(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】金属ナノクラスター足場
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230124BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20230124BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230124BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230124BHJP
C07K 14/00 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
B82Y5/00
C07K19/00
C12N15/63 Z
C07K14/00
(21)【出願番号】P 2019572775
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2018068710
(87)【国際公開番号】W WO2019011938
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519463879
【氏名又は名称】アソシアシオン セントロ デ インベスティガシオン コオペラティバ エン ビオマテリアレス-セイセ ビオマグネ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロペス コルタハレナ,アイツィベル
(72)【発明者】
【氏名】アイレス トラポート,アントニオ
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】PNAS,2005年03月22日,Vol. 102,pp. 5014-5019, supporting information
【文献】Protein Engineering, Design & Selection,2004年05月27日,Vol. 17,pp. 399-409
【文献】Structure,2003年05月06日,Vol. 11,pp. 497-508
【文献】BIOMACROMOLECULES,2015年11月04日,Vol. 16,pp. 3836-3844
【文献】RSC ADVANCES,2014年12月05日,Vol. 5,pp. 2062-2069
【文献】COLLOIDS AND SURFACES B: BIOINTERFACES,2016年01月22日,Vol. 141,pp. 93-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)のタンパク質又はその塩を含む金属ナノクラスター足場であって、
W
nZ
pW
q (I)
n及びqは、1から10の値を有する整数を表し、且つpは、1から10の値を有する整数を表し、ただし、n+p+qは、3以上であり、
Wは、配列番号37の配列AEAWYNLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRSを含むペプチド又はその塩であり、
Zは、配列番号27、29、31、33、35、97、99、119、121、
又は147の配列からなるペプチド又はその塩である、
金属ナノクラスター足場。
【請求項2】
一般式(I)のn及びqが1である、請求項1に記載の金属ナノクラスター足場。
【請求項3】
一般式(I)のタンパク質が、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号155、配列番号157、及び配列番号159からなる群から選択される、請求項1に記載の金属ナノクラスター足場。
【請求項4】
ペプチド、ナノ粒子、核酸、無機分子、有機分子、脂質、単糖、オリゴ糖、酵素、抗体、抗原、タグペプチド、MRIコントラスト剤、PETコントラスト剤、配位金属コントラスト剤、及びそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるエレメントに結合される、請求項1から3のいずれか1項に記載の金属ナノクラスター足場。
【請求項5】
金属が、銅、金、銀、ニッケル、亜鉛、チタン、クロム、鉄、コバルト、パラジウム、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、又はそれらの組合せを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の金属ナノクラスター足場。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の金属ナノクラスター足場をコードする核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を含む核酸ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願に至ったプロジェクトは、欧州連合(European Union)のホライゾン(Horizon)2020研究・革新プログラムの下で欧州研究会議(European Research Council)(ERC)から資金援助を受けた(助成金契約第648071号)。
【0002】
本出願は、2017年7月11日出願の欧州特許出願第17382451.7号に基づく利益を主張する。本発明は、一般的には、短鎖ペプチド配列により安定化された金属原子ナノクラスターの分野に関する。特定的には、本発明は、とりわけ、こうした短鎖ペプチド配列、さらにはそれを含むナノクラスター、こうしたナノクラスターの調製プロセス、及びその使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
金属ナノクラスター(NC)は、バルク金属や古典的金属ナノ粒子とは実質的に異なるユニークな性質があるため、近年とくに注目されてきた。
【0004】
金属NCは、数個から何百個もの金属原子からなる2nm未満のサイズを有する小さな金属原子アセンブリーである。貴金属NCは、強い量子閉じ込め効果に起因して離散したサイズチューナブル電子遷移及び強い蛍光発光を示す。とりわけ、金属原子の電子がかかる小さな分子寸法及び特別な離散エネルギーレベルに閉じ込められるという事実に起因して、金属NCは、強いフォトルミネセンス、優れた光安定性、良好な生体適合性、及びサブナノメートルサイズをはじめとする特別な光学的、電子的、及び化学的性質を呈する。それらは、紫外から近赤外の領域にわたり蛍光を示す。金属NCは、センサーとして(例えば、温度及びpHに対して)、バイオ分子、タンパク質、核酸、及び金属イオンの検出においてバイオイメージングツールとして、とりわけ薬剤送達システムとして使用されてきた(Qu X et al. 2015, Li J et al. 2014 and Shang L et al. 2011を参照されたい)。
【0005】
これまで、金(Au)及び銀(Ag)のNCを開発するためにかなりの努力がなされてきた。それとは対照的に、銅(Cu)NCの合成に関する報告が依然として乏しいのは、ごく小さな粒子の調製が困難であるうえに(例えば、Huang H et al. 2014では、銅NCの直径は1.7nmである)酸化しやすいからである。生物学的用途ではナノクラスターは水性媒体中で安定でなければならないので、後者が関連する。
【0006】
特定のデンドリマー、低分子、DNA、ペプチド、タンパク質などの分子を組み込むことにより金属NCの安定化が可能であると報告されている。ウシ血清アルブミン(BSA)、パパイン、ヒトトランスフェリン、リゾチーム、トリプシン、ペプシン、インスリン、ペルオキシダーゼなどのタンパク質は、金属NCの調製に利用されてきた(例えば、Xie J et al. 2009, Huang H et al. 2014 and Li J et al. 2014を参照されたい)。それにもかかわらず、通常使用される方法は、タンパク質の二次又は三次構造の変性を引き起こして前記タンパク質の機能に影響を及ぼす。代替的に、金属NCの合成及び安定化のために鋳型として特定の配列モチーフ繰返しを有するタンパク質の使用が提案されており、例えば、コンセンサステトラトリコペプチドリピート(CTPR)モジュールの34アミノ酸ヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフ(D’Andrea L et al. 2003)は、ある特定の安定性を付与すると思われることから金NC形成に有用であるとして当該技術の現状でも開示されている(Couleaud P et al. 2015)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
努力がなされたにもかかわらず、タンパク質鋳型がその生物学的機能性を維持した状態で生物学的用途に使用される多種多様な金属と併用可能な小さな安定した金属ナノクラスターを調製するための足場として有用なタンパク質鋳型の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明者らは、効率的な足場として有用なタンパク質鋳型を提供するCTPR変異モチーフを作製した。これは、タンパク質鋳型の生物学的性質を保持しつつ、より高い蛍光強度、安定性(とくに光安定性)、及び細胞への内在化能を有するNCを提供する。
【0009】
特定的には、驚くべきことに、CTPRの領域の配列番号19の配列の特定のアミノ酸残基をヒスチジン(His、H)又はシステイン(Cys、C)で置き換えた場合、顕著に安定したCuNC、AuNC、及びAgNCの合成が達成されることを、本発明者らは見いだした(以下の実施例)。
【0010】
CTPRの領域の配列番号19の配列の特定の位置をグルタミン酸(Glu、E)又はアスパラギン酸(Asp、D)で置き換えることによっても、His又はCysを用いて得られた結果を得ることが可能であることを、本発明者らは見いだした。これは、これらの4種のアミノ酸(すなわち、H、C、D、及びE)が金属イオンに配位するからである。
【0011】
こうした変異モチーフをタンパク質に組み込んだ場合、組込みがタンパク質の活性に悪影響を及ぼさないことも、本発明者らは見いだした。タンパク質がNCを安定化させる場合、同一のリガンド親和性値が維持されるので(解離定数(Kd)により示唆される)、タンパク質の特異的なリガンド結合活性又は認識活性は保存された。したがって、得られたタンパク質さらにはナノクラスターはいずれも、それらのそれぞれの活性を示した。
【0012】
そのため、第1の態様では、本発明は、以下の配列番号1:
AX1AWX2X3LGX4AYX5X6 (配列番号1)
(式中、
X1は、E、H、C、及びDから選択されるアミノ酸であり、
X2は、Y、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X3は、N、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X4は、N、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X5は、Y、H、L、A、V、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X6は、K、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
ただし、X1、X2、X3、X4、X5、及びX6の少なくとも2つは、同一であるか又は異なり、且つH、C、D、又はEを表す)
の配列又はその塩からなるアミノ酸配列を提供する。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、以下の配列番号1:
AX1AWX2X3LGX4AYX5X6 (配列番号1)
(式中、
X1は、E、H、C、及びDから選択されるアミノ酸であり、
X2は、Y、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X3は、N、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X4は、N、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X5は、Y、H、L、A、V、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X6は、K、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
ただし、
-X1からX6の少なくとも2つは、同一であるか又は異なり、且つH、C、D、又はEを表し、
-X2がH、C、D、又はEであるとき、X3はNであり、且つ
-X3がH、C、D、又はEであるとき、X2はYである)
の配列からなるアミノ酸配列又はその塩を提供する。
【0014】
理論に拘束されるものではないが、金属と本発明のペプチド又はタンパク質との結合(カップリング)は、以上に定義された残基X1~6を介して行われ、これにより、得られる金属ナノクラスターに驚くべき安定化効果が付与されると、本発明者らは考えている。
【0015】
第2の態様では、本発明は、以下の式(I):
Z-(B)n-F-(G)m (I)
(式中、
n及びmは、0又は1であり、
Zは、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列を表し、ただし、X1がCであるとき、X4は、C、D、E、又はNであり、
Bは、リンカーを表し、
Fは、αヘリックス二次モチーフを有するアミノ酸配列であり、且つ
Gは、配列番号23、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択される配列である)
のペプチド又はその塩を提供する。
【0016】
第3の態様では、本発明は、以下の一般式(II):
WnZpWq (II)
(式中、
n及びqは、0から10の値を有する整数を表し、且つpは、1から10の値を有する整数を表し、ただし、n+p+qは、2以上であり、
Wは、配列番号37の配列AEAWYNLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRSを含むペプチドであり、且つ
Zは、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列又は本発明の第2の態様に係るペプチドを含むアミノ酸配列である)
のタンパク質又はその塩を提供する。
【0017】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列、本発明の第2の態様に係るペプチド、又は本発明の第3の態様に係るタンパク質をコードする核酸配列を提供する。
【0018】
第5の態様では、本発明は、本発明の第4の態様に係る核酸配列を含む発現カセットを提供する。
【0019】
第6の態様では、本発明は、本発明の第4の態様に係る核酸配列又は本発明の第5の態様に係る発現カセットを含む核酸ベクターを提供する。
【0020】
第7の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列、本発明の第2の態様に係るペプチド、本発明の第3の態様に係るタンパク質、本発明の第4の態様に係る核酸配列、本発明の第5の態様に係る発現カセット、又は本発明の第6の態様に係る核酸ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0021】
第8の態様では、本発明は、金属ナノクラスター足場としての、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列、本発明の第2の態様に係るペプチド、又は本発明の第3の態様に係るタンパク質の使用を提供する。
【0022】
第9の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列、本発明の第2の態様に係るペプチド、又は本発明の第3の態様に係るタンパク質を含む金属ナノクラスターを提供する。
【0023】
第10の態様では、本発明は、本発明の第9の態様に係る少なくとも2種の金属ナノクラスターの組合せを提供する。
【0024】
第11の態様では、本発明は、(a)本発明の第3の態様で定義されたタンパク質と金属含有化合物とを混合する工程と、(b)混合物を還元反応に付す工程と、を含む、本発明の第9の態様に係る金属ナノクラスターの作製プロセスを提供する。有利には、本発明のペプチドモチーフの特定の性質に起因して、本発明のプロセスは、NCを形成する足場として作用するタンパク質の変性を必要としないので、NCの調製を単純化する。
【0025】
本発明の第12の態様は、本発明の第11の態様のプロセスにより得られる金属ナノクラスターに関する。
【0026】
以上で述べたように、本発明のアミノ酸配列及びペプチドは、タンパク質の設計を可能にするので、足場として使用したとき、その安定化効果に起因して金属NCの固有の性質を向上させる。
【0027】
第13の態様では、本発明は、イメージング剤としての、薬剤送達担体としての、代謝干渉剤としての、触媒としての、検体としての、結晶学的データセットの位相調整用としての、細胞標識剤としての、特異的タンパク質標識剤としての、バイオセンサーとしての、温度センサーとしての、光増感剤としての、又は光電子デバイスの製造用としての、本発明の第9の態様に係る金属ナノクラスター又は本発明の第10の態様に係る金属ナノクラスターの組合せ又は本発明の第12の態様に係る金属ナノクラスターの使用を提供する。
【0028】
