(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】インバータが配設されたインホイール電動モータおよびそのようなインホイール電動モータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20230124BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20230124BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230124BHJP
H02K 11/225 20160101ALI20230124BHJP
【FI】
H02K11/33
B60K7/00
H02K7/14 C
H02K11/225
(21)【出願番号】P 2020502643
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 NL2018050504
(87)【国際公開番号】W WO2019017788
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】505335968
【氏名又は名称】エー-トラクション ユーロペ ベスローテン フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】E-TRACTION EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ヴァル,ラインハルト ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン セヴェンター,ティモシー
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-264949(JP,A)
【文献】特開2015-025738(JP,A)
【文献】特表2003-520733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0344246(US,A1)
【文献】特開2013-131666(JP,A)
【文献】特開2013-147177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
B60K 7/00
H02K 7/14
H02K 11/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(30)と、前記ステータ(30)を同軸に包囲する円筒形ロータボディ(
71)
を有する円筒形ロータ(60)とを備えたインホイール電動モータ(4)であって
、
前記ステータ(30)が、
該電動モータ(4)の車両側(2)に
設けられたコネクタ部材(33)と、
該電動モータ(4)の道路側(3)に設けられていて、前記コネクタ部材(33)に接続された円筒形中空ステータボディ(31)と、
前記ステータボディ
(31)の外面に
設けられたステータ巻線
と
を有し、
前記電動モータ(4)
には、前記ステータ(30)の前記ステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイス
(42)が備えられ、
前記ステータ(30)の前記中空ステータボディ
(31)には、前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)を受容するために、前記電動モータ(4)の道路側
(3)にステータボディ開口部(90)が配設され、
かつ、
前記ロータボディ(71)には、前記ロータボディ(71)のロータボディ開口部を
前記道路側
(3)で覆うとともに
前記ステータボディ開口部(90)を覆う着脱可能なカバープレート(80)が配設されている、インホイール電動モータ(4)。
【請求項2】
前記コネクタ部材(33)
が道路側
(3)に面した端面を備え、前記端面に、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)のケーシング(100)がプラグおよびソケット構成を介して接続されている、請求項1に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項3】
前記コネクタ部材(33)には
、
(a)前記端面から延出し軸方向(A)に対して平行ないくつかの突出要素(91)
、または
、
(b)前記端面に形成され前記軸方向(A)に対して平行ないくつかの凹部
(91)
が配設され、
前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)が、前記中空ステータボディ
(31)内で
前記コネクタ部材
(33)上に位置決めされて、
(a)前記コネクタ部材(33)の前記突出要素
(91)が、
