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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230124BHJP
   B65H 5/12 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61F13/15 371
B65H5/12 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020562899
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044318
(87)【国際公開番号】W WO2020137206
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018247299
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】有馬 卓志
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-142414(JP,A)
【文献】特開2017-113230(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006834(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
B65H 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回軌道に沿って変速されながら回転し、受取位置PにおいてワークWを受け取り、渡し位置において前記ワークWを連続シートN上に渡す保持パッド20と、
前記連続シートNを製品のサイズに応じた搬送速度で搬送し、前記渡し位置において前記ワークWを前記連続シートN上に受け取り搬送する搬送装置5と、
前記渡し位置としての前記周回軌道上の上流位置P1において第1サイズの前記ワークWの受け渡しを開始する第1開始時点S1から、前記渡し位置としての前記周回軌道上の前記上流位置P1よりも下流の下流位置P2において第2サイズの前記ワークWの受け渡しを開始する第2開始時点S2までの間において、前記保持パッド20の周速度Vが連続的に減速、あるいは、連続的に増速されるように変速する変速装置2とを備える、吸収性物品の製造装置。
【請求項2】
請求項1において、前記変速装置2は前記第1開始時点S1から前記第2開始時点S2までの間において、前記周速度Vが連続的に減速するように変速することを特徴とする、吸収性物品の製造装置。
【請求項3】
請求項1において、前記第1開始時点S1から前記第1サイズの前記ワークWの受け渡しを完了する第1完了時点C1までの第1期間T1、前記第1完了時点C1から前記第2開始時点S2までの第2期間T2、ならびに、前記第2開始時点S2から前記下流位置において前記第2サイズの前記ワークWの受け渡しが完了するまでの第2完了時点C2までの第3期間T3において、前記周速度Vが連続的に減速、あるいは、連続的に増速されるように前記保持パッド20を前記変速装置2が変速することを特徴とする、吸収性物品の製造装置。
【請求項4】
請求項1、2もしくは3において、前記渡し位置として前記上流位置P1または前記下流位置P2に設定するための設定装置を更に備える、吸収性物品の製造装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記搬送装置5は前記連続シートNおよび前記ワークWを介して前記保持パッド20に接する転写ロール50を備え、
前記設定装置は前記転写ロール50を前記上流位置P1および前記下流位置P2のうちの1つの位置に配置することを特徴とする、吸収性物品の製造装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記第1開始時点S1における前記周速度Vに対する前記第2開始時点S2における前記周速度Vの減速比が1.0よりも大きく、1.2以下、好ましくは1.07以下、より好ましくは1.01以下に設定されている、吸収性物品の製造装置。
【請求項7】
請求項1,3,4もしくは5のいずれか1項において、
