(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】電気手術システム、電気手術用器具、操作データを書込む方法、及び電気手術用供給装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021008252
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】10 2020 103 278.1
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】キウィック アン
(72)【発明者】
【氏名】ケルステン ルッツ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-526157(JP,A)
【文献】特開平09-073417(JP,A)
【文献】特表2004-513742(JP,A)
【文献】特開2016-104161(JP,A)
【文献】特表2019-503231(JP,A)
【文献】特表2008-503255(JP,A)
【文献】特開平02-253344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/14
G06F 12/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術用供給装置(10)と電気手術用器具(11)
とを備えた電気手術システムであって、
前記電気手術用器具(11)は
、メモリ素子(20)を備えており、
前記電気手術用器具(11)は、前記メモリ素子(20)に対して読出し及び書込みを行うことができる
前記電気手術用供給装置(10)に接続可能であり
、
前記操作データは、第1の操作データ要素(67)と第2の操作データ要素(68)とを備えるデータ構造の前記メモリ素子に、格納されているか、もしくは格納可能であり、
前記操作データは接続された前記電気手術用供給装置(10)によって前記第1の操作データ要素(67)又は前記第2の操作データ要素(68)のいずれか一方に選択的に書込まれるように構成されることを特徴とする、電気手術システム。
【請求項2】
前記データ構造は書込みフラグ(69、70)を備え、
前記書込みフラグ(69、70)の値は、前記操作データが前記第1の操作データ要素(67)と前記第2の操作データ要素(68)のどちらに書込まれるかを示すことを特徴とする、請求項1記載の電気手術システム。
【請求項3】
前記第1の操作データ要素(67)又は前記第2の操作データ要素(68)への前記操作データの書込みが成功した後、前記電気手術用供給装置(10)は前記書込みフラグ(69、70)の値をトグル処理するように構成されることを特徴とする、請求項2記載の電気手術システム。
【請求項4】
前記データ構造において、前記書込みフラグ(69、70)は、前記第1の操作データ要素(67)に関連づけられた第1の書込フラグ(69)と前記第2の操作データ要素(68)に関連づけられた第2の書込フラグ(70)とを有し、
前記電気手術用供給装置(10)は、前記操作データ要素(67、68)のうち1つに対して前記操作データの書込みが成功した後、次に書込まれる前記操作データ要素と関連づけられている前記書込みフラグの値をトグル処理するように構成されることを特徴とする、請求項2又は3記載の電気手術システム。
【請求項5】
前記電気手術用供給装置(10)は、前記第1の書込フラグ(69)の値と前記第2の書込フラグ(70)の値が等しくない場合は前記操作データを前記第1の操作データ要素(67)に書込み、前記第1の書込フラグ(69)の値と前記第2の書込フラグ(70)の値が等しい場合には前記操作データを前記第2の操作データ要素(68)に書込むよう構成されることを特徴とする、請求項4記載の電気手術システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の電気手術システムの電気手術用器具(11)。
【請求項7】
請求項2乃至5のいずれか一項記載の電気手術システム(1)の電気手術用器具(11)のメモリ素子(20)に、操作データを書込む方法であって、
前記方法は、
(a)前記メモリ素子(20)に格納されるデータ構造から前記書込みフラグの値を読込むステップと、
(b)前記書込みフラグの値に基づいて、操作データが第1の操作データ要素に又は第2の操作データ要素のどちらに書込まれるか判定するステップと、
(c)前記操作データを、前記判定により決定された操作データ要素に書込むステップと、
(d)前記書込みフラグの値をトグル処理するステップとを含むことを特徴とする、方法
【請求項8】
請求項4又は5記載の電気手術システム(1)の電気手術用器具(11)のメモリ素子(20)に、操作データを書込む方法であって、
