(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】巻取り装置を監視するための方法、および巻取り装置
(51)【国際特許分類】
D02J 1/22 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
D02J1/22 302A
D02J1/22 G
(21)【出願番号】P 2020528293
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2018081868
(87)【国際公開番号】W WO2019101717
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】102017010934.6
(32)【優先日】2017-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーヌルフ ザウアー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ファウルシュティヒ
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012025406(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013000824(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015004845(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第19916607(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第19840408(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010009164(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007049459(DE,A1)
【文献】特表2016-535713(JP,A)
【文献】特表2013-500402(JP,A)
【文献】特表2016-533992(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011771(WO,A1)
【文献】特表2010-529305(JP,A)
【文献】特開2005-281909(JP,A)
【文献】特開2003-104626(JP,A)
【文献】国際公開第2011/006645(WO,A1)
【文献】特開2013-184828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02J 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡糸プロセスにおいて糸用の巻取り装置を監視するための方法であって、複数の糸を1つの糸群として、少なくとも1つの駆動されるゴデットユニットによって案内し、前記糸を前記糸群から分離後に複数の変向ローラによって複数の巻取りユニットに分配して、パッケージに巻成し、かつ少なくとも1つの作動パラメータを監視する、方法において、
前記ゴデットユニットの1つのゴデットモータのモータトルク、および/または駆動される前記変向ローラのうちの1つの変向ローラのローラモータの少なくとも1つのモータトルクを、作動パラメータとして監視
し、糸群の引出し、糸群の案内および延伸、または糸の巻取りおよび分離中の糸張力を監視するために、前記作動パラメータが監視される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記モータトルクの少なくとも1つの
初期値を検出し、前記
初期値を記憶し、かつ前記モータトルクの、後の時点で検出された
現在値を、前記
初期値と比較する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モータトルクの前記
現在値を、継続的に時間をおいて検出して、前記
初期値と比較する、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記モータトルクの前記
初期値をローラモータ毎に検出し、かつ前記モータトルクの前記
初期値の平均値を基準値として確定する、
請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記モータトルクの前記
現在値をローラモータ毎に検出し、かつ前記基準値と比較する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
