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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】鋳造装置及び鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/049 20060101AFI20230124BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20230124BHJP
   B22D 35/00 20060101ALI20230124BHJP
   B22D 11/103 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B22D11/049
B22D11/00 E
B22D35/00 C
B22D11/103 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020529677
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018080941
(87)【国際公開番号】W WO2019110250
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】20171932
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】591237869
【氏名又は名称】ノルスク・ヒドロ・アーエスアー
【氏名又は名称原語表記】NORSK HYDRO ASA
【住所又は居所原語表記】0240 OSLO,NORWAY
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】ホーコンセン、アリルド
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515688(JP,A)
【文献】特開昭62-107846(JP,A)
【文献】実公昭51-002171(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/049
B22D 11/00
B22D 35/00
B22D 11/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造品(35)の連続又は半連続鋳造のための鋳造装置(10)であって、
液体金属(20)を供給するための貯留部(15)であって、前記液体金属(20)が液体アルミニウム又はアルミニウム合金であり、且つ前記鋳造品(35)がアルミニウム又はアルミニウム合金製品である、前記貯留部(15)と、
液体金属(20)を少なくとも一時的に保持し且つ前記液体金属(20)を少なくとも部分的に凝固させて鋳造品(35)にするための金属キャビティ(30)を有する直接チル鋳造用金型(25)であって、
前記液体金属(20)用の流路(55)が前記貯留部(15)と前記金型キャビティ(30)との間に画定され、且つ
前記液体金属(20)が重力(g)によって前記貯留部(15)から前記流路(55)に沿って前記金型キャビティ(30)に流れ込む動きをするように前記鋳造装置(10)が構成され、
前記液体金属(20)が、前記金型(25)の第1の垂直方向上側(26)を通じて前記金型キャビティ(30)に入り、且つ
前記鋳造品(35)が、前記金型(25)の第2の垂直方向下側(27)を通じて金型(25)から出る、直接チル鋳造用金型(25)と、
前記貯留部(15)と前記金型キャビティ(30)との間の前記流路(55)に配置されたポンプ(60)であって、
前記ポンプ(60)が、前記貯留部(15)から前記金型キャビティ(30)内への前記液体金属(20)の流れを制御するために、重力(g)によって前記貯留部(15)から前記流路(55)に沿って前記金型キャビティ(30)に流れ込む前記液体金属(20)の動きに抗して作用する力を前記液体金属(20)中に発生させるように動作可能であり、
前記ポンプ(60)が直流電磁ポンプであり、
前記液体金属(20)が層流で前記金型キャビティ(30)に流入するように、分流器(90)が、前記金型キャビティ(30)内で前記液体金属(20)の少なくとも一部を所定の方向に導くために前記ポンプ(60)の下流側の前記流路(55)に設けられ
前記所定の方向は、前記貯留部(15)と前記金型キャビティ(30)との間の前記流路(55)に対して垂直である、ポンプ(60)と
を備える、鋳造装置(10)。
【請求項2】
前記金型キャビティ(30)内の液体金属(20)の液面(h)を検出するための、且つ前記金型キャビティ(30)内の液体金属(20)の前記液面(h)を表す液面値を出力するためのセンサ(75)と、
