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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20230124BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R19/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020161336
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054256
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】品川 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】南 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】吉原 智朗
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和輝
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207380115(CN,U)
【文献】特開2012-225664(JP,A)
【文献】特開2009-168644(JP,A)
【文献】特開2019-74341(JP,A)
【文献】特開2000-97972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-17/22
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流が流れる導線の周囲を囲むように配置可能な磁性コアと、
前記磁性コアの内部の磁束を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの出力を増幅し、前記磁気センサの出力に応じた電流を出力するアンプと、
前記磁性コアに巻かれて配置され、前記アンプが出力する電流を前記磁束を打ち消す方向に流す帰還コイルと、
前記帰還コイルとグランドとの間に配置されるシャント抵抗と、
前記シャント抵抗の両端の電圧を増幅する差動増幅器と、
前記差動増幅器の基準電位を出力するマイナス出力端子と、
前記マイナス出力端子と前記グランドとの間に配置される制限抵抗と、
を備える、電流センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センサにおいて、
前記電流センサが検出した電流を測定する測定装置のグランド電圧端子に接続されるグランド電圧端子をさらに備える、電流センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の電流センサにおいて、
前記測定装置は、測定回路と、電源回路とを備え、
前記マイナス出力端子は、前記測定回路のマイナス側の入力に接続されるマイナス入力端子と接続され、
前記測定装置の前記グランド電圧端子は、前記電源回路のグランドに接続されている、
電流センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の電流センサにおいて、
前記制限抵抗の抵抗値は、前記マイナス出力端子と前記マイナス入力端子とを接続する配線の配線抵抗である第1配線抵抗の抵抗値より大きく、且つ、前記電流センサの前記グランド電圧端子と前記測定装置の前記グランド電圧端子とを接続する配線の配線抵抗である第2配線抵抗の抵抗値より大きい、電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼロフラックス方式の電流センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ゼロフラックス方式の電流センサは、被測定電流の周囲に配置された磁性コアに発生する磁束を打ち消すように、磁性コアに巻かれた帰還コイルに電流を流す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2006/129389号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゼロフラックス方式の電流センサによって測定する電流の精度を向上させることが求められている。
【0006】
