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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】カテーテルデバイス用のバスケット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20230124BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61B17/22
A61M25/00 540
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020544362
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 US2018060115
(87)【国際公開番号】W WO2019094782
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】15/808,649
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521035554
【氏名又は名称】スロムボレックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・グリーン
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0296245(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0059309(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0133232(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0055401(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317921(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0155981(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61F 2/06
A61F 13/45
A61M 5/14
A61M 25/00
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入カテーテル用バスケットであって:
内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含み長手方向軸を画成する軸であって、該軸の一部に沿った壁の内側表面と外側表面の間の複数のらせん状の切れ目が、複数の叉部を形成しており;軸の近位端には切れ目が入っていない、軸と;
各チューブが、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む複数のチューブであって、共に融着され前記軸の切れ目の入っていない近位端における前記軸の外面に融着されている、複数のチューブと;を含み、
前記軸の複数の前記叉部の各々は、複数の前記チューブの各々の前記ルーメン内に配設されて複数の枝部を形成しており;複数の前記叉部は、該叉部を相互連結させることなく該叉部の近位端と遠位端の間で前記枝部を個別に支持しており;複数の前記枝部の各々の遠位端は共に付着されている、前記注入カテーテル用バスケット。
【請求項2】
前記バスケットの前記枝部は、バスケットの長手方向の長さが短くなるときに、第1の位置から第2の位置へ展開する、請求項1に記載のバスケット。
【請求項3】
前記第1の位置では前記バスケットの前記枝部は閉状態にあり、ここで、閉状態では前記バスケットの前記枝部は前記軸に対して平坦に広がっている、請求項2に記載のバスケット。
【請求項4】
前記バスケットの前記枝部は、前記バスケットの長手方向の長さが短くなるときに、前記バスケットの前記長手方向軸から離れるように半径方向に拡張する、請求項1に記載のバスケット。
【請求項5】
前記軸は形状記憶材料を含む、請求項1に記載のバスケット。
【請求項6】
前記形状記憶材料はニッケル-チタンのニチノール合金である、請求項5に記載のバスケット。
【請求項7】
複数の前記切れ目はらせん状であり、展開可能な前記バスケットの長さの範囲で少なくとも360度回転する、請求項1に記載のバスケット。
【請求項8】
複数の前記らせん状の切れ目は、展開可能な前記バスケットの長さの範囲で少なくとも450度回転する、請求項に記載のバスケット。
【請求項9】
複数の前記チューブの各々は多孔質である、請求項1に記載のバスケット。
【請求項10】
複数の前記チューブの各々は、チューブの壁の内側表面と外側表面の間に延びている複数の注入ポートを含む、請求項に記載のバスケット。
【請求項11】
前記注入ポートは、0.001から0.006インチの間の直径を有する穴である、請求項10に記載のバスケット。
【請求項12】
展開可能な前記バスケットは3から8インチの間の長さである、請求項1に記載のバスケット。
【請求項13】
展開可能な前記バスケットは約6インチの長さである、請求項1に記載のバスケット。
【請求項14】
複数の前記チューブのうちの少なくとも1つのルーメン内に配設されている光ファイバ材料をさらに含む、請求項1に記載のバスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2017年11月9日に出願された米国特許出願第15/808,649号に対する優先権を主張し、その開示の全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、カテーテルデバイス用の機械的に展開可能なバスケット構成、注入カテーテル(infusion catheter)、ならびに肺塞栓症および深部静脈血栓症の治療の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルを利用する(catheter-directed)従来の血栓溶解の方法は、単一ルーメンの注入カテーテル(infusion catheter)を介して血餅溶解薬を注入することを含み、このカテーテルは通常、それが中に設置される血管よりも、直径がはるかに小さい。加えて、血餅により血管を通る血流が減少または停止しているので、血餅溶解薬の分散が低下する。カテーテルを利用する血栓溶解デバイスは、血餅を機械的に開くために拡張可能なバスケットを追加的に利用する場合があるが、これらの拡張可能なバスケットは通常、直線状の血管で最良に機能し、湾曲した血管には十分に適用されない。たとえば、肺塞栓症および肺動脈の解剖学的構造の場合、大きな血餅が肺動脈の奥のより大きく曲がった部分にしばしば詰まり、治療が困難である。カテーテルを利用する現状の血栓溶解デバイスの展開中には、閉塞した血管における血圧等の重要なバイタルサインの同時モニタリングも不可能である。
【0004】
