(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】フィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/06 20060101AFI20230124BHJP
B29C 48/325 20190101ALI20230124BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20230124BHJP
【FI】
B29C55/06
B29C48/325
B29C48/92
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021007111
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】10 2020 000 334.6
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505198444
【氏名又は名称】ホソカワ アルピーネ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Peter-Doerfler-Str. 13-25, 86199 Augsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベルント バイアー
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044295(JP,A)
【文献】特開2018-069639(JP,A)
【文献】特開昭59-169818(JP,A)
【文献】特開平06-064039(JP,A)
【文献】特開2003-072997(JP,A)
【文献】特表平09-507799(JP,A)
【文献】特開2013-129169(JP,A)
【文献】特開2008-273197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向でフィルムウェブ(1)を一軸方向に長さ変更するための装置(4)であって、
2つのロール(5a,5b)により画定された少なくとも1つの加工ギャップ(6)を有し、該加工ギャップ(6)を介してフィルムウェブ(1)が縦方向で案内され、フィルム搬送方向で第1のロール(5a)が第1の周速度を有しており、フィルム搬送方向で第2のロール(5b)が第2の周速度を有している、装置(4)において、
前記ロール(5a,5b)のうちの少なくとも1つのロールが、外方から内方に向かって空気通流可能であるロール(5a,5b)であり、
前記空気通流可能なロール(5a,5b)のうちの少なくとも1つのロールが、温度調整と組み合わせ可能であり、
前記空気通流可能なロール(5a,5b)に負圧源を接続可能であり、前記ロール(5a,5b)に負圧を加えることができ、
前記空気通流可能なロール(5a,5b)に、該ロールの長さにわたって種々異なる強さで負圧を加えることができ、
前記ロール(5a,5b)の温度調整のために、ガス、蒸気、水またはオイルである流体が、ロータリジョイントを介して供給および排出され、
前記ロール(5a,5b)がダブルジャケットロールであって、空気ガイドのための通路を備えており、
前記ダブルジャケットロールは、バフ研磨された表面を有する空気透過層
である焼結層を有することを特徴とする、縦方向でフィルムウェブ(1)を一軸方向に長さ変更するための装置(4)。
【請求項2】
フィルム搬送方向で第1の前記ロール(5a)が、フィルム搬送方向で第2の前記ロール(5b)よりも小さな周速度を有しており、前記フィルムウェブ(1)の長さ変更が正の長さ変更である、請求項1記載の装置(4)。
【請求項3】
搬送方向で第1の前記ロール(5a)が、前記フィルムウェブ(1)のフィルム搬送方向で第2の前記ロール(5b)よりも大きな周速度を有しており、前記フィルムウェブの長さ変更が、負の長さ変更である、請求項1記載の装置(4)。
【請求項4】
フィルム搬送方向で第1の前記ロール(5a)と、前記フィルムウェブ(1)のフィルム搬送方向で第2の前記ロール(5b)とが、同一の周速度を有している、請求項1記載の装置(4)。
【請求項5】
前記装置(4)が、延伸設備の構成部分である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(4)。
【請求項6】
前記延伸設備の別のロールが、負圧源に接続されているか、または接続されていない空気通流可能なロールとして構成されている、請求項5記載の装置(4)。
【請求項7】
前記延伸設備は、インフレートフィルム成形設備内にインラインで配置されている、請求項5または6記載の装置(4)。
【請求項8】
