(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】エアブローファイバ用のマイクロチューブ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/50 20060101AFI20230124BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G02B6/50 301
G02B6/44 371
G02B6/44 366
G02B6/44 361
G02B6/44 381
(21)【出願番号】P 2019571572
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 US2018039439
(87)【国際公開番号】W WO2019010034
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-31
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512044862
【氏名又は名称】ウエスコ、エクイティ、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】WESCO EQUITY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー・エル・アレン
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06398190(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0194578(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0115960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0054346(US,A1)
【文献】特開2010-039378(JP,A)
【文献】特表2005-502078(JP,A)
【文献】特開2008-070573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管の内部に挿入されるのに適した装置であって、光ファイバまたはマイクロ光ファイバケーブルを収容するのに適した長手方向に延びる少なくとも1つの中空で剛性のチューブと、前記チューブを覆う長手方向に延びる可撓性のジャケットとを備え、
前記ジャケットは第1の表面および反対側の第2の表面を有しており、各前記表面は端部で取り付けられ、複数の前記チューブが各前記表面の間に配置され、
複数の長手方向に延びる収容部分を形成するような横方向に離間した箇所で、前記第1の表面は前記第2の表面に長手方向に取り付けられている、装置。
【請求項2】
横方向に離間した前記箇所は、各前記チューブの間にあり、各前記チューブが各前記収容部分に収容されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記チューブは薄いプラスチック材料から形成されている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記可撓性の材料は繊維である、請求項3記載の装置。
【請求項5】
導管の内部に挿入されるのに適した装置であって、光ファイバまたはマイクロ光ファイバケーブルを収容するのに適した長手方向に延びる少なくとも1つの中空で剛性のチューブと、前記チューブを覆う長手方向に延びる可撓性のジャケットと、可撓性の材料から形成され、収容部分を形成し、長手方向に延びる内部ダクトとを備え、
前記内部ダクト
の外周面はその全長に亘って前記ジャケット
の外周面に取り付けられている、装置。
【請求項6】
前記収容部分の内部に配置されている挿入具を更に備えた、請求項5記載の装置。
【請求項7】
導管の内部に挿入されるのに適した装置であって、光ファイバまたはマイクロ光ファイバケーブルを収容するのに適した長手方向に延びる少なくとも1つの中空で剛性のチューブと、前記チューブを覆う長手方向に延びる可撓性のジャケットと、可撓性の材料から形成され、収容部分を形成する内部ダクトとを備え、
前記内部ダクト
の外周面はその全長に亘って前記ジャケット
の外周面に取り付けられ、
光ファイバまたはマイクロ光ファイバケーブルを内部に収容するのに適した、長手方向に延びる第2の中空のチューブと、前記第2のチューブを覆う、長手方向に延びる可撓性の第2のジャケットとを更に備え、前記第2のジャケット
の外周面は前記内部ダクト
の外周面に取り付けられている、装置。
【請求項8】