前記第1開始時点S1における前記周速度Vに対する前記第2開始時点S2における前記周速度Vの増速比が1.0よりも大きく、1.2以下、好ましくは1.07以下、より好ましくは1.01以下に設定されている、吸収性物品の製造装置。
【請求項8】
周回軌道に沿って変速されながら回転する保持パッド20で、受取位置PにおいてワークWを受け取り、渡し位置において前記ワークWを連続シートN上に渡す第1搬送工程と、
搬送装置5が前記連続シートNを製品のサイズに応じた搬送速度Vで搬送し、前記渡し位置において前記ワークWを前記連続シートN上に受け取り搬送する第2搬送工程と、
予め、前記渡し位置として前記周回軌道上の上流位置P1と前記上流位置P1よりも下流の下流位置P2とのうちの前記サイズに応じた1つの位置に設定する工程と、
前記上流位置P1においての第1サイズの前記ワークWの受け渡しを開始する第1開始時点S1から、前記下流位置P2において第2サイズの前記ワークWの受け渡しを開始する第2開始時点S2までの間において、前記保持パッド20の周速度Vが連続的に減速、あるいは、連続的に増速されるように変速装置2が変速する変速工程とを備える、吸収性物品の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、前記変速工程における前記第1開始時点S1から前記第2開始時点S2までの間において、前記周速度Vを連続的に減速するように変速することを特徴とする、吸収性物品の製造方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記第1サイズの場合、前記搬送速度Vは前記第1開始時点S1における前記保持パッド20の前記周速度Vに設定され、
前記第2サイズの場合、前記搬送速度Vは前記第2開始時点S2における前記保持パッド20の前記周速度Vに設定されることを特徴とする、吸収性物品の製造方法。
【請求項11】
請求項8において、前記第1開始時点S1から前記第1サイズの前記ワークWの受け渡しを完了する第1完了時点C1までの第1期間T1、前記第1完了時点C1から前記第2開始時点S2までの第2期間T2、ならびに、前記第2開始時点S2から前記下流位置P2において前記第2サイズの前記ワークWの受け渡しが完了するまでの第2完了時点C2までの第3期間T3において、前記周速度Vが連続的に減速、あるいは、連続的に増速されるように前記保持パッド20を前記変速装置2が変速することを特徴とする、吸収性物品の製造方法。
【請求項12】
請求項8,9,10もしくは11において、
前記搬送装置5は前記連続シートNおよび前記ワークWを介して前記保持パッド20に接する転写ロール50を備え、
前記設定する工程において前記転写ロール50を前記上流位置P1および前記下流位置P2のうちの1つの位置に配置することを特徴とする、吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品の製造装置および製造方法の特にワーク搬送に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸収性物品のワーク搬送においては、保持パッドが受取位置でワークを受け取った後、保持パッドが加速もしくは減速した後に、シート上に渡し位置においてワークを渡している。下記の特許文献1に開示された装置では、渡し位置を複数設けると共に、製造する物品のサイズに対応して保持パッドの速度は異ならせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】JP2010-142414 A(図5
【発明の概要】
【0004】
一般的に保持パッドの速度を加減速させるには、変速用のカム機構が採用される。しかし、前記特許文献1の発明では、2箇所の渡し位置において、保持パッドは一定速度である。そのため、一定速度領域が複数存在し、これがカム機構に大きな負荷が生じる要因となる。
【0005】
かかる事項について、従来の速度線図を示す図5を用いて、詳しく説明する。
上流位置および下流位置の複数の位置において、ワークをシート上に渡す場合、図5に示すように、保持パッドの速度が一定速度である定速期間T10,T30は2つ生じる。また、前記2つの定速期間T10,T30の前後にはパッドを加減速させる加減速期間T20が生じる。
【0006】
かかる一定速と加減速とを繰り返すと、加速度が変化するタイミングTにおいて、一周ごとにカム機構には負荷が生じる。この負荷はカム機構の耐久性を低下させ、早期にメンテナンスを行う必要が生じる。