溶融紡糸プロセスにおける合成糸用の巻取り装置であって、少なくとも1つのゴデットユニット(1)、複数の変向ローラ(4.1~4.5)、複数の巻取りユニット(3.1~3.5)、1つの制御装置(8)、および1つの監視ユニット(9)を備えており、該監視ユニット(9)は、作動パラメータを監視するために少なくとも1つのセンサ手段(10)に接続されている、巻取り装置において、
前記センサ手段(10)は、前記ゴデットユニット(1)のゴデットモータ(1.2,1.2’)の制御器(1.3,1.3’)に、かつ/または駆動される変向ローラ(4.1~4.5)のうちの1つの変向ローラのローラモータ(5.1~5.5)の少なくとも1つの制御ユニット(6.1~6.5)に、モータトルクを検出するために対応配置されて
おり、
前記監視ユニット(9)は、前記モータトルクを作動パラメータとして監視し、糸群の引出し、糸群の案内および延伸、または糸の巻取りおよび分離中の糸張力を監視するために、前記作動パラメータが監視される
ことを特徴とする、巻取り装置。
【請求項7】
複数の制御ユニット(6.1~6.5)が、複数のローラモータ(5.1~5.5)のために設けられており、かつ前記制御ユニット(6.1~6.5)に分配された複数のセンサ手段(1
0)が、前記監視ユニット(9)に接続されている、
請求項6記載の巻取り装置。
【請求項8】
前記センサ手段(10)は、モータ電流の電流計(10.1~10.7)からなり、前記モータ電流は、作動パラメータとしてのモータトルクに変換される、
請求項6または7記載の巻取り装置。
【請求項9】
前記監視ユニット(9)は、評価電子機器(9.1)、メモリ(9.2)、およびコンパレータ(9.3)を備えて、前記制御装置(8)の内部に組み込まれている、
請求項6から8までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項10】
前記制御器(1.3,1.3’)は、制御電子機器として前記ゴデットモータ(1.2,1.2’)内に、かつ/または前記制御ユニット(6.1~6.5)は、制御電子機器として前記ローラモータ(5.1~5.5)内に組み込まれている、
請求項6から9までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載された、溶融紡糸プロセスにおいて糸用の巻取り装置を監視するための方法、および請求項6の前提部に記載された、溶融紡糸プロセスにおける糸用の巻取り装置に関する。
【0002】
合成糸の製造が行われる溶融紡糸プロセスでは、ポリマメルトから、束ねられたフィラメントのそれぞれ1つの群から成る糸が形成され、これらの糸は冷却後に引き出されて、パッケージに巻き取られる。このとき糸の物理的な特性は、ほぼ引出しおよび延伸ならびに後続の巻取りによって確定される。したがって、溶融紡糸プロセスにおいてはいわゆるテークアップシステムが極めて重要であることが公知である。このとき糸を引き出すために紡糸装置の下に配置されている、ゴデット装置および巻取り装置がテークアップシステムと呼ばれる。このようなテークアップシステムは、今日、ここでは巻取り装置と呼ばれている機械ユニットとして度々使用される。
【0003】
このような巻取り装置は、例えば独国特許出願公開第102007049459号明細書に基づいて公知である。したがってこの公知の巻取り装置は、駆動される1つのゴデットユニット、複数の巻取りユニットの上流に配置されている複数の変向ローラ、および1つの制御装置を含んでいる。ゴデットユニットは、糸群として通常紡糸装置から引き出されるすべての糸を一緒に案内する。ゴデットユニットからの進出後に、糸の分離が行われ、これによって、それぞれ個々の糸を巻き取りユニットのうちの1つの巻取りユニットにおいてパッケージに巻成することができる。巻取りを監視するために、変向ローラのうちの少なくとも1つの変向ローラの作動パラメータが監視される。このようにすると、変向ローラの回転数または変向ローラの支持力によって、糸のうちの1本の糸の案内をその均一性に関してコントロールすることができる。
【0004】
しかしながら公知の方法および公知の巻取り装置では、糸群の案内はまったくコントロールされていないままである。しかしながらまさにゴデットユニットにおける糸の引出しおよび延伸は、物理的な特性に決定的な影響を及ぼすので、巻取りユニットへの糸群の均一な引出しおよび支障のない分離は、後の糸品質に対して極めて重要である。
【0005】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の、巻取り装置を監視するための方法、および冒頭に述べた形式の巻取り装置を改良して、糸群の案内および糸の分離案内を監視することができる、方法および巻取り装置を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、監視を、糸群の案内および個々の糸の案内によって決定的な影響を受ける作動パラメータを用いて行うことにある。
【0007】
