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特許7216081ユニバーサルジョイントを潤滑する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ユニバーサルジョイントを潤滑する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/41 20060101AFI20230124BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20230124BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20230124BHJP
   F16D 3/40 20060101ALI20230124BHJP
   F16N 7/38 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
F16D3/41 A
F16C19/26
F16C33/66 Z
F16D3/40 A
F16N7/38 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020517148
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018073324
(87)【国際公開番号】W WO2019057462
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-04-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】102017122107.7
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン リッター
(72)【発明者】
【氏名】ディーター マイアー
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平田 信勝
【審判官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-17412(JP,A)
【文献】特開2006-2845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/38-3/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニバーサルジョイント用のジャーナルクロス(9)であって、当該ジャーナルクロス(9)がジャーナル端部(11)を有する、ジャーナルクロス(9)において、
当該ジャーナルクロス(9)が、潤滑剤用の少なくとも2つの別個の貫通案内路(7,39)を有し、当該貫通案内路(37,39)の出口が前記ジャーナル端部(11)のそれぞれに設けられており、各貫通案内路(37,39)が、途中で他の貫通案内路(37,39)と交わることなく、1つのジャーナル端部(11)に対応する正確に1つの軸受部(A,B,C,D)に潤滑剤を供給するために設けられており、
2つの中心軸線を有するユニバーサルジョイント用のジャーナルクロス(9)において、当該ジャーナルクロス(9)が、前記中心軸線(31,33)のうちの少なくとも一方の中心軸線から間隔を置いて潤滑剤用の貫通案内路(37,39)を有し、
前記貫通案内路(37,39)のそれぞれが、前記中心軸線(31,33)のそれぞれに対して平行に配置されていることを特徴とする、ユニバーサルジョイント用のジャーナルクロス。
【請求項2】
ユニバーサルジョイント用のジャーナルクロス(9)であって、当該ジャーナルクロス(9)がジャーナル端部(11)を有する、ジャーナルクロス(9)において、
当該ジャーナルクロス(9)が、潤滑剤用の少なくとも2つの別個の貫通案内路(37,39)を有し、当該貫通案内路(37,39)の出口が前記ジャーナル端部(11)のそれぞれに設けられており、各貫通案内路(37,39)が、途中で他の貫通案内路(37,39)と交わることなく、1つのジャーナル端部(11)に対応する正確に1つの軸受部(A,B,C,D)に潤滑剤を供給するために設けられており、