【0007】
また、サーボモータの回転数を制御することにより、保持パッドの速度を加減速する場合もあるが、この場合も一定速度領域が複数であることにより、サーボモータの負荷が増大する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、機器に大きな負荷を生じることなく、製造する物品のサイズ変更に対応可能な吸収性物品の製造装置および方法を提供することである。
【0009】
本発明装置は、周回軌道に沿って変速されながら回転し、受取位置においてワークを受け取り、渡し位置において前記ワークを連続シート上に渡す保持パッドと、
前記連続シートを製品のサイズに応じた搬送速度で搬送し、前記渡し位置において前記ワークを前記連続シート上に受け取り搬送する搬送装置と、
前記渡し位置としての前記周回軌道上の上流位置において第1サイズの前記ワークの受け渡しを開始する第1開始時点S1から、前記渡し位置としての前記周回軌道上の前記上流位置よりも下流の前記下流位置において第2サイズの前記ワークの受け渡しを開始する第2開始時点S2までの間において、前記保持パッドの周速度Vが連続的に減速、あるいは、連続的に増速されるように変速する変速装置とを備える。
【0010】
本発明方法は、周回軌道に沿って変速されながら回転する保持パッドで、受取位置においてワークを受け取り、渡し位置において前記ワークを連続シート上に渡す第1搬送工程と、
搬送装置が前記連続シートを製品のサイズに応じた搬送速度で搬送し、前記渡し位置において前記ワークを前記連続シート上に受け取り搬送する第2搬送工程と、
予め、前記渡し位置として前記周回軌道上の上流位置と前記上流位置よりも下流の下流位置とのうちの前記サイズに応じた1つの位置に設定する工程と、
前記上流位置においての第1サイズの前記ワークの受け渡しを開始する第1開始時点S1から、前記下流位置において第2サイズの前記ワークの受け渡しを開始する第2開始時点S2までの間において、前記保持パッドの周速度Vが連続的に減速、あるいは、連続的に増速されるように変速装置が変速する変速工程とを備える。
【0011】
本発明においては、上流位置および下流位置を選択して、各々の位置で第1または第2サイズのワークを搬送装置に渡すことができる。したがって、複数のサイズの物品を1台の装置で製造することができる。
【0012】
特に、第1開始時点S1から第2開始時点S2までの間に一定速とならず、連続的に減速または加速され、そのため、カムやサーボモータなどの機器に生じる負荷が軽減される。
【0013】
なお、1台の装置で3つ以上のサイズを製造する場合は、第3サイズのワークを受け渡しするための位置が設定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のワーク搬送を行う装置の一実施例を示す概略レイアウト図である。
図2】(a)~(f)はパッドの動作を示す正面図、(g)はパッドの速度の変化を示す速度線図である。
図3図3Aは設定装置の一例を示す概略正面図、図3Bはパッドの速度線図の他の例で、図3Cはパッドの速度線図の更に他の例である。
図4】着用物品およびその製造方法の一例を示す概略工程図である。
図5図5は従来の装置におけるパッドの速度の変化を示す速度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましくは、前記変速装置は前記第1開始時点S1から前記第2開始時点S2までの間において、前記周速度Vが連続的に減速するように変速する。
【0016】
本発明において、連続シートはサイズに応じた概ね一定の速度で搬送されるのに対し、ワークの渡し時においてパッドは不等速で周回する。そのため、パッドの増速中にワークをシート上に配置すると、ワークに皺が生じ易くなるかもしれない。
【0017】
これに対し、パッドの減速中にワークをシート上に配置する場合は、前記ワークには搬送方向に伸びが生じ易く、皺が生じにくい。したがって、減速中にワークを渡すことにより、シート上に美しい状態でワークを配置し易く、かつ、シートとワークとを接合し易くなるであろう。
【0018】
好ましくは、前記第1サイズの場合、前記搬送速度は前記第1開始時点S1における前記保持パッドの前記周速度Vに設定され、
前記第2サイズの場合、前記搬送速度は前記第2開始時点S2における前記保持パッドの前記周速度Vに設定される。