該突出要素(91)に対応して前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)のケーシング(100)の対向面に設けられた前記凹部(101)に受容されるか、または
、
(b)前記コネクタ部材(33)の前記凹部(91)が、該凹部に対応して前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)の
前記ケーシング
(100)の
前記対向面
に設けられた前記突出要素(101)を受容
する、
請求項1または2に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項4】
前記コネクタ部材には、
(a)液体クーラント
向けのフィードチャネルと、
(b)
液体クーラント向けのリターンチャネルと、
(c)前記フィードチャネル用の第1の開口部(92)と、
(d)
前記リターンチャネル用の第2の開口部(93)
と
が配設され、前記フィードチャネルと
前記リターンチャネル
とがそれぞれ前記コネクタ部材(33)の軸方向(A)に対して実質的に平行であり、
前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)には冷却回路系が配設され、
前記冷却回路系
が、対向面に、液体クーラント用のフィードコネクタ(102)とリターンコネクタ(103)
とを備え、前記コネクタ部材に位置決めされた場合に、前記フィードコネクタ
(102)が、前記フィードチャネルへの液密結合向けに構成され、
かつ、
前記リターンコネクタ
(103)が、前記リターンチャネルへの液密結合向けに構成されている、請求項1
ないし3のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項5】
前記中空ステータボディ(31)には、
該中空ステータボディ(31)の前記円形開口部(90)に対して平行な内部取り付け隆起部(96)が配設され、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)のケーシング(100)には、
該パワーエレクトロニクスデバイス
(42)が前記コネクタ部材
(33)上に位置決めされたときに前記内部取り付け隆起部(96)に当接するブラケット(105)が
前記道路側(3)に配設されている、請求項4に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項6】
前記中空ステータボディには、その内周面に、回転軸に対して平行に延出する少なくとも2つの内部取り付け隆起部が配設され、前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)のケーシングには、
該パワーエレクトロニクスデバイス
(42)が前記コネクタ部材
(33)上に位置決めされたときに前記内部取り付け隆起部に当接するブラケットが
前記道路側
(3)に配設されている、請求項1
ないし5のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ。
【請求項7】
前記カバープレート(80)には、前記電動モータ(4)
の回転軸
(R)に中心決めされた円形カバープレート開口部が配設され、
前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)
が、
前記道路側
(3)に、前記ステータ巻線に対する
前記ロータ
(60)の相対角度位置を感知するためのレゾルバ(81)を備え、
このレゾルバ
が、前記電動モータ(4)
の回転軸(R)と一致する回転軸を有し、前記円形カバープレート開口部内に配置され前記カバープレート(80)に装着されている、請求項1に記載のインホイール電動モータ(4)。
【請求項8】
インホイール電動モータ(4)を組み立てる方法であって、
前記電動モータ(4)がステータ(30)を備え、
前記ステータ(30)が、
(a)
前記電動モータ(4)の車両側
(2)に設けられたコネクタ部材(33)
と、
(b)
前記電動モータ(4)の道路側(3)において前記コネクタ部材(
33)に接続され中心軸
(R
)を備えた円筒形中空ステータボディ(31)
と
を
有し、
前記
中空ステータボディ
(31)の外面にはステータ巻線が装備され、
前記電動モータ(4)
がさらに
前記ステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイス(42)を備えており、
前記コネクタ部材(33)
が、軸方向(A)に対して平行であるとともに
前記道路側(3)
において前記中空ステータボディ(31)の開口部(90)のほうに延出するいくつかの突出要素
(91)、または
、前記道路側(3)において前記軸方向(A)に対して平行ないくつかの陥凹要素(91)を有し、