制御器(95)であって、前記センサ(75)及び前記ポンプ(60)が前記制御器(95)に動作可能に接続され、且つ前記液面値と前記設定値との差が最小限に抑えられるように、前記制御器(95)が、前記液面値と前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)の所望の液面を表す所定の設定値とに基づいて前記ポンプ(60)を動作させるように構成される、前記制御器(95)と
を更に備える、請求項1に記載の鋳造装置(10)。
【請求項3】
前記金型キャビティ(30)内の雰囲気が前記鋳造装置(10)の周囲の雰囲気から隔離されるように、前記金型(25)の前記第1の側(26)が少なくとも部分的に密閉され、且つ
前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)と前記第1の側(26)との間の前記金型キャビティ(30)内の前記雰囲気が、前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)の酸化を制御するために制御される、請求項2に記載の鋳造装置(10)。
【請求項4】
前記センサ(75)が、レーダ放射領域(85c)における前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)に入射する80GHz以上の周波数を有する電磁レーダ放射(76)を放出するレーダセンサである、請求項2又は3に記載の鋳造装置(10)。
【請求項5】
前記レーダセンサ(75)と前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)との間のレーダビームパス内に、少なくとも部分的レーダ放射透過体(85)が設けられ、且つ
前記少なくとも部分的レーダ放射透過体(85)が、2つの外側表面(85a、85b)を有し、前記2つの外側表面(85a、85b)の各々は、前記少なくとも部分的レーダ放射透過体(85)によって反射されたレーダ放射(76)を前記レーダセンサ(75)で、検出するのを回避するために、前記レーダ放射領域(85c)における前記金型キャビティ(30)内の前記レーダセンサ(75)と前記液体金属(20)との間の直線に平行でない法線ベクトルを有する、請求項4に記載の鋳造装置(10)。
【請求項6】
前記少なくとも部分的レーダ放射透過体(85)が、前記金型の前記密閉された第1の側(26)と一体に設けられる、請求項に記載の鋳造装置(10)。
【請求項7】
前記制御器(95)が、前記鋳造品(35)の鋳造作業中に前記所定の設定値を変更するように構成される、請求項2~6のいずれか一項に記載の鋳造装置(10)。
【請求項8】
前記制御器(95)が、前記鋳造品(35)の前記鋳造作業の初期における前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)のより高い液面を表す値から前記鋳造品(35)の前記鋳造作業の後期における前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)のより低い液面を表す値に前記所定の設定値を変更するように構成される、請求項7に記載の鋳造装置(10)。
【請求項9】
前記金型(25)が、前記鋳造品(35)の能動冷却のための手段(45、50)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の鋳造装置(10)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の鋳造装置を使用した鋳造品(35)の連続又は半連続鋳造方法であって、
貯留部(15)と金型キャビティ(30)との間に画定された流路(55)に沿って液体金属を前記貯留部(15)から直接チル鋳造用金型(25)の前記金型キャビティ(30)内に重力を用いて供給することと、
前記鋳造品(35)の鋳造中に前記金型キャビティ(30)への前記液体金属(20)の供給を制御して前記金型キャビティ(30)内の液体金属(20)の液面(h)を制御するために、前記重力によって生じる前記流路(55)に沿った前記液体金属(20)の前記流れに抗して作用するポンプ(60)を使用して前記液体金属(20)に作用する力を発生させることと
を含む、方法。
【請求項11】
前記金型キャビティ(30)内の前記液体金属(20)の所望の液面(h)を表す設定値を算出することと、
前記金型キャビティ(30)内の液体金属(20)の前記実際の液面(h)を表す実際の値を測定することと、
前記設定値と前記実際の値との差が最小限に抑えられるように、前記ポンプ(60)を使用して前記力の発生を制御することと