第14の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列又は本発明の第2の態様に係るペプチド又は本発明の第3の態様に係るタンパク質又は本発明の第4の態様に係る核酸配列又は本発明の第5の態様に係る発現カセット又は本発明の第6の態様の核酸ベクター又は本発明の第7の態様に係る宿主細胞又は本発明の第9の態様の金属ナノクラスター又は本発明の第10の態様に係る金属ナノクラスターの組合せ又は本発明の第12の態様に係る金属ナノクラスターを含むキットを提供する。
【0029】
第15の態様では、本発明は、本発明の第9の態様に係る金属ナノクラスター又は本発明の第12の態様に係る金属ナノクラスターを調製するための、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列又は本発明の第2の態様に係るペプチド又は本発明の第3の態様に係るタンパク質又は本発明の第4の態様に係る核酸配列又は本発明の第5の態様に係る発現カセット又は本発明の第6の態様に係る核酸ベクター又は本発明の第7の態様に係る宿主細胞を含むキットの使用を提供する。
【0030】
第16の態様では、本発明は、本発明の第9の態様に係る金属ナノクラスター又は第10の態様に係る金属ナノクラスターの組合せ又は第12の態様に係る金属ナノクラスターを含むデバイスを提供する。
【0031】
最後に、最後の態様では、本発明は、診断又は予後予測に使用するための、本発明の第9若しくは第12の態様の金属NC又は本発明の第10の態様の組合せを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面の簡単な説明
【
図1】CuNCにおけるHisクランプの存在及び位置の効果を示す蛍光スペクトル(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図2】リン酸生理食塩水緩衝液(PBS)中及びヒト血漿(HP)中におけるWHW-CuNCの安定性。(F:蛍光強度(%)、T:時間(日数))。
【
図3】WHW安定化NCの蛍光スペクトルにおける特定の金属(Cu、Au、及びAg)の存在の効果を示す。
【
図4】銅NC中のHモジュールの数が蛍光スペクトルに及ぼす効果を示す(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図5】異なるタンパク質安定化AuNCの蛍光スペクトルの比較を表すとともにシステインクランプの効果を示す。(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図6】タンパク質安定化AuNCの蛍光におけるシステイン残基の量の効果を示す。6Aは、WC1C1W、WC2C2W、WC3C3W、WC1C1C1W、及びWC3C3C3C3C3C3Wタンパク質により形成されたAuNCを開示し、一方、6Bは、WC2C2C2W、WC3C3C3W、WC3C3C3C3W、及びWC3C3C3C3C3Wタンパク質により形成されたAuNCを開示する。(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図7】異なるタンパク質安定化AuNCの蛍光発光スペクトルを表し、7Aは、WWW、WWW_cys、WX1W、WXW、及びWC1Wタンパク質により形成されたAuNCを開示し、且つ7Bは、WHW、WC1C1W、WC2C2C2W、WC3C3C3W、及びWC3C3C3C3Wタンパク質により形成されたAuNCを開示する(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図8】異なるタンパク質安定化AgNCの蛍光発光スペクトルを示す。8Aは、WWW、WWW_cys、WX1W、WXW、WC1W、及びWHWタンパク質により形成されたAgNCを開示する。8Bは、WC1C1W、WC2C2C2W、WC3C3C3W、WC3C3C3C3W、及びWC3C3C3C3C3Wタンパク質により形成されたAgNCを開示する。(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図9】異なるタンパク質安定化CuNCの蛍光発光スペクトルを記述する。9Aは、WWW、WWW_cys、WX1W、WXW、WC1W、及びWHWタンパク質により形成されたCuNCを開示する。9Bは、WC1C1W、WC2C2C2W、WC3C3C3W、WC3C3C3C3W、及びWC3C3C3C3C3Wタンパク質により形成されたCuNCを開示する(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図10】異なるタンパク質安定化AuNCの蛍光発光スペクトルの比較を表すとともに、システイン(WC3C3C3C3W)又はヒスチジンクランプ(WH1H1H1H1W及びWH2H2H2H2W)の効果を示す。(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図11】異なるタンパク質安定化AuNCの蛍光発光スペクトルを表し、11Aは、WWW、WWW_cys、WHW、WH2W、及びWH3Wタンパク質により形成されたAuNCを開示し、且つ11Bは、WC1W、WC2W、WC3W、WRW、WR1W、及びWR2Wタンパク質により形成されたAuNCを開示する。(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図12】異なるタンパク質安定化AgNCの蛍光発光スペクトルを示す。12Aは、WWW、WWW_cys、WHW、WH2W、及びWH3Wタンパク質により形成されたAgNCを開示し、且つ12Bは、WC1W、WC2W、WC3W、WRW、WR1W、及びWR2Wタンパク質により形成されたAgNCを開示する。(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図13】異なるタンパク質安定化CuNCの蛍光発光スペクトルを記述する。13Aは、WWW、WWW_cys、WHW、WH2W、及びWH3Wタンパク質により形成されたCuNCを開示し、且つ13Bは、WC1W、WC2W、WC3W、WRW、WR1W、及びWR2Wタンパク質により形成されたCuNCを開示する(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm))。
【
図14】タンパク質安定化CdSNC(WWWWWW、WH1W、WH1H1W、WH1H1H1W、WH1H1H1H1W、及びWH2H2H2H2W)の蛍光発光におけるヒスチジン残基の数及び位置の効果を示す(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm)、対照、「タンパク質を含まない対照」)。
【
図15】異なるタンパク質安定化CdSNC(WWWWWW、WH1W、WH1H1W、WH1H1H1W、WH1H1H1H1W、及びWH2H2H2H2W)の蛍光励起スペクトルを示す。(F:蛍光強度(任意単位)、λ:波長(nm)、対照、「タンパク質を含まない対照」)。
【
図16】CC1-CTPR390、CC1-TPR2A、及びCC1-TPR2A_T332R_D334Kの円二色性スペクトル(A)、熱アンフォールディング(B)、及びHsp90へのリガンド結合活性(C)を示す。([θ]:CDシグナル(mdeg)、λ:波長(nm)、T:温度(℃)、%L.B.:結合リガンドのパーセント、[P]:タンパク質濃度)。
【
図17】WHWタンパク質により安定されたCuナノクラスターの蛍光強度(F)を温度T(℃)の関数として示す。
【
図18】GFP(黒四角)及びDAPI(黒三角)と比較してAgNC(黒丸)の蛍光強度の経時的光漂白曲線を表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、配列番号1の配列のペプチド又はその塩を提供する。
【0034】
本発明のアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質のいずれかを形成するアミノ酸は、とくに明記されていない限り、D配置又はL配置を有することが可能である。
【0035】
治療目的で使用する場合に薬学的に許容可能でなければならない点を除けば、塩に関する制限は存在しない。一実施形態では、塩は薬学的に許容可能な塩である。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなく健全な医学的判断の範囲内でヒト及び下等動物の組織に接触させて使用するのに好適であるとともに合理的な便益/リスク比に見合う塩を意味する。薬学的に許容可能な塩は当技術分野で周知である。薬学的に許容可能な非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸を用いて、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸などの有機酸を用いて、又はイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアンモニウムを含む。代表的なアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。さらなる薬学的に許容可能な塩は、適切な場合、非毒性アンモニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、及びアミンカチオンを含み、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオンなどのカウンターイオンを用いて形成される。
【0036】
本発明の目的では、所与の範囲はいずれも、範囲の下側端点及び上側端点の両方を含む。温度、時間などの所与の範囲は、とくに明記されていない限り、近似とみなすべきである。
【0037】
本発明の第1の態様の一実施形態では、以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、X1からX6の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つは、同一であるか又は異なり、且つH、C、D、又はEを表す。
【0038】
本発明の第1の態様の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、X1は、E、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X2は、Y、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X3は、N、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X4は、N、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X5は、Y、H、L、A、V、及びCから選択されるアミノ酸であり、且つX6は、K、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、ただし、X1からX6の少なくとも2つは、同一であるか又は異なり、且つH又はCを表し、他の一実施形態では、X1からX6の少なくとも3つ、4つ、5つ、又は6つは、同一であるか又は異なり、且つH又はCを表す。
【0039】
本発明の第1の態様の一実施形態では、以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、X1は、E、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X2は、Y、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X3は、N、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X4は、N、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、X5は、Y、H、L、A、V、及びCから選択されるアミノ酸であり、且つX6は、K、H、及びCから選択されるアミノ酸であり、ただし、
-X1からX6の少なくとも2つは、同一であるか又は異なり、且つH又はCを表し、
-X2がH又はCであるとき、X3はNであり、
-X3がH又はCであるとき、X2はYであり、且つ
-X6がH又はCであるとき、X5はL、A、又はVである。
【0040】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、X6はKである。
【0041】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、X1がEであるとき、X2、X3、X4、X5、及びX6の少なくとも2つは、同一であるか又は異なり、且つH、C、D、又はEを表す。他の一実施形態では、X2、X3、X4、X5、及びX6の少なくとも3つ、4つ、又は5つは、同一であるか又は異なり、且つH、C、D、又はEを表し、他の一実施形態では、X2、X3、X4、X5、及びX6の少なくとも2つ、3つ、4つ、又は5つは、同一であるか又は異なり、且つH又はCを表す。
【0042】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、アミノ酸配列は、AX1AWX2NLGNAYYK(配列番号2)、AX1AWYX3LGNAYYK(配列番号3)、AEAWX2NLGX4AYYK(配列番号4)、AEAWYX3LGX4AYYK(配列番号5)、AEAWYNLGX4AYX5K(配列番号6)、AX1AWX2NLGX4AYYK(配列番号7)、AX1AWYX3LGX4AYYK(配列番号8)、AEAWX2NLGX4AYX5K(配列番号9)、AEAWYX3LGX4AYX5K(配列番号10)、AX1AWX2NLGX4AYX5K(配列番号11)、AX1AWYX3LGX4AYX5K(配列番号12)、及びAX1AWYX3LGX4AYX5X6(配列番号13)からなる群から選択される。とくに、アミノ酸配列は、AX1AWYX3LGNAYYK(配列番号3)、AEAWX2NLGX4AYYK(配列番号4)、AX1AWYX3LGX4AYYK(配列番号8)、及びAX1AWYX3LGX4AYX5X6(配列番号13)からなる群から選択される。
【0043】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、アミノ酸配列は、AX1AWX2NLGNAYYK(配列番号2)、AX1AWYX3LGNAYYK(配列番号3)、AEAWX2NLGX4AYYK(配列番号4)、AEAWYX3LGX4AYYK(配列番号5)、AEAWYNLGX4AYX5K(配列番号6)、AX1AWX2NLGX4AYYK(配列番号7)、AX1AWYX3LGX4AYYK(配列番号8)、AEAWX2NLGX4AYX5K(配列番号9)、AEAWYX3LGX4AYX5K(配列番号10)、AX1AWX2NLGX4AYX5K(配列番号11)、AX1AWYX3LGX4AYX5K(配列番号12)、AX1AWYX3LGX4AYX5X6(配列番号13)、AX1AWX2NLGX4AYYX6(配列番号110)、AEAWX2NLGX4AYYX6(配列番号111)、AEAWYX3LGX4AYYX6(配列番号112)、AEAWYNLGX4AYYX6(配列番号113)、AX1AWX2X3LGX4AYYK(配列番号114)、AX1AWX2NLGX4AYX5X6(配列番号167)、及びAX1AWYNLGX4AYYK(配列番号168)からなる群から選択される。
【0044】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、X1からX6は同一であり且つC又はHを表す。
【0045】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、アミノ酸配列は、ACAWYCLGNAYYK(配列番号14)、AEAWHNLGHAYYK(配列番号15)、AEAWCNLGCAYYK(配列番号16)、ACAWYCLGCAYYK(配列番号17)、及びACAWYCLGCAYLC(配列番号18)からなる群から選択される。
【0046】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、アミノ酸配列は、ACAWYCLGNAYYK(配列番号14)、AEAWHNLGHAYYK(配列番号15)、AEAWCNLGCAYYK(配列番号16)、ACAWYCLGCAYYK(配列番号17)、及びACAWYCLGCAYLC(配列番号18)、AHAWHHLGHAYYK(配列番号115)、AHAWHNLGHAYLH(配列番号117)、及びAHAWHNLGHAYYK(配列番号145)からなる群から選択される。
【0047】
本発明の第1の態様の他の一実施形態では、アミノ酸配列は、ACAWYCLGNAYYK(配列番号14)、AEAWHNLGHAYYK(配列番号15)、AEAWCNLGCAYYK(配列番号16)、ACAWYCLGCAYYK(配列番号17)、及びACAWYCLGCAYLC(配列番号18)、AHAWHHLGHAYYK(配列番号115)、AHAWHNLGHAYLH(配列番号117)、AHAWHNLGHAYYK(配列番号145)、ACAWYHLGNAYYK(配列番号169)、及びACAWYNLGHAYYK(配列番号170)からなる群から選択される。
【0048】
第2の態様では、本発明は、式(I)のペプチド又はその塩を提供する。
【0049】
本発明の第2の態様の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、アミノ酸配列は、配列番号20、配列番号21、又は配列番号22の配列であるαヘリックス二次モチーフ(「F」)を有する。
【0050】
本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、mは1である。本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、n及びmは1である。
【0051】
