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特許7216029生物組織を再生するためのパッチおよびそれを製造する方法
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  • 特許-生物組織を再生するためのパッチおよびそれを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】生物組織を再生するためのパッチおよびそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20230124BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230124BHJP
   A61F 2/02 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/38
A61F2/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019572572
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 ES2018070451
(87)【国際公開番号】W WO2019008203
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P201730877
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】513107595
【氏名又は名称】ビスコファン,エセ.アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】フス,アニカ
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ,ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】キンタナ フリゴラ,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】プロスペル カルドーソ,フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】ガヴィラ ゴメス,フアンホ
(72)【発明者】
【氏名】ラバゴ フワン-アラシル,グレゴリオ
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/143149(WO,A1)
【文献】特開2001-104346(JP,A)
【文献】特表2012-501737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116799(US,A1)
【文献】国際公開第2011/021706(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/104366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
A61F 2/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生特性をもつ細胞を有するコラーゲン物質で形成された膜(2)と、
前記コラーゲン物質で形成された膜(2)の剛性を増大して取扱い中における該膜(2)の変形を防止するように構成された、少なくとも1つの補強要素(3a、3b)と
を備えた、患者において生物組織を再生するためのパッチ(1)であって、
前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)が、前記コラーゲン物質で形成された(2)と同じコラーゲン物質で製造され、かつ、
前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)が、前記膜(2)の末端間に交差したアタッチメント(3b)を含む
ことを特徴とする、該パッチ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)が、前記膜(2)に属する周辺部フレーム(3a)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のパッチ(1)。
【請求項3】
請求項1に記載の患者において生物組織を再生するためのパッチ(1)を製造する方法であって、以下の工程:
(a)コラーゲン物質で膜(2)製造すること;
(b)少なくとも1つの補強要素(3a、3b)を製造すること;
(c)前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)を、前記膜(2)に対し配置すること;
(d)前記膜(2)を滅菌すること;および
(e)再生特性をもつ細胞を前記膜(2)上に添加すること、
を含むことを特徴とする、該方法。
【請求項4】
前記工程(c)の後、かつ前記工程(e)の前に、前記コラーゲン物質で製造した膜(2)と前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)とにより形成された集合体が滅菌されることを特徴とする、請求項に記載の、パッチ(1)の製造方法。
【請求項5】
前記工程(c)において、前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)を前記膜(2)に対し配置することが、2つのサブ工程:
(c1)前記膜(2)を加湿すること;および
(c2)ガンマ線照射により、前記膜(2)および前記補強要素(3a、3b)を照射すること、