2つの中心軸線を有するユニバーサルジョイント用のジャーナルクロス(9)において、当該ジャーナルクロス(9)が、前記中心軸線(31,33)のうちの少なくとも一方の中心軸線から間隔を置いて潤滑剤用の貫通案内路(37,39)を有し、
前記貫通案内路(37,39)のつが、90°の角度で折り曲げられていることを特徴とする、ユニバーサルジョイント用のジャーナルクロス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの貫通案内路(37,39)が、当該ジャーナルクロス(9)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のジャーナルクロス。
【請求項4】
潤滑剤用の前記貫通案内路(37,39)の開口部が、互いに反対の側に位置する2つのジャーナル端部(11)に配置されており、該貫通案内路(37,39)によって2つの軸受部(A,B,C,D)が潤滑可能であることを特徴とする、請求項2または請求項2を引用する請求項3記載のジャーナルクロス。
【請求項5】
ユニバーサルジョイント(7)であって、第1のジョイントヨーク(3)と第2のジョイントヨーク(5)とジャーナルクロス(9)とを備え、該ジャーナルクロス(9)のジャーナル端部(11)が、前記第1のジョイントヨーク(3)内と前記第2のジョイントヨーク(5)内とに支持されている、ユニバーサルジョイント(7)において、
請求項1から4までのいずれか1項記載のジャーナルクロス(9)が設けられていることを特徴とする、ユニバーサルジョイント(7)。
【請求項6】
当該ユニバーサルジョイント(7)内のジャーナルクロス(9)の互いに反対の側に位置する2つのジャーナル端部(11)の側に、当該ユニバーサルジョイント(7)が、それぞれ2つの潤滑剤供給部(43,45)を有し、各潤滑剤供給部(43,45)が、正確に1つの軸受部(A,B,C,D)に対応していることを特徴とする、請求項2を引用する請求項5記載のユニバーサルジョイント。
【請求項7】
当該ジャーナルクロス(9)の、互いに対して90°の角度を成し、2つの位置に潤滑剤供給部(41)が設けられており、該潤滑剤供給部(41)が、該ジャーナルクロス(9)のジャーナル端部(11)に配置された外側のカバー(25)および/または内側のカバー(27)に形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項1を引用する請求項3記載のユニバーサルジョイント。
【請求項8】
請求項5から請求項までのいずれか1項記載のユニバーサルジョイントの軸受A,B,C,D)を潤滑する方法において、
軸受部(A,B,C,D)の潤滑が、静止状態で行われるか、または回転貫通案内路を設けることによって作動中に行われるようになっていることを特徴とする、ユニバーサルジョイントの軸受を潤滑する方法。
【請求項9】
方法ステップ:
-前記ユニバーサルジョイント(7)の静止状態で、または作動中に、前記ジャーナルクロス(9)の2つのジャーナル端部(11)から潤滑剤を供給し、ジャーナルの各軸受部(A,B,C,D)に設けられた潤滑剤流出部(51)から潤滑剤が流出するようになるまで、前記各軸受部に個々に潤滑剤を供給する、
を含むことを特徴とする、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニバーサルジョイントを潤滑する方法および装置に関する。
【0002】
欧州特許出願公開第0878657号明細書に基づき、ユニバーサルジョイントを備えたジョイントシャフト用の潤滑装置が公知である。ユニバーサルジョイントは、ジョイントヨークと、潤滑可能な軸受を備えたジョイントクロスとを有する。ハウジングに取り付けられた構成部分が設けられており、この構成部分を通じて潤滑剤がジョイントシャフトに案内され、さらにこのジョイントシャフトを通じて引渡しエレメントによってジョイント軸受にまで案内される。これにより、潤滑は定位置の構成部分から行われるので、ジョイントシャフトの運動の影響を受けずに潤滑が行われ得る。潤滑個所は容易にアクセス可能となり、中央潤滑部への接続のために適している。
【0003】
