(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】支持構造体によって支持された円筒状構造体を備えるアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01F 6/06 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
H01F6/06 130
(21)【出願番号】P 2020531731
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2018082101
(87)【国際公開番号】W WO2019115189
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516298515
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Healthcare Limited
【住所又は居所原語表記】Parkview, Watchmoor Park, Camberley, GU15 3YL, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイムズ ビッケル
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー フルハム
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ガンブリング
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハワード ヘンプステッド
(72)【発明者】
【氏名】グレイム ハイソン
(72)【発明者】
【氏名】ポウル ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス マン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル シンプキンズ
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-054260(JP,A)
【文献】特開昭63-292608(JP,A)
【文献】特表2010-503983(JP,A)
【文献】特開2008-034846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01L 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの支持要素(110)を備える支持構造体自体によって支持された円筒状超伝導磁石アセンブリ(12)を備えるアセンブリであって、前記支持構造体がクレードル状に成形されており、
各支持要素(110)が、対応する支持支柱(112a、112b)によって繋げられた2つの外側部分クレードル表面(16a)および1つの内側部分クレードル表面(16b)を備え、外側部分クレードル表面(16a)の周方向先端部が、前記円筒状超伝導磁石アセンブリ(12)の軸線において角度βをなし、前記角度βが60°~180°の範囲にあり、
前記内側部分クレードル表面(16b)を保持する内側支持支柱(112b)が、垂直半径方向で相対的に可撓性であるが、水平軸線方向で相対的に剛性であり、
前記外側部分クレードル表面(16a)を保持する外側支持支柱(112a)が、垂直な実質的に接線方向で相対的に剛性であるが、水平な軸線方向で相対的に可撓性であり、
相対的に可撓性である方向で支持支柱(112a、112b)に加えられた所与の力に応答して、次いで、結果として生じる変位が、相対的に剛性である方向で同じ前記支持
支柱(112a、112b)に同じ前記所与の力を加える結果としての変位よりも係数xだけ大きく、xが少なくとも2であり、
それにより、垂直荷重および水平荷重が、主に、前記それぞれの荷重の方向に対して実質的に平行なそれぞれの部分クレードル表面(16a、16b)によって剪断力として受け止められ、それにより、垂直荷重が、前記円筒状超伝導磁石アセンブリ(12)の円筒表面(44)に対して実質的に接線方向で受け止められ、それにより、垂直方向の静的荷重が、実質的に前記外側部分クレードル表面(16a)によって受け止められ、前記
円筒状超伝導磁石アセンブリ
(12)が真空容器(14)に囲まれている、
アセンブリ。
【請求項2】
前記支持構造体が、複数の支持要素(110)を備える、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項3】
