(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】情報処理装置及びその入力制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
G06F3/041 600
(21)【出願番号】P 2021011915
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大山 敦史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 諒太
(72)【発明者】
【氏名】星野 鷹典
(72)【発明者】
【氏名】山崎 央
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-005184(JP,A)
【文献】特開2018-173712(JP,A)
【文献】特開2013-246612(JP,A)
【文献】特開2012-027940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
前記第1筐体に対して開閉可能に連結された第2筐体と、
前記第1筐体及び前記第2筐体のそれぞれに設けられたタッチパネルと、
前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にある場合に、前記タッチパネルに対する入力開始位置に応じて、所定の押圧力に対する出力値を異ならせる入力制御部と、
を備え、
前記入力制御部は、
前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にあるか否かを判定する姿勢判定部と、
前記第1筐体及び前記第2筐体のうち、水平状態に近い状態にある筐体を特定する筐体特定部と、
押圧力と出力値とが関連付けられた複数の異なる入力特性のうち、前記筐体特定部による特定結果及び前記タッチパネルに対する入力開始位置に基づいて、いずれかの入力特性を選択し、選択した前記入力特性を用いて前記タッチパネルに対する押圧力に応じた出力値を決定する出力決定部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記入力特性は、所定の押圧値に対して第1出力値が設定された第1入力特性と、前記所定の押圧値に対して前記第1出力値よりも大きい第2出力値が設定された第2入力特性とを含み、
前記出力決定部は、水平状態に近い姿勢状態にある筐体の前記タッチパネルに入力開始位置が検出された場合に前記第1入力特性を用い、水平状態から遠い姿勢状態にある筐体の前記タッチパネルに入力開始位置が検出された場合に前記第2入力特性を用いる請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記タッチパネルは、前記第1筐体及び前記第2筐体の内面間にわたって連続して設けられるとともに、折り畳み可能とされており、
前記入力制御部は、入力が開始されてから終了するまでの間、同じ入力特性を用いて押圧力に応じた出力値を決定する請求項
1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
第1筐体と、前記第1筐体に対して開閉可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体のそれぞれに設けられたタッチパネルとを備える情報処理装置に適用され、
前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にある場合に、前記タッチパネルに対する入力開始位置に応じて、所定の押圧力に対する出力値を異ならせる入力制御方法であって、
前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にあるか否かを判定する姿勢判定工程と、
前記第1筐体及び前記第2筐体のうち、水平状態に近い状態にある筐体を特定する筐体特定工程と、
押圧力と出力値とが関連付けられた複数の異なる入力特性のうち、前記筐体特定工程における特定結果及び前記タッチパネルに対する入力開始位置に基づいて、いずれかの入力特性を選択し、選択した前記入力特性を用いて前記タッチパネルに対する押圧力に応じた出力値を決定する出力決定工程と