本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、リンカー「B」はアミノ酸配列QGDである。
【0052】
本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、配列「G」は、その第2のアミノ酸がプロリンである限り、4アミノ酸のいずれかの配列でありうる。好ましい実施形態では、「G」は、配列番号23、配列番号24、又は配列番号25である。より好ましい実施形態では、配列番号23である。
【0053】
本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、ZのC末端に結合された配列(式(I)中の「BFG」)は、配列番号26:QGDYDEAIEYYQKALELDPRSである。
【0054】
本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、ペプチドは、AEAWHNLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号27)、AEAWCNLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号29)、ACAWYCLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号31)、ACAWYCLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号33)、及びACAWYCLGCAYLCQGDYDEAIEYYQKALELDPR(配列番号35)からなる群から選択される。
【0055】
本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、ペプチドは、AEAWHNLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号27)、AEAWCNLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号29)、ACAWYCLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号31)、ACAWYCLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号33)、ACAWYCLGCAYLCQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号35)、AHAWHHLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号119)、AHAWHNLGHAYLHQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号121)、及びAHAWHNLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPR(配列番号147)からなる群から選択される。
【0056】
本発明の第2の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、ペプチドは、AEAWHNLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号27)、AEAWCNLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号29)、ACAWYCLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号31)、ACAWYCLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号33)、ACAWYCLGCAYLCQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号35)、ACAWYHLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号97)、ACAWYNLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号99)、AHAWHHLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号119)、AHAWHNLGHAYLHQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号121)、及びAHAWHNLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPR(配列番号147)から選択される。
【0057】
第3の態様では、本発明は、式(II)のタンパク質を提供する。
【0058】
本発明の第3の態様の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、Wは配列番号37の配列である。
【0059】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、Zは、本発明の第2の態様で定義されたペプチドである。
【0060】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、n及びqは、同一であるか又は異なり、且つ0とは異なる。
【0061】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、pは、1、2、3、4、5、又は6である。
【0062】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、タンパク質は、以下の一般式(II)である。
WZpW (II)
式中、W、Z、及びpは、以上に定義した通りである。
【0063】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、タンパク質は、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141配列番号155、配列番号157、及び配列番号159からなる群から選択される。
【0064】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、タンパク質は、ペプチド、ナノ粒子、核酸、無機分子、有機分子、脂質、単糖、オリゴ糖、酵素、抗体、抗原、タグペプチド、イメージング剤、例えば、MRIコントラスト剤、PETコントラスト剤、配位金属コントラスト剤、及びそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるエレメントに結合される。
【0065】
本発明の第3の態様のタンパク質に結合可能なペプチドは、細胞核、細胞膜などへの前記タンパク質の方向付けを可能にするか、又は移行ペプチドである。
【0066】
本発明の第3の態様のタンパク質に結合可能なタグペプチドは、例えば、ペプチドMEEVF(配列番号109)、Hisタグペプチド、又は専門家に知られるいずれかのタグペプチドでありうる。それはまた、細胞内の対象オルガネラへのNCの結合を可能にするタグペプチドでありうる。
【0067】
例示として、本発明のNCは、その蛍光性に起因して核酸の標識剤として使用可能であるので、特異的エピジェネティクス修飾又は代替的に遺伝子突然変異、例えば、点突然変異(SNP、多型)、欠失、若しくは挿入の存在又は不在の検出を可能にする。
【0068】
「抗体」という用語は、本明細書では抗原に特異的に結合するその能力という意味で用いられ、ひいてはかかる能力を有する分子を意味する。前記用語に含まれるのは、標的抗原に特異的に結合するインタクト抗体及び標的抗原に特異的に結合する抗体フラグメントである。
【0069】
本明細書で用いられる場合、「インタクト抗体」という用語は、イムノグロブリン分子の可変領域に位置する部位をはじめとする少なくとも1つの結合認識部位(例えば抗原結合部位)を介して炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的をはじめとするそのコグネイト標的に特異的に結合可能なイムノグロブリン分子を意味する。抗体は、いずれかのクラスの抗体、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG(又はそのサブクラス)、IgMを含む。好ましい実施形態では、抗体はIgGである。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「抗体フラグメント」という用語は、抗体の機能性フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、一本鎖(scFv)、重鎖又はそのフラグメント、軽鎖又はそのフラグメント、ドメイン抗体(DAb)(すなわち、抗体重鎖の可変ドメイン(VHドメイン)若しくは抗体軽鎖の可変ドメイン(VLドメイン))又はそのダイマー、VH又はそのダイマー、VL又はそのダイマー、ナノボディー(ラクダ科動物VH)、及びそれらの機能性変異体、抗体を含む融合タンパク質、又は所望の特異性の抗原認識部位を含むイムノグロブリン分子のいずれかの他の修飾構成体を意味する。抗体フラグメントは、抗原結合フラグメントを意味しうる。好ましい実施形態では、抗体フラグメントは、VH又はドメイン抗体又はDAbである。他の好ましい一実施形態では、抗体フラグメントはscFvである。他の好ましい一実施形態では、抗体フラグメントはナノボディーである。
【0071】
各種抗体を調製及び使用する技術は、当技術分野で周知である。例えば、ヒトイムノグロブリントランスジェニックマウス又はファージディスプレイライブラリーからいずれの非ヒト配列も欠如した完全ヒトモノクローナル抗体を調製することが可能である。
【0072】
本発明の特定の態様では、抗体は、細胞表面上に露出した抗原に特異的に結合する抗体である。
【0073】
「イメージング剤」という用語は、標的細胞の位置特定を可能にするように設計された化学化合物を意味する。本発明の目的に好適なイメージング剤の例としては、限定されるものではないが、放射性核種、フルオロフォア、磁気共鳴イメージング(MRI)コントラスト剤、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)コントラスト剤、コントラスト剤としてシグナルを与える配位金属、又はそれらのいずれかの組合せが挙げられる。
【0074】
本明細書で用いられる「磁気コントラスト剤」又は「MRI剤」という用語は、磁気共鳴イメージング(MRI)において体内構造の可視性を向上させるために使用される一群のコントラスト媒体を意味する。MRI剤の例としては、限定されるものではないが、ガドリニウム系及び他のランタニド系の化合物、超常磁性酸化鉄(SPIO)及び微小超常磁性酸化鉄(USPIO)、鉄白金系化合物及びマンガン系化合物が挙げられる。
【0075】
ガドリニウムコントラスト剤の例示的な例は、限定されるものではないが、細胞外液剤、例えば、ガドテレート(Dotarem(登録商標)、Clariscan(商標))、ガドジアミド(Omniscan)、ガドベネート(MultiHance(登録商標))、ガドペンテテート(Magnevist(登録商標))、ガドテリドール(ProHance(登録商標))、ガドベルセタミド(OptiMARK(商標))、ガドブトロール(Gadovist(登録商標)若しくはGadavist(登録商標))、ガドペンテト酸ジメグルミン(Magnetol(商標))、血液プール剤、例えば、アルブミン結合ガドリニウム錯体、例えば、ガドホスベセット(Ablavar(登録商標)、以前はVasovist(登録商標))、及びガドコレチン酸、又は高分子ガドリニウム錯体、例えば、ガドメリトール(Vistarem(登録商標))、ガドマー17(GadoSpin(商標)D)、及び肝胆道(肝臓)剤、例えば、ガドキセト酸である。
【0076】
放射性核種の例示的な例としては、限定されるものではないが、γ放射同位体、例えば、ガンマカメラを用いたラジオシンチグラフィー又はシングルフォトンエミッションコンピュータートモグラフィーで使用可能な<99m>Tc、<123>I、及び<m>In、さらには陽電子放射体、例えば、PETで使用可能な<18>F、<64>Cu、<68>Ga、<86>Y、<124>I、<213>Bi、及び<211>At、又はβ放射体、例えば、<131>I、<90>Y、<99m>Tc、<177>Lu、及び<67>Cu”が挙げられる。
【0077】
PETコントラスト剤の例示的な例は、限定されるものではないが、放射性のフッ素(F-18、例えば、フッ素-18フルオロデオキシグルコースFDG)、酸素(酸素-15)、炭素(例えばC-11)、窒素(窒素-13)、又はガリウム(ガリウム-68)、ジルコニウム(ジルコニウム-89)、若しくはルビジウム(ルビジウム-82)に基づく短い半減期を有する同位体の放射性核種である。
【0078】
本明細書で用いられる「フルオロフォア」という用語は、光励起時に再発光可能な蛍光化学化合物を意味する。蛍光色素としては、限定されるものではないが、Cy3、Cy2、Cy5、及びFITCが挙げられる。
【0079】
以上に列挙された分子のいずれかへの本発明のタンパク質の結合性は、共有結合によるか、静電相互作用若しくは疎水力によるか、又は吸着によるものでありうる。当業者であれば、ルーチンプロトコルを用いて本発明のタンパク質を特定のリガンドに結合させることが可能であり、より適切なプロトコルの選択は、本発明のタンパク質の特定の性質だけでなく結合されるリガンドの性質にも依拠するであろう。さらに、X1からX6の少なくとも2つがフリーであり且つ以上に定義される通りである限り、タンパク質を形成するアミノ酸のいずれかとリガンドとの間の結合を行うことが可能である。
【0080】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、タンパク質は、以上に列挙されたエレメントのいずれかに共有結合する。その場合、タンパク質は、そのN末端及び/又はそのC末端を介してエレメントに共有結合する。
【0081】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、タンパク質は、細胞局在化シグナル又は認識ドメインに結合される。
【0082】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、細胞局在化シグナルは、核局在化シグナル、小胞体局在化シグナル、又はミトコンドリア局在化シグナルである。本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、細胞局在化シグナルは、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、又は配列番号78である。
【0083】
代替的に、本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、認識ドメインは、Hsp90結合ドメイン、Hsp70結合ドメイン、dss1タンパク質結合ドメイン、タグ配列、TPRドメイン、アンキリンドメイン、Src相同性3ドメイン、PDZドメイン、DNA結合タンパク質(例えば、ホメオドメイン、ロイシンジッパータンパク質、αリプレッサー様タンパク質)、又はペプチドグリカン認識タンパク質である。本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、認識ドメインは、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、及び配列番号90からなる群から選択される。
【0084】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、タンパク質は、配列番号79、配列番号91、配列番号93、及び配列番号95からなる群から選択される。
【0085】
本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、タンパク質は、N末端に配列GAMGS(配列番号69)を含む。本発明の第3の態様の他の一実施形態では、N末端のペプチドは、配列GAMGS(配列番号69)である。本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、タンパク質は、C末端にαヘリックス二次モチーフを有する配列を含む。本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、C末端のペプチドは、配列AEAKQNLGNAKQKQG(配列番号70)を含む。本発明の第3の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、タンパク質は、そのN末端に配列GAMGS(配列番号69)及びそのC末端に配列AEAKQNLGNAKQKQG(配列番号70)を含む。
【0086】
本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列、本発明の第2の態様のペプチド、及び本発明の第3の態様のタンパク質は、(a)結合されるアミノ酸の脱保護及び(b)保護されたアミノ酸のカップリングの逐次工程のサイクルが実施される固相合成などのルーチンの方法により調製可能である。保護基は、N-保護基、C-保護基、又は側鎖保護基でありうる。3つのカテゴリーすべてに属する市販の保護基が存在する。
【0087】
代替的に、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列、本発明の第2の態様のペプチド、及び本発明の第3の態様のタンパク質は、適切な宿主生物において分子クローニング及び発現により調製可能である。
【0088】