チューブラフィルムを製造するためのインフレートフィルム成形設備であって、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置(4)が、当該インフレートフィルム成形設備内にインラインで配置されていることを特徴とする、インフレートフィルム成形設備。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項記載の前記装置(4)が、引取りロール対の下流側で、かつインフレートフィルム成形設備の反転バーの上流側または下流側に配置されている、請求項8記載のインフレートフィルム成形設備。
【請求項10】
インフレートフィルム成形設備が、請求項1から6までのいずれか1項記載の複数の装置(4)を有している、請求項8または9記載のインフレートフィルム成形設備。
【請求項11】
縦方向でフィルムウェブ(1)を一軸方向に長さ変更するための方法であって、
フィルムウェブ(1)を、2つのロール(5a,5b)により画定された少なくとも1つの加工ギャップ(6)を通して案内し、
フィルム搬送方向で第1の前記ロール(5a)が第1の周速度を有しており、フィルム搬送方向で第2の前記ロール(5b)が第2の周速度を有している、方法において、
前記フィルムウェブ(1)を前記加工ギャップ(6)内で長さ変更し、前記ロール(5a,5b)のうちの少なくとも1つのロールが、外方から内方へと空気通流されたロール(5a,5b)として構成されており、ロール(5a,5b)とフィルムウェブ(1)との間の空気を集め、前記ロール(5a,5b)を通して流出させ、前記フィルムウェブ(1)を前記ロール(5a,5b)に当て付け、
前記空気通流可能なロール(5a,5b)のうちの少なくとも1つのロールが、温度調整と組み合わせ可能であり、
前記空気通流可能なロール(5a,5b)に負圧源を接続可能であり、前記ロール(5a,5b)に負圧を加えることができ、
前記空気通流可能なロール(5a,5b)に、該ロールの長さにわたって種々異なる強さで負圧を加えることができ、
前記ロール(5a,5b)の温度調整のために、ガス、蒸気、水またはオイルである流体が、ロータリジョイントを介して供給および排出され、
前記ロール(5a,5b)がダブルジャケットロールであって、空気ガイドのための通路を備えており、
前記ダブルジャケットロールは、バフ研磨された表面を有する空気透過層
である焼結層を有することを特徴とする、縦方向でフィルムウェブ(1)を一軸方向に長さ変更するための方法。
【請求項12】
フィルムを、インフレートフィルム成形設備内での製造中にフィルム厚み制御し、これにより前記インフレートフィルム成形設備内で製造されたチューブラフィルムのフィルム厚さプロフィールを、予め規定された厚さ目標プロフィールが均一なフィルム厚さからの逸脱を有しているように制御し、該逸脱は、縦方向で引き続き行われる一軸方向の伸張時に発生する、フィルム幅にわたるフィルム厚さ変更の補償に役立ち、この結果、延伸によって、フィルム幅全体にわたって平均的なフィルム厚さからできるだけ小さな逸脱を有する厚み横断面プロフィールを有するフィルムウェブ(1)を製造する、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦方向(MD)でフィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための装置および方法に関する。この装置は、2つのロールにより画定された少なくとも1つの加工ギャップを有しており、加工ギャップにわたって、フィルムウェブが縦方向に案内され、フィルム搬送方向で第1のロールが第1の周速度を有しており、フィルム搬送方向で第2のロールが第2の周速度を有している。
【背景技術】
【0002】
フィルムの製造時に、製造後のフィルムの厚さを減らすために、延伸設備(Reckanlagen)が使用される。フィルムの延伸(Recken)は、チューブラフィルムでもキャストフィルムでも行われる。延伸設備は、通常、延伸のためにフィルムを準備するために加熱ロールを有しており、この加熱ロールに延伸ロールが続く。加熱ロールと延伸ロールとの間で、フィルムが伸張される。この伸張に続いて、いわゆるアニールロール(Annealingwalzen)または温度調整ロール(Temperwalzen)が設けられており、アニールロールまたは温度調整ロールにおいて、フィルム特性に影響を与えるために、フィルムが熱処理を受ける。最終的に、フィルムは冷却ロールによって冷却される。フィルムウェブの延伸によって、フィルムの幾何学的な寸法が変化するだけではなく、たとえば透明性または強度のような特性にも意図的に影響を与えることができる。
【0003】