この課題は本発明によれば、巻取り装置を監視するための方法のためには、ゴデットユニットの1つのゴデットモータのモータトルク、および/または駆動される変向ローラのうちの1つの変向ローラのローラモータの少なくとも1つのモータトルクを、作動パラメータとして監視することによって解決される。
【0008】
巻取り装置のための解決策は、センサ手段が、ゴデットユニットのゴデットモータの制御器に、かつ/または変向ローラのうちの1つの変向ローラのローラモータの少なくとも1つの制御ユニットに、モータトルクを検出するために対応配置されていることにある。
【0009】
本発明の好適な発展形態は、それぞれの従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0010】
本発明が利用している認識は、糸を案内するためまたは糸群を案内するためには、引出し時または巻取り時に所望の糸張力を生ぜしめるために、1つのローラの駆動装置の確定されたモータトルクが必要であるということである。その点ではゴデットユニットの1つのゴデットモータのモータトルク、または変向ローラの1つのローラモータのモータトルクが、糸案内の均一性をコントロールするために特に適している。したがってモータトルクの監視によって、糸群の引出し、糸群の案内および延伸、または糸の巻取りおよび分離をコントロールすることができる。これによって本発明に係る方法は、溶融紡糸プロセスにおいて高い均一性を備えた糸を生ぜしめるために特に好適である。
【0011】
しかしながらここで明確に付言しておくと、モータトルクの検出は基本的に、モータ電流およびモータ電圧の直接的な測定または間接的な測定によって行うことが可能である。
【0012】
ゴデット駆動装置の、溶融紡糸プロセスにおいて発生するモータトルクは、例えば糸の数、糸番手、延伸率、軸受摩擦、および特に風による損失(Windverlust)のような多くのパラメータに関連しているので、本発明に係る方法の特に好適な発展形態では、モータトルクの少なくとも1つのプロセス値を検出し、プロセス値を記憶し、かつモータトルクの、後の時点で検出された運転状態の値を、プロセス値と比較する。このようにすると、溶融紡糸プロセスの開始時に、モータトルクの、パラメータの調節後に発生するプロセス値を検出することができる。次いでこのプロセス値は、後続の運転状態の値を評価することを目的として、監視のために役立つ。これによって、以前は経験的に求められていた目標値の設定を省くことができる。
【0013】
主として制御信号を伝達する汎用のバスシステムを介したデータ伝達を保証するために、本発明に係る方法の好適な発展形態によれば、モータトルクの運転状態の値を、継続的に時間をおいて検出して、プロセス値と比較する。このようにすると、プロセス監視を比較的僅かなデータ量によって実現することができる。
【0014】
しかしながらまた基本的には、モータトルクの運転状態の値を、連続的に中断なしに求めるという可能性もある。
【0015】
紡糸装置からの糸群の引出し時に、個々の糸は、ゴデットユニットにおける糸の処理間隔に関係する比較的大きな紡糸ピッチに基づいて、種々様々な変向、ひいては種々様々な案内ヒストリを有するので、巻取りユニットにおけるローラモータのモータトルクのプロセス値を求める場合に、方法の好適な変化形態では、モータトルクのプロセス値をローラモータ毎に検出し、かつモータトルクのプロセス値の平均値を基準値として確定する。このようにすると、既に基準値とのプロセス値の比較から、糸の巻取り時の糸案内における、場合によっては発生する差異を認識することができる。
【0016】
次いでプロセスの均一性を監視するために、モータトルクの運転状態の値をローラモータ毎に検出し、かつ基準値と比較する。このようにすると、巻取りユニットのそれぞれの巻取りユニットを、糸が巻取り張力の所望の均一性をもってパッケージに巻成されるか否かに関して監視することができる。
【0017】
本発明に係る巻取り装置は、糸群の引出しまたは延伸と、糸の個別案内とを監視できることによって傑出している。さらに糸群の案内時に監視された作動パラメータを、糸の個別案内時に発生する作動パラメータと互いに関連させて比較することでき、この結果ここでも場合によっては発生する差異が早期に認識される。そのために本発明に係る巻取り装置では、センサ手段は、ゴデットユニットのゴデットモータの制御器に、かつ/または駆動される変向ローラのうちの1つの変向ローラのローラモータの少なくとも1つの制御ユニットに、モータトルクを検出するために対応配置されている。このときセンサ手段は、モータトルクの直接的な値を検出するのに適していても、または択一的に、モータトルクに変換されるモータ電流およびモータ電圧を測定するのに適していてもよい。ゴデットモータまたはローラモータのモータトルクには、糸案内のために重要なすべてのパラメータが存在している。例えば1本または複数本の糸における糸引張り力は、それぞれの駆動装置のモータトルクに対する直接的な影響を有している。同様に糸の数および糸番手は、ゴデットモータのモータトルクに影響を及ぼす。さらにモータトルクは、それぞれのゴデットユニットおよびそれぞれの変向ローラの状態に関する情報をも含んでいる。したがって軸受摩擦または風による損失も、ゴデットモータまたはローラモータの高速時にはモータトルクに影響を及ぼす。