を有する情報処理装置の入力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びその入力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル式の液晶ディスプレイを有し、物理的なキーボードを持たないタブレット型PCやスマートフォン等の情報処理装置が急速に普及している。この種の情報処理装置のディスプレイは、使用時には大きい方が望ましい反面、携帯時には小型化されることが望まれている。そこで、有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイを用いることで、筐体だけでなくディスプレイまでも折り畳み可能に構成した情報処理装置(以下「画面折り畳み式PC」という。)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、ディスプレイが設けられた筐体をヒンジなどで接続したデュアルディスプレイ型の情報処理装置(以下「デュアルディスプレイPC」という。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような画面折り畳み式PC、又は、デュアルディスプレイPCのディスプレイには、タッチパネルが重畳されており、ペンや指などによる入力が可能とされている。このようなPCを
図9に示すように、ノートPCのように開いて使用する場合、ユーザが上部の筐体50bに設けられているタッチパネルに対して、高い筆圧をかけて入力を行おうとすると、筐体バランスが悪くなってしまい、入力がしにくかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、入力操作性を向上させることのできる情報処理装置及びその入力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様は、第1筐体と、前記第1筐体に対して開閉可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体のそれぞれに設けられたタッチパネルと、前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にある場合に、前記タッチパネルに対する入力開始位置に応じて、所定の押圧力に対する出力値を異ならせる入力制御部と、を備え、前記入力制御部は、前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にあるか否かを判定する姿勢判定部と、前記第1筐体及び前記第2筐体のうち、水平状態に近い状態にある筐体を特定する筐体特定部と、押圧力と出力値とが関連付けられた複数の異なる入力特性のうち、前記筐体特定部による特定結果及び前記タッチパネルに対する入力開始位置に基づいて、いずれかの入力特性を選択し、選択した前記入力特性を用いて前記タッチパネルに対する押圧力に応じた出力値を決定する出力決定部とを備える情報処理装置である。
【0007】
本発明の第二態様は、第1筐体と、前記第1筐体に対して開閉可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体のそれぞれに設けられたタッチパネルとを備える情報処理装置に適用され、前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にある場合に、前記タッチパネルに対する入力開始位置に応じて、所定の押圧力に対する出力値を異ならせる入力制御方法であって、前記第1筐体と前記第2筐体との相対的な姿勢が所定の姿勢状態にあるか否かを判定する姿勢判定工程と、前記第1筐体及び前記第2筐体のうち、水平状態に近い状態にある筐体を特定する筐体特定工程と、押圧力と出力値とが関連付けられた複数の異なる入力特性のうち、前記筐体特定工程における特定結果及び前記タッチパネルに対する入力開始位置に基づいて、いずれかの入力特性を選択し、選択した前記入力特性を用いて前記タッチパネルに対する押圧力に応じた出力値を決定する出力決定工程とを有する情報処理装置の入力制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入力操作性を向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の外観図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の外観図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が備える機能のうち、入力制御に関する機能を主に抽出して示した機能ブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る第1入力特性および第2入力特性の一例を示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る入力制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る情報処理装置の外観図である。