前記第1の書込フラグ(69)と前記第2の書込フラグ(70)の値を読込み、
前記操作データは、前記第1の書込フラグ(69)と前記第2の書込フラグ(70)の値が等しくない場合は前記第1の操作データ要素に書込まれ、前記第1の書込フラグ(69)と前記第2の書込フラグ(70)の値が等しい場合には前記第2の操作データ要素に書込まれることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記操作データを前記操作データ要素のうち1つに書込んだ後に、次に書込まれる前記操作データ要素と関連づけられた前記書込みフラグの値をトグル処理することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記電気手術用供給装置(10)は、請求項7乃至9のいずれか一項記載の方法を実行するように構成されることを特徴とする、電気手術システム(1)の電気手術用供給装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気手術用供給装置と、電気手術用器具とを備える電気手術システムに関する。当該電気手術用器具はメモリ素子を備えており、電気手術用器具を電気手術用供給装置に接続すると、電気手術用供給装置はメモリ素子に対して読出し及び書込みを行うことができる。当該電気手術用供給装置は、操作データをメモリ素子に書込むように構成されている。更に本発明は、対応する電気手術システムの電気手術用器具と、操作データを書込む方法と、電気手術用供給装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
ここしばらく電気手術システムは、手術でさまざまな処置を行うために使用されている。狭義の電気手術では、処置対象の組織は電流に直接曝される。そしてこの電流は高周波交流電流であることが一般的である。使用する機器と、電流及び電圧とを適切な大きさに調節することによって、例えば組織の凝固又は切り取りといった、さまざまな組織効果(tissue effect)を達成することができる。
【0003】
更に又は排他的に、超音波ソノトロードを介して処置対象の組織に超音波を当てるシステムも公知である。この場合、通常使用されている機器にはトランスデューサがあり、超音波発生方式で、供給装置から提供される電気信号をソノトロードの超音波振動に変換する。この種の超音波システムもまた、本発明に関する電気手術システムであると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気手術用器具は耐用年数が限られていることが一般的である。一回きりの使用に特定される機器、ならびに複数回の使用が意図される機器であっても、このことは等しく真実となる。電気手術用器具がその意図された使用回数を越えて使用されないことを確実にするために、さまざまな方法が開発されている。
【0005】
最新の電気手術システムの機器は、供給装置のための構成データが格納されるメモリ素子を備える。構成データには操作データ要素が含まれており、電気手術用供給装置がこの操作データの書込みを行う。操作データは、消費データ、例えば起動数及び持続時間、送られたエネルギー/電力、タイムスタンプ、温度データ等であり得る。電気手術用器具を電気手術用供給装置に接続すると、供給装置は操作データ要素を読出し、機器を更に使用することが可能かどうか判定することができる。
【0006】
特に電気手術の分野では、電気手術用器具のメモリ素子への電気手術用供給装置の書込みアクセスが、電磁干渉により失敗する場合がある。この場合、電気手術用器具に格納された操作データが損なわれる可能性があるので、電気手術用器具を更に使用可能かどうかは、もはや確実に判定できない。
【0007】
従って本発明の目的は、記載されている課題に対して、改良された電気手術システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの目的を、電気手術用供給装置と電気手術用器具とを備える電気手術システムにより達成する。電気手術用器具はメモリ素子を備えており、電気手術用器具を電気手術用供給装置に接続すると、電気手術用供給装置はメモリ素子に対して読出し及び書込みを行うことができる。電気手術用供給装置は、操作データをメモリ素子に書込むように構成されている。
操作データは、第1の操作データ要素と第2の操作データ要素とを備えるデータ構造のメモリ素子に格納されているか、もしくは格納が可能である。電気手術用供給装置は操作データを、第1の操作データ要素又は第2の操作データ要素に選択的に書込むように構成されている。
【0009】