延伸設備は、インフレートフィルム成形設備内でオフラインまたはインラインで運転される。チューブラフィルムの伸張は、インフレートフィルム成形設備内においてインラインで引取りロール対のすぐ下流側で行われてもよいし、または引取りロール対に続く反転バーシステム(Wendestangensysrem)の下流側で行われてもよい。
【0004】
縦延伸(Laengsrecken)とも呼ばれる、縦方向(MD)でのフィルムウェブの一軸方向の伸張時に、横方向収縮、いわゆるネックインが、両エッジの増厚、いわゆるエッジビード(Randaufbau)を同時的に伴って生じる。この効果は、フィルムの引き続きの処理にとって極めて不都合である。ネックインは、フィルム製造プロセスを、フィルムの引き続きの処理のために要求される平坦性に関して困難にするので、不都合である。ネックインが高くなれば高くなるほど、一軸方向で延伸されたフィルムの経済的な製造時に要求されるフィルム品質を達成することは困難となる。はね出したフィルムエッジおよび形成された巻成体(Wickel)の繰出し時の別の平坦性エラーのような欠点が生じる。これは、ロール品質を悪化させ、ひいてはたとえば印刷、積層またはラミネート加工時にフィルムを引き続き処理する際の処理性をより悪化させる。
【0005】
独国特許出願公開第102009046585号明細書は、フィルムウェブを縦延伸するための延伸設備およびフィルムウェブを縦延伸するための方法を開示している。延伸設備は、主に加熱装置、延伸ユニットおよび冷却装置を有している。フィルムウェブの縦延伸時のネックインおよびエッジビードを減らすために、押さえロール(Aufliegewalze)の形の押付け装置が使用される。この押付け装置は、フィルムウェブを延伸ロールに対して押し付ける。
【0006】
独国特許出願公開第102009046593号明細書は、同様にフィルムウェブを縦延伸するための延伸装置およびフィルムウェブを縦延伸するための方法を開示している。ネックインおよびエッジビードを減らすために、変向ロールが、延伸ユニットの2つの延伸ロールの間の延伸ギャップ内で使用される。フィルムはより小さく収縮する。
【0007】
独国特許出願公開第102011085735号明細書に開示されているように、延伸ロールの温度調節も、一軸方向で伸張されたフィルムの横方向の縮みまたは収縮を、伸張時に阻止する。さらに、延伸ギャップ適合も、収縮を阻止することができる。ロールギャップの減少は、フィルムのネックインを減少させる。
【0008】
引き続き延伸設備において伸張される、インフレートフィルム成形設備において製造されたフィルムの平坦性を改善するために、たとえば独国特許出願公開第102009033171号明細書から公知のような厚み制御法が使用される。縦方向で一軸方向への延伸時のエッジビードが低減される。このために、チューブラフィルムの製造時に、後に平坦に置かれたフィルムのエッジ領域を形成する領域に薄い箇所が設けられ、これにより延伸後に、フィルムウェブに対して横方向でできるだけ均一な厚さを有する最終製品が生じる。この方法は、横方向の縮みの減少にも有利に作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底を成す課題は、横方向収縮ひいてはエッジビードを減らすことにより、縦方向でフィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための装置において、改善された平坦性を有するフィルムウェブを製造することを可能にする解決手段を提供することである。このことは、製造されたフィルム巻成体の品質を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
冒頭で述べた形式の、縦方向でフィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための装置において、この課題は、本発明により、独立請求項の特徴部に記載の特徴によって解決される。課題の解決は、本発明によれば、先行技術と比較して、フィルムウェブが長さ変更される加工ギャップを画定するロールのうちの少なくとも1つのロールが、空気通流可能なロールと交換される装置によって達成される。この空気通流可能なロールは、外方から内方に向かって通流可能に構成されている。
【0011】
ロールを介したフィルムウェブの搬送時に、フィルムウェブとロールとの間でフィルムウェブ上に空気境界層が引き込まれる。このエアクッション(Luftpolster)は、加工ギャップ内におけるフィルムの伸張時にフィルムウェブの平坦性に不都合に作用する。外方から内方に向かって空気通流可能なロールの使用により、一緒に引き込まれた空気は、空気通流可能なロールを介して内方に向かってロール内へと連続的に流出することができ、フィルムは、その全幅にわたってロールに直接に当て付けられている。フィルムウェブの平坦性は、改善される。このエアクッションは、まさに高い機械速度で発生する。フィルムウェブの伸張による、エッジビードを同時に伴う横方向収縮は、ロールにおけるフィルムの当付けにより阻止され、低減される。この効果が十分ではない場合、外方から内方に向かって空気通流可能なロールに、負圧源を接続することができ、負圧によってフィルムウェブはロールに向かって吸い込まれ、ロールにより強く付着し、ネックインおよびエッジビードは減少する。