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポンプ(60)を使用して前記力を発生させることが、前記流路(55)に沿った前記液体金属(20)の流れに対向する方向を有する力を生じさせる、前記液体金属(20)に作用する電磁界を発生させることを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重力によって誘起される金属の流れに逆らうようにポンプを使用して液体金属の流れをより正確に且つ乱流を少なくして制御する金属の連続又は半連続鋳造のための鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続又は半連続鋳造法では、液体金属が鋳造用金型の金型キャビティ内に供給される。金型キャビティ内では、液体金属が少なくとも部分的に凝固して鋳造品となり、この鋳造品は、鋳造品と金型との相対移動によって生じた金型キャビティの開放側を通じて金型キャビティから出る。半連続鋳造法は、例えば、圧延用鋼塊(金属薄板などの圧延製品を製造するために例えば熱間圧延及び冷間圧延される鋼塊)、鍛造用鋼塊(鍛造製品に鍛造される鋼塊)、又は押出用ビレット(例えば、押出製品を製造するために押出プレスで押出成形されるビレット)を鋳造するために使用される。連続鋳造法は、例えば、中間製品として別々の製造ステップで熱間圧延及び冷間圧延される圧延用鋼塊を製造せずに圧延製品を連続的に製造するために使用される。
【0003】
鋳造装置は、通常、例えば融解炉又は電解法から融解槽に供給された液体金属を保持するための融解炉又は融解槽などの、液体金属を保持及び/又は生成するための貯留部を備える。液体金属は、貯留部から、例えば分配樋として実現される流路を介して、鋳造用金型の金型キャビティ内に供給される。金型キャビティ内では、液体金属が冷えて、少なくとも部分的に凝固する。鋳造品は、上述のように金型と鋳造品との相対移動によって、例えばスタータブロックの移動によって生じた金型キャビティの開放側を通じて金型キャビティから出る。
【0004】
従来の鋳造装置が図1に示されており、特許文献1で説明されている。図1から明らかであるように、従来の鋳造装置では、液体金属が、(ここでは断面図で示され樋として実現された)流路1を介して貯留部から金型3の金型キャビティ2内に供給される。流路1は、液体金属が流路1から出て金型キャビティ2に流れ込む、ここではノズル4として実現された、出口を備える。液体金属の流れの駆動力は重力である。液体金属の流れを制御するために、ピン組立体の垂直方向への移動によって、液体金属がノズル4を通って流れるのに利用可能な有効断面積を増加又は減少させることができ、それによって、流路1から金型キャビティ2内への液体金属の体積流量を制御する、ピン組立体5が提供される。鋳造品は、スタータブロック6の下方への移動によって金型キャビティ2から出る。
【0005】
より乱流の少ない液体金属供給システムを有し且つ改善された表面品質などの改善された特性を有する鋳造品の製造を可能にする鋳造装置及び鋳造方法を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願第2010/0032455A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者は、連続又は半連続鋳造作業中の金型と鋳造品との相対移動にもかかわらず金型キャビティ内の液体金属の液面が所定の値に一致するような金型キャビティ内の液体金属の液面の正確な制御に、鋳造品(鋳造製品としても知られる)の品質が強く依存することを見出した。発明者は、金型キャビティ内の低い金属静圧(図2のρ参照)と、液体金属が金型キャビティに入るときの液体金属の層流とによって、鋳造品の品質、特に表面品質が向上することを見出した。上で説明した従来の装置では、ピン組立体の移動に起因して、金型キャビティ内の金属液面の正確な制御が困難である。また、従来の鋳造装置では、ベンチュリ効果によって有効流れ断面が低減されて流速が増加するので、液体金属の乱流が発生する。