【0018】
糸群の監視の他に、巻取りユニットにおける個別糸の完全監視を実現するために、複数の制御ユニットが、複数のローラモータのために設けられており、このとき複数のセンサ手段が、監視ユニットに接続されている。
【0019】
本発明に係る巻取り装置の好適な発展形態によれば、センサ手段は、モータ電流の電流計によって形成されており、モータ電流は、作動パラメータとしてのモータトルクに変換される。
【0020】
そのために監視ユニットは評価電子機器を有しており、この結果プロセスの開始時にモータトルクのプロセス値が、かつプロセス中に、モータトルクの継続的に求められる運転状態の値が検出可能である。さらなる評価のために監視ユニットは、メモリおよびコンパレータを備えて構成されていて、かつ制御装置の内部に組み込まれている。このように構成されていると、トルクの継続的に求められる運転状態の値を、モータトルクの記憶されたプロセス値と連続的に比較することができる。
【0021】
ゴデットモータおよびローラモータの構成に関連して、制御器または制御ユニットは別個に配置されている。しかしながら特に好適な構成では、制御器は、制御電子機器としてゴデットモータ内に、かつ/または制御ユニットは、制御電子機器としてローラモータ内に組み込まれている。そのためにゴデットモータおよび/またはローラモータは、例えばブラシレスの同期モータによって形成されていてよい。
【0022】
巻取り装置を監視するための本発明に係る方法および本発明に係る巻取り装置は、フレキシブルに使用可能であり、かつ公知のすべての合成糸を製造するために適している。したがってゴデットユニットの構成に関連して、複数のゴデットの使用によって完全延伸された糸を、または僅かな数のゴデットによって部分延伸された糸を製造することができる。組み込まれたゴデットユニットを備えた本発明に係る巻取り装置は、完全なテークアップシステムとして、公知のすべての紡糸装置と組み合わせることが可能である。このようにして紡糸装置において生ぜしめられた糸群を、巻取り装置のゴデットユニットによって直接引き出すことができる。
【0023】
次に本発明に係る方法についてさらに説明するために、添付の図面を参照しながら、本発明に係る巻取り装置の幾つかの実施例について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る巻取り装置の実施例を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示された実施例を概略的に示す正面図である。
【
図3】巻取り装置の巻取りユニットにおける、糸の個別案内のために駆動される変向ローラを、概略的に示す平面図である。
【
図4】巻取り装置の制御装置の監視ユニットの構造を概略的に示す図である。
【
図5】巻取り装置の巻取りユニットにおける駆動される変向ローラの別の実施例を、概略的に示す平面図である。
【0025】
図1および
図2には、本発明に係る巻取り装置の1実施例が複数の見方で示されている。
図1には実施例が側面図で、
図2には正面図で示されている。本発明に係る巻取り装置の実施例は、
図1および
図2においてそれぞれ、複数の糸7.1から成る糸群7が同時に個々のパッケージ15に巻成される作動状況で示されている。糸群7は、巻取り装置の上流に配置された紡糸装置において直接押し出されて冷却される。ここでは図示されていない紡糸装置および図示された巻取り装置は、一緒になって溶融紡糸プロセスにおいて合成糸を製造するために働く。
【0026】
図1および
図2に示された実施例の以下における記載は、両方の図のうちのいずれかを特に参照しない限り、両方の図に関するものである。
【0027】
巻取り装置は、本実施例ではゴデットユニット1を有しており、このゴデットユニット1は、ゴデット保持体1.4に保持されている。ゴデット保持体1.4は、全部で5つの巻取りユニット3.1~3.5を含んでいる機械フレーム2に支持されている。
【0028】
ゴデットユニット1は、本実施例ではS字形の糸走路に配置された2つのゴデット1.1,1.1’と、対応配置されたゴデットモータ1.2,1.2’とによって構成される。ゴデットモータ1.2,1.2’のそれぞれのゴデットモータには、制御器1.3,1.3’が対応配置されている。
【0029】
機械フレーム2内に形成された巻取りユニット3.1~3.5は、突出している巻取りスピンドル11.1に沿って延びている。巻取りユニットの数は一例である。例えば10、12またはさらに多くの巻取りユニットが、互いに並んで平行に機械フレーム2内に形成されていてよい。