そこで、本開示は、ゼロフラックス方式によって測定する電流の精度を向上させることが可能な電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る電流センサは、被測定電流が流れる導線の周囲を囲むように配置可能な磁性コアと、前記磁性コアの内部の磁束を検出する磁気センサと、前記磁気センサの出力を増幅し、前記磁気センサの出力に応じた電流を出力するアンプと、前記磁性コアに巻かれて配置され、前記アンプが出力する電流を前記磁束を打ち消す方向に流す帰還コイルと、前記帰還コイルとグランドとの間に配置されるシャント抵抗と、前記シャント抵抗の両端の電圧を増幅する差動増幅器と、前記差動増幅器の基準電位を出力するマイナス出力端子と、前記マイナス出力端子と前記グランドとの間に配置される制限抵抗と、を備える。このような電流センサによれば、ゼロフラックス方式によって測定する電流の精度を向上させることが可能である。
【0008】
一実施形態に係る電流センサにおいて、前記電流センサが検出した電流を測定する測定装置のグランド電圧端子に接続されるグランド電圧端子をさらに備えていてもよい。これにより、電流センサのグランドと測定装置のグランドとを接続することができる。
【0009】
一実施形態に係る電流センサにおいて、前記測定装置は、測定回路と、電源回路とを備え、前記マイナス出力端子は、前記測定回路のマイナス側の入力に接続されるマイナス入力端子と接続され、前記測定装置の前記グランド電圧端子は、前記電源回路のグランドに接続されていてもよい。
【0010】
一実施形態に係る電流センサにおいて、前記制限抵抗の抵抗値は、前記マイナス出力端子と前記マイナス入力端子とを接続する配線の配線抵抗である第1配線抵抗の抵抗値より大きく、且つ、前記電流センサの前記グランド電圧端子と前記測定装置の前記グランド電圧端子とを接続する配線の配線抵抗である第2配線抵抗の抵抗値より大きくてよい。このように、制限抵抗の抵抗値が第1配線抵抗の抵抗値及び第2配線抵抗の抵抗値より大きいことにより、電流センサのマイナス出力端子から測定装置のマイナス入力端子へ流れる電流を低減することができ、マイナス出力端子とマイナス入力端子との間の電位差を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ゼロフラックス方式によって測定する電流の精度を向上させることが可能な電流センサを提供するこができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る電流センサが測定装置と接続されている様子を示す概略構成図である。
図2】制限抵抗と測定誤差との関係の一例を示す表である。
図3】制限抵抗と測定誤差との関係の一例を示すグラフである。
図4】比較例に係る電流センサが測定装置と接続されている様子を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電流センサ100が測定装置200と接続されている様子を示す概略構成図である。図1を参照して、電流センサ100の構成及び機能の概略について説明する。
【0015】
電流センサ100は、ゼロフラックス方式の電流センサである。電流センサ100は、導線300に流れる被測定電流を非接触で検出することが可能である。電流センサ100は、測定装置200と電気的に接続される。
【0016】
測定装置200は、電流センサ100が検出した電流を測定する測定装置である。測定装置200は、測定回路210と、電源回路220とを備える。
【0017】
測定回路210は、電流センサ100が検出した電流を測定する回路である。電源回路220は、電流センサ100に電源を供給する回路である。
【0018】
電流センサ100は、測定装置200と電気的に接続するための端子として、プラス出力端子100Aと、マイナス出力端子100Bと、プラス電圧入力端子100Cと、グランド電圧端子100Dと、マイナス電圧入力端子100Eとを備える。
【0019】
プラス出力端子100Aは、後述する差動増幅器110の出力信号を出力する端子である。マイナス出力端子100Bは、後述する差動増幅器110の基準電位を出力する端子である。プラス電圧入力端子100Cは、測定装置200の電源回路220から、プラス電圧の供給を受ける端子である。グランド電圧端子100Dは、測定装置200の電源回路220のグランドと接続される端子である。マイナス電圧入力端子100Eは、測定装置200の電源回路220から、マイナス電圧の供給を受ける端子である。
【0020】
測定装置200は、電流センサ100と電気的に接続するための端子として、プラス入力端子200Aと、マイナス入力端子200Bと、プラス電圧出力端子200Cと、グランド電圧端子200Dと、マイナス電圧出力端子200Eとを備える。
【0021】