当技術分野では、上記の限界に対処する改善されたバスケットおよび注入カテーテルが要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、展開可能なバスケット、注入カテーテル、および血管中の血栓を治療するための方法を提供することによって、上述した要望に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、注入カテーテル用バスケットであって、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含み長手方向軸を画成する軸であって、軸の少なくとも一部に沿った壁の内側表面と外側表面の間の複数の切れ目(cut)が、複数の叉部(tine)を形成している、軸と、各チューブが、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む複数のチューブと、を含み、軸の複数の叉部の各々は、複数のチューブの各々のルーメン内に配設されて複数の枝部(limb)を形成しており、複数の枝部の各々の遠位端は付着され(attach)ており、複数の枝部の各々の近位端は付着されている、注入カテーテル用バスケット、を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本願の注入カテーテル用バスケットは、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含み長手方向軸を画成する軸であって、軸の少なくとも一部に沿った壁の内側表面と外側表面の間の複数のらせん状の切れ目が、複数の叉部を形成しており、軸の近位端には切れ目が入っていない、軸と;各チューブが、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む複数のチューブであって;共に融着され軸の切れ目の入っていない近位端における軸の外面に融着されている、複数のチューブと;を含み、軸の複数の叉部の各々は、複数のチューブの各々のルーメン内に配設されて複数の枝部を形成しており;複数の叉部は、叉部を相互連結させることなく叉部の近位端と遠位端の間で枝部を個別に支持しており;複数の枝部の各々の遠位端は共に付着されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、バスケットの枝部は、バスケットの長手方向の長さが短くなるときに、第1の位置から第2の位置へ展開する。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の位置ではバスケットの枝部は閉状態にある。いくつかの実施形態では、バスケットの枝部は、バスケットの長手方向の長さが短くなるときに、長手方向軸から離れるように半径方向に拡張する。
【0010】
いくつかの実施形態では、軸は形状記憶材料を含む。いくつかの実施形態では、形状記憶材料はニッケル-チタンのニチノール合金である。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数の切れ目はレーザ切断によって形成される。いくつかの実施形態では、複数の切れ目はらせん状であり、展開可能な注入バスケットの長さの範囲で少なくとも360度回転する。いくつかの実施形態では、複数のらせん状の切れ目は、展開可能な注入バスケットの長さの範囲で少なくとも450度回転する。いくつかの実施形態では、複数の切れ目は軸の近位端までは延びていない。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数のチューブの各々は多孔質である。いくつかの実施形態では、複数のチューブの各々は、チューブの壁の内側表面と外側表面の間に延びている複数の注入ポートを含む。いくつかの実施形態では、注入ポートは、0.001から0.006インチの間の直径を有する穴である。
【0013】
いくつかの実施形態では、バスケットは3から8インチの間の長さである。いくつかの実施形態では、バスケットは約6インチの長さである。
【0014】
いくつかの実施形態では、バスケットは、複数のチューブのうちの少なくとも1つのルーメン内に配設されている光ファイバ材料をさらに含む。
【0015】
別の態様では、本開示は、カテーテルであって、バスケットを含み、バスケットは、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含み長手方向軸を画成する軸であって、軸の少なくとも一部に沿った壁の内側表面と外側表面の間の複数のらせん状の切れ目が、複数の叉部を形成している、軸、ならびに各チューブが、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む複数のチューブ、を含み、軸の複数の叉部の各々は、複数のチューブの各々のルーメン内に配設されて複数の枝部を形成しており、複数の枝部の各々の遠位端は付着されており、複数の枝部の各々の近位端は付着されており、カテーテルはさらに、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む内側軸であって、軸のルーメン内に同軸に配設され、バスケットの遠位端に取り付けられている、細長い内側軸と、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む外側軸であって、内側軸の周囲に同軸に配設されて外側軸の内側表面と内側軸の外側表面の間に流体区画を形成している外側軸と、を含み、バスケットの枝部の近位端は流体区画に連結されている、カテーテル、を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、バスケットの枝部の近位端と流体区画の間の連結部は、内側軸と複数の枝部の近位端の間に配設されている封止材を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、内側軸を近位方向に移動させると、バスケットの枝部が第1の位置から第2の位置へ展開する。いくつかの実施形態では、バスケットの枝部は、内側軸を近位方向に移動させると、長手方向軸から離れるように半径方向に拡張する。いくつかの実施形態では、複数のチューブの各々は、溶出アームの壁の内側表面と外側表面の間に延びている複数の注入ポートを含む。いくつかの実施形態では、カテーテルは、内側軸または複数のチューブのうちの少なくとも1つのルーメン内に配設されている光ファイバ材料をさらに含む。いくつかの実施形態では、バスケットは照射源をさらに含む。
【0018】
