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特許7216099フルオロベンゼン誘導体及び安息香酸ハイポフルオライト誘導体の製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】フルオロベンゼン誘導体及び安息香酸ハイポフルオライト誘導体の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/30 20060101AFI20230124BHJP
   C07C 255/50 20060101ALI20230124BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20230124BHJP
   C07C 205/12 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C07C253/30
C07C255/50
C07C201/12
C07C205/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020533017
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2019120701
(87)【国際公開番号】W WO2021036048
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】102019122902.2
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520201145
【氏名又は名称】フジアン ヨンジン テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN YONGJING TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.6, Jin Ling Road, Jin Tang Industry Park, SHAOWU, Fujian 354003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】クイ, ウェイロン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, チャンユエ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ, ホンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ウェンティン
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-001881(JP,A)
【文献】特開平03-068525(JP,A)
【文献】V.GRAKAUSKAS,"Aqueous Fluorination of Carboxylic Acid Salts",The Journal of Organic Chemistry,1969年08月,Vol.34, No.8,p.2446-2450
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセスであって、前記フッ素化ベンゼン誘導体は、モノフルオロベンゼン誘導体であり、前記プロセスは、以下のステップを含み、
ステップa)において、液体媒体を提供し、前記液体媒体は、安息香酸誘導体を出発化合物として含み、
ステップb)において、フッ素化ガスを提供し、前記フッ素化ガスは、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなり、フッ素が少なくとも15体積%(vol.-%)以の濃度でフッ素化ガスに存在し、
ステップc)において、単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)に対して耐食性を有するリアクター又はリアクターシステムを提供し、
ステップd)において、直接フッ素化のステップでは、ステップb)のフッ素化ガスをステップc)のリアクター又はリアクターシステムにおけるステップa)の液体媒体を通過させ、前記液体媒体は安息香酸誘導体を出発化合物として含み、安息香酸誘導体出発化合物とフッ素化ガスにおける単体フッ素(F)とを反応させることにより、フッ素で安息香酸誘導体のカルボン酸基における水素原子を置換し、反応は、-30℃~+100℃の温度及び1bar~10barの絶対圧力下で行い、
ステップe)において、ステップc)のリアクター又はリアクターシステムから直接フッ素化ステップd)で形成した安息香酸ハイポフルオライト誘導体を取り出し、
ステップf)において、インサイチュで又は分離された形態で安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得、
ステップg)において、第2リアクター又はリアクターシステムにおいて、ステップf)で得られた安息香酸ハイポフルオライト誘導体をインサイチュで又は分離された形態で脱炭酸することにより、フッ素化ベンゼン誘導体を得、
前提は、出発化合物が安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸後の生成物がフッ素化ベンゼンではないことである、フッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項2】
前記単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、少なくとも25体積%の濃度でステップb)のフッ素化ガスに存在する請求項1に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項3】
前記フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、15-100体積%の濃度でステップb)のフッ素化ガスに存在する、請求項に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項4】
ステップd)の反応は(密閉)カラムリアクターで行い、
前記製造プロセスは、安息香酸誘導を出発化合物として含むか又は安息香酸誘導からなるステップa)の液体媒体をループにおけて循環させ、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなるステップb)のフッ素化ガスをステップc)のカラムリアクターに導入し、前記単体フッ素(F)は、任意に高濃度の単体フッ素(F)であり、
ステップd)において液体媒体と出発化合物である息香酸誘導体とを反応させ、前記ループは、1,500l/h-5,000l/hの循環速度で操作する、請求項1又は2に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項5】
前記カラムリアクターには、(i)少なくとも1つの冷却器(システム)、少なくとも1つの貯液タンク、(ii)ポンプ、(iii)1つ又は複数の(ノズル)インジェクター、(iv)1つ又は複数の供給口、(v)1つ又は複数の篩、(vi)少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの出口のうちの少なくとも1つが取り付けられており、
(i)前記貯液タンクは、ステップa)の前記液体媒体を収容するものであり、入口及び出口を有し、前記液体媒体は、出発化合物である安息香酸誘導体を含むか又は安息香酸誘導体からなり、
(ii)前記ポンプは、ステップa)の前記液体媒体のポンピング及び循環に用いられ、
(iii)前記(ノズル)インジェクターは、前記カラムリアクターの頂部に設けられ、ステップa)の循環媒体を前記カラムリアクターに噴射し、
(iv)前記供給口は、ステップb)の前記フッ素化ガスを前記カラムリアクターに導入し、前記フッ素化ガスは、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなり、単体フッ素(F)は、任意に高濃度であり、
(v)前記篩は、2つあり、前記カラムリアクターの底部に位置し、
(vi)前記排気口には圧力弁が設けられ、前記出口は、ステップe)においてインサイチュで又は分離された態様で安息香酸ハイポフルオライト誘導体を取り出すためのものである、請求項4に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項6】
カラムリアクターは、充填塔型リアクターであり、単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)に対して耐性を有するフィラーが充填された充填塔型リアクターである、請求項4又は5に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項7】
前記反応は、ステップa)の循環液体媒体及びカラムリアクターに導入されたステップb)のフッ素化ガスの向流中で行われ、前記循環液体媒体は、安息香酸誘導体を出発化合物として含み、ステップb)のフッ素化ガスは、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなり、任意に単体フッ素(F)は高濃度である、請求項4から6のいずれか1項に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項8】
前記反応は、少なくとも1つの連続プロセスのステップにより行われ、前記連続プロセスは、5mm以下又は4mm以下の上部横寸法を有する少なくとも1つの連続フローリアクター中で行われ、
記ステップにおいて、少なくともステップb)のフッ素化反応ステップは、
流速:10ml/h-400l/h
温度:30℃-150℃
圧力:4bar-50bar
滞留時間:1-60分
のうちの1つ又は複数の条件下で少なくとも1つのマイクロリアクターにおいて行われる連続プロセスである、請求項1から3のいずれか1項に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項9】
少なくとも1つの前記連続フローリアクターは、独立してSiC連続フローリアクターである、請求項8に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項10】
フッ素化ガスの使用方法であって、
前記フッ素化ガスは、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなり、
単体フッ素(Fが15体積%以上、20体積%以上、特に体積%以上、即ち少なくとも25体積%以の濃度で存在するフッ素化ガスを用いて、安息香酸誘導体を出発化合物として含む液体媒体中でフッ素化ベンゼン誘導体を製造し、ステップb)のフッ素化ガスにおける単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、15-100体積%の範囲内の濃度で存在し、
出発化合物は安息香酸誘導体であり、生成するフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライト誘導体であり、前記安息香酸ハイポフルオライト誘導体は脱炭酸されてフッ素化ベンゼン誘導体が得られることを特徴とし、
出発化合物は安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸の生成物はフッ素化ベンゼンではないことであることを前提とする、フッ素化ガスの使用方法
【請求項11】
請求項1に記載のステップa)からステップf)を含み、インサイチュで又は分離された形態で安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得、
前記出発化合物は安息香酸ではなく、生成する前記フッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではないことを前提とする、安息香酸誘導体の直接フッ素化による安息香酸ハイポフルオライト誘導体の製造プロセス。
【請求項12】
前記プロセスは、請求項2から9のいずれか1項に記載のプロセスに従って行う、請求項11に記載の安息香酸ハイポフルオライト誘導体の製造プロセス。
【請求項13】
フッ素化ベンゼン誘導体の製造における安息香酸ハイポフルオライト誘導体の使用であって、
前記安息香酸ハイポフルオライト誘導体は、請求項1に記載のステップa)からステップf)を含むプロセスにおける安息香酸誘導体の直接フッ素化によりインサイチュで又は分離された形態で得られたものであり、前記フッ素化ベンゼン誘導体は、モノフルオロベンゼン誘導体であり、
前記フッ素化ベンゼン誘導体の製造では、安息香酸ハイポフルオライト誘導体に対して脱炭酸を行い、
前記出発化合物は安息香酸ではなく、生成する前記フッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸後の生成物はフッ素化ベンゼンではないことを前提とする、使用。
【請求項14】
前記フッ素化ベンゼン誘導体は、モノフルオロベンゼン誘導体であり、
ステップg)において、安息香酸ハイポフルオライトの脱炭酸は光化学的脱炭酸である、請求項1から9のいずれか1項に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【請求項15】
請求項1に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセスであって、
安息香酸ハイポフルオライト誘導体は、脱炭酸によりフッ素化ベンゼン誘導体に転化し、
出発化合物は安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸後の生成物はフッ素化ベンゼンではないことを前提とする、請求項1に記載のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するプロセスに関する。上記プロセスのステップにおいて、単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスを使用する。例えば、本発明のプロセスは、単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスを用いてフッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)をバッチ又は連続で製造又は調製することを含む。本発明は、安息香酸ハイポフルオライト(hypofluorite)誘導体を製造又は調製するための新しいプロセスにも関する。同様に、このプロセスは、例えば、単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスを用いて安息香酸ハイポフルオライト誘導体をバッチ又は連続で製造又は調製することを含む。
【背景技術】
【0002】
フルオロベンゼンとその誘導体は、依然としてBalz-Schiemann、Sandmeyer又はHalex反応で調製されている。このタイプの反応はすべて、良好な収率を実現できるが、環境にやさしくない。特にアジアでは、この化学反応では解決できない環境問題のため、工場は当局によって閉鎖されています。カルボン酸誘導体は、フッ素化され、光分解的に脱炭酸され得ることが知られている(J.Am.Chem.Soc.2015137175654-5657(https://doi.org/10.1021/jacs.5b02244))。しかし、記載されているF源(例えば、Selectfluor)は非常に高価であり、フルオロベンゼンとその誘導体に必要な大量の工業用には市販されていない。大きな欠点は、F原子を運ぶSelectfluorの巨大な骨格であり、この骨格はリサイクルできず、焼却処分しかできない。この方法は、新しいものであるが、工業的規模及び環境面には、Balz-Schiemann及びSandmeyer反応よりもさらに悪く、実現可能ではない。また、もう1つの大きな欠点は、高度なIr系光触媒が必要とされることである。化学、特にフッ素化化合物を使用した光化学では、すでに実験室にあるが工業規模ではさらに重要なすべてのガラス製品でのフッ化物腐食のため、非常に特別な専用装置が必要であるため、機器に関する情報は提供されない。Synthesis 8,487-8 (1973)にすでに記載されているようなフッ化シアヌル(2,4,6-トリフルオロ-1,3,5-トリアジン)の使用は、フルオロベンゼン及びその誘導体を調製する最初のステップでさえも、工業的に実行可能な選択肢ではない。
【0003】
工業規模のフッ素化有機化合物は、無水HFによるハロゲン-フッ素交換、HFのオレフィン二重結合への付加、フッ素化剤の使用(例えば、アミン×nHF)、HFとの電解フッ素化(Fのインサイチュでの生成)により製造されている。後者の場合、選択性、拡張性及び環境適合性(毒物となる一部のフッ素化化合物)の欠如は、まだ解決されていない問題である。また、Fガスを直接使用するフッ素化プロセスもある。しかし、このプロセスでは、工業規模が必要であるだけでなく、Fガス及び産生されるHFを非常に熟練した処理(水素(H)-フッ素(F)交換反応)を行う必要もある。
【0004】
単体フッ素(F)は、黄色の圧縮ガス(フッ素ガス、Fガス)であり、刺激臭を有し、強酸化剤であるので可燃性及び還元性物質と急激な反応が発生することができる。その強い化学活性のため、フッ素及びHFに対して強耐食性を有する設備及び容器が必要である以上、Fガスが窒素ガス(N)と混合して使用される場合が多い。ヨーロッパでは、通常、95%のNと5%のFガスとの混合物のみの輸送が許可され、或いはFガスの含有量が多くとも10%の混合物のみが許容される。
