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特許7216030二酸化ケイ素および金属酸化物を製造するための液体原材料の噴霧蒸発
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  • 特許-二酸化ケイ素および金属酸化物を製造するための液体原材料の噴霧蒸発 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】二酸化ケイ素および金属酸化物を製造するための液体原材料の噴霧蒸発
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20230124BHJP
   C01G 23/07 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C01G23/07
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019572602
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067265
(87)【国際公開番号】W WO2019007782
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】17179702.0
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム エアツ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア ゼヴェリーン
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン コルネリウス
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05958361(US,A)
【文献】特開昭59-169927(JP,A)
【文献】国際公開第2017/001366(WO,A1)
【文献】特表2018-526309(JP,A)
【文献】特表2012-512795(JP,A)
【文献】特開2002-060214(JP,A)
【文献】特開平10-167717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/18
C01G 23/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a) 少なくとも1種のケイ素化合物および/または金属化合物を含む液体原材料をガスと混合して噴霧することでエアロゾルを形成する工程;
b) 工程a)で得られた前記エアロゾルから、これを完全に蒸発させることにより完全に気体状反応混合物を形成する工程;
c) 工程b)で得られた、前記少なくとも1種のケイ素化合物および/または金属化合物を含む前記気体状反応混合物を酸素の存在下で二酸化ケイ素および/または金属酸化物に転化する工程
を含む、二酸化ケイ素および/または金属酸化物を製造する方法。
【請求項2】
工程a)で形成された前記エアロゾルが、2mm以下の数値平均粒径を有する液滴を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
使用される前記液体原材料の量(kg)に対する工程a)およびb)で使用されるガス容積(標準立方メートル)の比が、0.1~100m(STP)/kgであることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程a)および/またはb)で使用される前記ガスが酸素を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記液体原材料を工程a)の実施前に50~500℃の温度に予熱することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程a)および/またはb)で使用される前記ガスを50~400℃の温度に予熱することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程a)で使用される前記液体原材料は、工程a)の実施前に、圧力が少なくとも1.5barであり、工程b)で得られる前記気体状の反応混合物は、圧力が1.2bar以下であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程c)で使用される前記気体状反応混合物は、温度が、この混合物の露点温度より少なくとも10℃高いことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記液体原材料を少なくとも1つのノズルを通して噴霧することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程a)およびb)が同時に行われることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