【
図8】従来の情報処理装置の概略側面図であり、従来技術の課題について説明するための図である。
【
図9】従来の情報処理装置の概略側面図であり、従来技術の課題について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る情報処理装置及び入力制御方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1、
図2は本発明の一実施形態に係る情報処理装置1の外観図である。情報処理装置1は、第1筐体2aと、第1筐体2aに対して開閉可能に連結された第2筐体2bを備えている。第1筐体2aと第2筐体2bとは、例えば、ヒンジなどの連結部3によって連結されており、二つ折りが可能な構成とされている。
【0012】
第1筐体2a及び第2筐体2bの内面には、ディスプレイ10が配置されている。ディスプレイ10は、例えば、有機EL(Electro Luminescence)等を用いて構成された柔軟性を有するディスプレイであり、第1筐体2a及び第2筐体2bに連続的に設けられている。ディスプレイ10は、第1筐体2a及び第2筐体2bの内面が重なり合うように折り畳まれた場合に、一緒に折り畳み可能な構成とされている。
ディスプレイ10には、タッチパネル10a(
図3参照)が重畳されており、ペンや指による入力が可能な構成とされている。
【0013】
情報処理装置1は、
図1に示したように、第1筐体2aの内面と第2筐体2bの内面とのなす角が180度になるように開き、ディスプレイ10を平面状とすることでタブレット端末として使用できる。また、情報処理装置1は、
図2に示すように、第1筐体2aの内面と第2筐体2bの内面とのなす角度を変更することで、ノートPCのように使用することができる。
【0014】
図3は、情報処理装置1のハードウェア構成を示す概略図である。情報処理装置1は、
図3に示すように、例えば、CPU21、メインメモリ22、記憶部23、通信インターフェース24、入力部25、ディスプレイ10、第1加速度センサ26、第2加速度センサ27、押圧センサ等を備えている。これら各部は直接的にまたはバスを介して間接的に相互に接続されており互いに連携して各種処理を実行する。
【0015】
CPU21は、例えば、バスを介して接続された記憶部23に格納されたOS(Operating System)により情報処理装置1全体の制御を行うとともに、記憶部23に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。
【0016】
メインメモリ22は、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU21の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0017】
記憶部23は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等であり、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の情報処理装置1全体の制御を行うためのOS、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、特定業務に向けられたアプリケーション、及び各種データやファイル等を格納する。また、記憶部23には、後述する入力制御方法を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データ(入力特性等)が格納されている。
【0018】
通信インターフェース24は、ネットワークに接続して他の装置と通信を行い、情報の送受信を行うためのインターフェースとして機能する。
【0019】
入力部25は、ユーザが情報処理装置1に対して指示を与えるためのユーザインターフェースである。入力部25は、例えば、タッチパネル10aを備えている。タッチパネル10aには、位置検出用のセンサが結合されている。この位置検出用のセンサを用いることで、画面に接触した指やペンの位置を感知し、CPU21に指示を与えることができる。なお、タッチ操作の検出方式は特に限定されないが、一例として、静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式等が挙げられる。
また、入力部25は、外部インターフェース(図示略)を通じて接続されるマウス、キーボード等の入力を受け付ける構成とされていてもよい。
【0020】
ディスプレイ10は、例えば、有機EL(Electro Luminescence)等で構成される表示画面を有し、CPU21の命令に基づいて表示を行う。
【0021】