各支持要素(110)が全体的にクレードル状に成形されている、請求項2記載のアセンブリ。
【請求項4】
各外側部分クレードル表面(16a)が単一の支持支柱(112a)によって支持され、前記内側部分クレードル表面(16b)が2つの支持支柱(112b)によって支持される、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記角度βが90°~150°の範囲にある、請求項1から4までのいずれか1項記載のアセンブリ。
【請求項6】
各支持要素(110)の前記内側部分クレードル表面(16b)が、前記外側部分クレードル表面(16a)と接触する前記円筒状
超伝導磁石アセンブリ(12)の半径方向外側表面(44)の部分から軸線方向に変位している、前記円筒状
超伝導磁石アセンブリ(12)の前記半径方向外側表面(44)の部分と接触する、請求項1から5までのいずれか1項記載のアセンブリ。
【請求項7】
xが5~20の範囲にある、請求項1記載のアセンブリ。
【請求項8】
xが8~15の範囲にある、請求項7記載のアセンブリ。
【請求項9】
各支持要素(110)が、型成形された単一の表面を含み、前記支持要素の他の表面が型成形されていない、請求項1から8までのいずれか1項記載のアセンブリ。
【請求項10】
各支持要素(110)が、熱放射シールド(26)の機械的な支持を提供するブラケット(130)を支持する、請求項1から9までのいずれか1項記載のアセンブリ。
【請求項11】
各ブラケット(130)が、対応する支持要素(110)および前記熱放射シールド(26)に熱的に連結され、それにより、各ブラケットが、前記支持要素に熱遮断を提供する、請求項10記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記支持構造体の一部がガラス強化プラスチック(GRP)で構成され、別の部分が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で構成される、請求項1から11までのいずれか1項記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超伝導磁石に関し、具体的には真空容器内の適所に超伝導磁石構造体を保持するための構成に関する。
【0002】
従来、超伝導磁石コイル装置は、例えばステンレス鋼製の包囲する冷媒容器内に取り付けられた、例えば鋼またはアルミニウム製の剛性の巻枠を用いて適所に保持されている。現代の設計には、そのような包囲する冷媒容器が含まれなくてもよい。本発明は、そのような超伝導磁石構造体のための実現可能な支持構成を提供する。
【0003】
従来、超伝導磁石構造体は、包囲する冷媒容器内に収容された液体冷媒に部分的に浸漬することによって冷却されているが、最近の進歩は、包囲する冷媒容器がもはや不要であることを意味している。包囲する冷媒容器が設けられていない場合、超伝導磁石構造体は、超伝導磁石構造体の重量を支えるために使用される支持構成からの熱および機械的荷重に直接影響される。包囲する冷媒容器を使用しない場合、荷重分離構造体を使用して、従来のサスペンション要素によって引き起こされる集中荷重から磁石を保護することが通常であった。そのような装置は、組み立てるのに高価で複雑であり、比較的高い部品数を有することがわかっている。コストのかかる境界面機能を真空容器、提供される場合には、磁石構造体または包囲する冷媒容器に取り付ける必要がある。この問題は、包囲する冷媒容器を使用しない超伝導磁石アセンブリの現代の設計において発生している。超伝導磁石構造体は、撓みを引き起こすことなく適切に支持される必要がある。したがって、超伝導磁石構造体の荷重を最小にするコスト効果の高いシステムを提供することが望ましい。
【0004】
複数の張力サスペンション要素を単一の管状サスペンション要素に置き換える代替的なコンセプトは、例えば、英国特許出願公開第2441795号明細書「Tubular Support System for Superconducting Magnet」および英国特許出願公開第2469203号明細書「A Supported Superconducting Magnet」に記載されている。これらの文献は各々、主に、概ね円筒状の包囲する冷媒容器との境界面を形成することを意図した概ね管状の支持構造体を記載している。これらの文献に記載された構成は、超伝導磁石の重量を床などの外部支持構造体に伝達するという利点があり、最初に重量を真空容器で支える必要がない。これにより真空容器に境界面機能を提供する必要性が排除され、真空容器により薄い材料を使用することができ、重量および材料コストを低減することができる。記載された構成は、概ね管状の支持体の各端部において、典型的には包囲する冷媒容器への比較的強い接続点を依然として必要とする。したがって、包囲する冷媒容器が存在しない超伝導磁石構造体との境界面を形成することは困難である。包囲する冷媒容器が存在しないことに対処するために、概ね管状の支持体と真空容器との間の境界面においては、潜在的に高価な機能が必要である。
