の形態を含む箔であることが好ましい。箔VSは、アルミニウム製の第1の箔層と、その上のポリウレタン系の接着箔層と、その上の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を有するさらなる箔層とを含む複層の箔であると好ましい。
【0068】
壁部分Wは、好ましくは、0.2mm~0.3mmの同じ壁厚WSを有する。
【0069】
図2を再び参照すると、補強要素VEは、本体G上で、隣り合う補強要素VE間それぞれに、本体Gの外部に露出した各壁部分Wが形成されるように配置されていることを、再度確認することができる。露出した壁部分Wの性質によって、少なくとも2つの中空針を、圧力を遮断した状態で刺し込むことが可能である。
【0070】
図5では、本体Gが、下面Uにおいて底部Bによって閉鎖されていることをさらに示している。底部Bは、
図7の細部E2において再度より詳細に示されている。細部E2からは、
図5に示されている底部Bの内側壁Iに対する最深点TPが湾曲していること、特に、上方に湾曲していることもわかる。
【0071】
本体は、下面Uにおいて、例えば、ゲート残り等のような材料の副産物が、許容可能である凹部ANを有するために、下面平面UEの下側には、この下面平面UEを越えて下方に突出する材料が存在していない。これによって、特に、保存容器が直立の縦置き状態で互いに積み重ねられる場合において、複数の保存容器Vが互いに積み重ねられたときに、射出成形法に由来するそのような材料の副産物が直下の保存容器の箔又は閉鎖部に損傷を引き起こさないことが確実になる。
【0072】
本体の内側面ISは、実質的に一定の表面配列も有し、特に、0.8Rz未満、特に好ましくは、0.5Rz未満、特に非常に好ましくは、0.4Rzの深さ方向平均粗さを有する。
【0073】
図5は、好ましくは、保存容器Vを保持するためにガイド溝FRに係合する2つの把持要素G1’及びG2’をさらに示している。
【0074】
図6は、保存容器Vを下面側から示しており、この場合では、例えば、1mmである補強要素VEの材料厚さMSが示されている。
図6から見て取れるように、各壁部分Wは、この壁部分Wの境界を成す2つの補強要素VE間において、特に、本体の対称軸又は長手方向対称軸に対して垂直な平面にて、各々同じ壁幅WABを有する。
【0075】
図8は、
図5の細部E1を示している。開口OFは、周縁部UR又は対応するシール縁部SIRによって縁取られるか又は外方を囲まれている。周縁部URは、好ましくは、いわゆるシール縁部SIRであり、このシール縁部SIRに、溶融法を用いて箔をシールすることができ、これによって、箔は保存容器の閉鎖部として機能する。この周縁部UR又はクレータ縁部URは、縁部U又はクレータ縁部Uへの溶融によって、箔VS,FOの形態の閉鎖部を設けるために機能する。
【0076】
この周縁部UR又はシール縁部SIRは、開口OFの外縁部Rから距離ABMだけ離れている。この距離ABMは、最小で、好ましくは、0.01mm、特に好ましくは、0.05mmである。
【0077】
閉鎖部VSは、好ましくは、プラスチック製又はアルミニウム製である、さらにより好ましくは、箔の形態である蓋となっている。箔は、好ましくは、プラスチック箔又はアルミニウム箔となっている。箔の厚さは、5μm~5mm、好ましくは、10μm~1mm、さらにより好ましくは、25μm~250μmとすることができる。箔VSは、アルミニウム製である第1の箔層と、その上のポリウレタン系である第2の接着箔層と、さらにその上の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を有する第3の箔層とを含む複層の箔であると好ましい。第1の箔層は、好ましくは、35マイクロメートルの厚さを有する。第2の箔層は、好ましくは、4グラム/平方メートルの密度を有する。第3の箔層は、好ましくは、23マイクロメートルの厚さを有する。
【0078】
第1の態様に関する第1の好ましい実施形態において、保存容器は、内部高さHを有し、保存容器の内底部は、直径Dを有する。D対Hの比(D:H)は、少なくとも1:2、より好ましくは、1:5、さらにより好ましくは、1:10であるとよい。
【0079】
