(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】非円形の溶液紡糸スパンデックスフィラメントならびにその製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
D01D 5/253 20060101AFI20230124BHJP
D01F 6/70 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
D01D5/253
D01F6/70 Z
(21)【出願番号】P 2021191662
(22)【出願日】2021-11-26
(62)【分割の表示】P 2018560801の分割
【原出願日】2017-05-15
【審査請求日】2021-12-21
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519355758
【氏名又は名称】ザ ライクラ カンパニー ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー,ジョーン ティ.
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-197318(JP,A)
【文献】特開昭64-026712(JP,A)
【文献】特開2002-088564(JP,A)
【文献】特開2001-064825(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第1112938(GB,A)
【文献】特許第2541524(JP,B2)
【文献】特開昭58-020138(JP,A)
【文献】特公昭49-040005(JP,B1)
【文献】中国実用新案第201793822(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103911677(CN,A)
【文献】中国実用新案第201971936(CN,U)
【文献】特開平03-174013(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2013-0064641(KR,A)
【文献】特開2000-303337(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0151651(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D01F 1/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドッグボーンまたはピーナッツ形状の溶液紡糸スパンデックスフィラメントを製造するための紡糸口金であって、孔または毛細管の中心から測定して0.05インチ未満および0.016インチよりも大きく離間した2つの分離されている孔または毛細管の組を1つ以上有する板を含む紡糸口金。
【請求項2】
前記紡糸口金における前記2つの孔または毛細管が孔または毛細管の中心から測定して0.035インチ未満で離間されている、請求項1に記載の紡糸口金。
【請求項3】
前記紡糸口金における前記2つの孔または毛細管が孔または毛細管の中心から測定して0.025インチ未満で離間されている、請求項1に記載の紡糸口金。
【請求項4】
前記離間した孔または毛細管の複数のグループを備える、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の紡糸口金。
【請求項5】
ドッグボーンまたはピーナッツ形状の溶液紡糸スパンデックスフィラメントを製造するための方法であって、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の紡糸口金を介してポリマー紡糸溶液を押し込むことを備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントならびにこ
れらの非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの製造方法および
装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エラスタンとも呼ばれるスパンデックスは、天然ゴムを超える異常な弾性ならびに強度
および耐久性を有するセグメント化ポリウレタンの合成繊維である。
【0003】
スパンデックス繊維は、溶融押出、反応紡糸、溶液乾式紡糸、および溶液湿式紡糸を含
む4つの異なる方法のいずれかによって製造されることができる。これらの全ての方法は
、プレポリマーを製造するためにモノマーの反応の初期段階で始まる。一旦形成されると