前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)のケーシング(100)の表面には、前記コネクタ部材
(33)の突出要素または陥凹要素
(91)を係合するための相補的な突出要素または受容要素(101)が配設され、
前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)の
前記ケーシング(100)
が、
前記中空ステータボディ(31)の道路側開口部
(90)を介して、
該ケーシング
(100)の表面
を前記コネクタ部材
(33)に対面
させた状態で
該中空ステータボディ
(31)内に位置決めされ、その後、
前記中心軸(R)の方向に沿って前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)を前記コネクタ部材
(33)に移動させ、
前記コネクタ部材(33)の
前記突出要素または陥凹要素
(91)をそれぞれ、前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)の
前記ケーシング
(100)の表面上の前記突出要素または受容要素
(101)のうち対応する1つに係合させる、方法。
【請求項9】
前記コネクタ部材
(33)が、クーラント用のフィードチャネル(92)とリターンチャネル(93)
とを備え、各路
が前記コネクタ部材
(33)の軸方向(A)に対して実質的に平行であり、前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)が対向面にフィードコネクタ(101)とリターンコネクタ(102)
とを備え、前記方法が、前記コネクタ部材
(33)の突出要素または受容要素
(91)が前記パワーエレクトロニクスデバイス
(42)の相補的な突出要素または受容要素
(101)にスライド式に係合している間は前記フィードコネクタ
(101)を前記フィードチャネルに密封接続し前記リターンコネクタ
(102)を前記リターンチャネルに密封接続するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1
ないし7のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)を備えた車両のホイール用の駆動装置(1)であって、前記電動モータ(4)がステータ部(30)とロータ部(60)を備え、前記ロータ部
(60)と前記ステータ部
(30)とが回転軸(R)に対して同軸であり、前記ロータ部
(60)と前記ステータ部
(30)とが両方とも少なくとも部分的に前記ホイール内に配置されるように適合されている、駆動装置(1)。
【請求項11】
請求項8または9
に記載の方法に従って組み立てられたインホイール電動モータ(4)を備えた車両のホイール用の駆動装置(1)であって、前記ロータ部
(60)と前記ステータ部
(30)とが両方とも少なくとも部分的に前記ホイール内に配置されるように適合されている、駆動装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インホイール電動モータの組み立て方法に関する。また、本発明はインホイール電動モータに関する。さらに、本発明は、そのような電動モータを備えた車両のホイールの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなインホイール電動モータは、1つ以上のタイヤを担持するホイールのリムにロータが結合されているインホイール電動モータを備えた電気自動車について記載している特許文献1から知られている。ステータは、ホイールサスペンションシステムを介して車両のフレームに取り付けられている。既知のインホイールモータは、モータの電磁石が、中間歯車なしでリムとタイヤを直接駆動するダイレクトドライブホイールの一部である。こうして、重量と空間が省かれ、駆動装置内の構成要素の数が極減される。
【0003】
インホイールモータによって生成されるトルクは、ロータとステータの間の磁束搬送面に依存し、ロータ半径の二次関数である。ロータ磁石はステータの周りに可能な限り外側に離して配置されて、可能な限り大きいロータ半径をもたらし、モータ設計は、タイヤに最大パワーとトルクを供給するために、ロータとステータの間の隙間を極減するべく最適化される。ロータとステータの間の隙間の幅は他方では、走行状態中にホイールへの機械的衝撃を吸収するために十分なほど大きくなるように設計される。
【0004】