【0005】
アジアでは、使用が承認された不活性ガス(例えば、N)におけるFガスの割合は多くとも20%である。
【0006】
安全性、並びに化学反応におけるFガスの化学活性又は反応性の低減及び/又は制御のため、不活性ガス、例えばNでFガスを希釈する必要がある。しかし、工業規模の「不活性化」という上記理由により必要とされる不活性ガスによるFガスに対する希釈には、以下の欠点が存在する。一方、不活性ガスで希釈されるFガスの計量は非常に把握されにくい。他方、Fガスとの化学反応が非常に発熱的であるため、反応装置内の熱伝達が不活性ガスによって大幅に低減されるとともに、希釈された不活性ガスによって熱伝達が減少されることにより、最悪の場合、制御が失われる可能性もある。そのため、原則的には、不活性ガスを絶縁ガスとして使用することは望ましくない。
【0007】
従来技術において、希釈されたフッ素化ガス(例えば、Chambers et al.(Journal of Fluorine Chemistry 128 (2007) 29-33))で不活化したベンゼン誘導体をフッ素化する技術が知られている。Chambersは、不活性ガスである窒素ガス(N)に10%(vol.-%)の単体フッ素(F)を含むフッ素化ガス及び溶媒(例えば、アセトニトリル又はギ酸誘導体反応媒体反応媒体)を用いて反応を行った。Chambersは、マイクロリアクター技術により電子吸引基及び電子供与基を有する1,4-二置換芳香族系に対して直接フッ素化反応を行うことを報告している。フッ素化生成物は、求電子置換過程と一致するプロセスにより得られ、用いられる溶媒に依存する。したがって、アセトニトリル又はギ酸誘導体反応媒体を用いる場合、Chambersは、モノフッ素化生成物の高選択性及び高収率を報告している。従来技術において、高比誘電率の溶媒又はプロトン酸誘導体は、芳香族系のフッ素化に非常に有効に使用することができる。これは、これらの媒体において、フッ素分子は、溶媒との相互作用により求核攻撃をより容易に行い、競争ラジカル過程は、最小限に抑制されるためである。しかし、Chambersに開示されたこのプロセスにおいて、通常、小規模な反応のみを行い、例えば、16時間以内で反応させることで5から10gの粗生成物が得られる。
【0008】
また、Chambersは、上記と同様な実験環境中で、2つの強電子吸引基を有する芳香環を直接フッ素化する試験を行った。もちろん、これらの芳香環は、求電子攻撃に対して反応性を有しない。しかし、このような気質と単体フッ素(F)との反応(即ち、不活性ガスである窒素ガス(N)に10%(vol.-%)の単体フッ素(F)を含むフッ素化ガス;マイクロリアクター)によるフッ素化生成物の転化率が低いが、選択性が高く、清潔である。しかし、同様に、Chambersに開示されたこのプロセスにおいて、通常、小規模な反応のみを行い、例えば、16時間以内で反応させることで5から10gの粗生成物が得られる。
【0009】
不活性化されたベンゼン誘導体と希釈されたフッ素化ガスとの溶媒であるアセトニトリル中でのフッ素化反応により78%から91%の転化率が達成されたが、Chambersは、不活性化されたベンゼンそれ自体を用いて5から10gの生成物量の小規模若しくは大規模で試験を行う動機を有さない。
【0010】
そのため、大規模及び/又は工業環境において制御可能で有効な方式により直接フッ素化を行うステップを含むフッ素化ベンゼン誘導体の大規模及び/又は工業化生産が必要である。本発明の別の目的は、新しいプロセスを提供することである。上記プロセスでは、制御可能で有効な方式により好ましくは大規模及び/又は工業環境において安息香酸ハイポフルオライト誘導体を製造又は調製することができる。本発明の別の目的は、上記安息香酸ハイポフルオライト誘導体、好ましくは大規模及び/又は工業環境においてフッ素化ベンゼン誘導体を製造又は調製するための原料を提供することである。
【0011】
2段階法によりフッ素化ベンゼン誘導体を生産する際に、まず、制御可能で有効な方式により安息香酸誘導体を直接フッ素化してから、第2段階においてフッ素化ステップで得られた安息香酸ハイポフルオライト誘導体を脱炭酸するとともに、不活性ガス(例えば、窒素ガス(N))の単体フッ素(F)に対する希釈をできるだけ減少させるか、又は実施的に回避するとともに、単体フッ素(F)の濃度が少なくとも上記及び従来技術で用いられるフッ素化ガスよりも高い必要がある。例えば、単体フッ素(F)の濃度は、基本的にChambersに使用されるか、又はヨーロッパで承認されている10体積%よりも高い。或いは単体フッ素(F)の濃度は、基本的にアジアで承認されている20体積%よりも高い。
【0012】
本発明の目的は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するための効率的なプロセスを提供することである。上記プロセスは、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体を直接フッ素化するステップを含む。好ましくは、フッ素化プロセスにおいて、フッ素化ガスの濃度は、実質的に単体フッ素(F)15体積%又は20体積%以上、特に単体フッ素(F)25体積%以上(即ち、少なくとも25体積%)、好ましくは単体フッ素(F)35体積%又は45体積%以上である。本発明のプロセスは、化学合成、特にフッ素化ベンゼン誘導体、特に最終生成物及び/又は中間体として農業、製薬、電子、触媒、溶媒その他の機能性化学用途に適用できるフッ素化ベンゼン誘導体(モノフルオロベンゼン誘導体)の製造又は調製に使用され得る。
【0013】
好ましくは、本発明の目的は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するためのフッ素化プロセスを提供することである。上記プロセスは、直接フッ素化するステップ、例えば、フッ素ガス(F)を用いて安息香酸誘導体を直接フッ素化するステップを含む。これによって、F電解リアクター(フッ素電解槽)から排出された基本的に由Fガスからなるフッ素化ガスをそのまま用いて化学反応を行うことができ、必要に応じて比較的小さい程度で希釈することで、例えば、フッ素化プロセス及びそのパラメータを調整又は制御する。
【0014】
好ましくは、本発明の別の目的は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するためのフッ素化プロセスを提供することである。上記プロセスは、直接フッ素化するステップ、例えば、フッ素ガス(F)を直接用い、特殊な設備及び特殊なリアクター設計により、安息香酸誘導体を直接フッ素化するステップを含む。
【0015】
好ましくは、本発明の別の目的は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するためのフッ素化プロセスを提供することである。上記プロセスは、直接フッ素化するステップ、例えば、フッ素ガス(Fガス)を用いて安息香酸誘導体を直接フッ素化するステップを含む。上記プロセスは、フッ素化ベンゼン誘導体の大規模生産及び/又は工業生産において行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、特許請求の範囲によって定義され、詳細は後述する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、フッ素化ガスの用途に関する。単体フッ素(F)は、好ましくは高濃度で存在し、例えば、単体フッ素(F)の濃度は、15体積%又は20体積%(即ち、少なくとも15体積%又は20体積%)である。本発明は、安息香酸誘導体からフッ素化ベンゼン誘導体を製造するプロセスにも関する。上記プロセスは、フッ素化ガス(単体フッ素(F)が好ましくは高濃度で存在する)を用いて直接フッ素化するステップ及び次の直接フッ素化で得られた安息香酸ハイポフルオライト誘導体を脱炭酸するステップを含む。本発明のプロセスは、安息香酸誘導体を直接フッ素化することで安息香酸ハイポフルオライト誘導体を製造することにも関する。特に、農業、製薬、電子、触媒、溶媒その他の機能化学用途において最終生成物及び中間体として使用される安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体の製造において、本発明は注目されている。本発明のフッ素化プロセスは、バッチ又は連続で行うことができる。本発明のプロセスがバッチで行う場合、カラム型(塔型)リアクターを使用することができる。本発明のプロセスが連続的である場合、マイクロリアクターを使用することができる。本発明では、出発化合物は安息香酸誘導体であり、生産されるフッ素化化合物は直接フッ素化により得られた安息香酸ハイポフルオライト誘導体であり、上記安息香酸ハイポフルオライト誘導体は脱炭酸転化によりフッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体に転化することができる。出発化合物は安息香酸ではなく、生産されるフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又は次の脱炭酸後の生成物はフッ素化ベンゼン、特にモノフルオロベンゼンではないことを前提とする。
【0018】
以下に開示する本発明の方法は、環境に優しく経済的に実現可能な方法で、フルオロベンゼン誘導体を高収率で生産する。上記プロセスは、Fガスを用いて安息香酸誘導体を直接フッ素化して対応する安息香酸ハイポフルオライト誘導体(次亜フッ素安息香酸誘導体)を取得し、次いで脱炭酸ステップによりフッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体を得ることを含む。一般的な2段階反応を以下に示す。
【0019】
(スキーム1)ステップ1(直接フッ素化)
【化1】
【0020】
(スキーム2)ステップ2(脱炭酸)
【化2】
【0021】
安息香酸ハイポフルオライト誘導体の脱炭酸反応によりフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を得る脱炭酸ステップは、いつくかのオプションで実行できる。例えば、例えば、脱炭酸は、熱的脱炭酸又は光化学的脱炭酸によって行われ得る。本発明によれば、本発明によれば、光化学的脱炭酸が好ましい。例えば、光化学的脱炭酸は、直接照射(λ>180nm、オプション1)又は光増感剤の存在下で実行できる(光開始、オプション2)。
【0022】
(スキーム3)光化学的脱炭酸のためのオプション1
【化3】
【0023】
光化学的脱炭酸は、直接照射(λ>180nm)又は光増感剤の存在下で実行することもできる(光開始=オプション2)。本発明の反応は、λ>180nmの波長により開始される(備考:254nmは水銀ランプの最も強い短波長線である)。光は、Hg中圧又はHg高圧ランプ、フィリップスチューブランプ、さらにはLEDなどの様々な光源によって発生することができる。プレテストは、254nmのチューブを備えたいわゆるRayonet Photochemical Reactor RPR-100(Southern The Southern New England Ultraviolet Company)で行われた。工業規模の場合、浸漬シャフト光分解リアクターは、照射する必要がある生成物混合物に囲まれた中央で1Hgランプのみを使用するため、より高い電力を必要とする反応用のLEDリアクターは、システムに数千本の銅ケーブルを構築する必要があるため、経済的にはあまり好まれない。
【0024】
光化学的に誘発される脱炭酸の利点は、熱脱炭酸に必要な非常に高い温度と比較して、使用可能な温度が低いことである。例えば、Candish,L.et al Chemical Science (2017),8(5),3618-3622(https://pubs.rsc.org/cn/content/articlelanding/2017/SC/C6SC05533H#!divAbstract)に光触媒脱炭酸及びカルボン酸誘導体次臭化物の反応が記載されているが、このプロセスは、光触媒のコストが高く、記載されている製品の選択性が低すぎるため、産業に適しておらず、経済的でもない。
【0025】
(スキーム4)光化学的脱炭酸のためのオプション2
【化4】
【0026】
微量のフッ化物はガラス製品で作られたフォトリアクターに損傷を与えるため、ガラス製品やガラス窓(LEDが使用されている場合など)は、特に工業規模ではプラスチックコーティングで保護する必要がある。
【0027】
例えば、いくつかの潜在的な透明なプラスチックは、例えば(https://www.interempresas.net/Plastico/Articulos/5544-La-transparencia-en-los-plasticos.html)
ETFE(透過率95%)、
ポリメチルメタクリレート(透過率92%)、
ポリスチレン(透過率90%以上)、
ポリカーボネート(範囲80%-90%)、
セルロース(透過率85%)、
アクリロ-スチレン-ブタジエン、アモルファスポリアミド、UP樹脂、エポキシ、フェノール、その他のプラスチックである。
【0028】
透明ポリマーの光学特性
例えば、https://omnexus.specialchem.com/tech-library/article/comprehensive-list-of-transparent-polymersを参照。
【表1】
【0029】
(透明なプラスチックの別の供給源)
https://www.ultrapolymers.com/sites/default/files/421049-Transparent-Plastics-LR.pdf
最も適したプラスチックはFEP又はポリカーボネートである。これらは、フォトリアクター上の一種の収縮パイプ、又はガラス窓を覆うためのフォイルタイプとして使用される。フッ素化エチレンプロピレン(FEP)は、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンのコポリマーであり、従来の射出成形やスクリュー押出技術を使用して溶融加工できる点で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂とは異なる。
【0030】
用語「誘導体」
上記のスキームにおいて、本発明の文脈では、用語「誘導体」は置換基Rで表され、順に少なくともハイポフルオライト基の存在下でフッ素化(F)に対して不活性であるか、又は任意に選択的にフッ素で置換される1つ又は複数の置換基を示す。特に、置換基Rは、ベンゼンコアに1から5の置換基がある誘導体を示し、上記置換基は、独立して、例えば、ニトロ(NO)、ニトリル(CN)、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくはフッ素、塩素のみ)、フェニル(任意に1つ又は複数の上記不活性置換基で置換される)からなる群より選択される。
【0031】
例えば、置換基がニトロ(NO)又はニトリル基(CN)である場合、これらは最終的に他の基に転化することができる。例えば、ニトロ基(NO)は対応するアミノ基(例えば、-NH)に還元され、ニトリル基(CN)はカルボン酸又はカルボン酸誘導体基(例えば、-COOH、-CO-エステル)に転化できる。
【0032】
フッ素化ベンゼン誘導体、例えば、US4418229、US3064058、JP57197226、GB2058067に記載のニトロフルオロベンゼン(「汚れた」Halex反応により調製される)及びニトリルフルオロベンゼンは(商業上)注目されている。従って、フッ素化生成物、例えば、フッ素化ベンゼン誘導体、例えば、2-フルオロニトロベンゼン、4-フルオロニトロベンゼン、2-ニトリルフルオロベンゼン、4-ニトリルフルオロベンゼン、2,4-ジニトロフルオロベンゼン、3-ニトロ-4-ニトリルフルオロベンゼンは注目されており、後者は他の方法で製造することが困難であり、抗精神病薬及び神経遮断薬AI」の中間体として有用である(例えば、特許CS246346)。非常に重要なのは、次に、例えばFe/HClによる還元又はHによる還元によりニトロフルオロベンゼンからアニリンを調製することができる。
【0033】
目的に応じて、本発明は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するための効率的なプロセスを提供する。上記プロセスは、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。好ましくは、フッ素化プロセスにおいて、フッ素ガス(フッ素化ガス)の濃度は、単体フッ素(F)15体積%又は20体積%、特に単体フッ素(F)25体積%以下(即ち、少なくとも25体積%)、好ましくは単体フッ素(F)35体積%又は45体積%以上である。本発明のプロセスは、化学合成、特にフッ素化ベンゼン誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(モノフルオロベンゼン誘導体)の製造又は調製に使用され得る。上記フッ素化ベンゼン誘導体(モノフルオロベンゼン誘導体)は、最終生成物及び/又は中間体として農業、製薬、電子、触媒、溶媒その他の機能性化学用途に適用できる。
【0034】