中国実用新案第202660200号明細書に基づき、ユニバーサルジョイント用の潤滑装置が公知である。この公知の潤滑装置により、オンライン潤滑が可能である。潤滑剤の供給のためには、ジョイントシャフトに、ノズルを備えた回転式のリングが設けられていることが開示されている。ジョイントヨークの各側に対して2つの供給部が示されている。
【0004】
中国実用新案第20445885号明細書に基づき、ユニバーサルジョイントのクロスシャフトにおいて、各軸受のために別個の潤滑装置を設けることが公知である。このためには、ユニバーサルジョイントのクロスシャフト内のクロス接続部が閉じられる。
【0005】
独国特許出願公開第102016210587号明細書に基づき公知のユニバーサルジョイント装置では、ユニバーサルジョイントの軸受が、各軸受カバーの中央に形成された開口を通じて潤滑剤によって潤滑され得る。しかし、このためには、各カバーから潤滑が行われることが必要となる。幾つかの組込み状況においては、ユニバーサルジョイントは、あらゆる側から同様に良好にアクセス可能であるとは限らない。したがって、アクセス性の良い潤滑剤供給経路に優先的に供給が行われ、アクセス性の悪い潤滑剤供給経路は敬遠されがちとなる。これにより、十分に潤滑されなかった軸受部においては、破損発生が増大する。また、潤滑を行うためにジョイントシャフトの一方の側からジョイントシャフトの他方の側へポジションチェンジすることが面倒になり、ジョイントシャフトの一方の側からアクセス可能なカバーの潤滑剤開口にしか潤滑剤が供給されないことも時々ある。これによっても、十分に潤滑されなかった軸受部において欠陥増大が生じ得る。
【0006】
公知の潤滑装置において不都合となるのは、公知の潤滑装置が、既に部品点数だけをとってもコストがかかることである。さらにこれに加えて、潤滑装置の一緒に回転する部分が一緒に加速されなければならず、したがって、これらの回転する部分は加速にも耐えなければならない。
【0007】
本発明の根底を成す課題は、ユニバーサルジョイントの潤滑をより簡便に可能にすることである。
【0008】
特に本発明の課題は、離散的な静止位置におけるユニバーサルジョイントの軸受部を潤滑するためのアクセス性を容易にすることである。
【0009】
本発明の課題は、ジャーナルクロスに潤滑剤用の少なくとも1つの貫通案内路が形成されていることにより解決される。この貫通案内路は、軸受部のうちの1つに潤滑剤を供給するために設けられている。この貫通案内路により、ジャーナルクロス端部に設けられた軸受部を潤滑することが可能になる。この場合、軸受部は90°または180°の角度を成して配置されていてよい。この貫通案内路はこの場合、潤滑剤を供給するために用いられる。したがって、このジャーナル端部に対応した軸受部と、別の軸受部とに、この貫通案内路によって潤滑剤を供給することが可能になる。この場合、両軸受部には、互いに別個に潤滑剤が供給され得る。これにより、潤滑剤を供給する際の圧力を、各潤滑過程に合わせて、かつ供給形式もしくは潤滑されるべき軸受部の位置に関連して、設定することも可能になる。
【0010】
一般に、ジャーナルクロスのジャーナル端部に設けられた軸受部は、スラスト軸受およびラジアル軸受を含む。
【0011】
ジャーナルクロスの好適な実施態様では、ジャーナルクロス内に設けられた前記少なくとも1つの貫通案内路が、ジャーナルクロスの中心軸線のうちの少なくとも1つの中心軸線に対して間隔を置いて配置されて形成されている。特に好適には、貫通案内路が、少なくとも所定の部分領域において、中心軸線に対して平行に配置されている。したがって、ジャーナルクロスに設けられた中央孔の内部に貫通案内路を配置することが可能になる。可能となる加速に耐え得るようにするためには、安定した取付けが必要となる。
【0012】
ジャーナルクロスの別の好適な実施態様では、ジャーナルクロスが、潤滑剤用の少なくとも2つの別個の貫通案内路を有する。これらの貫通案内路は、潤滑剤の供給のために使用され得る。これによって、2つのユニバーサルジョイント端部から4つのすべての軸受部を潤滑することが可能となり、この場合、これらの軸受部のうちの2つに、第1の貫通案内路と第2の貫通案内路とによって潤滑剤が供給され得る。
【0013】
ジャーナルクロスのさらに別の好適な実施態様では、潤滑剤貫通案内路のうちの好ましくは2つが、90°の角度を成して配置されている。それぞれ個々の貫通案内路は、真っ直ぐに形成されているか、または折り曲げられて形成されていてよい。