以上のほかに、本発明の第1の態様のアミノ酸配列、本発明の第2の態様のペプチド、又は本発明の第3の態様のタンパク質のN(t)及び/又はC(t)の末端アミノ基及び/又は末端カルボキシ基は、誘導体化可能である。末端アミノ基は、アシル化により誘導体化可能であり、一方、カルボキシ基は、アミド化により誘導体化可能である。当業者であれば、一般的知識を用いて、かかる誘導体化を達成するのに適した試薬及び条件を選択することが可能である。
【0089】
第4の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列又は本発明の第2の態様に係るペプチド又は本発明の第3の態様に係るタンパク質をコードする核酸配列を提供する。
【0090】
本発明によれば、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、同義的に用いられ、DNA、RNA、又は1つ以上のヌクレオチドアナログを含有する種を意味する。本発明に係る好ましい核酸又はポリヌクレオチドはDNAであり、最も好ましいのは二本鎖(ds)DNAである。
【0091】
本発明の第4の態様の一実施形態では、核酸配列は、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、及び配列番号68からなる群から選択される配列を含む。本発明の第4の態様の他の一実施形態では、核酸配列は、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号148、配列番号156、配列番号158、及び配列番号160からなる群から選択される配列を含む。遺伝暗号は縮重しているため、核酸配列が本明細書に列挙されたものと異なりうることは、当業者に公知である。したがって、本発明はまた、そうした縮重DNA配列に関する。
【0092】
第5の態様では、本発明は発現カセットを提供する。
【0093】
「発現カセット」という用語は、所望のアミノ酸ペプチド又はタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子と、プロモーター、オープンリーディングフレーム、ターミネーターなどのそれらの発現を制御する配列と、で構成された核酸配列として定義される。分泌シグナル、マーカー遺伝子、精製タグなどの追加の配列エレメントも、発現カセット内に含まれうる。
【0094】
第6の態様では、本発明は核酸ベクターを提供する。
【0095】
本発明の本態様に係る「ベクター」という用語は、宿主細胞への外来遺伝エレメント(とくに1つ以上の遺伝子)のインテグレーションに好適であるとともに対象遺伝子の複製及び/又は発現に適した核酸である。本発明の適切なベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、及び人工染色体である。これらのうち、最もよく使用されるベクターはプラスミドである。好ましい実施形態では、ベクターはpProEx-HTAベクター(Invitrogen)である。
【0096】
第7の態様では、本発明は宿主細胞を提供する。
【0097】
宿主細胞は原核細胞又は真核細胞でありうる。本発明に係る原核宿主としては、細菌とくにE.コリ(E. coli)、例えば、以上のベクターの増殖に好適なC41、TOP10、DH5α、HB101、BL21のような市販の株が挙げられる。真核宿主細胞は、サッカロマイセス属(Saccharomyces)やピキア属(Pichia)の株などの酵母細胞、CHO細胞などの哺乳動物細胞、若しくはSf9などの昆虫細胞、又は植物細胞でありうる。
【0098】
当業者であれば、本発明のペプチド又はタンパク質をコードする核酸の適切な増殖及び/又は好適な宿主への移入に適したベクター構築物/宿主細胞ペアを容易に選択可能である。適切なベクターエレメント及びベクターを適切な宿主細胞に導入する具体的方法は、当該技術の現状で同様に公知である。
【0099】
第8の態様では、本発明は、金属ナノクラスター足場としての、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列、本発明の第2の態様に係るペプチド、又は本発明の第3の態様に係るタンパク質の使用を提供する。より特定の実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属の原子又はイオンは、銅、金、銀、ニッケル、亜鉛、チタン、クロム、鉄、コバルト、パラジウム、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、及びそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される。さらにより特定の実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属は、銅、金、銀、又はそれらのいずれかの組合せである。
【0100】
αヘリックスを形成可能なペプチド又はタンパク質は、足場形成ナノクラスターとしてとくに好ましい。第9の態様では、本発明はナノクラスターを提供する。
【0101】
金属ナノクラスターは、2ナノメートル(nm)以下のサイズを有する金属粒子として定義される。特定の実施形態では、本発明の金属ナノクラスターは約0.5から1.5nmの直径を有し、より特定的には直径は約0.7から1.1nmである。
【0102】
金属ナノクラスターのサイズは、専門家に公知のいずれかの方法により、例えば、質量分析法、透過電子顕微鏡法(TEM)、高分解能透過電子顕微鏡法(HR-TEM)により直接的に又はその蛍光発光性により間接的に測定可能である。
【0103】
第9の態様の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属の原子又はイオンは、遷移金属の原子又はイオンである。より特定の実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属の原子又はイオンは、銅、金、銀、ニッケル、亜鉛、チタン、クロム、鉄、コバルト、パラジウム、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、及びそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される。さらにより特定の実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属は、銅、金、銀、又はそれらのいずれかの組合せである。さらに他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、ナノクラスターは金と銀との混合物を含む。さらに他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金:銀のモル比は5:1から15:1に含まれる。他の一実施形態では、金:銀のモル比は9:1である。
【0104】
本発明の第9の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、ナノクラスターは、(a)金属が金であるものであり且つ配列番号61のペプチドを含むか、又は代替的に(b)金属が銀であるものであり且つ配列番号63のタンパク質を含むか、又は代替的に(c)金属が銅であるものであり且つ配列番号59のタンパク質を含むか、又は代替的に(d)金属が銀であるものであり且つ配列番号59のタンパク質を含むか、又は代替的に(e)金と銀との混合物を含むものであり且つ配列番号59のタンパク質を含むか、又は代替的に(f)9:1のモル比の金と銀との混合物と配列番号59のタンパク質とを含むものである。
【0105】
本発明の第9の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属ナノクラスターは蛍光を発する。
【0106】
「蛍光金属ナノクラスター」とは、所与の波長で励起した後に励起波長とは異なる波長の光を発する本発明の金属ナノクラスターを意味する。いくつかの実施形態では、蛍光金属ナノクラスターは、励起により可視色の蛍光を発する。ある特定の実施形態では、励起光は、紫外光、可視光、又は近赤外光である。例えば、励起光(例えばレーザーにより提供される)は、200nmから2000nmの波長を含む。本発明の第9の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属ナノクラスターは、360から380nmで励起したとき440から460nmに最大発光波長を有する蛍光を発する。本発明の第9の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、ナノクラスターは、360から380nmで励起したとき440から460nmに最大発光波長を有する蛍光及び430から460nmで励起したとき580から640nmに最大発光波長を有する蛍光を発する。当業者であれば、一般的知識を用いて、例えば特定の金属還元条件を用いることにより異なる蛍光色を達成可能である。
【0107】
本明細書に提供される実施例は、本発明の金属NCの蛍光を実証する。各グラフは独立した実験を表し、各グラフに示される実験データは同時に得られたものであるため、それらの比較が可能であった。
【0108】
本発明の第9の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、本発明の第3の態様のタンパク質のCys残基数は16、17、18、19、又は20である。より特定の実施形態では、本発明の第3の態様のタンパク質のCys残基数は16、17、18、19、又は20であり、且つ金属は金である。
【0109】
第9の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、NC中の金属原子数は1から20であり、特定の実施形態では3から8個の原子である。
【0110】
第9の態様の金属NCの他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属は金である。より特定の実施形態では、金属は金であり、且つNC中の金属原子数は3、4、5、6、7、又は8である。
【0111】
第10の態様では、本発明は、本発明の第9の態様の少なくとも2種の金属ナノクラスターの組合せに関する。好ましい実施形態では、組合せはAuNCとAgNCであるか、代替的にAuNCとCuNCであるか、代替的にCuNCとAgNCであるか、又は代替的にAuNCとAgNCとCuNCである。
【0112】
第11の態様では、本発明は、a)タンパク質中に存在する金属配位残基に金属を吸着させるために本発明の第3の態様のタンパク質と金属含有化合物とを混合する工程を含む、本発明の第9の態様の金属ナノクラスターの作製プロセスに関する。
【0113】
第11の態様のある実施形態では、金属含有化合物は金属塩である。好ましい実施形態では、金属塩は、HAuCl4、AuCl、AuCl3、KAuCl4、AuI、AuBr3、Au(OH)3、HAuBr4、AgNO3、AgCl、Ag2CO3、Ag2SO4、AgClO4、AgI、AgCN、AgNO2、AgNO3、AgF、AgPF6、AgOCN、Ag3PO4、AgF2、CuSO4、CuI、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuCN、CuF、CuF2、Cu(ClO4)2、Cu(NO3)2、Cu(CO2CH3)2、Ni(OCOCH3)2、NiCl2、NiSO4、Ni(NO3)2、K2Ni(CN)4、Ni(ClO4)2、NiBr2、NiI2、Ni(OH)2、NiCO3、NiF2、NiC2O4、ZnSO4、ZnI、ZnCl、ZnCl2、ZnBr、ZnBr2、ZnCN、ZnF、ZnF2、Zn(ClO4)2、Zn(NO3)2、Zn(CO2CH3)2、ZnSO4、(C6H5O7)2Zn3、(CH3CO2)2Zn、Ti[OCH(CH3)2]4、Ti(OCH2CH2CH2CH3)4、Ti[OCH2CH(C2H5)(CH2)3CH3]4、CrCl2、CrCl3、CrF2、CrF3、CrBr2、CrBr3、CrI2、CrI3、Cr(ClO4)3、K3Cr(C2O4)3、Cr2(SO4)3、CrPO4、FeCl2、FeCl3、Fe(NO3)3、Fe(NO3)2、Fe(ClO4)3、C12H14FeO12、FeSO4、C6H5FeO7、Co(NO3)2、Co(SCN)2、CoCl2、CoF2、CoF3、CoI2、CoBr2、CoCO3、Co3(PO4)2、CoSO4、Co(ClO4)2、Co(OH)2、(CH3CO2)2Co、(CF3COO)2Pd、C10H18O4Pd、[(C6H5)3P]2PdCl2、Cd(NO3)2、Cd(OCOCH3)2、C12H20CdN2S4、C12H22CdO14、CdCl2、CdSO4、CdI2、CdCO3、Cd(ClO4)2、CdBr2、Cd(OH)2、RuCl3、[Ru(NH3)6]Cl2、[Ru(NH3)6]Cl3、RuI3、Ru(NO)Cl3、[Ru(NH3)5Cl]Cl2、H15Cl2N5Ru、[(CF3COO)2Rh]2、ClRh(P(C6H4SO3・Na)3)3、Rh(NO3)3、IrCl3、H2Cl6Ir、lrCl4、Ir4(CO)12、IrBr3、[Ir(NH3)5Cl]Cl2、PtCl2、PtCl4、H2PtCl6、K2PtCl6、(NH4)2PtCl6、Pd(NO3)2、Gd、Tb、Yb、Er、Cy、Ndのハロゲン化物、他のランタニド塩、及びそれらの組合せからなる群から選択される。好ましい実施形態では、金属塩は、HAuCl4、AgNO3、若しくはCuSO4、又はそれらのいずれかの組合せである。
【0114】
第11の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、金属含有化合物は金属塩Cd(CH3CO2)2である。
【0115】
第11の態様の他の一実施形態では、工程a)は、少なくとも20分間、特定的には少なくとも30分間、より特定的には約30から60分間実施される。
【0116】
本発明の第11の態様のある実施形態では、工程a)の金属とタンパク質とのモル比は2:1から120:1である。他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、モル比は5:1から70:1である。他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、モル比は5:1、20:1、又は50:1である。他の一実施形態では、モル比は50:1である。
【0117】
第11の態様の他の一実施形態では、プロセスは、還元剤の添加を含む還元工程b)を実施することをさらに含む。
【0118】
本発明者らは、本発明のタンパク質が多用途であることから、プロセスのさまざまなパラメーターを調整することにより蛍光NCの性質のモジュレーションを達成可能であることを見いだした。以上との関連では、還元剤と金属との特定のモル比の下でプロセスを実施すると、蛍光の増加したNCが達成されることが判明した。このことを考慮して、本発明の第12の態様は、本発明の第11の態様の生成物により得られる金属ナノクラスターに関する。
【0119】
本発明の第11の態様の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、工程(b)は過剰量の還元剤で実施される。一実施形態では、還元剤:金属のモル比は3:1から600:1の範囲内である。特定の実施形態では、5:1から500:1の範囲内である。他の一実施形態では、還元剤:金属のモル比は10:1から200:1である。より特定の実施形態では、モル比は100:1である。
【0120】
本発明の金属NCを達成するために本発明の方法で使用される還元剤は、当該分野の専門家に公知のいずれかの還元剤でありうる。特定の実施形態では、還元剤は、アスコルビン酸ナトリウム、タンニン酸、ヒドラジン、ホウ水素化ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、デキストロース、ジメチルアミンボラン、2,5ジアミノベンゼンスルホン酸、1,2-ヘキサデカンジオール、又はそれらの混合物でありうる。他の一実施形態では、還元剤は硫化ナトリウムである。
【0121】
他の一実施形態では、工程(b)は、プロトン性又は非プロトン性のどちらかの極性溶媒で実施される。一実施形態では、溶媒は水である。
【0122】
本発明の第11の態様の他の一実施形態では、以上又は以下に提供される実施形態のいずれかと任意選択的に組み合わせて、工程(b)は5.5から12.0のpH範囲で実施される。特定の実施形態では、pHは7.0である。
【0123】
本発明の第11の態様の他の一実施形態では、工程(b)は約30から55℃の温度で実施される。特定の実施形態では、工程(b)は、約37から55℃、より特定的には約50℃の温度で実施される。
【0124】
本発明の第11の態様の他の一実施形態では、工程b)は、約20から90時間、特定的には約24から30、48から50、又は70から75時間、より特定的には約72時間にわたり実施される。
【0125】
本発明の第11の態様の他の一実施形態では、工程b)は、約20から144時間、特定的には約96から120時間、より特定的には約120時間にわたり実施される。
【0126】
本発明の第11の態様の好ましい実施形態では、工程a)は、約5:1、20:1、又は50:1のモル比で金属とタンパク質とを混合することにより実施され、且つ工程bは、約20から90時間にわたり約30から55℃の温度で実施される。より特定の実施形態では、工程a)の金属とタンパク質とのモル比は50:1であり、且つ工程b)は、約72時間にわたり約50℃の温度で実施される。
【0127】