【0012】
ネックインおよびエッジビードの大きさは、とりわけ、加工ギャップを画定するロール上におけるフィルムの付着に関連する。フィルムは、ローラ表面上で横方向、つまりフィルムウェブの搬送方向に対して垂直方向に外側領域に向かって増幅して滑り、これによりフィルムウェブに作用する横方向力を補償しようとする。この横方向収縮は、主に、加工ギャップ内と、ロール自体の上において起こる。今、摩擦の高まりによってロールにおけるフィルムウェブの付着を改善し、フィルムとロールとの間での横方向および縦方向での相対速度を阻止するように、ロールにおいて負圧を形成することが目指される。当付け幅にわたるロール上でのフィルムの均一な接触が達成される。したがって、フィルム搬送方向でロールの走出部におけるロールからのフィルムウェブの規定された剥離エッジおよびフィルム搬送方向でロールへの走入時のロールにおけるフィルムウェブの規定された当付けエッジが生じる。
【0013】
負圧の高さは、フィルムウェブの所望の長さ変更、機械速度およびフィルム特性にも依存する。
【0014】
フィルムをロールに吸い込む力は、負圧の高さを介して発生する。負圧は、約100~300mbarであり、特別な場合には、負圧はこれよりも大きくまたは小さく選択することができる。フィルムの特性および所望される長さ変更に応じて、負圧は対応して制御される。本発明によれば、長さ変更のための装置の加工ギャップを画定する複数のロールのうちの少なくとも1つのロールが、外方から内方に向かって空気通流可能であるロールとして形成されている。
【0015】
好適な一実施形態では、加工ギャップの下流側の第2のロールが、空気通流ロールとして形成されている。引き込まれた空気は、このロールを通って流出し、フィルムは、その全幅にわたってロール上に載置されている。この効果が十分ではない場合、本発明の別の実施形態では、空気通流ロールに負圧源が接続される。空気通流可能なロールに加えられている負圧により、フィルムウェブは、ロールに向かって吸い込まれる。これにより装置のロールに対するフィルムウェブの摩擦が高められ、これにより加工ギャップの下流側で横方向の縮みが減少する。フィルムは、フィルムエッジを含む全幅にわたって均一にロールに向かって吸い込まれる。
【0016】
本発明の別の実施形態では、加工ギャップの上流側の装置の第1のロールが、空気通流ロールとして構成されている。フィルムウェブとロールとの間の接触が高められ、フィルムウェブとローラとの間におけるエアクッションの形成が阻止される。これにより、フィルムウェブは、ロール上に均一に当て付けられている。フィルムウェブは、より小さな横方向収縮を有して加工ギャップに到達する。平坦性には有利に影響が与えられる。別の実施形態では、この第1のロールを、同様に負圧源に接続することができる。より高められた力によって効果が増幅される。
【0017】
別の実施形態では、加工ギャップの上流側のロールおよび加工ギャップの下流側のロールが、空気通流可能なロールとして構成されている。したがって、フィルムウェブとロールとの間の空気封入を有しないフィルムウェブの改善された付着が達成され、フィルムにおけるネックインおよびエッジビードが低減される。好適な実施形態では、第2のロールが、付加的に負圧源に接続される。これは、横方向収縮を阻止する。稀なケースでは、両方のロールを負圧源に接続することもできる。
【0018】
本発明に係る装置では、空気通流ロールが、押さえロールと協働してもよいし、または押さえロールと協働しなくてもよい。押さえロールは、空気通流ロール上でのフィルムウェブの付加的な位置固定のために役立つ。押さえロールは、ロールに対するフィルムの接触を増幅し、これによりフィルムは均一にロールに当て付けられている。
【0019】
伸張タスク(Streckaufgabe)に応じて、フィルムをその幅にわたって種々異なる強さで空気通流可能なロールに吸い込む、たとえばフィルム中心よりもエッジにおいてより強く吸い込むことも必要であり得る。その場合、空気通流可能なロールは、軸方向の長さにわたって種々異なる強さの負圧を加えることが可能であるように構成される。
【0020】
