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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20230124BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20230124BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230124BHJP
【FI】
B62D21/15 B
B62D25/20 F
B60K1/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045093
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146749
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 峻志
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-112975(JP,A)
【文献】国際公開第2020/070935(WO,A1)
【文献】特開2017-226353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0406982(US,A1)
【文献】特開2013-60160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のそれぞれの側方下部に配置されており、車体前後方向に延びている一対のロッカと、
一対の前記ロッカの間に配置されている電源と、
一対の前記ロッカのそれぞれの下方に位置している中空の一対のエネルギ吸収メンバと、
前記エネルギ吸収メンバの上板を貫通しており、上端が前記ロッカに当接しているとともに下端が前記エネルギ吸収メンバの下板に当接しており、前記上板に溶接されているカラーと、
を備えており、
前記エネルギ吸収メンバは、
前記上板と前記下板を連結する第1縦板と第2縦板と第3縦板と、
筋交と、
を備えており、
前記第1縦板と前記第2縦板と前記第3縦板がこの順序で車幅方向に並んでおり、
前記カラーが前記第1縦板と前記第2縦板の間を通過しており、
前記筋交は、前記第2縦板と前記上板が交差する第1内角と前記第3縦板と前記下板が交差する第2内角とを連結しており、
前記上板の厚みと前記カラーの厚みの比が0.5以上2.0以下である、
車体下部構造。
【請求項2】
前記上板は、前記カラーと前記上板を接合している溶接ビードの下における厚み(ビード下厚み)が、前記溶接ビードから離れた部位の厚みよりも厚く、
前記ビード下厚みと前記カラーの厚みの比が0.5以上2.0以下である、請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記電源が一対の前記エネルギ吸収メンバのそれぞれに支持されている、請求項1または2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記ロッカと前記エネルギ吸収メンバは、前記カラーを通過するボルトで共締めされている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車体下部構造に関する。特に、一対のロッカの間に電源が配置されている車体の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車では、走行用のモータに電力を供給する電源が一対のロッカの間に配置されている場合がある。なお、電源は、バッテリ、燃料電池などである。一対のロッカは、車体のそれぞれの側方下部にて車体の前後方向に延びる一対のフレームである。ロッカは、サイドシルと呼ばれることもある。
【0003】