【0019】
この場合、ワークWを連続シートN上に渡す際にワークWに皺が生じにくい。
【0020】
好ましくは、前記第1開始時点S1から前記第1サイズの前記ワークの受け渡しを完了する第1完了時点C1までの第1期間T1、前記第1完了時点C1から前記第2開始時点S2までの第2期間T2、ならびに、前記第2開始時点S2から前記下流位置において前記第2サイズの前記ワークの受け渡しが完了するまでの第2完了時点C2までの第3期間T3において、前記周速度Vが連続的に減速、あるいは、連続的に増速されるように前記保持パッドを前記変速装置が変速する。
【0021】
この場合、第1および第2期間T1,T2だけでなく第3期間T3においても、連続的に減速または増速される。そのため、前記機器の負荷が更に軽減される。
【0022】
好ましくは、前記渡し位置として前記上流位置P1または前記下流位置P2に設定するための設定装置を更に備える。
【0023】
更に好ましくは、前記搬送装置は前記連続シートおよび前記ワークを介して前記保持パッドに接する転写ロールを備え、
前記設定装置は前記転写ロールを前記上流位置および前記下流位置のうちの1つの位置に配置する。
【0024】
転写ロールは上流位置および下流位置の各々について設けられてもよいが、この場合、複数の転写ロールが干渉しないように上流位置と下流位置との転写ロールを互いに離間させて配置することになり、各位置の選択の自由度が小さくなり易い。
【0025】
これに対し、転写ロールを上流位置と下流位置とに移動させて選択的にフレームに固定することで、各位置の選択の自由度が大きくなる。そのため、各位置における渡し時の周速度Vの選択の自由度が上がる。
【0026】
減速比が大きすぎるとワークの伸びが過大となり、一方、減速比が1.0つまり等速であると本発明の効果が得られない。
【0027】
かかる観点から、減速する場合、好ましくは前記第2開始時点S2における前記周速度Vに対する前記第1開始時点S1における前記周速度Vの減速比が1.0よりも大きく、1.2以下、好ましくは1.07以下、より好ましくは1.01以下に設定される。
【0028】
また、増速比が大きすぎるとワークに皺が生じ、一方、増速比が1.0つまり等速であると本発明の効果が得られない。
【0029】
かかる観点から、増速する場合、好ましくは前記第1開始時点S1における前記周速度Vに対する前記第2開始時点S2における前記周速度Vの増速比が1.0よりも大きく、1.2以下、好ましくは1.07以下、より好ましくは1.01以下に設定されている。
【0030】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【0031】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【実施例
【0032】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
まず、本実施例の説明に先立って、対象である着用物品(吸収性物品)の一例について説明する。
【0033】
図4は着用物品の製造方法の概略を示す。
この図において、着用物品は連続シートNとワーク(吸収性本体)Wとから生成される。連続シートNは例えば不織布の長手方向に沿って弾性部材を配置したもので、一対設けられていてもよい。
【0034】
各ワークWは連続積層体W1から物品の単位に切り取られた後、連続積層体W1から離間された後、90°旋回されて、一対の連続シートN,Nの上に架設される。架設されたワークWは2つに折られ、その後、着用物品N1ごとの単位に切断される。
【0035】
つぎに、本製造装置の概略について説明する。
【0036】
図1において、本製造装置は上流の渡しロール1、変速装置2および搬送装置5を備える。変速装置2は複数の保持パッド20を備える。前記渡しロール1および保持パッド20はワークWを搬送する。前記搬送装置5は連続シートNと連続シートN上のワークWを搬送する。
【0037】
前記保持パッド20は変速装置2の周回軌道に沿って変速されながら回転し、受取位置Pにおいて渡しロール1からワークWを受け取り、渡し位置P1,P2において前記ワークWを連続シートN上に渡す。前記渡し位置としては、上流の位置P1と下流の位置P2とがある。前記上流位置P1または下流位置P2は各々、着用物品が第1または第2サイズである場合の渡し位置である。
【0038】