乱流によって、鋳造すべき液体金属の酸化と鋳造品の品質問題とが生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この点に関して、前述の問題を回避又は解消するために、本発明の態様は、鋳造品の連続又は半連続鋳造(例えば、垂直直接チル鋳造)のための鋳造装置であって、液体金属を供給するための貯留部と、液体金属を少なくとも一時的に保持し且つ液体金属を少なくとも部分的に凝固させて鋳造品にするための金型キャビティを有する直接チル鋳造用金型であって、液体金属用の流路が貯留部と金型キャビティとの間に画定され、且つ液体金属が重力によって貯留部から流路に沿って金型キャビティに流れ込む動きをするように鋳造装置が構成され、液体金属が、金型の第1の垂直方向上側を通じて金型キャビティに入り、且つ鋳造品が、金型の第2の垂直方向下側を通じて金型から出る、直接チル鋳造用金型と、貯留部と金型キャビティとの間の流路に配置されたポンプであって、ポンプが、貯留部から金型キャビティ内への液体金属の流れを制御するために、重力によって貯留部から流路に沿って金型キャビティに流れ込む液体金属の動きに抗して作用する力を液体金属中に発生させるように動作可能である、ポンプとを備える、鋳造装置を提供する。鋳造品は、金型の第2の側を通じて直線状の垂直方向に直線的に金型から出てもよい。鋳造品の長手方向軸線は、少なくとも部分的な凝固から完全な凝固まで連続した直線であってよい。鋳造品は、押出用鋼塊又は圧延用スラブであってもよい。
【0009】
本発明によれば、液体金属の流れの制御性を向上させると同時に、流路に沿った液体金属の流れ断面積を従来の鋳造装置での流れ断面積よりも大きくすることができる。断面積が大きいほど、液体金属の乱流が少なくなり且つ層流が多くなることがある。例えば、本発明による流路の出口における最小流れ断面積は、溶融金属の流れを制御するためにピン組立体を使用する従来の鋳造装置よりも著しく大きい、2000mm(平方ミリメートル)であってもよい。本発明によれば、貯留部から金型キャビティ内への液体金属の流れが重力によって駆動され、且つ流れ方向を変化させずに流れ方向と反対方向に作用する力を発生させることによって流れを制限するためにポンプが使用される。換言すれば、本発明によれば、ポンプは、流量調整器として使用されてもよい。本発明によれば、ポンプは、貯留部から金型キャビティ内への液体金属の流れを完全に停止するために使用されてもよい。
【0010】
本発明の実施形態によれば、鋳造装置は、金型キャビティ内の液体金属の液面を検出するための、且つ金型キャビティ内の液体金属の液面を表す液面値を出力するためのセンサと、制御器であって、センサ及びポンプが制御器に動作可能に接続され得、且つ液面値と設定値との差が最小限に抑えられるように、制御器が、液面値とキャビティ内の液体金属の所望の液面を表す所定の設定値とに基づいてポンプを動作させるように構成され得る、制御器とを更に備え得る。
【0011】
本発明の実施形態によれば、金型の第1の側が密閉されてもよく、且つ金型キャビティ内の液体金属と第1の側との間のガス雰囲気が、金型キャビティ内の液体金属の酸化を制御するために制御されてもよい。
【0012】
本発明の実施形態によれば、センサは、レーダ放射領域において金型キャビティ内の液体金属に入射し得る例えば80GHz以上の周波数を有する電磁レーダ放射を放出するレーダセンサであってもよい。実施形態によれば、センサは、レーザ距離センサ、容量型距離センサ、又は超音波距離センサであってもよい。80GHz以上のレーダ周波数を有する電磁レーダ放射は、センサと液体金属の表面との間の金型キャビティ内に存在し得る煙及び塵埃を通り抜け得るので、このようなレーダ周波数を有するレーダセンサによって特に良好な結果が達成され得る。
【0013】
本発明の実施形態によれば、レーダセンサと金型キャビティ内の液体金属との間のレーダビームパス内に、少なくとも部分的レーダ放射透過体(at least partially radar radiation transparent body)が設けられてもよく、少なくとも部分的レーダ放射透過体が、少なくとも部分的レーダ放射透過体によって反射されたレーダ放射の、レーダセンサでの検出を回避又は低減するために、レーダ放射領域における金型キャビティ内のセンサと液体金属の間の直線に平行でない法線ベクトルを各々有し得る、2つの外側表面を有し得る。
【0014】
本発明の実施形態によれば、少なくとも部分的レーダ放射透過体は、金型の閉じた第1の側と一体に設けられてもよい。本発明によれば、ポンプは、電磁ポンプ、特に直流電磁ポンプである。電磁ポンプは、可動機械部分がないことによって液体金属の流れの正確で且つ遅延のない制御を可能にするので、特に有効である。
【0015】
本発明の実施形態によれば、制御器は、鋳造品の鋳造作業中に所定の設定値を変更するように構成されてもよい。
【0016】
本発明の実施形態によれば、制御器は、鋳造品の鋳造作業の初期における金型キャビティ内の液体金属のより高い液面を表す値から同じ鋳造品の鋳造作業の後期における金型キャビティ内の液体金属のより低い液面を表す値に所定の設定値を変更するように構成されてもよい。
【0017】
本発明の実施形態によれば、金型は、第2の側を通じて直接チル鋳造用金型キャビティから出ている鋳造品に水を噴霧するための冷却水ノズルなどの、鋳造品の能動冷却のための手段を備え得る。