側方衝突の衝撃から電源を保護するため、衝撃のエネルギを吸収する部材(エネルギ吸収メンバ)がロッカに沿って配置される場合がある。特許文献1に、エネルギ吸収メンバの例が開示されている。特許文献1に記載されたエネルギ吸収メンバは、車体の前後方向に延びており、ロッカの下に接している。エネルギを吸収する機能と強度を両立させるため、エネルギ吸収メンバは中空であり、内部に補強板を有している。以下では、説明を簡略化するため、エネルギ吸収メンバをEAメンバ(Energy Absorbing メンバ)と称することにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-75939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロッカとEAメンバの間に隙間を確保するため、EAメンバの上板を貫通し、上端がロッカに当接するとともに下端がエネルギ吸収メンバの下板に当接するカラーを採用することがある。カラーは上板に溶接される。そのような構造に加えて、EAメンバの強度を高めるためにEAメンバの内部に補強板を設けたい。カラーと上板の溶接個所の近くに補強板が集中すると、溶接時の熱の多くが補強板へ拡散してしまい、カラーを上板にしっかりと溶接できなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する車体下部構造では、EAメンバは、中空の梁であり、上板と下板を連結する第1/第2/第3縦板を備える。第1/第2/第3縦板は、この順序で車幅方向に沿って並んでいる。カラーは、第1縦板と第2縦板の間を通過している。EAメンバは、筋交も備える。筋交は、第2縦板と上板が交差する第1内角と第3縦板と下板が交差する第2内角とを連結している。筋交は、EAメンバの強度を高める。一方、筋交の上端はカラーの近傍の第1内角(上板と第2縦板が交差する角)に連結している。それゆえ、カラーと上板を溶接するときの熱が筋交に拡散し、カラーと上板の溶接強度が十分とはいえない可能性がある。そこで、カラーを挟んで筋交とは反対側に位置する第1縦板の厚みと上板の厚みの比を0.5以上2.0以下に設定する。
【0007】
交差する2枚の板を溶接する場合、2枚の板の厚みの比が0.5以上2.0以下であると、溶接の熱が2枚の板に均等に拡散し、均一な溶接が実現する。すなわち、高い溶接強度が得られる。本明細書が開示する車体下部構造では、第1縦板と第2縦板の間をカラーが通過しており、第2縦板の側に筋交を設ける。第2縦板の側では上板とカラーの溶接強度が低下するおそれがあるが、第1縦板の側で上板とカラーを高い強度で溶接することができるので、第2縦板側の溶接強度の低下を補うことができる。結果として、カラーと上板の間に十分な溶接強度が保証される。
【0008】
カラーと溶接される部位の上板の厚みと第1縦板の厚みとの比が上記したように0.5以上2.0以下であればよい。溶接部位から離れた箇所における上板の厚みは薄くてもよい。溶接部位から離れた箇所の上板の厚みを薄くすることで、EAメンバを軽量化できる。特に、車幅方向でカラーよりも車幅方向の外側で溶接部位から離れた箇所の上板の厚みを薄くするとよい。
【0009】
筋交は、電源が一対のEAメンバのそれぞれに支持されている構造のときに、EAメンバの変形を防ぐのに有効である。ロッカとEAメンバは、カラーを通過するボルトで共締めされていてもよい。さらには、ロッカの内部に補強材としてバルクが配置されていてもよい。その場合、ロッカとともにバルクもボルトで共締されているとよい。
【0010】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車体の斜視図である。
図2図1の平面IIでカットした車体の断面図である。
図3図2の破線IIIで囲った範囲の拡大図である。
図4】EAメンバの上板のカラー周辺の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して実施例の車体下部構造3を説明する。図1に、車体2の斜視図を示す。なお、図1の座標系の「Left」は、車両の後方から前方をみたときの「左」を示している。以後の図でも、座標系の「Left」の意味は同じである。
【0013】
車体2は一対のロッカ10を備えている。一対のロッカ10のそれぞれは、車体2の車幅方向のそれぞれの側方下部に配置されている。ロッカ10は細長い梁であり、車両の前後方向に延びている。それぞれのロッカ10の長手方向の概ね中央に、センターピラー51の下端が接続されている。一対のロッカ10、および、センターピラー51は、車体の強度を確保するフレームの一種である。ロッカ10は金属板(典型的には鋼板)のプレス加工で作られる。
【0014】