前記搬送装置5は前記連続シートNを製品のサイズに応じた搬送速度Vで搬送し、前記渡し位置P1またはP2において前記ワークWを前記連続シートN上に受け取り搬送する。前記搬送速度Vは例えば第1サイズ(Lサイズ)では高速V1で、第2サイズ(Mサイズ)ではこれよりも低速V2であってもよい。前記搬送装置5は本例の場合、転写ロール50と前記転写ロール50の上流および下流に配置された案内ロール51,52とを備え、上流から下流に向かって連続シートNを連続的に搬送する。
【0039】
前記搬送装置5は例えば図3Aのような設定装置3を備える。設定装置3は、前記渡し位置を上流位置P1または下流位置P2に設定するためのものである。図1の転写ロール50は連続シートNおよびワークWを介して保持パッド20に接する。前記設定装置3は転写ロール50を上流位置P1および下流位置P2のうちの1つの位置に配置する。
【0040】
つぎに、前記設定装置3の構造の一例を図3Aを用いて説明する。
【0041】
図3Aにおいて、前記設定装置3は固定フレーム30、第1移動フレーム31および第2移動フレーム32を備える。第1移動フレーム31は固定フレーム30に対し保持パッド20の周回方向Rの接線方向D1に移動可能に固定フレーム30に取り付けられている。
【0042】
一方、前記第2移動フレーム32は第1移動フレーム31に対し、保持パッド20の周回方向Rの法線方向D2に移動可能に第1移動フレーム31に取り付けられている。前記第2移動フレーム32は転写ロール50を軸支しており、したがって、転写ロール50は前述の上流位置P1や下流位置P2その他の位置に自在に固定されることができる。
【0043】
つぎに、この実施例の変速装置2の詳細について説明する。
【0044】
図1に示すように、駆動輪21には、複数個のクランクアーム22が等角度ピッチで配置されている。各クランクアーム22の間隔は不変であり、これらクランクアーム22の回転中心であるアーム中心28は駆動輪21とともに同じ角速度で回転する。
【0045】
各クランクアーム22のアーム中心28から離隔した位置には変速用のカムローラ29がそれぞれ設けられている。カムローラ29は変速用のカム溝44に沿って移動する。この変速用のカム溝44は駆動輪21の回転中心である駆動中心210に対して偏心しており、かつ不動である。したがって、駆動中心210からのカムローラ29までの距離は、カムローラ29とカム溝44との位置によって周期的に拡縮する。
【0046】
これにより、クランクアーム22は、一定の角度範囲内で周期的に揺動し、クランクアーム22の先端が周期的に揺動する。つまり、図1に示す左側では、クランクアーム22の先端がクランクアーム22のアーム中心28よりも周回方向Rに沿って搬送方向に変位し、図1に示す右側では逆方向に変位する。
【0047】
前記クランクアーム22の先端にピン連結されたリンクレバー23およびリンクレバー23にピン連結された連結ブロック24も、クランクアーム22の先端の揺動に連動して、変位する。このクランクアーム22の揺動によって、クランクアーム22のアーム中心28と連結ブロック24との距離が変化するため、前後の連結ブロック24同士の間隔も変化する。その結果、連結ブロック24に連結された保持パッド20の角速度と保持パッド20,20同士の周回方向Rの間隔が変化する。
【0048】
図1に示すように、本例の場合、保持パッド20は連結ブロック24に対し、周回方向Rの法線Lのまわりに90°旋回し、図4のようにワークWを90°旋回させる。すなわち、図1の保持パッド20は受取位置PでワークWを受け取ると、変速しながら旋回し渡し位置P1(P2)まで周回し、渡し位置においてワークWを連続シートN上に渡す。
【0049】
この渡し動作後、保持パッド20は渡し位置P1(P2)から周回方向Rに周回する間に変速しながら旋回し、受取位置Pまで周回し、受取位置PにおいてワークWを受け取る。これらの動作を各保持パッド20が連続的に行うことで、図4のワークWが一対の連続シートNの上に次々に配置される。
【0050】
なお、図1の前記保持パッド20が法線Lのまわりに90°旋回する機構は周知の周面カムなどを有していてもよい。かかる機構は例えばWO2005/075163に記載されており、ここにその全ての記述が組み込まれる。
【0051】