好ましくは、本発明は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するためのフッ素化プロセスを提供する。上記プロセスは、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。そのため、F電解リアクター(フッ素電解槽)から排出されたFは、そのまま化学反応に使用され得る。
【0035】
より好ましくは、本発明は、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するためのフッ素化プロセスを提供する。上記プロセスは、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含み、特殊な設備及び特殊なリアクター設計により行われる(図1及び図2を参照)。本発明の特殊な設備及び特殊なリアクター設計は、例えばガススクラバーシステムの形態の1つ以上の充填塔、又は1つ以上のマイクロリアクターを含み得る。例えば、ガススクラバーシステムの形態の充填塔が好ましく、より好ましくは、リアクターとしてバッチプロセスで使用される、例えば、逆ガススクラバーシステムの形態の充填塔である。
【0036】
適切な圧力下、例えば、約1~約10bar(絶対値)の圧力、好ましくは約1~約6bar(絶対値)の圧力下,より好ましくは約4~約6bar(絶対値)の圧力下で、フッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するためのフッ素化プロセスを行い、上記プロセスは、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。一実施例において、上記プロセスは約6bar(絶対値)の圧力下で行う。
【0037】
脱炭酸反応において、当該技術分野で一般的に使用される圧力は約1~約20bar(絶対値)の範囲内である。例えば、オートクレーブ中で脱炭酸を行う場合、圧力は20bar(絶対値)であり得る。マイクロリアクター中で脱炭酸を行う場合、圧力は約1bar(絶対値)~3bar(絶対値)の範囲内であり、例えば、約2bar(絶対値)の圧力である。
【0038】
出発化合物安息香酸誘導体と単体フッ素(F)を含むフッ素化ガス(任意に高濃度Fガス)とを約等モル比でフッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するためのフッ素化プロセスに用いる。上記プロセスは、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。好ましくは、上記反応は、ややモル過剰な単体フッ素(F)を含むフッ素化ガス(任意に高濃度Fガス)を用いて行う。
【0039】
さらに、直接フッ素化反応は放熱特性を有するにも関わらず、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含み、例えば、所定の時間範囲(例えば、10時間未満、又は5時間未満)内で、本発明の反応は、高転化率を有する大規模反応として行うことができ、得られるフッ素化生成物には大量の不純物がないことが発見された。フッ素化生成物は、キログラムスケールで生産することができ、例えば、本発明の直接フッ素化プロセスは、フッ素化ベンゼン誘導体の大規模生産及び/又は工業生産中で行うことができ、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。
【0040】
スケール向きの第1参照として、量を計算するために、78.114g/molのベンゼンの分子量及び96.10g/molのモノフルオロベンゼンの分子量を参照する。プロセスパラメーターを調整及び/又は制御するために、約80°Cのベンゼンの沸点と約85°Cのモノフルオロベンゼンの沸点がさらに示されている。なお、各沸点は環境圧力下での沸点である。
【0041】
スケール向きの第2参照として、量を計算するために、122.123g/molの安息香酸の分子量及び140.11g/molの安息香酸ハイポフルオライトの分子量を参照する。プロセスパラメーターを調整及び/又は制御するために、安息香酸の融点は約122℃であり、沸点は約250℃である。なお、各℃値は環境圧力下での値である。
【0042】
したがって、好ましくは本発明の直接フッ素化プロセスは、それぞれフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)又は安息香酸ハイポフルオライト誘導体の大規模生産及び/又は工業生産中で行い、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して例えばキログラムスケールで安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。バッチプロセス又は任意の連続プロセスにおいて、本明細書に記載のカラムリアクター中では、1時間あたり少なくとも約1kgの安息香酸誘導体原料をフッ素化し、好ましくは1時間あたり少なくとも約1.5kgの安息香酸誘導体をフッ素化することにより、安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフルオロベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体を生成し、その転化率は少なくとも80%、特に少なくとも85%、好ましくは約少なくとも90%、より好ましくは約少なくとも95%である。
【0043】
好ましくは、本発明の直接フッ素化プロセスは、それぞれフッ素化ベンゼン誘導体又は安息香酸ハイポフルオライト誘導体の大規模生産及び/又は工業生産中で行い、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して比較的大きな規模又はキログラムスケールで安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。マイクロリアクタープロセスにおいて、本明細書に記載のように、連続プロセスでは少なくとも約0.5mol/hの安息香酸誘導体(約61g/hの安息香酸コア(即ち必要に応じて追加される誘導体置換基の重量が含まれない))、少なくとも約1mol/hの安息香酸誘導体(約122g/hの安息香酸コア(即ち必要に応じて追加される誘導体置換基の重量が含まれない))、好ましくは少なくとも約1.5mol/hの安息香酸誘導体(約183g/hの安息香酸コア(即ち必要に応じて追加される誘導体置換基の重量が含まれない))、より好ましくは少なくとも約2mol/h又は約3mol/hの安息香酸誘導体(約244g/h又は約366g/hの安息香酸コア(即ち必要に応じて追加される誘導体置換基の重量が含まれない))を出発材料として必要な時間(例えば、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2、3又は4時間)フッ素化して所望の大規模及び/又は工業規模の量の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を生産する。転化率は少なくとも80%、特に少なくとも85%、好ましくは約少なくとも90%、より好ましくは約少なくとも95%である。
【0044】
上記反応は等モル量のFガス(任意に本明細書で定義された高濃度Fガス)で行う。本明細書で定義されるように、Fガス(任意に高濃度的Fガス)は、好ましくは約0.1~約0.8mol/h又は約0.1~約0.5mol/hややモル過剰であり、好ましくは約0.1~約0.4mol/h又は約0.1~約0.3mol/h、より好ましくは約0.1~約0.2mol/h、最も好ましくは約0.15mol/hややモル過剰である。
【0045】
特定の実施形態において、好ましくは本発明の直接フッ素化プロセスは、それぞれフッ素化ベンゼン誘導体又は安息香酸ハイポフルオライト誘導体の大規模生産及び/又は工業生産中で行い、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して例えばキログラムスケールで安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。マイクロリアクタープロセスにおいて、連続プロセスでは、本明細書に記載のように、少なくとも約0.8mol/hの安息香酸誘導体(約100g/hの安息香酸コア(即ち必要に応じて追加される誘導体置換基の重量が含まれない))を出発原料として少なくとも約1h、約2h、約3h、約4h、好ましくは少なくとも約4.5h又は5h、より好ましくは少なくとも約6h、約10h、約12h又は約24hフッ素化して所望の大規模及び/又は工業規模のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)又は安息香酸ハイポフルオライト誘導体の量をそれぞれ生産する。転化率は少なくとも80%、特に少なくとも85%、好ましくは少なくとも約90%,より好ましくは約少なくとも95%である。したがって、本発明の上記直接フッ素化プロセスにおいて、上記プロセスはフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の大規模生産及び/又は工業生産中で行い、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、上記時間範囲内でマイクロリアクター中で連続プロセスにより安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライトを得るステップを含む。例えば、約キログラムスケールの安息香酸誘導体の量は少なくとも約0.1kg、約0.2kg、約0.3kg、約0.4kg、約0.5kg又は少なくとも約1kg、好ましくは少なくとも約1.5kg又は約1.75kg、より好ましくは少なくとも2.0kg、2.5kg、3.5kg又は5kgであり、これによって所望の大規模及び/又は工業規模のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)又は安息香酸ハイポフルオライト誘導体の量を生産する。転化率は少なくとも80%、特に少なくとも85%、好ましくは約少なくとも90%、より好ましくは約少なくとも95%である。本明細書で定義されるように、上記反応は、等量のFガス(任意に高濃度のFガス)で行い、好ましくは約0.1~約0.8mol/h又は約0.1~約0.5mol/h、好ましくは約0.1mol/h~約0.4mol/h、約0.1mol/h~約0.3mol/h、より好ましくは約0.1mol/h~約0.2mol/h、最も好ましくは約0.15mol/hやや過剰のFガス(任意に高濃度のFガス)で行う。
【0046】
本発明は、フッ素化ガスの使用にも関する。安息香酸誘導体を出発化合物として含むか又は安息香酸誘導体からなる液体媒体には、それぞれ好ましくは単体フッ素(F)が実質的に15体積%以上又は20体積%以上、より好ましくは25体積%(vol.-%)の高濃度で存在し、フッ素化ベンゼン誘導体又は安息香酸ハイポフルオライト誘導体の製造に用いられる。好ましくは単体フッ素(F)は、高濃度でフッ素含有ガスに存在し、含有量の範囲は実質的に15体積%又は20体積%(vol.-%)から100体積%、好ましくは25体積%(vol.-%)から100体積%(vol.-%)である。出発化合物が安息香酸誘導体であり、生産するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体であることを特徴とする。
【0047】
なお、単体フッ素(F)の濃度が15体積%(特に20体積%)であるときに本発明をフッ素化反応を行うことができ、特に本発明に記載の特定及び/又は好ましい設備若しくはリアクター設計で行うことができる。
【0048】
しかし、本発明に記載の特定及び/又は好適な設備又はリアクター設計において行われる場合、本発明のフッ素化反応は、少なくとも25体積%、より好ましくは35体積%、特に好ましくは45体積%以上の単体フッ素(F)の濃度下で行われる。
【0049】
本発明によれば、特に好ましくはフッ素化ベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するフッ素化プロセスを行い、直接フッ素化のステップ、例えば、フッ素ガス(F)を用いて安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。上記フッ素ガスは、F電解リアクター(フッ素電解槽)から直接排出されるものである。このような電解フッ素ガス(F)は、通常約97%の単体フッ素(F)の濃度を有する。
【0050】
通常、濃度が約97%の単体フッ素(F)の電解フッ素ガス(F)は、F電解リアクター(フッ素電解槽)から排出される際に精製されずにそのまま使用することができるが、必要に応じて精製されてもよい。
【0051】
さらに、通常、単体フッ素(F)の濃度が約97体積%(vol.-%)(F電解リアクター(フッ素電解槽)から排出されたときの濃度)の電解フッ素ガス(F)で使用されるが、必要に応じて不活性ガス(好ましくは、窒素ガス(N))で少なくとも80体積%(vol.-%)の単体フッ素(F)の濃度に希釈された後使用されてもよい。より好ましくは、必要に応じて、15体積%(vol.-%)、好ましくは10体積%(vol.-%)、最も好ましくは5体積%(vol.-%)以下の不活性ガス(好ましくは、窒素ガス(N))で電解フッ素ガス(F)を希釈する。
【0052】
フッ素化反応過程の制御可能性の面、例えば、単体フッ素とフッ素化される液体化合物との効果的な混合、熱伝達制御(例えば、不十分な熱交換)、及び反応混合物の微小環境での必要な反応条件の維持の面では、比較的大きな不活性ガスと単体フッ素との比率で不活性ガスを使用することは欠点を有することが予想外に発見された。これらの欠点は、塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術及びマイクロバブルマイクロリアクター又は類似する連続フロー技術にもある。例えば、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターは、高不活性ガス濃度、例えば、低フッ素(F)濃度の場合、熱交換が悪いだけでなく、(不活性)気泡がある無効な(反応)領域が存在することで、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターの利点が帳消しにされる。塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術には、同様な状況が観察された。
【0053】
<定義>
直接フッ素化とは、例えば、本発明の安息香酸誘導体の出発化合物と単体フッ素(F)とを化学反応させることにより、1つ又は複数のフッ素原子が生産するフッ素化生成物化合物に共有結合するように1つ又は複数のフッ素原子を化合物に導入することをいう。本発明において、上記フッ素化生成物化合物は安息香酸ハイポフルオライト誘導体である。
【0054】
化合物とは、共有結合を介して結合された少なくとも2つの原子からなる分子をいう。分子(通常、物質と呼ばれる)において、原子が共有結合して独立した化学構造を形成する。このように定義される分子は、純物質の最小の粒子であり、確定可能な分子量を有し、原子が化学結合により結合され、少なくとも観察されるように(例えば、スペクトル)安定している。このように定義される分子又は物質は、純物質の最小の部分であり、確定可能な分子量その他の確定可能な物理的及び化学的性質を有する。本発明において、出発化合物は、単体フッ素(F)と反応するために提供される安息香酸誘導体であり、ステップ1で生産する化合物は安息香酸ハイポフルオライト誘導体であり、第2ステップで脱炭酸してフルオロベンゼン誘導体、例えば、モノフルオロベンゼン誘導体を得る。
【0055】
用語「液体媒体」は、直接フッ素化の反応条件においてフッ素化に対して不活性を示す溶媒であり、出発化合物及び/又はフッ素化される目的化合物を溶解することができる。或いは、出発化合物それ自体は、液体であり、液体媒体として使用されてもよい。フッ素化目的化合物が液体ではない場合、フッ素化目的化合物はそこに溶解することができ、液体である場合、液体媒体として使用することができる。
【0056】
本発明において、出発化合物又は得られる生成物化合物が固体である場合、溶媒の方式で液体媒体を提供し、特に例えば、直接フッ素化の場合には、直接フッ素化反応における出発化合物と比べて、上記溶媒は、少なくとも単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)に対する耐性がより強い。本発明の適切な(有機)溶媒は、例えば、アセトニトリルであるが、これに限定されない。固体出発化合物が水(HO)に可溶である場合、本発明の直接フッ素化反応及び/又は脱炭酸反応は水中で行うこともできる。
【0057】
本明細書で開示された数値範囲は、下限値と上限値を含むすべての数値を含む。明示値を含む範囲(例えば、1から7)は、いずれか2つの明示値の間の任意のサブ範囲(例えば、1から2、2から6、5から7、3から7、5から6など)を含む。
【0058】
用語「包含」、「含む」、「有する」などは、明示的に開示されていないにも関わらず、追加成分、ステップ又は過程の存在を除外することを意図していない。疑いを避けるため、特に明記しない限り、用語「包含」の使用によって保護されるすべての成分は、いかなる他の添加剤、補助剤又は化合物を含み得る。一方、用語「基本的に……からなる」は、いかなる他の成分、ステップ又は過程を後続する範囲から除外するが、操作性にとって必須ではないものがこの限りではない。用語「……からなる」は、明確に列挙されていない成分、ステップ又は過程を含まない。特に明記しない限り、用語「又は」とは、個別及び任意の組み合わせ形態で示される成分をいう。単数の使用には複数の使用が含まれ、逆も同様である。
