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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】オートバイのエンジン冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 5/06 20060101AFI20230124BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
F01P5/06 511D
F01P11/10 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019534218
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017083834
(87)【国際公開番号】W WO2018115132
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】102016000130142
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ドヴェリ,ステファノ
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202479(JP,A)
【文献】特開平06-336927(JP,A)
【文献】特開2015-202791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 5/06
F01P 11/10
F02B 67/00
B62J 23/00
B62J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートバイ(100)の内燃機関冷却システムであって、
それを通して、空気吸込み方向に空気が吸い込まれる中央開口(7)を備えた前壁(6)を有するファンケース(5)の内部に収容されたファン(1)と、
前記前壁(6)から突出し、空気吸い込み方向と実質的に平行であり、ファン(1)を収容する区画内で乱気流を包み込んで方向決めする分配壁(8,9)と
を備え、
前記分配壁(8,9)が、分配壁(8,9)の対向する第一端縁と第二端縁との間に、単一のサイドギャップ(13)を形成し、
前記ファンケースが、前記サイドギャップ(13)の位置に、複数のペグ(14)を有し、
前記ペグ(14)が円形の断面を備え、
前記ペグ(14)が、前記中央開口(7)を囲む線に沿って配置され
前記サイドギャップ(13)と前記分配壁(8,9)が、完全に前記ファン(1)を囲み、
前記分配壁(8,9)が、車両の走行方向に向けられた分配壁(8)と、ファン(1)の上側部分を覆う湾曲した上側分配壁(9)とから成る
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
ファン(1)の回転が、エンジン自身の回転状態から自律しない方法で、オートバイ(100)のクランクシャフトによって制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
ファン(1)が、ファン(1)の回転軸線と平行な方向に従って、ラジエター及び関連する保護ガード(4)を通して空気流を吸い込み、
ファン(1)、ラジエター(3)及び関連するガード(4)が、クランクシャフト(2)の一方の端部(111)にあるエンジンの同じ側に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
ファンケース(5)が、
車両の走行方向に面した前部分配壁(8)と、
ファン(1)の上側部分を囲む上部分配壁(9)と
を備え、
前記ギャップ(13)が、分配壁(8,9)の二つの端部(11,12)の間で、ファンケース(5)の下方及び後ろ側に延びている
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
ペグ(14)が曲線に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項6】
ペグ(14)が等間隔に配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の冷却システム。
【請求項7】
ペグ(14)が、その基部と遠位端部との間で僅かにテーパー状である
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の冷却システムを組み込んだオートバイ。
【請求項9】
ラジエター(3)を通して空気を引き込むファン(1)と、電動発電機(109)との両方が、クランクシャフト(2)に組み付けられ、
電動発電機(109)の軸線が、オートバイの長手方向に対して横方向であり、走行面に対して水平である
ことを特徴とする請求項に記載のオートバイ。
【請求項10】
ファンケース(5)の前壁(6)がラジエター(3)に接触し
ファン(1)が、前記前壁(6)及び電動発電機の回転子のベル状ケース(110)によって画定された区画に収容され、
ペグ(14)の遠位端部が、エンジンブロック(107)のラジエター(3)に向いた面に接触する
ことを特徴とする請求項に記載のオートバイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイ、特にスクータの内燃機関の冷却システムに関し、該冷却システムには、冷却ファン、特に、クランクシャフトの延長部に直接固定されたファンが設けられ、この冷却ファンは、オートバイの側面に配置されたガードを通して空気を吸い込み、かつ、オートバイの前進運動から生じる実質的に接線方向の空気流を受ける。
【0002】
その使用がこの例に限定されるものではないが、この冷却システムは、ラジエターを保護して隠す上述したガードの後ろに配置されたラジエターを通して空気が吸い込まれる水冷式オートバイに特に適している。