前記保持パッド20は受取位置PにおいてワークWを負圧で吸着した後、保持し、周回方向Rに沿って周回して、渡し位置P1(P2)よりも上流において負圧を解除する。一方、前記搬送装置5は渡し位置P1,P2において負圧を作用させワークWを連続シートN上に受け取る。
【0052】
本例のように上流位置P1と下流位置P2とが近い場合、保持パッド20に負圧を作用させる領域は一定であってもよい。しかし、上流位置P1と下流位置P2とが遠く離れている場合(JP2010-142414 A)には、前記領域も変化させる必要があるだろう。
【0053】
つぎに、図1の変速装置2および変速工程の詳細について説明する。
予め、前記渡し位置として周回軌道上の上流位置P1とこの上流位置P1よりも下流の下流位置P2とのうちの前記サイズに応じた1つの位置に設定する。すなわち、第1サイズ(Lサイズ)の場合には転写ロール50を上流位置P1に固定する。一方、第2サイズ(Mサイズ)の場合には転写ロール50を下流位置P2に固定する。
【0054】
図2(a)~(c)は第1サイズの場合の渡し工程を示し、図2(d)~(f)は第2サイズの場合の渡し工程を示す。図2(g)は保持パッド20の変速状況を速度線図で示す。
【0055】
図2(g)において各時点は以下のように定義される。
【0056】
第1開始時点S1:図2(a)の上流位置P1において第1サイズのワークWの受け渡しを開始する時点。
第1完了時点C1:図2(c)の上流位置P1において第1サイズのワークWの受け渡しを完了する時点。
第1中間時点M1:第1開始時点S1と第1完了時点C1との間の中間の時点(図2(b)参照)。
【0057】
第2開始時点S2:図2(d)の下流位置P2において第2サイズのワークWの受け渡しを開始する時点。
第2完了時点C2:図2(f)の下流位置P2において第2サイズのワークWの受け渡しを完了する時点。
第2中間時点M2:第2開始時点S2と第2完了時点C2との間の中間の時点(図2(e)参照)。
【0058】
本例において、図2(g)の各期間T0~T3は以下のように定義される。
T0:図2(g)の第1開始時点S1以前の開始前期間。
T1:第1開始時点S1から第1完了時点C1までの第1期間
T2:第1完了時点C1から第2開始時点S2までの第2期間
T3:第2開始時点S2から第2完了時点C2までの第3期間
【0059】
本例においては、開始前期間T0、第1期間T1、第2期間T2および第3期間T3において、周速度Vが連続的に減速されるように保持パッド20を変速装置2が変速する。
【0060】
この減速(変速)工程の詳細について説明する。
【0061】
第1サイズの場合には、図1の転写ロール50が実線で示す上流位置P1に固定され、図2(g)の各時点S1,M1およびC1において周速度Vが各々V1,V1およびV1となるように連続的に減速される。
【0062】
第1サイズの場合、第1期間T1よりも以前の開始前期間T0、第2期間T2および第3期間T3においても保持パッド20は同様に連続的に減速される。
【0063】
第2サイズの場合には、図1の転写ロール50が二点鎖線で示す下流位置P2に固定され、図2(g)の各時点S2,M2およびC2において周速度Vが各々V2,V2およびV2となるように連続的に減速される。
【0064】
第2サイズの場合、第3期間T3よりも以前の開始前期間T0、第1期間T1および第2期間T2においても保持パッド20は同様に連続的に減速される。
【0065】
このように、図2の保持パッド20が渡し位置P1(P2)およびその前後において、つまり、期間T0~T3において連続的に減速され、そのため、サイズに関わらず、図1のカム溝44やカムローラ29に生じる負荷が小さい。
【0066】
一方、前記第1サイズおよび第2サイズの場合、搬送装置5による連続シートNの搬送速度Vは、各々V1およびV2の一定速に設定されてもよい。
【0067】
つまり、第1サイズの場合、搬送速度Vは第1サイズのワークWの受け渡しを開始する第1開始時点S1における保持パッド20の周速度V=V1に設定されてもよい。この場合、図2(a)~(c)の渡し工程中にワークWには連続シートNの搬送方向に引っ張り力が作用する。そのため、ワークWに皺が生じ難い。
【0068】
同様に、第2サイズの場合、搬送速度Vは第2サイズのワークWの受け渡しを開始する第2開始時点S2における保持パッド20の周速度V=V2に設定されてもよい。この場合、図2(d)~(f)の渡し工程中にワークWには連続シートNの搬送方向に引っ張り力が作用する。そのため、ワークWに皺が生じ難い。