【0059】
本明細書において、用語「vol.-%」とは「体積%」をいう。特に明記しない限り、本明細書で用いられるすべての百分率(%)は「vol.-%」又は「体積%」を表す。
【0060】
例えば、用語「基本的に」とは、F電解リアクター(フッ素電解槽)から直接排出された基本的にFガスからなるフッ素化ガスを指し、これは、このようなFガスの提供には、大量の精製及び/又は別のガス(例えば、不活性ガス)の必要がない。上記別のガスは、単独で及び/又は一定の量で混合することにより、F電解リアクター(フッ素電解槽)で産生され、気体生成物として排出されるFガスの組成の変化が約±5体積%以上、好ましくは約±3体積%以上となるガスである。したがって、このようなF電解リアクター(フッ素電解槽)から直接排出された基本的にFガスからなるフッ素化ガスは、濃度が少なくとも約92体積%、好ましくは少なくとも約95体積%の単体フッ素(F)である。特に、このようなF電解リアクター(フッ素電解槽)から直接排出された基本的にFガスからなるフッ素化ガスは、濃度が約92-100体積%、好ましくは約95-100体積%、より好ましくは約92-99体積%、好ましくは約95-99体積%、或いは約92体積%-約97体積%、好ましくは約95体積%-約97体積%の単体フッ素(F)を含み得る。
【0061】
本明細書で与えられる任意の圧力値又は圧力値の範囲、即ち「bar」は、特に明記しない限り、「bar絶対値」を指す。
【0062】
本明細書で開示された数値範囲は、下限値と上限値を含むすべての数値を含む。明示値を含む範囲(例えば、1から7)は、いずれか2つの明示値の間の任意のサブ範囲(例えば、1から2、2から6、5から7、3から7、5から6など)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】ガススクラバーシステムを用いるフッ素化を示す。
図2】1つ又は複数のマイクロリアクター(直列接続)システムを用いる連続フッ素化
【発明を実施するための形態】
【0064】
発明の概要における説明、特許請求の範囲における限定、及び以下の実施形態における詳しい説明の通り、第1反応ステップにおいて、本発明は特にフッ素化ガス、好ましくは単体フッ素(F)が高濃度で存在するフッ素化ガスを使用する。また、本発明は、フッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するプロセスに関する。上記プロセスは、直接フッ素化するステップ、例えば、フッ素化ガスを用いて安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。好ましくは、単体フッ素(F)は高濃度で存在する。さらに、本発明は、安息香酸ハイポフルオライト誘導体を製造又は調製する新しいプロセスに関する。特に、上記安息香酸ハイポフルオライト誘導体を製造又は調製するプロセスは、フッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するプロセスにおける第1反応ステップを代表することができる。上記第1反応ステップにおいて、フッ素化ガスを用いて安息香酸誘導体を直接フッ素化し、単体フッ素(F)は高濃度で存在する。
【0065】
本発明は、フッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するプロセスにフッ素化ガスを使用する。好ましくは、単体フッ素(F)は高濃度で存在する。例えば、単体フッ素(F)の濃度は、15体積%以上又は20体積%以上(即ち、少なくとも15体積%又は20体積%)、好ましくは少なくとも25体積%以上である。上記プロセスは、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、フッ素化ガスにより安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。好ましくは単体フッ素(F)は高濃度で存在する。本発明のプロセスは、フッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体の製造に関し、フッ素ガス(F)を用いて直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。最終製品及び中間体として農業、製薬、電子、触媒、溶媒及び他の機能性化学用途に使用されるフルオロベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)の製造又は調製において、本発明のプロセスは特に注目される。本発明のフッ素化プロセス、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップは、バッチ又は連続方式で行うことができる。バッチで本発明のプロセス、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを行う場合、カラム型(塔型)リアクターを使用することができる。本発明のプロセスが連続である場合、マイクロリアクターを使用することができる。必要に応じて、カラム型(塔型)リアクター(ガススクラバーシステム)で本発明のプロセスを連続して行ってもよいが、マイクロリアクターで本発明の連続プロセス、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライトを得る安息香酸誘導体するステップを行うことが好ましい。
【0066】
特に、本発明は、フッ素化ガスの使用に関する。単体フッ素(F)は、実質的に少なくとも10体積%、15体積%又は20体積%以上(即ち、少なくとも15体積%又は20体積%)、好ましくは少なくとも25体積%以上の高濃度で存在し、安息香酸誘導体を出発化合物として含むか又は安息香酸誘導体からなる液体媒体中で安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造することに用いられる。上記出発化合物は、ハロゲン化反応により置換可能な1つ又は複数の水素原子を有し、好ましくはフッ素(F)が実質的に15体積%又は20体積%以上(即ち、少なくとも15体積%又は20体積%)、好ましくは20体積%-100体積%、より好ましくは25体積%-100体積%(vol.-%)の高濃度でフッ素含有するガスに存在する。
【0067】
本発明において、好ましくは特殊な設備に特殊なリアクター、例えば、マイクロリアクター又は充填塔(好ましくはハステロイで作製される)、特に、フィラー(例えば、金属フィラー(例えば、ハステロイ)若しくはプラスチックフィラー)を含む充填塔、より好ましくはE-TFE若しくは金属フィラー(ハステロイ)(例えば、直径:約10mm)が充填された充填塔を使用する。フィラーは、Raschigから購入され得る(http://www.raschig.de/Fllkrper)。フィラーのタイプは、様々であり、ハステロイで作製されたRaschigs Pall-Rings又はE-TFEフィラーを使用することができる。
【0068】
上記特殊な設備に特殊なリアクターを有する場合、例えば、マイクロリアクター又は充填塔(好ましくはハステロイで作製される)において、フッ素ガスの濃度は、実施的に単体フッ素(F)の15体積%又は20体積%以上、特に単体フッ素(F)の20体積%以上(少なくとも20体積%)、好ましくは単体フッ素(F)の25体積%以上である。上記フッ素ガスは、化学合成、特に農業、製薬、電子、触媒、溶媒その他の機能的化学用途に用いられる安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(最終生成物及び/又は中間体として)の製造に使用され得る。本発明では、Fガスを用いてフッ素化化学反応を行い、その濃度は、好ましくは実質的に25体積%の単体フッ素(F)以上である。本フッ素化プロセスにおいて、F電解リアクター(フッ素電解槽)から直接放出されるFを用いて化学反応を行うことができる。フッ素電解槽で産生されるフッ素ガスの代表的な組成は、体積%で、フッ素含有ガスの合計100体積%に対して97%のF、多くとも3%のCF(電極の破損により形成される)、例えば、微量のHF、NO、OF、COFである。
【0069】
本発明の範囲について、注意すべきなのは、技術的な理由ではなく、法的理由だけでは、フッ素化ガスと反応する出発化合物は安息香酸誘導体のみであり、安息香酸それ自体ではなく、生産するフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸の後にフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではない。したがって、本発明は、安息香酸の誘導体、安息香酸ハイポフルオライトの誘導体、及び/又はその後の脱炭酸後に形成されるフルオロベンゼンの誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼンの誘導体にのみ関する。
【0070】
フッ素化ガスにおいて、単体フッ素(F)は、不活性ガスで希釈することができる。不活性ガスは、フッ素化ガスにおける実施的な差異(例えば、約5体積%、好ましくは約3体積%以下の少量の副生成物(例えば、CF)、微量の不純物(例えば、HF、NO、OF、COF))を構成する。
【0071】
不活性ガスは、所定の条件下で化学反応が発生しないガスである。希ガスは、通常多くの物質と反応せず、不活性ガスと呼ばれている。そのため、通常、不活性ガスにより不要の化学反応によるサンプルの分解を回避する。これらの望ましい化学反応は、通常空気中の酸素ガス及び水と発生する酸化及び加水分解反応である。
【0072】
典型的な不活性ガスは、希ガスであり、一般的な不活性ガスは、窒素ガス(N)である。希ガス(不活性ガスでもあり、エアロゲン(aerogen)とも呼ばれる)は、化学性質が類似する化学元素からなり、標準条件下でいずれも無味、無色の単原子ガスであり、化学反応性が非常に低い。天然に存在する6種類の希ガスは、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)及び放射性のラドンガス(Rn)である。
【0073】
精製されたアルゴンガス及び窒素ガスは、自然の豊かさが高い(空気中、N:78.3%、Ar:1%)ためコストが低いので、最も一般的に不活性ガスに使用されている。本明細書で定義されているように、好ましくは、窒素ガス(N)を不活性ガスとして使用し、フッ素化ガス中の単体フッ素(F)を所望の高濃度に希釈する。
【0074】
単体フッ素(F)が窒素ガス(N)で希釈されるフッ素化ガスが好ましい。窒素ガス(N)を不活性ガスとして使用するフッ素化ガスの例示的な組成は、下表に示される(鋼製シリンダー中の精製成分(フッ素-窒素ガスの混合物))。
【表2】
【0075】
図1及び図2は、少量の不活性ガスで希釈されたか又は希釈されていないFガスの工業選択を示す。
図1(ガススクラバーシステムによるフッ素化)
【0076】
向流システムにおいて、単体フッ素(F)ガス(任意に高度濃縮的Fガス)を用いてバッチフッ素化を行う(貯蔵器に液体原料又は任意の不活性溶媒における原料を含む)。高濃度のFといくつかの不活性ガス(例えば、10%N)とを併用する場合、フッ素化過程において圧力弁により圧力を5bar(絶対値)に保持する。反応過程において、不活性ガスはいくつかのHF(だけ)と共にパージガスとして排出される。
【0077】
図2(1つ又は複数のマイクロリアクター(直列接続)システムにおける連続フッ素化)
【0078】
原料貯蔵器には依然として等モルの形成されたHFが含まれる。バッチ蒸留又は連続蒸留を行うことができる。溶媒が存在する場合、溶媒及びHFを除去した後、再結晶により精製することができる。生成物の性能に応じて、噴霧乾燥を使用してもよい。必要に応じて、滞留時間を延長するために、さらに1つ又は複数のマイクロリアクターを直列接続してもよい。
【0079】
(高濃度の単体フッ素を含むフッ素化ガスを用いるフッ素化)
実施例に記載のように、直接フッ素化、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップで用いられるフッ素化ガスは、合計100体積%に対して、20体積%以上の単体フッ素(F)及び多くとも約80体積%以下の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N))を含む。上記のように、精製成分としてフッ素-窒素ガスの混合物を鋼製シリンダーに充填する。
【0080】
フッ素化ガスの合計100体積%に対して少なくとも20体積%の単体フッ素(F)を含む本発明のフッ素化プロセス用フッ素化ガスは、30%-45%の転化率に達することができるが、工業プロセスにとって十分ではない。
【0081】
フッ素化反応過程の制御可能性の面、例えば、単体フッ素とフッ素化される液体化合物との効果的な混合、熱伝達制御(例えば、不十分な熱交換)、及び反応混合物の微小環境での必要な反応条件の維持の面では、比較的大きな不活性ガスと単体フッ素との比率で不活性ガスを使用することは欠点を有することが予想外に発見された。これらの欠点は、塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術及びマイクロバブルマイクロリアクター又は類似する連続フロー技術にもある。例えば、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターは、高不活性ガス濃度、例えば、低フッ素(F)濃度の場合、熱交換が悪いだけでなく、(不活性)気泡がある無効な(反応)領域が存在することで、コイルパイプリアクター又はマイクロリアクターの利点が帳消しにされる。塔型リアクター(ガススクラバーシステム)技術には、同様な状況が観察された。
【0082】
しかし、本発明では、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、フッ素化ガスにおける単体フッ素(F)の濃度を20体積%以上の高濃度、例えば、好ましくは25体積%以上、より好ましくは30体積%又は40体積%以上、最も好ましくは50体積%以上に増加する一方、不活性ガスの濃度(例えば、不活性ガスである窒素ガス(N)の濃度)を80体積%以下の低濃度、例えば、好ましくは75体積%以下、より好ましくは70体積%又は60体積%以下、最も好ましくは50体積%以下に低減させることにより、工業プロセスにおいて、転化率は、約30%-45%上がり、例えば、転化率は、50体積%以上、好ましくは60体積%又は70体積%以上、さらにより好ましくは80体積%以上、最も好ましくは90体積%以上になる。
【0083】
不活性ガスは、強酸化剤である単体フッ素(F)の反応性を希釈するために使用される。上記「背景技術」に記載のように、安全性の観点から、単体フッ素(F)を輸送及び処理するときに、不活性ガスを使用する必要がある(例えば、ヨーロッパでは、95体積%のN(不活性ガス)及び5体積%のFガスを含む混合物である。アジアでは、混合物は、例えば、少なくとも80体積%のN(不活性ガス)及び多くとも20体積%のFガスを含む混合物である。)。このように希釈されたフッ素化ガスに含まれる単体フッ素(F)が依然として強酸化剤であるが、不活性ガスは、フッ素化反応に影響を与える。
【0084】
驚くべきことに、本発明では、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、単体フッ素(F)を不活性ガスで希釈していない場合、又は不活性ガスで単体フッ素(F)をフッ素化ガスにおける単体フッ素(F)の濃度が50体積%以上であるように希釈する場合には、化合物の直接フッ素化(フッ素ガス(F)を用いる直接フッ素化)が達成され、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップにおいて、その転化率は従来技術の希釈フッ素化ガスよりも高いことが発見された。
【0085】
したがって、本発明は、特に好ましくはフルオロベンゼン誘導体(特にモノフルオロベンゼン誘導体)を製造又は調製するフッ素化プロセスを提供する。上記プロセスは、直接フッ素化のステップ、例えば、F電解リアクター(フッ素電解槽)から直接排出されたフッ素ガス(F)をそのまま安息香酸誘導体のフッ素化に用いて安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。
【0086】
フッ素電解槽で産生されるフッ素ガスの代表的な組成は、フッ素含有ガスの合計100体積%に対して97%のF、多くとも3%のCF(電極の破損により形成される)、例えば、微量のHF、NO、OF、COFである。
【0087】
必要に応じて、フッ素化ガスがF電解リアクター(フッ素電解槽)から出るときに精製されることによりF電解リアクター(フッ素電解槽)中で形成された一部又は全部の副生成物及び微量物質が除去された後、本発明のプロセスにおいてフッ素化ガスとして使用される。しかし、本発明のプロセスには、このような一部又は完全な精製が必要ではなく、フッ素化ガスは、F電解リアクター(フッ素電解槽)から排出された後、そのまま使用することができる。
【0088】
電解リアクター(フッ素電解槽)から排出されたフッ素化ガス(精製又は未精製)を使用する場合、必要に応じて、不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N))である程度に希釈してもよい。