【0005】
本発明によれば、真空容器内に封入された超伝導磁石構造体に対して、新たな支持構造体が設けられている。新たな支持構造体は、包囲する冷媒容器を有さない超伝導磁石に特に適用可能である。新たな支持構造体は、他の円筒状構造体の支持にも適用することができる。
【0006】
したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に定義される構造体を提供する。
【0007】
本発明の利点、特徴および機能は、その特定の実施形態の以下の記載を参照して、添付の図面と組み合わせて、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態で使用される支持構造体の例示の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の例示の実施形態の部分軸線方向の概略的な半径方向正面図である。
【
図4】本発明の例示の実施形態の概略的な軸線方向正面図である。
【0009】
本発明は、支持構造体によって支持された円筒状構造体を備えるアセンブリ、より具体的には、真空容器内の超伝導磁石構造体を支持するための支持構造体を提供する。真空容器は、代替的には、外側真空チャンバまたはOVCとして既知であってもよい。
【0010】
本発明の支持構造体は、超伝導磁石構造体に対する望ましくない影響を最小限に抑え、真空容器の簡略化を容易にするように適合されている。
【0011】
本発明の特徴によれば、真空容器から超伝導磁石構造体への熱流を最小限にしつつ、超伝導磁石構造体を抱える(cradle)ように成形された支持体が提供される。具体的には、垂直荷重および水平荷重は、主に、荷重の方向に対して実質的に平行な境界面によって剪断力として受け止められる。垂直荷重は、超伝導磁石アセンブリの円筒表面に対して実質的に接線方向で受け止められる。
【0012】
単一の超伝導磁石構造体に対して、1つだけではなく複数の支持要素を設けることができる。
【0013】
各支持要素は、全体的にクレードル状に成形されて、可撓性の磁石構造体に支持を提供することができる。
【0014】
各支持要素は、支持要素と、超伝導磁石構造体と、存在する場合は典型的にはアルミニウム製の熱放射シールドとの間の熱膨張差に対応するように、調整された剛性を有することができる。調整された剛性は、異なる方向に異なる剛性を有する要素を提供して、超伝導磁石アセンブリの撓みを最小化する機械的支持を可能にする。
【0015】
各支持要素は、型成形された(moulded)単一の表面を含んで、支持要素の他の表面を型成形する必要がないという点で、単純な製造プロセスを促進することができる。
【0016】
各支持要素は、熱放射シールドのための支持を提供する機能を含むことができる。そのような機能は熱遮断を組み込むことができる。そのような機能は、熱放射シールドとの適切な境界面を確実にするするために、制御された剛性を有することができる。熱遮断の目的は、OVCから磁石への熱流を低減することである。それは、支持構造体の一部の温度を、順に冷凍機の第1ステージに接続される熱シールドと強制的に同じ温度にすることによって行われる。これは、選択された位置で支持構造体および熱放射シールドに熱的に接続される熱シールド用の支持ブラケットを提供することによって達成することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、支持構造体の一部はガラス強化プラスチック(GRP)で構成されてもよく、別の部分が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で構成されてもよい。特定の実施形態では、クレードル表面部分は、CFRPであってもよく、管状支持体は、GRPであってもよい。そのような構成は、異なる温度におけるこれらの材料の熱伝導率の変化から利得を得る。
【0018】
本発明の支持構造体は、包囲する冷媒容器を有さない超伝導磁石構造体と共に使用することができる。本発明の支持構造体は、超伝導磁石構造体とのクレードル境界面を有して、超伝導磁石構造体に及ぼす点荷重の影響を低減する。