保存容器は、底部又は内底部及び内部高さHを有する。底部又は内底部及び内部高さHとは、収容される液体を受け入れ可能な側壁の底部又は高さであって、液体を幾何学的に受け入れ可能な底部又は高さとして理解される。容器は、内部高さ対内底部(容器の内径Dの形での寸法)の可能な限り最高の比を有し、これによって、底部に沈殿する物質を吸収する内底部の面積を可能な限り小さくすることが好ましい。D対Hの比(D:H)は、好ましくは、少なくとも1:2、1:2.5、1:3、1:4、1:5、1:7.5、1:10、1:15、又は1:20であり、長手方向軸は、長辺に沿って延び、かつ2つの端部を有する。これらの端部のうちの一方に、上面がある。上面は、保存容器が使用される際に保存容器の形状によって与えられる向きにおいて上になる端部であることが好ましい。
【0080】
本体は、特に、露出した壁部分の領域において、好ましくは、研磨されたステンレス管部分である2つの中空針が、圧力を遮断した状態で刺し込まれるように構成される。好ましくは、中空針の外径は、0.5mm~5mm、特に好ましくは、1mmであり、中空針の内径は、内径が外径よりも小さいことを条件に、0.1mm~3mm、特に好ましくは、0.2mm~0.7mmであり、好ましくは、0.4mmである。中空針は、特に、壁部分を貫通するための固い閉鎖された尖端部を各々有し、さらに、1mmの直径を有する。特に、中空針の外壁には、好ましくは、互いに対向する2つの側部開口がある。各開口は、好ましくは、0.2mm~0.3mmの範囲、特に好ましくは、0.28mmの直径を有する、好ましくは円形状の断面を有する。
【0081】
好ましい実施形態において、保存容器は、完全に満たされた保存容器に1mlの水を100秒間、圧力を遮断した状態で刺し込まれた中空針を介して導入すると、同時に、少なくとも750μl、より好ましくは、950μl、さらにより好ましくは、990μlの水が、圧力を遮断した状態で刺し込まれた同じ形式の第2の中空針を介して流出する場合に、耐圧性であるとみなされる。従って、この刺し込みは、好ましくは、刺し込まれた中空針が閉鎖されていると保存容器が耐圧性を保つ場合に、圧力を遮断するものとして構成される。中空針の直径は、万が一においても、液体中に含まれるビード等のような固形物が針を詰まらせることがないような寸法にしなければならない。
【0082】
双方型の中空針は、二重針の形態で構成されることが好ましく、この場合、双方型の針は、例えば、2つの金属製中空針を互いにはんだ付けすることによって、又は同軸針の形態で、少なくとも長手方向軸に沿った同じ向きを有する平行な配置で接続される。後者の場合、第1の中空針は、第2の中空針よりも小さな直径を有し、第2の中空針の内部空間に同軸に配置される。第1の中空針は、第2の中空針よりも長く、短絡が生じない程度に、第2の中空針の出口開口から突出している。第1の中空針及び第2の中空針が、平行な配置かつ同じ向きで互いに接続されている場合、第1の中空針及び第2の中空針は、一緒に保存容器に刺し込み可能であると有利である。
【0083】
図2に見て取れるように、補強要素VE及び本体Gは、保存容器Vの下面Uまで延びる。これによって、補強要素VEは、本体Gと協働してガイド溝FRを形成し、ガイド溝FRは、本体Gの下面Uに向かって開口している。このガイド溝FRは、また
図5にも挿入又は提示され、かつ
図6にも示されている。
【0084】
図2の保存容器は、上面Oにおいて、ガイド溝FRを上方に向かって制限する中断部ABを有する。この中断部は、また
図5においても明確に見て取れる。保存容器を下面側から示している
図6においては、読み手の視点は、直に中断部ABの下面に向いている。
【0085】
ガイド溝FRは、本体Gの下面Uから自由にアクセス可能である。
【0086】
中断部ABは、保存容器の上面において、保存容器Vの開口OFの高さにある。
【0087】
図6、
図5、及び
図2の中断部ABは、肩部とも称することができる。この中断部、すなわち、肩部ABは、ガイド溝FRを上方に向かって制限し、又はガイド溝FRを終端させる。
【0088】
補強要素VEは、保存容器の下面から保存容器の上面の中断部まで延びる細長リブであることが好ましい。補強要素VEは、
図4の視点から見て取れるように、特に、保存容器の上面を上から見た場合、保存容器の上面の基面を越えて突出しない。
【0089】
ここで提案されるガイド溝に基づいて、以下で詳細に説明するように、少なくとも1つのガイド要素によって保存容器をガイドすることが可能である。
【0090】
図9は、少なくとも1つのマガジンチャネルMKを有する提案されるマガジンMの斜視図を示している。
【0091】
マガジンチャネルMKは、マガジンの上面OMからもマガジンの下面UMからもアクセス可能である。