ステータの巻線は、ステータ内に配置されたパワーエレクトロニクスによって給電され、そのパワーエレクトロニクスは、車両の電源システム、例えば電池パックおよび/または発電機からの電気エネルギーを、電動モータによる使用に適したAC電流に変換する。そのようなパワーエレクトロニクスは典型的にパワーエレクトロニクス、例えばIGBT電流モジュールと、特許文献2に記載のような電流調整器を備えている。パワーエレクトロニクスを用いて、ステータの巻線に供給される電流および/または電圧を制御することで、ステータによって生成される磁束の磁場ベクトルが制御され、電動モータは所望のトルクおよび/または回転速度で動作する。パワーエレクトロニクスをステータ内に一体化することで、パワーエレクトロニクスから電磁石にわたる母線の長さを短く保つことができ、それは、例えば700Vまたはそれ以上で300Aになり得るような電動モータを動作させるために一般的に必要な高電流および高電圧の損失を極減するという見地から非常に望ましい。
【0005】
電動モータおよび/またはパワーエレクトロニクスを冷却するために、既知の駆動装置には、ステータおよび/またはパワーエレクトロニクスの外面付近に配置された1つ以上の冷却チャネルを有する冷却システムが配設され、それによって、液体クーラントは駆動装置に流入または駆動装置から流出できる。
【0006】
インホイール駆動装置は、ロータに車両の可動部品が全く付いていない、および/またはロータ内に車両の可動部品が延出していない実質的に自蔵個別のモジュールとして実現され得る。ロータによって画定される内部空間は好ましくは実質的に閉鎖されて、車両の制動システムによって、および/または道路によって放出される塵芥および/または磨耗粒子の、前記内部への侵入を防止する。
【0007】
インホイール駆動装置は、駆動装置の車両側を車両フレームに接続することによって様々な位置で車両に取り付けられてよい。タイヤを取り付けるためのリムが、好ましくはロータの実質的に円筒形の外面においてロータに装着されてよい。
【0008】
従来技術のインホイール電動モータの欠点は、パワーエレクトロニクスの修理または交換にあたり、ハウジングを開けて大部分を取り外すことが必要となるということである。電動モータがホイール内に配置されているため、ハウジングを開けるということは、電動モータが収容されているホイールも車両から取り外されなければならないということを要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2013/025096号パンフレット
【文献】欧州特許第1252034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術由来の欠点のうち1つ以上を克服または軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、車両側にコネクタ部材を備え、コネクタ部材に接続された円筒形中空ステータボディを備えているステータを備えたインホイール電動モータによって達成され、ステータボディの外面にはステータ巻線が装備され、さらに、ステータを同軸に包囲する円筒形ロータボディを備え、電動モータはさらに、ステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイスを備え、中空ステータボディには、電動モータの道路側にパワーエレクトロニクスデバイスを受容するためのステータボディ開口部が配設され、包囲ロータボディには、道路側でロータボディのロータボディ開口部を覆い、ステータボディ開口部を覆う着脱可能なカバープレートが配設されている。
【0012】
道路側に着脱可能なカバープレートを備えたロータボディと、道路側で開いている中空ステータボディを配設することによって、パワーエレクトロニクスデバイスは、駆動ホイールを車両から解体する必要なしに容易にアクセス可能な方式で電動モータに挿入され得る、または電動モータから取り外し可能である。これは、保守作業中の設置および取り外しのための時間を省く。
【0013】
一実施形態によれば、インホイール電動モータは、コネクタ部材のヘッドとパワーエレクトロニクスデバイスのケーシングが、プラグおよびソケット構成によって接続されるような方式で配置されている。この配置は、駆動ホイール内へのパワーエレクトロニクスデバイスの配置を単純化させる。好ましくは、コネクタ部材は道路側に面した端面を有し、パワーエレクトロニクスデバイスはその端面に、プラグおよびソケット構成を介して接続される。一実施形態によれば、コネクタ部材には、端面から延出し軸方向に対して平行ないくつかの突出要素または凹部が配設され、パワーエレクトロニクスデバイスは、中空ステータボディ内でコネクタ部材に位置決めされて、突出要素は、対応する相手側凹部に、または、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシングの対向面内の対応する突出要素を受容するコネクタ部材上の凹部に受容される。これは、中空ステータボディ内へのパワーエレクトロニクスデバイスの取り付けを有意に促進する。
【0014】