気体状燃料を工程a)~c)で少なくとも1回使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記金属酸化物が、金属成分として、Al、Ce、Fe、Mg、In、Ti、Sn、Y、Znおよび/またはZrの少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
二酸化ケイ素を製造するためにケイ素化合物を使用することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ケイ素化合物が、テトラアルコキシオルトシリケート、シラン、シリコーンオイル、ポリシロキサンおよび環状ポリシロキサン、シラザン、ならびにこれらの混合物から成る群より選択される非ハロゲン化化合物であることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ素化合物が、四塩化ケイ素、ジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシランおよびこれらの混合物から成る群より選択される塩素化化合物であることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化合物を含む液体原材料から出発して、二酸化ケイ素および金属酸化物、特に発熱性二酸化ケイ素を製造する方法に関する。
【0002】
フュームドシリカとも呼ばれる発熱性二酸化ケイ素は、火炎加水分解法または火炎熱分解法により製造されることが一般的である。二酸化ケイ素を製造する火炎加水分解は、長く知られた、工業規模で行われている方法である。この方法では、気体状の加水分解性ハロゲン化ケイ素が、水を形成する水素含有燃料と酸素含有ガスとを燃焼させることにより形成された火炎内に微細に分布している。ここで燃焼炎により、ハロゲン化ケイ素を加水分解するための水、および加水分解反応のための十分な熱がもたらされる。反応のテールガスに飛沫同伴した二酸化ケイ素粉末は、従来の冷却および固体分離プロセスにかけられる。通常、四塩化ケイ素が使用される。炭素質供給原料、例えばメチルトリクロロシランまたはジメチルジクロロシランが使用される場合、炭素を二酸化炭素に転化させるために、さらに酸化プロセスが行われる。非ハロゲン化ケイ素化合物、例えばシロキサンが原料として用いられる場合、それを熱酸化により相応して転化させてシリカにすることは、火炎熱分解と呼ばれる。
【0003】
双方のタイプのプロセスの結果として得られる二酸化ケイ素粉末が、発熱性二酸化ケイ素またはフュームドシリカと称される。
【0004】
同様に、適切な蒸発性金属化合物から出発して、様々な金属酸化物粉末を製造することが可能である。例えば、欧州特許出願公開第1142830号明細書には、有機溶媒に溶解した有機前駆体から成るエアロゾルを燃焼させることにより金属酸化物粉末を得ることについて開示されている。
【0005】
ケイ素または金属化合物の様々なやり方での反応炎への導入について記載した。
【0006】
国際公開第2015/003873号には、加水分解性および/または酸化性のケイ素化合物の蒸気流を火炎加水分解反応で少なくとも1種の燃料および酸素と一緒に反応させる、フュームドシリカを製造する方法が開示されている。気体状成分と1種の別の成分とのより良好な混合を達成するために、静的な混合要素が使用される。
【0007】
欧州特許出願公開第0471139号明細書には、気体状のハロゲン不含ケイ素化合物を火炎熱分解によりシリカに転化させることについて開示されている。これには例えば、液体の蒸発性シクロシロキサンを、外部の貯蔵容器からの気体流によりバーナーに送り、これをシリカに転化させる工程が含まれる。
【0008】
火炎熱分解法によるシリカの製造で気体状のポリアルキルシロキサンを使用することには、分子量のより高い種が、ゲル形成により供給ラインを塞ぎ得るという欠点があり、これにより、得られる製品の品質が低下することがある。国際公開第99/06331号において、この問題は、フュームドシリカを製造する方法にて、液体シロキサンを微細に分布させ、これを火炎に直接供給し、これをシリカに転化させることにより解決される。
【0009】