一対のロッカ10の間に電池パック40とフロアパネル50が配置されている。電池パック40には多数の電池セルが含まれている。多数の電池セルは直列に接続されており、高電圧の出力が可能である。電池パック40(電池セル)は、不図示の走行用モータに電力を供給する。
【0015】
フロアパネル50はキャビンの床に相当する。フロアパネル50の車幅方向の両端のそれぞれは一対のロッカ10のそれぞれに固定される。電池パック40は、フロアパネル50の下に配置されている。詳しくは後述するが、ロッカ10に沿ってエネルギ吸収メンバ(図1では不図示)が配置されており、電池パック40は、エネルギ吸収メンバを介して一対のロッカ10に支持される。電池パック40は、エネルギ吸収メンバを介してロッカ10に支持されていると同時にフロアパネル50を介してロッカ10に支持されていてもよい。
【0016】
エネルギ吸収メンバは、電池パック40の車幅方向の両側に配置される。先に述べたように、説明の便宜上、エネルギ吸収メンバをEAメンバ(Energy Absorbing メンバ)と称する。
【0017】
図1の平面IIで車体2をカットした断面を図2に示す。図2は車体2の左側における車体下部構造3を示している。先に述べたように、電池パック40は、車両の右下と左下のそれぞれで、EAメンバ20(エネルギ吸収メンバ20)を介してロッカ10に固定されている。以下では、車体2の左側の下部構造を説明する。車体2は左右対称であり、車体2の右側の下部構造も図2と同じである。すなわち、実施例の車体下部構造3は、一対のロッカ10と一対のEAメンバ20を備えており、それぞれのEAメンバ20は、対応するロッカ10に沿って配置される。
【0018】
電池パック40は、ロアカバー41、アッパカバー42、複数の電池セル43を含む。ロアカバー41とアッパカバー42でコンテナが形成されており、その中に複数の電池セル43が収容されている。ロアカバー41とアッパカバー42のそれぞれは、フランジを備えており、フランジ同士が接合されて、ロアカバー41とアッパカバー42は一つのコンテナを構成する。
【0019】
ロッカ10は、ロッカインナパネル11とロッカアウタパネル12で構成される。ロッカインナパネル11は、横を向いている角張ったU字形状(溝形状)をなしているとともに、下フランジ11aと上フランジ11bを有している。下フランジ11aはロッカインナパネル11の横向きU字の下側の縁から下方へ延びており、上フランジ11bは、ロッカインナパネル11の横向きU字の上側の縁から上方へ延びている。ロッカアウタパネル12もロッカインナパネル11と同じ形状を有しており、ロッカインナパネル11の下フランジ11aと上フランジ11bのそれぞれと対向する下フランジ12aと上フランジ12bを有している。下フランジ11a、12aが溶接され、上フランジ11b、12bが溶接され、中空の角形の梁であるロッカ10が完成する。図2では理解を助けるためにロッカアウタパネル12はロッカインナパネル11から離して描いてある。
【0020】
ロッカ10の内部にはバルク60が配置されている。バルク60はロッカ10の強度を高める補強材である。バルク60は、ロッカインナパネル11とロッカアウタパネル12を接合するのに先立ってロッカインナパネル11の内側に取り付けられる。バルク60は、溶接にて、あるいは、ボルト(不図示)にて、ロッカインナパネル11に固定される。バルク60の内側にナット32が固定されている。ナット32は溶接にてロッカインナパネル11に固定される。
【0021】
EAメンバ20は、第1EAメンバ21と第2EAメンバ22で構成される。第1EAメンバ21は、ロッカ10の下に配置される。第2EAメンバ22は、第1EAメンバ21と電池パック40の間に配置される。第1EAメンバ21はロッカ10に固定される。第2EAメンバ22は、第1EAメンバ21と連結されるとともに、電池パック40にも連結される。
【0022】
EAメンバ20(第1EAメンバ21と第2EAメンバ22)は、中空の角形の梁である。EAメンバ20は、ロッカ10に沿って車両の前後方向に延びている。EAメンバ20は、車両が側方衝突したときのエネルギを吸収し、電池パック40を保護する。EAメンバ20は、衝突の衝撃によって車幅方向につぶれることで衝突エネルギを吸収する。ロッカ10も衝突エネルギの吸収に寄与するが、ロッカ10だけでは衝突エネルギを十分に吸収しきれない。そこで、中空のEAメンバ20をロッカ10に沿って配置する。
【0023】