第1加速度センサ26は、第1筐体2aの内部に配置される。第1加速度センサ26は、第1筐体2aに対して、その長手方向に平行なX1方向、その短手方向に平行なY1方向、X1及びY1方向に垂直なZ1方向の加速度を検出し、X1Y1Z1方向の加速度値Ax1(t)、Ay1(t)、Az1(t)を、CPU21に出力する。第1加速度センサ26がX1Y1Z1方向の加速度を検出することにより、水平面に対する第1筐体2aの傾きを検出することができる。
【0022】
第2加速度センサ27は、第2筐体2bの内部に配置される。第2加速度センサ27は、第2筐体2bに対して、その長手方向に平行なX2方向、その短手方向に平行なY2方向、X2及びY2方向に垂直なZ2方向の加速度を検出し、X2Y2Z2方向の加速度値Ax2(t)、Ay2(t)、Az2(t)を、CPU21に出力する。第2加速度センサ27がX1Y1Z1方向の加速度を検出することにより、水平面に対する第2筐体2bの傾きを検出することができる。
【0023】
第1加速度センサ26及び第2加速度センサ27は、第1筐体2aと第2筐体2bの姿勢を判定するために使用される。ここで、第1筐体2aと第2筐体2bの姿勢を判定する手法は加速度センサを用いる手法に限定されない。例えば、第1加速度センサ26、第2加速度センサ27の他に、角速度センサ、及び近接センサのうち、少なくとも一つを用いることとしてもよい。また、第1筐体2aに対する第2筐体2bの相対角度を検出するスイッチ機構を用いてもよい。この場合、スイッチ機構は、例えば、連結部3に設けられる。
【0024】
感圧センサ(圧力検出部)28は、例えば、タッチパネル10aの下面に設けられている。感圧センサ28は、指やペン等による入力の押圧力(圧力)を検出し、CPU21に出力する。なお、押圧力を検出する具体的構成は、感圧センサに限定されない。例えば、他のセンサにより接触面における指、ペン等の押圧力を検出することとしてもよい。
なお、ペンを用いて入力を行う場合には、ペン側で押圧力(圧力)を検出し、検出した押圧力を通信媒体を介して取得するような構成とされていてもよい。
【0025】
図4は、本実施形態に係る情報処理装置1が備える機能のうち、入力制御に関する機能を主に抽出して示した機能構成図である。後述する各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラム(例えば、入力制御プログラム)の形式で記憶部23に記憶されており、このプログラムをCPU21がメインメモリ22に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、記憶部23に予めインストールされている形態や、他のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0026】
図4に示すように、情報処理装置1は、入力制御部30を備えている。入力制御部30は、タッチパネル10aに対する押圧力に応じた出力を行う。例えば、入力制御部30は、第1筐体2a及び第2筐体2bが所定の姿勢状態にある場合に、タッチパネル10aに対する入力開始位置に応じて、所定の押圧力に対する出力値を異ならせる。
【0027】
例えば、入力制御部30は、押圧力と出力値とが関連付けられた複数の異なる入力特性のうち、入力開始位置に基づいていずれかの入力特性を選択し、選択した入力特性を用いて押圧力に応じた出力値を決定する。
【0028】
以下、入力制御部30の一機能構成例について、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、入力制御部30は、記憶部31、姿勢判定部32、筐体特定部33、出力決定部34等を備えている。
【0029】
記憶部31には、押圧力と出力値とが関連付けられた複数の異なる入力特性が格納されている。本実施形態においては、記憶部31には、第1入力特性と、第2入力特性とが格納されている。第2入力特性は、例えば、第1入力特性に比べて圧力感度が高い特性とされている。
【0030】
図5には、第1入力特性C1および第2入力特性C2の一例が示されている。
図5に例示した入力特性において、横軸は押圧値(圧力値)、縦軸は出力値とされている。第1入力特性C1は、所定の押圧値X1に対して第1出力値Y1が設定されている。また、第2入力特性C2は、所定の押圧値X1に対して第1出力値Y1よりも大きい第2出力値Y2が設定されている。
図5に例示した入力特性において、第1入力特性C1及び第2入力特性C2は共に一次関数で表されるとともに、第1入力特性C1は第2入力特性C2に比べて傾きが緩やかな一次関数で表されている。ここで、
図5に示した入力特性は一例であり、この例に限定されない。例えば、一次関数に限らず他の関数(例えば、指数関数、対数関数等)で表されていてもよい。