【0014】
さらに別の好適な実施態様では、貫通案内路が、中心軸線のうちの1つの中心軸線に対して平行に配置されている。これにより、貫通案内路は真っ直ぐに形成されており、このことは、容易に製作され得る。これによって、すべての軸受に到達し得るようにするためには、両貫通案内路が、好適には90°の角度で互いに対してずらされて配置されている。
【0015】
さらに別の実施態様では、少なくとも1つの貫通案内路が、ジャーナルクロスと一体に形成されている。このことは、貫通案内路を提供するために、ジャーナルクロス内に構成部分が持ち込まれていないことを意味する。このような貫通案内路は、穿孔によって形成され得る。
【0016】
さらに別の実施態様では、潤滑剤用の貫通案内路の開口部が、相対する互いに反対の側に位置する2つのジャーナル端部に配置されており、これらの貫通案内路によって、すべてのスラスト軸受が潤滑可能である。貫通案内路は、折り曲げられて形成されていなければならない。
【0017】
前で説明したジャーナルクロスは、ユニバーサルジョイントにおいて使用するために適している。ユニバーサルジョイントは、第1のジョイントヨークと、第2のジョイントヨークと、ジャーナルクロス端部を備えたジャーナルクロスとを含み、この場合、ジャーナルクロスの端部は、第1のジョイントヨーク内と第2のジョイントヨーク内とに支持されている。この場合、ユニバーサルジョイントは、請求項1から7までのいずれか1項記載のジャーナルクロスを含む。これにより、減じられた手間をかけるだけでユニバーサルジョイントの軸受を潤滑することが可能になる。少なくとも一方のジョイントヨーク側から2つの軸受を潤滑することができる。一方のジョイントヨーク側からユニバーサルジョイントの、アクセス性の悪い少なくとも1つの軸受部に、貫通案内路によって潤滑剤を供給することのできる静止位置を設定することが可能になる。
【0018】
ユニバーサルジョイントの好適な実施態様では、ユニバーサルジョイントが、相対する互いに反対の側に位置する2つの側に、それぞれ2つの潤滑剤供給部を有し、この場合、各潤滑剤供給部は、正確に1つの軸受に対応している。これにより、これら両側から、ユニバーサルジョイントのすべての軸受部を潤滑することが可能となる。特に、屈折されていない組込みの場合に、潤滑剤供給部が、回転しかしないジョイントヨークに配置されているような構成を採用することも可能になる。その場合、供給管路を通じて、中央の潤滑剤供給部から各潤滑剤供給部に潤滑剤が供給され得る。中央の潤滑剤供給部により、すべての軸受部に別個に潤滑剤が供給され得る。この中央の潤滑剤供給部は、ジョイントヨークまたはジョイントシャフトに配置されていてよい。これによって、ポジションチェンジが必要になることなく、潤滑が特に簡便に実施可能となる。
【0019】
ユニバーサルジョイントの別の好適な実施態様では、ユニバーサルジョイントの、90°の角度を成して配置された2つの位置に設けられた潤滑剤用の供給部が設けられており、これらの供給部は、好ましくは、規定のカバーに形成されている。これにより、静止位置においてユニバーサルジョイントの一方の側からユニバーサルジョイントのすべての軸受部を潤滑することが簡便に可能となる。
【0020】
さらに別の実施態様では、ユニバーサルジョイントが4つのジョイントカバーを含み、潤滑剤供給部が、これらのカバーのうちの1つにしか形成されていない。ジャーナルクロスは3つの貫通案内路を有するので、別のジャーナルクロス端部には、これらの貫通案内路を通じて潤滑剤が供給され得る。
【0021】
ジョイントシャフトに本発明によるユニバーサルジョイントを装備させることが有利であることが判った。この場合、相対する互いに反対の側に位置するジャーナル端部に潤滑剤供給部を設けることが特に有利であることが判った。屈折されていない組込みの場合には、ジョイントシャフトに中央の潤滑剤供給部が配置され得る。この中央の潤滑剤供給部は、個々の軸受部に対応した個々の潤滑剤供給部を含む。
【0022】