【0089】
したがって、必要に応じて、F電解リアクター(フッ素電解槽)からの精製されているか又は精製されていないフッ素化ガスは、多くとも45体積%の不活性ガスで希釈されてもよいが、好ましくは、不活性ガスで希釈された後、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、単体フッ素(F)の濃度は80体積%以上、好ましくは85体積%以上、より好ましくは90体積%以上である。
【0090】
フッ素化ガスにおける単体フッ素(F)及びいずれかの不活性ガスの和と、100体積%と差分(差分がある場合)は、副生成物(例えば、CF)及び微量HF、NO、OF、COFから構成される可能性がある(F電解リアクター(フッ素電解槽)の電極の破損により形成される可能性がある)。本発明において、F電解リアクター(フッ素電解槽)から排出されたフッ素ガス(F)をそのままフッ素化ガスとして使用する場合、通常、本明細書に記載の体積%の値が適用される。
【0091】
したがって、本発明の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約80体積%-97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0体積%-17±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化(例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップ)を行う。
【0092】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約85体積%-97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0体積%-12±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化(例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップ)を行う。
【0093】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約87体積%-97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0体積%-10±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化(例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップ)を行う。
【0094】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約90体積%-97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0体積%-7±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化(例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップ)を行う。
【0095】
本発明の別の好ましくはプロセスにおいて、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、約95体積%-97±1体積%の単体フッ素(F)及び約0体積%-2±1体積%の不活性ガス(好ましくは窒素ガス(N))を含むフッ素化ガスにより直接フッ素化(例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップ)を行う。
【0096】
なお、当業者であれば、任意の例示範囲内におけるいかなる中間値及び中間範囲を選択することができる。
【0097】
(高濃度の単体フッ素を用いるフッ素化ガス)
本発明は、フッ素化ガスの用途にも関する。好ましくは単体フッ素(F)が実質的に15体積%又は20体積%以上、特に25体積%以上、即ち少なくとも単体フッ素(F)25体積%、好ましくは35体積%以上、特に45体積%以上の高濃度で存在するフッ素化ガスを用いて、安息香酸誘導体を出発化合物として含むか又は安息香酸誘導体からなる液体媒体中で安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体を製造する。上記出発化合物は安息香酸ではなく、生産するフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸の後はフッ素化ベンゼン、特にモノフルオロベンゼンではないことを前提とする。
【0098】
通常、一方、本発明は、フッ素化ガスの用途にも関する。好ましくはフッ素化ガスに単体フッ素(F)が高濃度で存在する。例えば、本発明の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体を製造するためのプロセスの用途において、単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して少なくとも25体積%、好ましくは少なくとも30体積%、より好ましくは少なくとも35体積%、さらにより好ましくは少なくとも45体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在する。
【0099】
さらに、上記用途において、単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して少なくとも45体積%、好ましくは少なくとも50体積%、より好ましくは少なくとも60体積%、さらにより好ましくは少なくとも70体積%又は少なくとも80体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在してもよい。
【0100】
本発明の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体を製造するための上記用途において、一実施形態では、単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、15-100体積%、好ましくは20-100体積%、より好ましくは25-100体積%、さらにより好ましくは30-100体積%、さらにより好ましくは35-100体積%、さらにより好ましくは45-100体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在する。
【0101】
さらに、上記用途において、単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、45-100体積%、好ましくは50-100体積%、より好ましくは60-100体積%、さらにより好ましくは70-100体積%、さらにより好ましくは80-100体積%の高濃度でフッ素化ガスに存在してもよい。
【0102】
(本発明のプロセス)
発明の概要における説明、特許請求の範囲における限定、及び以下の実施形態における詳しい説明の通り、本発明は、特に安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体を製造するプロセスに関する。上記プロセスは、直接フッ素化するステップ、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得るステップを含む。上記プロセスは、以下の直接フッ素化及び脱炭酸ステップを含む。
【0103】
本発明の一実施形態は、フッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するプロセスに関し、上記プロセスは、以下のステップを含む。
ステップa)において、液体媒体を提供し、上記液体媒体は、安息香酸誘導体を出発化合物として含む。
ステップb)において、フッ素化ガスを提供し、上記フッ素化ガスは、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなり、好ましくはフッ素が少なくとも15体積%(vol.-%)、好ましくは20体積%(vol.-%)以上の高濃度でフッ素化ガスに存在する。
ステップc)において、単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)に対して耐食性を有するリアクター又はリアクターシステムを提供する。
ステップd)において、直接フッ素化のステップでは、b)のフッ素化ガスをc)のリアクター又はリアクターシステムにおけるa)の液体媒体を通過させ、上記液体媒体は安息香酸誘導体を出発化合物として含み、安息香酸誘導体出発化合物とフッ素化ガスにおける単体フッ素(F)とを反応させることにより、フッ素で安息香酸誘導体のカルボン酸基における水素原子を置換し、反応は、約-30℃~約+100℃の温度及び約1bar~約10barの絶対圧力下で行う。
ステップe)において、c)のリアクター又はリアクターシステムから直接フッ素化ステップd)で形成した安息香酸ハイポフルオライト誘導体を取り出す。
ステップf)において、インサイチュで又は分離された形態で安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得る。
ステップg)において、第2リアクター又はリアクターシステムにおいて、ステップf)で得られた安息香酸ハイポフルオライト誘導体をインサイチュで又は分離された形態で脱炭酸することにより、フッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体を得る。
前提は、出発化合物が安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸後の生成物がフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではないことである。
【0104】
本発明に記載の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するプロセスにおいて、一実施形態では、単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、少なくとも25体積%、好ましくは少なくとも30体積%、より好ましくは少なくとも35体積%、さらにより好ましくは少なくとも45体積%の高濃度でb)のフッ素化ガスに存在する。
【0105】
本発明の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するプロセスにおいて、一実施形態では、フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、15-100体積%、好ましくは20-100体積%、より好ましくは25-100体積%、より好ましくは30-100体積%、さらにより好ましくは35-100体積%、より好ましくは45-100体積%の高濃度でステップb)のフッ素化ガスに存在する。
【0106】
(バッチプロセス)
本発明は、安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するプロセスにも関する。上記プロセスはバッチプロセスであり、好ましくはカラムリアクター中で行われる。後述のリアクター設置において上記プロセスをバッチプロセスとして説明するが、好ましくは、例えば、生成物の濃度が高い場合において、上記リアクター設置において上記プロセスを連続プロセスとして行ってもよい。もちろん、上記リアクター装置中で連続プロセスを行う場合、別途の1つ又は複数の入口及び1つ又は複数の出口は、それぞれ出発化合物の投入及び生成物化合物の排出に供されることが予想可能である。
【0107】
本発明に係るバッチプロセスは、カラムリアクター中で行われることが好ましい。対応して、安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスでは、上記反応は(密閉)カラムリアクター(システム)中で行われることが最も好ましい。上記製造プロセスは、安息香酸誘導を出発化合物として含むか又は安息香酸誘導からなるステップa)の液体媒体をループにおけて循環させ、単体フッ素(F)(任意に高濃度の単体フッ素(F))を含むか又は単体フッ素(F)からなるステップb)のフッ素化ガスをステップc)のカラムリアクターに導入し、ステップd)において液体媒体と出発化合物安である息香酸誘導体とを反応させる。好ましくは、上記ループは、約1,500l/h-約5,000l/h、より好ましくは約3,500l/h-約4,500l/hの循環速度で操作する。一実施例において、ループは、約4,000l/hの循環速度で操作する。
【0108】
本発明に係る安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスは、バッチプロセスを使用することにより、出発化合物である安息香酸誘導体を含むか又は安息香酸誘導体からなるステップa)の液体媒体は、カラムリアクター内において乱流又は層流、好ましくは乱流で循環する。
【0109】
通常、所望のフッ素化生成物及びフッ素化度に必要な化学量論に基づいて、単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスを回路に投入し、それを反応速度に適応させる。
【0110】
本発明に係る制造安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスは、例えば、バッチに行うことができる。カラムリアクターは、少なくとも1つの冷却器(システム)、少なくとも1つの貯液タンク、ポンプ、1つ又は複数の(ノズル)インジェクター、1つ又は複数の供給口、1つ又は複数の篩、少なくとも1つの排気口のうちの少なくとも一者を含む。上記貯液タンクは、ステップa)の液体媒体を収容する。上記液体媒体は、出発化合物である安息香酸誘導体を含むか又は安息香酸誘導体からなる。上記ポンプは、液体媒体のポンピング/循環に用いられる。上記(ノズル)インジェクターは、好ましくはカラムリアクターの頂部に設けられ、循環媒体をカラムリアクターに噴射する。供給口は、ステップb)のフッ素化ガスを導入するためのものである。上記フッ素化ガスは、単体フッ素(F)(任意に高濃度の単体フッ素(F))を含むか又は単体フッ素(F)からなる。上記篩は、好ましくは2つあり、上記カラムリアクターの底部に位置する。上記排気口には圧力弁が設けられている。
【0111】
圧力弁の作用は、反応に必要な圧力を保持しながら、いかなる廃ガスを放出することである。上記廃ガスは、例えば、フッ素化ガスに含まれる不活性キャリアガス(適用の場合)及び上記反応で放出されるフッ化水素(HF)である。
【0112】
本発明に係る安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスは、例えば、バッチに行うことができる。安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスでは、カラムリアクターは、充填塔型リアクター、好ましくは金属フィラーが充填された充填塔型リアクターである。
【0113】
図1に示されるフィラー塔の直径は、100又は200mmであってもよく(循環流量及び水垢に依存する)、ハイグレードステンレス鋼(1.4571)で作製される。塔は、長さが3mである場合、直径は100mmであり、長さが6mである場合、直径が200mmである(大容量が必要である場合、後者を使用する)。ハステロイで作製された塔にはE-TFE又は金属フィラーが充填されている。各フィラーは、直径が10mmであり、Raschig(http://www.raschig.de/Fllkrper)から購入することができる。フィラーのタイプは様々であり、後述の試験においてハステロイで作製されたRaschigs Pall-Ringsが使用される。また、E-TFEフィラーは、同じ性能を示し、Fがガス向流の方式で供給される際に大幅な圧力低下(圧力損失)を引き起こすことがない。
【0114】
本発明の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスにおいて、反応は、ステップa)の循環液体媒体(出発化合物である安息香酸誘導体を含むか又は安息香酸誘導体からなる)の向流下でステップb)のフッ素化ガスを用いて行うことができる。上記フッ素化ガスは、単体フッ素(F)(任意に高濃度の単体フッ素(F))を含むか又は単体フッ素(F)からなり、カラムリアクターに導入される。
【0115】
本発明は、例えば、以下の実施形態を含む。
【0116】
一実施形態において、本発明の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体を製造するプロセスではでは、ステップd)の反応は(密閉)カラムリアクターで行う。上記製造プロセスは、安息香酸誘導を出発化合物として含むか又は安息香酸誘導からなる液体媒体をループにおけて循環させ、単体フッ素(F)(任意に高濃度の単体フッ素(F))を含むか又は単体フッ素(F)からなるステップb)のフッ素化ガスをステップc)のカラムリアクターに導入し、ステップd)において液体媒体と出発化合物安である息香酸誘導体とを反応させる。好ましくは、上記ループは、約1,500l/h-約5,000l/h、より好ましくは約3,500l/h-約4,500l/hの循環速度で操作する。
【0117】