本明細書にはまた、カテーテルを利用する血栓溶解の方法であって、カテーテルを提供する工程であって、カテーテルはバスケットを含み、バスケットは、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含み長手方向軸を画成する軸であって、軸の少なくとも一部に沿った壁の内側表面と外側表面の間の複数のらせん状の切れ目が、複数の叉部を形成している、軸、ならびに各チューブが、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む複数のチューブを含み、複数のチューブの各々は、チューブの壁の内側表面と外側表面の間に延びている複数の注入ポートを含み、軸の複数の叉部の各々は、複数のチューブの各々のルーメン内に配設されて複数の枝部を形成しており、複数の枝部の各々の遠位端は付着されており、複数の枝部の各々の近位端は付着されており、カテーテルはさらに、内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む内側軸であって、軸のルーメン内に同軸に配設され、バスケットの遠位端に取り付けられている、細長い内側軸、ならびに内側表面および外側表面を有する壁ならびに遠位端と近位端の間に延びているルーメンを含む外側軸であって、内側軸の周囲に同軸に配設されて外側軸の内側表面と内側軸の外側表面の間に流体区画を形成している外側軸、を含み、バスケットの枝部の近位端は流体区画に連結されている、工程と;注入バスケットを第1の位置において血管内の血栓の中へ少なくとも途中まで前進させる工程と;バスケットを第2の位置へ展開する工程と;同時にバスケットの枝部の注入ポートを通して治療流体を注入する工程と、を含む方法も提供されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、バスケットの枝部は、第1の位置では閉状態にあり、第2の位置では長手方向軸から離れるように半径方向に拡張する。いくつかの実施形態では、バスケットを第2の位置へ展開するときに、血栓を通る流体開口部が作成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、治療流体は血栓溶解剤を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、血栓に光エネルギーを送達することをさらに含む。いくつかの実施形態では、光エネルギーは、内側軸または複数のチューブのうちの少なくとも1つのルーメン内に配設されている光ファイバ材料を通して血栓へ送達される。いくつかの実施形態では、光エネルギーは、治療流体の注入と同時に血栓に送達される。
【0022】
本発明の1つまたはそれ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、この説明からおよび特許請求の範囲から、明らかになるであろう。
【0023】
本明細書に組み込まれておりその一部を構成している添付の図面は、本発明の現時点で好ましい実施形態を図示しており、上記の一般的な説明および下記の詳細な説明と併せて、本発明の特徴を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施形態に係る、第1の位置(A)および第2の位置(B)にある例示的なバスケットのフレーム、ならびに組み立てられたバスケット(C)を示す図である。
図2】本開示の実施形態に係る、バスケットへ組み立てる前のフレームの写真である。
図3】本開示の実施形態に係る、バスケットの例示的な枝部の長さに沿った均一な流れを生み出す方法を示す図である。
図4】(A)直線状の血管、(B)曲がった血管、および(C)肺動脈のより大きく曲がった部分を模した血管内の、拡張状態の例示的な内部フレームを示す図である。
図5】らせんのピッチの異なる例示的なフレームを示す図である。
図6】本開示の実施形態に係る、光ファイバ構成要素を有する例示的なバスケットを示す図である。
図7】本開示の実施形態に係る、側面視した開位置または拡張位置(A)および閉位置(B)にある、ならびに軸方向視した開位置または拡張位置(C)にある、例示的な注入カテーテルデバイスを示す図である。
図8】本開示の実施形態に係る、例示的な注入カテーテルデバイスの封止材組立体の図である。
図9】本開示の実施形態に係る、例示的な注入カテーテルデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下で本発明についてより完全に説明する。ただし、前出の説明で提示した教示の利益を有する本発明に関連する技術の当業者は、本明細書に記載される本発明の多くの修正および他の実施形態に想到するであろう。したがって、本発明は開示される特定の実施形態に限定されるものではないこと、ならびに、修正および他の実施形態は付属の特許請求の範囲内に含まれるよう意図されていることを、理解されたい。
【0026】
本明細書全体にわたる特徴、利点、または同様の言語への言及は、本開示によって実現され得る特徴および利点の全てが、本開示のどの単一の実施形態にも存在すべきであるかまたは存在していることを、示唆している訳ではない。むしろ、特徴および利点に言及する言語は、ある実施形態に関連して記載される具体的な特徴、利点、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するものと理解される。したがって、特徴および利点、ならびに同様の言語についての考察は、この明細書全体にわたって同じ実施形態を参照している場合があるが、必ずそうである訳ではない。
【0027】
またさらに、記載される本開示の特徴、利点、および特性は、1つまたはそれ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。本明細書の記載に照らせば、特定の実施形態の具体的な特徴または利点のうちの1つまたはそれ以上がなくても本開示を実施できることを、関連技術の当業者は認識するであろう。また場合によっては、特定の実施形態において追加の特徴および利点が認識される場合があるが、それらは、本開示の全ての実施形態に存在するとは限らない場合がある。
【0028】
本明細書の全体に見られる「一実施形態」、「ある実施形態」、または類似の言語への言及は、指示された実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体に見られる「一実施形態では」、「ある実施形態では」という句、および類似の言語は、必ずという訳ではないが、全て同じ実施形態を参照している場合がある。
【0029】
一態様では、本開示は、機械的に展開可能な注入カテーテル用バスケットに関する。本開示のバスケットは、複雑な血管系の中で展開されて、血餅、血栓、および深部静脈血栓症などの血管および動脈の疾患症状の最適な治療を行うように、特に設計されている。バスケットは、複数の叉部を形成するためのその長さの一部に沿った複数の切れ目を有する軸を含むことができ、これらの叉部は複数の多孔質チューブを支持してバスケットの枝部を形成する。枝部の端部同士を、バスケットの長手方向の長さが短くなるときに、バスケットの枝部がバスケットの長手方向軸から離れるように半径方向に拡張するように、付着させることができる。枝部は薬物送達システムに連結することもでき、このようにすれば、本開示のバスケットにより、血栓溶解について機械的手段および薬学的手段の両方を用いることが可能になる。本明細書ではまた、本開示のバスケットを含む注入カテーテルも提供される。別の態様では、本開示は、治療の方法およびカテーテルを利用する血栓溶解の方法に関する。
【0030】