プラス入力端子200Aは、電流センサ100の差動増幅器110が出力する出力信号の入力を受け付ける端子である。プラス入力端子200Aは、測定回路210のプラス側の入力に接続されている。マイナス入力端子200Bは、電流センサ100の差動増幅器110から、差動増幅器110の基準電位の入力を受け付ける端子である。マイナス入力端子200Bは、測定回路210のマイナス側の入力に接続されている。
【0022】
プラス電圧出力端子200Cは、電源回路220が生成するプラス電圧を電流センサ100に供給するための端子である。グランド電圧端子200Dは、電源回路220のグランドと接続されている端子である。マイナス電圧出力端子200Eは、電源回路220が生成するマイナス電圧を電流センサ100に供給するための端子である。
【0023】
図1に示すように、マイナス入力端子200Bは、測定装置200の内部において、グランド電圧端子200Dとショートしている。
【0024】
電流センサ100のプラス出力端子100Aは、測定装置200のプラス入力端子200Aと、ケーブルなどの配線によって接続される。電流センサ100のマイナス出力端子100Bは、測定装置200のマイナス入力端子200Bと、ケーブルなどの配線によって接続される。電流センサ100のプラス電圧入力端子100Cは、測定装置200のプラス電圧出力端子200Cと、ケーブルなどの配線によって接続される。電流センサ100のグランド電圧端子100Dは、測定装置200のグランド電圧端子200Dと、ケーブルなどの配線によって接続される。電流センサ100のマイナス電圧入力端子100Eは、測定装置200のマイナス電圧出力端子200Eと、ケーブルなどの配線によって接続される。
【0025】
電流センサ100は、磁性コア101と、磁気センサ102と、アンプ103と、帰還コイル104と、シャント抵抗105と、差動増幅器110と、制限抵抗116とを備える。
【0026】
磁性コア101は、被測定電流が流れる導線300の周囲を囲むように配置可能である。導線300に被測定電流が流れると、被測定電流の周囲に磁界が発生する。被測定電流の周囲に磁界が発生すると、磁性コア101の内部に磁束が発生する。
【0027】
磁気センサ102は、磁性コア101と磁気結合可能な位置に配置されている。磁気センサ102は、磁性コア101の内部に発生した磁束を検出する。磁気センサ102は、検出した磁束に応じた信号を出力する。磁気センサ102は、検出した磁束に応じた信号を、電圧として出力してもよいし電流として出力してもよい。磁気センサ102は、任意のタイプの磁気センサであってよい。磁気センサ102は、例えば、フラックスゲート素子、ホール素子などであってよい。
【0028】
アンプ103は、磁気センサ102の出力する信号を増幅し、磁気センサ102の出力に応じた電流を出力する。アンプ103が出力する電流は、帰還コイル104を流れる。アンプ103は、プラス電源31及びマイナス電源32に接続されている。プラス電源31は、プラス電圧入力端子100Cに接続されている。マイナス電源32は、マイナス電圧入力端子100Eに接続されている。
【0029】
アンプ103が出力する電流は、プラス電源31又はマイナス電源32から供給される。アンプ103が出力する電流が、プラス電源31とマイナス電源32のいずれから供給されるかは、アンプ103が出力する電流の向きによる。図1は、プラス電源31からアンプ103に電流Iが供給され、アンプ103が電流Iを出力している場合を示している。
【0030】
帰還コイル104は、磁性コア101に巻かれて配置されている。帰還コイル104に電流が流れると、帰還コイル104は、帰還コイル104の内部に磁界を発生させる。その結果、帰還コイル104は、磁性コア101の内部に磁束を発生させる。帰還コイル104は、被測定電流に応じて磁性コア101が磁性コア101の内部に発生させた磁束を打ち消す方向に、アンプ103が出力する電流を流す。すなわち、帰還コイル104は、磁性コア101が被測定電流に応じて発生させた磁束を打ち消す向きに巻かれている。
【0031】
帰還コイル104が発生する磁界によって磁性コア101が被測定電流に応じて発生させた磁束が打ち消されることにより、磁性コア101の内部の磁束は、ほぼゼロになる。
【0032】
シャント抵抗105は、帰還コイル104とグランド33との間に配置されている。グランド33は、電流センサ100のグランドである。シャント抵抗105の一端は、帰還コイル104と電気的に接続している。また、シャント抵抗105の他端は、グランド33と電気的に接続している。
【0033】
アンプ103が出力して帰還コイル104及びシャント抵抗105を流れた電流は、グランド33に流れ込む。