【0019】
図1は、本発明の支持構造体の例示の実施形態を示す。図示した実施形態では、支持構造体は、本明細書において支持要素110と呼ばれる2つの別個の部分の組合せとして提供される。
【0020】
図1の実施形態において、各支持要素110のクレードル境界面は、3つの別個の部分クレードル表面16a,16bに設けられている。他の実施形態(図示せず)では、クレードル境界面は、2つまたは4つ以上の別個の部分クレードル表面に分割することができる。
【0021】
図1に示す実施形態では、2つの別個の支持要素110が提供され、各々、対応する支持支柱112a,112bによって繋げられた3つの部分クレードル表面16a,16bを備える。この実施形態では、各外側部分クレードル表面16aは単一の支持支柱112aによって支持され、内側部分クレードル表面16bは2つの支持支柱112bによって支持される。各支持要素110は、その全体的な構成により「Wフレーム」支持構造体として説明することができるが、本発明の範囲内で支持支柱112a,112bの他の構成を使用することができる。
【0022】
Wフレーム支持体110の好ましい製造方法は、1つの表面のみ型成形(mould)して、製造方法を単純化し、低コストの製造方法を可能にすることを確実にする。しかしながら、Wフレーム支持体110は、樹脂注入、ブロックからの機械加工または付加的製造などの他の市販の複合製造プロセスによって製造することができる。適切な製造方法の選択は、製造量に部分的に依存する。
【0023】
型は、部分クレードル表面16a,16b、フット領域118の表面120およびこれらの表面を互いに繋ぐ表面124に対応する表面を有することができる。ガラス繊維布またはカーボン繊維布などの樹脂含浸繊維を型表面上に適切な厚さに配置し、硬化させるかまたは硬化を可能にする。硬化させられると、得られた支持構造体は型表面から除去される。このようにして、正確に形成される必要のある表面、すなわち、部分クレードル表面16a,16bおよびフット領域118の表面120は、不必要に複雑なモールディングプロセスなしに正確に形成される。
【0024】
ガラス繊維布または炭素繊維布の繊維の配向および特定の領域の層数を選択することにより、各Wフレーム支持構造体110の異なる領域の剛性を調整して、それらの機能に適合させ、真空容器内で超伝導磁石構造体を支持するために支持構造体に所望の機械的特性を提供することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、各Wフレーム支持構造体110は、GRPもしくはCFRPもしくは適切な組合せ、または複合材料であってもよい他の適切な材料であってもよい、単一の成形品として形成される。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、熱放射シールド26が、超伝導磁石構造体12と真空容器14との間に挿入される。各Wフレーム支持構造体110には、熱放射シールドを支持するための機能を設けることができる。そのような機能は、好ましくは熱放射シールドと支持構造体との間に熱伝導を提供して上述のように熱遮断を提供することができる。
【0027】
部分クレードル表面16a,16bへのクレードル境界面の分離は、超伝導磁石構造体12の半径方向外側表面44(
図2)のより広い円弧にわたる支持を可能にし、一方、超伝導磁石構造体12およびWフレーム支持体110の異なる熱膨張および収縮による任意の応力を最小限に抑える。
図2に示すように、部分クレードル表面16aの周方向先端部(circumferential extremities)は、円筒状超伝導磁石構造体12の円筒軸線A-Aにおいて角度βをなす。この角度は、好ましくは90°~150°の範囲にあるが、60~180°であってもよい。
【0028】
図2に示すように、2つのWフレーム支持体110は好ましくは、超伝導磁石構造体の軸線方向中点において、軸線Aに垂直な平面に関して反射対称に配置されて設けられる。Wフレーム支持構造体110は、異なる位置に配置されてもよいが、図示の構成は機械的に安定である。
【0029】
図2は、超伝導磁石構造体12と真空容器14との間に挿入された熱放射シールド26も示す。
図2に示すが、
図1でより明確に見ることができるように、支持要素126は、熱放射シールド26と真空容器14との間に設けられている。これらの支持要素126は、GRP管の形態であってもよく、Wフレーム支持構造体110は、CFRPであってもよい。CFRPのWフレーム支持体110を作製し、熱放射シールド26と真空容器14との間にGRP管126を配置することにより、真空容器の周囲温度、通常は約300Kと熱放射シールドの極低温との間で最小限の熱伝導が得られる。