導管の内部に挿入されるのに適した装置であって、光ファイバまたはマイクロ光ファイバケーブルを収容するのに適した長手方向に延びる少なくとも1つの中空で剛性のチューブと、前記チューブを覆う長手方向に延びる可撓性のジャケットと、可撓性の材料から形成され、収容部分を形成する複数の内部ダクトとを備え、
各前記内部ダクト
の外周面は前記ジャケット
の外周面に取り付けられている、装置。
【請求項9】
各前記収容部分の内部に配置されている挿入具を更に備えた、請求項8記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信産業において光ファイバを収容するのに適したチューブのシステムに関する。より詳細には、本発明は、繊維材料に覆われた上記のチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信システムは、多くの場合で地中に配置される導管の内部に挿入される1または複数のケーブルを用いている。このようなシステムにおいてケーブルを挿入するのに時間と費用がかかる。
【0003】
このような従来のシステムの代わりに、マイクロ光ファイバケーブルまたは光ケーブルが通信システムに使用される場合がある。ある代替案では、高密度のポリエチレンから形成される剛性の内部ダクトまたはチューブに、複数のマイクロチューブが設けられている。このような内部ダクトは、直接埋設してもよいが、地中の導管の内部に設置するためにリールに取り付けた場合には、導管の内部への挿入が難しくなる。なぜならば、剛性の内部ダクトにはリールメモリが設けられており、設置中に螺旋形状になることが多いからである。更に、このような剛性の内部ダクトは、マイクロチューブにアクセスするのにコストがかかり、また切断するのが困難である。つまり、設置の際に少なくともチューブのほとんどは空の状態であるが、1または複数のチューブが光ファイバを収容するようにする必要がある場合には、導管をある箇所で地中から取り出して切断し、次に内部ダクトを切断してから、ファイバが挿入されるようマイクロチューブを切断する必要がある。このような作業は困難であり時間がかかる。
【0004】
別の代替案では、1つのプラスチック製のマイクロチューブを導管の内部に挿入するような試みがなされていた。このようなマイクロチューブは非常に壊れやすく取扱いが難しい。また、マイクロチューブは変形しやすい。すなわち、マイクロチューブは概して楕円形であり、挿入の間に伸びてしまうことがある。楕円形の場合には、光ファイバをマイクロチューブの内部に十分な距離に亘って挿入するのは困難である。そして、マイクロチューブが伸ばされた場合に、光ファイバをマイクロチューブの内部に挿入することができなくなる。
【0005】
このような単一のチューブによる問題を解決するために、高密度のポリエチレンから形成される複数のマイクロチューブがプラスチックのウェブにより結ばれるようなシステムが存在する。しかしながら、このようなウェブにより結ばれるチューブは互いに独立して動かすことができない。すなわち、チューブは、隣のチューブに対する1つの方向にのみしか波状にすることができず、または曲げることができない。その結果、地中の導管の内部で結束具の周りの部分が頻繁にぶつかる際に、結合されたチューブはねじれて変形してしまうため光ファイバの設置は不可能ではないにしても困難である。
【0006】
更に、マイクロファイバケーブルまたは光ファイバを従来の光ファイバケーブルと同じ導管の内部に設置することがしばしば望まれている。従来では、マイクロケーブルまたはファイバと、従来の通信ケーブルとを同じ導管の内部に設置することができるような装置は存在しなかった。
【0007】
このため、設置がより容易であり、リールメモリが最小限であり、従来の剛性の内部ダクトよりも軽量で安価なチューブシステムが必要である。
【発明の概要】
【0008】
このため、本発明の一の態様の目的は、通信マイクロケーブルまたは光ファイバを、導管の内部に配置されるチューブの内部に容易に挿入することができる装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の態様の目的は、チューブが既に配置されている導管に通信ケーブルを容易に挿入することができる装置を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の態様の目的は、従来技術よりも設置が容易でありより安価な装置を提供することにある。
【0011】
本発明のこれらのおよび他の目的、ならびに以下の説明から明らかになる既存の従来技術の態様に対する利点は、以下の説明および特許請求の範囲の記載による改良によって得られる。
【0012】
概して、導管に挿入されるのに適した装置は、光ファイバまたはマイクロ光ファイバケーブルを収容するのに適した長手方向に延びる少なくとも1つのチューブを有している。また、長手方向に延びる可撓性のジャケットがチューブを覆う。
【0013】