別の実施形態において、本発明の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体を製造するプロセスでは、上記カラムリアクターには、(i)少なくとも1つの冷却器(システム)、少なくとも1つの貯液タンク、(ii)ポンプ、(iii)1つ又は複数の(ノズル)インジェクター、(iv)1つ又は複数の供給口、(v)1つ又は複数の篩、(vi)少なくとも1つの排気口及び少なくとも1つの出口のうちの少なくとも一者が取り付けられている。
(i)上記貯液タンクは、ステップa)の上記液体媒体を収容するものであり、入口及び出口を有し、上記液体媒体は、出発化合物である安息香酸誘導体を含むか又は安息香酸誘導体からなり、
(ii)上記ポンプは、ステップa)の上記液体媒体のポンピング及び循環に用いられ、
(iii)上記(ノズル)インジェクターは、好ましくは上記カラムリアクターの頂部に設けられ、ステップa)の循環媒体を上記カラムリアクターに噴射し、
(iv)上記供給口は、ステップb)の上記フッ素化ガスを上記カラムリアクターに導入し、上記フッ素化ガスは、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなり、単体フッ素(F)は、任意に高濃度であり、
(v)上記篩は、好ましくは2つあり、上記カラムリアクターの底部に位置し、
(vi)上記排気口には圧力弁が設けられ、上記出口は、ステップe)においてインサイチュで又は分離された態様で安息香酸ハイポフルオライト誘導体を取り出すためのものである。
【0118】
別の実施形態において、本発明に係る安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセスは、カラムリアクター中で行うことができる。カラムリアクターは、充填塔型リアクターであり、好ましくは単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)に対して耐性を有するフィラー、例えば、Raschigフィラー及び/又は金属フィラーが充填された充填塔型リアクターであり、より好ましく単体フッ素(F)及びフッ化水素(HF)に対して耐性を有するフィラー、例えば、Raschigフィラー及び/又は金属フィラーが充填されたガススクラバーシステム(塔型)である。
【0119】
別の実施形態において、本発明に係る安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体の製造プロセスでは、上記反応は、ステップa)の循環液体媒体及びカラムリアクターに導入されたステップb)のフッ素化ガスの向流中で行われる。上記循環液体媒体は、安息香酸誘導体を出発化合物としてを含むか又は安息香酸誘導体からなり、フッ素化ガスは、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなり、任意に単体フッ素(F)が高濃度である。
【0120】
必要に応じて、上記塔でのバッチプロセスは連続で行うこともできる。当業者、例えば、化学工学の当業者は、フッ素化化合物に転化した出発化合物を補償するために一定の反応時間内に必要な量の新しい出発化合物及びフッ素化ガスを連続的に供給するのに必要な適切な手段と必要な配置を知っており、反応を継続的に行う場合、一定時間内にフッ素化化合物が反応から引き抜かれる。
【0121】
(マイクロリアクタープロセス)
本発明は、請求項のいずれか1つに記載の安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスにも関する。上記プロセスは連続プロセスであり、好ましくは上記連続プロセスはマイクロリアクター中で行われる。
【0122】
通常、所望のフッ素化生成物及びフッ素化程度、必要な化学量論(やや過剰な場合がある)に応じて、単体フッ素(F)を含むフッ素化ガスをマイクロリアクターに投入し、それを反応速度に適応させる。
【0123】
本発明は、1つ以上のマイクロリアクターを使用してもよい。即ち、本発明は、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の个マイクロリアクターを使用することにより、容量を増大し、滞留時間を延長することができる。例えば、10個のマイクロリアクターを並列接続するか、4個のマイクロリアクターを直列接続することができる。2つ以上のマイクロリアクターを使用する場合、複数のマイクロリアクターは、順次に又は並列に配置することができ、3つ以上のマイクロリアクターを使用する場合、順次及び/又は並列に配置することができる(図2を参照)。
【0124】
一実施形態において、本発明は非常に有利である。本発明の直接フッ素化、例えば、安息香酸誘導体をフッ素化して安息香酸ハイポフルオライトを得るステップは、任意に連続フローリアクターシステム中で行い、好ましくはマイクロリアクターシステム中で行う。前提は、出発化合物が安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸後の生成物がフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではないことである。
【0125】
好ましい実施形態において、本発明は、フッ素化化合物の製造プロセスに関する。上記反応は、少なくとも1つの連続プロセスのステップにより行われ、上記連続プロセスは、約5mm以下又は約4mm以下の上部横寸法を有する少なくとも1つの連続フローリアクター、好ましくは少なくとも1つのマイクロリアクター中で行われる。
【0126】
より好ましくは、上記ステップにおいて、少なくともステップ(b2)のフッ素化反応ステップは、以下の1つ又は複数の条件下で少なくとも1つのマイクロリアクターにおいて行われる連続プロセスであり、
流速:約10ml/h-約400l/h
温度:約30℃-約150℃
圧力:約4bar-約50bar
滞留時間:約1秒-約60分間、好ましくは約1分間-約60分間。
【0127】
別の好ましい実施形態において、本発明は、化合物の製造プロセスに関する。少なくとも1つの上記連続フローリアクター、好ましくは少なくとも1つの上記マイクロリアクターは、独立してSiC連続フローリアクター、好ましくはSiCマイクロリアクターである。
【0128】
(連続フローリアクター及びマイクロリアクター)
さらに、本発明の一態様は、本発明で使用、本明細書で説明されるように、工場エンジニアリングに関する発明を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、当該方法は、マイクロリアクター中で実施される好ましい。
【0129】
本発明の一実施形態において、「マイクロリアクター」、「微細構造リアクター」又は「マイクロチャネルリアクター」とは、典型的な横寸法が約1mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置であり、一般的なものはマイクロチャネルを使う。通常、本明細書において、用語「マイクロリアクター」、「微細構造リアクター」又は「マイクロチャネルリアクター」とは、典型的な横寸法が約5mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置を指す。
【0130】
マイクロリアクター及びその中で物理的過程が発生する他の装置(例えばマイクロ熱交換器)について、マイクロプロセス工学分野において研究を行なった。上記マイクロリアクターは、通常連続フローリアクター(回分式リアクターに対して)をである。マイクロリアクターは、通常の拡大リアクターと比較して、エネルギー効率、反応速度及び収率、安全性、信頼性、拡大可能性、その場/オンデマンド生産が大幅に改善され、プロセス制御がより精細になる。
【0131】
「フローケミストリー」においてマイクロリアクターを用いて化学反応を行う。
【0132】
マイクロリアクターを用いるフローケミストリーにおいて、回分式ではなく、連続的なフローで化学反応を行う。回分式生産は、製造において用いられる技術であり、一連のワークステーションで段階的に所望の目的物を生産し、異なるバッチの生成物を得る。回分式生産、バッチ生産(ワンタイム生産)及び大規模生産(フロー生産又は連続生産)は、3つの主な生産方法である。フローケミストリーにおいて、化学反応は、連続的なフローで行われる。この場合、各ポンプにより流体をパイプにポンピングし、各パイプが互いに接続されているため、流体は互いに接触する。これらの流体が反応性であると、反応が起きる。フローケミストリーは、大量の原料を用いて大規模製造を行う成熟した技術である。しかし、「フローケミストリー」という用語は、実験室規模の応用に対して作ったばかりの用語である。
【0133】
連続フローリアクター(例えば、マイクロリアクターとして用いられる)は、通常管型であり、非反応性材料で作製される。当該非反応性材料は、従来技術において知られているものであり、試薬及び/又は反応物の特定の目的及び特性に依存する。混合方法は、拡散法であり、例えば、リアクターの直径が狭い(例えば、<1mm)場合に拡散法を使用し、例えば、マイクロリアクター及びスタティックミキサーにおいて拡散法を使用する。連続フローリアクターは、反応条件(熱伝達、時間及び混合)を良好に制御することができる。リアクター内の試薬の滞留時間、即ち、反応が加熱又は冷却される時間は、リアクター体積及びそれを通過する流速により計算される(滞留時間=リアクター体積/流速)。従って、比較的長い滞留時間を達成するために、試薬をより遅くポンピングしてもよく、体積がより大きなリアクターを使用してもよく、及び/又は複数のマイクロリアクターを直列接続してもよい。必要に応じて、それらの間にシリンダーを配置して滞留時間を延長してもよい。後者の場合、各マイクロリアクターの後ろにあるサイクロンセパレータは、反応過程で形成された任意のガス(例えば、(第1)フッ素化ステップで形成されたHF又は(第2)脱炭酸ステップで形成されたCO)の脱出を促進し、反応性能に積極的な影響を与える。これにより、生産性は、数ミリリットル/分間から数リットル/時間に増加することができる。
【0134】
フロー式リアクターの例には、回転ディスクリアクター(ColinRamshaw)、回転管リアクター、マルチセルフロー式リアクター、振動流リアクター、マイクロリアクター、熱交換リアクター、吸引式リアクターが含まれる。吸引式リアクターにおいて、1つポンプにより1種の試薬をポンピングし、反応物を吸引する。プラグフロー式リアクター及び管型フローリアクターがさらに含まれる。
【0135】
本発明の一実施形態において、マイクロリアクターを使用することが特に好ましい。
【0136】
好ましい実施形態において、本発明の用途及びプロセスでは、マイクロリアクターを使用する。なお、本発明の一般的な実施形態において、上記マイクロリアクター以外、好ましくは、本明細書で定義された上部横寸法が約1cm以下の管型連続フローリアクターを使用してもよい。したがって、このような連続フローリアクターは、好ましくは約5mm以下又は約4mm以下の上部横寸法を有する。これは、本発明の好ましい実施形態、例えば、好ましいマイクロリアクターを指す。連続的に操作するSTRシリーズは、別の選択肢であるが、マイクロリアクターを使用することがより好ましい。
【0137】
本発明の上記実施形態において、例えば好ましくは、管型連続フローリアクターの最小横寸法は約>5mmであってもよいが、通常約1cm以下である。従って、例えば、好ましくは、管型連続フローリアクターの横寸法は、約>5mm-約1cmの範囲内、又はこの範囲内の任意の値であってもよい。例えば、例えば好ましくは管型連続フローリアクターの横寸法は、約5.1mm、約5.5mm、約6mm、約6.5mm、約7mm、約7.5mm、約8mm、約8.5mm、約9mm、約9.5mm、約10mm、又は上記値の間の任意値であってもよい。
【0138】
本発明の上記実施形態において、好ましくはマイクロリアクターを使用する。マイクロリアクターの最小横寸法は、約0.25mm以上、好ましくは約0.5mm以上であってもよいが、マイクロリアクターの最大横寸法は、約5mm以下である。従って、例えば、マイクロリアクターの横寸法の範囲は、約0.25mm-約5mmであってもよいが、好ましくは約0.5mm-約5mmであり、この範囲内の任意値であってもよい。例えば、マイクロリアクターの横寸法は、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mm、約5mm、又は上記値の間の任意値であってもよい。
【0139】
上記のように、本発明の実施形態において、横寸法が約1cm以下の管型連続フローリアクターを使用することが好ましい。このような連続フローリアクターは、例えばプラグフロー式リアクター(PFR)である。
【0140】
プラグフロー式リアクター(PFR)は、連続管型リアクター、CTR又はプラグフロー式リアクターとも呼ばれ、是用于在連続的、流動的なシリンダー状システム中で化学反応を行うリアクターである。PFRリアクターモデルは、このように設計された化学リアクターの挙動を予測するために用いられ、それにより、重要なリアクターの変量、例えば、リアクターのサイズを推測することができる。
【0141】
PFRを流れる流体は、一連の無限に薄い緊密な「プラグ(plug)」にモデル化されてリアクターを流れることができる。上記プラグは、それぞれ均一な組成を有し、リアクターにおいて軸方向に沿って移動し、且つ各プラグは、前後のプラグと異なる組成を有する。主要な仮定は、流体がプラグフローにつれてPFRを経過して軸方向(前又は後)ではなく、径方向(即ち、横方向)において完璧に混合することである。
【0142】
従って、本明細書において、本発明で用いられるリアクタータイプを定義するための用語、例えば「連続フローリアクター」、「プラグフロー式リアクター」、「管型リアクター」、「連続フローリアクターシステム」、「プラグフロー式リアクターシステム」、「管型リアクターシステム」、「連続フローシステム」、「プラグフローシステム」、「管型システム」は、互いに同義であり、交換することができる。
【0143】
リアクター又はシステムは、複数のパイプとして配置することができ、(例えば)線状、環形、蛇状、環状、旋回管型又はそれらの組み合わせであってもよい。(例えば)旋回管型である場合、リアクター又はシステムは、「旋回管型リアクター」又は「旋回管型システム」とも呼ばれる。
【0144】
径方向、即ち横方向において、このようなリアクター又はシステムは、約1cm以下の内径又は内部断面サイズ(即ち、それぞれ縦寸法又は横寸法)を有する。従って、一実施例において、リアクター又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約1cm、好ましくは約0.5mm-約1cm、より好ましくは約1mm-約1cmのであってもよい。
【0145】
さらなる実施例において、リアクター又はシステムの横寸法は、約>5mm-約1cm又は約5.1mm-約1cmの範囲内であってもよい。
【0146】
横寸法が約5mm以下又は約4mm以下である場合、リアクターは、「マイクロリアクター」と呼ばれる。さらなるマイクロリアクターの実施例において、リアクター又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約5mm、好ましくは約0.5mm-約5mm、より好ましくは約1mm-約5mmの範囲であってもよい。或いは、リアクター又はシステムの横寸法は、約0.25mm-約4mm、好ましくは約0.5mm-約4mm、より好ましくは約1mm-約4mmの範囲であってもよい。
【0147】
反応物が固体である場合、不活性溶媒を使用することができる。従って、固体原料を使用する場合、上記固体原料を不活性溶媒に溶解する。適切な溶媒は、例えばアセトニトリル、又は過フッ素化若しくは部分フッ素化アルカン(例えば、ペンタフルオロブタン(365mfc))、線状又は環状の部分フッ素化又は過フッ素化エーテル(如CF-CH-OCHF(E245))、又はオクタフルオロテトラヒドロフランである。通常、利用可能な場合、又は最初の合成後に、生成物自体も不活性溶媒として機能する。個体出発化合物が水(HO)に可溶である場合、本発明の直接フッ素化反応及び/又は脱炭酸反応は水中で行うこともできる。
【0148】
本発明の任意の実施例において、マイクロリアクターではなく、必要に応じて別の連続フローリアクターを使用してもよい。(例えば)ハロゲン化又はフッ素化で用いられる触媒(ハロゲン化促進触媒、例えば、ハロゲン化触媒又は好ましくはハロゲン化触媒)組成物が反応過程において粘稠になりやすいか、又は上記触媒その自体が粘稠である場合、マイクロリアクターの代わりに、別の連続フローリアクターを使用することが好ましい。この場合には、連続フローリアクターは、下部の横寸法が上記マイクロリアクターの横寸法(即ち、約1mm)よりも大きいが、上部の横寸法が約4mm以下の有限な空間で化学反応を行う装置である。従って、本発明の任意の実施例において連続フローリアクターを使用する。用語「連続フローリアクター」は、好ましくは、有限な空間中で化学反応を行う装置(典型的には、横寸法が約1mm-約4mmである)を指す。本発明のこのような実施例において、上記横寸法を有するプラグフロー式リアクター及び/又は管型フローリアクターを連続フローリアクターとして使用することが特に好ましい。また、本発明のこのような実施例において、マイクロリアクターを使用する実施例と比較して、上記横寸法を有する連続フローリアクター、好ましくはプラグフロー式リアクター及び/又は管型フローリアクターは、より高い流速を有することが特に好ましい。例えば、このより高い流速は、本明細書に記載のマイクロリアクターの典型的な流速の約2倍以下、約3倍以下、約4倍以下、約5倍以下、約6倍以下、約7倍以下、又は約1倍-約7倍、約1倍-約6倍、約1倍-約5倍、約1倍-約4倍、約1倍-約3倍、約1倍-約2倍のいずれかの流速である。本発明のこの実施例において、好ましい上記連続フローリアクター、より好ましいプラグフロー式リアクター及び/又は管型フローリアクターを使用して、本発明書に記載のマイクロリアクターの製造材料を調製する。例えば、このような製造材料は、炭化ケイ素(SiC)及び/又は合金(例えば、本明細書に記載のマイクロリアクターの高耐食性のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金、例えばHastelloy(登録商標))である。