タスク設定に応じて、空気通流可能なロールと、温度調整ロールとの組み合わせも使用することができる。この組み合わせは、一方ではフィルムウェブを温度調整し、これにより長さ変更にとって適切な温度が存在しているようにし、他方ではフィルムウェブとロールとの間に一緒に引き込まれた空気を空気通流可能なロールを介して内方に向かって流出させることができる。ロール上におけるフィルムウェブの直接的な接触により、ロールからフィルムウェブへの熱伝達が改善する。フィルムウェブをより強くロールに向かって吸い込むために付加的にロールに負圧が加えられる場合、フィルムとロールとの間の摩擦が高められ、ネックインはさらに減少する。
【0021】
温度調整は、加熱または冷却であってよい。組み合わせられたロールの片側で、ロータリジョイントを介して、ガス、蒸気、水またはオイルのような流体が、ロールの温度調整のために供給および排出される。ロータリジョイントを介して、流体供給部および排出部とは反対側に、負圧源が接続され、空気が吸い込まれる。負圧が加えられていない場合、空気はこの開口を介して漏れ出る。純粋に空気通流可能なロールでは、温度調整のための流体供給部および排出部は省略される。
【0022】
組み合わせられた温度調整兼空気通流ロールは、先行技術によるロールと同様に、流体温度調整されたダブルジャケットロールを有しているが、このダブルジャケットロールは、空気ガイドのための通路を付加的に備えていて、負圧源に接続することができる。これらの通路は小さな孔として構成されていてもよい。理想的には、焼結構造に類似する空気透過層が被着される。ロールを、マイクロメートル範囲にある連続気孔材料から構成することも可能である。ロールは、鋼、特殊鋼またはプラスチックのような材料から構成されている。好適な1つの実施形態では、焼結層が、たとえばバフ研磨することができるステンレスの特殊鋼から成っている。付加的には、ロールの表面粗さまたは表面構造を介して、フィルムウェブとロールとの間の摩擦または付着に影響を与えることができる。温度調整が不要である場合、ダブルジャケットを有しない同一の種類のロールが使用される。
【0023】
フィルムウェブの横方向の縮みを減らすことにより、フィルムの新しい物理的な特性が生じる。この特性は、改善された平坦性により印刷機およびラミネート加工プロセスにおいて改善された引き続きの処理につながる。さらに、これは、少ないエッジトリミングにつながる。
【0024】
長さ変更のための装置は、それぞれ2つのロールにより画定される加工ギャップを有している。フィルムウェブ搬送方向で第1のロールは第1の周速度を有しており、フィルムウェブ搬送方向で第2のロールは第2の周速度を有しており、これによりフィルムウェブは、第1のロールと第2のロールとの間の加工ギャップにおいて長さ変更される。
【0025】
第2のロールが、装置の第1のロールよりも大きな周速度を有している場合、フィルムの正の長さ変更が生じる。長さ変更比に応じて、延伸(Recken)、伸張(Verstrecken)またはアニール(Annealing)と呼ばれる。アニールから伸張および延伸へのフィルム長さ変更の移行は連続的である。長さ変更比は、約1:1~1:10に達することができる。
【0026】
アニールの場合、長さの他にフィルムウェブの収縮も許容することができ、第2のロールは、第1のロールよりも小さな周速度を有していて、負の長さ変更が生じる。収縮率は、通常約0.5:1~1:1である。
【0027】
加工ギャップを画定する両ロールが、同一の周速度を有していてもよい。
【0028】
一実施形態では、フィルムウェブの長さ変更のための本発明に係る装置は、延伸設備の構成部分である。
【0029】
通常は加熱ロール、延伸ロール、アニールロールおよび冷却ロールセンブリから成る延伸設備では、延伸ギャップまたは加工ギャップの下流側の延伸ロールが、空気通流可能なロールに交換される。なぜならば、この箇所において延伸プロセスのための最大の改善が生じるからである。
【0030】
このような延伸設備は、フィルム製造設備内においてインラインまたはオフラインで使用することができる。2つのロールにより画定された少なくとも1つの加工ギャップを有する複数の本発明に係る装置が延伸設備内に設けられていてもよい。しかし、本発明に係る装置を備えた延伸設備において、別の延伸ロール、または延伸ロールに続くアニールロールまたは冷却ロールならびに前置された加熱ロールのような別のロールを付加的に空気通流可能なロールとして構成することも可能であり、これによりフィルム品質をさらに改善することができる。
【0031】
チューブラフィルムの製造時に、フィルムウェブを長さ変更するための本発明に係る装置を、インフレートフィルム成形設備内にインラインで組み込むことができる。
【0032】
インフレートフィルム成形設備は、フィルム搬送方向で見て、プラスチック調量装置、押出機を含み、押出機には、インフレートフィルムダイ、冷却器、キャリブレーションバスケットが続く。これらの部品の下流側には、案内部(Flachlegung)および引取り装置(Abzugsvorrichtung)ならびに反転装置が続く。最終的に、チューブラフィルムは巻取機内で巻き取られる。