【0003】
空気の吸い込み方向は、ラジエターが展開する平面に対して実質的に直交しており、反対に、典型的には遠心タイプであるファンの回転軸線に対して実質的に平行である。
【0004】
ファンは、空気分配ケース又はファンケースと呼ばれる箱状容器の内部に収容されており、該容器は、前記ガードに面し、通常ラジエターの上に載置されている前壁を有し、該前壁は、空気を吸い込むための幅広の開口部を有する。
【0005】
さらに、前記容器は、ファン自体を収容する区画内に、前記前壁から突出し、かつ、吸い込み方向に実質的に平行な複数の分配壁を有し、前記分配壁は、ラジエターから出る乱気流を囲み、それを方向付けすることを目的としている。
【背景技術】
【0006】
分配壁がギャップを形成し、そこから、ファンの遠心効果によって押し出される空気が横方向に流れるファンケースは公知である。
【0007】
このギャップを通ってファンの区画に入る経路は向流であるが、このようなギャップは、ファンの回転を妨げる塵や泥の入口になる可能性がある。
【0008】
この理由のために、問題があるギャップは、固形塵がそれを通過することを防止するために障害物を有する。
【0009】
例えば、欧州特許出願EP 2,014,891 Alには、可能な限り通路と干渉せずに、空気を径方向に導くために、ファンの外周の円弧に沿って位置決めされ、かつ、径方向に配置された複数のフィンを有する、下方に向けられたギャップを備えたファンが開示されている。
【0010】
さらにまた、欧州特許出願2,022,658 Alには、下向き、前向き及び後ろ向きのトリプルギャップを備えたファンが開示されている。各ギャップは、それらの間で平行に、かつ、下向き、前向き及び後ろ向きに延びるフィンを備えている。
【0011】
上述したファンは、通常、エンジンによって直接引っ張られ、次いで、それはある回転状態で回転し得、その回転状態は、瞬間的な冷却要求に必ずしも関係してなく、場合によっては大きすぎる可能性がある。
【0012】
上述したフィンの存在は、必要ではあるが、所定の回転状態では、乱気流及び出口空気流の強さによって引き起こされるノイズを決定付けるものであり、それは使用者にとって煩わしいと感じることがある。
【発明の概要】
【0013】
本発明の根底にある技術的課題は、従来技術を参照して説明した欠点を解消することを可能にする、オートバイの内燃機関用冷却システムを提供することにある。
【0014】
このような問題は、分配壁がサイドギャップを画定し、このようなギャップの位置で、前記中心開口を囲む線にそって配置された円形断面を有する複数のペグが設けられたケースを有する上述した冷却システムによって解決される。
【0015】
本発明による冷却システムの主たる利点は、実際に、ファンの回転状態及び吸い込まれる空気流量の存在から独立してノイズを低減することを可能にすることにある。
【0016】
以下、添付図面を参照して、非限定的な実施例として提供される好ましい実施の形態に従って、本発明を説明していく。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による冷却システムを備えた駆動ユニットが組み込まれたオートバイ、詳細にはスクータの側面図である。
図2】本発明による冷却システムの幾つかの外観を説明する、図1のスクータを後部から見た部分図である。
図3】本発明による冷却システムが組み込まれた、図1のスクータの駆動ユニットの一部断面図である。
図4】本発明による冷却システムの一実施例の一部断面にした斜視図である。
図5図4の冷却システムの一構成要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2を参照すると、オートバイ、詳細には、スクータの全体が符号100で示されている。本発明は、一般的に、二輪、三輪又は四輪を有する鞍乗型車両の分野に関し、特に、スクータを参照する。該スクータは、シャーシ102の内側で、サドル101の下方に配置された駆動ユニットを有し、前記シャーシ102は、この実施例では、ハンドルバー104によって駆動される前輪103から駆動後輪105まで延びている。
【0019】
駆動ユニット106は、一つ又は複数のシリンダを有するタイプであり、本実施例では、前方直進走行中の二つの車輪の回転面に対応する車両の中央平面において、ほぼ傾斜した位置で配置されている。
【0020】
駆動ユニットのエンジンは、一体成形のエンジンブロック107を備え、該エンジンブロック107には、この実施例では、シリンダ及びピストンが収容されている。
【0021】
前記シリンダ内で作用するピストンは、前記中央平面に対して横方向に直交するように配置されたクランクシャフトに接続されている。スクータ100の図示されていない側には、クランクシャフトから後輪105のハブへ動力を伝達する装置が設けられている。
【0022】
スクータ100の図示されている側には、駆動ユニットの冷却システムが設けられており、この駆動ユニットは、空冷式又は水冷式、この実施例では水冷式の内燃機関を備えている。冷却ファン1は、クランクシャフト2によって制御され、冷却ファン1は、ラジエター3に面している。ラジエター3は、オートバイの一側に配置されたガード4によって保護されており、ガード4は、オートバイ100の前進運動から生じる略接線方向の空気流を受ける。
【0023】
この実施例の冷却システムでは、冷却ファン1は、クランクシャフト2の端部111に固定されている。ファンが直接固定されているので、ファンは、エンジン自体の回転状態から自律的でない方法で、クランクシャフトの回転によって制御される。
【0024】
特に、この実施例では、ラジエター3を通して空気を吸い込むためのファン1と、電動発電機109との両方が前記クランクシャフト2に組み込まれている。前記電動発電機109は、バッテリを充電し、内燃機関を始動し、場合によっては、オートバイが、所謂、ハイブリッド駆動型のものである時に、動力を供給する。