工程(b)から得られたタンパク質安定化金属ナノクラスターは、溶液の他の成分(例えば、未反応のフリーの金属カチオン、アニオン、塩、又は本発明のタンパク質)からナノクラスターを分離するために分離技術に付すことが可能である。こうした技術の例示的な例として、限定されるものではないが、濾過(例えば、選択された分子カットオフを有するメンブレンを用いて)、沈殿(例えば、エタノールなどの水溶性有機溶媒を用いて)、及び高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)を適用することが可能である。その後、続いて、単離されたナノクラスターの乾燥又は凍結乾燥を行うことが可能である。
【0128】
本発明の第13の態様は、イメージング剤としての、薬剤送達担体としての、代謝干渉剤としての、触媒としての、検体としての、結晶学的データセットの位相調整用としての、細胞標識剤としての、特異的タンパク質標識剤としての、バイオセンサーとしての、温度センサーとしての、光増感剤としての、又は光電子デバイスの製造用としての、本発明の第9の態様若しくは第12の態様の金属ナノクラスター又は第10の態様の金属ナノクラスターの組合せの使用に関する。
【0129】
第13の態様の特定の実施形態では、いずれかの起源の細胞内での使用が実施可能である。特定の実施形態では、細胞は植物細胞又は動物細胞である。さらにより特定の実施形態では、細胞はヒト細胞である。
【0130】
本発明のある実施形態では、第9の態様又は第12の態様の金属NCを使用する場合、蛍光金属ナノクラスターからの蛍光シグナルの検出は、対照サンプルと比較してサンプルで検出された蛍光シグナルの変化を検出することを含む。例えば、蛍光シグナルの変化は蛍光シグナルの波長の変化である。ある特定の態様では、蛍光シグナルの変化は、蛍光シグナルの波長の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10nmの変化である。
【0131】
第13の態様の他の好ましい一実施形態では、使用は、in vitro又はin vivoの使用である。
【0132】
タンパク質安定化金属ナノクラスターの特定の使用は、薬剤、好ましくは治療有効量の薬剤を送達するための使用である。
【0133】
本明細書で用いられる「治療有効量」又は「有効量」という用語は、病気の治療又は予防のどちらかで所望の利益を提供するのに十分な程度に多い、ただし、医学的判断の範囲内で重篤な副作用を回避するのに十分な程度に少ない活性剤(薬剤)の量を意味する。本発明に係る前記薬剤の特定の用量は、投与化合物、投与経路、及び治療される特定の病態を含めて患者を取り巻く特定の状況により決定されるであろう。
【0134】
「薬剤」という用語は、疾患又は病態例えば癌などの治療、治癒、又は予防に使用される化学物質を意味する。薬剤の化学的性質は大幅に異なりうる。例えば、それは低分子、ペプチドなどでありうる。特定の実施形態では、薬剤は、荷電状態又は中性状態、蛍光性又は非蛍光性でありうる。
【0135】
センサーとしては、タンパク質安定化金属ナノクラスターは、例えば、温度センサー、pHセンサーとして、及び診断において又は治療に対する反応を評価するために比色バイオセンシングに使用可能である。
【0136】
化学反応を触媒するためにタンパク質安定化金属ナノクラスターを使用する場合、ナノクラスターは担体上に位置しうる。触媒金属の組合せを使用しうる。いずれかの好適な担体粒子を使用しうる。粒子に好適な典型的な担体は炭素担体であるが、シリカ又はいずれかの他の多孔性材料からも作製しうる。好適な炭素担体材料としては、Shaw C-55(商標)(Chevron Texaco Corp., Houston, Tex.)、Vulcan(登録商標)XC-72カーボンブラック(Cabot Corp., Waltham, Mass.)、Black Pearls(登録商標)2000 Carbon(Cabot Corp., Waltham, Mass.)などが挙げられる。
【0137】
タンパク質安定化金属ナノクラスターは、重原子を用いた多波長異常回折(MAD)又は単波長異常分散(SAD)の位相調整と同様に結晶学的データセットの位相調整用として使用可能である。
【0138】
タンパク質安定化金属ナノクラスターは、フォトダイナミック療法用光増感剤として使用可能である。
【0139】
光増感剤は、光化学プロセスにおいて他の分子に化学変化を引き起こす分子である。フォトダイナミック療法(PDT)は、光と光増感物質とが関与する光線療法の形態であり、細胞死を誘発するために分子酸素が併用される。PDTは、ヒト細胞をはじめとする哺乳動物細胞例えば癌細胞の死を誘発するために使用可能であり(例えば、前立腺癌、皮膚癌、頭頸部癌、肺癌、及び膀胱癌で使用可能である)、ウェット加齢黄斑変性、乾癬、及びアテローム硬化症の治療に使用されてきた。PDTは、細菌、真菌、及びウイルスにより引き起こされる病態を治療するために使用可能である。PDTは、座瘡の治療及びヘルペスを含めて抗ウイルス治療に役立つ。したがって、タンパク質安定化金属ナノクラスターは、上述した治療のいずれかでフォトダイナミック療法用光増感剤として使用可能である。
【0140】
タンパク質安定化金属ナノクラスターは、光電子デバイスとして使用可能である。光電子デバイスは、光及び電流の両方で動作する電子デバイスである。これは、レーザーダイオードや発光ダイオードなどの電動光源、ソーラーセルや光起電力セルなどの光を電流に変換するためのコンポーネント、光の伝播を電子的に制御可能なデバイスを含みうる。
【0141】
本発明の第14の態様の特定の実施形態では、キットは1つ以上のバイアルを含む。
【0142】
本発明の第14の態様の他の一実施形態では、キットは上述した金属含有化合物を含む。より好ましい実施形態では、キットは上述した還元剤を含む。
【0143】
第14の態様の他の一実施形態では、キットは、本発明の第9又は第12の態様の金属ナノクラスター又は本発明の第10の態様に係る金属ナノクラスターの組合せを作製するための、本発明の第1の態様に係るアミノ酸配列又は本発明の第2の態様に係るペプチド又は本発明の第3の態様に係るタンパク質又は本発明の第4の態様に係る核酸配列又は本発明の第5の態様に係る発現カセット又は本発明の第6の態様の核酸ベクター又は本発明の第7の態様に係る宿主細胞の使用の適応が記された説明書(例えばリーフレット)を含む。
【0144】
本発明の第14の態様の他の一実施形態では、キットは、本発明の第13の態様の使用における、本発明の第9又は第12の態様の金属ナノクラスター又は本発明の第10の態様に係る金属ナノクラスターの組合せの使用の適応が記された説明書(例えばリーフレット)を含む。
【0145】
本発明の第14の態様の他の一実施形態では、キットは、上述した使用において本発明のタンパク質安定化金属ナノクラスターの使用を可能にするエレメントを含む。
【0146】
第16の態様では、本発明はデバイスを提供する。
【0147】
タンパク質足場は基材上に配置可能である。基材中への足場の組織化により、作製される特定のデバイスを決定可能である。それはアレイなどの所定のパターンで配置可能である。アレイは、複数の単分散タンパク質安定化金属ナノクラスター(実質的に同一のサイズのクラスター)により形成可能である。基材は、タンパク質安定化ナノクラスターを足場に装着するように又は足場として作用するタンパク質を装着するように処理可能である。
【0148】
基材上に所定のパターンで足場を配置するいくつかの方法が存在する。例えば、第1の方法は、基材上の電極間に形成された電界で足場分子をアライメントすることを含む。したがって、電極間にアライメントできるように使用される足場分子が十分な双極子を有していなければならないことは、分かるであろう。これはαヘリックスを形成するポリペプチドが好ましい1つの理由である。αヘリックスは、電界の形成時に電極間に分子をアライメントできるようにする十分な双極子をポリペプチド分子に付与する。第2の方法は、モノマー、オリゴマー(10アミノ酸若しくはヌクレオチド以下)、又は小さなポリヌクレオチド若しくはポリペプチドを基材の表面上のより長い分子中に重合させることを含む。例えば、足場分子は、基材上で電極間のブリッジとして重合させることが可能である。
【0149】
足場は、静電結合や共有結合などによりタンパク質をより強固に基材に接着させることとは対照的に、基材の表面に単純に配置しうる。本明細書で用いられる場合、「基材」という用語は、デバイス例えば電子デバイスを形成するために使用しうるいずれかの材料又は材料の組合せを意味する。例えば、基材は、ケイ素、窒化ケイ素、超フラットガラス、金属、及びそれらの組合せからなる群から選択しうる。
【0150】
単純に表面上に足場を配置するので、作業デバイスの作製プロセスは単純化される。基材の表面上への足場の配置は、(1)分子足場を含有する溶液を形成することと、(2)基材上への溶液のスピンコーティングなどにより足場を含有する溶液を基材上に配置することと、(3)溶媒を蒸発させることにより基材表面上に固形分子足場を堆積させることと、により達成可能である。基材上への足場の単純な堆積が十分にロバストなデバイスを生成しない場合、より強固に足場を基材に結合させうる。これを達成する一方法は、基材と分子足場との間で接着剤又はテザーとして作用する化合物を使用することである。どの化合物を接着剤又はテザーとして使用するかは、基材及び金属ナノクラスターの性質に依存する。例えば、アミノシラン試薬を用いて基材に分子足場を装着しうる。シラン官能基は、ケイ素、ガラス、又は金の基材へのテザーの結合を可能にする。これにより、基材に足場をテザー連結するために足場との反応に使用可能な末端アミノ基を有するテザーが提供される。末端アミノ基はまた、活性化アミノ酸を用いたタンパク質のin situ重合の開始部位として使用可能である。
【0151】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、「comprise(~を含む)」という語及びその語の変化形は、他の技術的特徴、添加剤、成分、又は工程を除外することを意図するものではない。さらに、「comprise(~を含む)」という語は、「consisting of(~からなる)」の場合を包含する。本発明のそのほかの目的、利点、及び特徴は、本明細書を吟味することにより当業者に明らかになるだろう。又は本発明を実施すれば分かるであろう。以下の実施例及び図面は、例示を目的として提供されたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の特定の及び好ましい実施形態のすべての可能な組合せをカバーする。
【実施例】
【0152】
実施例
材料及び方法:
1.ペプチドブロックの調製:
本セクションに提供される式(II)のタンパク質の設計のために、配列番号37の配列の「CTRP1_W」、「ユニットW」、「W」、「モジュールW」、又は「Wモジュール」と称される且つ配列番号38のDNA配列によりコードされるペプチドブロックをスターターブロックとして使用した。これから、製造業者の説明書に従ってQuickChange部位指向突然変異誘発キット(Stratagene)を用いて配列番号38でパンクチュアル(punctual)突然変異を行った。作製した変異体の各々を表1にまとめる。
【0153】
【0154】
これらのモジュールを調製するために、式(I)に記載の「G」エレメントとして配列番号23を使用した。配列番号25を代わりに用いてモジュールの作製を行い、類似の結果を得た(データは示されていない)。同様に、配列番号24も使用する。
【0155】
2.式(II)のタンパク質の調製:
以下の表2に列挙されたタンパク質を得るために、先のセクションに記載のモジュールをコードする核酸をライゲートし一体化させた(pProEx-HTAベクター(Invitrogen)でBamHI及びBglIを用いて)。DNAシーケンシング(Stab vida)により構築物アイデンティティーを検証した。N末端(His)6タグ及びアンピシリン耐性をコードする前記ベクター中の所望のタンパク質に対する合成遺伝子をE.コリ(E. coli)C41細胞にトランスフォームし、37℃の寒天プレート上で一晩培養した。1つの単一コロニーを選択し、100μg・mL-1のアンピシリンを含有する50mLのルリア・ベルターニ(LB)培地中で一晩インキュベートした。次いで、10mLの一晩培養物を100μg・mL-1のアンピシリンが補足された1LのLB培地中に分注した。光学濃度(OD600)が0.6から0.8に達するまで、37℃のインキュベーターシェーカー(250rpm)中で細胞を成長させた。1mMイソプロピルβ-d-チオガラクトシド(IPTG)でCTPRの発現を誘発し、続いて37℃で5時間の発現を行った。5000rpmで20分間遠心分離することにより細胞を採取した。50mMトリス、300mM塩化ナトリウムからなる溶解緩衝液中に細胞ペレットを再懸濁させた。マイクロチップソニケーターを用いて30%のパワーで2分間超音波処理した後、溶解細胞を16000rpmで30分間遠心分離し、そして標準的Co-NTAアフィニティー精製プロトコルを用いてタンパク質上清を精製した。次いで、TEVプロテアーゼを用いてCTPRタンパク質からN末端ヘキサヒスチジンタグを切断した。最終工程として、6から8kDaの分子量カットオフを有する透析膜を用いて4℃で10mMリン酸緩衝液に対してCTPRの水性溶液を3回透析した。アミノ酸組成から計算された280nmの吸光係数を用いて280nmのUV吸収によりタンパク質濃度を測定した。
【0156】
こうして、表2に列挙された式(II)のタンパク質を調製した。
【0157】
【0158】
合成されたCTPRタンパク質は、N末端にクローニング技術に起因する余分な配列GAMGS(配列番号69)と、C末端にタンパク質の溶解性を増加させるのに役立つαヘリックス二次構造を有する余分な配列(AEAKQNLGNAKQKQG、配列番号70)と、をさらに含んでいた。
【0159】
それらの使用前、以下のように、アフィニティークロマトグラフィーにより2回及び高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)によりさらに1回の、合わせて3回にわたりタンパク質を精製した。
1.コバルト又はニッケルニトリロ三酢酸(NTA)アフィニティー精製のプロトコル:超音波処理による細胞溶解後に得られたタンパク質上清を5ml/minの流量のポンプによりアフィニティーカラム(Co-NTA、Ni-NTA)にロードした。次いで、50から100mLの300mM NaCl、5mMイミダゾール、トリス/HCl 50mM pH8.0でカラムを洗浄した。最後に、25mLの300mM NaCl、300mMイミダゾール、トリス/HCl 50mM pH8.0を用いてタンパク質を溶出させた。
2.次いで、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断を用いてタンパク質からN末端ヘキサヒスチジンタグを切断した。4℃の消化緩衝液(0,5mM EDTA、1mM DTT、10%グリセロール、50mMトリスpH8.0)中で1単位/mlのTEVプロテアーゼと共にタンパク質を一晩インキュベートした。
3.Co-NTA又はNi-NTAアフィニティー精製のプロトコル:N末端ヘキサヒスチジンタグの切断後に得られたタンパク質溶液を5ml/minの流量のポンプによりアフィニティー(Co-NTA、Ni-NTA)にロードした。精製されたタンパク質をフロースルー画分で捕集した。
4.高分解能分取サイズ排除クロマトグラフィーを用いたFPLC:2回のアフィニティークロマトグラフ後に得られた精製タンパク質をシリンジによりゲル濾過カラム(タンパク質のサイズに依存してSuperdex 75又は200)を備えたFPLCシステムにロードした。1ml/minの流量で300mM NaCl、トリス/HCl 50mM pH7.4の溶液を用いてタンパク質を溶出させた。タンパク質を2mLの画分で捕集した。
5.アミノ酸組成から計算された280nmの吸光係数を用いて280nmのUV吸収によりタンパク質濃度を測定した。タンパク質サンプルは-20℃で凍結貯蔵した。
【0160】
3.タンパク質安定化ナノクラスターの合成:
a)タンパク質安定化銅ナノクラスター(タンパク質-CuNC)の合成
最初に、30秒間ボルテックスして2000μLの10μM試験タンパク質とCuSO4(タンパク質を基準にして50eq.又はシステイン数を基準にして5eq.)とを混合し、次いで、少なくとも30分間放置して銅イオンをタンパク質に吸着させた。次いで、100mMアスコルビン酸ナトリウム(CuSO4を基準にして10又は100eq.)を添加することにより銅イオンから金属銅への還元を達成した。反応混合物を30秒間ボルテックスし、次いでは37℃又は50℃で72時間インキュベーした。最後に、10kDaメンブレンを備えたAmicon限外濾過チューブを用いてサンプルをPBSで数回洗浄して未反応塩を排除し、次いで、FPLCにより精製した。Fluorimeter Perkin Elmerを用いてタンパク質安定化銅ナノクラスターの蛍光スペクトルを収集した。
【0161】
b)タンパク質安定化金ナノクラスター(タンパク質-AuNC)の合成
最初に、30秒間ボルテックスして1000μLの20μMタンパク質とHAuCl4(タンパク質を基準にして50eq.又はシステイン数を基準にして5eq.)とを混合し、次いで、30分間放置して金イオンをタンパク質のシステインに吸着させた。次いで、アスコルビン酸ナトリウム(HAuCl4を基準にして10又は100eq.)を添加することにより金イオンから金属金への還元を達成した。反応混合物を30秒間ボルテックスし、次いでは37℃又は50℃で72時間インキュベーした。最後に、10kDaメンブレンを備えたAmicon限外濾過チューブを用いてサンプルをPBSで数回洗浄して未反応塩を排除し、次いで、FPLCにより精製した。Fluorimeter Perkin Elmerを用いてタンパク質安定化金ナノクラスターの蛍光スペクトルを収集した。
【0162】
c)タンパク質安定化銀ナノクラスター(タンパク質-AgNC)の合成