【0034】
帰還コイル104に流れる電流は、被測定電流に応じて磁性コア101が磁性コア101の内部に発生させた磁束を打ち消す電流であるため、被測定電流に比例している。したがって、シャント抵抗105に流れる電流は、被測定電流に比例している。シャント抵抗105の両端の電圧は、シャント抵抗105に流れる電流に比例するため、シャント抵抗105の両端の電圧は、被測定電流に比例している。
【0035】
そうすると、シャント抵抗105の両端の電圧を測定することで、導線300に流れる被測定電流の値を測定することができる。このような構成であることから、電流センサ100は、ゼロフラックス方式の電流センサである。ゼロフラックス方式である電流センサ100は、被測定電流が直流と交流のいずれであっても、被測定電流の値を被測定電流に接触することなく高精度で測定することができる。
【0036】
差動増幅器110は、シャント抵抗105の両端の電圧の電圧差を増幅して出力する。差動増幅器110は、入力端子110Aと、入力端子110Bと、出力端子110Cと、基準端子110Dとを備える。
【0037】
入力端子110Aは、シャント抵抗105の一端に電気的に接続されている。入力端子110Bは、シャント抵抗105の他端に電気的に接続されている。出力端子110Cは、プラス出力端子100Aに電気的に接続されている。基準端子110Dは、制限抵抗116を介してグランド33に電気的に接続されている。また、制限抵抗116は、マイナス出力端子100Bに電気的に接続されている。
【0038】
差動増幅器110は、入力端子110Aと入力端子110Bとの間の電圧差を増幅し、増幅した信号を出力端子110Cに出力する。基準端子110Dは、差動増幅器110の基準電位を出力する。すなわち、出力端子110Cから出力される差動増幅器110の出力信号は、基準端子110Dにおける基準電位を基準とした信号である。
【0039】
なお、入力端子110A、入力端子110B、出力端子110C及び基準端子110Dは、「端子」との名称がついているが、端子のような構造を有さない単なる配線であってもよい。
【0040】
差動増幅器110は、第1抵抗111と、第2抵抗112と、第3抵抗113と、第4抵抗114と、オペアンプ115とを備える。
【0041】
第1抵抗111の一端は、入力端子110Aに電気的に接続されている。第1抵抗111の他端は、オペアンプ115の反転入力端子及び第2抵抗112に電気的に接続されている。
【0042】
第2抵抗112の一端は、オペアンプ115の反転入力端子及び第1抵抗111に電気的に接続されている。第2抵抗112の他端は、出力端子110Cに電気的に接続されている。
【0043】
第3抵抗113の一端は、入力端子110Bに電気的に接続されている。第3抵抗113の他端は、オペアンプ115の非反転入力端子及び第4抵抗114に電気的に接続されている。
【0044】
第4抵抗114の一端は、オペアンプ115の非反転入力端子及び第3抵抗113に電気的に接続されている。第4抵抗114の他端は、基準端子110Dに電気的に接続されている。
【0045】
このような構成を有することにより、差動増幅器110は、シャント抵抗105に流れる電流に対応する電圧を、プラス出力端子100Aに出力することができる。この際、差動増幅器110がプラス出力端子100Aから出力する信号の基準電位は、マイナス出力端子100Bから出力される。
【0046】
差動増幅器110の構成は、図1に示した構成に限定されない。差動増幅器110は、他の構成の差動増幅器であってもよい。
【0047】
制限抵抗116は、基準端子110Dとグランド33との間に配置されている。制限抵抗116の一端は、基準端子110Dに電気的に接続している。また、制限抵抗116の一端は、基準端子110Dを介して、マイナス出力端子100Bにも電気的に接続している。制限抵抗116の他端は、グランド33に電気的に接続している。
【0048】
続いて、電流センサ100における電流の流れについて、図1を参照して説明する。
【0049】
アンプ103が帰還コイル104に流す電流Iは、測定装置200の電源回路220によって供給される。電源回路220が供給する電流は、プラス電圧出力端子200C、プラス電圧入力端子100C及びプラス電源31を経由して、アンプ103に供給される。アンプ103は、電源回路220から供給された電流を出力する。
【0050】
アンプ103が出力する電流Iは、帰還コイル104及びシャント抵抗105を経由して、グランド33に流れ込む。
【0051】
測定装置200の電源回路220から供給されて電流センサ100のグランド33に流れ込んだ電流Iは、2つの経路を通って、電源回路220のグランドに戻る。