本明細書で使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別段文脈によって明白に示されない限り、複数の言及対象を含む。別様に定義されていない限り、本明細書において用いる全ての技術および科学用語は、当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「約(about)」および「約(approximately)」は入れ替え可能に使用することができ、指定された値から±20%、±10%、±5%、±1%、および±0.1%のばらつきが妥当であるときにそのようなばらつきを包含することを意図する。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「連通する」および「連通」は、限定するものではないが、2つまたは3つ以上の流体系の要素の間の流体接触を可能にする、上記要素同士の直接的な連結または遠隔での連結のいずれかを含む。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「連結可能な」または「連結」は、流体の流れを可能にすることを含むがこれに限定されない目的で、共に接合可能であることを指す。用語「連結可能な」は、一時的にまたは恒久的に共に接合可能であることを指す場合がある。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「薬物送達システム」は、治療用物質を制御されたように患者に導入することを可能にするデバイスを指す。これらはたとえば、注入ポンプおよび他の必要な構成要素を含み得る。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「らせん状の」は、円筒、円錐、または類似の構造の外周に沿って配設されているらせんまたは他の3次元曲線を指す。らせんまたはらせん状曲線の「ピッチ」とは、らせんまたはらせん状曲線が1回の回転(360°)を完了するときの長手方向距離を指す。たとえば、3インチのピッチは、らせんが3インチごとに1回転を完了することを意味し、一方、6インチのピッチは、らせんが6インチごとに1回転を完了することを意味する。らせんまたはらせん状曲線はまた、そのらせんまたはらせん状曲線がその開始点からその終了点までに完了する回転の、度数によって記述することもできる。たとえば、360°のらせんまたはらせん状曲線は、その長さにわたって外周に沿った単一の回転を完了し、一方、その長さにわたって、450°のらせんは1と4分の1回転を完了し、540°のらせんは1と2分の1回転を完了する。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「ルアーコネクタ」および「ルアーアダプタ」は、国際標準化機構(ISO)の規格594-2に準拠したアダプタまたはコネクタを指す。
【0037】
本明細書で使用する場合、「患者」または「被験者」は、任意の動物種、好ましくは哺乳類種、場合によりヒトを指す。被験者は、明らかに健康な個人、疾患を患っている個人、または疾患の治療中の個人であり得る。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「形状記憶材料」は形状記憶合金または形状記憶ポリマーを含み得る。これらの材料は、加えられた応力または力が取り除かれた後で材料が一時的に変形した状態から恒久的な元の形状へ戻ることを可能にする、加えられた応力に対する可逆の弾性応答である、擬弾性または超弾性によって特徴付けられる。例示的な形状記憶合金としては、銅-アルミニウム-ニッケル合金およびニッケル-チタニウム(ニチノール)合金が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「治療流体」は、本開示のバスケットまたはカテーテルを通して患者に投与され得る流体である。これらの「治療流体」は不活性であって本明細書に開示する他の治療技法および方法と併用して投与されてもよく、または、1つもしくはそれ以上の治療薬を含んでもよい。「治療薬」(または「薬品」、「薬学的に活性な薬剤」、「薬物」もしくは本明細書において互換可能に使用できる他の関連する用語)は、疾患または病状の治療(すなわち、疾患もしくは病状の防止、または疾患もしくは病状と関連する症状の低減もしくは除去、または疾患もしくは病状の実質的もしくは完全な除去)のために使用できる薬剤を指す。これらの薬剤は、血餅を溶解させるために使用される血栓溶解剤を含んでもよく、限定するものではないが、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アニストレプラーゼ、遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータ、もしくはスタフィロキナーゼなどの線維素溶解剤、または、当業者に知られているような他の血栓溶解剤を含む。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「治療すること」および「治療」は、本開示が企図する1つまたはそれ以上の治療法の実施による、病態または病状を有する患者の管理および看護を指す。治療することはまた、患者の治療において、本開示の1つもしくはそれ以上の方法を実施すること、または、本開示のシステム、デバイス、もしくは組成物のいずれかを使用することも含む。本明細書で使用する場合、「治療」または「治療法」は、治療学的な治療、および予防法的なまたは予防の手段を指す。「治療すること」または「治療」には、兆候または症状の完全な軽減は必須ではなく、治癒は必須ではなく、患者に対して僅かなまたは不完全な効果しか及ぼさないプロトコルが含まれる。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「脈管」は、本開示のバスケットを中に配設できる体の通路または管を指す。これにはたとえば、循環器系、消化管、尿路、胆管、または体内の他の通路を含めることができる。
【0042】
ここで図1を参照すると、本開示のバスケットの実施形態が提供されている。図1Aに示すように、展開可能なバスケットはフレーム110を含む。フレーム110は、内側表面および外側表面を有する壁ならびにその近位端101とその遠位端102の間に延びているルーメンを含み、長手方向軸を画成する、中空のチューブまたは軸を含む。軸の壁は、軸の端部、たとえば遠位端からその長さの一部に沿って長手方向に延びている、壁の外側表面から壁の内側表面に至る複数の切れ目を有し、これにより複数の叉部115が提供されるが、その端部は自由であり互いに付着されていない。切れ目は軸の全長までは延びておらず、むしろ、複数の叉部115の各々の間の確実な付着点を維持するために、他端、たとえば近位端には切れ目が入っていない。複数の叉部115を有するフレーム110の写真が図2に示されている。見てとれるように、切れ目は軸の左の端部から延びて叉部115を形成しており、一方、軸の右の端部は完全なままである。特に長手方向軸から離れる半径方向への、自由端の移動を防止するために、叉部115の自由端同士を、恒久的にまたは一時的に共に付着させることができる。たとえば、図1Aに示すように、叉部115の自由端を覆うようにキャップ116を設置することができる。叉部の端部同士が接合された状態で、図1Bに示すように、フレーム110の長手方向長さLを短くすることによって、すなわち、近位端および遠位端を長手方向軸に沿って共により近くへ移動させることによって、バスケットのフレーム110を閉状態から拡張状態へ展開することができる。いくつかの実施形態では、フレーム110の叉部115は、フレームの長手方向の長さが短くなるときに、長手方向軸から離れるように半径方向に拡張する。
【0043】