【0031】
また、これらの入力特性は、必ずしも記憶部31(
図4参照)に常時格納されている必要はない。例えば、ネットワークを通じて接続される所定の格納場所、例えば、クラウドサーバや所定のサーバに格納されており、必要に応じてそれらを一時的にダウンロードして使用することとしてもよい。
【0032】
姿勢判定部32は、第1筐体2aと第2筐体2bとの相対的な姿勢に基づいて、第1筐体2a及び第2筐体2bが所定の姿勢状態にあるか否かを判定する。姿勢判定部32は、例えば、第1筐体2aと第2筐体2bとのなす角度である姿勢角度を検出し、姿勢角度が所定の角度範囲内である場合に、所定の姿勢状態にあると判定する。
【0033】
姿勢判定部32は、例えば、第1加速度センサ26及び第2加速度センサ27からの出力に基づいて、第1筐体2a及び第2筐体2bの相対的な姿勢を検出する。
具体的には、姿勢判定部32は、第1加速度センサ26から出力されるX1Y1Z1方向の加速度値Ax1(t),Ay1(t),Az1(t)に基づいて、水平面に対する第1筐体の傾きを検出する。同様に、姿勢判定部32は、第2加速度センサ27から出力されるX2Y2Z2方向の加速度値Ax2(t),Ay2(t),Az2(t)に基づいて、水平面に対する第2筐体2bの傾きを検出する。そして、検出したそれぞれの傾きに基づいて姿勢角度を算出し、算出した姿勢角度が予め設定されている所定の角度範囲内であるか否かを判定する。
【0034】
例えば、所定の角度範囲は、第1筐体2aにおけるタッチパネル及び第2筐体2bにおけるタッチパネルの両方に入力可能な姿勢状態であって、水平面に対する傾斜角が大きい方の筐体(例えば、
図2に示される第2筐体2b)のタッチパネルへの入力が不安定である姿勢状態の範囲に設定されている。一例として、角度範囲は、60°以上180°未満の範囲に設定されている。
【0035】
筐体特定部33は、例えば、第1筐体2a及び第2筐体2bのうち、水平状態に近い状態にある筐体を特定する。筐体特定部33は、第1加速度センサ26及び第2加速度センサ27からの出力に基づいて、水平面に対するそれぞれの傾きを算出する。この算出手法は、例えば、姿勢判定部32と同様である。そして、水平面に対する傾きが小さい方の筐体を水平状態に近い姿勢状態にある筐体として特定する。また、筐体特定部33は、姿勢判定部32から水平面に対する第1筐体2aの傾斜角及び水平面に対する第2筐体2bの傾斜角を取得し、これらの情報に基づいて、水平状態に近い筐体を特定することとしてもよい。
【0036】
また、水平状態に近い筐体を選択する方法は上記方法に限定されない。例えば、筐体特定部33は、水平面に対する傾きを用いるのではなく、重力方向に対する傾きを用いて筐体の特定を行ってもよい。
また、筐体特定部33は、圧力センサを用いて、第1筐体2a及び第2筐体2bとそれぞれ直接接触する部材との接触面にかかる圧力を測定する方法を採用してもよい。この場合、圧力が高い方の筐体を水平状態に近い筐体であると判定する。
また、光センサを用いて、第1筐体2a及び第2筐体2bとそれぞれ直接接触する部材とがどの程度接触しているかを光量で検出する方法を採用してもよい。この場合、光量が多い方の筐体を水平状態に近い筐体であると判定する。また、筐体特定部33は、これらの方法を組み合わせて用いてもよいし、その他の公知の手法を用いてもよい。
【0037】
出力決定部34は、筐体特定部33による特定結果及び入力開始位置に基づいて、いずれかの入力特性を選択し、選択した入力特性を用いて押圧力(押圧値)に応じた出力値を決定する。ここで、押圧力は、例えば、感圧センサ28によって検出される値である。
出力決定部34は、例えば、水平状態に近い姿勢状態にある筐体のタッチパネル10aに入力開始位置が検出された場合に第1入力特性を用い、水平状態から遠い姿勢状態にある筐体のタッチパネル10aに入力開始位置が検出された場合に第2入力特性を用いる。
以下、説明の便宜上、水平状態に近い姿勢状態にある筐体のタッチパネル(一例として、
図2の第1筐体2a)を「下側タッチパネル」といい、他方の筐体(一例として、
図2の第2筐体2b)を「上側タッチパネル」という。
【0038】
例えば、
図2に示した情報処理装置1の姿勢状態では、第1筐体2aの方が第2筐体2bよりも水平状態に近い姿勢状態である。この場合、例えば、ユーザが第1筐体2aのタッチパネル10aである下側タッチパネルから入力を開始することにより、下側タッチパネルに入力開始位置が検出された場合には、第1入力特性を用いて出力値が決定される。一方、
図2に示した情報処理装置1の姿勢状態において、ユーザが第2筐体2bのタッチパネル10aである上側タッチパネルから入力を開始することにより、上側タッチパネルに入力開始位置が検出された場合には、第2入力特性を用いて出力値が決定される。