電池パック40の下面から車幅方向の外側へ向けて支持板44が延びている。支持板44も、ボルト31とナット32により、第1EAメンバ21と共締めされ、相互に固定される。電池パック40から延びている支持板44を第1EAメンバ21に固定することで、電池パック40がEAメンバ20に強固に固定される。
【0024】
第1EAメンバ21と第2EAメンバ22の連結構造について説明する。第1EAメンバ21の上板23の端から車両中心に向けてフランジ26が延びている。第2EAメンバ22は、ボルト33とナット34により、第1EAメンバ21のフランジ26に固定される。電池パック40から延びている支持板44も、ボルト33で第2EAメンバ22に固定される。第2EAメンバ22は、第1EAメンバ21のフランジ26と、電池パック40の支持板44に挟まれて固定される。第2EAメンバ22は、電池パック40のロアカバー41の側面に接着される。電池パック40と第2EAメンバ22は、接着剤とボルト33によって強固に連結される。
【0025】
EAメンバ20は、ロッカ10に固定される第1EAメンバ21と、電池パック40に接着される第2EAメンバ22に分割されている。第2EAメンバ22は第1EAメンバ21から着脱可能である。EAメンバ20は、第1EAメンバ21と第2EAメンバ22の組み合わせを調整することで、異なる車幅の複数の自動車に対応可能である。
【0026】
EAメンバ20の強度は、衝突エネルギを効果的に吸収するようにシミュレーションなどによって予め決められる。第1EAメンバ21の内部空間は、上板23と下板24を連結する複数の縦板25によって幾つかのセル空間CSに区画されている。幾つかのセル空間には、矩形のセル空間を対角方向に延びる筋交27が設けられている。縦板25と筋交27の数と厚みを調整することで、第1EAメンバ21の強度を調整することができる。EAメンバ20の強度は、少なくとも電池パック40の強度よりも低く設定されている。しかし、EAメンバ20は、電池パック40を支持するのに十分な強度を備えている。
【0027】
筋交27を設けることによる利点を説明する。図2に示したように、電池パック40は、EAメンバ20に支持されており、EAメンバ20はボルト31でロッカ10に固定されている。EAメンバ20の電池パック40に近い側には、電池パック40の重さが加わる。それゆえ、第1EAメンバ21には、電池パック40とボルト31の間で上下方向のせん断力が加わる。第1EAメンバ21は、このせん断力により変形する。筋交27は、第1EAメンバ21の変形を抑える。
【0028】
なお、せん断力は、電池パック40とボルト31の間で大きく、電池パック40からボルト31よりも遠い側では小さい。それゆえ、電池パック40からボルト31より遠い側のセル空間CSには筋交が設けられていない。
【0029】
先に述べたように、第1EAメンバ21はロッカ10の下方に配置されるが、ロッカ10は、底板13から下方に延びる下フランジ11a(12a)を備えている。第1EAメンバ21は、下フランジ11a(12a)との干渉を避けて配置されなければならない。第1EAメンバ21を、下フランジ11a(12a)の内側(車幅方向の車両中心側)の部分と外側の部分に分けるとEAメンバの構造が複雑になってしまう。実施例の車体下部構造3では、第1EAメンバ21とロッカ10の間にカラー30を配置し、第1EAメンバ21の下フランジ11a(12a)との干渉を回避する。第1EAメンバ21を下フランジ11a(12a)よりも下方に配置することで、シンプルな形状であり、かつ、下フランジ11a(12a)よりも車幅方向の外側へ延びる第1EAメンバ21を実現することが可能となる。
【0030】
カラー30は、金属製の円筒である。カラー30は、別言すれば、ロッカ10と第1EAメンバ21との間に隙間を確保するためのスペーサである。図2に示すように、カラー30の第1EAメンバ21よりも上の高さh1は、下フランジ11a(12a)の高さh2よりも大きい。カラー30によって、ロッカ10の底板13と第1EAメンバ21の上板23との間には、距離h1の隙間が確保される。下フランジ11a(12a)の高さはh2(<h1)なので、下フランジ11a(12a)は、第1EAメンバ21と干渉しない。それゆえ、第1EAメンバ21として単純な角形の梁形状を採用することができ、製造コストを抑えることができる。
【0031】