国際公開第2017/001366号には、火炎噴霧熱分解により金属酸化物粉末を製造する原理的に類似した方法であって、シロキサン含有エアロゾルが反応器内の火炎に直接導入されて二酸化ケイ素に転化させられる方法が開示されている。この場合、エアロゾルは、1つまたは複数のノズルにより金属化合物含有溶液と霧化ガスとを同時霧化(joint atomization)することにより得られ、反応器断面積に対する噴霧面積の比は、少なくとも0.2である。
【0010】
米国特許出願公開第2002/041963号明細書には、1600~5600℃の断熱火炎温度のバーナー内でシロキサンを酸化燃焼させることにより球形の非晶質シリカを製造する方法が開示されている。この場合、シロキサンは、液体または気体の形態で火炎に導入され得る。
【0011】
国際公開第2004/048261号には、液状の蒸発性非ハロゲン化二酸化ケイ素前駆体、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンを火炎の後に気体状の燃料気体流に導入することにより、発熱性金属酸化物粒子を製造する方法が開示されている。後者のものは、酸化剤の存在下で燃料を燃焼させることにより得られる。
【0012】
気体状の金属化合物が個別の蒸発器内で生成されて火炎に導入される従来技術から公知の方法には、蒸発器自体または相応する供給ラインが、経時的に沸点のより高い生成物または分解生成物により容易に詰まるか、または塞がれることがあるという欠点がある。この場合、しばしば、シリカまたは金属酸化物を製造する連続的な方法を中断する必要があり、時間のかかる洗浄操作を蒸発器で実施する必要がある。これにより、製造プロセス全体の安定性および計画性が損なわれ、製造原価が増加する。これとは別に、新たな生産工場における個別の蒸発器の設置には、かなりの資本コストを伴う。
【0013】
液状の金属化合物が火炎に直接導入される類似した公知の方法では、しばしば、反応域における反応物の分布が悪化し、その結果、その不均質性により製品品質が悪化する。
【0014】
本発明により対処する問題は、二酸化ケイ素または金属酸化物を製造する改善された方法を提供することであり、これにより、中断のない安定かつ良好な製品品質および安定した操作が保証される。本発明により対処するさらなる問題は、個別の蒸発器を使用することなく機能する、二酸化ケイ素または金属酸化物を製造する方法を提供することである。
【0015】
これらの問題は、以下の工程:a)少なくとも1種のケイ素化合物および/または金属化合物を含む液体原材料をガスと混合して噴霧することでエアロゾルを形成する工程;b)工程a)で得られたエアロゾルから、これを完全に蒸発させることにより気体状反応混合物を形成する工程;c)工程b)で得られた気体状反応混合物を酸素の存在下で二酸化ケイ素および/または金属酸化物に転化する工程を含む、二酸化ケイ素および/または金属酸化物を製造する方法により解決された。
【0016】
少なくとも1種のケイ素化合物および/または金属化合物を含有する液体原材料を、本発明による方法の工程a)で噴霧、すなわち周囲ガス中に微細に分布させると、液滴がガス中に微細に分布したエアロゾルである液体/気体二相混合物が形成される。
【0017】
工程a)で形成されるエアロゾルは、数値平均粒径が、2mm以下、より好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である液滴を含むことが好ましい。エアロゾル中の液滴のそのような数値平均粒径は、例えば当業者であれば計算可能であり、使用される装置の寸法、相応する流速、液体および気体特性、ならびにその他のパラメーターから求められる。あるいは、工程a)で形成されるエアロゾルの数値平均粒径は、レーザー回折法により直接測定可能である。測定された液滴径分布の結果を使用して、中央値d50を数値平均粒子径として定義し、これは、全粒子の50%がこの液滴径を上回らないことを反映している。
【0018】
本発明による方法の工程a)で行われる液体噴霧は、この目的について当業者に公知の様々な装置および機器を用いて達成可能である。ここで例えば、ディスク式噴霧器、回転式噴霧器、超音波式噴霧器、一相、二相または多相ノズル、および様々な噴射装置または類似した装置を使用することが可能である。
【0019】
本発明による方法において、液体原材料は、少なくとも1つのノズルを通して噴霧されることが好ましい。
【0020】
本発明による方法で使用される液体原材料から、噴霧によりエアロゾルが形成される。液体原材料は、工程a)で噴霧によりガスと同時に混合されても、または工程b)において噴霧直後に混合されてもよい。最初に形成されるエアロゾルをさらに分布させ、気体流中で希釈してもよい。
【0021】