【0033】
インフレートフィルム成形設備におけるチューブラフィルムの製造時に、2つのロールにより画定された少なくとも1つの加工ギャップを有する長さ変更のための本発明に係る装置であって、ロールのうちの少なくとも1つのロールが空気通流可能なロールである装置は、直接にフィルム搬送方向で引取り装置の引取りロール対の上側で、反転バーの上流側または下流側に配置されていてよい。2つのロールにより画定された少なくとも1つの加工ギャップを有する複数の本発明に係る装置が、1つのインフレートフィルム成形設備内に設けられていてもよい。本発明に係る装置は、空気通流可能な別のロールに付加的に組み合わせることができる。この場合、引取り装置は、固定式、回転式にまたは逆転する反転引取り装置(reversierender Wendeabzug)として構成されていてよい。反転バーなしでも運転することができる。
【0034】
一軸方向の長さ変更のための本発明に係る装置は、インフレートフィルム成形設備内の延伸設備の構成部分として、フィルム搬送方向で、引取りロール対の上側で、チューブラフィルムブローの上側の反転バーの上流側または下流側に配置されていてよい。代替的には、装置が、延伸設備内においてインラインでフロア上にインフレートフィルム成形設備の隣に、またはオフラインでフロア上にインフレートフィルム成形設備の隣に配置されていてよい。インフレートフィルム成形設備は、それぞれ逆転する反転引取り装置を備えていてもよく、または備えずに構成されていてもよい。
【0035】
一軸方向に長さ変更するための本発明に係る装置は、いわゆるMDO設備の延伸設備の構成部分として、インフレートフィルム成形設備の下流側にインラインで2つ配置されていてもよい。したがって、チューブラフィルムは、互いに反対側に位置する箇所において両側で2つのフィルムウェブに切開され、それぞれ1つフィルムウェブが1つの延伸設備内で引き続き加工される。
【0036】
フィルムウェブの品質をさらに最適化するために、本発明に係る装置の使用と、厚み制御システムの使用とを組み合わせることができる。たとえば独国特許出願公開第102009033171号明細書によるチューブラフィルムの製造時の厚み制御システムと、長さ変更するための装置内の空気通流ロールとの組み合わされた使用時に、さらに有利な効果が発生する。なぜならば、延伸によるフィルムウェブのネックインが比較的に小さな場合、平坦性を最適化するために制御システム内に導入されるエネルギがより少なく、微調整された制御が可能であり、ひいてはプロセスが簡略化されるからである。
【0037】
同様に、長さ変更のために装置は、キャストフィルムを加工するための延伸設備またはアニール設備において使用することができる。
【0038】
フィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための本発明に係る方法において、フィルムウェブは、2つのロールにより画定された少なくとも1つの加工ギャップにわたって案内される。フィルム搬送方向で第1のロールは第1の周速度を有しており、フィルム搬送方向で第2のロールは第2の周速度を有している。第1のロールおよび第2のロールのうちの少なくとも一方のロールは、空気通流ロールであり、この空気通流ロールは、この空気通流ロールを介して案内されるフィルムウェブがこの空気通流ロールに当て付けられるようにし、これにより、フィルムウェブの横方向収縮およびエッジビードを阻止し、ロールとフィルムウェブとの間のエアクッションの形成を阻止することができる。空気通流ロールと温度調整ロールとの組み合わせ時には、フィルムとロールとの間の熱伝達が付加的に高められる。なぜならば、フィルムとロールとの間の絶縁性の空気層は空気通流可能なロールを通じて流出することができるからである。したがって、安定的な延伸プロセスが達成され、結果として平坦性エラーのない均一なフィルムが達成される。なぜならば、フィルムが均一にその当付け幅にわたってロール上に当て付けられるからである。
【0039】
負圧を加えることによって、この効果は増幅される。一方ではフィルム搬送方向でロールの走出部におけるロールからのフィルムの剥離エッジが、他方ではフィルム搬送方向でロールの走入部におけるロールへのフィルムの当付けエッジが、吸込みにより改善されて位置固定されるので、フィルムとロールとの間の当付け幅にわたって横方向および縦方向でより小さな相対速度差が発生する。
【0040】