カラー30の周辺の構造を説明する。カラー30は、第1EAメンバ21の上板23に設けられた孔を貫通している。カラー30の上端はロッカ10の底板13の下面に当接している。カラー30の下端は下板24の上面に当接している。カラー30は上板23に溶接されている。カラー30と上板23が交差する箇所に、溶接ビード39が形成されている。
【0032】
第1EAメンバ21とロッカ10とバルク60は、カラー30の内側を通るボルト31とナット32で共締めされ、相互に固定される。
【0033】
走行中に電池パック40が上下に振動すると、カラー30も上下に振動し、ロッカ10に上下方向の振動荷重が加わる。カラー30とナット32の間には底板13とバルク60が挟まれているので、カラー30の上下方向の振動に対するロッカ10の撓みは小さい。
【0034】
カラー周辺の構造についてさらに詳しく説明する。図3に、図2の破線矩形IIIの範囲の拡大図を示す。先に述べたように、第1EAメンバ21は中空の角形の梁であり、内部に幾つかの縦板25を有している。縦板25は、第1EAメンバ21の上板23と下板24に連結している。縦板25は、第1EAメンバ21の中を車両長手方向に沿って延びている。複数の縦板25によって第1EAメンバ21の内部空間は複数のセル空間CSに区画されている。セル空間CSも矩形であり、幾つかのセル空間には、矩形の対角方向に延びる筋交27が備えられている。筋交27も、第1EAメンバ21の中を車両長手方向に沿って延びている。
【0035】
今、カラー30の図中の右側に隣り合う縦板25を第1縦板25aと称し、カラー30の図中の左側に隣り合う縦板25を第2縦板25bと称する。さらに、第2縦板25bの図中の左側に隣り合う縦板25を第3縦板25cと称する。別言すると、第1縦板25a、第2縦板25b、および、第3縦板25cは、車幅方向の外側から車両中心に向かってこの順序で並んでいる。第2縦板25bと第3縦板25cの間のセル空間CSに設けられた筋交27を筋交27aと称する。
【0036】
カラー30は、第1縦板25aと第2縦板25bの間のセル空間CSを通過している。第2縦板25bと第3縦板25cの間には筋交27aが設けられている。筋交い27aは、第2縦板25bと上板23が交差する第1内角28aと、第3縦板25cと下板24が交差する内角28bとを連結している。
【0037】
先に述べたように、カラー30と上板23は溶接されている。上板23の上でカラー30の周囲には溶接ビード39が形成されている。上板23の溶接ビード39の下における厚みT2は、カラー30の厚みT1(カラー30の筒の厚みT1)とほぼ等しいか、厚みT1よりもやや薄い。上板23の厚みT2とカラー30の厚みT1の比は、0.5以上2.0以下であればよい。
【0038】
交差する2枚の板(上板23とカラー30)を溶接する場合、2枚の板の厚みが概ね等しいことが望ましい。厚みが大きく異なると、厚みの大きい板では溶接の熱が拡散し、厚みの薄い板に比較して板の温度上昇が遅くなる。そのため、溶接の際、薄い板の温度は厚みの大きい板の温度よりも高くなる。そのため、厚みの大きい板で溶接材が溶融する前に厚みの薄い板が溶けてしまうおそれがある。厚みの薄い板が溶けてしまうと溶接個所の強度が下がってしまう。厚みの薄い板が溶ける前に溶接を終えると、厚みの大きい板は十分に溶融せず、やはり溶接個所の強度が下がってしまう。交差する2枚の板の厚みの比は、0.5以上2.0以下であると、2枚の板が均等に熱せられ、最も良い溶接強度が得られる。
【0039】
第2縦板25bと上板23が交差する第1内角28aには筋交27aが連結されている。カラー30と上板23を溶接するときの熱は、筋交27aにも拡散する。カラー30の第2縦板25bの側ではカラー30と上板23を適切に溶接することができないおそれがある。しかしながら、カラー30の第1縦板25aの側では筋交がないのでカラー30と上板23を強固に溶接することができる。
【0040】
なお、溶接ビード39の下では、第1縦板25aと第2縦板25bが上板23に連結している。溶接の熱は、第1縦板25aと第2縦板25bにも拡散する。それゆえ、上板23の厚みT2は、カラー30の厚みT1と同じかそれ以下であることが望ましい。すなわち、上板23の厚みT2は、カラー30の厚みT1の0.5倍以上1.0倍(0.5T1≦T2≦T1)であるとよい。
【0041】