、プレポリマーは、様々な手段によってさらに反応され、引き出されて繊維を形成する。
溶液乾式紡糸法は、世界のスパンデックス繊維の90%以上を製造するために使用される
。
【0004】
乾式紡糸法では、プレポリマーは、ジイソシアネートモノマーとマクログリコールを混
合することによって製造される。2つの化合物は、典型的には1:2のグリコール対ジイ
ソシアネートの比で反応容器中で混合されてプレポリマーを生成する。プレポリマーは、
溶媒で希釈され、次いで紡糸溶液を形成するために鎖伸長反応として知られる反応におい
てジアミンの等量とさらに反応される。典型的には、鎖伸長反応中に追加の溶媒が添加さ
れる。繊維の製造、貯蔵、加工および使用における外観、性能および品質を改善するため
に、様々な添加剤がスパンデックスポリマー溶液に添加されることができる。
【0005】
乾式紡糸スパンデックスフィラメントのための装置は、米国特許第3,094,374
号明細書に記載されている。一般に、乾式紡糸法は、複数の別個のフィラメントを形成す
るために紡糸セルに複数のオリフィスを有する紡糸口金を通してスパンデックスポリマー
の溶媒を含む溶液を押し出すことを備える。大抵の場合、例えばシリコーン油または鉱物
油とシリコーン油の混合油などの潤滑油がパッケージ上に巻き付く前に塗布され、粘着性
を低減し、顧客処理におけるパッケージの配送を改善する。最後に、スパンデックス糸が
スプール上に集められる。
【0006】
紡糸口金の様々な構成が記載されている。低デシテックスの融合スパンデックスフィラ
メントを製造するために商業的に使用されるいくつかの紡糸口金は、グループ化された円
形オリフィスの2つの同軸リングを有し、外側リングは、内側リングよりも多数のグルー
プを有し、グループ化されたオリフィスの各グループは、通常、3、4、5または6であ
る。例えば、米国特許第4,679,998号明細書を参照のこと。
【0007】
米国特許第5,002,474号明細書は、グループ化された円形オリフィスの2つの
同軸リングを有する紡糸口金を開示しており、内側リングと外側リングのオリフィスグル
ープの数は等しい。この紡糸口金を用いた乾式紡糸スパンデックスフィラメントは、バン
ド欠陥の数を著しく減少させることが示唆されている。
【0008】
欧州特許第0182615号明細書は、外側リングの各グループのオリフィス間の距離
が内側リングの各グループのオリフィス間の距離よりも小さいことを特徴とする、グルー
プ化された円形オリフィスの外側リングおよび内側リングを有する紡糸口金を開示してい
る。
【0009】
英国特許第1,112,938号明細書は、非円形断面を有する乾式紡糸繊維を製造す
るための紡糸口金を開示しており、多数のオリフィスのグループは、各グループが0.0
1から1mmの直径を有する2から6個の円形オリフィスから構成され且つ互いに1から
5mmの距離離間された約4から約12mmの間隔で配置されている。各オリフィスグル
ープの2つの隣接するオリフィス間の距離は、1ミリメートル未満であってはならないこ
とが必須であると教示されている。
【0010】
中国実用新案第201236230号明細書は、二重交差並列複合繊維を製造するため
の二重チャネル複合紡糸口金を開示している。紡糸口金は、十字形の微細孔と、2つの案
内孔が非対称であり且つ傾斜した二重チャネルで形成された紡糸口金案内孔とを有する。
【0011】
中国実用新案第201053043号明細書は、パラタクチックピーナッツ形状の弾性
繊維を製造するための複合紡糸口金板を開示している。紡糸口金ミリポアは、斜め対称で
あり且つともに接続されていない紡糸口金リード孔の下方に接続される。
【0012】
中国実用新案第201793822号明細書は、入口溝および入口溝に接続された毛細
管孔を備えた複数の加工孔を有する紡糸口金板を有するポリウレタン繊維を製造するため
の紡績ヘッドを開示している。この開示では、毛細管断面は矩形である。
【0013】
中国特許出願公開第103911677号明細書は、ダンベル繊維を製造するための紡
糸口金板を開示している。紡糸口金板本体は、ダンベル紡績糸微細孔を備え、多角形の紡
糸口金微細孔と、矩形の中間部を備えた幾何学的画像とによって形成されている。
【0014】
中国特許出願公開第103911677号明細書は、PET紡糸のためのバーベル形状
の毛細管および紡糸口金の設計を開示している。
【0015】
中国実用新案第201971936号明細書は、乾燥を促進するためのスパンデックス
製造のための三角形毛細管を記載している。
【0016】
韓国特許出願公開第2013064641号明細書は、隣接して配置されたまたは狭い
スロットを介して接続された2つの孔または毛細管を含むピーナッツ形状の繊維を製造す
るための紡糸口金板を開示している。接続された孔がそれらの中心から0.13から0.