【0018】
本発明によれば、液体金属は液体アルミニウム又はアルミニウム合金であり、且つ鋳造品はアルミニウム又はアルミニウム合金製品である。
【0019】
本発明によれば、分流器は、金型キャビティ内で液体金属の少なくとも一部を所定の方向に導くためにポンプの下流側の流路に設けられる。分流器は、垂直方向ではない方向に液体金属の一部が導かれるように構成されてもよい。例えば、分流器は、垂直方向から外れる方向を有する長手方向中心軸線を有する液体金属用の流路を画定する断面を有する管状構造(液体金属が通って金型キャビティに流れ込み得る)を備え得る。前記断面は、矩形断面、例えば正方形断面から、分流器の出口に隣接する矩形断面に向かって、上流から下流方向に流路に沿って変化し、例えば連続的に変化してもよい。この断面は、鋳造品が圧延用スラブである場合に特に有用である。断面は、矩形断面、例えば正方形断面から、分流器の出口に隣接する円形断面に、上流から下流方向に流路に沿って変化し、例えば連続的に変化してもよい。この断面は、鋳造品が押出用ビレットである場合に特に有用である。分流器は、水平成分を有する方向に液体金属の少なくとも一部が導かれるように構成されてもよい。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、上で説明した装置を使用した鋳造品の連続又は半連続鋳造方法であって、貯留部と金型キャビティとの間に画定された流路に沿って貯留部から直接チル鋳造用金型の金型キャビティ内に例えば重力のみを用いて液体金属を供給することと、金型キャビティ内への液体金属の供給を制御して、それによって金型キャビティ内の液体金属の液面を制御するために、重力によって生じる流路に沿った液体金属の流れに抗して作用するポンプを使用して液体金属に作用する力を発生させることとを含む、方法が提供される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、本方法は、金型キャビティ内の液体金属の所望の液面を表す設定値を算出することと、金型キャビティ内の液体金属の実際の液面を表す実際の値を測定することと、鋳造作業中に設定値と実際の値との差が最小限に抑えられるように、ポンプを使用して力の発生を制御することとを更に含み得る。
【0022】
本発明の実施形態によれば、ポンプを使用して力を発生させることは、流路に沿った液体金属の流れに対向する方向を有する力を生じさせる、液体金属に作用する電磁界を発生させることを含み得る。
【0023】
本発明の全ての実施形態及び特徴は、互いに組み合わされてもよい。装置に関する特徴はまた、本方法にも関係し、その逆も然りである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、従来技術による鋳造装置の図を示す。
図2図2は、本発明の実施形態による鋳造装置の概略図を示す。
図3図3は、本発明の実施形態による流路の概略図を示す。
図4図4は、本発明の実施形態による直流電磁ポンプの図2の線A-Aに沿った概略断面図を示す。
図5図5は、本発明の更なる実施形態による鋳造装置の概略図を示す。
図6図6は、本発明の更なる実施形態による鋳造装置の概略図を示す。
図7図7は、本発明の実施形態による、分流器を備える鋳造装置の概略図を示す。
図8図8は、本発明の実施形態による、制御器を備える鋳造装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面は必ずしも原寸に比例したものではなく、本発明を説明する種々の特徴のある程度簡略化された表現を提示するものであることを理解されたい。
【0026】
ここで本発明の種々の実施形態について詳細に言及し、それら実施形態の例を添付の図面に図示し、以下で説明する。本発明が例示的な実施形態と併せて説明されているが、本説明は、本発明をそれらの例示的な実施形態に限定するように意図されていないことが理解されるであろう。
【0027】
図2を参照すると、本発明による鋳造装置10は、貯留部15を備える。貯留部15は、液体金属20を供給してもよい。例えば、貯留部は、液体金属20を貯留及び/又は生成するための融解炉若しくは分配樋又は他の任意の手段であってもよい。
【0028】
液体金属20は、液体アルミニウム、液体アルミニウム合金、溶鋼又は他の任意の液体金属であってもよい。
【0029】
鋳造装置10は、直接チル鋳造用金型25を更に備える。鋳造用金型25は、液体金属20を受け入れ、液体金属20を少なくとも一時的に保持し、且つ液体金属20を少なくとも部分的に凝固させて鋳造品35にするための、金型キャビティ30を備える。金型キャビティ30は、鋳造用金型25の金型枠40によって金型キャビティ30の側面が囲まれてもよい。鋳造品35は、例えば、圧延用鋼塊、押出用ビレット、Tバー、又は他の任意の鋳造品35であってもよい。