【0030】
真空容器14自体は、例えば
図4に示すように、真空容器支持体50上に支持され、支持要素126は、真空容器支持体50との接触によって画定される近接点200で冷媒容器14の内面に支えられる。真空容器支持体50は、異なる形態をとることができる。好ましい実施形態では、真空容器支持体50は、OVCと一体化される。
【0031】
支持要素126はGRP管として記述してきたが、支持要素126は、構造体が機械的強度および熱伝導率に関する関連要件を満たすならば、他の形状および材料の構造体によって置き換えられてもよい。
【0032】
部分クレードル表面16a,16bは、好ましくは、接着、ボルト締めまたは他の適切な方法によって超伝導磁石構造体126の半径方向外側表面44に接合されるが、単純に摩擦境界面において接合することができる。
【0033】
図3~
図4は、それぞれ、本発明の例示の実施形態に係る、支持構造体によって支持された超伝導磁石構造体12を備えるアセンブリの概略的な半径方向および軸線方向正面図を示し、Wフレーム支持体110および支持要素126の更なる詳細を示す。
図3には、表示を明確にするために、円筒軸線A-Aの下の下方部分のみを示す。
【0034】
特定の実施形態では、超伝導磁石構造体12は、巻枠などの他の構成要素によって必要な相対位置に機械的に拘束されるコイルを備える。シールドコイル21も図示されている。シールドコイルは、従来の超伝導磁石の構成要素であり、超伝導磁石構造体12よりも大きな半径のコイルを備える。シールドコイル21は、本発明に直接関与していない。ブラケット130は、シールド支持ブラケットであり、熱放射シールド26に機械的支持を提供する。ブラケット130は、熱遮断として機能することもでき、熱伝導性であり、支持構造体と熱放射シールドとの両方に熱的に連結されて、支持構造体から熱放射シールドなどに関連する冷媒冷凍機に熱を輸送する。ブラケットは、GRP管であり得る支持要素126とWフレーム支持体110との間で支持構造体に接合されて示されている。ブラケット130は、別個の部品として形成され、超伝導磁石構造体が真空容器14内に組み立てられるときに、熱放射シールドの残りの部分に組み立てられてもよい。GRP構成要素とCFRP構成要素との間の熱接触は、熱放射シールドの温度、すなわち、GRPとCFRPの熱伝導率がほぼ等しい温度である50K付近で優先的に発生する。この温度は、ブラケット130の熱遮断機能によって提供される。
【0035】
好ましくは、
図3に示すように、各Wフレーム支持体110の内側部分クレードル表面16bは、Wフレーム支持体の外側部分クレードル表面16aと接触する超伝導磁石構造体の半径方向外側表面44の部分から軸線方向に変位している、超伝導磁石構造体12の半径方向外側表面44の部分と接触する。これにより、超伝導磁石構造体12の重量に対する耐力が超伝導磁石構造体12の2つ以上の軸線方向領域に拡がり、軸線方向における堅牢な機械的支持が可能になる。
【0036】
本発明の特に有利な特徴において、Wフレーム支持体110は、外側部分クレードル表面16aを保持する外側支持体112aが相対的に剛性であり、垂直な(実質的に接線)方向に高い剛性を有するが、水平な(軸線)方向で相対的に可撓性であるように構成される。一方、内側部分クレードル表面16bを保持する支持体112bは、垂直な(半径)方向で相対的に可撓性であるが、水平な(軸線)方向で相対的に剛性である。
【0037】
好ましくは、外側支持体112aは半径方向に相対的に可撓性であって、Wフレーム支持体110と超伝導磁石構造体12との間の熱膨張の差を吸収する。
【0038】
用語「相対的に剛性」および「相対的に可撓性」は以下のように解釈され得る:所与の力が、「相対的に可撓性」である方向で支持体に加えられた場合、次いで結果として生じる変位は、相対的に剛性である方向で同じ支持体に同じ所与の力を加えた結果としての変位よりも係数xだけ大きい。本発明によれば、xは少なくとも2であり、好ましくは5~20、より好ましくは8~15の範囲にある。
【0039】