ユニバーサルジョイントのジョイントシャフトの軸受部、特にラジアル軸受およびスラスト軸受を潤滑する本発明による方法は、静止位置がとられ、引き続き個々の軸受部に互いに別個に潤滑剤が供給されることによりすぐれている。これにより、潤滑剤調量は各軸受部に対して個別に調量され得る。潤滑剤調量時では、潤滑剤に、種々異なる圧力を加えることができる。さらに、導入される潤滑剤の量は個別に調量され得るので、したがって、十分に潤滑されていることが確保され得る。
【0023】
以下に、本発明における解決手段を幾つかの実施例につき詳しく説明する。図示の実施例は、本発明の固有の特徴を包含し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ジョイントシャフトを示す図である。
図2】相対する互いに反対の側に位置する潤滑剤供給部の概略図である。
図3】90°の角度を成す潤滑剤供給部の概略図である。
図4】ジャーナルクロスを示す図である。
【0025】
図1には、両端部にユニバーサルジョイントを備えたジョイントシャフトが示されている。各ユニバーサルジョイントは、それぞれ第1のジョイントヨーク3と第2のジョイントヨーク5とを有する。第1のジョイントヨーク3はジャーナルクロス9を介して第2のジョイントヨーク5に作用結合されている。第1のジョイントヨーク3を介して回転運動が導入されると、回転運動は第2のジョイントヨーク5へ伝達され、逆に第2のジョイントヨーク5を介して回転運動が導入されると、回転運動は第1のジョイントヨーク3へ伝達される。この場合、第1のジョイントヨーク3の軸方向軸線は第2のジョイントヨーク5の軸方向軸線に対して角度を成して配置されていてよい。この角度は屈折角度と呼ばれる。シングルのユニバーサルジョイント7は、このユニバーサルジョイントが屈折角度下に作動すると、不等速運動を生ぜしめる。すなわち、ユニバーサルジョイントは、入力側においては、ユニバーサルジョイントの軸方向軸線周りに一定の回転数で回転するように駆動されるが、しかし出力側においては、あるときは入力側よりも少しだけ高速で回転し、またあるときには入力側よりも少しだけ低速で回転する。この不等速運動は、屈折角度と共に増大する。取り付けられた状態でその軸方向軸線周りの回転運動しか実施しないジョイントヨークは、屈折されていないジョイント部分4もしくは屈折されていないジョイントヨークと呼ばれる。
【0026】
図2には、ユニバーサルジョイント7の軸受12を潤滑するための貫通案内路が示されている。ユニバーサルジョイント7は、ラジアル軸受15とスラスト軸受13とを有する。ラジアル軸受15により、ジャーナル端部11はジャーナルクロス9の中心軸線に対して半径方向で支持されている。スラスト軸受13により、ジャーナルクロス9のジャーナルは軸方向で支持されている。図示の実施例では、このスラスト軸受13が、ジャーナル端部11の端部側に設けられている。
【0027】
図示の実施例では、ジャーナルクロス9の端部を支持する軸受部が極めて簡略的に描かれていて、それぞれA、B、CおよびDで示されている。この実施例では、ジャーナルクロス端部Aに第1の潤滑剤供給部43および第2の潤滑剤供給部45が対応している。第1の潤滑剤供給部43によって、このジャーナル端部の軸受に潤滑剤が供給される。これにより、第1に、新しい潤滑剤が導入され得ると同時に、古い潤滑剤が軸受から新しい潤滑剤によって押し出され得る。したがって、こうして潤滑剤の交換も可能になる。潤滑剤過剰量は潤滑剤流出部51において再び流出する。
【0028】
第2の潤滑剤供給部45は、第1の貫通案内路37を介して軸受部Bに接続されている。この第1の貫通案内路37を介して、潤滑剤は軸受部Bに供給され得る。第1の貫通案内路37は、この実施例では折り曲げられて形成されており、軸受部Bは軸受部Aに対して90°の角度を成して配置されている。軸受部C,Dの潤滑部も同様の形式で設けられている。この場合、軸受部Cに配置された軸受のための潤滑のために、やはり第1の潤滑剤供給部43が設けられている。軸受部Dには、第2の貫通案内路39を介して潤滑剤が供給される。この実施例では、潤滑剤用の供給部がジャーナルクロスの相対する互いに反対の側の2つの端部に設けられている。これにより、ジョイントヨーク3の屈折されていない配置形式において、中央に配置された潤滑剤供給部に対する接続を設けることが可能となる。この中央の潤滑剤供給部からは、各軸受部A,B,C,Dに潤滑剤が供給され得る。