【0030】
鋳造用金型25は、第1の垂直方向上側26と、第2の垂直方向下側27とを有し得る。液体金属20は、第1の側26を通じて/通って金型キャビティ30に入ってもよい。液体金属20は、金型キャビティ30内で少なくとも部分的に凝固して、鋳造品35を生成してもよい。図2は、液体金属20と、凝固が起こる部分凝固金属21の領域と、金型キャビティ内の凝固金属22とを概略的に示している。鋳造品35は、鋳造品35と鋳造用金型25との相対移動によって第2の側27を通じて金型キャビティ30から出てもよい。鋳造品35の鋳造工程は、任意選択的に非定常初期設定工程後に、新たな液体金属20が貯留部15から金型キャビティ30内に供給される一方で鋳造品35が製造されて下方向に連続的に移動する間に、液体金属20、部分凝固金属21及び凝固金属22に対応する領域の空間的位置が動かないままである、定常工程において行われ得る。
【0031】
鋳造用金型25は、金型キャビティ30内の液体金属20の能動冷却のための、及び/又は部分凝固金属21の能動冷却のための、及び/又は鋳造品35の能動冷却のための手段を備え得る。図2では、能動冷却のための手段は、金型枠40内の中空水路45によって実現される。図2における能動冷却のための手段は、水が開口50を通じて中空水路45から外に出て、鋳造品35に接触して鋳造品35を冷却し得るように、金型枠40に設けられた開口50を更に備える。冷却のために、水が中空水路45内に供給されてもよく、金型枠40を通る熱伝達によって金型キャビティ30内の液体金属20を冷却してもよく、また、開口50を通じて中空水路45から出て鋳造品35を直接冷却してもよい。図2では、鋳造品35を直接冷却している水が、鋳造品35の側面の波形領域によって概略的に示されている。
【0032】
更に図3を参照すると、鋳造装置10は、貯留部15と金型キャビティ30との間に画定される流路55を備え得る。流路55は、液体金属20が貯留部15から金型キャビティ30に流れ込むことができるように、貯留部15と金型キャビティ30との間に流体接続部を画定するように構成されてもよい。鋳造装置10は、液体金属20が貯留部15から金型キャビティ30に流れ込む動きをするように構成されてもよい。この動きは、図2では重力を表すベクトルを記号化したgと表示された矢印で示すように、重力によって生じ得る。流路55は、流導管又は流路管又は流通路として実現されてもよい。
【0033】
図2及び図3を参照すると、本発明による鋳造装置10は、貯留部15と金型キャビティ30との間の流路55に配置されたポンプ60を備える。ポンプ60は、貯留部15から金型キャビティ30に流れ込む液体金属20の動きに少なくとも部分的に(最大として完全に)逆らう、液体金属20に作用する力を生み出すように動作させてもよい。よって、貯留部15から金型キャビティ30内への液体金属20の流量は、ポンプ60によって(例えば、重力によって誘起される流れを制限することで)制御されてもよい。ポンプ60は、ポンプ60によって発生させる最大限の力によって貯留部15から金型キャビティ30内への液体金属20の流れが実質的に停止するが流れ方向は反転しないように動作させ又は構成されてもよい。ポンプ60によって発生させる力は、図2及び図5図8に上向き矢印で概略的に表されている。ポンプ60の動作によって、金型キャビティ30内の液体金属20の液面hが制御されてもよい。発明者は、鋳造品35の品質が鋳造作業中の金属液面hの正確な制御に強く依存することを見出した。図3における貯留部15とポンプ60との間の矢印よりも短いポンプ60と金型キャビティ30との間の矢印は、貯留部15から金型キャビティ30内への液体金属20の、重力によって誘起される流量の低減によって実現される、制御を概略的に表している。
【0034】
ポンプ60は、例えば、電磁ポンプ、特に、例えば図2及び図4に概略的に示すように可動部分のない誘導型直流(DC)電磁ポンプであってもよい。そのようなポンプはまた、本明細書において、以下では単に直流電磁ポンプとも呼ばれる。直流電磁ポンプ60は、高反応性(すなわち、ポンプ60への入力信号と、ポンプ60によって発生させる、液体金属20に作用する結果的に生じる力との間の短い時間遅延)と、良好な制御性(ポンプ60に供給される電流の制御を通じて、ポンプ60によって発生する力の量を正確に制御できる)とによって、液体金属20の流れの非常に正確な制御を可能にするので、本発明による鋳造装置10において特に有利である。図4は、図2の線A-Aに沿った直流電磁ポンプ60の概略断面図を示している。図4を参照すると、直流電磁ポンプ60は、流路55の一部をなす内腔を画定するケーシング61を備え得る。