例えば、輸送中または地震中に遭遇する可能性のある水平荷重は、水平方向に相対的に剛性である内側支持体112bによって支持されている内側クレードル表面16bによって主に受け止められる。内側クレードル表面16bと超伝導磁石構造体の外側表面44との間の境界面は水平方向力に平行である:拘束された軸線方向力はこの境界面における剪断力である。外側部分クレードル表面16aを支持する支持体112aは、水平方向に相対的に可撓性である。それらは、軸線方向または半径方向の水平方向力の抑制にほとんど寄与せず、外側クレードル表面16aと超伝導磁石構造体の外側表面44との間の境界面に現れる力は、この境界面における回転剪断力である。
【0040】
本質的に超伝導磁石構造体12の重量である垂直方向の静的荷重は、実質的に外側部分クレードル表面16aによって受け止められる。内側クレードル表面16bを支持する支持体112bは、垂直方向に相対的に可撓性であり、垂直方向の静的荷重、すなわち磁石構造体の重量を支持することにほとんど寄与しない。このようにして、垂直荷重のほとんどは、超伝導磁石構造体の外側表面44に対してほぼ接線方向で受け止められ、超伝導磁石構造体が変形する傾向を最小限に抑える。重量は実質的に接線方向に伝達され、その方向において超伝導磁石アセンブリ12自体は非常に剛性である。超伝導磁石アセンブリの重量のかなりの部分が内側部分クレードル表面16bによって受け止められる場合、結果として生じる点荷重は、超伝導磁石アセンブリ12によって半径方向で受け止められ、その方向において超伝導磁石アセンブリ自体は相対的に可撓性である。点荷重は超伝導磁石構造体に高い応力の領域をもたらし、磁場の均一性に影響し、クエンチする傾向を高める恐れがある。
【0041】
Wフレーム支持体の形状および構造、ならびに特定の領域における材料の量および組合せを調整することにより、垂直荷重の大部分は、実質的に接線方向で外側クレードル表面16aによって受け止められ、水平荷重の大部分は、内側クレードル表面16bによって受け止められ、垂直荷重は、内側クレードル表面16bによってほとんど受け止められないように、Wフレーム支持体を構成することができる。厚さの正確な比率、必要な可撓性などは、使用する正確な設計および材料によって変わり、必要な特性は、使用する超伝導磁石アセンブリ12のサイズおよび質量によって変わる。しかしながら、当業者に明らかであるように、そのような特性はすべてコンピュータシミュレーションから導出することができる。
【0042】
Wフレーム支持体110は、好ましくは、最小の厚さの材料のみから構築して、適切な機械的強度を提供して、各Wフレーム支持体が、真空容器の周囲温度から超伝導磁石構造体の極低温動作温度までを提供する熱伝導経路を最小限に抑える必要がある。Wフレーム支持体110の材料の厚さを最小化することは、超伝導磁石構造体の輸送中に支持体が一定量撓むことを意味する。
【0043】
支持要素126は、好ましくは、Wフレーム支持体110に機械的に取り付けられる。これは、接着、ボルト締め、または他の適切な方法によってもよい。
【0044】
単一の製品として製造したと上述したが、Wフレーム支持体は、Wフレーム支持体に一緒に組み立てられ得る2つの別個の部品としてもしくは3つ以上の部品として製造されてもよく、または上述のようにWフレームの機能を果たすように製造されもよい。
【0045】
例えば、各々の上述したWフレームは、単一の外側部分クレードル表面16a、対応する単一の支持支柱112a、単一の内側部分クレードル表面16b、および対応する単一の支持支柱112bを各々備える2つの「Vフレーム」に効果的に分割することができる。
【0046】
そのような実施形態では、各「Vフレーム」支持体は、外側位置で単一の外側部分クレードル表面16aで真空容器と接触し、内側位置で超伝導磁石構造体に単一の内側部分クレードル表面16bが接触してもよい。各々は、超伝導磁石構造体および真空容器に接着されるかまたはボルト締めされるかまたは他の方法で取り付けられる。
【0047】
別の代替の実施形態では、上述の実施形態に示す2つのWフレーム支持体110は、好ましくは上述の単一面成形操作を含む単一のステップで製造される単一の「ダブルWフレーム」支持体に組み合わせることができる。
【0048】
したがって、本発明は、相対的に可撓性の超伝導磁石アセンブリを支持するための可撓性の支持構造体を提供する。支持構造体は、組み立てられると、超伝導磁石アセンブリおよび支持構造体が全体として剛体を提供するように構成される。この問題は、包囲する冷媒容器を使用しない超伝導磁石アセンブリの現代の設計において発生している。超伝導磁石構造体は、撓みを引き起こすことなく適切に支持される必要がある。
【0049】
本発明の支持構造体は、超伝導磁石アセンブリの支持体を参照して具体的に記載されているが、本発明は、他の可撓性の円筒状構造体のための支持構成を提供するために適用されてもよい。