一実施形態によれば、インホイール電動モータは、コネクタ部材に、液体クーラントのフィードチャネルの第1の開口部が配設されるとともに液体クーラントのリターンチャネル開口部の第2の開口部が配設されるような様式で配置されており、フィードチャネルとリターンチャネルはそれぞれコネクタ部材の軸方向に対して実質的に平行であり、パワーエレクトロニクスデバイスには冷却回路系が配設され、冷却回路系は、対向面上に液体クーラントのフィードコネクタとリターンコネクタを備え、コネクタ部材上に位置決めされた場合に、フィードコネクタはフィードチャネルに液密結合するように配置され、リターンコネクタはリターンチャネルに液密結合されるように配置されている。
【0015】
コネクタ部材に液体クーラント用の内部チャネルを配設し、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシング上に対応するコネクタを配設することによって、車両の回転部品および固定部品内での冷却回路系間の接続と離脱が、それぞれ設置中および取り外し中に、保守管理者によるさらなる相互作用なしで成される。
【0016】
一実施形態によれば、コネクタ部材には、液体クーラントのフィードチャネルの第1の開口部が配設されるとともに液体クーラントのリターンチャネル開口部の第2の開口部が配設されており、フィードチャネルとリターンチャネルはそれぞれコネクタ部材の軸方向に対して実質的に平行であり、パワーエレクトロニクスデバイスには冷却回路系が配設され、冷却回路系は、対向面上に液体クーラントのフィードコネクタとリターンコネクタを備え、コネクタ部材上に位置決めされた場合に、フィードコネクタはフィードチャネルに液密結合するように配置され、リターンコネクタはリターンチャネルに液密結合されるように配置されている。こうして、対向面へのフィードチャネルの結合は、単にパワーエレクトロニクスデバイスをフランジの対向面のほうにスライドさせることで達成され得る。
【0017】
一実施形態によれば、中空ステータボディには、中空ステータボディの円形開口部に対して平行な内部取り付け隆起部が配設され、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシングには、パワーエレクトロニクスデバイスがコネクタ部材上に位置決めされた場合に内部取り付け隆起部に当接するブラケットが、道路側に配設されている。
【0018】
一実施形態によれば、中空ステータボディには、回転軸に対して平行に延出する少なくとも2つの内部取り付け隆起部が、その内周面に配設され、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシングには、パワーエレクトロニクスデバイスがコネクタ部材上に位置決めされた場合に内部取り付け隆起部に当接するブラケットが、道路側に配設されている。
【0019】
一実施形態によれば、ロータカバープレートには、電動モータ回転軸に中心決めされた円形カバープレート開口部が配設され、パワーエレクトロニクスデバイスは、ステータ巻線に対するロータの相対角度位置を感知するためのレゾルバを、道路側に備え、そのレゾルバは、電動モータ回転軸と一致する回転軸を有し、円形カバープレート開口部内に配置されてカバープレートに装着されている。こうしてレゾルバは、インホイールモータが車両に取り付けられている場合でも、道路側から容易に届き得る。ロータによって感知される、ステータ巻線に対するロータの相対角度位置を用いて、当技術分野で知られるように、個々のステータ巻線に印加される電流および/または電圧を制御してよい。
【0020】
一態様によれば、本発明はインホイール電動モータを組み立てる方法を提供し、電動モータはステータを備え、ステータは、コネクタ部材を車両側に備え、コネクタ部材に接続され中心軸Rを備えた円筒形中空ステータボディを備え、ステータボディの外面にはステータ巻線が装備され、電動モータはさらに、ステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイスを備えており、コネクタ部材は、軸方向に対して平行であるとともに道路側で中空ステータボディの開口部のほうに延出するいくつかの突出要素または陥凹要素を有し、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシングの表面には、コネクタ部材の突出要素または陥凹要素を係合するための相補的な突出要素または受容要素が配設され、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシングは、道路側開口部を介して、ケーシングの表面がコネクタ部材に対面した状態で中空ステータボディ内に位置決めされ、その後、中心軸の方向に沿ってパワーエレクトロニクスデバイスをコネクタ部材に移動させ、コネクタ部材の突出要素または陥凹要素それぞれを、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシングの表面上の突出要素または受容要素のうち対応する1つに係合させる。