図1Cには組み立てが完了したバスケット100が示されており、これには、叉部115の各々の周囲に配設されている複数のチューブ120がさらに含まれる。チューブは、内側表面および外側表面を有する壁と、遠位端と近位端の間に延びているルーメンと、を含み得る。いくつかの実施形態では、叉部の端部が接合される前に、チューブを滑動させて叉部115の自由端を覆ってもよい。フレーム110の叉部115およびチューブ120が共になって、本開示のバスケット100の枝部を形成している。枝部の自由端は、叉部115、チューブ120、または両方の自由端同士を接合または固着することによって、恒久的にまたは一時的に、互いに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、枝部の自由端は、チューブ120の端部を共に融着または糊着することによって、固着されている。枝部の自由端を覆うように、キャップ140を設置することができる。叉部115がチューブ120のルーメン内に配設されている場合、バスケット100の長手方向軸から離れる半径方向運動を防止するためにチューブ120の自由端同士を共に固着することにより、同様に叉部115の自由端が固着されることになることが、理解されるべきである。上記したように、直接またはチューブ120の端部を固着することによってのいずれかで、叉部115の自由端が接合されると、その長手方向長さを短くすることによってバスケット100を拡張状態へ展開することができる。このようにして、フレーム110はチューブ120のための支持部を提供し、その構造はバスケット100の様子を示す。いくつかの実施形態では、バスケット100の枝部は、その長手方向の長さが短くなるときに、長手方向軸から離れるように半径方向に拡張する。このようにして、本開示のバスケットは、バスケット100が血栓内に配設されているときにバスケット100の枝部を拡張することによって、閉塞した血管を通る通路を機械的に開くことができる。
【0044】
チューブ120の各々は多孔質であってもよく、チューブ120の内部ルーメンを外部に流体連結する、チューブ120の壁の内側表面と外側表面の間の複数のポート121を含み得る。1つの、複数の、または全てのチューブ120の端部を、たとえばカテーテル軸を通して、薬物送達システムに流体連結することができ、チューブ120の多孔性により、バスケット100を通した治療物質の送達が可能になる。ポート121の数、サイズ、および向きは、所望の注入速度が得られるように、ならびに、バスケット100の全長に沿った治療流体の均一な分散が保証されるように、調節することができる。ポートは、チューブ120の長さに沿って均等に分布させてもよく、または不均一であってもよい。ポートはまた、指向性のある注入を実現するように設置してもよい。たとえば、ポートを、チューブ120の壁の、バスケット100の中心長手方向軸からさらに離れている側に、すなわち、チューブ120の壁の、展開したときに血餅と接触することになる部分に、設置することができる。このようにして、本開示のバスケット100は、注入を介して血栓を治療的に溶解させることができる。いくつかの実施形態では、ポート121は、0.001から0.010インチの間の直径を有するレーザ穿孔した穴であり得、1つのチューブ120あたり5から100個のポート121を有する。いくつかの実施形態では、チューブ120は、0.001から0.006インチの間のサイズとした、48個のポート121を含み得る。ポート121の設計を、チューブ120のルーメンのうちの1つ、複数、または全てに連結されている薬物送達システムの、投入流量要件に適合させることができる。流量を適合させることによって、その全長に沿って均一に治療流体を放出するための、チューブ120内の最適な背圧を生み出すことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、バスケットは、バスケット100の単一の枝部を描いた図3に示すように、内側表面および外側表面を有する壁と、チューブ120の各々の周囲に配設される遠位端と近位端の間に延びているルーメンとを含む、外側チューブ125の追加の組を含み得る。外側チューブ125は、外側チューブ125の壁の内側表面とチューブ120の壁の外側表面の間に流体区画が形成されるようなサイズであり得る。外側チューブ125の近位端および遠位端を、形成される流体区画が近位端および遠位端において封止されるように、チューブ120の近位端および遠位端に対して封止することができる。外側チューブ125は多孔質であってもよく、チューブ120上の複数のポート121と同様の、外側チューブの壁の内側表面および外側表面の間の複数のポート126を含み得る。ただし、ポート126は、ポート126を通る治療流体の流量がポート121を通る治療流体の流量未満となる、たとえば、ポート126の断面表面積がポート121の表面積未満となるような、サイズおよび空間構成であり得る。このようにして、チューブ120のルーメンを通って流れポート121から放出される流体が、形成される流体区画内に蓄積し、ポート126を通って放出されるときに枝部の長手方向の長さに沿って分散される。したがって、枝部の全長に沿った流体分散が保証される。いくつかの実施形態では、ポート126は、0.001から0.010インチの間の直径を有するレーザ穿孔した穴であり得、1つの外側チューブ125あたり5から100個のポート126を有する。
【0046】
所望の標的場所に所望の治療上の利益を提供できるように、バスケット100の長さを調節することができる。いくつかの実施形態では、バスケット100は閉状態において2インチから8インチの間であり得る。いくつかの実施形態では、バスケット100は閉状態において約5インチの長さである。ただし、バスケット100の長さが長くなるにつれて、その構造特性が、その血栓溶解性能が損なわれるような影響を受ける場合がある。より長いバスケット長さが望まれるような場合には、1つまたはそれ以上のバスケット100を、同じ長手方向軸に沿って互いに隣り合わせて配設してもよい。いくつかの実施形態では、より長い注入長さを生み出すために、バスケット100の遠位端101にオプションポート122を設置してもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、バスケット100は、バスケット110の遠位端の周囲に任意選択的な遠位捕捉保護バスケット(distal catch protection basket)130をさらに含み得る。この遠位捕捉保護バスケット130は、塞栓の大きな破片が体の別の部分で塞栓を形成するのを防止することによって、セーフティネットの役割を果たし得る。このことは、肺動脈などの大きな動脈内にバスケット100を設置するときに、特にリスクとなる場合がある。バスケット100が拡張すると、柔軟な薄いポリマーの膜がバスケット100の枝部の外面に付着して、枝部の各々の間に網体が提供されることになる。拡張すると、網体は、下流に浮動し得る粒子を捕捉できる、パラシュート形状の捕捉部を形成する。いくつかの実施形態では、遠位捕捉保護バスケット130は、血流が通過できるがデバイスの使用中に生成される場合がある任意のデブリを遠位捕捉保護バスケット130が依然として捕捉できるようなサイズとなっている、穴131を含み得る。これらの血餅を捕捉することに加えて、枝部の遠位端における、すなわち遠位捕捉保護バスケット130内にある、チューブ120のポート121は、遠位捕捉保護バスケット130の内部空間に向かって内向きに方向付けることができ、このことにより、内部空間内に注入される最大濃度の治療薬で、捕捉されたどのような断片も溶解させることが可能になる。治療が完了するとバスケットを患者から後退させて取り外すことができ、残る塞栓は全て遠位捕捉保護バスケット130内に捕捉されることになり、体から安全に取り除いて検査することができる。遠位捕捉保護バスケット130は、限定するものではないが数種類のポリマーを含め、任意の好適な材料で作ることができる。たとえば、様々なデュロメータ硬さのナイロン12、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリウレタン、またはポリエーテルブロックアミドなどの材料。遠位捕捉保護バスケット130の網体の厳密なデュロメータ硬さと厚さと穴131の配置とを、バスケット100の特定のサイズおよび所望の用途に合わせて最適化することができる。網体は、当業者に知られているような任意の標準的なバルーン吹き込み法(balloon blowing method)によって作成し、次いでバスケットに適合するように切断し取り付けることができるか、またはバスケット端部に直接被せることができる。