本発明の概念による好ましい例示的な装置は、添付図面に一例として示されるが、本発明が具現化され得る全ての態様および変形例を示すことを意図するものではない。本発明は添付の特許請求の範囲により決められるものであり、明細書の詳細の説明により決められるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一の実施の形態による、繊維に覆われたマイクロチューブの概略端面図である。
【
図2】本発明の他の実施の形態による、繊維に覆われたマイクロチューブの概略端面図である。
【
図3】本発明の更に他の実施の形態による、繊維に覆われたマイクロチューブの概略端面図である。
【
図4】本発明の更に他の実施の形態による、通信ケーブル用の一体型の内部ダクトが設けられた、繊維に覆われたマイクロチューブの概略端面図である。
【
図5】
図4に示すような、通信ケーブル用の一体型の内部ダクトが設けられた、繊維に覆われたマイクロチューブの他の実施形態の概略端面図である。
【
図6】
図4および
図5に示すような、通信ケーブル用の一体型の内部ダクトが設けられた、繊維に覆われたマイクロチューブの更に他の実施形態の概略端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
導管の内部に挿入されるのに適した装置の一の実施形態が概して
図1において参照符号10で示されている。装置10は、各々が長手方向に延びる複数の中空のマイクロチューブ11を有している。各マイクロチューブ11は、マイクロ光ファイバケーブルまたはエアブロー光ファイバを内部に受け入れるのに適合している。各チューブ11は、概して高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)等の薄いプラスチック材料から形成されている。このように、各チューブ11は、硬いが、任意の時点で長手方向に沿って任意の箇所で簡単に切断することができる。そして、光ファイバを長手方向に沿って挿入することができる。更に、各チューブ11は「剛性」であると考えられる。ここで、「剛性」という言葉は、適度に硬いが、長い各チューブ11をリールに巻き付けることができるように曲げることができるという意味で使われる。
【0016】
複数のチューブ11は、好ましくは低摩擦の繊維材料から形成される、長手方向に延びる可撓性のシースまたはジャケット12の内部に収容されている。各チューブ11は、図示のように互いに隣り合って並ぶよう配置されている。しかしながら、概して地中に設置される導管の内部にジャケット12および各チューブ11を収容することができるよう、ジャケット12は曲げることができるか簡単に取り扱うことができるようになっている。繊維のジャケット12の摩擦力が小さいことにより、導管の内部への設置が容易となる。ユーザに通信システムを提供するために1または複数のチューブ11が必要になった場合には、装置10にアクセスすることができるようになり、各チューブ11にアクセスするためにジャケット12を容易に切断することができる。そして、1または複数の必要なチューブ11が切断され、光ファイバがチューブ11の内部に挿入される。
【0017】
装置の他の実施形態が
図2において参照符号20で示されている。
図2において、各々が長手方向に延びる複数の中空の剛性チューブ21が示されている。各チューブ21は、上述した各チューブ11と性能および構造を同じものとすることができる。各チューブ21は、好ましくは低摩擦の繊維材料から形成される、可撓性のシースまたはジャケット22の内部に収容されている。ジャケット22は、参照符号25に示すような各チューブ21間の横方向に離間した箇所で上面23が下面24に接続されているという点を除いて、概してジャケット12と同一である。接続箇所25は、装置20の全長に沿って長手方向に延びる縫い目である。このように、ジャケット22が、長手方向に延びる複数の収容部分26に分割されており、各収容部分26にチューブ21が収容されている。ジャケット12と同様に、ジャケット22は通信用の導管の内部に設置するにあたり簡単に操作することができるようになる。この際に、従来技術とは異なり各チューブが取り付けられていないため、各チューブをあらゆる方向に自在に移動させることができる。通信システムにおいて1または複数のチューブ21が必要となった場合に、ジャケット22の1または複数の収容部分26を開いて各チューブ21にアクセスすることにより、光ファイバを収容するために各チューブを切断することができる。
【0018】
装置の更に他の実施形態が