最初に、30秒間ボルテックスして500μLの20μMタンパク質とAgNO3(タンパク質を基準にして50eq.又はシステイン数を基準にして5eq.)とを混合し、次いで、30分間放置して銀イオンをタンパク質のシステインに吸着させた。次いで、アスコルビン酸ナトリウム(AgNO3を基準にして10又は100eq.)を添加することにより銀イオンから金属銀への還元を達成した。反応混合物を30秒間ボルテックスし、次いでは37℃又は50℃で72時間インキュベーした。最後に、10kDaメンブレンを備えたAmicon限外濾過チューブを用いてサンプルをPBSで数回洗浄して未反応塩を排除し、次いで、FPLCにより精製した。Fluorimeter Perkin Elmerを用いてタンパク質安定化銀ナノクラスターの蛍光スペクトルを収集した。
【0163】
4.金属混合物を用いた蛍光金属NCの合成:
以上の実施例3のときと同一の実験条件(還元剤、システイン:金属:還元剤比、及び反応時間)で、金属(Au及びAg)NCの合成及び安定化における金属混合物の効果を評価した。ただし、この場合には、500μLの20μM試験タンパク質(WC2C2C2W)とHAuCl4及び/又はAgNO3(システイン数を基準にして5eq.)とを混合した。
【0164】
5.異なる発光色を有するタンパク質安定化銅ナノクラスターの合成:
そのほか、異なる発光色を有するCuNCの形成の可能性を試験した。この目標に向かって、CuNCの合成及び安定化に関して以上に記載したものに類似したプロトコルに従ってタンパク質WHWを鋳型として用いたCuNCの合成及び安定化を行った。ただし、温度(37及び50℃)並びに還元剤(アスコルビン酸ナトリウム、タンニン酸、及びヒドラジン)のパラメーターに変更を加えた。
【0165】
すべての場合に、2000μLの10μMタンパク質とCuSO4(タンパク質を基準にして50eq.)とを少なくとも30分間混合して銅イオンをタンパク質の安定化部位に吸着させた。次いで、以下の条件を適用することにより銅イオンから金属銅への還元を達成した(表3)。
【0166】
【0167】
最後に、すべての場合に、10kDaメンブレンを備えたAmicon限外濾過チューブを用いてサンプルをPBSで数回洗浄して未反応塩を排除し、さらなる実験のために4℃に維持した。
【0168】
6.核局在化シグナルに融合させた本発明のタンパク質NLS-WHW-CuNC:
細胞マーカーとしてとくに核マーカーとして本発明のタンパク質安定化金属NCの能力を試験した。
【0169】
NLS-WHWの合成:SV40ラージT抗原核局在化シグナル(NLS)を使用した(配列番号71)。WHWタンパク質をコードする遺伝子を含むpProEx-HTAベクターと、NLSペプチドの配列を含むプライマー(フォワードプライマー配列番号88、リバースプライマー配列番号89)と、を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、NLS-WHWタンパク質をコードする遺伝子を構築した。DNAシーケンシング(Stab vida)により構築物アイデンティティーを検証した。配列番号79はNLS-WHWタンパク質を表し、配列番号80は前記タンパク質をコードするDNAを表す。
【0170】
NLS-WHW-CuNCの合成:CuNCの合成及び安定化に関して以上に記載したのと同一のプロトコルに従って、NLS-WHWタンパク質を鋳型として用いたCuNCの合成及び安定化を行った。
【0171】
最後に、CTPRタンパク質安定化CuNCの蛍光性に及ぼすNLSの存在の影響を調べるために、マイクロプレートリーダーを用いてタンパク質安定化CuNCの蛍光スペクトルを収集した。
【0172】
細胞イメージング:細胞イメージングを評価するために、MCF7細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(Manassas, VA, USA)から購入した)を24ウェルプレート上の500μlの完全培地中で2.5×104細胞/ウェルの密度で培養した。24時間後、成長培地を除去してからWHW-CuNC及びNLS-WHW-CuNC(5μM)の存在下、37℃で細胞を24時間インキュベートし、インキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄してフリーの非結合タンパク質安定化CuNCを除去し、最後に、蛍光顕微鏡下で観察した。
【0173】
7.認識ドメインに融合させた本発明のタンパク質(CC1CTPR390、CC1TPR2A及びCC1TPR2A_T332R_D334K):
蛍光AuNCを生成するCysクランプモジュールと、異なる結合活性を有するCTPRモジュールと、を組み合わせた新たなCTPRタンパク質を形成した。ただし、CTPRタンパク質の構造及び機能の健全性は保存された。CC1モジュール(表1に示されるようにモジュールC及びC1を融合させることにより得られた)を3つの異なるHsp90認識ドメイン:CTPR390、TPR2A、及びTPR2A_T332R_D334Kに融合させて(ベクターpProEx-HTAを用いてBamHI及びBglIIで消化することにより)、タンパク質CC1-CTPR390(配列番号92によりコードされる)を表す配列番号91、タンパク質CC1-TPR2A(配列番号94によりコードされる)を表す配列番号93、及びタンパク質CC1-TPR2A_T332R_D334K(配列番号96によりコードされる)を表す配列番号95を形成した。以上に示されるようにタンパク質の発現及び精製を実施した。以上の実施例6に開示されるようにタンパク質の構造を特徴付けた。
【0174】
そのほか、CC1-CTPR390、CC1-TPR2A、CC1-TPR2A_T332R_D334Kタンパク質及びその標的ペプチドを用いることにより、試験タンパク質のリガンド結合活性を調べた。50nMフルオレセイン標識Hsp90ペプチド溶液中に漸増量のタンパク質を加えて蛍光異方性によりHsp90ペプチド(配列番号90)へのタンパク質結合親和性を決定した。励起偏光子及び発光偏光子を備えたPerkin Elmer Fluorimeterで蛍光強度を記録した。5nmのスリット幅で492nmの励起を達成し、且つ5nmのスリット幅で516nmの発光を記録した。タンパク質の二次構造エレメント、とくに、TPRタンパク質のα-ヘリックス構造を報告する領域でスペクトルを取得した。
【0175】
以上に記載のものと同一のプロトコルを用いてCC1-CTPR390-AuNCを形成した(実施例3b)。AuNC蛍光をモニターしてCC1-CTPR390-AuNCのセンシング性を調べた。CC1-CTPR390-AuNC溶液のPBS中20μMタンパク質濃度の蛍光発光スペクトルを記録した。Hsp90リガンドペプチドの漸増時(5から600μM)に蛍光発光スペクトルの変化を決定した。分光蛍光計(Perkin Elmer)で蛍光スペクトルを記録した。5nmのスリット幅で370nmの励起を達成し、且つ5nmのスリット幅で390から550nmの発光を記録した。最大発光(450nm)で蛍光強度を記録し、各点で3回の測定の平均を報告した。
【0176】
8.蛍光量子収率の決定:
エタノール中のアントラセンを参照として用いて蛍光量子収率(Φ)を計算した(ΦRef=0.27、λexc=370nm、及びλem=423nm)。
【0177】
Fluoromax 4(Horiba Jobin-Yvon)を用いて蛍光測定を行い、且つCary 50 Conc(Varian)を用いて石英キュベット中で吸光度を記録した。
【0178】
9.タンパク質-NC構造の決定:
Jasco J-815分光計を用いて円二色性(CD)によりナノクラスター形成時のタンパク質二次構造を調べた。1nmの増分で1nmのバンド幅及び10秒間の平均時間を用いて0.1cmの経路長のキュベット中で10μMのタンパク質濃度におけるCDスペクトルを取得した。
【0179】
10.透過電子顕微鏡法(TEM):
炭素で被覆されたすべてのCu/Rhグリッドをサンプル堆積前にグロー放電に暴露した。10μLの試験サンプル溶液をグリッド上に堆積させることによりTEM用サンプルを作製した。3分後、濾紙を用いて過剰の溶液をグリッドから除去した。堆積した塩を除去するために、グリッドを1滴の水で洗浄し、濾紙を用いて過剰の水を乾燥させた。次いで、2%酢酸ウラニル溶液のドロップレットを用いてグリッドを1分間染色し、濾紙を用いて過剰の溶液を除去した。100kVで操作されるタングステンフィラメントを備えたJEOL JEM1200EXII電子顕微鏡でKodak SO-163フィルムを用いて60Kの倍率で顕微鏡写真を記録した。
【0180】
11.本発明のNCの安定化に利用可能なクリティカルパラメーターを決定する試験
タンパク質:金属比、金属:還元剤比、及び反応時間の影響を調べた。
【0181】
タンパク質WHWを鋳型として用いて以上に提供されたもの(実施例3a)に類似したプロトコルを開発し、CuNCの合成及び安定化におけるタンパク質:金属、金属:還元剤比、及び反応時間の影響を調べた。3つの異なる金属:タンパク質比(5:1、20:1、及び50:1)、2つの異なる金属:還元剤比(1:10及び1:100)、並びに3つの異なる反応時間(24、48、及び72時間)を試験した。比とはモル当量を意味する。結果は、結果セクション番号1(「ヒスチジンクランプに基づく配位残基を有する変異CTPRを含む蛍光金属ナノクラスター」と称される)に提供される。
【0182】
実施例2に記載のタンパク質(WWW、WX1W、WXW、WC1W、WHW、WC1C1W、WC2C2C2W、WC3C3C3W、WC3C3C3C3W、及びWC3C3C3C3C3W)(
図7、8、及び9)を用いて、次のプロトコルに従った。最初に、30秒間ボルテックスして500μLの20μMタンパク質とCuSO
4、HAuCl
4、又はAgNO
3(システイン数を基準にして5eq.)とを混合し、次いで、30分間放置して金属イオンをタンパク質のシステインに吸着させた。次いで、アスコルビン酸ナトリウム(HAuCl
4、AgNO
3、又はCuSO
4を基準にして10eq.)を添加することにより、銅/金/銀イオンから金属の銅/金/銀への還元を達成した。反応混合物を37℃又は50℃で72時間インキュベートした。結果は、結果セクション番号2(「システインクランプに基づく配位残基を有する変異CTPRを含む蛍光金属ナノクラスター」と称される)に提供される。
【0183】
実施例2に記載のタンパク質(WC3C3C3C3W、WH1H1H1H1、及びWH2H2H2H2W)(
図10)を用いて、次のプロトコルを使用した。500μLの20μMタンパク質溶液とHAuCl4(システイン数又はヒスチジン数を基準にして15eq.)とを混合して30秒間ボルテックスした。次いで、反応系を30分間インキュベートして金属イオンをタンパク質のシステイン又はヒスチジンに吸着させた。次いで、アスコルビン酸ナトリウム(HAuCl4を基準にして10eq.)を添加することにより金イオンから金属金への還元を達成した。反応混合物を37℃で72時間インキュベートした。結果は、結果セクション番号4(「システインクランプと比較されるヒスチジンクランプに基づく配位残基を有するいくつかのモジュールを含有するCTPR変異体を含む蛍光金ナノクラスター」と称される)に提供される。
【0184】
12.本発明の設計タンパク質とシステイン残基を含有する可能なCTPRベースランダム突然変異体との間の金属ナノクラスターの合成及び安定化の効率の比較
同一の実験条件(還元剤、タンパク質:金属:還元剤比、及び反応時間)を用いて、金属ナノクラスターの合成及び安定化に関して、システイン残基を含有する可能なCTPRベースランダム突然変異体と比較して、本発明の設計タンパク質の効率を評価した。結果は、結果セクション5(「本発明の設計タンパク質とシステイン残基を含有する可能なCTPRベースランダム突然変異体との間の金属ナノクラスターの合成及び安定化の効率の比較」)(
図11、12、及び13)に提供される。
【0185】
実施例2に記載のタンパク質(WWW、WWW_cys、WC1W、WC2W、WC3W、WHW、WH2W、WH3W、WRW、WR1W、及びWR2W)を用いて、次のプロトコルに従った。
【0186】
最初に、30秒間ボルテックスして1000μLの20μMタンパク質とCuSO4、AgNO3、又はHAuCl4(タンパク質を基準にして50eq.)とを混合し、次いで、30分間放置して金イオンをタンパク質のシステインに吸着させた。次いで、アスコルビン酸ナトリウム(金属を基準にして10eq.)を添加することにより金属イオンから金属メタルへの還元を達成した。反応混合物を30秒間ボルテックスしてから37℃で72時間インキュベートした。最後に、10kDaメンブレンを備えたAmicon限外濾過チューブを用いてサンプルをPBSで数回洗浄して未反応塩を排除し、次いで、FPLCにより精製した。Fluorimeter Perkin Elmerを用いてタンパク質安定化金ナノクラスターの蛍光スペクトルを収集した。
【0187】
13.タンパク質安定化CdSナノクラスターの合成:
2500μLの5μMタンパク質とCd(CH
3CO
2)
2(0.4mM)とを混合して30秒間ボルテックスした。次いで、反応系を60分間インキュベートしてCdイオンをタンパク質のヒスチジンに吸着させた。次いで、硫化ナトリウム(Na
2S)(0.28mM)を添加することによりCdSナノクラスターの形成を達成した。反応混合物を30秒間ボルテックスしてから37℃で5日間インキュベートした。最後に、10kDaメンブレンを備えたAmicon限外濾過チューブを用いてサンプルをPBSで数回洗浄して未反応塩を排除し、次いで、FPLCにより精製した。Fluorimeter Perkin Elmerを用いてタンパク質安定化CdSNCの蛍光スペクトルを収集した。結果は、結果セクション番号6(「ヒスチジンクランプに基づく配位残基を有する変異CTPRを含む蛍光CdSナノクラスター」)(
図14及び15)に提供される。
【0188】
14.タンパク質-NC安定性の決定:
マイクロプレートリーダーを用いて蛍光分光測光によりPBS中及びヒト血漿中における10μM WHW-CuNCの安定性を室温で1週間調べた。
【0189】
15.生存能及び内在化の研究用の細胞培養物の調製:
10%の最終濃度でウシ胎仔血清(FBS)、2mM L-グルタミン、0.25μg/mLフンギゾン及び100単位のペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンが補足されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で単層としてMCF7細胞株を成長させた。培地、血清、L-グルタミン、フンギゾン、及び抗生物質はすべて、GIBCOから購入した。インキュベーター内において75%空気及び5%CO2からなる加湿雰囲気で細胞系を37℃に維持した。PBSに分散された500μLのタンパク質安定化CuNCを再分散の目的で5分間超音波処理した。次いで、10%FBSを含有する培地中に所望の濃度でタンパク質安定化CuNCを希釈した。得られたサンプルを0.22μm Millex-GPフィルター(Merck-Millipore Darmstadt, Germany)に通して濾過し、そして再び1分間超音波処理した。タンパク質安定化CuNCと共に細胞を24時間インキュベートした。次いで、分散されたタンパク質安定化CuNCを有する細胞培地を除去し、そして細胞培地からタンパク質安定化CuNCを完全に除去するために細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。次いで、新鮮な細胞培地を添加して、さらなる生存能及び内在化の研究を継続した。
【0190】
16.in vitro細胞傷害性アッセイ:
レサズリン色素(Sigma-Aldrich)は、増殖及び細胞傷害性アッセイで細胞生存能の信頼できるインジケーターとして広く使用されてきた。細胞生存能を評価するために、24ウェルプレート上の500μlの完全培地中でMCF7細胞を2.5×104細胞/ウェルの密度で培養した。24時間後、成長培地を除去し、次いで、異なる濃度のタンパク質安定化CuNC(2、5、10、及び20μM)の存在下37℃で細胞を24時間インキュベートした。インキュベート後、細胞をPBSで3回洗浄し、次いで、10%FBSが補足されたDMEMを細胞培養物に添加し、37℃及び5%CO2のインキュベーターで維持した。72時間後、培地を10%FBS及び10%レサズリン色素(1mg/ml PBS)が補足されたDMEMで置き換えた。細胞を37℃及び5%CO2インキュベーターで3時間維持し、次いで、Synergy H4マイクロプレートリーダーを用いて反応混合物の吸光度を測定することにより低減されたレサズリンの量を決定した(λexc=570nm、λem=600nm)。600μlの10%レサズリン色素を陰性対照として空のウェルに添加した。対照細胞(ナノ粒子を含まない)と比較した処理細胞の吸収のパーセントとして細胞の生存能を表した。実験はすべてトリプリケートで行った。
【0191】
17.温度センサーとしてのタンパク質安定化金属NCの使用:
以上のポイント5(異なる発光色を有するタンパク質安定化銅ナノクラスターの合成)に記載されるように合成された青色発光WHW安定化CuNCを次のように温度センサーとして使用した。Fluorimeter Perkin Elmerを用いてサンプルを370nmで励起したときの異なる温度におけるタンパク質安定化銅ナノクラスターの蛍光発光強度を430nmで記録した。
【0192】
18.ライブイメージングツールとしてのタンパク質安定化金属NCの使用:
以上の材料及び方法のポイント3に記載されるように合成されたWHW安定化AgNCの20μM溶液、緑色蛍光タンパク質(GFP)の20μM溶液、及び4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の20μM溶液の蛍光強度を連続水銀アークランプ照明下でさまざまな時間でLeica DM3蛍光顕微鏡を用いて記録した。Image Jソフトウェアを用いて蛍光強度を定量した。
【0193】