25mm離間して配置され、隣接する孔がそれらの中心から0.11から0.40mm離
間して配置される実施形態が開示されている。
【0017】
欧州特許第1673495号明細書および国際公開第2005035842号パンフレ
ットは、周囲の成形チャネルを有する回転成形シリンダ上に糸を通すことによって得られ
る、好ましくはポリウレタンの湿式紡糸フラットマルチフィラメントエラストマ糸を開示
している。
【0018】
ドッグボーンまたは葉形の非円形断面を有するスパンデックス繊維を製造するための別
の方法は、欧州特許第2337884号明細書、日本国特開平7197318号公報、日
本国特開昭53139847号公報、日本国特開平11124728号公報、独国特許第
1288235号明細書、米国特許第6639041号明細書、米国特許第384063
0号明細書および中国特許出願公開第104294439号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【0019】
本発明の態様は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントに関
する。
【0020】
本発明の別の態様は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメント
を製造するための紡糸口金に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメント
を製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】
図1Aは、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの製造に使用される紡糸口金の非限定的な実施形態の図である。この非限定的な実施形態において、紡糸口金の孔または毛細管は、それらの中心から0.023インチ離間している。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの紡糸口金を用いて製造された非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの断面図である。
【
図2A】
図2Aは、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの製造に使用される紡糸口金の非限定的な実施形態の図である。この非限定的な実施形態では、紡糸口金の孔または毛細管は、それらの中心から0.0150インチ離間しており、幅0.0030インチの狭いスロットを介して接続されている。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aの紡糸口金を用いて製造された非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの断面図である。
【
図3A】
図3Aは、溶液スパンスパンデックスフィラメントの製造に使用される紡糸口金の図である。この実施形態では、紡糸口金の孔または毛細管は、それらの中心から0.050インチ離間している。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aの紡糸口金を用いて製造された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの断面図である。
【
図4A】
図4Aは、非円形のまたは成形された溶液スパンスパンデックスフィラメントの製造に使用される紡糸口金の非限定的な実施形態の図である。この非限定的な実施形態では、クラスタの中心から0.0289インチ離間され、幅0.055インチの矩形スロットを介して接続されている3つの孔または毛細管が紡糸口金内に存在する。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aの紡糸口金を用いて製造された非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの断面図である。
【
図5A】
図5Aは、3つの非円形フィラメントからなる合体スパンデックス糸条の製造に使用される紡糸口金の非限定的な実施形態の図である。この非限定的な実施形態では、1対の孔または毛細管間の間隔が0.023インチであり、対の中心線間の間隔が0.529インチである3対の孔または毛細管が存在する。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの紡糸口金を用いて製造された非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの断面図である。
【
図6】
図6は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントの製造に使用される紡糸口金の非限定的な実施形態の図である。この非限定的な実施形態では、個々の孔が0.023インチの側面を有する正三角形の頂点に位置する3つの孔または毛細管が紡糸口金内に存在する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、ここで、限定されるものではないが、ドッグボーンまたはピーナッツ形
状のフィラメントなどの非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメント
が乾燥を促進することができるより多くの表面積およびより薄いフィルムを提供すること
を見出した。
【0024】
本開示によって、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントなら
びにその製造方法および装置が提供される。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「スパンデックス」は、その通常の定義、すなわち少
なくとも85重量%のセグメント化ポリウレタンを含む長鎖合成ポリマーを有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「非円形のまたは成形された溶液スパンスパンデックスフ
ィラメント」とは、これらに限定されるものではないが、ドッグボーン、ピーナッツ型ま
たは双葉型フィラメントなどの多葉フィラメントならびに3、4、5または6またはそれ
以上の葉を有するフィラメントを含むように意味する。葉は、用途に応じてサイズが類似
していてもよいし、サイズが異なっていてもよい。
【0027】
図1A、
図2A、
図4A、
図5Aおよび
図6は、非円形のまたは成形された溶液紡糸ス
パンデックスフィラメントの製造に有用な紡糸口金の非限定的な実施形態を示している。
そこに示されるように、紡糸口金は、本明細書では交換可能に毛細管とも呼ばれる2つ以
上の孔を含むことができる。1つの非限定的な実施形態において、孔または毛細管は、直
径が0.009から0.025インチである。孔または毛細管は、狭い矩形スロットを介
して
図1Aおよび
図5Aに示すように分離されていてもよくまたは
図2Aおよび
図4Aに
示すように接続されていてもよい。1つの非限定的な実施形態では、狭い矩形スロットは
、0.0025から0.006の幅である。1つの非限定的な実施形態では、狭い矩形ス
ロットは、0.0055インチの幅である。
図1Bから
図3Bの比較によって示すように
、これらの孔または毛細管の間隔は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックス
フィラメントの所望の形成にとって重要であり得る。間隔は、分離されたとき、孔または
毛細管の中心から測定して、好ましくは0.05インチ未満、0.04インチ未満、0.