【0149】
本発明では、上記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続フローリアクターを使用することにより、分離工程を簡単化することができるとともに、時間やエネルギーが係る(例えば)中間蒸留工程が必要とされない。特に、本発明では、上記横寸法を有するマイクロリアクター又は連続フローリアクターを使用することにより、相分離だけにより分離することができるとともに、未反応成分は、適宜な時又は必要な時に反応過程に再循環されてもよいか、又は生成物として用いられてもよい。
【0150】
本発明の好適な実施例では、本発明に係るマイクロリアクターを用いるが、マイクロリアクターに加えて又はそれの代わりに、それぞれプラグフロー式リアクター又は管型フローリアクターを使用してもよい。
【0151】
プラグフロー式リアクター又は管型フローリアクター及びその操作条件は、当業者にはよく知られている。
【0152】
本発明において上部の横寸法が約4mm以下の連続フローリアクター、特にマイクロリアクターを使用することが好ましいが、場合によって、収率損失及びより長い滞留時間、より高い温度によりマイクロリアクターの使用が回避されるため、プラグフロー式リアクター又は管型フローリアクターを使用する。これにより、収率損失の問題が解決され、つまり、詰まり(望ましくない駆動方式による粒子の形成)が抑制される。これは、パイプの直径又はプラグフロー式リアクターのチャンネルがマイクロリアクターよりも大きいためである。
【0153】
プラグフロー式リアクター又は管型フローリアクターを使用する欠点は、主観的な見方もなされることができる。一方、ある場所又は生産施設内のある方法の制限下で、この欠点は適切なものであり、収率損失が重要ではないと認められ、或いは他の利点又は制限に鑑みて許容できる場合がある。
【0154】
以下、マイクロリアクターを使用する実施形態により本発明をより詳しく説明する。本発明で使用されるマイクロリアクターは、好ましくはセラミック連続フローリアクターであり、より好ましくはSiC(炭化ケイ素)連続フローリアクターであり、トン規模で物質を生産することができる。熱交換器とSiCとを組み合わせて製造することにより、操作されにくいフローケミストリーの応用に対して最適化制御を行うことができる。コンパクトなモジュラー製造及び流れ生産用のリアクターは、異なる方法に対して柔軟性を有し、一連の生産体積(5-400l/h)を使用することができ、空間に制限がある場合であっても化学製品の収量を増加させ、比類のない化学的適合性及び熱制御を有する。
【0155】
セラミック(SiC)マイクロリアクターは、(例えば)拡散接合に有利な3MSiCリアクターであり、特にろう付け及び金属がなく、FDAに承認された材料又は他の薬物管理機関(例えば、EMA)に承認された材料に優れた熱伝達、質量伝達、優れた化学的適合性を提供する。炭化ケイ素(SiC)は、カーボランダム(carborundum)とも呼ばれ、ケイ素及び炭素を含み、当業者に知られているものである。例えば、合成SiC粉末は、大量に生産され、加工されて多くの用途に用いられている。
【0156】
例えば、本発明の実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがマイクロリアクター中で行われる方法によって目的を実現する。特に、本発明の好適な実施例において、本発明の目的は、少なくとも1つの反応ステップがSiCを含むか又はSiCで作製されたマイクロリアクター(「SiC-マイクロリアクター」)、或いは合金を含むか又は合金で作製されたマイクロリアクター、例えばHastelloy C中で行われる方法によって実現される。詳細は後述する。
【0157】
従って、例えば、本発明の一実施形態において、生産、好ましくは工業生産に適しているマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow Corningが提供したType G1SiC、又はChemtrixが提供したMR555 Plantrix SiC)を含むか、又はSiCで作製された「SiC-マイクロリアクター」であるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。或いは、例えば、本発明の他の実施例において、工業生産に適しているマイクロリアクターは、Ehrfeldが提供したHastelloy Cを含むか、又はそれで作製されたものであるが、これに制限されない。このようなマイクロリアクターは、本発明に係るフッ素化生成物の好適な工業生産に特に適している。
【0158】
生産規模のフロー式リアクターに対する機械的要求及び化学的要求を満たすために、3M(商標)SiC(レベルC)でPlantrixモジュールを製造する。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造されたリアクターは、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。Chemtrix MR555 Plantrixについては、2017年にChemtrix BVによって印刷されたマニュアル「CHEMTRIXのPlantrix(登録商標)MR555シリーズに関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0159】
上記実施例に加えて、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のSiCを使用することができる。
【0160】
従って、本発明において、ChemtrixのProtrixをマイクロリアクターとして使用してもよい。Protrix(登録商標)は、3M(登録商標)炭化ケイ素で製造されたモジュール化の連続フローリアクターであり、優れた耐薬品性及び熱伝達を提供する。3M(登録商標)SiC(レベルC)で製造されたProtrix(登録商標)モジュールは、フロー式リアクターに対する機械的要求及び化学的要求を満たすことができる。特許で保護されている3M(EP1637271B1及び外国特許)拡散接合技術により製造されたリアクターは、全体として密閉され、溶接線/接合スポットがなく、ろう付け用フラックスを使用する必要がない。この製造技術は、完全なSiCリアクター(熱膨張係数=4.1x10-6-l)を得るための製造方法である。
【0161】
0.2-20ml/minの流速及び25 bar以下の圧力に設定することにより、Protrix(登録商標)は、実験室規模の連続フロー方法に適用でき、さらにPlantrix(登録商標)MR555(x340倍率)に移転して物質の生産を行うことができる。Protrix(登録商標)リアクターは、独特なフロー式リアクターであり、以下の利点を有する。拡散接合による3M(登録商標) SiCモジュールは、統合した熱交換器を有し、比類のない熱制御及び優れた耐薬品性を提供し、標準ヒュームフードにおいてグラムレベルで極端な反応条件下で安全に操作することができ、試薬の添加量、生産力又は反応時間からみて、生産を効率的かつ柔軟に実行することができる。Protrix(登録商標)フロー式リアクターの一般的なパラメータは以下の通りである。可能な反応タイプは、(例えば)A+B→P1+Q(又はC)→Pであり、用語「A」、「B」、「C」は反応物を示し、「P」、「P1」は生成物を示し、「Q」はクエンチャーを示し、生産量(ml/min)は約0.2-約20であり、チャンネルサイズ(mm)は1x1(予熱ゾーン及び混合器ゾーン)、1.4x1.4(停留通道)であり、試薬供給は1-3であり、モジュールサイズ(幅x高さ)(mm)は110x260であり、フレームサイズ(幅x高さx長さ)(mm)は約400x300x250であり、モジュール/フレーム数は1-4である。Chemtrix Protrix(登録商標)リアクターの技術情報については、2017年にChemtrix BVによって出版されたマニュアル「CHEMTRIXのProtrix(登録商標)に関する拡大可能なフローケミストリー技術情報」に記載され、その技術情報の全体は引用により本明細書に組み込まれる。
【0162】
工業生産、プロセス開発及び小規模生産に適用可能なDow CorningのType G1SiCマイクロリアクターは、以下のサイズにより特徴付けられる。典型的なリアクターサイズ(長さx幅x高さ)は88cmx38cmx72cmであり、典型的な流体モジュールサイズは188mmx162 mmである。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの特徴は、優れた混合及び熱交換、特許で保護されているHEART設計、小さい内部容積、長い滞留時間、高柔軟性、多用途、高耐薬品性のため高pH化合物、特にフッ化水素酸が適用すること、混合型ガラス/SiC溶液が製造材料として使用されること、他の先端的なフローリアクターとのシームレスな拡大である。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターの典型的な技術パラメータは以下の通りである。流速は約30ml/min-約200ml/minであり、操作温度は約-60℃-約200℃であり、操作圧力は約18barg(barg:ゲージ圧の単位、即ち、barで環境圧力又は大気圧よりも高い圧力)以下であり、用いられる材料は炭化ケイ素、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)、ペルフルオロエラストマーであり、流体モジュール内の容積は10 mlであり、必要に応じて管理機関、例えばFDA又はEMAにより承認されている。Dow CorningのType G1SiCマイクロリアクターのリアクターは、多用途であり、その配置がカスタマイズすることができる。また、上記リアクター上の任意の位置に注入スポットを増設することができる。
【0163】
Hastelloy(登録商標)Cは、式NiCr21Mo14Wで表される合金であり、「合金22」又は「Hastelloy(登録商標)C-22」とも呼ばれてもよい。上記合金は、耐食性が高いニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金であり、酸化性酸、還元性酸及び混合酸に対して優れた耐性を有することが知られている。上記合金は、用于排煙脱硫工場、化学工業、環境保護システム、廃棄物焼却工場、廃水処理工場に用いられている。上記実施例以外、本発明の他の実施例において、当業者に知られている他の製造業者のニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金を用いてもよい。合金成分の合計を100%とする場合、ニッケル-クロム-モリブデン-タングステン合金の典型的な組成(重量%)は、約51.0%以上、例えば約51.0%-約63.0%のNi(ニッケル)を主成分とし、Cr(クロム)が約20.0-約22.5%、Mo(モリブデン)が約12.5-約14.5%、W(タングステン又はウルフラム)が約2.5~約3.5%、Fe(鉄)が約6.0%以下、例えば約1.0%-約6.0%、好ましくは約1.5%-約6.0%、より好ましくは約2.0%-約6.0%である。或いは、Co(コバルト)は、合金成分の合計100%に対して約2.5%以下、例えば約0.1%-約2.5%の含有量で合金に存在してもよい。また、V(バナジウム)は、合金成分の合計100%に対して約0.35%以下、例えば約0.1%-約0.35%の含有量で合金に存在してもよい。さらに、合金成分の合計100%に対して、少量(即ち0.1%以下)の他の元素は、独立して(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)であり得る。少量(即ち0.1%以下)の他の元素が存在する場合には、上記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立して約0.1%以下、例えば約0.01-約0.1%、好ましくは約0.08%以下、例えば約0.01-約0.08%の含有量で存在してもよい。例えば、上記元素(例えば)C(カーボン)、Si(シリコン)、Mn(マンガン)、P(リン)及び/又はS(硫黄)は、合金成分の合計100%に対してそれぞれ独立してC≦0.01%、Si≦0.08%、Mn≦0.05%、P≦0.015%、S≦0.02%の含有量で存在してもよい。通常、上記合金組成物には、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Al(アルミ)、Cu(銅)、N(窒素)及びCe(セリウム)のいずれかが微量でも存在しない。
【0164】
Hastelloy(登録商標)C-276合金は、極めて低い炭素含有量及びケイ素含有量により溶接の問題を緩和する鍛造ニッケル-クロム-モリブデン材料であるため、化学方法及び関連工業において広く用いられており、多くの腐食性化学薬品に対する耐性について、50年にわたる追跡記録により実証された。他のニッケル合金と同様に、可塑性を有し、成形及び溶接が容易であり、塩化物を含む溶液中の応力腐食割れ(オーステナイト系ステンレス鋼が受けやすい分解の態様)に対して優れた耐性を有する。そのクロム含有量及びモリブデン含有量が高いため、酸化性酸及び非酸化性酸に耐えることができ、塩化物及び他のハロゲン化物の存在下で孔食及び隙間腐食に対して顕著な耐性を示す。総成分100%に対して、重量%で一般的な組成は、Ni(ニッケル)57%(残部)、Co(コバルト)2.5%以下、Cr(クロム)16%、Mo(モリブデン)16%、Fe(鉄)5%、W(タングステン(tungsten)又はウルフラム(wolfram))4%であり、より少量の他の成分は、Mn(マンガン)1%以下、V(バナジウム)0.35%以下、Si(シリコン)0.08%以下、C(カーボン)0.01以下、Cu(銅)0.5%以下である。
【0165】
本発明の別の実施例において、例えば、上記生産、好ましくは上記工業生産に適したマイクロリアクターは、SiC(炭化ケイ素、例えば、Dow CorningによってType G1SiCとして、又はChemtrixによってMR555 Plantrixとして提供されるSiC)で構成されるか、又は作製されたSiC-マイクロリアクターであるが、これに制限されない。これにより、(例えば)約5-約400kg/時間の生産性が提供される。
【0166】
本発明によれば、本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において、1つ又は複数のマイクロリアクター、好ましくは1つ又は複数のSiC-マイクロリアクターを使用することができる。本発明のフッ素化生成物の生産、好ましくは工業生産において1つ以上のマイクロリアクター、好ましくは1つ以上のSiC-マイクロリアクターを使用する場合、これらのマイクロリアクター、好ましくはSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。例えば、2つ、3つ、4つ又はより多くのマイクロリアクター、好ましくは2つ、3つ、4つ又はより多くのSiC-マイクロリアクターは、並列配置及び/又は直列配置して使用することができる。
【0167】
反応及び/又は拡大条件を使用可能な実験室研究について、例えば、Chemtrix社のリアクターPlantrixはマイクロリアクターとして使用することができるが、これに限定されない。
【0168】
場合によっては、マイクロリアクターのガスケットがHDPTFE以外の材料で作られていると、多少の膨張のために短時間の操作ですぐに漏れみが生じる可能性があるため、HDPTFEガスケットは、マイクロリアクターの長い動作時間を確保し、セトラーや蒸留塔などの他の機器部品を使用する。
【0169】
例えば、工業フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)は、ステンレス鋼フレームに置かれた(非浸入式)SiCモジュール(例えば3M(登録商標) SiC)から構成され、標準Swagelokコネクタを用いて上記フレームによりフィードラインと作動媒体との接続を構築する。作動媒体(熱流体又は熱流)と共に使用するときに、統合熱交換器を用いてモジュール内でプロセス流体を加熱又は冷却し、鋸歯状又は双鋸歯状の中間チャンネルの構造中で反応させる。上記構造は、プラグフローを得るとともに高熱交換能力を有するように設計される。基本IFR(例えばPlantrix(登録商標)MR555)システムは、1つのSiCモジュール(例えば3M(登録商標)SiC)及び1つの混合器(MRX)から構成され、上記混合器はA+B→Pタイプの反応を行うことができる。モジュールの数を増加することで反応時間及び/又はシステム生産性を増加することができる。クエンチャーQ/Cモジュールを増設することにより、反応タイプはA+B→P1+Q(又はC)→Pに拡大され、仕切られることで2つの温度領域が得られる。本明細書において、用語「A」、「B」及び「C」は反応物、「P」及び「P1」は生成物、「Q」はクエンチャーを示す。