直流電磁ポンプ60は、N磁極NとS磁極Sが流路55の対向する側面に配置された永久磁石65を更に備え得る。電磁ポンプ60は、2つの電極70が永久磁石65のN極NとS極Sとの間の線に直交して配設されるように流路55の側面に配設される2つの電極70を更に備え得る。電極70に電圧を印加することによる電極70の動作によって、貯留部15から金型キャビティ30内に流路55に沿ってケーシング61内部の液体金属20を流れる電流が起こり、これによって、液体金属20にローレンツ力が発生し、このローレンツ力は、重力によって貯留部15から金型キャビティ30に流れ込む液体金属20の動きに逆らう。これは、(ポンプ60によって発生させる力を低減することによる)貯留部10から金型キャビティ30内への流量の制御可能な低減又は増加をもたらし、次いで、鋳造作業中に金型キャビティ30内の液体金属20の液面hの動的制御を可能にする。
【0035】
本発明の実施形態によれば、図5を参照すると、金型25の第1の垂直方向上側26は、金型キャビティ30内の雰囲気を鋳造装置10の周囲の雰囲気から隔離するように、少なくとも部分的に、例えば完全に気密に設けられてもよい。例えば、金型キャビティ30内の雰囲気を鋳造装置10の周囲の雰囲気から隔離するために金型25の第1の側26を少なくとも部分的に、例えば完全に閉じるための、ケーシング又は取り外し可能な蓋(図5では例示的に参照符号80で参照される)が設けられてもよい。鋳造装置10の周囲の雰囲気は、例えば鋳造所内の周囲空気であってもよい。鋳造装置10は、例えば、金型キャビティ30内の液体金属20の酸化を制御するように、金型キャビティ30内の雰囲気を制御する手段を更に備え得る。金型キャビティ30内の雰囲気を制御する手段は、例えば、金型キャビティ30内に不活性ガス又は還元性ガス雰囲気を作り出すガス注入システムによって実現されてもよい。
【0036】
図6を参照すると、鋳造装置10は、金型キャビティ30内の液体金属の液面hを検出するための、且つ金型キャビティ30内の液体金属20の液面hを表す液面値を出力するためのセンサ75を更に備え得る。センサ75は、例えば、レーザ距離センサ、容量型距離センサ、又はレーダ距離センサであってもよい。例えば、センサ75は、80Ghz以上の周波数を有する電磁レーダ放射を放出するレーダセンサであってもよい。センサ75から放出される電磁放射76は、金型キャビティ30内の液体金属20に入射してもよく、液体金属20の表面に反射されてもよく、且つ反射されたレーダ放射は、センサ75内の検出器によって検出されてもよい。図6では、より明確にするために、センサ75から放出された放射76のみが示され、参照符号76で参照される。次に、金型キャビティ30内の液体金属20の液面hは、放出された電磁レーダ放射76と受信された電磁レーダ放射との時間差又は位相差から算出されてもよい。80GHz以上の周波数を有するレーダ放射を使用するセンサ75は、そのような周波数を有するレーダ放射76が煙及び固体析出物を通り抜けることができ、それによって、金型キャビティ30内の金属液面hのより正確な測定を可能にし得るので、特に有効であることが分かっている。
【0037】
センサ75(図5には図示せず)は、金型キャビティ30の内部に、且つ少なくとも部分的に蓋又はケーシング80の垂直下方に設けられてもよい。センサ75はまた、蓋又はケーシング80の垂直上方に設けられてもよく、且つ蓋又はケーシング80における開口(例えば、センサシグナルに対して透過性であるが、ガスに対して不透過性である開口)を通じて液体金属20の液面hを測定するためのシグナルを発し且つ受信してもよい。
【0038】
本発明の実施形態によれば、特にセンサ75がレーダセンサ(例えば、80GHz以上のレーダ周波数を有するレーダセンサ)として実現される場合に、及び図6を参照すると、ケーシング又は取り外し可能な蓋80は、レーダセンサ75と金型キャビティ30内の液体金属20との間のレーダビームパス内に、少なくとも部分的レーダ放射透過体85、例えば、部分的レーダ放射透過体を備え得る。少なくとも部分的レーダ放射透過体85は、少なくとも部分的レーダ放射透過体85によって反射されたレーダ放射の、レーダセンサ75での検出を回避するために、レーダ放射領域85cにおける金型キャビティ30内のセンサと液体金属20の間の直線に平行でない法線ベクトルを各々有する、2つの(外側)表面85a、85bを有し得る。レーダ放射領域85cは、レーダセンサ75からのレーダ放射にさらされる、金型キャビティ30内の液体金属20の表面上の領域である。上で説明し且つ図6に示すような構成を使用することによって、レーダセンサ75が、少なくとも部分的レーダ放射透過体85によって反射されるレーダ放射を検出しないので、検出精度を向上させることができ、それと同時に、金型キャビティ30内部の雰囲気が、図5を参照して説明したように、鋳造装置10の周囲の雰囲気から隔離され得る。少なくとも部分的レーダ透過体85は、例えば、ガラスで作製されてもよく、且つ/又はケーシング又は取り外し可能な蓋80と一体に設けられてもよい。