例えば、圧力に応じた太さで線が描かれるような場合に、同じ押圧力で線を描いたとすると、上側タッチパネルから書き始めた方が、下側タッチパネルから書き始める場合に比べて、太い線が描かれることとなる。換言すると、上側タッチパネル及び下側タッチパネルのそれぞれに対して同じ太さの線を描きたい場合には、上側タッチパネルの方が少ない押圧力で足りる。
【0039】
また、出力決定部34は、入力が開始されてから終了するまでの間、同じ入力特性を用いて押圧力に応じた出力値を決定する。例えば、ユーザが下側タッチパネルからペン入力を開始し、上側タッチパネルまで連続的にペンを走らせた場合、上側タッチパネルに対する入力についても第1入力特性が引き続き用いられる。同様に、例えば、ユーザが上側タッチパネルからペン入力を開始し、下側タッチパネルまで連続的にペンを走らせた場合、下側タッチパネルに対する入力についても第2入力特性が引き続き用いられる。これにより、筐体を跨いで入力を行う場合には、同じ入力特性が採用されることにより、違和感なく入力操作を行うことが可能となる。
【0040】
次に、本実施形態に係る入力制御方法について
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る入力制御処理の手順の一例を示したフローチャートである。
【0041】
まず、入力が検知されると(SA1:YES)、所定の姿勢状態か否かが判定される(SA2)。具体的には、第1筐体2aと第2筐体2bとのなす角度である姿勢角度が所定の角度範囲内であるか否かを判定する。この結果、所定の姿勢状態である場合には(SA2:YES)、水平状態に近い姿勢状態の筐体を特定する(SA3)。
【0042】
続いて、特定した筐体側、すなわち、水平状態に近い姿勢状態の筐体側に入力開始位置を検出したか否かを判定する(SA4)。この結果、特定した筐体側に入力開始位置を検出した場合には(SA4:YES)、第1入力特性を用いて、押圧力に応じた出力値を決定する(SA5)。続いて、入力が終了したか否かを判定する(SA6)。換言すると、ペン又は指等の指示体がタッチパネル10aから離れたか否かを判定する。
【0043】
この結果、入力が引き続き行われている場合には(SA6:NO)、ステップSA5に戻り、引き続き第1入力特性を用いて、押圧力に応じた出力値が決定される。一方、ステップSA6において、入力が終了したと判定された場合には(SA6:YES)、ステップSA1に戻り、再び入力待ち状態となる。
【0044】
一方、ステップSA4において、特定した筐体側に入力開始位置が検出されなかった場合には(SA4:NO)、第2入力特性を用いて、押圧力に応じた出力値を決定する(SA7)。続いて、入力が終了したか否かを判定する(SA8)。換言すると、ペン又は指等の指示体がタッチパネルから離れたか否かを判定する。
【0045】
この結果、入力が引き続き行われている場合には(SA8:NO)、ステップSA7に戻り、引き続き第2入力特性を用いて、押圧力に応じた出力値が決定される。一方、ステップSA8において、入力が終了したと判定された場合には(SA8:YES)、ステップSA1に戻り、再び入力待ち状態となる。
【0046】
また、ステップSA2において、所定の姿勢状態にないと判定された場合には(SA2:NO)、ステップSA5に進み、第1入力特性を用いて、押圧力に応じた出力値を決定する。そして、入力が終了するまで、第1入力特性を用いた出力値の決定が行われる。そして、入力が終了すると(SA6:YES)、ステップSA1に戻り、再び入力待ちとなる。
【0047】
以上説明してきたように、本実施形態に係る情報処理装置1及びその入力制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0048】
例えば、入力制御部30(
図4参照)は、第1筐体2a及び第2筐体2bが所定の姿勢状態にある場合に、タッチパネル10aに対する入力開始位置に応じて、所定の押圧力に対する出力値を異ならせる。これにより、入力開始位置に応じた適切な筆圧のコントロールを行うことが可能となる。
【0049】
より具体的には、入力制御部30は、押圧力と出力値とが関連付けられた複数の異なる入力特性のうち、入力開始位置に基づいていずれかの入力特性を選択し、選択した入力特性を用いて押圧力に応じた出力値を決定する。
このように、入力特性を用いることにより容易に筆圧をコントロールすることが可能となる。
【0050】