【0069】
図2(g)に示すように、本例では期間T0~T3において周速度Vが連続的に減速されたが、周速度Vは連続的に増速されてもよい。この場合、第1サイズ(Mサイズ)においては搬送速度Vは第1完了時点C1における保持パッド20の周速度Vに設定され、第2サイズ(Lサイズ)においては搬送速度Vは第2完了時点C2における保持パッド20の周速度Vに設定されてもよい。
【0070】
また、図2(g)に示すように、この例の場合、期間T0~T3において周速度Vの減速比は一定に設定されている。しかし、各期間T0~T3の減速比(減速度)は互いに異なっていてもよい。
【0071】
本例では2つのサイズの着用物品を製造する場合について説明したが、前記サイズは3種以上であってもよい。
第1~第3サイズの着用物品を製造する場合、図3Aの実線および二点鎖線で示すように、前記転写ロール50は上流位置P1、下流位置P2および最下流位置P3においてワークWの受け渡しが行われてもよい。
【0072】
第1~第3サイズについて位置P1~P3で受け渡す場合、保持パッド20の周速度Vの速度は図3Bのように減速されてもよい。なお、この場合、第3サイズ(Sサイズ)のワークWの第3開始時点S3、第3中間時点M3および第3完了時点C3における保持パッド20の周速度Vは、V3,V3およびV3のように更に小さい速度に設定されてもよい。
【0073】
前述のとおり、図1の保持パッド20は1回転ごとに加速と減速とが繰り返される。したがって、減速から加速に移る際と、加速から減速に移る際には、略一定速の期間が生じる。かかる一定速の期間は前記受け渡し工程において生じてもよい。
【0074】
例えば、図3Cの速度線図に示すように、第3期間T3つまり、第2開始時点S2から第2完了時点C2までの間においては概ね一定速V2´s-cであってもよい。換言すれば、上流位置P1(図1)においての第1サイズの前記ワークWの受け渡しを開始する第1開始時点S1から、下流位置P2(図1)において第2サイズのワークWの受け渡しを開始する第2開始時点S2までの間において、図1の保持パッド20の周速度Vが連続的に減速されるように変速装置2が変速してもよい。
【0075】
ところで、保持パッド20に作用する負圧はその作用する時点が前記サイズ変更に応じて変更されてもよい。なお、図1ないし図3A程度まで各位置P1~P3が互いに接近している場合は前記負圧の作用期間を変更しなくてもよい場合がある。
【0076】
転写ロールは、それぞれの渡し位置P1,P2に個別に設けられてもよい。
図1の2つの転写ロール50を個別に上流位置P1と下流位置P2とに設ける場合、前記設定装置は各転写ロール50,50を固定する構造により構成される。また、2つの転写ロール50,50を個別に設ける場合においても、図3Aの各転写ロール50が法線方向D2に若干進退することができる構造とする必要があるであろう。
【0077】
なお、図1の転写ロール50を1箇所に固定し、図示しない設定装置により変速装置2全体を若干回転して上流位置P1と下流位置P2が設定されてもよい。
【0078】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、ワークは受取位置から渡し位置に移動する間に、法線を中心に90度回転されてなくてもよい。受取位置での保持パッドの周方向長さよりも、渡し位置での周方向長さが短くてもよいし、両者は同じであってもよい。
保持パッドの速度は、受取位置では、受取開始から受取終了までの間、一定速度であってもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は使い捨てパンツやオムツなどの種々の吸収性物品の製造の搬送に利用できる。
【符号の説明】
【0080】
1:渡しロール
2:変速装置 20:保持パッド
21:駆動輪 210:駆動中心 22:クランクアーム 28:アーム中心
29:カムローラ 23:リンクレバー 24:連結ブロック
3:設定装置 30:固定フレーム 31,32移動フレーム
44:カム溝
5:搬送装置 50:転写ロール
S1,(S2):第1(第2)開始時点
C1,(C2):第1(第2)完了時点
P:受取位置 P1:上流位置 P2:下流位置 P3:最下流位置
R:周回方向
T1~T3:第1~第3期間
L:法線
V:周速度 V:搬送速度
N:連続シート W:ワーク
図1
図2
図3
図4
図5