【0048】
上記したように、バスケット100のフレーム115は、軸の長さの一部に沿って一方の端部から延びている軸の壁を貫通する複数の切れ目を有する、中空の軸から構築されている。これらの切れ目により、バスケット100の結果的な構造形状が決定される。いくつかの実施形態では、これらの切れ目はレーザによって、展開状態にあるとき血管の解剖学的構造に適合する開形状または拡張形状が得られるように最適に構成された、特定の設計パターンの組を用いて作られる。これらの切れ目は直線状、すなわち、チューブの長手方向軸と平行であっても、らせん状であっても、または直線状およびらせん状の両方であってもよい。複数の切れ目の各々は合同、すなわち形態が同一であってもよく、長手方向軸に沿って互いに平行になるように、軸の外周に沿って並進されてもよい。すなわち、複数の切れ目によって形成される叉部115の各々は、その全長に沿って一貫した幅を有し得る。他の実施形態では、複数の切れ目の各々は一致していなくてもよく、この場合、そこから形成される叉部115は、その長さに沿って幅が変動する。
【0049】
いくつかの実施形態では、複数の切れ目はらせん状である。特に、フレーム110の長さの一部にわたって複数のらせん状の切れ目を有して作られたフレーム110により、最適な開放特性を提供する叉部115が作成されることが分かっている。図4に示すように、複数のらせん状の切れ目から結果的に得られる叉部115は、アームの半径方向の均一な分散をもたらし、直線状の血管内(図4A)または曲がった血管内(図4B)の両方において、展開済みの注入バスケット110の形状の中に、開いた通過チャネルを作成する。図4Cに示すように、らせん状に切れ目を入れたフレーム110は肺動脈内で展開するのに最適な設計となっており、展開状態へ拡張するが、このとき、叉部115が肺動脈のより大きく曲がった部分を外向きに押し込み、この結果血餅が動脈の天井に捕捉される。このことにより患部への血流が即時に回復し、血餅の予期しない除去を防止するという追加の利益がもたらされる。
【0050】
さらに、内部フレーム110、したがってバスケット100の枝部の、その長さに沿った均一な拡張により、投与される治療薬の均一な分散が保証され、また、枝部と血餅の間の接触により血餅の標的エリアへの治療薬の直接投与が保証され、臨床成績が改善し、回復が早くなる。ピッチの異なるらせん状の切れ目を有する2つの異なるフレーム110を描いた図5に示すように、複数のらせん状の切れ目のピッチは、所望の展開特性が得られるように操作することができる。いくつかの実施形態では、らせん状の切れ目は、1インチから6インチの間のピッチを有し得る(すなわち、切れ目はフレーム110の軸を中心に、1インチあたり1回転から6インチあたり1回転までを完了し得る)。いくつかの実施形態では、らせん状の切れ目は、内部フレーム115の長さにわたって360°から1080°の間で回転してもよい。一実施形態では、複数のらせん状の切れ目は、約5インチの長さにわたって約450°回転する、すなわち、約4インチのピッチを有する。いくつかの実施形態では、らせん状の切れ目のピッチは、たとえば遠位端がフレームの長さに沿った他の部分よりも大きいピッチを有し得るように、フレーム110の長さにわたって一定でなくてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、フレーム110は形状記憶材料で構築されており、ニッケル-チタン合金、たとえばニチノールで作ることができる。ただし、フレーム110は、当業者が理解するような任意の好適な材料で作ることができ、たとえばステンレス鋼またはコバルト-クロムを含み得ることを理解すべきである。フレーム110を電解研磨してもよく、および/または、レーザ切断を行って叉部115を形成した後で熱硬化させてもよい。フレーム110の熱硬化により、フレーム110が変形後に戻る、その恒久的な形状が得られる。いくつかの実施形態では、フレーム110を熱硬化させて、叉部が長手方向軸に対峙して平坦に延び本質的に軸の形状を形成している、閉じた外形にしてもよい。このようにして熱硬化されたフレーム110を、上記したようにフレーム110の長手方向の長さが短くなるように力を加えることによって、拡張した状態へ展開することができ、この力が取り除かれると、フレーム110は閉じた状態に戻ることになる。他の実施形態では、フレーム110を、完全に閉じた状態から完全に拡張した状態までの展開の、任意の段で熱硬化させることができる。たとえば、完全に拡張した状態で熱硬化させると、フレーム110はフレームの長手方向の長さを長くするように力を加えることで閉状態に置くことができ、力が取り除かれると、長手方向の長さが短くなり、フレーム110は拡張状態に戻ることになる。血管系を通して意図する位置へバスケットを導く間、閉位置を維持するために、熱硬化で拡張させた展開可能なバスケット110を覆うように、外側のシースを設置してもよい。次いでシースを取り外して閉塞の部位での拡張を可能にすることができ、その後、閉位置を維持して取り外せるようにするために、シースを後から再び設置することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、バスケット100は、図6に示すようにチューブ120のルーメンのうちの1つ、複数、または全ての中に配設されている、光ファイバ材料150をさらに含み得る。これらの光ファイバ材料は、発光デバイスに連結してもよく、閉塞を分解または除去できる別の機構を提供するために、光エネルギー、たとえばレーザエネルギー、Eを、バスケット100の枝部から血栓内へ導くために使用することができる。血管内の血栓は通常、血管の壁による吸収が最小限であり得る、特定の波長の光エネルギーを吸収する。いくつかの実施形態では、光ファイバ材料が発する光エネルギーは、周囲の血管を損傷することなく血栓の分解を促進するような波長であり得る。光ファイバ材料150を通して血栓まで光エネルギーを送達することによって、上記したような機械的な緊密化および治療薬の注入に加えて、本開示のバスケットおよびカテーテルは、従来の薬理学的な方法のみを用いた場合には24時間を超え得る血栓を溶解させるのに必要な時間を、短縮することができる。他の実施形態では、光ファイバ材料は、たとえば血栓のサイズまたは密度の決定など、測定または診断目的に使用できる光エネルギーを発し得る。