【0052】
第1の経路は、制限抵抗116、基準端子110D、マイナス出力端子100B、第1配線抵抗10及びマイナス入力端子200Bを経由して、電源回路220のグランドに戻る経路である。ここで、第1配線抵抗10は、マイナス出力端子100Bとマイナス入力端子200Bとを接続する配線の抵抗である。マイナス出力端子100Bとマイナス入力端子200Bとを接続する配線は、例えばケーブルであってよい。第1の経路には、電流Iが流れるものとする。
【0053】
第2の経路は、グランド電圧端子100D、第2配線抵抗20及びグランド電圧端子200Dを経由して、電源回路220のグランドに戻る経路である。ここで、第2配線抵抗20は、グランド電圧端子100Dとグランド電圧端子200Dとを接続する配線の抵抗である。グランド電圧端子100Dとグランド電圧端子200Dとを接続する配線は、例えばケーブルであってよい。第2の経路には、電流Iが流れるものとする。
【0054】
電源回路220がアンプ103に供給する電流Iは、第1の経路及び第2の経路の2つの経路で電源回路220のグランドに戻ってくる。したがって、電源回路220がアンプ103に供給する電流Iと、第1の経路を流れる電流Iと、第2の経路を流れる電流Iとの間には、以下の関係が成り立つ。
=I+I
【0055】
第1の経路の抵抗値は、制限抵抗116の抵抗値と第1配線抵抗10の抵抗値との和である。第2の経路の抵抗値は、第2配線抵抗20の抵抗値である。ここで、制限抵抗116の抵抗値は、第1配線抵抗10の抵抗値及び第2配線抵抗20の抵抗値よりも十分に大きい値である。
【0056】
第1配線抵抗10及び第2配線抵抗20はケーブルなどの配線抵抗であるため、例えば、数10mΩ程度の抵抗値である。制限抵抗116は、これよりも十分に大きい抵抗値を有する抵抗である。制限抵抗116は、例えばチップ抵抗であってよい。
【0057】
制限抵抗116の抵抗値が第1配線抵抗10の抵抗値及び第2配線抵抗20の抵抗値よりも十分に大きい値であるため、第1の経路の抵抗値は第2の経路の抵抗値よりも大きい。その結果、電源回路220が供給する電流Iは、ほとんど第2の経路を通って電源回路220のグランドに戻る。すなわち、第1の経路を流れる電流Iは、非常に小さい電流となる。
【0058】
第1の経路を流れる電流Iが小さくなると、マイナス出力端子100Bとマイナス入力端子200Bとの間の電位差が小さくなる。その結果、電流センサ100が検出した被測定電流を測定回路210が測定する際の測定誤差が低減される。なぜなら、差動増幅器110がプラス出力端子100Aから出力する出力信号はマイナス出力端子100Bの電位を基準とした信号であり、測定回路210は、プラス入力端子200Aに端子に入力される信号をマイナス入力端子200Bの電位を基準として測定するからである。
【0059】
(測定誤差の計算例)
図2及び図3に、制限抵抗116の抵抗値と測定誤差との関係を計算した一例を示す。図2は、計算結果を表として示したものである。図3は、計算結果をグラフとして示したものである。
【0060】
図2及び図3に示す結果は、以下の条件を前提として計算したものである。
<条件>
シャント抵抗105=2.5Ω
第1抵抗111=10kΩ
第2抵抗112=40kΩ
第3抵抗113=10kΩ
第4抵抗114=40kΩ
オペアンプ115は理想オペアンプ
第1配線抵抗10=20mΩ
第2配線抵抗20=60mΩ
=400mA
【0061】
図2及び図3に示すように、測定誤差は、制限抵抗116の抵抗値に対して反比例の関係にある。したがって、制限抵抗116の抵抗値が大きくなるにつれて、測定誤差は小さくなる。ただし、制限抵抗116の抵抗値が大きくなるにつれて、測定誤差の低減は緩やかになる。
【0062】
測定誤差の目標値がある場合、制限抵抗116の抵抗値は、測定誤差の目標値を達成することができる抵抗値とすればよい。
【0063】
制限抵抗116の抵抗値を大きくし過ぎると、差動増幅器110が外乱による影響を受けるリスクが高まる。そのため、制限抵抗116の抵抗値は、必要以上に大きくしないことが望ましい。制限抵抗116の抵抗値は、例えば、数オーム程度が好適である。
【0064】
制限抵抗116は、第1抵抗111、第2抵抗112、第3抵抗113及び第4抵抗114のように、高精度の抵抗であることを必要とされない。また、制限抵抗116は、数Ω程度といったような小さな抵抗値でよく、流れる電流も小さいため、汎用的な小型の抵抗であってよい。すなわち、制限抵抗116は、安価で小型の抵抗であってよい。
【0065】
(比較例)