より具体的には、入力制御部30は、第1筐体2aと第2筐体2bとの相対的な姿勢に基づいて、第1筐体2a及び第2筐体2bが所定の姿勢状態にあるか否かを判定する姿勢判定部32と、第1筐体2a及び第2筐体2bのうち、水平状態に近い姿勢状態にある筐体を特定する筐体特定部33と、筐体特定部33による特定結果及び入力開始位置に基づいて、いずれかの入力特性を選択し、選択した入力特性を用いて押圧力に応じた出力値を決定する出力決定部34とを備える。
【0051】
例えば、
図8に示すように、ノ-トPCの使用時のように開いた状態で、水平状態に近い姿勢状態にある筐体50aに設けられたタッチパネル、換言すると、下側タッチパネルに入力を行う場合は、入力面が安定しているので、入力操作が行いやすい。
これに対し、
図9に示すように、上側タッチパネルに設けられたタッチパネルに入力を行う場合、バランスが取りづらく、入力がしにくい。このため、例えば、ユーザが上側タッチパネルに対して筆圧をかけて太い線などを描きたい場合でも、思うように筆圧をかけることができないという不都合が生じる。
【0052】
本実施形態に係る情報処理装置1によれば、水平状態に近い姿勢状態にある筐体か否かによって、筆圧コントロールを異ならせることができるので、各筐体の姿勢状態に応じた適切な筆圧コントロールを行うことが可能となる。
【0053】
例えば、入力特性は、
図5に例示されるように、所定の押圧値X1に対して第1出力値Y1が設定された第1入力特性C1と、所定の押圧値X1に対して第1出力値Y1よりも大きい第2出力値Y2が設定された第2入力特性C2とを含んでいる。そして、出力決定部34は、水平状態に近い姿勢状態にある筐体(例えば、
図2における第1筐体2a)のタッチパネル10aに入力開始位置が検出された場合に第1入力特性C1を用い、水平状態から遠い姿勢状態にある筐体(例えば、
図2における第2筐体2b)のタッチパネル10aに入力開始位置が検出された場合に第2入力特性C2を用いる。
【0054】
このように、水平状態から遠い姿勢状態にある筐体のタッチパネルにおける圧力感度を高めることにより、例えば、水平状態に近い姿勢状態にある筐体ほど筆圧をかけずに所望の太さの線を描くことが可能となる。
【0055】
また、入力制御部30は、入力が開始されてから終了するまでの間、同じ入力特性を用いて押圧力に応じた出力値を決定する。これにより、例えば、
図2に例示した情報処理装置1において、ユーザが第1筐体2a側のタッチパネル10aからペン入力を開始し、第2筐体2b側のタッチパネル10aまでペンを走らせた場合には、第2筐体2b側のタッチパネル10aに対する入力についても第1入力特性が引き続き用いられる。同様に、例えば、ユーザが第2筐体2b側のタッチパネル10aから入力を開始し、第1筐体2a側のタッチパネル10aまで入力を継続して行った場合、第1筐体2a側のタッチパネル10aに対する入力についても第2入力特性が引き続き用いられる。このように、筐体を跨いで入力が行われる場合には、同じ入力特性が引き続き用いられるので、筐体を跨ぐことによる入力の違和感をユーザに与えることがない。
【0056】
以上、本発明について上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、筐体だけでなくディスプレイまでも折り畳み可能に構成した画面折り畳み式PCを例示して説明したが、例えば、情報処理装置1は、液晶表示装置などのような柔軟性を有しない表示画面を有していても良い。例えば、情報処理装置は、
図7に示すように、複数の筐体70a、70bがヒンジ等の連結部71によって連結されるとともに、各筐体70a、70bの内面にタッチパネルディスプレイ72a、72bがそれぞれ設けられた情報処理装置であってもよい。また、筐体は2つに限らず、3つ以上の筐体が連結部によって連結されるような情報処理装置でもよい。
【0058】
また、上述した入力制御方法は、例えば、アクティブになっているアプリケーションに応じてオンオフが切り替えられるように構成されていてもよい。例えば、ペン入力を行うアプリケーション(例えば、メモアプリ、描画アプリ等)がアクティブになっている場合に限って、本実施形態に係る入力制御方法を実行することとしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 :情報処理装置
2a :第1筐体
2b :第2筐体
3 :連結部
10 :ディスプレイ
10a :タッチパネル
21 :CPU
22 :メインメモリ
23 :記憶部
24 :通信インターフェース
25 :入力部
26 :第1加速度センサ
27 :第2加速度センサ
28 :感圧センサ
30 :入力制御部
31 :記憶部
32 :姿勢判定部
33 :筐体特定部
34 :出力決定部
70a :筐体
70b :筐体
71 :連結部
72a :タッチパネルディスプレイ
72b :タッチパネルディスプレイ