038インチ未満、l0.035インチ未満、0.030インチ未満、または0.025
インチ未満であり、および0.016インチよりも大きい、または0.018インチより
も大きい。間隔は、接続されたとき、孔または毛細管の中心から測定して、0.05イン
チ未満、0.04インチ未満、0.038インチ未満、0.035インチ未満、0.03
インチ未満、0.025インチ未満、または0.020インチ未満であり、および0.0
1インチよりも大きく、または0.015インチ離れている。
【0028】
図6は、3つの孔またはキャピラリーを含む板を有する紡糸口金を示している。この非
限定的な実施形態では、孔は、直径が0.009から0.015インチであり、正三角形
の構成で配向されている。これらの孔は、並置されてクラスタを形成する。1つの非限定
的な実施形態では、孔は、
図4Aに示すように、毛細管クラスタの中心から毛細管のそれ
ぞれに放射する矩形スロットを介して接続されることができる。1つの非限定的な実施形
態では、矩形スロットは、0.0030インチの幅である。1つの非限定的な実施形態で
は、孔または毛細管は、毛細管クラスタの中心から、中心点から0.0300インチ未満
の孔毛細管のそれぞれに放射する矩形スロットを介して接続され、スロットは、0.05
5インチの幅である。これらの板は、本発明にしたがって、溶液乾式紡糸によって非円形
または3葉形状の溶液紡糸スパンデックスフィラメントを形成するのに有用である。
【0029】
したがって、本発明の態様は、2つ以上の密接に離間したグループ化された孔または毛
細管を備える板を有する紡糸口金を使用して溶液乾式紡糸よって製造される非円形のまた
は成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントに関する。
【0030】
1つの非限定的な実施形態では、0.05インチ未満および0.016インチよりも大
きく、より好ましくは0.018インチよりも大きく離間した2つ以上の孔または毛細管
を含む板を有する紡糸口金を使用して溶液乾式紡糸によって非円形のまたは成形された溶
液紡糸スパンデックスフィラメントが製造される。1つの非限定的な実施形態では、0.
025インチ未満および0.016インチよりも大きく、より好ましくは0.018イン
チよりも大きく離間した2つ以上の孔または毛細管を含む板を有する紡糸口金を使用して
溶液乾式紡糸によって非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントが
製造される。1つの非限定的な実施形態では、0.05インチ未満および0.01インチ
よりも大きく離間した2つ以上の孔または毛細管を含む板を有する紡糸口金を使用して溶
液乾式紡糸によって非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントが製
造され、孔または毛細管は、幅0.0030インチの狭い矩形スロットを介して接続され
ている。1つの非限定的な実施形態では、孔または毛細管は、直径0.009から約0.
0230インチである。
【0031】
1つの非限定的な実施形態では、3つの孔または毛細管を含む板を有する紡糸口金を使
用して溶液乾式紡糸形態によって非円形のまたは3葉形状の溶液紡糸スパンデックスフィ
ラメントが製造される。この非限定的な実施形態では、孔は、直径が0.009から0.
015インチであり、正三角形の構成で配向されている。これらの孔は、並置されてクラ
スタを形成する。1つの非限定的な実施形態では、孔は、
図4Aに示すように、毛細管ク
ラスタの中心から毛細管のそれぞれに放射する矩形スロットを介して接続されることがで
きる。1つの非限定的な実施形態では、矩形スロットは、0.0030インチの幅である
。1つの非限定的な実施形態では、孔または毛細管は、毛細管クラスタの中心から、中心
点から0.0300インチ未満の孔毛細管のそれぞれに放射する矩形スロットを介して接
続され、スロットは、0.055インチの幅である。
【0032】
本発明の別の態様は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメント
を製造するための紡糸口金に関する。
【0033】
1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、0.05インチ未満および0.016イ
ンチよりも大きく、より好ましくは0.018インチよりも大きく密接に離間した2つ以
上の孔または毛細管を有する板を備える。1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、
0.025インチ未満および0.016インチよりも大きく、より好ましくは0.018
インチよりも大きく密接に離間した2つ以上の孔または毛細管を有する板を備える。
【0034】
1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、0.05インチ未満および0.01イン
チよりも大きく密接に離間した2つ以上の孔または毛細血管を有する板を備え、孔または