記載されている更なる開発では、片方の操作データ要素への書込アクセスが失敗しても、もう一方の操作データ要素はアクセス可能なままである。その結果、先にそこに格納されていた操作データを依然として読出すことができる。このように、電気手術用器具の使用状態を必要に応じて正確に判定すること可能であり、更に使用可能かどうか決定する。
【0010】
本発明の考えられる更なる開発では、データ構造に書込みフラグが含まれていてもよく、書込みフラグの内容により、第1の操作データ要素と第2の操作データ要素のどちらに操作データを書込むかが示される。
【0011】
この点に関して、第1の操作データ要素又は第2の操作データ要素への操作データの書込みが成功した後、電気手術用供給装置が書込みフラグを切り換えるように構成してもよい。
【0012】
本発明の電気手術システムの好適な開発では、書込みフラグはデータ構造として、それぞれの操作データ要素と関連づけられていてもよい。電気手術用供給装置は、操作データ要素のうち1つに対して操作データの書込みが成功した後、それぞれの操作データ要素と関連づけられている書込みフラグを切り換えるように構成してもよい。
【0013】
この点に関して電気手術用供給装置は好適には、書込みフラグの値が等しくない場合は操作データを第1の操作データ要素に書込み、書込みフラグの値が等しい場合には操作データを第2の操作データ要素に書込むよう構成してもよい。
【0014】
第2態様によると本発明の目的は、前記実施例による電気手術システムの電気手術用器具によって達成される。上記による利点及び達成可能な効果に関しては前記説明を確実に参照する。
【0015】
第3態様によると本発明の目的は、操作データを、前記実施例よる電気手術システムの電気手術用器具のメモリ素子に書込む方法によって達成される。この方法は以下のステップを含む。
メモリ素子に格納されるデータ構造から書込みフラグの値を読込むステップ
書込みフラグの値に基づいて、第1の操作データ要素と第2の操作データ要素のうちどちらに操作データを書込むかを判定するステップ
(上記ステップで)判定された操作データ要素に操作データを書込むステップ
書込みフラグを切り換えるステップ
【0016】
記載されている方法により、書込みモードでは、どんな場合でも操作データ要素のうち1つのみにアクセスすることが確実となる。したがって書込みエラーが生じても、もう一方の操作データ要素は完全なままである可能性が高いので、最後に更新された操作データを検索することができる。
【0017】
本発明による方法の考えられる更なる開発では、2つの書込みフラグの値が読込まれてもよく、書込みフラグの値はそれぞれが1つの操作データ要素に関連づけられている。操作データは、2つの書込みフラグの値が等しくない場合は第1の操作データ要素に書込まれ、2つの書込みフラグの値が等しい場合には第2の操作データ要素に書込まれる。
【0018】
好適には、操作データを操作データ要素のうち1つに書込んだ後に、それぞれの操作データ要素と関連づけられた書込みフラグを切り換えてもよい。
【0019】
第4態様によると本発明の目的は、上記の方法を実行するよう構成される電気手術システムの電気手術用供給装置によって達成される。
【0020】
本発明は、多くの典型的な図を参照し、以下で更に詳細に記載される。図示される実施例は単に、本発明のより良好な理解を促すことを目的とし、制限することは目的としない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、高周波発生器である電気手術用供給装置10と、電気手術用器具11とを備えた電気手術システム1を示す。電気手術用器具11は、ケーブル12を介して電気手術用供給装置10に接続している。示されているケーブル12の代わりに、電気手術用器具11と電気手術用供給装置10間の接続は、例えばNFC(近距離無線通信)又はRFID(無線自動識別)を用いて非接触式としてもよい。
【0023】
電気手術用器具11の遠位端には、組織の処置を行う電極13が配置される。そのため電極13は、ライン14を介して電気手術用供給装置10に接続される。
【0024】
電気手術用器具は、複数の電極を有することができる。電気手術用器具10は電極13の代わりに、もしくは電極13に加えて、1つ以上の超音波送受波器を備えてもよい。
【0025】
電気手術用供給装置10が高周波電気信号を生成し、この高周波電気信号はライン14を介して治療的な効果を組織(図示なし)に印加する電極13に伝導される。電気手術回路を完成するために中性極15を設けてもよく、これもまた電気手術用供給装置10に接続される。
【0026】
電気手術用器具11は、構成データが格納されるメモリ素子20を備える。電気手術用器具11が電気手術用供給装置10に接続されると、電気手術用供給装置10はライン21を介してメモリ素子20に対する読込みを行う。電気手術用供給装置10はメモリ素子20から読出した構成データを使用し、電気手術用器具11に送る電気信号を構成する。電気信号のさまざまな特徴は、電気手術用供給装置10の制御要素22で変更できるようにしてもよい。