使用される液体原材料の量(kg)に対する工程a)およびb)で使用される総ガス容積(標準立方メートル)の比は、好ましくは0.05~200、より好ましくは0.1~100、より好ましくは0.5~50m(STP)/kgである。
【0022】
工程a)および/またはb)で使用されるガスは、好ましくは、酸素と窒素とを含む混合物の形態で酸素を含むことが好ましく、工程a)で空気をガスとして使用することが特に好ましい。
【0023】
本発明による方法の工程b)では、気体状反応混合物が、工程a)で得られたエアロゾルから形成される。
【0024】
蒸発しても安定したままである、すなわち熱分解しない比較的容易に蒸発可能な液状のケイ素化合物および/または金属化合物を本発明による方法において使用することがより好ましい。使用されるケイ素化合物および/または金属化合物は、沸点が、10mbarで300℃未満、より好ましくは100mbarで300℃未満、最も好ましくは500mbarで300℃未満であると特に有利である。本発明に関して、特に明示しない限り、絶対圧の値を常に報告する。
【0025】
ケイ素化合物および/または金属化合物を含有する液滴を反応炎中で二酸化ケイ素または金属酸化物に転化させる必要がないことを確実にするために、工程a)で得られたエアロゾルの液体成分すべてを完全に蒸発かつ転化させて気相にする工程が、本発明による方法の工程b)で行われる。
【0026】
エアロゾルが形成された後に液体原材料をそのように蒸発させる工程は、様々な手段により達成可能である。基本的に、適切な熱源によりエアロゾルにさらなるエネルギーを伝達しても、かつ/または気体流中の蒸発した液体の分圧をエアロゾルが形成された後に減少させてもよい。よって、本発明による方法の工程a)およびb)の1つの可能な実施形態は、予熱したガスを使用することにより達成可能である。工程a)および/またはb)で使用されるガス、好ましくは空気は、50~400℃、より好ましくは80~350℃の温度に予熱されてもよい。また液体原材料は、工程a)の実施前に予熱されてもよい。また、使用される液体原材料は、過熱されても、すなわち標準圧力での沸点よりも高い温度に加熱されてもよい。液体原材料は、工程a)の実施前に、500℃まで、より好ましくは100~400℃、より好ましくは150~350℃の温度に予熱されることが好ましい。使用される原材料を予熱および場合によって過熱することにより、予熱ガスを介してもたらされるべきその蒸発に必要なエネルギーの量が減少する。
【0027】
液体原材料の蒸発に必要なエネルギーは、使用される原材料の予熱を介して供給されても、または原材料が内部に噴霧された予熱ガスを介して供給されてもよい。したがって、条件を各原材料に合わせて最適化することができ、重要な原材料、例えば分解温度が低い原材料を使用することもできる。
【0028】
本発明による方法の工程c)を実施する間の断熱火炎温度は、通常500℃超、好ましくは1000~2500℃に達するため、反応混合物を上記のように予熱することにより、火炎中の温度勾配の減少が促進され、それにより均質なサイズを有する二酸化ケイ素および/または金属酸化物粒子の形成が促進される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、工程a)で使用される液体原材料は、工程a)の実施前に、圧力が、少なくとも1bar、より好ましくは少なくとも1.5bar、最も好ましくは少なくとも2barである。工程b)で得られるガス混合物は、好ましくは、圧力が、1.2bar以下、好ましくは1.1bar以下、より好ましくは1bar以下であり得る。
【0030】
本発明による方法の工程b)では、この混合物の露点に相応する温度よりも高い温度の気体状反応混合物を得ることが好ましい。したがって、完全に気体状の反応混合物が本発明による方法の工程c)で使用されることが保証される。工程c)で使用される気体状反応混合物は、温度が、この混合物の露点温度より、少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも30℃、最も好ましくは少なくとも50℃高いことが好ましい。
【0031】
本発明による方法の工程a)およびb)は、すぐ連続して、または少なくとも部分的に同時に行われてもよい。工程a)およびb)は、少なくとも部分的に同時に行われることが好ましく、このことは、液体原材料がまだ噴霧されていても、液体の蒸発が少なくとも部分的に起こっていることを意味する。
【0032】
ケイ素化合物および/または金属化合物を二酸化ケイ素および/または金属酸化物に転化させるために必要な酸素は、工程a)~c)のうちの少なくとも1つの間に供給することが可能である。ここで、酸素を、例えば純粋な形態、またはその他のガスとの混合物、特に空気として使用することが可能である。空気を工程a)および/またはb)の実施の間に導入する場合、これはまだ一次空気と称される。また、二次空気を工程c)の間にさらに使用すると有利であり得る。一般的に、二次空気の量は、一次空気に対する二次空気の比が0.1~10になるような量である。