【0053】
本開示のバスケットの別の機能は、流体注入と光エネルギーの送達を同時に提供する能力であり、このことにより、本開示のバスケットは、治療部位に追加的な冷却の利益を提供することが可能である。上記したような光の伝達および送達中、治療部位に過剰な熱が発生する可能性がある。過剰な熱は、利用可能なエネルギーレベル、治療の継続時間を制限し、レーザ送達デバイスの有効性を低下させ、組織の損傷が生じ得るリスクを高める。本開示のバスケットの設計は、光エネルギーの伝達と同時に、流体の注入を可能にする。図6および図7A~Cに示すように、ファイバ150により送達される光エネルギーのエネルギーおよび焦点領域は、本開示のバスケットの枝部から流体が注入される場合と同じである。光エネルギーと同時の流体の送達により、光エネルギーが集中する領域が冷却されることになり、より高いエネルギーレベルの使用、より長い治療継続時間、および全体的な有効性の向上が可能になる。冷却流体は治療流体であってもよく、または、生理食塩水などの生物学的に許容できる不活性流体であってもよい。冷却流体の温度は、様々な程度の冷却効果が得られるように変更することができる。いくつかの実施形態では、冷却流体の温度は70°から90°Fの間である。
【0054】
いくつかの実施形態では、バスケット100はまた、組織、特に腫瘍またはがんに、放射性同位体を送達するために使用することもできる。バスケット100の枝部は、照射源を担いこの照射源を治療すべき組織に送達するために使用できる。照射源はたとえば、ベータおよび/またはガンマ粒子を発する、シード、同位元素、液体、またはそのようなシード、同位元素、もしくは液体を含む組成物もしくは材料であり得る。たとえば、放射性ヨード(I131)、ストロンチウム89、サマリウム153、リン32、イットリウム90、ラジウム226、セシウム137、コバルト60、イリジウム192、ヨウ素125、および金198などの放射性同位体を使用することができる。いくつかの実施形態では、バスケットまたはカテーテルが体内の所望の治療部位へ送達される際の健康な組織の放射線障害を防止するために、厳重なシールドが必要になる場合がある。カテーテルシースは、タンタルまたはタングステン充填ポリマーなどの放射線不透過性の材料から作ることができ、閉じたバスケットを取り囲むように使用することができる。バスケットが標的部位に展開されると、シースを後退させて、バスケットおよび照射源を露出させることができ、次いでこれらを、その部位を照射するために拡張状態へ展開することができる。このようにして、ベータおよび/またはガンマ粒子を、治療部位、たとえば腫瘍またはがんに、均等に送達することができる。
【0055】
本開示のバスケットを含むカテーテルも提供される。ここで図7を参照すると、近位端701および遠位端702を有するカテーテル700は、カテーテル700の遠位端702に配設されている複数の枝部711を含む、上記したようなバスケット710を含む。カテーテル700は、内側表面および外側表面を有する壁と遠位端と近位端の間に延びているルーメンとを含む内側軸720をさらに含み、バスケット710のフレームのルーメン内に同軸に配設されている。この内側軸720はその遠位端を、たとえば内側軸720をバスケット710の枝部711の遠位端に糊着もしくは融着することによって、および/または遠位端キャップ740によって、バスケット710の遠位端に一時的にまたは恒久的に取り付けることができる。内側軸720は、バスケット710の遠位端からバスケット710の近位端を越えて延びている(図示せず)。内側軸720は、バスケット710の近位端に対して長手方向に自由に移動することができる。内側軸720のルーメンの直径は、市販の案内ワイヤと適合するようなサイズとすることができる。したがって、本開示のカテーテル700を、カテーテル700を血管内の意図する位置へ展開するために、内側軸720の内側ルーメンを通る案内ワイヤ上に通すことができる。いくつかの実施形態では、内側軸720のルーメンの直径は、当業者に知られているような血液モニタリングシステムと共に使用できるように適用されるようなサイズとなっている。内側軸720の近位端は、限定するものではないが標準的な病院のカテーテル検査室において一般的である圧力変換器システムなどの、血液モニタリングシステムに連結できる連結可能な継手、たとえばルアーコネクタを含むことができる。このようにして、本開示のカテーテルでは、デバイスの展開および使用中の患者のバイタルサインの同時モニタリングが可能であり、このことにより、閉塞の除去に成功したことを直ちに示すことが可能になり得る。たとえば、血管に閉塞が存在すると血圧の上昇が起こる場合があり、本開示のカテーテルの展開および使用中に血圧をモニタすることによって、血流が回復したときの血圧の即時の降下によって、手術の成功を示すことができる。いくつかの実施形態では、内側軸720の内側ルーメンの直径は、0.021から0.028インチの間である。他の実施形態では、血液試料を得るために、内側軸720の近位端における流体連結を使用することができる。
【0056】
他の実施形態では、内側軸720を、図7Aにおいて内側軸720から離れるように延びる矢印Eで示すように、上記したものと同様にして光または放射エネルギーを発するように適用することができる。たとえば、光ファイバ材料を、内側軸720のルーメンの中に挿入することができる。光ファイバ材料は発光デバイスに連結可能であり、光エネルギーを治療、測定、または診断の目的でバスケットの中心軸から導くために使用できる。光エネルギーは、中心軸から離れるように半径方向に発することができるか、または、内側軸720の遠位端を通して長手方向軸に沿って発することができる。内側軸720はまた、照射源を担いこの照射源を治療すべき組織に送達するためにも使用できる。そのような実施形態では、バスケット710の枝部711は図7Cに示すように、光および/または放射エネルギーを、血管、体の通路、または管の中心に配置する役割を果たし得る。ここでは、枝部711は内側軸720から離れるように半径方向に延びて血管Vの内側表面を押圧しており、このことにより、光または放射エネルギーEが内側軸720から離れるように半径方向に発されるときに、内側軸720が血管内で中央に配置される。
【0057】
外側軸730は、内側表面および外側表面を有する壁と、内側軸のバスケット710の端部を越えて近位方向に延びている部分の周囲に同軸に配設されて外側軸の内側表面と内側軸の外側表面の間に流体区画を形成している、遠位端と近位端の間に延びているルーメンとを含む。バスケット710の枝部の近位端は流体区画に連結されており、内側軸720とバスケット710の枝部の近位端の間には流体封止材725を形成することができ、この場合、治療流体が流体区画からバスケット710の枝部のチューブのルーメンに進入し、チューブの複数のポートを通して血栓の部位まで流れることができるようになっている。外側軸730の直径は、典型的には0.050から0.120インチの間である。外側軸730の近位端は、ルアーコネクタなどの、治療流体をカテーテル内に送達できるように薬物送達システムに連結可能な継手で終端することができる。
【0058】