【0027】
構成データはフレキシブルなデータ構造のメモリ素子20に格納され、これは
図2に概略的に示されている。ここでメモリ素子20の論理的内容は、先頭から下へインクリメントするメモリアドレスで示される。
【0028】
構成データの第1セット30は第1メモリアドレスに格納される(例えば論理アドレス$0000)。構成データの第2セット40は第1セット30の後ろに格納される(例えば論理アドレス$0100)。この場合、終了(termination)データ要素50は、構成データの第2セット40の後ろに配置される(例えば論理アドレス$0300)。
【0029】
理解を容易にするために、論理アドレスは、16進数($….)で指定されているので、例えば$0100は値256であり、$0200は値512である。
【0030】
構成データの第1セット30は、古い世代(型)の電気手術用供給装置10で使用されてもよい。この種の供給装置はメモリ素子20に構成データを1セットのみ想定しており、これは常に論理アドレス$0000に位置する。この構成データのセットは、対応する世代の電気手術用供給装置が開発されたときに公知であった電気手術用器具及び波形のパラメータのみを含み得るので、その内容は制限されている。
【0031】
より最近の機器又は波形のために、構成データの第2セット40が設けられている。最新の電気手術用供給装置10は、メモリ素子20の他の論理アドレスから構成データを読出すことができるので、構成データの第2セット40にアクセスすることができる。
【0032】
構成データの第2セット40は第1セット30の構成データを補完する構成データを格納してもよく、その構成データと組み合わせてのみ使用することができるようにしてもよい。あるいは、第2セット40に格納される構成データは、それ自体で完成されていてもよい。
【0033】
構成データの第2セット40が格納されている論理アドレスは、構成データの第1セット30のレングスに依存している。ただし、第1セット30のレングスは固定されていてもいいし、公知であってよい。そうすると、第2のセット40の論理アドレスも公知となる。
【0034】
構成データの第1セット30は可変長であってもよい。この場合第1セット30は、構成データの第1セット30のレングス及び/又は次のセットのアドレスを示す第1のレングスデータ要素31を含む。
【0035】
構成データの第2セット40は、常に可変長であるのが一般的であり、第2セット40のレングスを示す第2のレングスデータ要素41を含む。
【0036】
第1セット30及び第2セット40に加えて、構成データのセットを更にいくつもメモリ素子20に格納することができる。データセットの末端を示すために、終了データ要素50は、最後のデータセットの後ろに配置される。
【0037】
個々のセット30、40は、互いに直接隣接していてもよい。しかしメモリ素子20は、ブロック(例えばレングス$0100のブロック)の読出し又は書込みする際にアクセス可能なだけであるのが一般的である。個々のセット30、40のレングスが必ずしも$0100でもあるというわけではないので、使用されていないメモリ領域が、個々のセット30、40又は終了データ要素50の間にあってもよい。
【0038】
図3は、セット30、40の代わりに又はそれに加えて、メモリ素子20のデータ構造に格納可能な構成データのデータセット60の考えられる構造を詳細に示す。
【0039】
データセット60は、2つのセクション61、62を有する。
【0040】
第1セクション61は、定義データ要素63から始まる。
【0041】
定義データ要素63は、データセット60の構造に関する情報、すなわち、タイプ及び/又はバージョン情報(type/version description)、データセット60内のこのセクション及び他のセクションのレングス及び/又は位置情報、及び/又は構成データの次のセットの位置情報、ならびにメモリ素子20の特定情報(例えばメモリ素子から/への読出/書込可能なブロックサイズ)を含む。ただし、タイプ及び/又はバージョンデータはタイプデータ要素64に含まれてもよく、レングス及び/又は位置情報はレングスデータ要素65に含まれてもよい。タイプデータ要素64及び/又はレングスデータ要素65は、定義データ要素63の独立したデータ要素又は部分要素であってもよい。
【0042】
供給装置10は定義データ要素63を用いることにより、それがデータセット60と互換性を持つかどうか判定することが可能である。
【0043】
データセット60がデータ構造の構成データの最後のセットである場合、$0000を次のデータセットの論理的メモリアドレスとして、定義データ要素63にセットしてもよい。
【0044】