図4に比較例に係る電流センサ400を示す。比較例に係る電流センサ400は、図1に示した電流センサ100が備えている制限抵抗116を備えていないという点で、図1に示した電流センサ100と相違する。
【0066】
比較例に係る電流センサ400が備える差動増幅器410の第4抵抗114は、図1に示したような制限抵抗116を介さずに、グランド33に直接接続している。
【0067】
そのため、導線300に流れる被測定電流を図4に示した構成で測定する場合、第1の経路の抵抗値は、第1配線抵抗10の抵抗値である。また、第2の経路の抵抗値は、第2配線抵抗20の抵抗値である。すなわち、第1の経路の抵抗値は、第2の経路の抵抗値とほぼ同程度である。
【0068】
したがって、比較例に係る構成においては、第1の経路を流れる電流Iは、第2の経路を流れる電流Iとほぼ同程度となり、第1の経路を流れる電流Iは、電源回路220が電流センサ400に供給する電流の半分程度となる。
【0069】
比較例においては、このような大きな電流が第1の経路に流れるため、マイナス出力端子100Bとマイナス入力端子200Bとの間の電位差が大きくなってしまう。すなわち、差動増幅器110が出力の基準とするマイナス出力端子100Bの電位と、測定回路210が測定の基準とするマイナス入力端子200Bの電位との差が大きくなるため、測定回路210による測定の測定誤差が大きくなってしまう。
【0070】
本実施形態に係る電流センサ100は、制限抵抗116を備えることで、比較例に係る電流センサ400と比べて、測定誤差を低減することができる。
【0071】
以上のような一実施形態に係る電流センサ100によれば、ゼロフラックス方式によって測定する電流の精度を向上させることができる。より具体的には、電流センサ100は、被測定電流が流れる導線300の周囲を囲むように配置可能な磁性コア101と、磁性コア101の内部の磁束を検出する磁気センサ102と、磁気センサ102の出力を増幅し磁気センサ102の出力に応じた電流を出力するアンプ103と、磁性コア101に巻かれて配置されアンプ103が出力する電流を、磁束を打ち消す方向に流す帰還コイル104と、帰還コイル104とグランド33との間に配置されるシャント抵抗105と、シャント抵抗105の両端の電圧を増幅する差動増幅器110とを備える、ゼロフラックス方式の電流センサである。電流センサ100は、マイナス出力端子100Bとグランド33との間に配置される制限抵抗116とを備えるため、マイナス出力端子100Bからマイナス入力端子200Bに流れる電流を低減することができ、マイナス出力端子100Bとマイナス入力端子200Bとの電位差を低減することができるため、電流センサ100が検出する電流を測定装置200が測定する際の誤差を低減することができる。
【0072】
また、電流センサ100において、制限抵抗116は汎用の抵抗素子でよいため、低コストで電流を測定する際の誤差を低減することができる。また、制限抵抗116は例えばチップ抵抗でよいため、小さな実装スペースで制限抵抗116を導入することができる。
【0073】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0074】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0075】
上述した実施形態において、電源回路220が、プラス電圧出力端子200C及びプラス電圧入力端子100Cを介して、電流センサ100のプラス電源31に電流を供給している場合を例に挙げて説明したが、電源回路220は、マイナス電圧出力端子200E及びマイナス電圧入力端子100Eを介して、電流センサ100のマイナス電源32に電流を供給する場合もある。
【符号の説明】
【0076】
10 第1配線抵抗
20 第2配線抵抗
31 プラス電源
32 マイナス電源
33 グランド
100 電流センサ
100A プラス出力端子
100B マイナス出力端子
100C プラス電圧入力端子
100D グランド電圧端子
100E マイナス電圧入力端子
101 磁性コア
102 磁気センサ
103 アンプ
104 帰還コイル
105 シャント抵抗
110 差動増幅器
110A 入力端子
110B 入力端子
110C 出力端子
110D 基準端子
111 第1抵抗
112 第2抵抗
113 第3抵抗
114 第4抵抗
115 オペアンプ
116 制限抵抗
200 測定装置
200A プラス入力端子
200B マイナス入力端子
200C プラス電圧出力端子
200D グランド電圧端子
200E マイナス電圧出力端子
210 測定回路
220 電源回路
300 導線
400 電流センサ
410 差動増幅器
図1
図2
図3
図4