【0030】
巻取りスピンドル11.1は、回転可能に支持されたターンテーブル12に保持されていて、このターンテーブル12は、180°ずらされて第2の巻取りスピンドル11.2を保持している。巻取りスピンドル11.1,11.2には、それぞれ2つのスピンドル駆動装置13.1,13.2が対応配置されている。ターンテーブル12の回転運動は、テーブル駆動装置14によって制御される。ターンテーブル12の回転運動によって、巻取りスピンドル11.1,11.2を交互に交換領域と作動領域とに旋回させることができる。巻取りスピンドル11.1,11.2の周囲には、複数の巻管16が配置されているので、巻取りユニット3.1~3.5毎に1つのパッケージ15を、巻管16のうちの1つの巻管に巻成することができる。
【0031】
図1および
図2に示された作動状況において、巻取りスピンドル11.1においては全部で5つのパッケージ15が同時に巻成される。
【0032】
糸7.1をパッケージ15に巻成するために、綾振り装置17が設けられており、この綾振り装置17は、それぞれの巻取りユニット3.1~3.5に対して、糸を往復案内する1つの綾振り手段を有している。このとき綾振り手段としては、振動する糸ガイドまたは並進運動させられる複数の糸ガイドを使用することができる。綾振り装置17は、綾振り駆動装置17.1によって駆動される。
【0033】
パッケージ15の周囲における糸の巻重ねは、回転可能な圧着ローラ18によって助成され、この圧着ローラ18は、すべての巻取りユニット3.1~3.5にわたって延びていて、かつパッケージ15の周囲に接触している。
【0034】
ゴデットユニット1から引き出された糸群7を分離させ、かつ巻取りユニット3.1~3.5に供給するために、巻取りユニット3.1~3.5の走入領域にはそれぞれ1つの変向ローラ4.1~4.5が配置されている。変向ローラ4.1~4.5は、回転可能に支持されていて、かつそれぞれローラモータ5.1~5.5によって駆動されている。変向ローラ4.1~4.5は、機械フレーム2に支持されているローラ保持体20に保持される。ローラモータ5.1~5.5のそれぞれのローラモータには、それぞれ1つの制御ユニット6.1~6.5が対応配置されている。
【0035】
さらなる説明のために、
図1および
図2の他に、追加的に
図3を参照する。
図3には、ゴデットユニット1および変向ローラ4.1~4.5が平面図で示されている。変向ローラ4.1~4.5は、ローラ保持体20に回転可能に支持されていて、かつ反対側に位置するように配置されたローラモータ5.1~5.5に接続されている。ローラモータ5.1~5.5に対応配置された制御ユニット6.1~6.5は、それぞれ1つのセンサ手段10を有しており、このセンサ手段10は、この場合、それぞれ1つの電流計10.1~10.5によって構成されている。制御ユニット6.1~6.5および電流計10.1~10.5は、例えばバスシステムを介して制御装置8に接続されている。制御装置8は、特に電流計10.1~10.5に接続されている監視ユニット9を含んでいる。
【0036】
両ゴデットモータ1.2,1.2’の制御器1.3,1.3’は、同様にそれぞれ1つの電流計10.6,10.7を有しており、電流計10.6,10.7は、制御器1.3,1.3’を介して制御装置8および監視ユニット9に接続されている。
【0037】
図1の図面から分かるように、制御装置8は駆動制御ユニット19に接続されており、この駆動制御ユニット19は、スピンドル駆動装置13.1,13.2、テーブル駆動装置14、および綾振り駆動装置17.1に対応配置されている。
【0038】
図1および
図2に示された実施例では、溶融紡糸プロセスにおけるプロセス開始時に、最初に糸群7が吸込みインジェクタを用いて、ゴデットユニット1のゴデット1.1,1.1’と巻取りユニット3.1~3.5の変向ローラ4.1~4.5とに仕掛けられ、これによって糸群7の糸7.1を、巻取りスピンドル11.1または巻取りスピンドル11.2のいずれかに巻き始めることができる。巻き始めが行われるや否や、例えばゴデット1.1の制御器1.3においてモータ電流が電流計10.7によって測定され、かつ監視ユニット9の内部においてモータトルクに変換される。ゴデットモータ1.2のトルクの、この時点において測定された値は、プロセス値と呼ばれ、かつ後のプロセス監視のために記憶される。プロセスの進行継続時に、電流計10.7の信号は監視ユニット9において連続的にまたは断続的に、モータトルクのその都度の運転状態の値に変換される。モータトルクの、後の時点において検出された運転状態の値は、次いでトルクの、最初に求められたプロセス値と比較される。このようにして紡糸装置からの糸群7の引出しを、継続的に監視することができる。これによって不自然な偏差発生時に、プロセスへの介入が可能である。
【0039】