第1の位置では、バスケット710の枝部は図7Bに示すように、閉じたように内側軸720に対して平坦に広がっている。この状態では、バスケット710の外径は外側軸730および遠位端キャップ740と実質的に同じ直径である。バスケット710を、図7Aに示すように、内側軸720を近位方向に移動させることによって枝部が長手方向軸から半径方向外向きに拡張する、第2の開位置まで拡張させることができる。内側軸720を近位方向に移動させることによって、バスケット710の長手方向の長さが短くなり、バスケット710の弓なりの枝部は内側軸720から離れるように外向きにたわむ。内側軸720を遠位方向に移動させることによって、バスケット710を第1の位置に戻すことができる。こうして、本開示のカテーテル700を、閉じた第1の位置にある間に血餅内に送達し、開いた第2の位置へ展開して、血餅を機械的に取り除くことおよびその部位に医薬品を注入することの両方を行い、その後閉じた第1の位置へ戻して取り外すことができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、カテーテル700は、図8の切欠き図に示すように、内側軸と複数の枝部の近位端の間に配設されている、封止材725を含む。カテーテル700および外側軸730の遠位端702および近位端701は示されていない。上記したような、フレーム715とチューブ716とを含むバスケット710の組立体が示されている。上記したように、チューブ716の端部同士を、恒久的にまたは一時的に共に接合することができ、この接合工程中は、様々なルーメンが開いたままとなることを保証するための適当な手段(たとえば、様々なルーメンへのマンドレルの挿入)が採用される。内側軸720は、バスケット710の内部ルーメン内に同軸に配設されている。内側軸720とバスケット710の内部ルーメンの間に、外側表面および内側表面を有する壁ならびに遠位端から近位端までのルーメンを含む、封止材725が配設されている。たとえば、バスケット710の内部ルーメンを封止材725の壁の外側表面に対して融着または糊着しこのことにより封止することを介して、封止材725の壁の外側表面を、一時的にまたは恒久的にのいずれかで、バスケット710のルーメンに接合することができる。外側軸730(図示せず)は、上記したように内側軸720の周囲に同軸に配設されることになり外側軸730の遠位端はバスケット710の枝部の近位端に接合されて外側軸730の壁の内側表面と内側軸720の外壁の間に形成される流体区画とバスケット710の枝部の間に、流体封止部を形成することになる。封止部材725のルーメンの内径は、内側軸720の外径と実質的に同じ直径であり、内側軸720が封止部材725のルーメン内で長手方向に摺動可能であると同時に、バスケット710の内部ルーメンを通る流体区画の遠位端からの流体の漏出が防止されるようになっている。いくつかの実施形態では、封止部材725のルーメンの内径は、少量の流体がその空間に進入可能となり得るように、内側軸720の外径よりも僅かに大きくてもよい。この少量の流体がこの空間を効果的に封止して、追加の流体が漏れるのを防止するが、このとき、内側軸720が長手方向軸に沿って近位方向および遠位方向に移動することは許容される。封止部材725が流体の漏れを防止する能力は封止部材725の長さを変えることによっても制御でき、この場合、その壁の内側表面と内側軸720の壁の外側表面の間の界面が延びる距離を短くすれば、封止能力が低下し、または距離をより長くすれば、封止能力が向上する。封止部材725の典型的な長さは2から8インチであってもよく、バスケット710の長さの一部にわたって延びることができる。図7Aに示すように、封止部材725は、バスケット710の約半分の長さにわたって延びている。
【0060】
血管の他に、本開示のバスケットおよびカテーテルは、展開可能なバスケットを配設できる、体の任意の他の脈管または管において利用することができる。これには、限定するものではないが、消化管、尿路、および胆管の一部、または他の脈管もしくは体の通路を含む、体の他のエリアを含めることができる。
【0061】
本開示のバスケットおよびカテーテルの様々な管材、軸、および封止材は、当業者に知られているような任意の好適な材料であってよく、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ナイロン6、Pebax、またはナイロンが含まれるが、これらに限定されない。管材はたとえば、ステンレス鋼、形状記憶金属、ポリマー繊維を編んだものであってもよい。
【0062】
図9は、本開示の実施形態に係る注入カテーテルデバイスを示す。注入カテーテル900の遠位端は、上で概して記載したように、バスケット910と、内側軸920と外側軸930と、封止部材925と、遠位端キャップ940と、を含む。注入カテーテル900の近位端は、ハンドル950を含む。ハンドルは、注入カテーテル900の内側軸920の近位端に連結される、スライド955をさらに含む。スライド955は、スライドを近位方向に移動させることによってバスケットを拡張状態に展開するために使用することができ、このことにより、上で概して記載したように、内側軸920が近位方向に移動され、バスケット910が半径方向に拡張する。内側軸920の近位端は、ハンドル950の端部を越えて延び、ルアーコネクタ921内で終端することができる。この連結されたルアーを、使用中に患者のバイタルサインをモニタするための変換器に連結することができるか、または、血液試料を得るための他の構成要素に連結することができる。ハンドル950はまた外側軸930の近位端に流体的に連結された、注入軸960も含み得る。注入軸960は、静脈内ポンプなどの薬物送達システムに連結可能なルアーコネクタ961で終端される。
【0063】
本明細書ではまた、治療の方法およびカテーテルを利用する血栓溶解の方法も提供される。方法は、本開示の上記したような注入カテーテルを提供することと、展開可能な注入バスケットを第1の位置において血管内の血栓の中へ少なくとも途中まで前進させる工程と;展開可能な注入バスケットを第2の位置へ展開する工程と;同時に展開可能な注入バスケットの枝部の注入ポートを通して治療薬を注入する工程と、を含み得る。いくつかの実施形態では、展開可能な注入バスケットの枝部は、第1の位置では閉状態にあり、第2の位置では長手方向軸から離れるように半径方向に拡張する。このようにして、本開示の方法は、血管を機械的に開かせる一方、同時に血餅を薬学的に溶解させるための治療薬を送達する。いくつかの実施形態では、血餅に光エネルギーを適用することができる。本開示の方法を、限定するものではないが下大静脈、上大静脈、腸骨静脈、大動脈、肺動脈、または肺静脈を含む、血栓を患った任意の血管に対して採用することができる。上記したように、本開示の展開可能な注入バスケットは、これらの大きな曲がった血管系の中で機能するのに最適な設計となっている。
【0064】
本開示の注入カテーテルのシステムおよびデバイスにおいて、運用上のおよび患者の治療上の必要によって示される特定の必要に応じて、様々な組合せならびに/または修正および変更を行うことができることが、当業者には明らかであろう。またさらに、一実施形態の一部として例示または記載される特徴を別の実施形態に対して使用して、さらに別の実施形態を得ることができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9