【0025】
電気モータ109は、内側固定子と、ベル型ケーシング110が設けられたベル型外側回転子と有するタイプのものであり、回転子及びベル型ケーシング110はクランクシャフト2に固定されている。
【0026】
ファン1は、クランクシャフト2によって引っ張られるよう、ベル型ケーシング110の外側前面に、ネジ118によって固定されている。
【0027】
電気モータ109、ファン1、ラジエター3及びガード4は、クランクシャフトの端部111の位置で、エンジンの同じ側に設けられ、クランクシャフトの反対側の端部は、上述した動力伝達要素が接続されている。
【0028】
ラジエター3は、車両の中央平面を平行な二つのパネル間に設けられた箱型構造体を有し、ファン1は、それに実質的に平行な面にあり、そこで回転するため、吸い込まれる空気流は、車両の前進運動の影響により車両に当たる接線方向の流れに対して約90度の角度で偏向されることになる。
【0029】
ラジエターは、キャップ114によって閉鎖された充填ノズル113を有する上部タンク112と、下部マニホールド116との間で延びている。上部タンク112は、エンジンのヘッドに面する第一接続ダクト115を備え、該ダクト115は、水冷システムのパイプに接続され、下部マニホールド116は、同じ方向に面し、同じ目的のために設けられた第二接続ダクト117を有する。
【0030】
ガード4は、ガード自体に隣接する隆起縁部と、ラジエター3、ノズル113を有するタンク112及び下部マニホールド116全体を覆うように設けられた延長部とを有する保護構造体120の形態で形成されており、各外部要因からそれらを保護する。
【0031】
ファン1は、ファンケース5の中に収容されており、ファンケース5は、ラジエター3と電気モータ109との間に配置されている。ファンケース5は、ラジエター3のガード4に向かう面と反対側の面に対応する幅広中央開口7を有する前壁6を備えている。さらに、ファンケース5は、前記前壁から突出する複数の分配壁を有し、ファン1を含む、吸い込み通路を形成する(図4参照)。
【0032】
層状ケース110と前壁6との間の間隔により、ファン1を受け入れ、かつ、分配壁によって横方向制限された区画を画定される。
【0033】
特に、ファンケース5は、車両の走行方向に面した前部分配壁8と、ファンの上部を取り囲む湾曲した上部分配壁9とを有する。
【0034】
前壁6からは、隔壁10が突出しており、この隔壁10は、ファン1の周囲の四分円、90°~120°の円弧を囲み、かつ、隔壁10は、前部分配壁8の中間から分岐している。前部分配壁8及び上部分配壁9は結合されており、それらは、二つの互い違いの端部を有し、前部分配壁8の第一端部11は、上部分配壁9の第二端部12より低い。
【0035】
ファンケース5の下部及び後部の領域、即ち、分配壁8及び9がない領域において、ファンケース5は、それとエンジンブロック107のガード4に向いた面との間にギャップ13を画定している。このギャップ13は、分配壁8及び9の二つの端部11及び12の間で、ケース5の下方及び後側に延びている。
【0036】
前壁6の中央開口7の縁部に近いギャップ113の位置に、ファンケース5は、複数のペグ14を有し、これらのペグ14は、前壁6から直交する方向に突出し、前記中央開口の縁部を囲む曲線に沿って等間隔に配置されている。
【0037】
ペグ14は、円形断面を有し、その基部と遠位端部との間で僅かにテーパー状にされており、その高さは、遠位端部がエンジンブロック107に軽く接触し、ギャップ13の横幅全体に亘って延びるような高さである。
【0038】
ペグの円形断面は、ギャップ13を通って排気される空気流の方向に関して、ペグを中立にする。この形状は、フィンの形状とは異なり、高い回転状態であっても、発生する騒音を低減させる。
【0039】
これまで説明したことは、一つの操舵前輪及び一つの固定後輪を備えたスクータ、並びに一対のスイング前輪及び一つの固定後輪を備えた三輪式スクータの両方に関連することに留意されたい。しかしながら、オートバイにおいては、本明細書では説明していないが、本明細書に開示された冷却システムを含み得る解決方法を、二重後輪であっても適用することができる。
【0040】
本明細書で説明した構成では、ラジエターを通して空気を吸い込むファンと、バッテリを充電し、内燃機関を始動し、かつ、場合によっては、オートバイが、所謂、ハイブリッド駆動タイプである時に、動力を供給する電動発電機との両方が、クランクシャフトに組み込まれる。
【0041】
内燃機関の軸線は、オートバイの長手方向に対して横方向であり、走行面に対して水平であり、かつ、オートバイが直線に沿って進む時に固定された、即ち、操舵されない後輪の回転面によって実質的に画定される垂直面に対して直交している。電気モータ、ファン、ラジエター及びガードは、エンジンの同じ側、例えば、車両の動力伝達装置と反対の右側に設けられる。前記動力伝達装置は、一つ又は複数のピストンによって回転が制御されるクランクシャフトの一方の端部にあり、クランクシャフトの他方の端部は、駆動後輪への動力伝達要素に接続されている。この明細書には記載していないが、この明細書で説明した冷却システムを含み得る解決手段を、二重前輪及び/又は後輪のオートバイに設けることができる。
【0042】
上述したラジエターのガードの配置によって、空気が正面から当たらずに、接線方向に当たるようにすることができる。ラジエターの冷却水の冷却のために必要とされる空気は、ファンによって引き込まれ、その軸線は、オートバイの前進運動から生じる空気流に対して実質的に直交している。
【0043】
当業者は、追加の条件付きの要求を満たす満たす目的で、上述した冷却システムに対して、幾つかの改良及び変更を加えることができ、前記改良及び変更は、添付した特許請求の範囲によって定義された本発明の保護範囲内に全て含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5