フィルムウェブの品質をさらに最適化するために、この方法は、独国特許出願公開第102009033171号明細書に記載されているようなフィルム厚み制御と組み合わせられる。チューブラフィルムは、製造中に、インフレートフィルム成形設備内でフィルム厚み制御を受ける。チューブラフィルムの厚さプロフィールは、チューブラフィルムが、インラインで後置されて運転される延伸設備内で平坦に置かれたチューブラフィルムのエッジ領域を形成する箇所において薄い箇所を有しているように制御されるので、延伸設備内におけるフィルムの延伸後に、フィルム幅にわたって平均的なフィルム厚さからできるだけ小さな逸脱しか有していないフィルムが発生する。今、フィルムウェブが、延伸設備内での延伸時に、付加的に、長さ変更のための装置内で、フィルムを吸い込み、これにより横方向収縮およびエッジビードを阻止する負圧源を備えた空気通流可能なロールを介して案内されると、さらに高められた品質を備えたフィルムが製造される。空気通流ロールに負圧源を接続することにより、品質はさらに改善される。平坦に置かれたチューブラフィルムは、ブロックフィルム、片側または両側で、二重に平坦に置かれたチューブラフィルムであってよく、または一層で2つの延伸設備内で処理されるフィルムであってよい。
【0041】
ロールとして、特に延伸ロールとして、負圧源との接続を備えた通流可能なロールまたは負圧源との接続を備えない通流可能なロールを使用することは、ロールにおけるフィルムウェブの付着を高め、これによりフィルムウェブのより小さな横方向収縮ならびにより小さなエッジビードをもたらし、したがってフィルムの平坦性を改善する。したがって、従来必要となるエッジトリミングが回避される。両方とも、延伸されたフィルムの製造時の経済性を高める。
【0042】
本発明の対象の別の詳細、特徴および利点は、従属請求項および例示的に本発明の好適な一実施例を図示した添付の図面の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】縦方向でフィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための本発明に係る装置を備えた延伸設備を示す図である。
【
図2】縦方向でフィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、MDO設備とも呼ばれる延伸設備内において、縦方向でフィルムウェブを一軸方向に長さ変更するための本発明に係る装置を、本発明に係る装置の1つの使用可能性として示している。フィルムウェブ(1)は、上方から延伸設備内に導入される。まず、フィルムウェブ(1)は、加熱ロール(3)を備えた加熱区間(2)にわたって案内される。その後に、ロール(5)、ここでは延伸ロールと、これらの延伸ロール間に位置する加工ギャップ、ここでは延伸ギャップ(6)とを備えた、長さ変更のための本発明に係る装置(4)、ここでは延伸装置(4)に供給され、伸張される。延伸ロール(5)は、加熱ロールよりも小さな直径を有していてよい。次いで、フィルムウェブ(1)は、温度調整のためのアニールロール(8)を備えたアニール区間(7)に供給され、このアニール区間(7)には、冷却ロール(10)を備えた冷却区間(9)が続いている。最終的に、フィルム(1)は、MDO装置を出て、巻取り機において巻き取ることができる。種々異なるロール上において、フィルムウェブは、押さえロール(11)により保持される。
【0045】
図2は、延伸設備の、長さ変更のための装置(4)を詳細に示している。フィルムウェブ(1)は、第1の延伸ロール(5a)を介して第2の延伸ロール(5b)へと案内される。第1の延伸ロール(5a)と第2の延伸ロール(5b)との間には、延伸ギャップ(6)が位置している。この延伸設備内では、第2の延伸ロール(5b)が第1の延伸ロール(5a)よりも高い周速度を有しているので、フィルムウェブの正の長さ変更が生じる。押さえロール(11)は、延伸ロール(5a),(5b)上でのフィルムウェブ(1)の付加的に位置固定する働きをする。その後に、フィルムウェブ(1)は本発明に係る装置(4)を出る。延伸ロール(5b)は、本発明によれば、図示しない負圧源への接続の可能性を有する空気通流ロールとして構成されている。第1の延伸ロール(5a)および第2の延伸ロール(5b)は、付加的に温度調整ロールとして構成されていてもよい。その場合、第2の延伸ロール(5b)は、空気通流ロールと温度調整ロールとの組み合わせである。延伸タスクに応じて、個別の、または全ての押さえロール(11)を省略することができる。延伸設備は、2つ以上の延伸ロール(5)を有していてよく、したがって複数の装置(4)を有していてよい。延伸設備は、それぞれ2つまたは3つ、またはそれ以上の加熱ロール、延伸ロール、アニールロールまたは冷却ロールを有していてよい。
【符号の説明】
【0046】
1 フィルムウェブ
2 加熱区間
3 加熱ロール
4 長さ変更のための装置/延伸装置
5 ロール/延伸ロール
5a 第1のロール/延伸ロール
5b 第2のロール/延伸ロール
6 加工ギャップ/延伸ギャップ
7 アニール区間
8 アニールロール
9 冷却区間
10 冷却ロール
11 押さえロール