において実施されることを特徴とする、請求項3または4に記載の、パッチ(1)の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)が前記膜(2)自体の一部であり、かつ双方の実体がコラーゲンであることから、前記膜(2)および前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)を製造する前記工程(a)および前記工程(b)が、一段階で実施され;かつこれにおいて、前記工程(c)の前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)を前記膜(2)に対し配置することが、前記膜(2)の少なくとも1つの縁を曲げることによって実施されることを特徴とする、請求項3または4に記載の、パッチ(1)の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)が前記膜(2)自体の一部であり、かつ双方の実体がコラーゲンであることから、前記膜(2)および前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)を製造する前記工程(a)および(b)が、一段階で実施され;かつこれにおいて、前記工程(c)の前記少なくとも1つの補強要素(3a、3b)を前記膜(2)に対し配置することが、前記膜(2)の内表面の少なくとも一部を折り畳むことにより実施される、請求項3ないし6のいずれか1項に記載の、パッチ(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者において生物組織を再生するためのパッチに関し、またそれを製造する方法に関する;このパッチは、外科および病院部門に属する。
【0002】
本発明の主目的は、患者の1つまたはいくつかの損傷臓器に対し衛生的かつ効率的に適用されるものであって、前記の適用が、パッチ自体に存在する細胞の再生能力と、それらが生物繊維の定着を助ける能力とのおかげで、生物組織が迅速に再生できるようにするものである。また、それを製造することがいかに容易であるかとともに、得られるだろう多種多様な幾何学的かつ形態学的な構成も指摘されるべきであり;ここで、この多種多様性とは、本発明の目的の前記パッチが適用されようとしている場所に基づくものである。
【背景技術】
【0003】
序論として、患者において生物組織を再生するためのパッチの使用および適用が、増々用いられていることが知られており、ここで、前記パッチは特に、現在はCCCと称されるコラーゲンシートタイプであり;その上で、制御された細胞増殖が実行され、パッチ自体の再生特性が達成されるようにする。こうした長時間の使用および適用の原因は、多くの外科的介入において、切開および損傷が手術の標的領域に達することを目的として患者の臓器上で行われるという事実にある。前記の損傷は、前記の手術臓器の瘢痕形成の必要性を伴うものであり、これには、患者が受ける身体的な不快に加えて、病室での長期の滞在が含まれる。さらに、前記の損傷は、介入の難しさか、または患者の外形(physiognomy)そのもの、のいずれかによって、複雑な瘢痕形成を要するが、その理由は、患者が身体条件に応じて使うことができる瘢痕形成性の生物学的製剤の数が少ないからであり;このことは、患者の健康に対し一定のリスクも伴いうる。
【0004】
それ故、引き起こされた損傷の瘢痕形成時間を短縮し、かつ患者において生じ得る健康問題のリスクを低減するために、臓器組織生成用のCCCコラーゲンパッチの使用および適用技術が知られており、該パッチは、その名前が示す通り、細胞への物質の輸送と、数週間後には分解する代用身体膜への変換とを担当するコラーゲンタンパク質シートを含む。これによりコラーゲンが、患者における前記損傷の再生および瘢痕形成プロセスの加速を担当し、それにより、入院を短縮し、罹患臓器の弱い瘢痕形成に起因する引裂のリスクを低減する。
【0005】
非常に広範囲にそれが使用され、かつその目的が再生という上述の利益に適するとはいえ、それをどのように患者の臓器に適用するかについては、重大な不利益が提示されている。これは、現在使用されているCCCコラーゲンパッチが、再生されるべき生物臓器の損傷に応じていかなるタイプの表面にも適合され得る、変形可能な可撓性の組織形態を有しているからである。しかしながら、この可撓性および適合性は、担当外科医が前記臓器の上にそれを導入し、そしてそれを配置するべき場合には逆効果である;外科医は通常、無菌の外科用クランプを取扱うが、それは、1つ以上の末端を使用してコラーゲンパッチを確保および把持し、そしてこのパッチを、パッチが折り畳まれておりかつ適宜の適用には広げられるはずであるように罹患臓器へ移さねばならず、このことは、手術時間の遅れを伴い、またそれが広げられかつ取扱われねばならないことから、パッチの生物学的汚染も伴う。
【0006】
それ故、患者において生物組織を再生するためのパッチの適用の困難に関連した不利益を考慮すれば、1つまたはいくつかの生物臓器のいかなるタイプの表面にも適用でき、かつ高い適応性と生物組織再生特性とをもつ新規なパッチを見出すことが必要であり、それはまた、罹患臓器への前記パッチの適用および配置の技術を促進および改善し、かつ前記パッチの適用時間を減少させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、患者において生物組織を再生するためのパッチであって:
- 再生特性をもつ細胞を含む、コラーゲン膜と;および
- 前記膜の剛性を増大するべく構成され、その取扱い中の前記膜の変形を防止する、少なくとも1つの補強要素と
を含む該パッチに関する。
【0008】
明確化を目的とすれば、これおいて、膜がコラーゲン物質で製されていること、かつそれが、生物組織のための再生特性をもつ複数の細胞を有することが観察されるが、その理由は、前記細胞を再生する方法がコラーゲン膜において前記細胞を増殖させることによって実施されるからである。
【0009】
それ故、前記少なくとも1つの補強要素の存在のおかげで、本発明の目的のパッチを患者の臓器へ適用する段階に関連した全ての問題は、完全に解決される;この補強要素は、コラーゲン膜がそれ自体の上に折り畳まれるのを防ぐことから、滅菌されたその容器からそれが取り出されるときから、患者の臓器へ適用されるまでの、パッチの適用時間に短縮を達成する。
【0010】
この点において、また前記補強要素については、いずれの場合も本発明の目的のパッチへ結合されたコラーゲン膜の剛性を増大するべく構成された、様々な実施形態のオプションが達成されており、これにおいては:
- 前記少なくとも1つの補強要素が、前記膜に対し周辺部フレームを含んでおり、パッチが曲がるのを防止するようにするが、その理由は、外科医によるパッチに対する好ましい確保がパッチの周辺部輪郭に沿って実施されること、および、それが補強されているとすれば、安易で効果の著しいそれ自体のめくれ上がりをより困難にすることからである。