【0092】
図10は、側壁の一部を見えなくすることによって2つのマガジンチャネルMKを見て取ることができる、マガジンMの側面図を示している。マガジンKは、マガジンチャネルの上側領域において機械的な可撓性、すなわち、弾性に変形可能なスナップフックSHを有し、このスナップフックSHを介して、保存容器をマガジンチャネルMK内に制御しながら導くことができると好ましい。スナップフックSHは、特に、マガジンMが上面を下にして保持されている場合に、マガジンチャネルMK内にある保存容器を抑止する。
【0093】
図12は、マガジンMを上から見た上面図を示している。ここでは、マガジンチャネルの領域内にスナップフックSHを見て取ることができる。
【0094】
図13は、マガジンMを下面側から示している。スナップフックSHは、マガジンチャネルMKを通して下から見ることもできる。さらに、抑止要素、すなわち、制止要素RE及びガイド要素FEも見て取ることができる。
【0095】
図14は、再びマガジンチャネルMKを、
図13の断面線A-Aの断面図で示している。
図14には、チャネルMK又はマガジンMの下面UMにおけるガイド要素FE及び制止要素REも見て取ることができる。マガジンチャネルMKは、マガジンMを通って真っ直ぐ延びる。
【0096】
図11aは、マガジンチャネルMK内に複数の保存容器Vを有するマガジンMを示している。この場合、最も下にある保存容器Vは、抑止要素REによってマガジンMK内に抑止される。
図11aとともに、容器Vを拡大して示す
図11bから、機械的に可撓性である抑止要素REが、マガジンチャネルMK内におけるその静止位置に係合することが見て取れる。この第1の位置において、保存容器Vの中断部ABは、抑止要素RE上に載る。
【0097】
図11cは、同じ第1の位置にある保存容器Vを、
図11bの視点に対して、マガジンチャネルの対称軸の周りに90度、又は保存容器Vの対称軸の周りに90度回転させた視点からのマガジンの断面図で示している。抑止要素REは、この図に示されている保存容器Vの第1の位置において、ガイド溝FRのうちの1つに係合することが好ましい。
【0098】
保存容器Vは、第1の位置において、特に、その重量による力にもかかわらず、抑止要素REによって、特に、保存容器Vの下面Uが第1の位置においてマガジンチャネルMKから突出しないように、マガジンチャネルMK内に抑止される。
【0099】
保存容器の上面Oに力が及ぼされる又は印加される場合、抑止要素REは、中断部ABによって偏向する。特に、抑止要素REは、マガジンチャネルMKから、少なくとも部分的に偏向し、中断部収容領域又は保存容器Vが抑止要素REを通過することができる。これは、
図19aのさらなる位置によって示されている。
【0100】
抑止要素REは、中断部ABを通過した後、
図19aに示されているように、静止位置に復帰する。
【0101】
図15は、
図13の細部Zを示している。ここでも、抑止要素REの位置がより詳細に見て取れる。
【0102】
マガジンチャネルから保存容器を取り出す又は押し出す際、以下でさらに記載するように、特別な形式で、抑止要素REとガイド要素FEとの相互作用が生じる。
【0103】
図17aは、内部に保存容器VがあるマガジンMを示している。抑止要素RE及びガイド要素FEが、下面側から見て取れる。この図の部分領域の拡大図が、
図17bに示されている。
【0104】
図16aは、再び、マガジンの下面UM側から見た状態で、保存容器Vを伴うマガジンMを示している。
図16bにおいて、再び拡大領域に抑止要素REが示されており、
図16cには、ガイド要素FEが示されている。ガイド要素FEは、
図15及び
図14にも明確に見て取れる。
【0105】
図15に見て取れるように、ガイド要素FE及び抑止要素REは、マガジンチャネルMKの異なる側面にあるため、ガイド要素FE及び抑止要素REと保存容器との相互作用が生じる。ここで、
図18~
図21に基づいて、保存容器の各位置又は地点に関して2つずつの視点又は視野を用いて、ガイド要素FE及び抑止要素REと保存容器との相互作用を説明する。
【0106】
2つの視点又は視野は、マガジンチャネルの対称軸周りに90度、又は保存容器Vの対称軸周りに90度だけ、互いに対して回転している。
【0107】
図18a及び
図18bに明確に見て取れるように、ガイド要素FEは、マガジンチャネルMKの下側領域において、抑止要素REの第1の高さH1の下における第2の高さH2に設けられる。