定義データ要素63は、パラメータデータ要素66及び更なるセクション62両方の構造を定義する。
【0045】
パラメータデータ要素66は、供給装置10から送られる電気信号を判定するための実際の構成データを含む。
【0046】
構成データのデータセット60のセクション61は「読出し専用」セクションとして定義され、これは、セクション61に格納されるデータが、供給装置10によって操作上修正できないことを意味する。
【0047】
第2セクション62は、2つの操作データ要素67、68を含む。電気手術用器具11の操作データは、電気手術用供給装置10によって、操作データ要素67、68に格納される。この操作データは、消費データ、例えば、起動数及び持続時間、及び/又は機器11から送られるエネルギー/電力、タイムスタンプ、温度データ等であり得る。操作データは、機器11を更に使用することが可能か判定するために、電気手術用供給装置10によって評価され得る。
【0048】
供給装置10による、操作データ要素67、68への書込みを可能にするために、セクション62は「読出し/書込み」セクションとして定義され、これは供給装置10による書込みアクセスを許可していることを意味する。
【0049】
例えば干渉信号のせいで、操作データ要素67、68への書込みでエラーが発生する場合があるので、操作データ要素67、68の書込みは、供給装置10によって選択的に行われる。このようにして、書込アクセスが失敗した場合でも、以前の書込アクセスに格納されていた操作データが依然として利用可能である。
【0050】
操作データ要素67、68のうちどちらが直近の操作データを含むか及びいずれが次に書込まれることになっているかを判定するために、書込みフラグ69、70が操作データ要素67、68それぞれに割り当てられる。操作データ要素67、68のうち1つに対する書込み操作が成功した後、割り当てられた書込みフラグ69又は70は切り換えられ、すなわち「0」から「1」又は「1」から「0」へのセットが行われる。
【0051】
供給装置10は、操作データ要素67、68への各読出し又は書込みアクセスの前に、書込みフラグ69、70を読込む。両方の書込みフラグ69、70が同じ値を有する場合は、操作データ要素67の操作データが最新であり、次の操作データは操作データ要素68に書込まれる。一方で書込みフラグ69、70が異なる値を有する場合は、操作データ要素68の操作データが最新であり、次の操作データは操作データ要素67に書込まれる。
【0052】
機器11の工場出荷時では、セクション67、68、69、及び70は、所定の数列(例えばフィボナッチ数列)を含む。供給装置10はまずはこの数列を認識しようとする。セクションがこの配列を含む場合、供給装置10は機器11が未使用の機器であると認識する。
【0053】
機器11を最初に使用した後、供給装置は操作データを操作データ要素68に書込み、書込みフラグ70の値を「0」にセットする。操作データは、使用データ、例えば、起動数及び持続時間、及び/又は機器11から送られたエネルギー/電力、タイムスタンプ、温度データ等であり得る。
【0054】
機器11が次に供給装置10又は他の供給装置で使用されるとき、この時点では、所定の数列(例えばフィボナッチ数列)の前半分だけがセクション62に含まれていると検出される。その結果供給装置10は、最新の操作データを操作データ要素68に格納し、次の操作データは操作データ要素67に書込むと識別する。書込みフラグ69の値は「0」にセットされる。
【0055】
次に機器11を供給装置10又は他の供給装置で使用するとき、フラグ69、70が再び読込まれる。この時点のフラグ69、70の値は等しいので、供給装置は、最新の操作データを操作データ要素67に格納し、次の操作データは操作データ要素68に書込むと識別する。書込みフラグ70の値は「1」にセットされる。
次に機器11を供給装置10又は他の供給装置で使用するとき、フラグ69、70が再び読込まれる。この時点のフラグ69、70の値は等しくないので、供給装置は、最新の操作データを操作データ要素68に格納し、次の操作データは操作データ要素67に書込むと識別する。
【0056】
2つの書込みフラグ69、70の代わりに、単一の書込みフラグを使用してもよく、各書込み操作後に切り換えが行われる。書込みフラグの値はそれから、どの操作データ要素が最新の操作データを含むか、そしてどの操作データ要素が次に書込まれるかを示す。
【0057】
「読出し専用」又は「読出し/書込み」としてメモリ素子20の個々の領域を定義することは、所定サイズ(セクション61、62のサイズに必ずしも適合するというわけではない)の個々の記憶ブロックにのみ可能である。従って、使用されていないメモリ領域71、72を、セクション61、62の最後に存在するようにしてもよい。類似した未使用のメモリ素子(図示せず)が、個々のデータ要素間に位置してもよい。