- 前記少なくとも1つの補強要素は、前記コラーゲン膜の末端間に交差したアタッチメントを含む;再度、パッチ全体の剛性は三角棒構造に類似した様式で増大し、その結果、パッチの非変形性を生じ、かつ記載された周辺部フレームによって補強され得、このことが、上記記載の適用時間の利点を保証する。
【0011】
さらに、本発明の目的のパッチの設計および製造を単純化する目的で、好ましいオプションが考案され、これにおいて、前記少なくとも1つの補強要素は、前記コラーゲン膜と同じ材料を用いて製造される。このことはまた、前記パッチを形成する均一な材料である材料間に、何ら不適合性がないことを保証し、かつ患者の生物臓器については、パッチの受容および再吸収の保証を増大する。
【0012】
さらに、本発明の目的のパッチを製造する方法であって、以下の工程:
a)コラーゲン膜を製造すること;
b)前記補強要素を製造すること;
c)前記少なくとも1つの補強要素を、前記膜に対し配置すること;
d)膜を滅菌すること;および
e)再生特性をもつ細胞を前記膜上に添加すること、
を含む該方法が記載される。
【0013】
これにおいて、上述の工程は、簡単で論理的な製造方法を含んでおり、既存の先行技術に比較して経費の実質的な上昇を伴わない;このことは、前記少なくとも1つの補強要素をどのように設計するかについて、様々な製造の可能性を有し得る。
【0014】
前記パッチは外科部門に入ることから、好ましいオプションは、パッチを製造する方法が、工程c)の後、かつ工程e)の前に、コラーゲン膜と前記少なくとも1つの補強要素とにより形成された集合体を滅菌することを含み;罹患患者における衛生的で健康的な使用が保証される。
【0015】
補強要素については、コラーゲン膜に対し外側の要素で製されていてもよく、かつどのようにするかは工程c)に記載されており、前記少なくとも1つの補強要素を前記膜に対し配置することは、例えば、水を用いて2つの要素を接着することによって実施される。或いは、オプションが考えられてもよく、これにおいて、および工程c)の間に、前記少なくとも1つの補強要素を前記膜に対し配置することが、2つのサブ工程:
c1)膜を加湿すること、補強材を配置すること;および
c2)ガンマ線照射により、膜および補強要素を照射すること、
において実施される。
【0016】
さらに、膜の外側に補強要素を使用することとは対照的に;好ましいオプションが記載されるが、これにおいては、前記少なくとも1つの補強要素が膜自体の一部であり、かつ双方の実体がコラーゲンであることから、膜および前記少なくとも1つの補強要素を製造する工程a)およびb)が、一段階で実施され;かつこれにおいて、工程c)の前記少なくとも1つの補強要素を前記膜に対し配置することが、前記膜の少なくとも1つの縁を曲げることによって実施される。このことはそれらの製造を単純化し、かつそのようにして得られるコラーゲンパッチの均一性を保証する。
【0017】
同様の、かつ補充的もしくは独立した実施形態と見なされ得る方法において、オプションが記載されるが、これにおいては、前記少なくとも1つの補強要素がコラーゲン膜自体の一部であることから、膜および前記少なくとも1つの補強要素を製造する工程a)およびb)はまた、一段階で実施されるが、しかしこれにおいては、工程c)の前記少なくとも1つの補強要素を前記膜に対し配置することが、前記膜の少なくとも内表面を曲げることにより実施される。
【0018】
それ故、提案された本発明によれば、患者において生物組織を再生するためのパッチであって、いかなるタイプの生物臓器にも最大限の成功保証を以て適用され得るとともに、適用時間を短縮する該パッチが得られ;また、該パッチの容易な製造と、前記の本発明の目的のパッチが適用されることとなる場所に応じて実現されるべき、多種多様な幾何学的形状とにも注目される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
示されている記載を補足するため、また本発明の特長のより良い理解を助けることを目的として、本発明の好ましい代表的な実施形態に従って、前記記載の不可欠な部分として図面が含まれており、これにおいて、以下は例示的かつ非限定的な様式で表されている。
【0020】
図1】外科器具により確保されている、本発明の対象患者において生物組織を再生するためのパッチの立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の対象患者において生物組織を再生するためのパッチ(1)であって:
- 再生特性をもつ複数の細胞を有する、コラーゲン膜(2)と;および
- 各々が前記膜(2)の剛性を増大するべく構成され、その取扱い中の前記膜(2)の変形を防止する、2つの補強要素(3a、3b)と、
を含む、該パッチを示す。
【0022】
前記補強要素(3a、3b)は、前記膜(2)に対し周辺部フレーム(3a)によって;かつ前記膜(2)の末端間の一対の交差したアタッチメント(3b)によって規定されており;このことは、前記補強要素(3a、3b)が前記膜(2)と同じコラーゲン物質で製造されることから、非常に効率的な方法でパッチ(1)全体の構造剛性を増大させ、手術の間のそれらの取付けプロセスを高度に単純化させる。
【0023】
この点において、患者において生物組織を再生するためのパッチ(1)を製造する好ましい方法は、以下の工程:
a)コラーゲン膜(2)および補強要素(3a、3b)を製造すること;
b)前記補強要素(3a、3b)を前記膜(2)に対し配置および生成すること。これにおいて、前記補強要素(3a、3b)を前記膜(2)に対し配置する工程b)は、周辺部フレーム(3a)を実現する目的で、前記膜(2)のそれぞれの縁を曲げることによって実施され;かつ交差したアタッチメント(3b)のそれぞれは、前記膜(2)の内表面の一部を折り畳むことによって実施され;
c)前記膜(2)と前記補強要素(3a、3b)とによって形成された集合体を、滅菌すること;および最後に
d)再生特性をもつ細胞を前記膜(2)上に添加すること、
を含む。
【0024】
本記載および図面を考慮すれば、当業者には、記載された本発明の実施形態が、本発明の目的の範囲内で多数の方法で組合わされ得ることが理解されよう。本発明を、本発明のいくつかの好ましい実施形態に従って記載してきたが、当業者には、前記好ましい実施形態において、クレームされた本発明の目的から離れることなく多数の変形がなされ得ることが明らかであろう。
図1