【0021】
さらに、本発明は、上述のようなインホイール電動モータを備えるか、または上述のような方法によって製造され、ロータ部とステータ部が両方とも少なくとも部分的にホイール内に配置されるように適合されているインホイール電動モータを備えるかのいずれかである車両のホイールの駆動装置に関する。
【0022】
有利な実施形態は従属請求項によってさらに定義される。
【0023】
本発明を、その例示的実施形態が示されている図面を参照して以下にさらに詳細に説明する。図面は例示的目的のみを意図しており、発明的概念の制限を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明で使用する駆動装置の断面図である。
【
図1B】本発明で使用する駆動装置の破断等角図である。
【
図1C】本発明で使用する駆動装置の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコネクタ部材の詳細図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るパワーエレクトロニクスデバイスのケーシングの等角図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、パワーエレクトロニクスデバイスの、車両のコネクタ部材との結合の詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aは、本発明で使用する駆動装置1の断面図を示す。駆動装置は、周りにロータ60が配置される外面32を有する中空ステータボディ31を備えたステータ30を備えている。駆動装置はさらに、駆動装置を車両に装着するための、組立体1の車両側2に配置された車軸スタブまたはコネクタスタブ33を備えている。コネクタ部材33は、ロータ60内にあるとともにロータ60の外周面63の外側にある車軸スタブ33の部分36よりも大きい直径を有するフランジ35を介してステータボディ34に固定接続されている。回転軸R周りでのロータ60の回転運動を支持するために、車両側ベアリング52が配設され、それを介してロータが車両側のスタブ33上に支持される。道路側3で、ロータが道路側ベアリング54を介してステータボディ31に回転的に支持される。
【0026】
複数の永久磁石61がロータ60の内周面62に装着され、ステータ30の電磁石41の周りで回転できる。電磁石41はステータボディ31に固定され、永久磁石61と、電磁石41によって生成された磁束との間の相互作用によってロータの回転を駆動する。ステータ30とロータ60は、回転軸Rの周りでのホイールの回転を直接駆動するように適合された電動モータを形成する。
【0027】
ロータ60は、それぞれその車両側2とその道路側3にある、横端部72、73を有する実質的に円筒形のロータボディ71を備えている。横端部72、73は両方とも、道路からの、または車両の制動システムによって放出された塵芥および磨耗粒子などの異物粒子が、中空ロータ60の内部に侵入することを防止するために実質的に閉鎖されている。ロータの車両側は、回転軸Rに対して横方向に延在するサイドプレート74によって、また、カバープレート75によって実質的に閉鎖されている。サイドプレート74とカバープレート75にはそれぞれ開口部が配設され、それを通ってコネクタ部材33の部分34が延出する。サイドプレート74は、ベアリング51をそれらの横方向車両側2で覆うためにカバープレート75がサイドプレート74に装着されている間に車両側ベアリング52を支持し、また、開口部77を備え、それを通って、部分34が延出する。カバープレート75は、開口部77の内周縁79と、軸34の外周の間に配置された軸用シール78と共に、異物粒子が車両側ベアリング52を損傷することを防止する。さらに、カバープレート75と軸用シール78は、粒子が電磁石41に干渉する可能性があるロータの内部5に、そのような粒子が車両側2から侵入することを実質的に防止する。
【0028】
ステータボディ31の内側に配置された道路側ベアリング54は、道路側3では、着脱可能な第2のカバープレート80によって覆われている。レゾルバ81はステータ30を第2のサイドプレート80に回転的に接続し、ステータ30に対するロータ60の角度位置を検出するように適合されている。第2のカバープレート80には円形開口部が配設され、そこにレゾルバ81が、ロータ部への回転的接続のために第2のカバープレート80に装着されている。
【0029】