図4に、第1EAメンバ21の上板23のカラー30周辺の平面図を示す。カラー30を溶接ビード39が囲っている。図4では理解を助けるために溶接ビード39をグレーで示してある。溶接ビード39がカラー30と上板23を接合する。先に述べたように、上板23と第2縦板25bが交差する内角28a(図3参照)には筋交27aが連結されているため、第2縦板25bの周辺では溶接強度が十分でない可能性がある。図4において薄いグレーで示した領域39bが、溶接強度が十分でない可能がある領域を示している。一方、第2縦板25bから離れた箇所では、カラー30と上板23が強固に溶接される。図4において濃いグレーで示した領域39aが、強固に溶接される領域を示している。カラー30の半周以上が上板23と強固に溶接されるので、カラー30と上板23の間に十分な溶接強度が確保できる。
【0042】
上板23の厚みについて説明する。先に述べたように、溶接ビード39の下では上板23の厚みはT2であり、厚みT2はカラーの厚みT1の1/2以上、2倍以下である。一方、溶接ビード39から離れた場所における上板23の厚みT3はビード下の厚みT2よりも薄い。なお、上板23の厚みは車両の前後方向では一定であり、車幅方向で2種類の厚み(厚みT2と厚みT3)を有する。すなわち、車幅方向で溶接ビード39から離れた位置での上板23の厚みT3が厚みT2よりも薄い。溶接ビード39の下では上板23の厚みT2とカラー30の厚みT1との比率を0.5以上2.0以下とする。一方、車幅方向で溶接ビード39よりも離れた場所では上板23の厚みT3を厚みT2よりも薄くする。そのような構成により、カラー30と上板23とを強固に溶接することができるとともに、第1EAメンバ21を軽量化することができる。
【0043】
同様に、下板24についても、カラー30の周囲における厚みT2は上板の厚みT2と同じであり、車幅方向でカラー30から離れた場所における厚みT3は厚みT2よりも薄い。下板24はカラー30の端とボルト31で締め付けられる。カラー30の周囲で下板24の厚みT2を大きく、カラー30から離れた場所では下板24の厚みT3を薄くする。この構造により、ボルト31で締め付けられる領域の強度を高くしつつ、第1EAメンバ21を軽量化することができる。
【0044】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。EAメンバ20(第1EAメンバ21、第2EAメンバ22)は、車両前後方向に交差する平面でカットした断面形状が、車両前後方向の位置によらず同じである。EAメンバ20(第1EAメンバ21、第2EAメンバ22)は、金属(典型的にはアルミニウム)の押出成形で作られる。
【0045】
1個のバルク60は1本のボルト31でロッカ10に固定される。1個のバルク60は複数のボルトでロッカ10に固定されてもよい。1個のバルク60を固定する複数のボルトのそれぞれにカラー30が挿通されており、それぞれのボルトがカラー30を介してEAメンバ20をロッカ10に固定する構造であってもよい。1個のバルク60に対して1個の支持板44が複数のボルトで共締めされていてもよい。
【0046】
電池パック40が電源の一例である。電池パック40は、複数の電池セルを収容している。一対のロッカ10の間に配置される電源は、電池パックに限られず、燃料電池、あるいはキャパシタを収容しているデバイスであってもよい。
【0047】
EAメンバの上板23は、ボルト31に隣り合う一対の縦板(第1縦板25aと第2縦板25b)の間における厚みが一対の縦板の外側における厚みよりも厚いとよい。ボルト31から離れた位置における上板23の厚みを薄くすることで、溶接時に上板23に拡散する熱量を抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
2:車体 3、103:車体下部構造 10:ロッカ 11:ロッカインナパネル 11a、12a:下フランジ 11b、12b:上フランジ 12:ロッカアウタパネル 13:底板 20:エネルギ吸収メンバ(EAメンバ) 21、21:第1EAメンバ 22:第2EAメンバ 23:上板 24:下板 25、25a-25c:縦板 27、27a:筋交 30:カラー 31、33:ボルト 32、34:ナット 39:溶接ビード 40:電池パック 41:ロアカバー 42:アッパカバー 43:電池セル 44:支持板(ブラケット) 45:クロスメンバ 50:フロアパネル 51:センターピラー
図1
図2
図3
図4