巻取りユニットを監視するために、かつ特に個別糸7.1への糸群の分離を監視するために、追加的にまたは択一的に、制御ユニット6.1~6.5における電流計10.1~10.5の信号が監視ユニット9に供給される。監視ユニット9において、ローラモータ5.1~5.5のそれぞれのローラモータに関して、瞬間的なモータトルクのその都度の値が求められる。このとき同様に、モータトルクの、プロセス開始時に検出された値を、プロセス値として記憶し、かつシステムにおいて格納することができる。モータトルクの、時間的に後で求められた値は、運転状態の値として検出され、かつ記憶されたプロセス値と比較される。このようにして、それぞれ個々の巻取りユニット3.1~3.5の均一な糸案内および巻取りを、連続的に監視することができる。
【0040】
さらに糸群7の延伸をゴデットユニット1の完全監視によって拡張させることも可能である。このとき制御装置1.3’における電流計10.6の測定信号が、監視ユニット9に伝達され、かつこの監視ユニット9によって、ゴデットモータ1.2’のモータトルクの値に変換される。このようにして両ゴデットモータ1.2,1.2’のモータトルクの関係を、糸群7の延伸の監視のために使用することができる。
【0041】
さらに、変向ローラ4.1~4.5の上流におけるゴデット1.1のモータトルクは、合計信号としてローラモータ5.1~5.5の個別信号との関連において比較される。
【0042】
このとき基本的には、変向ローラ4.1~4.5を互いに異なる周速度で制御することも可能であり、これによってゴデット1.1のゴデットモータ1.2’のモータトルクに対する、ローラモータ5.1~5.5のモータトルクにおけるそれぞれ等しい関係を得ることができる。これにより好ましくは糸群7の分離時における案内もしくは糸張力における不均一性を、好適に補償することができる。
【0043】
しかしながらまた基本的には、変向ローラ4.1~4.5の周速度が等しい場合には、モータトルクの、最初に求められたプロセス値を合算し、かつ平均値を計算することよって基準値に変換するという可能性がある。これによってこの基準値を、ローラモータ5.1~5.5のモータトルクの運転状態の値の監視および判定のために使用することができる。
【0044】
監視を実施するために、
図4には監視ユニット9の構造が概略的に例示されている。このとき監視ユニット9は、センサ手段10もしくは電流計10.1~10.7によって供給された測定信号I
tを評価するために、評価電子機器9.1を有している。評価電子機器9.1には、電子式のメモリ9.2とコンパレータ9.3とが対応配置されている。メモリ9.2は、モータトルクのプロセス値M
pを記憶するために働く。コンパレータ9.3内において、モータトルクの、メモリ9.2内に格納されたプロセス値M
pが、モータトルクのそれぞれの運転状態の値M
zと比較される。このときモータトルクの求められた差異Δ
Mを、可能な限り均一なプロセス案内、ひいては糸の引出しおよび巻取り時における糸品質の高い均一性を得るために利用することができる。
【0045】
しかしながらここで付言しておくと、監視ユニット9に、ここでは図示されていないインタフェースを介して、ゴデットモータ1.2およびローラモータ5.1~5.5のモータトルクの、直接設定された目標値を与えることも可能である。このような場合にはモータトルクの運転状態の値を、設定された目標値と比較することができる。
【0046】
上に述べた実施例では、ゴデットモータ1.2,1.2’およびローラモータ5.1~5.5は、制御器1.3および制御ユニット6.1~6.5が別個に配置されている同期機または非同期機によって形成される。しかしながらまた基本的には、制御電子機器がモータの内部に組み込まれているようなモータを使用するという可能性がある。例えばローラモータ5.1~5.5およびゴデットモータ1.2,1.2’は、選択的にブラシレスの同期モータによって形成されていてよく、このような同期モータでは、制御ユニット(制御電子機器)6.1~6.5はローラモータ5.1~5.5内に、かつ制御器1.3,1.3’はゴデットモータ1.2,1.2’内に組み込まれている。このような実施例が、
図5に概略的に示されている。
【0047】
本発明に係る巻取り装置の、
図1および
図2に示された実施例の構造は、一例である。特にゴデットユニット1は、図示の実施例では、いわゆるPOY糸を製造するのに適している。しかしながら本発明に係る方法および本発明に係る巻取り装置は、そのような糸の製造に制限されるものではない。逆に、糸群が、いわゆるFDY糸を生ぜしめるために完全延伸される、ゴデットユニットをも使用することができる。さらにまた、例えば巻縮糸またはテクニカルヤーンを製造するために、追加的な処理装置が組み込まれていてもよい。
【0048】
したがって本発明に係る巻取り装置および本発明に係る方法は、合成糸を製造するための公知の溶融紡糸プロセスのそれぞれの溶融紡糸プロセスにおいて使用するために、フレキシブルに使用可能である。