【0058】
単一のデータ要素に格納されるデータの完全性を確実にするために、データ構造はチェックサム要素を含んでもよい(図示なし)。
【0059】
供給装置10による操作データの読出し及び書込みを行う方法を
図4に示す。書込みフラグ69、70が第1ステップ100で読込まれ、第2ステップ101ではそれぞれの比較が行われる。書込みフラグ69、70両方が同じ値を有する場合はステップ102で操作データ要素67を読出す。書込みフラグ69、70の値が異なる場合にはステップ103で操作データ要素68を読出す。
【0060】
ステップ104では、読込んだ操作データを用いて、機器11を更に使用可能かどうかの確認が行われる。使用不可能と判断された場合はステップ105で、対応するメッセージが供給装置10より出され、処理は中断される。
【0061】
使用可能と判断された場合はステップ106で、メモリ素子20からロードされた構成データを(当てはまる場合はユーザ入力も)考慮しつつ、供給装置10によって機器11の起動が行われる。
【0062】
使用後は、ステップ101の比較結果に基づいて、書込みフラグ69、70の値が同じである場合は、現在の操作データがステップ107で操作データ要素68に書込まれ、もしくは書込みフラグ69、70の値が異なる場合は、現在の操作データはステップ108で操作データ要素67に書込まれる。書込みが成功した後、対応する書込みフラグ69(ステップ109)又は70(ステップ110)の切り替えが行われ、処理は終了する。
【0063】
もしデータ構造が、書込み可能な操作データ要素を含む複数セットの構成データを含む場合は、現在の操作データは個々に各セットに書込まれなければならない。これは、構成データのセットの一部のみを読出す供給装置が最新の操作データにもアクセスすることを確実にする唯一の方法である。
【0064】
供給装置10が、メモリ素子20から操作データのセット30、40、60を読出す方法を
図5に示す。本明細書における第1ステップ200で、データの第1のブロック(論理アドレス$0000から始まる)が、メモリ素子から読出される。ステップ201において、読込みデータブロックが構成データの第1セット30のレングスデータ要素31を含むかどうか確認される。肯定の場合はステップ202で、完全な第1のデータセット30がメモリ20から読出され、ステップ203で、構成データの次のセットの論理的メモリアドレスがレングスデータ要素31の内容に基づいて判定される。
【0065】
データの第1ブロックがレングスデータ要素を含まない場合、ステップ204で、第1データセット30はそれが一定の公知のレングスを有すると仮定して読込まれる。したがって、ステップ205で、構成データの次のセットの論理的メモリアドレスは、第1セット30の公知の固定長に基づいて判定される。
【0066】
次にステップ206で、データブロックは予め決定された次の論理的メモリアドレスから読込まれ、ステップ207で、このデータブロックが、意味のあるデータを含むかどうか判定するために、確認が行われる。対応するデータブロックが意味のあるデータを含まない場合、すべてのデータセットはメモリ素子20から読込まれ、方法(処理)は終了となる。
【0067】
本実施例では、「意味のあるデータを含まない」というフレーズは、決定された論理的メモリアドレスがメモリ素子20のアクセス可能なメモリ領域の外にあるケースを含んでもよい。例えば、古い世代の電気手術用器具の構成データの第1セット30は、それだけでメモリ素子(の容量)をほぼすべて占める。この場合、記載した方法を実行するソフトウェアは、発生の可能性があるすべてのメモリアドレスエラーを防がなくてはならない。
【0068】
さらに、「意味のあるデータを含まない」というフレーズは、読出しデータのブロックが、構成データの他のセットのタイプデータ要素及び/又はレングスデータ要素、又はデータ終了要素のいずれも含まないという場合も含む。
【0069】
それから次のステップ208では、読込みデータブロックがデータ終了要素50を含むかどうか調べる。この場合、構成データの全セットの読込みが行われ、処理は終了となる。
【0070】
一方、データブロックが構成データの他のセットのタイプデータ要素及び/又はレングスデータ要素を含む場合、本発明の方法では、ステップ201以降が繰り返される。第1セット30を除いて、構成データのすべての更なるセットが常にレングスデータ要素を含む場合、ステップ201の処理はループから省略されてもよい。この場合、
図5において点線で示されているように、ステップ208の後、直接ステップ202へジャンプしてもよい。
【0071】
処理終了後、供給装置10は、読込んだタイプデータ要素の内容に基づいて、それぞれのセットが供給装置10と互換性を持つかどうか判定し、この種の互換性を持つセットのみを考慮するようにしてもよい。