【0108】
図18aは、第1の位置にある抑止要素REを見て取ることができる断面図を示しており、一方で、これに対応する
図18bの視点は、保存容器が対称軸周りに90度回転した断面図を示している。
図18bには、ガイド要素FEを見て取ることができる。ガイド要素FEは、機械的に可撓性であるガイド要素となっている。
【0109】
図18a及び
図18bにおける保存容器Vの第1の位置にて、ガイド要素FEは、ガイド溝FRのうちの1つに係合することが好ましい。
【0110】
図17bに見て取れるように、ガイド要素FEは、ガイド溝FRを形成する補強要素VEに隣接する。これによって、ガイド要素FEは、保存容器VをマガジンチャネルMK内で好ましい位置に位置合わせ可能とする効果をもたらす。従って、これによって、マガジンチャネルMKは、ある特定の公差を考慮して、保存容器Vの断面よりも大きな寸法にすることができる。
【0111】
マガジンチャネルMKの断面積は、保存容器Vの断面積よりも大きくなっている。ここでは、保存容器の断面積は、長手方向において保存容器の対称軸に対して垂直に延びる。マガジンチャネルMKは、保存容器が対称軸又は長手方向対称軸の周りに5度を超えて回転することができないような寸法の断面積を有する。さらに、マガジンチャネルMKは、保存容器又はその長手方向対称軸が、マガジンチャネルMKに対して5度を超えて傾くことができないような寸法の断面積を有する。
【0112】
図19a及び
図19bは、保存容器を、保存容器Vの下面UがマガジンチャネルMKから突出する第2の位置において示している。
【0113】
図19aに見て取れるように、この第2の位置では、保存容器Vの中断部ABが、抑止要素REを既に通過している。
【0114】
図19bから見て取れるように、ガイド要素FEは、第2の位置において中断部ABに隣接する。
【0115】
第2の位置において、保存容器Vの下面UがマガジンチャネルMKから突出することによって、保存容器は、少なくとも、マガジンチャネルの外で把持ユニットの部分領域によってアクセス可能であり、これによって、そのような把持ユニットは、ガイド要素FEによるガイドに基づいて、保存容器Vを所定の位置又は所定の地点で待ち受けることができるようになっている。これによって、例えば、把持ロボットによって、常に所定の空間位置又は地点での保存容器Vの把持が予期されるため、自動化処理が容易になる。この場合、把持ユニットは、把持要素によってガイド溝に係合することができると好ましい。
【0116】
図19b及び
図20b並びに
図21から見て取れるように、ガイド要素FEは、保存容器Vの上面Oにさらに力を印加することによって偏向し、少なくとも部分的にマガジンチャネルを越えて偏向する。
【0117】
ガイド要素FEは、特に、中断部ABがガイド要素FEを通り過ぎた後に、ガイド要素FEがその静止位置に復帰するようにさらに形成される。
【0118】
ガイド要素FEと抑止要素REとの組合せによって、一方では、提案されるマガジンMが、マガジンチャネル内に保存容器V又は複数の保存容器Vを装備することができ、保存容器が下面側から損傷することなく、マガジンMの下面UMを、例えば、テーブル又は他の可能な場所に配置可能とすることができる。
【0119】
マガジンチャネルMKから保存容器を取り出す又は保存容器を押し出す際、保存容器Vは、所定の正確な空間位置にもたらされることが有利であるが、これは、抑止要素REのみでは確実にすることができない。そのため、ガイド要素FEによって、所定の空間位置において保存容器VがマガジンチャネルMKからの突出を達成することが有利である。足部要素FEの機械的な可撓性によって、このガイド要素FEは、保存容器Vを空間的に位置付ける機能を果たした後、再び静止位置に戻り、この静止位置において、さらなる保存容器Vのガイド溝FRに、即座に又はしばらくして係合することができる。従って、補強要素VE及び本体によって形成され、下方に開口している保存容器Vのガイド溝FRと、ガイド要素FE及び抑止要素REとの特に有利な相互作用を生じさせることができる。
【符号の説明】
【0120】
V 容器
FL 液体
SA 対称軸
G 本体
H 空洞部
U 下面
B 底部
O 上面
OF 開口
VS 閉鎖部
VE 補強要素(複数の場合もある)
W 壁部分
N1,N2 中空針
MP 軸中心点
TP 点
IS 内側面
AM 凹部
R 縁部
MS 材料厚さ
WS 壁厚
RG 反応容器
SR パージ液体リザーバ
SF パージ液体