結果:
ヒスチジンクランプに基づく配位残基を有する変異CTPRを含む蛍光金属ナノクラスター:
CuNCの合成及び安定化のための鋳型として設計されたリピートタンパク質の潜在能力を探究した(
図1)。
【0194】
CuNCの合成及び安定化のための鋳型として作用するように3つのモジュールにより形成されたCTPRタンパク質(いわゆるCTPR3)の能力並びに金属NCの形成及び安定化に及ぼすタンパク質構造中の特異的金属結合部位(ヒスチジン(His)クランプ)の存在及び位置の影響を分析した。そのほか、異なる貴金属NC(Au及びAg)のNCを安定化させるCTPRタンパク質の多用途性及び異なる発光色を有するCuNCを形成する可能性を試験した。最後に、構造中に局在化ペプチド(この場合にはSV40ラージT抗原核局在化シグナル(NLS))を含むCTPRタンパク質を用いて、非特異的細胞マーカー又は特異的細胞マーカーとして、細胞イメージング分野におけるこうした金属NCの潜在的用途を評価した。
【0195】
CuNCの合成及び安定化のために、3つの異なるCTPR3タンパク質の設計、発現、及び作製を行った。最初に、CTPRリピート内の位置5及び9に2つのHis残基を導入して修飾CTPRユニット(H)を形成することにより、Hisクランプをモジュールレベルで設計した(表1)。Hモジュールと野生型CTPRモジュール(W)とを組み合わせることにより、3つの同一の野生型CTPRモジュールにより構成されたCTPR3-WWWと、2つの野生型CTPRモジュール(W)と中心リピートに局在化された金属結合Hisクランプ(H)を含有する1つのモジュールとにより構成されたCTPR3-WHWと、HモジュールがN末端リピートに局在化されたCTPR3-HWWと、の3つのCTPR3タンパク質を形成した。3つの設計されたCTPRをタンパク質安定化CuNCの形成に関して試験した。タンパク質配列、タンパク質:金属:還元剤比、及び反応時間の影響を調べるために、類似のプロトコルを開発してすべての合成に適用した。サンプルの吸収及び蛍光スペクトルを取得したところ、すべての場合にタンパク質安定化CuNCに対応する特性蛍光を示した(
図1)。最初に、我々は、材料及び方法のセクションに記載したのと同一の実験条件(還元剤、タンパク質:金属:還元剤比、及び反応時間)を用いて、CuNCの合成及び安定化におけるタンパク質配列の影響を評価した。
図1に示されるように、CTPR3-WHWタンパク質を用いてより大きな蛍光発光強度を有するCuNCを得た。Hisクランプの存在及び位置の重要性を評価した後、CuNCの合成及び安定化の理想的足場としてCTPR3-WHWタンパク質を選択した。次いで、最終CuNCの性質を最適化するためにCTPR3-WHWタンパク質を用いてCuNCの合成及び安定化におけるタンパク質:金属:還元剤比及び反応時間の役割を評価した。安定化CuNCの蛍光性は、24hから72hの時間にわたり増加した。安定化CuNCの蛍光性は、5:1から50:1の金属:タンパク質比の増加によっても、さらには10:1から100:1の還元剤:金属比の増加によっても、向上することが観測された。最後に、より大きな蛍光発光強度をもたらすことから、金属:タンパク質比として50:1、還元剤:金属比として100:1、及び反応時間として72hを用いて合成されたCuNCを選択して十分に特徴付けた。
【0196】
同一濃度のタンパク質単独で(WHW)のUV可視のスペクトルと比較してタンパク質安定化CuNC(WHW-CuNC)のUV可視のスペクトルは、280nmの特性タンパク質吸収に加えて、370nm近傍に明瞭なピークの存在を示した。励起スペクトルは、370nmに最大を有する単一ピークを示した。生成物の蛍光発光スペクトルは、370nmで励起したとき、450nmに最大を有する単一ピークからなっていた。標準としてアントラセンを用いて蛍光量子収率(Φ)を測定したところ10%(λex:370nm)であった。光物理的及び構造的特徴付けに加えて、CTPRタンパク質鋳型の構造健全性は、タンパク質-NCハイブリッド構造の将来的適用に非常に重要である。円二色性(CD)測定は、NC形成後のWHW-CuNC錯体中のタンパク質のαヘリックス二次構造含有率の減少をなんら示さなかったので、WHWは、NC合成条件下で安定であるとともに、安定化NCは、タンパク質足場の構造を撹乱しないことを確認しうる。TEM測定は、小さなCuNCの存在を示唆した(個別CuNCの平均サイズは、0.9±0.2nmとして計算された)。さらに、バイオイメージング及びバイオ標識の分野におけるWHW-CuNCの適用は、良好な光安定性及び生体適合性を必要とする。生理学的条件でWHW-CuNCの光安定性を適正にチェックするために、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中及びヒト血漿(HP)中で安定性試験を実施した。
図2に示されるように、WHW-CuNCは、PBS中及びHP中において室温で1週間にわたり非常に良好な安定性を有しており、PBSの場合にはその蛍光性はほぼ一定に維持され、HPの場合にはその蛍光性は増加する。
【0197】
WHW-CuNCのin vitro細胞傷害性試験は、アラマーブルー細胞生存能アッセイにより検査した。MCF7乳癌細胞におけるインキュベーションによりWHW-CuNCの可能な細胞傷害性を評価するために、生存能アッセイを実施した。使用したWHW-CuNCの濃度は2から20μMであった。標準的細胞培養条件でさまざまな濃度のWHW-CuNCと共にDMEM中でMCF7乳癌細胞をインキュベートした。インキュベーションの72時間後、アラマーブルー細胞生存能アッセイにより細胞生存能を決定した。WHW-CuNCは、高濃度でさえも細胞傷害作用がないことが、結果から示唆された。
【0198】
そのほか、異なる貴金属NC(Au及びAg)のNCを安定化させるCTPRタンパク質の多用途性を試験したところ、金属としてCuを使用したときに得られたものに類似した結果が得られたが、より小さい蛍光強度であった(
図3)。また、材料及び方法のセクションに示されるように、いくつかの合成プロトコルパラメーターを変化させて異なる発光色を有するCuNCを形成する可能性を評価した。UVから赤色まで異なる色の発光を有するCuNCが得られた。励起波長は、320、370、440、485、及び530nmであり、且つ発光波長は、それぞれ、405、450、520、565、及び605nmであった(データは示されていない)。したがって、一般式(II)のタンパク質で安定されたNCは、蛍光色の発光に関して驚くべき多用途性を示した。
【0199】
WHHW(CTPR4)及びWHHHW(CTPR5)により形成されたCTPRタンパク質で得られた結果は、CuNCのためのWHWタンパク質に対して本明細書に記載されたものと同一であった(データは示されていない)。
【0200】
最後に、鋳型としてWHWタンパク質及び構造中に核局在化配列(NLS)を含むWHW(NLS-WHW)を用いて、非特異的細胞マーカー又は特異的細胞マーカーとして、細胞標識分野におけるタンパク質安定化CuNCの潜在的用途を評価した。以上に記載の手順に従って分子生物学技術によりWHWタンパク質からNLS-WHWタンパク質を構築した。最初に、WHWタンパク質の構造中の核局在化配列の存在がCuNCの合成及び安定化に影響を及ぼさないこと、さらにはNLS-WHW安定化CuNC(NLS-WHW-CuNC)がWHW-CuNCに類似した蛍光性を有することを確認した。37℃のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中でWHW-CuNC及びNLS-WHW-CuNCと共にMCF7細胞を1時間インキュベートすることにより、細胞標識用としてタンパク質安定化CuNCの概念評価の証拠を探究した。培地の除去後、細胞をPBSで十分に洗浄してフリーの非結合WHW-CuNC及びNLS-WHW-CuNCを除去し、最後に、蛍光顕微鏡法により細胞のイメージングを行った。比較として、WHW-CuNCで処理された細胞は、すべての細胞内で均一な蛍光シグナルを呈し、NLS-WHW-CuNCで処理された細胞は、細胞核内及び核膜内に局在化された蛍光シグナルを呈した。こうした結果から、非特異的細胞バイオマーカー(WHW-CuNCにより例証される)又は特異的核バイオマーカー(NLS-WHW-CuNCにより例証される)として生細胞標識におけるタンパク質安定化CuNCの有用性が明確に実証された。TPRタンパク質を細胞により内在化できないことを考慮して、TPR-CuNCの内在化は、TPRタンパク質の構造中のCuNCの存在により提供されると推定可能である。
【0201】
さらに、金属NCの形成及び安定化に及ぼすタンパク質構造中の特異的金属結合部位(ヒスチジン(His)クランプ)の異なる数の存在の影響を調べた。WHW、WHHW、及びWHHHWタンパク質により形成されたナノクラスターの蛍光性を試験した。
図4で観察できるように、タンパク質構造中の特異的金属結合部位(ヒスチジン(His)クランプ)の数を1から3に増加させた場合、安定化CuNCの蛍光性の改善が見られた。
【0202】
結論として、貴金属NCの合成及び安定化のために多用途鋳型として設計されたリピートタンパク質を使用可能であることが実証された。異なるCTPRタンパク質を構築するためのカセットとして異なるモジュールの使用が記述された。この例では、構造中に標的化剤として局在化ペプチドを含有可能なCTPRタンパク質の設計が示されるが、同一の手順は多くの目標に使用しうる。タンパク質安定化CuNCは、高いフォトルミネセンス量子収率、高い光安定性、及び良好な生体適合性を示した。それは、細胞、核、又はいずれかの他の細胞区画の標識に使用しうる。フォトルミネセンス性と生理学的条件における安定性とその低い細胞傷害性とが組み合わさることにより、本発明の金属NCは、in vitroさらにはin vivoにおける生物学的及びバイオ医学的用途に対する理想的選択肢となる。
【0203】
システインクランプに基づく配位残基を有する変異CTPRを含む蛍光金属ナノクラスター:
金属NCの合成及び安定化のための鋳型として作用するように異なる数のCTPRモジュールにより形成されたCTPRタンパク質の能力並びに金属NCの形成及び安定化に及ぼすタンパク質構造中の異なる数のシステイン残基により構成された特異的金属結合部位の存在及び位置の影響を探究した。
【0204】
表2並びに材料及び方法のセクションに示されるように、金属NC(Cu、Ag、及びAu)の合成及び安定化のために、C、C1、C2、及びC3モジュールと野生型CTPRモジュール(W)とを組み合わせることにより、WCC1W、WC1C1W、WC1C1C1W、WC2C2W、WC2C2C2W、WC3C3W、WC3C3C3W、WC3C3C3C3W、WC3C3C3C3C3W、及びWC3C3C3C3C3C3Wの10種の異なるCTPRタンパク質の設計、発現、及び作製を行った。設計されたCTPRをタンパク質安定化金属NCの形成に関して試験した。最初に、材料及び方法に記載したのと同一の実験条件を用いて、金属NCの合成及び安定化におけるタンパク質配列の影響を評価した。サンプルの蛍光スペクトルを取得したところ、すべての場合にタンパク質安定化金属NCに対応する特性蛍光を示した。
【0205】
また、システイン残基の位置の重要性に関する比較としてCouleaud P et al. 2015により示唆されるようにタンパク質WWW_Cysを形成した。
【0206】
図5で観測されたように、タンパク質構造中のシステイン残基の存在は、AuNCの合成及び安定化に有利である。システインを有していないWWWタンパク質は、ナノクラスターの有意な生成をもたらさなかった。タンパク質配列のC末端の単一システイン残基の存在(WWW_Cys)(配列番号107)は、ナノクラスターの形成に関連する弱い蛍光発光を示した(
図7から9も参照されたい)。注目すべき点として、設計されたシステインクランプをタンパク質内に導入したところ、蛍光強度が5倍に増加した。そのほか、システインモジュールCC1及びC1C1の組合せにより同一の蛍光性を有するAuNCを生成することが観測された。最後に、WCC1W-AuNC及びCC1-CTPR390-AuNCが類似の蛍光性を示したことから、CuNCの合成及び安定化に対するヒスチジンクランプの場合と同様に、タンパク質構造中のシステインクランプを有するモジュールの位置は、AuNCの合成及び安定化にそれほど重要でないことが観察された。
【0207】
図6に示されるように、異なるCTPRタンパク質を用いてより大きな蛍光発光強度を有するAuNCを得た。Cys残基の存在及び位置の重要性を評価した後、Cys残基数を16から20に増加させることにより、安定化AuNCの蛍光性の改善が観察され、Cys残基数を20以上に増加させたとき、安定化AuNCの蛍光性の減少が観察された。励起スペクトルは、すべての場合に370から380nmに最大を有する単一ピークを示した。生成物の蛍光発光スペクトルは、370から380nmで励起したとき、440から450nmに最大を有する単一ピークからなっていた(
図6)。
【0208】
異なるCTPRタンパク質を用いてより大きな蛍光発光強度を有するAuNC、AgNC、及びCuNCを得た(材料及び方法で説明したのと同一の実験条件を用いて得た)(WWW、WX1W、WXW、WC1W、WHW、WC1C1W、WC2C2C2W、WC3C3C3W、WC3C3C3C3W、及びWC3C3C3C3C3W)。サンプルの蛍光スペクトルを取得したところ、すべての場合にタンパク質安定化金属NCに対応する特性蛍光を示した。Cys及び/又はHis残基の存在及び位置の重要性を評価した後、Cys残基数を16から20に増加させて安定化金属NCの蛍光性の顕著な改善を検出した(
図7、8、及び9を参照されたい)。主生成物の蛍光発光スペクトルは、370nmで励起したとき、440から460nm(青色発光)に最大を有する単一ピークからなっていた。WC2C2C2W足場上で安定化されたAgナノクラスターの場合、サンプルを455nmで励起したとき、620nmに最大を有する赤色発光が得られ(WC2C2C2W_AgNC
*)、一方、サンプルを370nmで励起したとき、440から460nmに最大を有する単一ピークが得られた(WC2C2C2W_AgNC)(
図8)。
【0209】
NCの形成及び安定化に及ぼす金属の比の影響:
ここでは、異なる金属(Au、Ag、及びCu)NCの形成及び安定化に及ぼすタンパク質構造中の異なる数のシステイン残基により構成された特異的金属結合部位の存在及び位置の影響を探究した。また、鋳型として同一のタンパク質(この場合にはWC2C2C2W)を用いて異なる混合金属(Au、Ag、及びCu)NCの形成及び安定化に及ぼすAu及びAgの比の影響を探究した。
【0210】
設計されたCTPR、WC2C2C2W、WC3C3C3W、WC3C3C3C3W、及びWC3C3C3C3C3Wに対して、サンプルの蛍光スペクトルを取得したところ、すべての場合にタンパク質安定化金属NCに対応する特性蛍光を示した。
【0211】
金属NCの形成時の反応温度として37℃と50℃との比較を実施した。
【0212】
以上に説明したように、本発明の異なるCTPRタンパク質を用いてより大きい蛍光発光強度を有するAuNC、AgNC、及びCuNCを得た。Cys残基の存在及び位置の重要性を評価した後、Cys残基数を20まで増加させて且つ反応温度として50℃を用いて、安定化金属NCの蛍光性の一般的改善を観測した。反応のほとんどの蛍光発光スペクトルは、360から380nmで励起したとき、440から460nm(青色発光)に最大を有する単一ピークからなっていた。詳細には、WC3C3C3C3C3W(20Cys残基)を用いて、50℃で最良の蛍光発光強度を有するAuNCを得た。Agの場合、WC3C3C3C3W(16Cys残基)を用いて、50℃で最大蛍光発光強度を有するAgNCを得た。最後に、Cuの場合、WC3C3C3C3C3W(20Cys残基)を用いて、50℃で最大蛍光発光を有するCuNCを得た。興味深いことに、WC2C2C2W(9Cys残基)により安定させたAgNCの場合、360から380nmの励起で青色発光及び430から460nmの励起で赤色発光の二重発光が観察された。
【0213】
また、鋳型として同一のタンパク質(この場合にはWC2C2C2W)を用いて、異なる混合Au-AgNCの合成、安定化、及び蛍光性に及ぼすAu及びAgの比の影響を探究した。
【0214】
WC2C2C2W CTPRタンパク質を用いて、より大きい蛍光発光強度を有するAuNC、AgNC、及び混合AuAgNCsを得た。Au/Ag比の重要性を評価した後、9:1(Au:Ag)のモル比でAgを添加したとき安定化AuNCの蛍光性が改善され、4:1及び3:1(Au:Ag)の比でAgを添加したとき安定化AuNCの蛍光性に影響がなく、且つ2:1(Au:Ag)の比でAgを添加したとき安定化AuNCの蛍光性が減少することを、我々は観察した。
【0215】
システインクランプと比較してヒスチジンクランプに基づく配位残基を有するいくつかのモジュールを含有するCTPR変異体を含む蛍光金ナノクラスター:
金NCの形成及び安定化に及ぼすCTPRタンパク質構造中の同数のシステイン又はヒスチジン残基により構成された特異的金属結合部位の性質及び位置の影響を探究した。
【0216】
金NCの合成及び安定化のために、6つのCTPRモジュールを有する3つの異なるCTPRタンパク質の設計、発現、及び作製を行った。C3、H1、及びH2モジュールと野生型CTPRモジュール(W)とを組み合わせることにより、次のタンパク質、すなわち、表2並びに材料及び方法のセクションに示されるように、WC3C3C3C3W、WH1H1H1H1W、及びWH2H2H2H2Wを形成した。
【0217】
設計されたCTPRをタンパク質安定化金NCの形成に関して試験した。材料及び方法に記載のものと同一の実験条件を用いて、金NCの合成及び安定化におけるタンパク質配列の影響を評価した。サンプルの蛍光スペクトルを取得したところ、すべての場合にタンパク質安定化金NCに対応する特性蛍光を示した。