図3において参照符号30で示されている。この実施形態において、性能および構造が各チューブ11、21と同じである、各々が長手方向に延びる複数の剛性の中空のチューブ31が束状または円形に沿って配置されている。各チューブ31は、好ましくは低摩擦の繊維材料から形成される、可撓性のシースまたはジャケット32に取り囲まれ、このシースまたはジャケット32により一体的に保持される。概して円形に沿って各チューブ31が配置されて保持されることにより、装置30を導管の内部に挿入するための操作が不要となる。1または複数のチューブへのアクセスが必要になった場合には、各チューブ31を露出させるためにジャケット32を容易に切断することができ、挿入されるべき光ファイバを収容するために各チューブ31を選択的に切断することができる。
【0019】
導管が、光ファイバと、従来の通信用の光ファイバケーブルまたは同軸ケーブルとを容易に収容することができるようにすることが望まれる場合は、
図4-6に示す実施形態が用いられてもよい。
図4に示す実施形態の装置は、概して参照符号40で示される。装置40は、性能および構造が各チューブ11、21、31と同じである、各々が長手方向に延びる複数の剛性の中空のチューブ41を有している。好ましくは低摩擦の繊維材料から形成されるジャケット42は、その全長に亘ってチューブ41の周囲に設けられる。好ましくはジャケット42と同じ材料から形成される内部ダクト43がジャケット42に取り付けられる。本技術分野で知られるように、内部ダクト43は、導管の内部にあるときに従来の光ファイバの通信ケーブルを収容するのに適合した、長手方向に延びる収容部分44を有している。
【0020】
ジャケット42および内部ダクト43は、参照符号45で示す箇所において縫い目等により取り付けられるような別々の部材であるか、あるいは参照符号45で示す箇所においてジャケット42および内部ダクト43自体が互いに接続されている。収容部分44の内部にケーブルを引き込むことができるようにするために、引き込みテープまたはロープ等の挿入具46が収容部分44の内部に設けられている。長手方向に延びる導管の内部に装置40が配置された場合に、チューブ41の内部に光ファイバを配置したいときには、チューブ41にアクセスするためにジャケット42を容易に切断することができ、挿入されるべき光ファイバを収容するためにチューブ41を切断することができる。同様に、光ファイバ通信ケーブルを同管内に配置することが望ましい場合に、この光ファイバ通信ケーブルを挿入具46に取り付けて内部ダクト43の収容部分44の内部に引き込むことができる。
【0021】
図5は、
図4に示す装置の変形例を示している。
図5に示すように、装置40Aは、内部ダクト43の他方の端部に取り付けられている第2のチューブ41Aおよびジャケット42Bの組合せ体を有している。ジャケット42Aおよび内部ダクト43は、参照符号47で示す箇所で取り付けられるような別々の部材である。あるいは、装置40と同様に、ジャケット42、内部ダクト43およびジャケット42Bは1つの連続した材料から形成されていてもよい。この場合は、材料の各端部は参照符号45または47で示す箇所で接触し、この箇所で材料の各端部が縫い合わせられるかまたは材料の各端部は互いにおよびそれ自体に接続される。参照符号45または47で示される他の箇所では、材料それ自体が接続され、チューブ41が各端部で繊維ジャケット42に収容されるような収容部分44が形成される。このことにより、装置40Aが導管の内部に配置された場合に、2組の光ファイバまたはマイクロ光ファイバケーブルと、1つの光ファイバケーブルとを導管の内部に挿入することができるようになる。
【0022】
図6は、
図4および
図5に示す装置の変形例を示している。この装置40Bにおいて、
図4に示す装置と同様に、1つのチューブ41およびジャケット42の組合せ体が設けられている。しかしながら、装置40Bは、複数の、図示の例では3つの収容部分44Aを形成する内部ダクト43Aを有している。各収容部分44Aは、各収容部分44A内に配置される挿入具46Aを支持している。このような3つの内部ダクトは、例えば、米国特許第6,251,201号に示されており、この特許公報により、装置40Bの構造を理解するために必要な詳細事項を参照することができる。
【0023】
このように、
図6には、内部ダクト43と同様の、ジャケット42に取り付けられた3つの内部ダクト43Aが示されている。すなわち、各内部ダクト43Aを別々に形成して縫い合わせるか、あるいは参照符号48で示す箇所でジャケット42の端部に取り付けられる。または、ジャケット42および内部ダクト43が1つの連続した材料から形成され、その端部が互いに縫い合わせられるとともにそれ自体が複数の箇所、例えば参照符号48で示す箇所で縫い合わせられ、このことにより収容部分44Aが形成される。その結果、装置43Bを有する導管を使用して、光ファイバおよび3つの光ファイバケーブルの組合せ体を導管の内部に配置することができる。
【0024】
本明細書に記載のいずれかの実施形態に沿って構成される装置は、本発明の目的を達成し、実質的に技術を改善することを理解されたい。