【0033】
酸素が反応混合物の可燃性構成要素に比べて過剰に存在すると特に有利である。指数λ(ラムダ)は、反応混合物中に存在する酸素の量を、反応混合物のすべての可燃性構成要素の完全な燃焼に必要な酸素の量で割った比であり、これらはそれぞれmol/hである。λは、1.2超に設定されることが好ましく、1.4~5のλを選択することがより好ましい。
【0034】
本発明による方法の工程a)~c)のうちの少なくとも1つの間で、気体状燃料を使用してもよい。そのような燃料の例としては、水素、メタン、エタン、プロパン、ブタンおよび/または天然ガスが挙げられる。
【0035】
少なくとも1種のケイ素化合物および/または金属化合物を含む液体原材料を本発明による方法で二酸化ケイ素および/または金属酸化物に転化させるための反応器は、少なくとも2つの反応器域AおよびBを含んでいてもよく、このそれぞれが、一般的な反応チャンバの一部であり、互いに重なっていても、または互いに個別に分かれていてもよい。反応チャンバAの機能的役割は、主に、使用される液体原材料を少なくとも1種のガスにより気体状反応混合物に転化させることである。他方で反応域Bでは、ケイ素化合物および/または金属化合物を含有する事前に形成されたガス混合物を二酸化ケイ素および/または金属酸化物に化学的に転化させることが行われる。
【0036】
反応器域Aは、反応器域Bの上方にあることが好ましい。ケイ素化合物および/または金属化合物は、反応器域Aの上部に導入されることがより好ましい。
【0037】
反応器域Aは、反応器域Aに導入される液状のケイ素化合物および/または金属化合物とガスとの混合を改善することができる要素を含んでいてもよい。例えば、反応器域Aは、様々なバッフルまたはスタティックミキサーを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の特定の実施形態を示す。
【0039】
以下で、本発明の特定の実施形態を示す図1を参照して、本発明を詳細に説明する。この大幅に簡略化された図面は、本発明による方法工程の概要すべてを示すことを意図している。基本的な反応器部分(A~G)、ならびに相応する反応物および生成物流(1)~(7)の詳細な説明(表1)を以下に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
図1に示される反応器内で、液体原材料、すなわちケイ素化合物および/または金属化合物を含有する液体を、必要に応じて目的(D)を意図した装置内で予熱する。予熱の前および/または後に、任意で、1つまたは複数のフィルタ(C)を設置して、使用される原材料からその中に存在する固体粒子を除去することができる。図1に示される特定の実施形態において、反応器域AおよびBは、上下に配置される。反応器域Aの上部では、ファインディストリビューター(E)を介して液体原材料(1)を導入し、これを微細に分布させる。同様にして反応器域Aの上部に導入された一次空気(2)により、ケイ素化合物および/または金属化合物を含有する微細に分布した液体原材料とガスとが互いに混合されることと、反応器域Aでさらに完全に気体状になる気体状反応混合物またはエアロゾルが形成されることが保証される。反応器域A中の気体状成分のより良好な混合は、その内部に設置された混合要素(F)、例えばスタティックミキサーにより達成される。(1)または別のものの中に存在するものと同じ気体状のケイ素および/または金属化合物(3)を反応器域Aにさらに供給してもよい。ここで、(1)で使用されたもの以外のケイ素および/または金属化合物が使用される場合、相応する混合酸化物が生成物として製造され得る。燃料ガス、例えば水素を、反応器域A(中心部燃料、4)および反応器域B(周辺部燃料、5)のどちらに供給してもよい。後者の場合、周辺部水素は、反応器域B中で生成される火炎の安定化に寄与することができる。任意で、さらなる量の空気(二次空気、6)を反応器域Bに供給して、そこで反応混合物を転化させて二酸化ケイ素および/または金属酸化物を含む生成物混合物(7)にすることも可能である。
【0042】
本発明による方法により得られる金属酸化物は、金属成分として、アルミニウム(Al)、セリウム(Ce)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)、亜鉛(Zn)およびジルコニウム(Zr)の少なくとも1種の元素、より好ましくはAlおよび/またはTiを含むことが好ましい。
【0043】