【0218】
図10に示されるように、異なるCTPRタンパク質を用いて大きい蛍光発光強度を有するAuNCを得た。Hisクランプを有するタンパク質(WH1H1H1H1W及びWH2H2H2H2W)による安定化AuNCと比較してCysクランプを有するタンパク質(WC3C3C3C3W)による安定化AuNCの蛍光性の改善を観察した。また、Hisクランプを有するタンパク質(WH1H1H1H1W及びWH2H2H2H2W)による安定化AuNCの場合、H2モジュール上のHisクランプ塩基は、H1モジュールと比較して安定化AuNCの蛍光性を増加させることが観察された。ただし、両方とも4ヒスチジン残基を有する。生成物の蛍光発光スペクトルは、370から380nmで励起したとき、すべての場合に440から450nmに最大を有する単一ピークからなっていた(
図10)。
【0219】
本発明の設計タンパク質とシステイン残基を含有する可能なCTPRベースランダム突然変異体との間の金属ナノクラスターの合成及び安定化の効率の比較
同一の実験条件(還元剤、タンパク質:金属:還元剤比、及び反応時間)を用いて、金属ナノクラスターの合成及び安定化に関して、システイン残基を含有する他の可能なCTPRベースランダム突然変異体と比較して、本発明の設計タンパク質の効率を評価した。
【0220】
金属ナノクラスターの合成及び安定化に関して、異なるCTPRタンパク質(WWW、WWW_cys、WC1W、WC2W、WC3W、WHW、WH2W、WH3W、WRW、WR1W、及びWR2W)を試験した。材料及び方法に記載のものと同一の実験条件を用いて、金属ナノクラスターの合成及び安定化におけるタンパク質配列の影響を評価した。サンプルの蛍光スペクトルを取得したところ、すべての場合にタンパク質安定化金属NCに対応する特性蛍光を示した(
図11、12及び13)。Cys及び/又はHis残基の存在及び位置の重要性を評価した後、システイン残基を含有するCTPRベースランダム突然変異体(WRW、WR1W及びWR2W)と比較して、本発明の設計タンパク質を用いて安定化金属NCの蛍光性における顕著な改善を検出した。
【0221】
図11、12、及び13に示されるように、異なるCTPRタンパク質を用いて大きい蛍光発光強度を有する金属NCを得た。システイン残基を含有するCTPRタンパク質塩基ランダム突然変異体(WRW、WR1W、及びWR2W)による安定化金属NCと比較して、設計されたHisクランプを有するタンパク質(WHW、WH2W、及びWH3W)及びCysクランプを有するタンパク質(WC1W、WC2W、及びWC3W)による安定化金属NCの蛍光性の改善を観察したことから、リピートモジュール中のヒスチジン及びシステイン残基の位置は、強い蛍光を有する金属NCの合成及び安定化に重要であることが示される。そのほか、設計されたcysクランプ(WC1W、WC2W、及びWC3W)により安定された金属NCは、Hisクランプ(WHW、WH2W、及びWH3W)により安定された金属NCと比較して蛍光の増加を示すことが観察された。Cys残基数を4まで増加させて(2つのシステインを有するWC1Wから4つのシステインを有するWC3Wに)、安定化金属NCの蛍光性の一般的改善を観察した。生成物の蛍光発光スペクトルは、370から380nmで励起したとき、すべての場合に440から450nmに最大を有する単一ピークからなっていた。
【0222】
ヒスチジンクランプに基づく配位残基を有する変異CTPRを含む蛍光CdSナノクラスター:
CdSナノクラスターの合成及び安定化のために鋳型として作用するように、異なる数のCTPRモジュールにより形成されたCTPRタンパク質の能力を探究した。そのほか、CdSNCの形成及び安定化に及ぼすタンパク質構造中の異なる数のヒスチジン残基により構成された特異的金属結合部位の存在及び位置の影響を評価した。
【0223】
H1及びH2モジュールと野生型CTPRモジュール(W)とを組み合わせることにより、CdSナノクラスターの合成及び安定化のために、表2並びに材料及び方法のセクションに示されるように、WWWWWW、WH1W、WH1H1W、WH1H1H1W、WH1H1H1H1W、及びWH2H2H2H2Wの6つの異なるCTPRタンパク質の設計、発現、及び作製を行った。タンパク質安定化CdSナノクラスターの形成に関して、設計されたCTPRを試験した。材料及び方法に記載のものと同一の実験条件を用いて、CdSナノクラスターの合成及び安定化におけるタンパク質配列の影響を評価した。
【0224】
図14で観測されたように、タンパク質構造中のシステイン残基の存在は、CdSナノクラスターの合成及び安定化に有利である。ヒスチジンを有していないWWWWWWタンパク質は、CdSナノクラスターの有意な生成をもたらさなかった。注目すべき点として、設計されたヒスチジンクランプをタンパク質に導入したところ、タンパク質安定化CdSナノクラスターの蛍光強度が増加した。His残基数を16に増加させて安定化CdSナノクラスターの蛍光性の顕著な改善を検出した。最後に、モジュールH1又はH2中のヒスチジン残基の異なる位置は、CdSナノクラスターの合成及び安定化に関係しないことが観察された。WH1H1H1H1WCdSNC及びWH2H2H2H2WCdSNCは類似の蛍光性を示した。
【0225】
主生成物の蛍光発光スペクトルは、365nmで励起したとき、515から520nmに最大を有するピークからなっていた(
図14)。励起スペクトルは、すべての場合に360から365nmに最大を有する単一ピークを示した(
図15)。
【0226】
リガンドのセンサーとして本発明のタンパク質により安定した金属NC:
CTPRの性質は、結合認識部位などに容易にモジュレート可能であるので、
一次配列にほとんど変化を導入することになく、異なる結合活性を有するが同一の構造を有するTPRタンパク質が形成された。調整されたセンサー、バイオマーカー、又はバイオメディカル用途のさまざまなツールを設計するために、さまざまな結合活性を有するこうしたCTPRモジュールをCysクランプモジュールと組み合わされて蛍光AuNCを作製可能である。AuNCの蛍光とタンパク質の結合能とを組み合わせることにより、分子プローブとしてのCTPR安定化AuNCの潜在能力を調べた。概念実証として、多くの発癌性タンパク質のフォールディングに不可欠なひいては腫瘍進行に関与するシャペロンであるHsp90のC末端ペプチドに結合する3つのCTPR足場(CTPR390、TPR2A、及びTPR2A_T332R_D334K)と、AuNCの形成に使用されるCC1_4Cysクランプと、を組み合わせた。これをもって、CC1-CTPR390-AuNC、CC1-TPR2AAuNC、及びCC1TPR2A_T332R_D334KAuNC錯体は、蛍光を発してそれらのリガンド分子を特異的に認識可能であることが実証された。
【0227】
最初に、材料及び方法のセクションで以上に記載したように、CC1-CTPR390 CC1-TPR2A、及びCC1-TPR2A_T332R_D334Kタンパク質の発現、設計、作製、及び特徴付けを行った。次いで、それらのフォールディング、安定性(熱アンフォールディング)、及びリガンド結合親和性をチェックすることにより、こうした新規なタンパク質の特徴付けを行った(
図16)。
【0228】
図16に見られるように、新たに設計されたタンパク質CC1-CTPR390、CC1-TPR2A、及びCC1-TPR2A_T332R_D334Kは、十分にフォールディングされ、58、56、及び52℃の融解温度(Tm)並びに110μM、5μM、及び55nMのKd値を呈した(元のCTPR390、TPR2A、及びTPR2A_T332R_D334Kに類似する)。
【0229】
次いで、還元剤としてアスコルビン酸ナトリウムを用いて且つ材料及び方法のセクションに記載したのと同一の実験条件(還元剤、システイン:金属:還元剤比、及び反応時間)を用いて、タンパク質安定化金NCの形成に関して、こうした3つの設計されたCTPRを試験した。3つの異なるタンパク質安定化金NCの蛍光励起スペクトルは、370nmに最大を示し、発光スペクトルは、370nmで励起したとき、450nmに最大を示した。CTPRリピートの構造的及び機能的性質は興味深かったので、CTPR-AuNC合成後にタンパク質二次構造及びリガンド結合活性が維持されるかを試験した。
【0230】
マイルドな還元剤を用いてCTPR-AuNCを形成した後、サンプルのCD分析により、タンパク質構造が保持されることが明らかにされた(
図16)。そのため、アスコルビン酸ナトリウムを用いた最適化AuNC合成プロトコルは、良好な蛍光性及びタンパク質足場の構造健全性を有するタンパク質安定化AuNCをもたらした。
【0231】
最後に、蛍光異方性を用いて、CC1-CTPR390-AuNC、CC1-TPR2AAuNC、及びCC1-TPR2A_T332R_D334KAuNC錯体とフルオレセイン標識Hsp90ペプチドとの間の相互作用をモニターして、対応するKd値を決定した。その結果、Hsp90ペプチドを認識するタンパク質の能力はナノクラスター形成の影響を受けないことが示された。相互作用で得られたKd値は、110μM、5μM、及び55nMであり、タンパク質に対して同一のアッセイを用いたときに得られる値に匹敵する(
図16)。金ナノクラスターの形成は結合ドメインを変化させないので、バイオイメージング及びセンシングのツールを開発するうえでこの新たな方法の使用が鍵となることが、こうしたデータから確認された。
【0232】
Hsp90ペプチドの存在を検出するセンサーとしてCC1-CTPR390-AuNC錯体のAuNCの蛍光を使用した。CC1-CTPR390-AuNCを含有する溶液にHsp90ペプチドを添加したとき、AuNC蛍光の増加が観測された。リガンドペプチドは、そのコグネイトペプチド(Hsp90)との相互作用に起因してAuNCの蛍光の用量依存的増加を誘発した。蛍光強度変化の線形反応は、5μから600μMの濃度領域で観測された。
【0233】
温度センサーとしての本発明の金属蛍光NCの使用:
材料及び方法のポイント5(異なる発光色を有するタンパク質安定化銅ナノクラスターの合成)に記載されるように合成された青色発光WHW安定化CuNCを温度センサーとして使用した。
【0234】
タンパク質安定化銅ナノクラスターの蛍光発光強度は、
図17で観測されるように25から65℃の範囲内で温度に対して線形従属性を有していた。
【0235】
イメージング剤としての本発明の金属蛍光NCの使用。
イメージング用途の従来のフルオロフォアとしては、有機色素及び工学操作蛍光タンパク質が挙げられるが、生細胞における長期実験で欠点となりうる限定された光安定性を有する。本発明の金属蛍光NCは、通常使用される蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)、及び色素4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)よりも良好な光安定性を示すことが、本発明から実証される。
図18では、蛍光顕微鏡照明下で光漂白曲線を観測しうるが、WHW安定化AgNCの光安定性はGFP及びDAPIを上回ることが実証される。したがって、本発明の金属蛍光NCは、イメージング剤としてin vitro又はin vivo用途に好適なツールであることが示される。
【0236】
引用文献リスト
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Xie J et al. 2009 J Am Chem Soc 131:888-889
【0237】
完全を期して、本発明の各種態様を以下の番号付き条項に明記する。
【0238】
条項1.以下の配列番号1:
AX1AWX2X3LGX4AYX5X6 (配列番号1)
(式中、
X1は、E、H、C、及びDから選択されるアミノ酸であり、
X2は、Y、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X3は、N、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X4は、N、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X5は、Y、H、L、A、V、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
X6は、K、H、C、D、及びEから選択されるアミノ酸であり、
ただし、
-X1、X2、X3、X4、X5、及びX6の少なくとも2つは、同一であるか又は異なり、且つH、C、D、又はEを表し、
-X2がH、C、D、又はEであるとき、X3はNであり、且つ
-X3がH、C、D、又はEであるとき、X2はYである)
の配列からなるアミノ酸配列又はその塩。
【0239】
条項2.以下:
AX1AWX2NLGNAYYK(配列番号2)、
AX1AWYX3LGNAYYK(配列番号3)、
AEAWX2NLGX4AYYK(配列番号4)、
AEAWYX3LGX4AYYK(配列番号5)、
AEAWYNLGX4AYX5K(配列番号6)、
AX1AWX2NLGX4AYYK(配列番号7)、
AX1AWYX3LGX4AYYK(配列番号8)、
AEAWX2NLGX4AYX5K(配列番号9)、
AEAWYX3LGX4AYX5K(配列番号10)、
AX1AWX2NLGX4AYX5K(配列番号11)、
AX1AWYX3LGX4AYX5K(配列番号12)、及び
AX1AWYX3LGX4AYX5X6(配列番号13)
からなる群から選択される、条項1に記載のアミノ酸配列。
【0240】
条項3.以下の式(I):
Z-(B)n-F-(G)m (I)
(式中、
n及びmは、0又は1であり、
Zは、条項1又は2に記載のアミノ酸配列を表し、ただし、X1がCであるとき、X4は、C、D、E、又はNであり、
Bは、リンカーを表し、
Fは、αヘリックス二次モチーフを有するアミノ酸配列であり、且つ
Gは、配列番号23、配列番号24、及び配列番号25からなる群から選択される配列である)
のペプチド又はその塩。
【0241】
条項4.以下:
AEAWHNLGHAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号27)、
AEAWCNLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号29)、
ACAWYCLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号31)、
ACAWYCLGCAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRS(配列番号33)、及び
ACAWYCLGCAYLCQGDYDEAIEYYQKALELDPR(配列番号35)
からなる群から選択される、条項3に記載のペプチド。
【0242】
条項5.以下の一般式(II):
WnZpWq (II)
(式中、
n及びqは、0から10の値を有する整数を表し、且つpは、1から10の値を有する整数を表し、ただし、n+p+qは、2以上であり、
Wは、配列番号37の配列AEAWYNLGNAYYKQGDYDEAIEYYQKALELDPRSを含むペプチドであり、且つ
Zは、条項1若しくは2に記載のアミノ酸配列又は条項3若しくは4に記載のペプチドを含むアミノ酸配列である)
のタンパク質又はその塩。
【0243】
条項6.配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、及び配列番号67からなる群から選択される、条項5に記載のタンパク質。
【0244】
条項7.ペプチド、ナノ粒子、核酸、無機分子、有機分子、脂質、単糖、オリゴ糖、酵素、抗体、抗原、タグペプチド、MRIコントラスト剤、PETコントラスト剤、配位金属コントラスト剤、及びそれらのいずれかの組合せからなる群から選択されるエレメントに結合される、条項5又は6に記載のタンパク質。
【0245】
条項8.条項1若しくは2に記載のアミノ酸配列又は請求項3若しくは4に記載のペプチド又は請求項5から7のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする核酸配列。
【0246】
条項9.金属ナノクラスター足場としての条項1若しくは2に記載のアミノ酸配列又は条項3若しくは4に記載のペプチド又は条項5から7のいずれか一つに記載のタンパク質の使用。
【0247】
条項10.条項1若しくは2に記載のアミノ酸配列又は条項3若しくは4に記載のペプチド又は条項5から7のいずれか一つに記載のタンパク質を含む金属ナノクラスター。
【0248】
条項11.銅、金、銀、ニッケル、亜鉛、チタン、クロム、鉄、コバルト、パラジウム、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、又はそれらの組合せを含む、条項10に記載の金属ナノクラスター。
【0249】
条項12.以下:
a)条項5から7のいずれか一つに記載のタンパク質と金属含有化合物とを混合する工程と、
b)混合物を還元反応に付す工程と、
を含む、条項10又は11に記載の金属ナノクラスターの作製プロセス。
【0250】
条項13.金属含有化合物が金属塩であり、且つ還元が金属塩のモル濃度を基準にしてモル過剰の還元剤を添加することにより実施される、条項12に記載のプロセス。
【0251】
条項14.イメージング剤としての、薬剤送達担体としての、代謝干渉剤としての、触媒としての、検体としての、結晶学的データセットの位相調整用としての、細胞標識剤としての、特異的タンパク質標識剤としての、バイオセンサーとしての、温度センサーとしての、光増感剤としての、又は光電子デバイスの製造用としての、条項10又は11に記載の金属ナノクラスターの使用。
【0252】
条項15.条項1若しくは2に記載のアミノ酸配列、条項3若しくは4に記載のペプチド、条項5から7のいずれか一つに記載のタンパク質、条項8に記載の核酸配列、又は条項10若しくは11に記載の金属ナノクラスターを含むキット。
【配列表】