この場合、各軸受部A,B,C,Dには、それぞれ1つの専用の潤滑剤供給部41が対応している。これにより、各軸受に適合させて潤滑剤を供給することが可能になる。これにより、各軸受部には、実際の所要量に合わせて潤滑剤を供給することができる。しかし利点は、ジョイントシャフトの静止状態において、中央の潤滑部がアクセスし易くなるような位置へジョイントシャフトを意図的に位置決めすることができることである。軸受の潤滑は静止状態において行われるように規定されている。ただし、回転貫通案内路が設けられていれば、作動中であっても、回転貫通案内路を介して潤滑を行うことができる。
【0029】
図3には、択一的な別の構成が示されている。この構成では、2つのジャーナル端部にそれぞれ2つの潤滑剤供給部が対応している。潤滑剤供給部41は、90°の角度を成して配置されている。これにより、ユニバーサルジョイントの他方の側へのチェンジなしに、ひいてはジョイントシャフトの他方の側へのチェンジなしに、ユニバーサルジョイント7の静止状態においてこのユニバーサルジョイントのすべての軸受を潤滑することが可能になる。この構成では、軸受部Bに通じた第1の貫通案内路37がジャーナルクロス内に真っ直ぐに形成されている。軸受部Dに通じた第2の貫通案内路39も、真っ直ぐに形成されている。ジャーナルクロス9の第1の中心軸線31および第2の中心軸線33は一点鎖線で描かれている。
【0030】
図4には、軸受を備えたジャーナルクロスの構造が詳細に描かれている。ジャーナルクロス9は、一体に形成されている。ジャーナルクロスには、中央孔47が形成されている。ジャーナルクロスの中心軸線31,33は一点鎖線で描かれている。この中央孔47は端部側において内側のカバー27によって閉じられている。中央孔47の内部では、各ジャーナル端部に閉鎖プレート49が配置されているので、内側のカバー27と閉鎖プレート49との間にはギャップが生じる。内側のカバー27には、潤滑剤供給部45が形成されている。潤滑剤の供給時には、内側のカバー27と閉鎖プレート49との間のギャップに潤滑剤が流入する。このギャップから潤滑剤は、ジャーナルクロスに形成された潤滑剤供給部41に流入する。具体的な実施例では、この潤滑剤は第1の貫通案内路37に流入する。この貫通案内路は図2に示したように折り曲げられて形成されている。この貫通案内路を介して、潤滑剤は、対応する軸受部Bに到達する。軸受部Bでは、潤滑剤が軸受部Bのラジアル軸受15を介してスラスト軸受13に導かれる。このスラスト軸受を通って、潤滑剤は潤滑剤流出部51において再び流出することができる。これにより、潤滑剤の部分的な交換も実施され得る。この場合、潤滑剤流出部51において再びほぼ不純物を有しない潤滑剤が流出するようになるまで、潤滑剤が導入される。
【0031】
ラジアル軸受15は、転動体17を備えた転がり軸受として構成されている。これらの転動体17は、内側の軸受エレメント19と外側の軸受エレメント21との間に配置されている。内側の軸受エレメント19と外側の軸受エレメント21とは、ジャーナルに対して同軸的に配置されている。軸方向で端部側には、外側のカバー25が配置されている。この外側のカバー25は、位置固定リング23によってジョイントヨークの凹部内に位置固定される。特にこの図面から判るように、一方のジャーナル端部から2つの軸受部を潤滑できるようにするために、少数の構成部分しか必要とされない。
【符号の説明】
【0032】
1 ジョイントシャフト
3 第1のジョイントヨーク
4 屈折されていないジョイント部分
5 第2のジョイントヨーク
6 屈折されたジョイント部分
7 ユニバーサルジョイント
9 ジャーナルクロス
11 ジャーナルクロスの端部
12 軸受部、軸受全体
13 スラスト軸受
15 ラジアル軸受
17 転動体
19 内側の軸受エレメント
21 外側の軸受エレメント
23 位置固定リング
25 外側のカバー
27 内側のカバー
31 第1の中心軸線
33 第2の中心軸線
35 潤滑剤用の貫通案内路
37 第1の貫通案内路
39 第2の貫通案内路
41 潤滑剤供給部
43 第1の潤滑剤供給部
45 第2の潤滑剤供給部
47 ジャーナルクロスの中央孔
49 閉鎖プレート
51 潤滑剤流出部
61 中央の潤滑剤供給部
図1
図2
図3
図4