本発明の文脈の金属酸化物としては、混合金属酸化物およびドープされた金属酸化物も挙げられ、これには、金属酸化物でドープされた二酸化ケイ素、二酸化ケイ素でドープされた金属酸化物、または金属酸化物と二酸化ケイ素とを含む混合酸化物が含まれる。
【0044】
混合金属酸化物とは、混合酸化物成分の均質混合が一次粒子または凝集体のレベルで行われる金属酸化物を意味すると理解される。この場合の一次粒子は、M1-O-M2結合の形態の酸素架橋された金属成分を有し得る。さらに、一次粒子中に、個別の酸化物M1O、M2O、M3Oなどの領域が存在することもあり得る。
【0045】
ドープされた金属酸化物とは、ドープ成分が主にまたは専ら金属酸化物格子の格子部位に存在する酸化物を意味すると理解される。ドープ成分は、金属または酸化物の形態にあってもよい。ドープされた金属酸化物の一例は、酸化インジウムスズであり、ここでスズ原子は、酸化インジウム格子中の部位を占める。
【0046】
本発明の文脈のケイ素および金属化合物は、本質的に有機金属および/または無機であってもよい。無機開始材料の例は、特に、四塩化ケイ素、金属塩化物および金属硝酸塩であってもよい。使用される有機金属化合物は、特に、ケイ素アルコキシドおよび/または金属アルコキシドおよび/または金属カルボキシレートであってもよい。使用されるアルコキシドは、好ましくは、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシドおよび/またはtert-ブトキシドであってもよい。使用されるカルボキシレートは、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、吉草酸、カプリン酸および/またはラウリン酸系の化合物であってもよい。特に有利には、2-エチルヘキサノエートおよび/またはラウレートを使用することが可能である。
【0047】
本発明による方法で使用されるケイ素化合物および/または金属化合物は、それらの性質に応じて、例えば水または有機溶媒中に溶解されていてもよい。よって、本発明の文脈において、ケイ素化合物および/または金属化合物を含有する液体原材料は、ケイ素化合物および/または金属化合物の溶液であっても、または固体でさえあってもよい。「液体原材料」という用語は、本発明による方法の工程a)で使用する場合に存在する条件下でのその物質の状態に関する。
【0048】
有機溶媒、または有機溶媒混合物の構成要素は、好ましくは、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールまたはtert-ブタノール、ジオール、例えば、エタンジオール、ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、ジアルキルエーテル、例えば、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン、C1~C12カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、吉草酸、カプリン酸、ラウリン酸であってもよい。さらに、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、ナフサおよび/またはベンジンを使用することが可能である。好ましくは、C2~C12カルボン酸、特に2-エチルヘキサン酸および/またはラウリン酸を含有する溶液を使用することができる。
【0049】
溶液中のC2~C12カルボン酸の含量は、溶液の合計量を基準として、60重量%未満、より好ましくは40重量%未満であることが好ましい。
【0050】
特に好ましい実施形態において、ケイ素化合物および/または金属化合物の溶液は、カルボキシレートおよびその由来となるカルボン酸、ならびに/またはアルコキシドおよびその由来となるアルコールを同時に含有する。より詳細には、使用される出発材料は、2-エチルヘキサン酸を含有する溶媒混合物中の2-エチルヘキサノエートであってもよい。
【0051】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、ケイ素化合物が、二酸化ケイ素を製造するために使用される。
【0052】