電磁石41を制御し給電するために、パワーエレクトロニクス42の回路系を保持するケーシング100が、中空ステータボディ31内に配置されている。パワーエレクトロニクス42は、車両の電源システム、例えば電池パックおよび/または発電機からの電気エネルギーを、電動モータによる使用に適したAC形に変換するための、IGBTなどの構成要素を備えている。レゾルバ81は、ロータの磁場と同位相で交流電流が供給されるように、パワーエレクトロニクスに対するロータの角度位置を示す角度位置信号を提供する。
【0030】
電動モータの稼働中のパワーエレクトロニクスの過熱を防止するために、ステータボディ32の内部のパワーエレクトロニクス42に近接し、ステータボディ32から離隔して冷却ダクト(図示せず)を備えた冷却回路系が配設されている。ロータの外部から内部へとコネクタ部材33を貫通するクーラントフィードチャネル45を介して、冷却ダクトにクーラントが供給される。パワーエレクトロニクス42を冷却した後で、クーラントはコネクタ部材33内の通路46を介して、ステータボディ30の外面32に配設された冷却ジャケット37に流れる。冷却ジャケット37には、中空円筒形ボディ31に沿って経由する回路を形成し、冷却ジャケット37の外側40に配置された電磁石41を冷却するために液体クーラントが中を通る通路を提供するチャネル38が配設されている。こうして、比較的低温のクーラントがクーラントフィードチャネル45を通って供給されることができ、クーラントは冷却ダクトを通る間に暖機してパワーエレクトロニクス42から熱エネルギーを吸収し、次にチャネル38を通過して電磁石41からの熱エネルギーを吸収し、その後で駆動装置1から除去されて、コネクタ部材33を通して延出するクーラント排出チャネル(図示せず)を通して車両に戻される。暖機されたクーラントは好ましくは車両上で熱交換器内で冷却され、その後クーラントフィードチャネル45を通って再循環される。
【0031】
パワーエレクトロニクス42に給電するための電源線43a、43bは、ロータ60の外部から、コネクタ部材33内の貫通孔を備えた通路44を通って、パワーエレクトロニクスに通る。
【0032】
本発明によれば、パワーエレクトロニクス42のケーシングは、ヘッド部分、すなわち、コネクタ部材33のフランジ35に取り付けられる。道路側での円筒形ロータボディ71内の開口部90の直径は、パワーエレクトロニクス42のケーシングの断面よりも大きい。円筒形ロータボディ71内の開口部を道路側で閉鎖する着脱可能な第2のカバープレート80は、道路側3で円筒形ロータボディ71の開口部を介してケーシングを挿入することによってパワーエレクトロニクス42が取り付けられ得ることを可能にする。さらに、着脱可能な第2のカバープレート80は、パワーエレクトロニクスデバイスのケーシングを定位置にロックし、また、必要に応じ比較的容易にパワーエレクトロニクス42にアクセスすることも可能にする。
【0033】
図2を参照してさらに詳細に説明するように、パワーエレクトロニクスのケーシングとコネクタ部材33は、それぞれ取り付け、給電および冷却のためにパワーエレクトロニクスを機械的、電気的および熱的に接続するためのプラグおよびソケット構成を伴って配置されている。
【0034】
図1Bは、
図1Aの駆動装置の部分破断等角図を示すが、中空ステータボディ31とレゾルバ81がより良く見通せるように、第2のカバープレート80と道路側ベアリング54は図示していない。
【0035】
図1Cは、本発明で用いるホイール駆動装置の断面を示す。ホイール駆動装置はインホイール電動モータ4と、リム82と1つ以上のタイヤ84を備えている。
【0036】
インホイール電動モータ4はステータ部60とロータ部30を備えている。ステータ部 60は、車両のシャーシの一部であるコネクタ部材33に結合されている。
【0037】
リム82は、ロータ部60の外周に配置されている。リム82は従来技術で知られるボルト接続によってロータ部に装着され得る。
【0038】
リム82上に1つ以上のタイヤ84が取り付けられている。ロータ部60とステータ部30は両方とも少なくとも部分的にホイール内に配置されている。
【0039】
図2は、本発明の一実施形態によるコネクタ部材33と中空ステータボディの等角図を示す。
【0040】
コネクタ部材33は、車両(図示せず)のシャーシに接続される第1の端部33-1を車両側2に備えている。第1の端部33-1と軸方向に対向する第2の端部33-2は、中空ステータボディ31に接続するためのコネクタ部材33のヘッドを形成するフランジ35を備えている。道路側3を向いたフランジ35の表面内で、コネクタ部材33には、軸方向Aに沿って延出するいくつかの突出要素91が配設されている。
【0041】
突出要素91の位置に対する所定位置で、フランジ35の表面には、それぞれ液体クーラントのフィードチャネル92用開口、液体クーラントのリターンチャネル93用開口および電気導体向けの貫通孔94が配設されている。
【0042】