【0170】
工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標) MR555)の典型的なサイズは、(例えば)ミリメートルでチャンネルサイズが4x4(「MRX」、混合器)及び5x5(「MRH-I/MRH-II」;MRHは滞留モジュールを示す)であり、モジュールサイズ(幅x高さ)が200mmx555mmであり、フレームサイズ(幅x高さ)が322mmx811mmである。工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の典型的な生産量は、(例えば)約50l/h-約400l/hである。また、用いられる流体の特性及び過程条件に応じて、工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrix(登録商標)MR555)の生産量は、(例えば)>400l/hであってもよい。滞留モジュールは、直列に配置することができる。これにより、必要な反応体積又は生産性が得られる。直列に配置可能なモジュールの数は、流体の特性及び目的流速に依存する。
【0171】
工業用フロー式リアクター(「IFR」、例えばPlantrixeMR555)の典型的な操作条件又は過程条件は、(例えば)温度範囲が約-30℃-約200℃、圧力差(作動過程)が<70℃、試薬供給が1-3、最大操作圧力(作動流体)が約200℃の温度で約5bar、最大操作圧力(プロセス流体)が約≦200℃の温度で約25barである。
【0172】
<本発明の他の態様>
一方、本発明は、単体フッ素(F)を含むか又は単体フッ素(F)からなるフッ素化ガスの用途にも関する。単体フッ素(F)が実質的に15体積%以上、20体積%以上、特に体積%以上、即ち少なくとも25体積%、好ましくは35体積%以上又は45体積%以上の高濃度で存在するフッ素化ガスを用いて、安息香酸誘導体を出発化合物として含む液体媒体中でフッ素化ベンゼン誘導体を製造する。好ましくは、b)のフッ素化ガスにおける単体フッ素(F)は、フッ素化ガスの合計100体積%に対して、15-100体積%、好ましくは20-100体積%、より好ましくは25-100体積%、より好ましくは30-100体積%、さらにより好ましくは35-100体積%、より好ましくは45-100体積%の範囲内の高濃度で存在する。出発化合物は安息香酸誘導体であり、生成するフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライト誘導体であり、上記安息香酸ハイポフルオライト誘導体は必要に応じて脱炭酸されてフッ素化ベンゼン誘導体が得られることを特徴とする。前提は、出発化合物が安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸の生成物がフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではないことである。
【0173】
また、本発明は安息香酸誘導体を直接フッ素化して安息香酸ハイポフルオライト誘導体を製造するプロセスに関する。上記プロセスは、上記ステップa)からf)を含み、上記プロセスにおいてインサイチュで又は分離された形態で安息香酸ハイポフルオライト誘導体が得られる。前提は、出発化合物が安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライトではないことである。
【0174】
特に、本発明によれば、上記安息香酸ハイポフルオライト誘導体の製造プロセスは、安息香酸誘導体を出発化合物とする直接フッ素化プロセスに対して上記のように定義したプロセスとして行い、例えば、上記ステップa)からf)に定義のように、出発化合物は安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではないことを前提とする。
【0175】
また、本発明は、a)からf)を含むプロセスにおいて安息香酸誘導体を直接フッ素化し、インサイチュで又は分離された形態で得られた安息香酸ハイポフルオライト誘導体の用途に関する。上記のように、フッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)を製造するときに、特に安息香酸ハイポフルオライト誘導体に対して脱炭酸、好ましくは光化学的脱炭酸、より好ましくは直接照射(λ>180nm)するか又は増感剤の存在下で光開始により光化学的脱炭酸、より好ましくはλ>180nmの波長による直接照射により光化学的脱炭酸を行う。前提は、出発化合物が安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸の生成物がフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではないことである。
【0176】
本発明によれば、上記フッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスにおいて、ステップg)では光化学的脱炭酸により安息香酸ハイポフルオライト誘導体を脱炭酸し、より好ましくは直接照射(λ>180nm)又は光増感剤の存在下で光開始により光化学的脱炭酸を行い、最も好ましくはλ>180nmの波長による直接照射により光化学的脱炭酸を行う。前提は、出発化合物が安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物が安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸後の生成物がフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではないことである。
【0177】
最後に、本発明の一態様は、フッ素化ベンゼン誘導体(好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の製造プロセスに関する。安息香酸ハイポフルオライト誘導体は、脱炭酸、特に光化学的脱炭酸、好ましくは光化学的脱炭酸、より好ましくは直接照射(λ>180nm)又は光増感剤の存在下での光開始による光化学的脱炭酸、最も好ましくはλ>180nmの波長の直接照射による光化学的脱炭酸によりフッ素化ベンゼン誘導体に転化する。前提は、出発化合物が安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸後の生成物がフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではない。以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであり、その範囲を制限するものではない。
【0178】
<実施例>
以下の実施例において、本発明にしたがって安息香酸ハイポフルオライト誘導体を製造し、安息香酸ハイポフルオライト誘導体を脱炭酸してフルオロベンゼン誘導体を製造した。上記安息香酸ハイポフルオライト誘導体は、フッ素化ガス(好ましくは高濃度の単体フッ素(F)を有するフッ素化ガス)を用いて本明細書に記載の上記反応スキームにしたがって直接フッ素化することにより得られた。
【0179】
本発明の実施例において、出発化合物は安息香酸ではなく、生成するフッ素化化合物は安息香酸ハイポフルオライトではなく、及び/又はその後の脱炭酸の後の生成物はフッ素化ベンゼンではなく、特にモノフルオロベンゼンではない。
【0180】
表3 実施例で使用する安息香酸誘導体及び対応する安息香酸ハイポフルオライトにより生成する生成物(代表的実施例)
【表3】
【0181】
代表的で例示的なプロセスは以下の実施例に示される。
【0182】
200gの出発化合物となる対応する誘導体の安息香酸コアに基づく代表的規模で実施例を行ない。上記反応時間範囲内に実験を行い、以下の実施例に示す生成物の量及び転化率を得る。出発化合物となる対応する誘導体の安息香酸コアの量は、フッ素化生成物(例えば、安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体)の大規模生産及び/又は工業生産に適するように安息香酸誘導体の量及び/又は反応時間を容易に調整できる量である。したがって、出発化合物となる安息香酸誘導体の使用量及び/又は反応時間を、1時間あたり少なくとも約1kgの出発原料安息香酸誘導体、好ましくは少なくとも約1.5kgの出発原料安息香酸誘導体(例えば、10時間又は5時間未満)を容易に調整し、安息香酸ハイポフルオライト誘導体及び/又はその後のフッ素化ベンゼン誘導体、好ましくはモノフルオロベンゼン誘導体を製造することができる。転化率は少なくとも80%、特に少なくとも85%、好ましくは約少なくとも90%、より好ましくは約少なくとも95%である。
【0183】
<実施例1>
溶媒であるCHCN中での安息香酸ハイポフルオライト誘導体の合成
【化5】
【0184】
上記スキームに示すように、Hastelloy C4で作製された1l向流システムにおいて、200g(1.64mol)の誘導体の安息香酸コアに基づく一定量の出発化合物1から6を200mlのCHCN(フッ素化されない。安息香酸誘導体は遥かに反応性が高いためである)に溶解し、(不活性)プラスチックフィラーが充填された塔中で循環させた。室温で、スチールシリンダーからの68.4g(1.80mol)のFガス(Nの20%)を循環混合物に供給し、生成したHFは主に(非完全)Nストリームと共に頂部から排出された。
【0185】
向流システムにおいて、液体媒体レベルの背圧を補償するようにFガス圧力を調整し(圧力ボトルから取り出し)、容器に含まれれる液体媒体によりFガスを圧縮した。これによって、液体レベルを通る一部の背圧は、Fガス圧力により補償される。上記Fガス圧力は、通常約2bar(絶対値)以下であり、最大3bar(絶対値)以下である。
【0186】
<実施例2>
安息香酸ハイポフルオライト誘導体の熱分解
【0187】
100gの実施例1で得られた溶液を200℃で2時間内かけて1.4571で作製された250mlのRothオートクレーブ中で熱分解した(オートクレーブ内に10gのNiフィラーが触媒として含まれる)。反応がニッケル開始なしでも進行できるどうかについてテストされなかった。形成されたCO2により生成された過圧を解放する自動バルブによって、圧力を20barに維持した。水で得られた溶液を洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸留塔で大気圧で5時間以上精密蒸留した。得られたフルオロベンゼン誘導体は、収率が理論値の約85%-約92%であり、分離された。
【0188】
<実施例3>
安息香酸ハイポフルオライト誘導体の濃縮溶液の熱分解
【0189】
室温、20mbarで回転式蒸発器(プラスチック製フラスコ)内で過剰のアセトニトリルを除去し、100gの実施例1で得られた溶液を濃縮した。実施例2と同様に残りの生成物を熱分解した。得られたフルオロベンゼン誘導体の収率は理論値の約85%-約97%であった。
【0190】
<実施例4>
安息香酸ハイポフルオライト誘導体の精製
【0191】
実施例3と同様に、室温、20mbarで回転式蒸発器(プラスチック製フラスコ)で過剰のアセトニトリルを除去し、実施例1で得られた溶液を濃縮した。残りの生成物を分離することで、安息香酸ハイポフルオライト誘導体を得た。収率は理論値の約85%-94%でであった。
【0192】
<実施例5>
精製安息香酸ハイポフルオライト誘導体試料の熱分解
【0193】
実施例2と同様に、100g(0.71mol)の実施例4で精製した安息香酸ハイポフルオライト誘導体を熱分解した。得られたフルオロベンゼン誘導体の収率は理論値の約90%-約99%であった。
【0194】
<実施例6>
溶媒である水中での安息香酸ハイポフルオライト誘導体の合成
【0195】
上記スキームに示すように、Hastelloy C4で作製された1l向流システムにおいて、200g(1.64mol)の安息香酸コアの誘導体に基づく一定量の出発化合物1から6を200mlのHOに溶解し、プラスチックフィラーが充填された塔に循環させた。室温で、スチールシリンダーからの68.4g(1.80mol)Fガス(Nの20%)を循環混合物に供給し、形成されたHFが水中に保持され、Nストリームが少し過剰のFガスと共に装置の頂部から排出された。F供給が終了した後、実施例7と同様に脱炭酸を行なった。
【0196】
<実施例7>
水中での安息香酸ハイポフルオライト誘導体の脱炭酸
【0197】
100gの実施例6で製造された混合物をNiフィラーを含む1.4571ハイグレードステンレス鋼で作製された250mlのRothオートクレーブに移し、200℃に加熱して2時間維持した。形成されたCO2により生成された過圧を解放する自動バルブによって、圧力を20barに維持した。冷却した後、得られた混合物をCHClで抽出し、蒸留によりCHCl(少量HFのと共に)を除去することにより、収率が理論値の約85%-約91%、純度が約95%-約99%(GC)のフルオロベンゼン誘導体が得られた。
【0198】
<実施例8>
光化学的脱炭酸
【0199】
実施例6で得られた混合物を濾過して(少し)粒子を除去し、二重壁の石英管内のTQ 718Hg高圧ランプを備えた光反応器に充填した。フッ化物による腐食を防ぐために、反応媒体と接触している外側の石英管はFEP収縮パイプ(https://www.polyfluor.nl/produkte/schrumpfschlauche/fep-schrumpfschlauche/を参照)で覆われている。ランプ自体(二重壁の内側)は圧縮空気の流れにより冷却され、フォトリアクターの外側球はPEで作製され、ダブルジャケットが付いており、リアクターの全内容物が40℃以下に保たれるように水で冷却された。非常にゆっくりとしたNガスの流れが溶液に供給され、気泡カウンターから排出された。上記溶液を大気圧下、30℃から40℃の温度範囲内で1時間照射し、気泡カウンターでCOの発生を確認できた(N2ガスの供給を時々停止した後に観察する)。CHClで得られた混合物を抽出し、蒸留によりCHClを(いくつかのHFと共に)除去することにより、理論収率が約85%-約89%、純度が約90%-99%(GC)のフルオロベンゼン誘導体が得られた。
【0200】
<実施例9>
コイルリアクター(FEPパイプ)での連続的な光化学的脱炭酸
【0201】
実施例1で得られた混合物を2barの絶対圧力、100ml/hの速度で直径5mm、長さ1mのFEPパイプ(https://www.polyfluor.nl/de/produkte/-fluorkunststoff-schlauche/fep-schlauche/)を通して連続的に供給し、コイルを形成した。コイルを254nmランプを備えたRay-onettRPR-100照射リアクター(Southern New England Ultraviolet Company)に置いて照射した。1mのFEPパイプを通過した後の組成物は、約80%~約82%の転化率及び約95%~約97%のフルオロベンゼン誘導体への選択性を示した。
【0202】
<実施例10>
マイクロリアクターシステムでの連続的なハイポフルオライトの製造及び脱炭酸
【0203】
ステップ1及びステップ2のマイクロリアクターシステムスキームを図2に示す。
【0204】
スキーム2において、第1マイクロリアクターIは、ステンレス鋼又はSiCで作製され、マイクロリアクターIIはニッケルで作製される。
【0205】
実施例1で得られた混合物をシリンダーからの対応する量のFガス(Nの20%)と共に30℃に維持されたChemtrix製の27mlマイクロリアクターを通して250ml/hの速度で連続的に供給した。マイクロリアクターIから離れた材料は、約95%-約98%安息香酸ハイポフルオライト誘導体に転化した。その後、流体はニッケルで作製された体積が同じな第2マイクロリアクターIIに入り、200℃に加熱された。マイクロリアクターIIは、BV (Geelen,Netherlands)から購入された。マイクロリアクター2から排出された物質を全てステンレス製シリンダー(貯液タンク)に収集し、慎重に分離し、約80%-約83%のフルオロベンゼン誘導体を得た。
【0206】
<実施例11>
マイクロリアクターでの連続的なハイポフルオライト誘導体の製造、及びコイルリアクターでの連続的な脱炭酸反応
【0207】
実施例10を繰り返し、しかし第2マイクロリアクターの代わりに実施例9のようにFEPコイルリアクターを使用した。2barの絶対圧力で、マイクロリアクターI離れた混合物はFEPコイルに入り、このコイルが254nmのランプを備えたRayonett(Southern New England Ultra-violet Company)に置かれた。安息香酸誘導体の転化は定量的であり、フルオロベンゼン誘導体の分離収率は約85%~約87%であった。
【0208】
<実施例12>
実験は、水を溶媒とする以外、実施例10と同様である。冷却した後、フルオロベンゼン誘導体を第2相として大部分のHFを含む水相と分離した。フルオロベンゼン誘導体の収率は約90%-約93%であった。
【0209】
<実施例13>
実験は、水を溶媒とする以外、実施例11と同様である。冷却した後、フルオロベンゼン誘導体を第2相として大部分のHFを含む水相と分離した。フルオロベンゼン誘導体の収率は約95%-約97%であった。

図1
図2