本発明による方法で使用されるケイ素化合物は、テトラアルコキシオルトシリケート、シラン、シリコーンオイル、ポリシロキサンおよび環状ポリシロキサン、シラザン、ならびにこれらの混合物から成る群より選択される非ハロゲン化化合物であってもよい。使用されるテトラアルコキシオルトシリケートは、例えば、テトラエトキシオルトシリケート(TEOS)およびテトラメトキシオルトシリケート(TMOS)であってもよい。使用されるシランは、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、アリールアルキルアルコキシシラン、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジエチルプロピルエトキシシランであることが好ましい。ポリシロキサンおよび環状ポリシロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、およびシラザン、例えば、ヘキサメチルジシラザンも同様に、本発明による方法のケイ素化合物として使用してもよい。オクタメチルシクロテトラシロキサンを使用することが特に好ましい。
【0053】
本発明による方法で使用されるケイ素化合物も同様に、四塩化ケイ素、ジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシランおよびこれらの混合物から成る群より選択される塩素化化合物であってもよい。四塩化ケイ素を使用することが特に好ましい。
【0054】
本発明による方法による酸化アルミニウムの製造について、特に塩化アルミニウムが、相応する金属化合物として適している。塩化アルミニウム、すなわち標準条件下で固体である化合物を、適切な溶媒中で溶融物または溶液の形態で使用してもよい。
【0055】
二酸化チタンの製造について、四塩化チタンを、例えば相応する金属化合物として使用することが可能である。
【0056】
例1
まず、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)を、200リットルのバットに入れ、12.5kg/hの一定の搬送速度のギアポンプにより、熱媒油で加熱した管コイルへと搬送(図1、D)し、D4を150℃に予熱した。このように予熱したオクタメチルシクロテトラシロキサンを、この場合約2.8baraの背圧を生み出す0.7mmの内径を有するSCHLICK(Hollow-Cone Mod. 121)から一相ノズル(図1、E)に送る。ノズルの上流に設置されたフィルタ(図1、C)により、固体粒子が存在してもノズルが詰まらないことが保証される。一相ノズルにより微細に分布した予熱したD4を、295℃に予熱した空気流と混合する(図1、2)。液体オクタメチルシクロテトラシロキサンをこの予熱した空気に噴霧すると、80mmの直径および4.2メートルの長さを有する下流のパイプライン(バーナー管)(図1、A)中のD4が完全に蒸発し、ガス混合物が形成される。Sulzer製の下流のスタティックミキサー(計量添加ありのMischer CompaXTM)(図1、F)内で、6.25m(STP)/hの水素(図1、3)を(一次H)中で混合する。全成分を良好に混合することで、下流の反応域(図1、B)における原材料の完全かつ均質な転化が促進される。そのように生成されたガス混合物は、バーナーに供給され、51m/s(標準条件下)または99m/s(動作条件)の出口速度の計算値で、直径32mmのバーナーの口(図1、G)から出て、反応域(図1、B)に送られる。火炎を安定化させるために、いわゆる周辺炎を生成する。この目的のために、さらに3m(STP)/hの水素が、ギャップ幅が1.5mmの同心環状ギャップから流出し、拡散パイロット火炎において燃える。高温の反応生成物は、55m(STP)/hの外部から導入された空気(図1、6)により反応域に引き込まれる。反応後に生成される気体/固体混合物を200℃未満に冷却し、その後、フィルターシステムに空気圧式に供給する。ここで、形成された発熱性酸化物(10kg/h)を主気体流から分離し、バンカーに搬送する。この実験の成果に関するさらなる詳細は、表2に見ることができる。
【0057】
欧州特許出願公開第0471139号明細書に記載されている発熱性二酸化ケイ素に関する製造方法とは対照的に、本発明による方法では、処理すべき原材料(オクタメチルシクロテトラシロキサン)が、高温の壁表面での加熱により外部の蒸発器内で気相に転化されるのではなく、噴霧により、すなわち、予熱した微細に分布した液体を、当目的を意図した反応器域A内で空気流と混合することにより気相に直接変換することで転化される。
【0058】
ここに記載の方法は、固体粒子またはゲル状の堆積物によるノズルまたはその他の装置の詰まりなしに、数ヶ月にわたり正常に実施可能であった。
【0059】
例2
例1と同様に、四塩化ケイ素(テトラクロロシラン、SiCl)を、発熱性二酸化ケイ素を製造するための原材料として使用する。この実験の成果に関する詳細は、表2に見ることができる。
【0060】
例3
例1と同様に、四塩化チタン(TiCl)を、発熱性二酸化チタンを製造するための原材料として使用する。この実験の成果に関する詳細は、表2に見ることができる。
【0061】
【表2】
図1