毛細管は、0.0030インチ幅の狭い矩形スロットを介して接続されている。1つの非
限定的な実施形態では、紡糸口金における2つ以上の孔または毛細管は、0.020イン
チ未満離間している。1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金における2つの以上の孔
または毛細管は、0.015インチ離間している。
【0035】
1つの非限定的な実施形態では、各毛細管または孔は、直径が0.009から0.02
5インチである。
【0036】
1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、3つの孔または毛細管を含む板を備える
。この非限定的な実施形態では、孔は、直径が0.009から0.015インチであり、
正三角形の構成で配向されている。これらの孔は、並置されてクラスタを形成する。1つ
の非限定的な実施形態では、孔は、
図4Aに示すように、毛細管クラスタの中心から毛細
管のそれぞれに放射する矩形スロットを介して接続されることができる。1つの非限定的
な実施形態では、矩形スロットは、0.0030インチの幅である。1つの非限定的な実
施形態では、孔または毛細管は、毛細管クラスタの中心から、中心点から0.0300イ
ンチ未満の孔毛細管のそれぞれに放射する矩形スロットを介して接続され、スロットは、
0.055インチの幅である。
【0037】
これらの実施形態では、紡糸口金は、1つ以上の非円形フィラメントを含む複数の糸条
を製造するために、これらの密接に離間した孔または毛細管の複数のグループを備えるこ
とができる。
【0038】
紡糸口金は、スパンデックス紡糸口金の製造に適した様々な材料から製造することがで
きる。非限定的な例は、317ステンレス鋼である。
【0039】
本開示を読めば当業者には理解されるであろうように、紡糸口金の寸法および形状なら
びに密接に離間した孔または毛細管の数は、紡糸セルの円形または矩形などの幾何学的形
状、および所望のフィラメントの数に適合するように選択されることができる。
【0040】
本発明の別の態様は、非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメント
を製造する方法に関する。溶液乾式紡糸法では、スパンデックスポリマーは、二段階プロ
セスによって製造される。第1の工程において、イソシアネート末端ウレタンプレポリマ
ーは、高分子グリコールをジイソシアネートと反応させることによって形成される。典型
的には、ジイソシアネートとグリコールとのモル比は、1.50から2.50の範囲に制
御される。所望であれば、この予備重合工程における反応を助けるために触媒が使用され
ることができる。第2の工程において、ウレタンプレポリマーがN,N-ジメチルアセト
アミド(DMAc)などの溶媒に溶解され、短鎖ジアミンまたはジアミンの混合物で鎖延
長されてスパンデックス溶液を形成する。繊維の製造、貯蔵、加工および使用における外
観、性能および品質を改善するために、様々な添加剤がスパンデックスポリマー溶液に添
加されることができる。この方法では、ポリマー紡糸溶液は、紡糸セルに圧送され、2つ
以上のより密接に離間した孔または毛細管を有する板を備える紡糸口金を通してポリマー
溶液を押し込むことによって繊維に変換される。
【0041】
1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、0.05インチ未満および0.016イ
ンチよりも大きく、より好ましくは0.018インチよりも大きく密接に離間した2つ以
上の孔または毛細管を有する板を備える。1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、
0.025インチ未満および0.016インチよりも大きく、より好ましくは0.018
インチよりも大きく密接に離間した2つ以上の孔または毛細管を有する板を備える。
【0042】
1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、0.05インチ未満および0.01イン
チよりも大きく密接に離間した2つ以上の孔または毛細血管を有する板を備え、孔または
毛細管は、0.0030インチ幅の狭い矩形スロットを介して接続されている。1つの非
限定的な実施形態では、紡糸口金における2つ以上の孔または毛細管は、0.020イン
チ未満離間している。1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金における2つの以上の孔
または毛細管は、0.015インチ離間している。
【0043】
1つの非限定的な実施形態では、紡糸口金は、3つの孔または毛細管を含む板を備える
。この非限定的な実施形態では、孔は、直径が0.009から0.015インチであり、
正三角形の構成で配向されている。これらの孔は、並置されてクラスタを形成する。1つ
の非限定的な実施形態では、孔は、
図4Aに示すように、毛細管クラスタの中心から毛細