【0039】
図7は、本発明の更なる実施形態を示している。本発明による鋳造装置10は、金型キャビティ30内で液体金属20の少なくとも一部を所定の方向に導くためにポンプ60の下流側の流路55に設けられる分流器90を備え得る。図7の2つの矢印は、金型キャビティ30に流れ込む液体金属20の少なくとも一部分が金型キャビティ30内で分流器90によって所定の方向にどのように分流されるかを概略的に示している。分流器90は、特に、垂直方向(すなわち、金型25の第1の側26から第2の側27に向かう方向)に沿って見たときに金型25が非対称形状を有する場合に、例えば、金型キャビティ30への液体金属20の流入と、金型キャビティ30内の温度分布とを最適化し得る。分流器90は、例えば、垂直方向から見たときに金型25が矩形状、Tバー形状又は他の任意の非対称形状を有する場合に設けられてもよい。
【0040】
図8を参照すると、鋳造装置10は、制御器95を備え得る。制御器95は、例えば、電子制御ユニットとして実現されてもよい。制御器95は、ポンプ60のポンプ機能を制御するために、ポンプ60に動作可能に接続されてもよい。任意選択的に、鋳造装置10がセンサ75を備える場合、制御器95は更に、センサ75に動作可能に接続されてもよい。実際の値と設定値との差が最小限に抑えられるように、制御器95は、センサ75(実際の値)によって測定された液面値hと金型キャビティ30内の液体金属20の所望の液面hを表す所定の設定値とに基づいてポンプ60を動作させるように構成されてもよい。つまり、制御器95は、センサ75からの信号に基づいてポンプ60を動作させることによって、金型キャビティ30内の液体金属20の液面hを意図した値(設定値)に従って制御するように構成されてもよい。制御器95は、例えば、比例(P)及び/又は積分(I)及び/又は微分(D)(閉ループ)フィードバック制御を使用するPID制御アルゴリズム又は他の任意のアルゴリズムに従って動作してもよい。
【0041】
制御器95は、鋳造品35の鋳造作業の初期における金型キャビティ30内の液体金属20のより高い液面hを表す値から鋳造品35の鋳造作業の後期における金型キャビティ30内の液体金属20のより低い液面hを表す値に所定の設定値を変更するように構成されてもよい。つまり、設定値は、例えば、鋳造作業が定常作業に達する前の鋳造品35の鋳造作業の初期設定段階において変更されてもよい。そのような所定の設定値の変更は、鋳造の初期段階での金型キャビティの予め設定された充填率と、鋳造の初期段階中、鋳造パラメータ及び金属液面が鋳造終了まで一定に保たれる定常状態に至るまでの、鋳造速度の増加に伴う金属液面の緩やかな低下とによって、より良好な品質の鋳造品をもたらし得ることが分かっている。
【0042】
上記を考慮して、本発明による鋳造品35の連続又は半連続鋳造方法は、貯留部15と金型キャビティ30との間に画定された流路55に沿って貯留部15から直接チル鋳造用金型25の金型キャビティ30内に重力を用いて液体金属20を供給することと、鋳造品35の鋳造中に金型キャビティ30への液体金属20の供給を制御して金型キャビティ30内の液体金属20の液面hを制御するために、重力によって生じる流路55に沿った液体金属20の流れに抗して作用するポンプ60を使用して液体金属20に作用する力を発生させることとを含み得る。
【0043】
本方法は、金型キャビティ30内の液体金属20の所望の液面hを表す設定値を算出することと、センサ75を使用して、金型キャビティ30内に存在する液体金属20の実際の液面hを表す実際の値を測定することと、設定値と実際の値との差が最小限に抑えられるように、ポンプ60、例えば直流電磁ポンプ60を使用して力の発生を制御することとを更に含み得る。ポンプ60を使用して力を発生させることは、流路55に沿った液体金属20の流れに対向する方向を有する力を生じさせる、液体金属20に作用する電磁界を発生させることを含み得る。本明細書で説明する方法は、本発明の実施形態による鋳造装置10を使用して実行されてもよい。
【0044】
本明細書で説明する全ての実施形態は、別段の明記がない限り、互いに組み合わされてもよい。鋳造装置10に関して説明する特徴はまた、本明細書で説明する方法の対応する方法ステップとしても適用され、その逆も然りである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8