コネクタ部材33のボディ内部で、フィードチャネル92、リターンチャネル93および電気導体94用の貫通孔が軸方向Aに沿って配設されている。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態によるパワーエレクトロニクスデバイス42のケーシング100の等角図を示す。
【0044】
取り付け位置でコネクタ部材33のフランジ35に対面するパワーエレクトロニクスデバイス42のケーシング100の表面に、対応する位置において、突出要素91を受容するための相手側要素101と、フィードチャネルおよびリターンチャネル92、93への液密結合のための流体コネクタ102と、電気導体用の端子103、104がそれぞれ配設されている。代替策として、フランジ35の表面に、突出要素91の代わりに凹部が配設され、フランジ35に対面するケーシングの表面に、対応する位置で、突出する相手側要素が配設されることも理解されよう。
【0045】
パワーエレクトロニクスデバイス42のケーシング100がフランジ35に取り付けられると、突出要素91は相手側要素101内に受容されて(または突出する相手側要素が凹部に受容されて)、パワーエレクトロニクスデバイス42のケーシング100のための機械的支持を提供する。
【0046】
稼働中に駆動装置(ホイールおよびインホイール電動モータ)が動的負荷を蒙るときに接続に幾分のフレキシビリティを見込むために、突出要素91と相手側要素101の間(または凹部と突出する相手側要素の間)に幾分の遊びが許容されてもよい。
【0047】
さらに、中空ステータボディ31には、中空ステータボディ31の内周上に、パワーエレクトロニクスデバイス42の副次的支持体としての内部取り付けフランジ96が配設され得る。内部取り付けフランジ95は、フランジ35からのケーシングの長さ106に実質的に対応する、コネクタ部材33のフランジ35からの距離に位置決めされている。パワーエレクトロニクスデバイス42のケーシング100は、道路側に面した表面に、中空ステータボディ31の内部取り付けフランジ95に接続するブラケット105を備えている。ブラケット105と内部取り付けフランジ95は
図1Bで最もよくわかる。
【0048】
取り付け位置において、流体コネクタ102それぞれは、フィードチャネルおよびリターンチャネル92、93の対応する開口部のうち一方に結合し、電気導体の端子103、104は、電気導体用のコネクタ部材の貫通孔を通って車両側2へと延出する。
【0049】
電気導体は、車両(図示せず)内部の電源(図示せず)に接続される。電源は例えば、電池または発電機である。
【0050】
一実施形態では、端子103、104は、ケーシング100の対向面に対して、またフランジの面に対して垂直な細長いストリップである。パワーエレクトロニクスデバイス42の側で、端子は、ステータ巻線に給電するパワーエレクトロニクスに接続されて、ロータ部60内に配置された磁石61と相互作用する電磁場を生成する。
【0051】
図4は、コネクタ部材33のフランジ35に取り付けられたパワーエレクトロニクスデバイス42のケーシングの詳細断面図を示す。
【0052】
この断面において、フィードチャネルと流体フィードコネクタとの接続およびリターンチャネルと流体リターンコネクタとの接続がそれぞれ示されている。さらに、コネクタ部材33内の対応する貫通孔内の端子のうち1つが示されている。
【0053】
フィードチャネルと流体フィードコネクタとの接続およびリターンチャネルと流体リターンコネクタとの接続にはそれぞれシール107、108が配設されて漏れないようになっている。
【0054】
一実施形態では、フィードチャネル92とリターンチャネル93の各開口部には、シール107、108および逆止弁(図示せず)が配設されている。有利には、パワーエレクトロニクスデバイス42がコネクタ部材33のフランジから取り外されたときのコネクタ部材33のフランジ35での開放接続の場合に、逆止弁がクーラント回路系を車両側2で閉じる。
【0055】
本発明を、好ましい実施形態を参照して説明してきた。先述の詳細な説明を読み理解すれば、自明な修正および変更を他者でも思いつくであろう。本発明は、そのような修正および変更を、それらが添付の特許請求の範囲内にある限り、全て含めると解釈されることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
2 車両側
3 道路側
4 インホイール電動モータ
30 ステータ
31 ステータボディ
33 コネクタ部材
42 パワーエレクトロニクスデバイス
60 円筒形ロータ
71 包囲ロータボディ
80 カバープレート
81 レゾルバ
90 ステータボディ開口部
91 突出要素または凹部
92 フィードチャネル
93 リターンチャネル
96 内部取り付け隆起部
100 ケーシング
101 相手側凹部
102 フィードコネクタ
103 リターンコネクタ
105 ブラケット
107、108 シール
R 回転軸