管のそれぞれに放射する矩形スロットを介して接続されることができる。1つの非限定的
な実施形態では、矩形スロットは、0.0030インチの幅である。1つの非限定的な実
施形態では、孔または毛細管は、毛細管クラスタの中心から、中心点から0.0300イ
ンチ未満の孔毛細管のそれぞれに放射する矩形スロットを介して接続され、スロットは、
0.055インチの幅である。
【0044】
これらの実施形態のいずれにおいても、紡糸口金は、1つ以上の非円形フィラメントを
含む複数の糸条を生成するために、単一の紡糸セル内に密接に離間した孔または毛細管の
複数のグループを含むことができる。
【0045】
密接に離間するのにともない、隣接するフィラメントは、紡糸口金を出て、それらは、
非円形の又は成形された溶液紡糸スパンデックスフィラメントを形成するために溶融する
。フィラメントの溶融は、完全に溶融したフィラメントを形成するのに溶媒濃度が十分で
ある領域で生じることが好ましい。いくつかの溶融フィラメントは、所望の厚さの最終生
成物を提供するためにセル出口の下方に位置する擬似撚ジェットによってセルのさらに下
方に合体されることができる。擬似ジェットの撚り作用は、フィラメントがいくらか乾燥
している場所にセルを伝播するが、複数の非円形フィラメントからなる合体糸条を接着し
て形成するのに十分な粘着性を有する。紡糸セルを出た後、スパンデックス糸条は、糸条
潤滑性を改善してパッケージの粘着性を減少させるために仕上げ処理されてもよい。
【0046】
以下のセクションは、本発明の非円形のまたは成形された溶液紡糸スパンデックスフィ
ラメントならびに紡糸口金およびその製造方法のさらなる例を提供する。これらの実施例
は、例示的なものに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
実施例
実施例1:22/1 862W非円形または犬の骨型フィラメントの製造
図2Aに示すような紡糸口金を使用して本発明にしたがって製造された22dtexの
モノフィラメントドッグボーンスパンデックスが評価された。
【0048】
紡糸プロセスは、許容可能なブレークレベルで実行されることが見出された。得られた
スパンデックス糸条の断面が
図2Bに示される。スパンデックス糸条の強度および弾性特
性は、ASTM D 2731-72の一般的方法にしたがって測定された。3つのフィ
ラメント、2インチ(5cm)ゲージ長および0-300%伸長サイクルが各測定のため
に使用された。サンプルを50センチメートル/分の一定の伸び率で5回循環させた。最
初の伸長時のスパンデックスの負荷である負荷力は、最初のサイクルで200%の伸びで
測定され、糸条当たりのセンチニュートン(cN)として報告される。負荷解除力は、5
回目の負荷解除サイクルの200%の伸長時の応力であり、同様にセンチニュートン(c
N)で報告される。6回目の伸張サイクルにおいて、破断点伸び率および強度が測定され
た。表1は、22dtexモノフィラメントドッグボーンスパンデックスサンプルの物理
的特性を示している。
【表1】
【0049】
実施例2:44dtexの3フィラメントスパンデックスの製造
図5Aに示すような紡糸口金を使用する従来のスパンデックス乾式紡糸プロセスによっ
て、44dtexの3フィラメントスパンデックスのサンプルが製造された。紡糸中の破
断レベルは許容可能であった。得られた糸条の断面が
図5Bに示される。スパンデックス
の物理的特性が表2に示される。
【表2】
【0050】
実施例3:一連の22dtexのモノフィラメントスパンデックス繊維の製造
同一の紡糸条件で、円形孔または毛細管を有する紡糸口金、
図2Aに示すような孔また
は毛細管を有する紡糸口金および
図4Aに示すような孔または毛細管を有する紡糸口金を
使用して、一連の22dtexのモノフィラメントスパンデックス繊維が一定の紡糸条件
で製造された。各繊維は、残留溶媒について分析された。分析結果が表3に示されている
。
【0051】
スパンデックス糸中のDMAcは、溶媒中での抽出により判定され、抽出物中のDMA
cは、フレームイオン化検出器を用いたガスクロマトグラフィによって分析される。使用
される溶媒は、メタノールまたは水などの極性有機溶媒とすることができる。
【0052】
分析方法は以下の通りである:(1)2±0.2gのスパンデックス糸を密封可能なキ
ャップを有するバイアルに入れ、溶媒50mLを添加する。(2)加熱ブロックまたはオ
ーブンにサンプルバイアルを入れ、少なくとも15分間、約60℃に加熱する。(3)分
析のために溶媒のアリコートをGCバイアルに入れる;(4)サンプル溶液をGC-FI
Dで分析する;および(5)既知の標準または標準較正曲線に対する溶液中のDMAc濃
度を判定する。
【0053】
以下の計算を使用して糸のDMAc濃度が判定された:
スパンデックス糸中のDMAc濃度、wt.%=溶媒中のDMAc濃度(μg/mL)*
50mL溶媒*希釈率*抽出された糸の100%重量(g)*1,000,000(μg
/g)
ここで、1:4の希釈の場合には希釈率=4である、または希釈しない場合には1であ
る。
【表3】